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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20220825BHJP
   B60C 15/06 20060101ALI20220825BHJP
   B60C 15/00 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
B60C19/00 B
B60C15/06 N
B60C15/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018188135
(22)【出願日】2018-10-03
(65)【公開番号】P2020055457
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】吹田 晴信
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-037235(JP,A)
【文献】特開2017-222294(JP,A)
【文献】特開2016-083814(JP,A)
【文献】特開2013-001223(JP,A)
【文献】特開2002-178724(JP,A)
【文献】特表2016-539047(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0120505(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビードコアと、前記ビードコアのタイヤ径方向外側に延出するビードフィラーと、前記ビードコアから他方のビードコアに延び、前記ビードコアの周りで折り返されたカーカスプライと、を備えるタイヤであって、
前記ビードコア周りで前記カーカスプライを覆うように配設された補強プライと、
前記補強プライの端部のタイヤ径方向外側において、前記折り返されたカーカスプライの折り返し端のタイヤ幅方向外側を覆う第1のパッドと、
前記第1のパッドのタイヤ幅方向外側を覆う第2のパッドと、
前記第2のパッドのタイヤ幅方向外側の少なくとも一部を覆うサイドウォールゴムと、
を備え、
前記第2のパッドと前記サイドウォールゴムとの間に電子部品が設けられており、
前記電子部品は、前記電子部品のタイヤ幅方向内側に配置された保護層としての第1のゴムシートと、前記電子部品のタイヤ幅方向外側に配置された第2のゴムシートとにより被覆されており、
前記第1および第2のゴムシートは、前記サイドウォールゴムよりもモジュラスが高く、かつ前記第2のパッドよりもモジュラスが低いゴムから構成されている、タイヤ。
【請求項2】
タイヤ幅方向断面視において、
前記第2のパッドのタイヤ径方向外側端から、前記折り返されたカーカスプライの折り返し端の近傍部までの、前記第2のパッドのタイヤ幅方向外側表面に沿った距離を基準距離としたとき、
前記電子部品は、前記第2のパッドのタイヤ径方向外側端の位置から、タイヤ径方向内側に向かって、前記基準距離の50%の位置までの範囲内の、前記第2のパッドのタイヤ幅方向外側表面に配置されている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記電子部品は、前記第2のパッドのタイヤ径方向外側端よりタイヤ径方向内側に向かって前記基準距離の40%の位置から、前記基準距離の50%の位置までの範囲内の、前記第2のパッドのタイヤ幅方向外側表面に配置されている、請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記電子部品と前記カーカスプライとのタイヤ幅方向における距離が、前記カーカスプライの厚み以上となるように、前記電子部品が配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が埋設されたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム構造体内にRFID等の電子部品を埋設したタイヤが知られている。このようなタイヤは、タイヤに埋設されたRFIDタグと、外部機器としてのリーダとが通信を行うことにより、タイヤの製造管理、使用履歴管理等を行うことができる。
例えば特許文献1には、異なる2つの物体の境界面に電子部品を配置したタイヤが示されている。この電子部品が配置されている2つの物体の境界面は、カーカスプライの自由縁から延長する面となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-265750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される技術においては、電子部品が配置されている2つの物体の境界面が、カーカスプライの自由縁から延長する面となっているが、この部分は、タイヤが変形した際において、応力および歪が発生しやすい。したがって、この部分に配置された電子部品は、タイヤが変形した際において応力および歪の影響を受けて、電子部品としての機能を保てなくなる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、タイヤ構造体内の応力および歪の影響を受け難い位置に電子部品を配置することにより、埋設された電子部品の機能を保つことができるタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明のタイヤ(例えば、タイヤ1)は、ビードコア(例えば、ビードコア21)と、前記ビードコアのタイヤ径方向外側に延出するビードフィラー(例えば、ビードフィラー22)と、前記ビードコアから他方のビードコアに延び、前記ビードコアの周りで折り返されたカーカスプライ(例えば、カーカスプライ23)と、を備えるタイヤであって、前記ビードコア周りで前記カーカスプライを覆うように配設された補強プライ(例えば、スチールチェーハー31)と、前記補強プライの端部(端部31A)のタイヤ径方向外側において、前記折り返されたカーカスプライの折り返し端(例えば、折り返し端25A)のタイヤ幅方向外側を覆う第1のパッド(例えば、第1のパッド35)と、前記第1のパッドのタイヤ幅方向外側を覆う第2のパッド(例えば、第2のパッド36)と、前記第2のパッドのタイヤ幅方向外側の少なくとも一部を覆うサイドウォールゴム(例えば、サイドウォールゴム30)と、を備え、前記第2のパッドと前記サイドウォールゴムとの間に電子部品(例えば、RFIDタグ40)が設けられている。
【0007】
(2)(1)のタイヤにおいて、タイヤ幅方向断面視において、前記第2のパッドのタイヤ径方向外側端(例えば、第2のパッド36のタイヤ径方向外側端36A)から、前記折り返されたカーカスプライの折り返し端の近傍部(例えば、近傍部36B)までの、前記第2のパッドのタイヤ幅方向外側表面に沿った距離を基準距離としたとき、前記電子部品は、前記第2のパッドのタイヤ径方向外側端の位置から、タイヤ径方向内側に向かって、前記基準距離の50%の位置までの範囲内の、前記第2のパッドのタイヤ幅方向外側表面に配置されていてもよい。
【0008】
(3)(2)のタイヤにおいて、前記電子部品は、前記第2のパッドのタイヤ径方向外側端よりタイヤ径方向内側に向かって前記基準距離の40%の位置から、前記基準距離の50%の位置までの範囲内の、前記第2のパッドのタイヤ幅方向外側表面に配置されていてもよい。
【0009】
(4)(1)~(3)のタイヤにおいて、前記電子部品と前記カーカスプライとのタイヤ幅方向における距離(例えば、距離S)が、前記カーカスプライの厚み(例えば、厚みt)以上となるように、前記電子部品が配置されていてもよい。
【0010】
(5)(1)~(4)のタイヤにおいて、前記電子部品は、前記電子部品のタイヤ幅方向内側に配置された保護層としての第1のゴムシート(例えば、第1のゴムシート431)と、前記電子部品のタイヤ幅方向外側に配置された第2のゴムシート(例えば、第2のゴムシート432)とにより被覆されており、前記第1および第2のゴムシートは、前記サイドウォールゴムよりもモジュラスが高く、かつ前記第2のパッドよりもモジュラスが低いゴムから構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、タイヤ構造体内の応力および歪の影響を受け難い位置に電子部品を配置することにより、埋設された電子部品の機能を維持することが可能なタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係るタイヤのタイヤ幅方向の半断面を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るタイヤの部分拡大断面図である。
図3】本発明の第1実施形態のタイヤに荷重負荷を与えた場合の、歪エネルギーの面内分布シミュレーションの結果を示す図である。
図4】本発明の第1実施形態のタイヤに荷重負荷を与えた場合の、歪エネルギー指数を示すグラフである。
図5】本発明の第1実施形態に係るタイヤの部分拡大断面図である。
図6A】本発明の第2実施形態に係るタイヤにおける、保護部材によって保護された、RFIDタグを示す図である。
図6B図6Aのb-b断面を示す図である。
図6C図6Aのc-c断面を示す図である。
図7】スプリングアンテナ内にゴムを充填しない場合における、RFIDタグをゴムシートで挟み込む前の断面を示す図である。
図8】スプリングアンテナ内にゴムを充填しない場合における、RFIDタグをゴムシートで挟み込んだ後の断面を示す図である。
図9】スプリングアンテナ内にゴムを充填しない場合における、RFIDタグをゴムシートで挟み込んだ後の断面を示す図である。
図10】本発明の第3実施形態に係るタイヤにおける、スプリングアンテナ内にゴムを充填する前のRFIDタグを示す図である。
図11】本発明の第3実施形態に係るタイヤにおける、スプリングアンテナ内にゴムを充填した後のRFIDタグを示す図である。
図12】本発明の第3実施形態に係るタイヤにおける、ゴムシートで挟み込まれる前のRFIDタグを示す図である。
図13】本発明の第3実施形態に係るタイヤにおける、ゴムシートで挟み込まれたRFIDタグを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るタイヤ1のタイヤ幅方向の半断面を示す図である。タイヤの基本的な構造は、タイヤ幅方向の断面において左右対称となっているため、ここでは、右半分の断面図を示す。図中、符号S1は、タイヤ赤道面である。タイヤ赤道面S1は、タイヤ回転軸に直交する面で、かつタイヤ幅方向中心に位置する面である。
ここで、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、図1の断面図における紙面左右方向である。図1においては、タイヤ幅方向Xとして図示されている。
そして、タイヤ幅方向内側とは、タイヤ赤道面S1に近づく方向であり、図1においては、紙面左側である。タイヤ幅方向外側とは、タイヤ赤道面S1から離れる方向であり、図1においては、紙面右側である。
また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、図1における紙面上下方向である。図1においては、タイヤ径方向Yとして図示されている。
そして、タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、図1においては、紙面上側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、図1においては、紙面下側である。
図2、5についても同様である。
【0014】
タイヤ1は、例えばトラック、バス用のタイヤであり、タイヤ幅方向両側に設けられた一対のビード11と、路面との接地面を形成するトレッド12と、一対のビード11とトレッド12との間を延びる一対のサイドウォール13とを備える。
【0015】
ビード11は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤを複数回巻いて形成した環状のビードコア21と、ビードコア21のタイヤ径方向外側に延出している、先細り形状のビードフィラー22とを備える。ビードフィラー22は、ビードコア21の外周を覆う第1ビードフィラー221と、第1ビードフィラー221のタイヤ径方向外側に配置されている第2ビードフィラー222とにより構成されている。第2ビードフィラー222は、後述するインナーライナー29、サイドウォールゴム30よりも高いモジュラスのゴムにより構成されている。そして、第1ビードフィラー221は、第2ビードフィラー222よりもさらに高いモジュラスのゴムにより構成されている。なお、第1ビードフィラー221は、少なくともその一部がビードコア21のタイヤ径方向外側に配置されていれば、ビードコア21の外周を覆っていない態様であってもよい。また、ビードフィラー22は、一つの種類のゴムから形成されていてもよい。すなわち、第1ビードフィラー221と第2ビードフィラー222とに分かれていなくてもよい。
ビードコア21は、空気が充填されたタイヤを、図示しないホイールのリムに固定する役目を果たす部材である。ビードフィラー22は、ビード周辺部の剛性を高め、高い操縦性および安定性を確保するために設けられている部材である。
【0016】
タイヤ1の内部には、タイヤの骨格となるプライを構成するカーカスプライ23が埋設されている。カーカスプライ23は、一方のビードコアから他方のビードコアに延びている。すなわち、一対のビードコア21間を、一対のサイドウォール13およびトレッド12を通過する態様で、タイヤ1内に埋設されている。
図1に示されるように、カーカスプライ23は、一方のビードコアから他方のビードコアに延び、トレッド12とビード11との間を延在するプライ本体24と、ビードコア21の周りで折り返されているプライ折り返し部25とを備える。ここで、プライ折り返し部25の折り返し端25Aは、ビードフィラー22のタイヤ径方向外側端22Aよりもタイヤ径方向内側に位置している。
カーカスプライ23は、タイヤ幅方向に延びる複数のプライコードにより構成されている。また、複数のプライコードは、タイヤ周方向に並んで配列されている。
このプライコードは、金属製のスチールコード、あるいはポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されており、ゴムにより被覆されている。
【0017】
トレッド12において、カーカスプライ23のタイヤ径方向外側には、複数層のスチールベルト26が設けられている。スチールベルト26は、ゴムで被覆された複数のスチールコードにより構成されている。スチールベルト26を設けることにより、タイヤの剛性が確保され、トレッド12と路面の接地状態が良くなる。本実施形態においては、4層のスチールベルト26が設けられているが、積層されるスチールベルト26の枚数はこれに限らない。
【0018】
スチールベルト26のタイヤ径方向外側には、トレッドゴム28が設けられている。トレッドゴム28の外表面には、図示しないトレッドパターンが設けられており、この外表面が、路面と接触する接地面となる。
【0019】
トレッド12のタイヤ幅方向外側付近において、カーカスプライ23と、スチールベルト26およびトレッドゴム28との間の領域には、ショルダーパッド38が設けられている。このショルダーパッド38は、サイドウォール13のタイヤ径方向外側領域まで延出しており、その一部は、後述のサイドウォールゴム30との間で界面を形成している。すなわち、サイドウォール13のタイヤ径方向外側領域において、サイドウォールゴム30のタイヤ幅方向内側に、ショルダーパッド38の一部が存在している。
ショルダーパッド38はクッション性を有するゴム部材からなり、カーカスプライ23とスチールベルト26との間において、クッション機能を発揮する。また、ショルダーパッド38は低発熱性の特性を有するゴムからなるため、サイドウォール13まで延出させることにより、効果的に発熱を抑制することができる。
【0020】
ビード11、サイドウォール13、トレッド12において、カーカスプライ23のタイヤ内腔側には、タイヤ1の内壁面を構成するゴム層としてのインナーライナー29が設けられている。インナーライナー29は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。
【0021】
サイドウォール13において、カーカスプライ23のタイヤ幅方向外側には、タイヤ1の外壁面を構成するサイドウォールゴム30が設けられている。このサイドウォールゴム30は、タイヤがクッション作用をする際に最もたわむ部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。
【0022】
ビード11のビードコア21周りに設けられたカーカスプライ23のタイヤ径方向内側には、カーカスプライ23の少なくとも一部を覆うように補強プライとしてのスチールチェーハー31が設けられている。スチールチェーハー31は、カーカスプライ23のプライ折り返し部25のタイヤ幅方向外側にも延在しており、そのスチールチェーハー31の端部31Aは、プライ折り返し部25の折り返し端25Aよりもタイヤ径方向内側に位置している。
このスチールチェーハー31は、金属製のスチールコードにより構成された金属補強層であり、ゴムにより被覆されている。
【0023】
スチールチェーハー31のタイヤ径方向内側には、リムストリップゴム32が設けられている。このリムストリップゴム32は、タイヤの外表面に沿って配置されており、サイドウォールゴム30と連接している。このリムストリップゴム32とサイドウォールゴム30は、タイヤの外表面を構成しているゴム部材である。
【0024】
そして、スチールチェーハー31の端部31Aのタイヤ径方向外側であって、カーカスプライ23の折り返し部25およびビードフィラー22のタイヤ幅方向外側には、第1のパッド35が設けられている。この第1のパッド35は、少なくともプライ折り返し部25の折り返し端25Aのタイヤ幅方向外側を覆うように設けられている。第1のパッド35のタイヤ径方向外側は、タイヤ径方向外側に向かうほど、先細りとなるように形成されている。
【0025】
さらに、第1のパッド35のタイヤ幅方向外側を覆うように、第2のパッド36が設けられている。より詳細には、スチールチェーハー31の一部、第1のパッド35、第2ビードフィラー222の一部、カーカスプライ23のプライ本体24の一部のタイヤ幅方向外側を覆うように、第2のパッド36が設けられている。
そして、第2のパッド36のタイヤ径方向外側領域におけるタイヤ幅方向外側には、サイドウォールゴム30が配置されており、第2のパッド36のタイヤ径方向内側領域におけるタイヤ幅方向外側には、リムストリップゴム32が配置されている。
換言すると、第2のパッド36は、第1のパッド35等と、タイヤの外表面を構成する部材であるリムストリップゴム32およびサイドウォールゴム30との間に設けられている。
【0026】
ここで、第1のパッド35および第2のパッド36は、これらの部材が接触しているビードフィラー(第2ビードフィラー222)のモジュラスよりも高いモジュラスのゴムにより構成されている。
より詳細には、第2のパッド36は、第2ビードフィラー222よりも高いモジュラスのゴムにより構成されており、第1のパッド35は、第2のパッド36よりもさらに高いモジュラスのゴムにより構成されている。第1のパッド35、第2のパッド36は、カーカスプライ23の折り返し端25Aおよびスチールチェーハー31の端部31Aにおける局所的な剛性の変化点に起因する急激な歪みを緩和する機能を有する。
【0027】
第1のパッド35のタイヤ幅方向内側には、プライ折り返し部25の折り返し端25A付近において、ゴムシート37が配置されている。ゴムシート37は、少なくともプライ折り返し部25の折り返し端25Aをタイヤ幅方向内側から覆うように配置されている。
【0028】
一般に、プライ折り返し部25の折り返し端25Aは、応力が集中しやすい。しかしながら、上述の第1のパッド35、第2のパッド36を設け、さらにゴムシート37を配置することにより、応力の集中を効果的に抑えることが可能となる。
【0029】
本実施形態のタイヤ1には、電子部品としての、RFIDタグ40が埋設されている。
RFIDタグ40は、RFIDチップと、外部機器と通信を行うためのアンテナとを備えた、パッシブ型のトランスポンダであり、外部機器としての図示しないリーダとの間で無線通信を行う。アンテナとしては、コイル状のスプリングアンテナ、板状のアンテナ、棒状の各種のアンテナが用いられる。例えば、フレキシブル基板に対して所定のパターンをプリントすることによって形成したアンテナであってもよい。アンテナは、使用する周波数帯域等に応じて、最適化されたアンテナ長さに設定されている。RFIDチップ内の記憶部には、製造番号、部品番号等の識別情報が格納されている。
【0030】
図2は、図1のタイヤ1における、RFIDタグ40の埋設部周辺を示す拡大断面図である。
図1、2に示されるように、RFIDタグ40は、第2のパッド36とサイドウォールゴム30との間に埋設されている。
【0031】
通常、2つ物体の境界面が、カーカスプライ23の折り返し端25Aから延長する面である場合、その面は歪が生じやすい。また、通信品質を考慮すれば、RFIDタグ40は、できるだけタイヤ1の外表面に近い部分に配置することが好ましい。
【0032】
そこで、本実施形態においては、第2ビードフィラー222と第1のパッド35との境界面よりもタイヤ1の外表面に近い、第2のパッド36とサイドウォールゴム30との境界面にRFIDタグ40を埋設する。
【0033】
これにより、RFIDタグ40は、過度な歪の影響を受けることもなく、その機能を保つことができる。付言すると、RFIDタグ40は、第2ビードフィラー222よりも高いモジュラスのゴムからなる第2のパッド36に保持されるように配置されるため、強固に保持される。
【0034】
なお、第2のパッド36のモジュラスを基準とすると、サイドウォールゴム30は、第2のパッド36の0.4~0.6倍のモジュラスとすることが好ましい。また、第1のパッド35は、第2のパッド36の1.1倍~1.2倍のモジュラスとすることが好ましい。また、第2ビードフィラー222は第2のパッドの0.7~0.8倍のモジュラスとすることが好ましい。このようなモジュラスとすることで、タイヤとしての柔軟性とビード11付近の剛性のバランスを保つことができる。
なお、モジュラスは、JIS K6251:2010の「3.7 所定伸び引張り応力(stress at a given elongation),S」に準拠して測定された、23℃の雰囲気下における100%伸長モジュラス(M100)を指す。
【0035】
図3は、本実施形態のタイヤ1をリムに組み付け、100%荷重負荷を与えた場合の、歪エネルギーの面内分布シミュレーションの結果を示す図である。
図3に示される拡大断面図においては、歪エネルギーの大きさに応じて、領域を5つに分けて表示している。ここで、歪エネルギーが最も高い領域はレベル5、歪エネルギーが高い領域はレベル4、歪エネルギーがやや下がる領域はレベル3、歪エネルギーがさらに下がる領域はレベル2、歪エネルギーが最も下がる領域はレベル1としている。図3においては、太い点線を境界に、領域を分けて表示している。
【0036】
第2のパッド36とサイドウォールゴム30との境界面は、概ねレベル1の領域となっており、歪エネルギーが少なく、RFIDタグ40を配置する上で、非常に好ましい領域となっている。
【0037】
そして、RFIDタグ40は、さらに好ましくは、第2のパッド36とサイドウォールゴム30との境界面のうち、タイヤ径方向外側の所定領域に配置される。
この点について、図4のグラフを用いて説明する。
【0038】
図4は、本実施形態のタイヤ1をリムに取り付け、100%荷重負荷を与えた場合の、歪エネルギー指数を示すグラフである。
このグラフのX軸は、第2のパッド36のタイヤ径方向外側端36Aから、カーカスプライ23の折り返し端25Aの近傍部36Bまでの、前記第2のパッドのタイヤ幅方向外側表面に沿った距離を基準距離(100%)とした場合の距離指数であり、Y軸は、第2のパッド36のタイヤ幅方向外側表面における、カーカスプライ23の折り返し端25Aの近傍部36Bの歪エネルギーを100%としたときの歪エネルギー指数である。
ここで、カーカスプライ23の折り返し端25Aの近傍部36Bは、図2に示すように、タイヤ幅方向断面視において、カーカスプライ23のプライ折り返し端25Aから、プライ折り返し部25の延出方向と直交する方向に引いた線(図2においては、点線で示されている)と、第2のパッド36のタイヤ幅方向外側表面を示す線との交点によって規定されている。近傍部36Bは、タイヤ幅方向断面視において、第2のパッド36のタイヤ幅方向外側表面における、カーカスプライ23のプライ折り返し端25Aと最も近い点、すなわちプライ折り返し端の最近点であってもよい。
【0039】
このグラフから明らかなように、距離指数が50%を超えると、歪エネルギー指数が上昇してくる。よって、RFIDタグ40は、距離指数が0%~50%までの範囲内に配置されることが好ましい。
【0040】
さらに詳細には、歪エネルギー指数は、距離指数が40%~50%の範囲内のときにおいて最も低い値を示す。よって、RFIDタグ40は、図5の拡大断面図に示されるような位置、すなわち、距離指数が40%~50%の範囲内に配置されることがさらに好ましい。
【0041】
また、通信品質を考慮すると、RFIDタグ40は、金属製の部品から離した方がよい。よって、カーカスプライ23が金属製の場合は、図5に示されるように、カーカスプライ23と、RFIDタグ40とのタイヤ幅方向の距離Sが、少なくともカーカスプライ23の厚みt以上となるように、RFIDタグ40が配置されることが好ましい。
【0042】
ここで、RFIDタグ40は、タイヤの製造工程において、加硫工程の前に取り付けられている。本実施形態においては、被覆ゴムが加硫される前の第2のパッド36またはサイドウォールゴム30に、RFIDタグ40を取り付ける。このとき、第2のパッド36およびサイドウォールゴム30は加硫前の生ゴムの状態であるため、その粘着性を利用して、RFIDタグ40を第2のパッド36またはサイドウォールゴム30に貼り付けてもよい。あるいは、粘着性が低い場合などにおいては、接着剤等を用いて貼り付けてもよい。RFIDタグ40を貼り付けた後、RFIDタグ40を第2のパッド36とサイドウォールゴム30によって挟み込む。その後、RFIDタグ40を含む各構成部材が組み付けられた生タイヤを、加硫工程において加硫し、タイヤを製造する。
【0043】
このように、本実施形態においては、タイヤ製造時において、生ゴム状態の第2のパッド36またはサイドウォールゴム30にRFIDタグ40を貼り付けることができるため、タイヤの製造工程におけるRFIDタグ40の組み付け作業が容易である。特に、第2のパッド36は、生ゴム状態であってもある程度の剛性を有しているため、RFIDタグ40の取り付け作業が容易である。
【0044】
なお、タイヤに埋設するRFIDタグ40は、後述する図6においてRFIDタグ40として示されるように、アンテナを含めると、長手方向を有することが多い。このようなRFIDタグ40は、その長手方向が、タイヤの周方向に対して接線の方向、すなわち図1~2の断面図において紙面に直交する方向となるように、タイヤ1に埋設することが好ましい。このように埋設することで、タイヤが変形したときにおいても、RFIDタグ40に応力がかかりにくい。
【0045】
なお、RFIDタグ40は、ゴム等の保護部材により被覆された状態で、第2のパッド36とサイドウォールゴム30との間に挟んでもよいが、保護部材で被覆することなく、直接第2のパッド36とサイドウォールゴム30との間に挟んでもよい。
【0046】
なお、本実施形態においては、電子部品として、RFIDタグ40がタイヤに埋設されているが、タイヤに埋設される電子部品は、RFIDタグに限らない。例えば、無線通信を行うセンサ等の各種の電子部品であってもよい。また、電子部品は、電気信号の送受信等、電気的な情報を扱うことから、近傍に金属部品が存在することにより性能が低下する可能性がある。また、電子部品は、過度な応力がかかることにより、破損する可能性がある。よって、種々の電子部品をタイヤに埋設する場合においても、本発明の効果を得ることができる。例えば電子部品は、圧電素子や、歪センサであってもよい。
【0047】
本実施形態のタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0048】
(1)本実施形態に係るタイヤ1は、第2のパッド36とサイドウォールゴム30との間にRFIDタグ40が設けられている。
これにより、RFIDタグ40は、過度な歪の影響を受けることもなく、その機能を保つことができる。
【0049】
(2)本実施形態に係るタイヤ1は、第2のパッド36のタイヤ径方向外側端36Aから、折り返されたカーカスプライ23の折り返し端の近傍部36Bまでの、第2のパッド36のタイヤ幅方向外側表面に沿った距離を基準距離(100%)としたとき、RFIDタグ40は、第2のパッド36のタイヤ径方向外側端の位置から、タイヤ径方向内側に向かって、基準距離の50%の位置までの範囲内の、第2のパッド36のタイヤ幅方向外側表面に配置されている。
これにより、RFIDタグ40は、より歪の影響を受けにくくなる。
【0050】
(3)本実施形態に係るタイヤ1は、RFIDタグ40は、第2のパッド36のタイヤ径方向外側端36Aよりタイヤ径方向内側に向かって基準距離の40%の位置から、基準距離の50%の位置までの範囲内の、第2のパッドのタイヤ幅方向外側表面に配置されている。
これにより、RFIDタグ40は、さらに歪の影響を受けにくくなる。
【0051】
(4)本実施形態に係るタイヤ1は、RFIDタグ40とカーカスプライ23とのタイヤ幅方向における距離Sが、カーカスプライ23の厚みt以上となるように、前記電子部品が配置されている。
これにより、カーカスプライ23が金属製の場合であっても、通信品質を確保することができる。
【0052】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るタイヤについて、図6A~6Cを参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、また詳細な説明を省略する。
【0053】
図6Aは、ゴムシートにより構成される保護部材43によって被覆された、RFIDタグ40を示す図である。図6Aでは、RFIDタグ40は後述するゴムシート431に覆われて隠れている。図6B図6Aのb-b断面図、図6C図6Aのc-c断面図である。
本実施形態においては、図6A~6Cに示されるように、RFIDタグ40は保護部材43により被覆されている。
【0054】
RFIDタグ40は、RFIDチップ41と、外部機器と通信を行うためのアンテナ42とを備えている。アンテナ42としては、コイル状のスプリングアンテナ、板状のアンテナ、棒状の各種のアンテナが用いられる。例えば、フレキシブル基板に対して所定のパターンをプリントすることによって形成したアンテナであってもよい。通信性をおよび柔軟性を考慮すると、コイル状のスプリングアンテナが最も好ましい。アンテナは、使用する周波数帯域等に応じて、最適化されたアンテナ長さに設定されている。
【0055】
保護部材43は、RFIDタグ40を挟み込んで保護する2枚のゴムシート431、432により構成されている。
【0056】
保護部材43は、例えば所定のモジュラスのゴムにより構成されている。
ここで、モジュラスは、JIS K6251:2010の「3.7 所定伸び引張り応力(stress at a given elongation),S」に準拠して測定された、23℃の雰囲気下における100%伸長モジュラス(M100)を指す。
【0057】
保護部材43に採用するゴムとしては、少なくともサイドウォールゴム30よりもモジュラスが高いゴムを用いる。例えば、サイドウォールゴム30よりもモジュラスが高く、かつ第2のパッド36よりもモジュラスが低いゴムを用いる。
【0058】
例えば、保護部材43に用いられるゴムとしては、サイドウォールゴム30のモジュラスを基準として、その1.1倍~1.8倍のモジュラスのゴムを用いることがより好ましい。このとき、第2のパッド36のゴムとしては、サイドウォールゴムの1.6~3倍のモジュラスのゴム、例えば2倍程度のモジュラスのゴムを用いてもよい。
なお、RFIDタグ40の保護の強化を重視すれば、保護部材43に用いられるゴムとして、第2のパッド36よりも高いモジュラスのゴムを採用してもよい。
【0059】
なお、図1~2に示されるように、RFIDタグ40は、第2のパッド36とサイドウォールゴム30の間の領域に配置されている。そこで、保護部材43のモジュラスを、サイドウォールゴム30よりもモジュラスが高く、かつ第2のパッド36よりもモジュラスが低い値に設定することにより、タイヤが変形した場合において、RFIDタグ40埋設部においてゴム構造体内に過度な応力が発生することを防ぐことができる。すなわち、応力の発生を抑制することができる。
【0060】
また、保護部材43を、短繊維フィラー混合ゴムにより構成してもよい。短繊維フィラーとしては、例えば、アラミド短繊維やセルロース短繊維といった有機短繊維、アルミナ短繊維等のセラミックス短繊維やガラス短繊維といった無機短繊維のような、絶縁性の短繊維を用いることができる。ゴムにこのような短繊維フィラーを混合することにより、ゴムの強度を高めることができる。
また、保護部材43として、加硫後の状態のゴムシートを用いてもよい。加硫後の状態のゴムシートは、生ゴムのように塑性変形しないため、RFIDタグ40を適切に保護することができる。
【0061】
また、保護部材43として、ポリエステル繊維やポリアミド繊維等による有機繊維層を設けてもよい。2枚のゴムシート431、432に、有機繊維層を埋設することも可能である。
【0062】
このように、保護部材43を、2枚のゴムシートによって構成すれば、保護部材43を含むRFIDタグ40を薄く形成できるので、タイヤ1に埋設する上で好適である。また、加硫前のタイヤ1の構成部材にRFIDタグ40を組み付けるときにおいて、ゴムシートによって被覆されたRFIDタグ40は、非常に簡便に装着することができる。
例えば、加硫前の第2のパッド36、サイドウォールゴム30といった部材の所望の位置に、ゴムシートによって被覆されたRFIDタグ40を、生ゴムの粘着性を利用して適切に貼り付けることができる。また、ゴムシートも加硫前の生ゴムとすることにより、ゴムシート自身の粘着性も用いて、より簡便に貼り付けることができる。
【0063】
ただし、保護部材43は、2枚のゴムシートによって構成される態様に限らず、種々の態様を採用することができる。例えば、保護部材を構成するゴムシートは、RFIDタグ40の少なくとも一部を覆っていれば、製造工程における作業性の向上や応力緩和などの効果が得られる。
また、例えば、RFIDタグ40の全周に亘って1枚のゴムシートを巻き付ける構成や、RFIDタグ40の全周に亘って、粘度の高いポッティング剤の態様の保護部材を付着させた構成であってもよい。このような構成であっても、RFIDタグ40を適切に保護することができる。
【0064】
なお、保護部材43に被覆されたRFIDタグ40は、その長手方向が、タイヤの周方向に対して接線の方向、すなわち図1~2の断面図において紙面に直交する方向となるように、タイヤに埋設されている。また、ゴムシート431、432は、タイヤ幅方向に並ぶような態様で、タイヤに埋設される。すなわち、製造工程において、ゴムシート431、432のいずれか一方の一面が、加硫前のタイヤの構成部材、例えば第2のパッド36に貼り付けられる。
このような態様とすることで、タイヤが変形したときにおいても、RFIDタグ40に応力がかかりにくい。また、製造工程において、保護部材43に被覆されたRFIDタグ40を取り付ける作業が簡便となる。
【0065】
本実施形態に係るタイヤによれば、上記(1)~(4)に加えて以下の効果を奏する。
【0066】
(5)本実施形態においては、保護部材43が、サイドウォールゴム30よりもモジュラスが高く、かつ第2のパッド36よりもモジュラスが低いゴムから構成されており、この保護部材43により被覆されたRFIDタグ40が、タイヤに埋設されている。
よって、タイヤ内のゴムのモジュラスが段階的に変化するため、タイヤが変形した場合において、RFIDタグ40埋設部においてゴム構造体内に過度な応力が発生することを防ぐことができる。
【0067】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係るタイヤについて、図7~13を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、第2実施形態と同じ構成については、同じ符号を付し、また詳細な説明を省略する。
本実施形態は、RFIDタグ40のアンテナが、コイル状のスプリングアンテナである場合に特に好適な実施形態である。
【0068】
本実施形態のRFIDタグ40は、アンテナとして、通信性および柔軟性の高いコイル状のスプリングアンテナ421が用いられている。スプリングアンテナ421は、使用する周波数帯域等に応じて、最適化されたアンテナ長さに設定されている。
【0069】
本実施形態においては、保護部材43を構成する2枚のゴムシート431、432でRFIDタグ40を挟み込む前に、スプリングアンテナ421内にゴムを配置する。より好ましくは、空気がなるべく残らないように、スプリングアンテナ内にゴムを充填する。図7~13を用いて、その工程およびその工程を採用する理由を説明する。
【0070】
まず、図7図9を用いて、参考例として、スプリングアンテナ421内にゴムを充填しない場合における、RFIDタグ40周辺の状態について説明する。図7は、RFIDタグ40をゴムシート431、432で挟み込む前の、スプリングアンテナ421、ゴムシート431、432の断面を示す図である。図8は、RFIDタグ40をゴムシート431、432で挟み込んだ後の、スプリングアンテナ421、ゴムシート431、432の断面を示す図である。
【0071】
図8に示されるように、この参考例においては、スプリングアンテナ421内に予めゴムが充填されていないため、ゴムシート431、432で挟み込んだ後において、スプリングアンテナ421内に空気45がある程度残ってしまう場合がある。このように空気が残ってしまうと、ゴムシート431、432とスプリングアンテナ421との一体性が不十分となり、タイヤが変形したときに、ゴムの動きにスプリングアンテナ421が追従せず、スプリングアンテナ421を有するRFIDタグ40が破損するおそれがある。
【0072】
なお、ここではゴムシート431、432として、加硫前の生ゴムを使用している。よって、ゴムシート431、432を両側から押しつけることにより、図8に示されるように、スプリングアンテナ内にゴムシート431、432がある程度はめり込んでいる。しかしながら、スプリングアンテナ内が完全に埋まるまでゴムシート431、432をめり込ませるためには、非常に多くの時間と手間がかかる。
【0073】
そして、仮に時間をかけてスプリングアンテナ内が埋まるまでゴムシートをめり込ませた場合であっても、図9に示されるように、スプリングアンテナ421の外周部と、ゴムシート431、432の外表面との距離Lが非常に短くなる。また、その距離Lを安定させることは困難であり、局所的に薄い部分が発生し得る。よって、ゴムシート431、432によるRFIDタグ40の保護が不十分となり、加硫時において、ゴムシート431、432が破損する可能性がある。
【0074】
そこで、本実施形態においては、図10~13に示されるように、ゴムシート431、432でRFIDタグ40を挟み込む前に、スプリングアンテナ421内にゴムを配置する。より好ましくは、空気がなるべく残らないように、スプリングアンテナ内にゴムを充填する。なお、図10~13の右側に示す図は、スプリングアンテナ421およびその周囲の横断面を示す図である。
【0075】
図10は、スプリングアンテナ421内にゴム46を充填する前の状態を示す図、図11は、スプリングアンテナ421内にゴム46を充填した後の状態を示す図である。
ゴム46は、スプリングアンテナ421の外周面と略同じ外径となるように埋め込まれる。そして、スプリングアンテナ421の外周面からゴム46がはみ出ている場合には、その部分を拭き取って除去することが好ましい。すなわち、ゴム46の外周面は、スプリングアンテナ421の外周面と略同一面となるように成形されることが好ましい。
なお、スプリングアンテナ421内にゴム46を充填すると共に、スプリングアンテナ421の外周をゴム46で薄く包み込んでもよい。一方、スプリングアンテナ421をゴム46によって厚く包み込んでしまうと、スプリングアンテナ421の柔軟性が損なわれる上に、RFIDタグ40を挟み込んだ後のゴムシート431、432により形成される幅方向の寸法が大きくなってしまうため、好ましくない。
なお、スプリングアンテナ421の内周面と略同じ外径となるように、ゴム46を埋め込んでもよい。ゴム46の外周部は、スプリングアンテナ421の内周面~外周面の範囲内に位置していることが望ましい。
【0076】
ここで、スプリングアンテナ421の柔軟性を確保するために、ゴム46としては、柔軟性を有するゴムを用いる。但し、作業性等を考慮して、ゴム46として、ゴムシート431、432よりも高いモジュラスのゴムを用いることが好ましい。
なお、スプリングアンテナ421内に配置するゴム46としては、好ましくは未加硫のゴムを用いる。ゴム46、ゴムシート431、432を未加硫のゴムとし、同時に加硫することにより、ゴム46、ゴムシート431、432、スプリングアンテナ421の一体性が高まる。また、ゴム46、ゴムシート431、432は、同種のゴムとすることがより好ましい。
なお、スプリングアンテナ421の柔軟性を重視して、ゴム46として、ゴムシート431、432よりも低いモジュラスのゴムを用いてもよい。また、略同一のモジュラスのゴム、同じ材質のゴムを用いてもよい。
なお、スプリングアンテナ421内に配置するゴム46として、加硫後のゴムを用いてもよい。また、ゴム系接着剤、ゴム系充填剤などを用いることも可能である。柔軟性を確保しつつ、スプリングアンテナ421内に空気をなるべく残らないようにすることを考慮して、各種のゴム系材料を採用することができる。
ゴム46の配置作業としては、各種の方法が採用可能であるが、例えば、注射器を用いてスプリングアンテナ421内にゴムを注入することも可能である。この場合、注射器を用いて、設定された適切な量のゴム46を充填してもよい。また、ゴム46を多めに充填後、スプリングアンテナ421の外周からはみ出た部分を拭き取ってもよい。
【0077】
図12は、スプリングアンテナ421にゴム46が充填されたRFIDタグ40を、ゴムシート431、432で挟み込む前の状態を示す図、図13は、ゴムシート431、432で挟み込んだ後の状態を示す図である。
【0078】
図13に示されるように、本実施形態によれば、スプリングアンテナ421内に予めゴム46が充填されていたため、ゴムシート431、432の間に空気溜まりが存在していない。よって、空気溜まりを気にしなくてもよいため、ゴムシート431、432でRFIDタグ40を挟み込む工程も簡便となる。
また、スプリングアンテナ421内にゴム46が配置されていることにより、スプリングアンテナ421、ゴム46、ゴムシート431、432の一体性が高まり、タイヤが変形したときに、ゴムの動きにスプリングアンテナ421が追従する。よって、スプリングアンテナ421を有するRFIDタグ40の耐久性も向上する。
【0079】
また、本実施形態によれば、スプリングアンテナ421の外周部と、ゴムシート431、432の外表面との距離Lが安定する。すなわち、この距離Lとして、ゴムシート431、432の肉厚に近い距離が概ね確保される。よって、RFIDタグ40は、ゴムシート431、432によって十分保護される。
本実施形態においてゴムシート431、432で挟み込まれたRFIDタグ40は、第2のパッド36等に配設され、その後生タイヤは加硫される。
【0080】
本実施形態に係るタイヤによれば、上記(1)~(5)に加えて以下の効果を奏する。
【0081】
(6)本実施形態においては、通信機能を有する電子部品としてのRFIDタグ40のスプリングアンテナ421内にゴム46を配置する工程と、ゴム46が配置されたスプリングアンテナ421を有するRFIDタグ40を、ゴムシート431、432で挟み込む工程と、ゴムシート431、432で挟み込まれたRFIDタグ40を、タイヤ1に配設する配設工程と、を備える。
これにより、スプリングアンテナ421内に空気45が残ってしまうことがない。また、空気溜まりを気にしなくてもよいため、ゴムシート431、432でRFIDタグ40を挟み込む作業も簡便となる。
また、スプリングアンテナ421の外周部と、ゴムシート431、432の外表面との距離Lが安定するため、RFIDタグ40は、ゴムシート431、432によって十分保護される。本実施形態のタイヤように、RFIDタグ40が第2のパッド36とサイドウォールゴム30との間に埋設されている態様の場合、すなわち、タイヤの外表面に近い部分に埋設されている場合、このような空気溜まり対策、保護強化対応は特に有効である。
【0082】
なお、本発明のタイヤは、乗用車、ライトトラック、トラック、バス等の各種タイヤとして採用することができるが、特にトラック、バス等のタイヤとして好適である。
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
1…タイヤ
11…ビード
12…トレッド
13…サイドウォール
21…ビードコア
22…ビードフィラー
23…カーカスプライ
24…プライ本体
25…プライ折り返し部
25A…折り返し端
26…スチールベルト
27…キャッププライ
28…トレッドゴム
29…インナーライナー
30…サイドウォールゴム
31…スチールチェーハー
31A…スチールチェーハーの端部
32…リムストリップゴム
35…第1のパッド
36…第2のパッド
36A…第2のパッドのタイヤ径方向外側端
36B…近傍部
37…ゴムシート
40…RFIDタグ
41…RFIDチップ
42…アンテナ
421…スプリングアンテナ
43…保護部材
431、432…ゴムシート
46…ゴム
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13