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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】建物構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/14 20060101AFI20220825BHJP
   E04G 21/24 20060101ALI20220825BHJP
   E04G 21/32 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
E04G21/14
E04G21/24 A
E04G21/32 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018187814
(22)【出願日】2018-10-02
(65)【公開番号】P2020056234
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】佐々 実
(72)【発明者】
【氏名】大沢 勉
(72)【発明者】
【氏名】八木 謙太
(72)【発明者】
【氏名】廣岡 邦昌
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-140473(JP,A)
【文献】特開2017-210796(JP,A)
【文献】特開2018-131759(JP,A)
【文献】特開2016-211234(JP,A)
【文献】特開2016-094766(JP,A)
【文献】特開2004-218287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨系の建物を構築する建物構築方法であって、
前記建物の複数の層を一節として、所定の節の外周鉄骨柱を既に建て込んだ外周鉄骨柱の上に建て込んで仮固定する第1工程と、
前記所定の節の外周鉄骨柱の頂部同士の間に前記建物の外周に沿って延びる仮設梁を取り付けて、当該仮設梁に垂直養生ネットを取り付ける第2工程と、
前記所定の節の外周鉄骨柱および前記垂直養生ネットに囲まれた空間を作業空間として、前記作業空間内の残りの鉄骨部材を取り付けて前記所定の節の外周鉄骨柱とともに本固定するとともに、前記所定の節の外周鉄骨柱同士の間に前記建物の外周に沿ってプレキャストコンクリート床を設置する第3工程と、
前記第1工程から前記第3工程を、前記建物の下の節から上の節に向かって繰り返す第4工程と、を備えることを特徴とする建物構築方法。
【請求項2】
前記第2工程では、前記垂直養生ネットの上端を、前記所定の節の外周鉄骨柱の上端より高くし、前記垂直養生ネットの下端を、前記所定の節の最下階の床面よりも低くすることを特徴とする請求項1に記載の建物構築方法。
【請求項3】
前記第3工程にて前記作業空間内の残りの鉄骨部材を取り付ける際、前記建物の外周に沿って延びる外周鉄骨梁を取り付けて、その後、前記建物の内側に複数の内周鉄骨梁を取り付けることを特徴とする請求項1または2に記載の建物構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨系の建物を構築する建物構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄骨建方を行う際の養生方法として、以下のような方法が提案されている。
特許文献1には、建物の外壁面に取り付けられる枠付養生ネットが示されている。この枠付養生ネットには、建物躯体に着脱される取付用アームおよび支持アームが設けられている。
特許文献2には、外壁PC板の上端部に外部足場を取り付けておき、この状態で、外壁PC板を揚重して、外壁PC板を建物の梁鉄骨に上吊状態で取付けるとともに、外部足場を外壁PC板が取付けられた梁鉄骨上に跳出し状態で取付ける建物外周部の施工方法が示されている。
特許文献3には、上下に延びる養生枠および養生ネットによって建物の躯体外面を養生する養生装置が示されている。
特許文献4には、建物の3層を一節として、所定の節の柱および大梁の鉄骨部材の建方を先行して行い、この建て込んだ鉄骨部材を仮固定するステップと、所定の節の最下層を作業空間とし、作業空間の外周側面に防護壁を配置し、作業空間の残りの鉄骨部材を取り付けて、先行して建て込んだ鉄骨部材とともに本固定するステップと、防護壁を一層分上方に移動して、作業空間の直上の層を新たな作業空間とし、新たな作業空間の残りの鉄骨部材を取り付けて、先行して建て込んだ鉄骨部材とともに本固定する作業を、下層から上層に向かって繰り返すステップと、を備える建物の鉄骨建方方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-193272号公報
【文献】特開平8-60852号公報
【文献】特開2001-140474号公報
【文献】特開2017-210796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、建物の鉄骨建方を行う場合に、工具や資材が建物外側に落下するのを容易に防止できる、建物構築方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鉄骨系高層建物の構築方法として、外周鉄骨柱の外側に仮設梁を取り付けた後、その仮設梁から垂直養生ネットを垂れ下げて、外周鉄骨柱および垂直養生ネットに囲まれた空間を作業空間として、この作業空間内の残りの鉄骨部材の鉄骨建方工事を行うことで、建設工具や建設資材が建物の外側に落下するのを防止しつつ、鉄骨部材を所定の精度で効率よく建て込んで固定できる点に着眼して、本発明に至った。
第1の発明の建物構築方法は、鉄骨系の建物(例えば、後述の建物1)を構築する建物構築方法であって、前記建物の複数の層を一節として、所定の節の外周鉄骨柱(例えば、後述の外周鉄骨柱20A)を既に建て込んだ外周鉄骨柱の上に建て込んで仮固定する第1工程(例えば、後述のステップS1)と、前記外周鉄骨柱の頂部同士の間に前記建物の外周に沿って延びる仮設梁(例えば、後述の仮設梁65)を取り付けて、当該仮設梁に垂直養生ネット(例えば、後述の垂直養生ネット63)を取り付ける第2工程(例えば、後述のステップS2)と、前記外周鉄骨柱および前記垂直養生ネットに囲まれた空間を作業空間(例えば、後述の作業空間S)として、前記作業空間内の残りの鉄骨部材(例えば、後述の外周鉄骨梁30Aおよび内周鉄骨梁40A)を取り付けて前記外周鉄骨柱とともに本固定するとともに、前記外周鉄骨柱同士の間に前記建物の外周に沿ってプレキャストコンクリート床(例えば、後述の外周プレキャストコンクリート床51)を設置する第3工程(例えば、後述のステップS3)と、前記第1工程から前記第3工程を、前記建物の下の節から上の節に向かって繰り返す第4工程(例えば、後述のステップS4)と、を備えることを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、所定の節ごとに、先行して外周鉄骨柱を建て込んで、この外周鉄骨柱同士の間に仮設梁を取付けて、さらにこの仮設梁に垂直養生ネットを取り付ける。これにより、外周鉄骨柱および垂直養生ネットに囲まれた作業空間の安全性を確保でき、この作業空間内で工具や資材が落下した場合であっても、この落下物が垂直養生ネットに引っ掛かるので、建物の外側に落下するのを防止できる。
また、作業空間において、建物外周に沿ってプレキャストコンクリート床を設置したので、この外周部のプレキャストコンクリート床により、建て込んだ鉄骨部材の剛性を高めることができる。
【0007】
第2の発明の建物構築方法は、前記第2工程では、前記垂直養生ネットの上端を、前記所定の節の外周鉄骨柱の上端より高くし、前記垂直養生ネットの下端を、前記所定の節の最下階の床面よりも低くすることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、垂直養生ネットの上端を所定の節の外周鉄骨柱の上端より高くすることで、垂直養生ネットを落下防止用の手摺としても利用できる。また、垂直養生ネットの下端を所定の節の最下階の床面よりも低くすることで、工具や資材が作業空間から建物外部に落下するのを防止できる。
【0009】
第3の発明の建物構築方法は、前記第3工程にて前記作業空間内の残りの鉄骨部材を取り付ける際、前記建物の外周に沿って延びる外周鉄骨梁を取り付けて、その後、前記建物の内側に複数の内周鉄骨梁を取り付けることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、先行して建て込んだ外周鉄骨柱に外周鉄骨梁を取り付けて、建物外周部の鉄骨柱梁架構の精度を確保した後、建物内側に複数の内周鉄骨梁を取り付けた。よって、内周鉄骨梁を取り付ける際に、内周鉄骨梁の取り付け位置を柔軟に調整できるため、鉄骨部材を高精度で建て込むことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、建物の鉄骨建方を行う場合に、工具や資材が建物外側に落下するのを容易に防止できる、建物構築方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る建物の構築手順のフローチャートである。
図2】建物の所定節の前節までの鉄骨建方が完了した状態を示す平面図である。
図3】建物の構築手順の説明図(その1、所定節の外周鉄骨柱を建て込む状況を示す側面図)である。
図4】建物の構築手順の説明図(その2、所定節の外周鉄骨柱に仮設梁および垂直養生ネットを取り付けた状態を示す側面図)である。
図5】建物の構築手順の説明図(その3、作業空間が形成された状態を示す平面図)である。
図6】建物の構築手順の説明図(その4、作業空間内で外周鉄骨梁を取り付けた状態を示す側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、鉄骨系建物を対象とする建物構築方法である。具体的には、外周鉄骨柱の外側に仮設梁を取り付けた後、その仮設柱から垂直養生ネットを垂れ下げて、外周鉄骨柱および垂直養生ネットに囲まれた空間を作業空間として、この作業空間内の残りの鉄骨部材を建て込んで固定する。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る建物1の構築手順のフローチャートである。
建物1は、長手方向に4スパン、短手方向に2スパンの鉄骨造であり(図2参照)、建物1の複数の層ここでは3層を一節として、鉄骨部材10の建方を行う。鉄骨部材10は、建物1の外周に沿って配置された複数の外周鉄骨柱20と、建物1の外周に沿って配置された外周鉄骨梁30と、建物1の内側に配置された内周鉄骨梁40と、を含んで構成される。このうち、今回鉄骨建方を行う、n節の外周鉄骨柱20を外周鉄骨柱20A、n節の外周鉄骨梁30を外周鉄骨梁30A、n節の内周鉄骨梁40を内周鉄骨梁40Aとする。
【0014】
初期状態として、図2に示すように、建物1の(n-1)(nは自然数)節までの鉄骨建方が完了しているものとする。すなわち、(n-1)節までの外周鉄骨柱20、外周鉄骨梁30および内周鉄骨梁40について本締めまで完了している。さらに、鉄骨梁30、40の間には、鋼製のデッキプレート50が敷設されている。また、建物1の外周に沿って、外周鉄骨梁30の上に外周プレキャストコンクリート床51が設置されている。また、(n-1)節の外周鉄骨柱20の頂部には、n節の外周鉄骨柱20Aを溶接するための仮設足場60が取り付けられている(図3(a)、(b)参照)。さらに、この仮設足場60の上端で建物1の外側には、養生ネット61が取り付けられている。
【0015】
ステップS1では、図3(a)、(b)に示すように、n節の外周鉄骨柱20Aを揚重して、この建て込んだ外周鉄骨柱20Aを(n-1)節の外周鉄骨柱20の上に仮固定する。
外周鉄骨柱20Aには、外周鉄骨梁30Aおよび内周鉄骨梁40Aが接合される接合プレート21が上下3段に設けられている。そこで、外周鉄骨柱20Aを建て込む前に、接合プレート21の高さ位置に鉄骨梁30A、40Aの接合作業を行うための仮設足場62を取り付けておく。また、外周鉄骨柱20Aの頂部に、後述の垂直養生ネット63を取り付けるためのブラケット64を取り付けておく。このブラケット64の上端は、外周鉄骨柱20Aの上端よりも高くなっている。
【0016】
ステップS2では、図4(a)、(b)に示すように、n節の外周鉄骨柱20Aのブラケット64同士の間に、建物1の外周に沿って延びる仮設梁65を取り付けて、この仮設梁65およびブラケット64に垂直養生ネット63を取り付ける。この垂直養生ネット63の上端は、ブラケット64の上端に取り付けられており、これにより、n節の外周鉄骨柱20Aの上端より高くなっている。また、垂直養生ネット63の下端は、養生ネット61に重なって、n節の外周鉄骨柱20Aの最下階の床面つまりデッキプレート50よりも低くなっている。
これにより、図5に示すように、外周鉄骨柱20Aおよび垂直養生ネット63に囲まれた作業空間Sが形成される。
【0017】
ステップS3では、図6(a)、(b)に示すように、作業空間S内の残りの鉄骨部材10である外周鉄骨梁30Aおよび内周鉄骨梁40Aを連結して取り付けて、外周鉄骨柱20Aとともに本締めして本固定する。ここで、外周鉄骨梁30Aおよび内周鉄骨梁40Aを取り付ける際、まず、建物1の外周に沿って外周鉄骨梁30Aを取り付けて、その後、建物1の内側に内周鉄骨梁40Aを取り付ける。
続いて、鉄骨梁30A、40Aの間に、図示しない鋼製のデッキプレートを敷設し、その後、外周鉄骨柱20A同士の間に、建物1の外周に沿って外周プレキャストコンクリート床51を設置する。
ステップS4では、上述のステップS1~S3を、建物1の下の節から上の節に向かって繰り返す。
【0018】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)所定の節ごとに、先行して外周鉄骨柱20Aを建て込んで、この外周鉄骨柱20A同士の間に仮設梁65を取付けて、この仮設梁65に垂直養生ネット63を取り付ける。これにより、外周鉄骨柱20Aおよび垂直養生ネット63に囲まれた作業空間Sの安全性を確保でき、この作業空間S内で工具や資材が落下した場合であっても、この落下物が垂直養生ネット63に引っ掛かるので、建物1の外側に落下するのを防止できる。
また、作業空間Sにおいて、建物1の外周に沿って外周プレキャストコンクリート床51を設置したので、この外周プレキャストコンクリート床51により、建て込んだ鉄骨部材10の剛性を高めることができる。また、外周鉄骨柱20Aに他の鉄骨部材(外周鉄骨梁30A、内周鉄骨梁40A)を本固定した後、建物1の外周部に外周プレキャストコンクリート床51を設置することで、外周鉄骨柱20Aと鉄骨梁30A、40Aとの固定作業の施工性を高めることができる。
【0019】
(2)垂直養生ネット63の上端をn節の外周鉄骨柱20Aの上端より高くすることで、垂直養生ネット63を落下防止用の手摺としても利用できる。また、垂直養生ネット63の下端をn節最下階のデッキプレート50の上面よりも低くすることで、工具や資材が作業空間Sから建物外部に落下するのを防止できる。
【0020】
(3)外周鉄骨柱20Aに外周鉄骨梁30Aを取り付けて、建物外周部の鉄骨柱梁架構の精度を確保した後、建物1の内側に複数の内周鉄骨梁40Aを取り付けたので、内周鉄骨梁40Aを取り付ける際に、内周鉄骨梁40Aの取り付け位置を柔軟に調整できるため、鉄骨部材10を高精度で建て込むことができる。
【0021】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0022】
S…作業空間 1…建物 10…鉄骨部材
20…外周鉄骨柱 20A…(n+1)節の外周鉄骨柱 21…接合プレート
30…外周鉄骨梁 30A…(n+1)節の外周鉄骨梁
40…内周鉄骨梁 40A…(n+1)節の内周鉄骨梁
50…デッキプレート 51…外周プレキャストコンクリート床
60…仮設足場 61…養生ネット 62…仮設足場 63…垂直養生ネット
64…ブラケット 65…仮設梁
図1
図2
図3
図4
図5
図6