(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】木質部材接合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/61 20060101AFI20220825BHJP
【FI】
E04B1/61 502L
E04B1/61 505Z
(21)【出願番号】P 2018227754
(22)【出願日】2018-12-05
【審査請求日】2021-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】相馬 智明
(72)【発明者】
【氏名】森田 仁彦
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-119436(JP,A)
【文献】特開2008-297712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/10
E04B 1/26
E04B 1/58
E04B 1/61
E04B 2/56
E04B 5/02
E04C 2/00
F16B 15/00
F16B 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CLTと木質部材とを接合具を用いて接合する木質部材接合構造であって、
前記接合具は、ビス、釘、またはボルトであり、
前記CLTの板厚方向の外周側面と前記木質部材との間に接合面が形成され、
前記接合具は、前記CLTの表裏面と前記接合面の双方に直交する仮想直交平面に対して角度をつけて、前記接合面を跨いで貫入され
、
前記接合具は、第1接合具と第2接合具を備え、
前記第1接合具と前記第2接合具は、ともに前記仮想直交平面の一方の側から前記仮想直交平面を挟んだ他方の側へ向かうように貫入され、
前記第1接合具と前記第2接合具は、前記仮想直交平面に直交する方向と、前記板厚方向の各々から見た場合に、前記接合面近傍で互いに交差して見えるように、前記CLTと前記木質部材に貫入され、
前記接合具は、更に、第3接合具と第4接合具を備え、
前記第3接合具と前記第4接合具は、ともに前記仮想直交平面の前記他方の側から前記一方の側へ向かうように、かつ、前記仮想直交平面に直交する方向と、前記板厚方向の各々から見た場合に、前記接合面近傍で互いに交差して見えるように、前記CLTと前記木質部材に貫入されていることを特徴とする木質部材接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CLTと木質部材との接合部を含む木質部材接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、木造の建物を施工するに際し、木製の板材同士を、あるいは木製の板材と床、柱や梁等の他の部材とを、接合することが行われている。
例えば、特許文献1には、構造用合板等の床板を、断熱材を介して大引に接合する方法が開示されている。
【0003】
木製の板材としては、CLT(Cross Laminated Timber、直交集成板)が特に近年、広く使用されている。CLTは、ラミナと呼ばれるひき板を水平面内に並べた層(プライ)を、板の繊維方向が直交するように積層、接着した、板材である。CLTは、構造躯体として建物を支えると共に、断熱性や遮炎性、遮熱性、遮音性等の様々な効果が期待できる。
例えば、特許文献2には、プライやラミナをずらして配置させてCLTの側面に凹凸を設け、CLT同士をこの凹凸を嵌合させて接合することが開示されている。
特許文献2のCLTは、CLT同士を、側面に設けられた凹凸を嵌合させることにより接合するため、凹凸の形成に高い精度を要する、複雑な構造となっている。このような構造に依らずに、板材同士を簡易かつ強固に接合しようとすると、例えば特に
図14(b)を用いて次に説明するように、板材の厚さ方向から平面視した際に部材間の接合面に対して直交する方向から、釘やビス等を斜め打ちして板材同士を接合するのが一般である。
【0004】
図14(b)は、従来の板材同士の、直交方向からの斜め打ちによる接合構造の平面図である。
図14(a)は、
図14(b)の紙面上方向から視た際の側面図であり、
図14(c)は、
図14(b)の紙面右方向から視た際の側面図である。
図14の接合構造100においては、2枚の板材101の外周側面101bが当接され、この外周側面101bを接合面101bとして、ビス102により接合されている。
図14(a)、(b)において左側に位置する板材101Aの表裏面101aから埋設されているビス102Aは、板材101の厚さ方向Zに対して角度をつけて斜めに、接合面101bと交差するようにねじ込まれて、右側に位置する板材101Bに先端102aが位置するように設けられている。また、右側に位置する板材101Bの表裏面101aから埋設されているビス102Bは、板材101の厚さ方向Zに対して角度をつけて斜めに、接合面101bと交差するようにねじ込まれて、左側に位置する板材101Aに先端102aが位置するように設けられている。
いずれのビス102も、
図14(b)のように板材101の厚さ方向Zから平面視した際に部材間の接合面101bに対して直交する方向Xから、厚さ方向Zに対して角度をつけて斜め打ちされている。これにより、特に
図14(b)、(c)に示されるように、ビス102は、板材101の表裏面101aと接合面101bの双方に直交する平面OPと略平行な平面内に位置するように設けられている。
特許文献3には、
図14のような、従来の直交方向からの斜め打ちによる接合構造が開示されている。
【0005】
特に地震が多発する地域等においては、地震時の接合面におけるせん断変形を極力抑えたいという要請がある。したがって、上記のような従来の直交方向からの斜め打ちによる接合構造よりも、更に強固に接合可能な、木質部材接合構造が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-283388号公報
【文献】特開2017-119436号公報
【文献】特開2001-254462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、CLTと木質部材を強固に接合可能な、木質部材接合構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、CLTと木質部材との木質部材接合構造として、特殊な連結金物を使用することなく、CLTの外周側面と木質部材を突き合わせた後、その接合面と交差するように、線状接合具を接合面に対して立体的に斜め方向から打ち込むことで、接合面にせん断力が加わった際、線状接合具に引張と圧縮の両方向にせん断に対する抵抗軸力が発生する。このため、従来の線状接合具のせん断抵抗のみに頼る場合に比べ、せん断抵抗力が増大され、CLTと木質部材を強固に接合できる点に着眼して、本発明に至った。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。すなわち、本発明は、CLTと木質部材とを接合具を用いて接合する木質部材接合構造であって、前記接合具は、ビス、釘、またはボルトであり、前記CLTの板厚方向の外周側面と前記木質部材との間に接合面が形成され、前記接合具は、前記CLTの表裏面と前記接合面の双方に直交する仮想直交平面に対して角度をつけて、前記接合面を跨いで貫入されていることを特徴とする木質部材接合構造を提供する。
上記のような構成によれば、ビス、釘、またはボルトである接合具は、CLTの外周側面と木質部材との接合面と、CLTの表裏面との、双方に直交する仮想直交平面に対して角度をつけて、接合面を跨いで貫入される。すなわち、接合具が、CLTの厚さ方向からCLTを視た際に、接合面に対して直交する方向に対して角度をつけて、斜め方向に貫入されている。このため、接合具の引張軸力と圧縮軸力によって接合面でのせん断抵抗力が増大される。したがって、CLTと木質部材を強固に接合することができる。
【0009】
本発明の一態様においては、前記接合具は、第1接合具と第2接合具を備え、前記第1接合具と前記第2接合具は、前記接合面近傍で互いに交差するように、前記CLTと前記木質部材に貫入されていることを特徴とする。
上記のような構成によれば、第1接合具と第2接合具は、接合面近傍で互いに交差するように、CLTと木質部材に貫入されている。このため、一方の接合具が負担する引張軸力に対して、他方の接合具が圧縮軸力を負担し、接合面に沿ったせん断抵抗力を高めることができる。したがって、CLTと木質部材を強固に接合することができる。
【0010】
本発明の別の態様においては、前記接合具は、更に、第3接合具と第4接合具を備え、前記第1接合具と前記第2接合具は、ともに前記仮想直交平面の一方の側から前記仮想直交平面を挟んだ他方の側へ向かうように貫入され、前記第3接合具と前記第4接合具は、ともに前記仮想直交平面の前記他方の側から前記一方の側へ向かうように、かつ、前記接合面近傍で互いに交差するように、前記CLTと前記木質部材に貫入されている。
上記のような構成によれば、第1接合具と第2接合具は、ともにCLTと木質部材との接合面とCLTの表裏面の双方に直交する仮想直交平面の一方の側から仮想直交平面を挟んだ他方の側へ向かうように、第3接合具と第4接合具は、ともに仮想直交平面の他方の側から一方の側へ向かうように、CLTと木質部材に貫入されている。すなわち、仮想直交平面に直交する方向においては、第1接合具と第2接合具と、第3接合具と第4接合具とが、互いに向かい合うように設けられている。このため、仮想直交平面に直交する方向において生じ得る面内方向分力、面外方向分力は、第1及び第2接合具と、第3及び第4接合具が組み合わせられることで相殺され、CLTと木質部材の分離や、面外の変形を効果的に抑制できる。
更に、第1接合具と第2接合具と同様に、第3接合具と第4接合具は、接合面近傍で互いに交差するように、CLTと木質部材に貫入されている。このため、第3接合具と第4接合具は、第1接合具と第2接合具と同様に、一方の接合具が負担する引張軸力に対して、他方の接合具が圧縮軸力を負担し、接合面に沿ったせん断抵抗力を高めることができる。
以上の効果が相乗し、CLTと木質部材を強固に接合することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、CLTと木質部材を強固に接合可能な、木質部材接合構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の各実施形態における木質部材接合構造が適用された建物の模式的な斜視図である。
【
図2】本発明の各実施形態において使用されるCLTの斜視図である。
【
図3】本発明の第1形態におけるCLTと木質部材との接合面を含む木質部材接合構造の部分斜視図である。
【
図4】第1実施形態における木質部材接合構造の見下ろし平面図である。
【
図5】第1実施形態における木質部材接合構造の側面図である。
【
図6】第1実施形態の木質部材接合構造の接合部実験における試験体一覧である。
【
図7】第1実施形態の木質部材接合構造の接合部実験における要素試験体の説明図である。
【
図8】
図7に示す要素試験体を用いた接合部実験に使用した実験装置の説明図である。
【
図10】木質部材接合構造の接合部実験で得られた各試験体の初期剛性と最大耐力の比較表である。
【
図11】木質部材接合構造の接合部実験で得られた各試験体の荷重-接合面での相対すべり変位量関係である。
【
図12】本発明の第2実施形態に関する木質部材接合構造の見下ろし平面図である。
【
図13】第2実施形態に関する木質部材接合構造の側面図である。
【
図14】従来の木質部材同士の接合構造の平面図と側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、CLTと木質部材との接合方法として、CLTの外周側面と木質部材を突き合わせた後、その接合面と交差するように、接合面に対して、接合具を立体的に斜め方向から打ち込んだ木質部材接合構造である。第1実施形態は、CLT同士、またはCLTと他の木質部材による床板-床板との接合構造である。また、第2実施形態は、CLT同士、またはCLTと他の木質部材による壁板-床板との接合構造である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、以下に説明する各実施形態における、木質部材接合構造が適用された建物の模式的な斜視図である。
建物1は、二階建ての建物である。一階1Fは、コンクリートにより形成された基礎(または床を含む基盤)2上に、CLTの壁3が設けられて形成されている。二階2Fは、一階1Fを構成する壁3の上にCLTによって床4が設けられ、その上に更にCLTの壁3が設けられて形成されている。
第1実施形態としては、A矢視部分として示されている部分に相当する、CLT同士や、CLTと他の板材を接合して壁3や床4を構築する際の接合構造を説明する。また、第2実施形態としては、B矢視部分として示されている部分に相当する、CLTを壁3とした際に、これを例えば床4に接合するような、CLTを他の木質部材に垂直に接合する際の接合構造を説明する。
【0014】
図2は、CLTの斜視図である。
CLT(Cross Laminated Timber、直交集成板)10は、ラミナ11と呼ばれるひき板を水平面内に並べて層(プライ12)を形成し、このプライ12を、ラミナ11の繊維方向が直交するように積層、接着した、板材である。
CLT10は、長さ方向に延在する辺と幅方向に延在する辺を外輪郭とする2つの表裏面10a、10cと、厚さ方向(板厚方向)に延在する辺を外輪郭として含む4つの外周側面10bを備えている。
【0015】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態として、
図1にA矢視部分として示されている、CLT10同士や、CLT10と他の板材を接合して壁3や床4を構築する際の接合構造20を説明する。
図3(a)は、本実施形態における木質部材接合構造20の斜視図であり、
図3(b)は
図3(a)のD矢視部分の拡大図である。
図4は、
図3(b)を方向Zから視た平面図である。
図5(a)、(b)は、それぞれ、
図3(b)、
図4を方向Zにそれぞれ直交する方向Y、方向Xから視た側面図である。特に
図4、
図5においては、CLT10内部に埋設された接合具22も実線で示されている。
本実施形態の木質部材接合構造20においては、CLT10の接合対象となる木質部材21は板材であり、これは例えばCLTであってよいし、他の種類の木質の板材であってもよい。木質部材21は、CLT10と同様に、長さ方向に延在する辺と幅方向に延在する辺を外輪郭とする2つの表裏面21aと、厚さ方向に延在する辺を外輪郭として含む4つの外周側面21bを備えている。
CLT10と木質部材21の接合面JPは、CLT10のいずれかの外周側面10bと、木質部材21のいずれかの表面、特に本実施形態においては外周側面21bとの間に形成されている。すなわち、CLT10の外周側面10bと木質部材21の外周側面21bが対向されて当接され、CLT10の一方の表裏面10aと木質部材21の表裏面21aが連続した一つの平面となるように、CLT10と木質部材21は設けられている。
【0016】
CLT10と木質部材21は、接合具22を用いて接合されて、木質部材接合構造20が構築されている。接合具22は、ビス、釘、またはボルトである。特に本実施形態においては、接合具22は、軸部の表面に全体的にネジが形成された、全ネジ型のビスである。
接合具22は、第1接合具22A、第2接合具22B、第3接合具22C、及び第4接合具22Dを備えている。
各接合具22A、22B、22C、22Dは、CLT10の表裏面10aと接合面JPの双方に直交する仮想直交平面OPに対して角度をつけて、接合面JPを跨いで、CLT10及び木質部材21に貫入されている。
【0017】
第1接合具22Aは、仮想直交平面OPに直交する幅方向Yから視たときに(
図5(a)参照)、CLT10の表裏面10aからCLT10の内部を貫通して木質部材21に貫入するように、接合面JPに対して角度をつけて傾斜して、斜め方向に埋設されている。第1接合具22Aは、接合面JPを跨って設けられている。これにより、第1接合具22Aは、軸部22bの頭部側22cがCLT10内に、及び、軸部22bの先端側22dが木質部材21内に、それぞれ位置するように設けられている。具体的には、接合具がビスの場合は、CLT10、及び木質部材21にビスがねじ込まれている。あるいは、接合具が釘やボルトの場合は、CLT10、及び木質部材21に釘またはボルトが埋設されている。
第1接合具22Aは、仮想直交平面OPに対して平行には設けられておらず、上記のように、仮想直交平面OPに対して一定以上の角度をつけて傾斜して設けられている。特に第1接合具22Aは、例えば
図5(b)に示されるように、幅方向Yに沿って延在する仮想線AY上において、仮想直交平面OPの一方の側OP1から仮想直交平面OPを挟んだ他方の側OP2へ向かうように、仮想直交平面OPに対して角度をつけて傾斜して、斜め方向に埋設されている。これにより、第1接合具22Aの先端22eは、頭部22aよりも他方の側OP2寄りに位置し、頭部22aは先端22eよりも一方の側OP1寄りに位置している。
【0018】
第2接合具22Bは、幅方向Yから視たときに、木質部材21の表裏面21aから木質部材21の内部を貫通してCLT10に貫入するように、接合面JPに対して第1接合具22Aとは逆方向に角度をつけて傾斜して、斜め方向に埋設されている。第2接合具22Bは、接合面JPを跨って設けられている。これにより、第2接合具22Bは、軸部22bの頭部側22cが木質部材21内に、及び、軸部22bの先端側22dがCLT10内に、それぞれ位置するように設けられている。
第2接合具22Bは、仮想直交平面OPに対して平行には設けられておらず、上記のように、仮想直交平面OPに対して一定以上の角度をつけて傾斜して設けられている。特に第2接合具22Bは、第1接合具22Aと同様に、仮想線AY上において一方の側OP1から他方の側OP2へ向かうように、仮想直交平面OPに対して角度をつけて傾斜して、斜め方向に埋設されている。これにより、第2接合具22Bの先端22eは、頭部22aよりも他方の側OP2寄りに位置し、頭部22aは先端22eよりも一方の側OP1寄りに位置している。
図3、4に示されるように、第1接合具22Aと第2接合具22Bは、接合面JP近傍で近接して、互いに、略垂直に交差するように設けられている。第1接合具22Aと第2接合具22Bは、第1接合具22Aの軸部22bの頭部側22cと第2接合具22Bの軸部22bの頭部側22cとの間と、及び第1接合具22Aの軸部22bの先端側22dと第2接合具22Bの軸部22bの先端側22dとの間の各々に接合面JPが位置して、接合面JPを挟むように設けられている。
【0019】
第3接合具22Cは、幅方向Yから視たときに、第1接合具22Aと同様に、CLT10の表裏面10aからCLT10の内部を貫通して木質部材21に貫入するように、接合面JPに対して角度をつけて傾斜して、斜め方向に埋設されている。第3接合具22Cは、接合面JPを跨って設けられている。これにより、第3接合具22Cは、軸部22bの頭部側22cがCLT10内に、及び、軸部22bの先端側22dが木質部材21内に、それぞれ位置するように設けられている。
第3接合具22Cは、仮想直交平面OPに対して平行には設けられておらず、上記のように、仮想直交平面OPに対して一定以上の角度をつけて傾斜して設けられている。特に第3接合具22Cは、第1接合具22Aとは逆に、仮想線AY上において他方の側OP2から一方の側OP1へ向かうように、仮想直交平面OPに対して角度をつけて傾斜して、斜め方向に埋設されている。これにより、第3接合具22Cの先端22eは、頭部22aよりも一方の側OP1寄りに位置し、頭部22aは先端22eよりも他方の側OP2寄りに位置している。
【0020】
第4接合具22Dは、幅方向Yから視たときに、第2接合具22Bと同様に、木質部材21の表裏面21aから木質部材21の内部を貫通してCLT10に貫入するように、接合面JPに対して第3接合具22Cとは逆方向に角度をつけて傾斜して、斜め方向に埋設されている。第4接合具22Dは、接合面JPを跨って設けられている。これにより、第4接合具22Dは、軸部22bの頭部側22cが木質部材21内に、及び、軸部22bの先端側22dがCLT10内に、それぞれ位置するように設けられている。
第4接合具22Dは、仮想直交平面OPに対して平行には設けられておらず、上記のように、仮想直交平面OPに対して一定以上の角度をつけて傾斜して設けられている。特に第4接合具22Dは、第3接合具22Cと同様に、仮想線AY上において他方の側OP2から一方の側OP1へ向かうように、仮想直交平面OPに対して角度をつけて傾斜して、斜め方向に埋設されている。これにより、第4接合具22Dの先端22eは、頭部22aよりも一方の側OP1寄りに位置し、頭部22aは先端22eよりも他方の側OP2寄りに位置している。
第3接合具22Cと第4接合具22Dは、接合面JP近傍で近接して、互いに、略垂直に交差するように設けられている。第3接合具22Cと第4接合具22Dは、第3接合具22Cの軸部22bの頭部側22cと第4接合具22Dの軸部22bの頭部側22cとの間と、及び第3接合具22Cの軸部22bの先端側22dと第4接合具22Dの軸部22bの先端側22dとの間の各々に接合面JPが位置して、接合面JPを挟むように設けられている。
【0021】
各接合具22は、上記のように設けられた結果、CLT10の厚さ方向ZからCLT10を視た際に、接合面JPに対して直交する方向Xに対して、平行とはならないように角度をつけて、斜め方向に貫入されている。
第1及び第3接合具22A、22Cと、第2及び第4接合具22B、22Dは、接合面JPに関して略対称に設けられている。また、
図4のように仮想直交平面OPを第1及び第2接合具22A、22Bの先端22e近傍に設けた場合には、第1及び第2接合具22A、22Bと、第3及び第4接合具22C、22Dは、仮想直交平面OPに関して略対称に設けられている。
このように、本実施形態においては、4本の接合具22A、22B、22C、22Dが一組として、それぞれ異なる方向からCLT10及び木質部材21に貫入されて設けられている。
第1接合具22Aと第3接合具22Cは、先端22e近傍が近接して互いに交差するように設けられている。第2接合具22Bと第4接合具22Dも、先端22e近傍が近接して互いに交差するように設けられている。
各接合具22は、頭部22aがCLT10及び木質部材21の表面10a、21a下に位置するように、埋設されて設けられている。
【0022】
上記のような木質部材接合構造20において、例えば木質部材21がCLT10に対して、仮想直交平面OPの一方の側OP1側から他方の側OP2側へと向かう第1方向Y1に相対移動するように、接合面JPを境界としてせん断変形が作用した際には、第1接合具22Aと第4接合具22Dに対してこれらが引き抜かれるような力が作用する。これに対しては、第2接合具22Bと第3接合具22Cの圧縮軸力により抵抗可能である。
また、木質部材21がCLT10に対して第1方向Y1とは逆方向の第2方向Y2に相対移動するように、接合面JPを境界としてせん断変形が作用した際には、第2接合具22Bと第3接合具22Cに対してこれらが引き抜かれるような力が作用する。これに対しては、第1接合具22Aと第4接合具22Dの圧縮軸力により抵抗可能である。
同様に、接合面JPを境界としてせん断変形が方向Zに作用した際においても、いずれかの接合具22の圧縮軸力によりこれに抵抗可能である。
更に、木質部材21がCLT10から方向Xに離間しようとした際には、接合具22A、22B、22C、22Dの各々が接合面JPに直交する方向Xに対して斜めに設けられているため、接合具22の各々がこれに抵抗し得る。
【0023】
本実施形態においては、上記のように、接合具22は、CLT10の表裏面10aと接合面JPの双方に直交する仮想直交平面OPに対して角度をつけて、接合面JPを跨いで、CLT10及び木質部材21に貫入されている。また、4本の接合具22A、22B、22C、22Dが一組として、それぞれ異なる方向からCLT10及び木質部材21に貫入されて設けられている。このように接合具22を設けた場合には、従来の他の形態に比べると、剛性と耐力が向上することが、実験により明らかとなった。ここでは次に、当該実験の仕様及び結果を説明する。
【0024】
(木質部材接合構造の接合部実験)
図6、
図7は、第1実施形態の木質部材接合構造の接合部実験に用いる各要素試験体の説明図である。
図6に、試験体一覧を示す。試験体数は4体であり、パラメータはCLT同士の接合方法である。試験体は、第1実施形態として
図3~
図5を用いて説明したようなCLTと木質部材との接合構造(以下、立体的斜め打ち接合構造と呼称する)を模擬した構造の基本型、及び実施型と、従来型の木質部材接合構造であるスプライン接合型と、ビス交差斜め打ち接合型である。スプライン接合は、従来型の木質床板-木質床板間の接合方法であり、対向する床板同士の床板表層端部に切り欠き部を設けて、その切り欠き部に合板を落とし込んで. せん断抵抗用にビス留めする接合方法である。
図7(a)は、上記立体的斜め打ち接合構造の基本型試験体の正面図と、平面図、側面図である。本発明の基本型試験体200は、中央に設けられたCLT201の両側にCLT202を接合することで形成されている。CLT201とCLT202の各々は、上記のような木質部材接合構造20によって、より詳細には4本の接合具22によって接合されている。すなわち、基本型試験体200においては、計8本の接合具22が使用されている。CLT201とCLT202の間には、クリアランスCが設けられている。
図7(b)は、上記立体的斜め打ち接合方法の実施型試験体の正面図と、平面図、側面図である。実施型試験体210は、基本型試験体200の構造に加えて、スプライン接合が適用されている。すなわち、CLT201とCLT202の片側のみの表面間を跨ぐように、CLT201、202の表面上に構造用合板211が添えられてビス212がねじ込まれることにより、構造用合板211とCLT201及びCLT202が一体に接合されている。
【0025】
上記のような基本型試験体、及び実施型試験体に対し、従来型の木質接合方法であるスプライン接合型試験体と、ビス交差斜め打ち接合型試験体を用意した。
スプライン接合型試験体は、
図7に示されるように配置されたCLT201とCLT202を、構造用合板211とビス212によりスプライン接合したものである。これらの接合に接合具22は使用されていない。
ビス交差斜め打ち接合型試験体は、
図7に示されるように配置されたCLT201とCLT202を、
図14の従来の木質部材接合構造として示されるような、直交方向からの斜め打ちによる接合構造によって接合したものである。すなわち、接合具は、CLT201、202の表裏面と接合面の双方に直交する平面と略平行に設けられている。接合具は、基本型及び実施型試験体200、210と同様に、計8本を使用した。
【0026】
図8は、木質部材接合構造の接合部実験に使用した実験装置の正面図である。
図9は、実験装置上に載置された試験体の写真である。実験装置220のジャッキ221により、各試験体のCLT201の上端を加力点201aとして、圧縮力と引張力を交互に加えることにより、接合部に正負交番繰り返しのせん断力を与えた。各試験体において、各せん断面に図示されないナフロン(登録商標)シートを2枚挟み込み、加力時のモーメントによって発生する摩擦力を低減した。
【0027】
図10は、
図6~
図9に示す本発明の木質部材接合構造の接合部実験で得られた各試験体の初期剛性、及び最大耐力の比較表である。また、
図11は、接合部実験で得られた各試験体の荷重-接合面の相対すべり変位量の関係である。図中に示す実験結果において、本発明の木質部材接合構造を模擬した立体的斜め打ち接合構造の基本型試験体と、実施型試験体は太線で示し、従来型のスプライン接合型試験体と、ビス交差斜め打ち接合型試験体は細線で示した。
本発明の木質部材接合構造を模擬した立体的斜め打ち接合構造の基本型試験体と、実施型試験体の各初期剛性は、
図10と
図11に示すように、従来型の木質接合方法であるスプライン接合型試験体、及びビス交差斜め打ち接合型試験体に比べて、約10倍を上回る高剛性を示した。また、最大耐力については、立体的斜め打ち接合方法の基本型試験体と、実施型試験体の各最大耐力は、従来型のスプライン接合型試験体に比べて、約4倍を上回る高い耐力を示した。
これに対して、従来型のビス交差斜め打ち接合型試験体の最大耐力は、立体的斜め打ち接合構造の基本型試験体、及び実施型試験体とほぼ同等の耐力を示した。しかしながら、従来型のビス交差斜め打ち接合型試験体の場合、最大耐力時での接合面に沿った相対すべり変位量は36mmであり、木質部材接合構造が用いられる建物の床板同士の接合面において、許容可能な変位量ではなかった。よって、本実験条件による実験結果の範囲においては、CLT同士の接合面にビス交差斜め打ち接合構造を用いた場合、初期剛性が低く、変形性能の点で課題があることが確認された。
また、本発明の立体的斜め打ち接合構造の基本型試験体と、実施型試験体の場合、最大耐力後の荷重-相対すべり変位量関係の包絡線は緩やかに低下性状を示した。よって、最大耐力後の荷重-相対すべり変位量関係より、最大耐力後に脆性的に急激に荷重負担能力が失われることはなく、脆性破壊を防ぐことが可能なことが確認された。
【0028】
次に、第1実施形態の木質部材接合構造20の効果について説明する。
木質部材接合構造20は、CLT10と木質部材21とを接合具22を用いて接合する木質部材接合構造20であって、接合具22は、ビス、釘、またはボルトであり、CLT10の板厚方向の外周側面10bと木質部材21との間に接合面JPが形成され、接合具22は、CLT10の表裏面10aと接合面JPの双方に直交する仮想直交平面OPに対して角度をつけて、接合面JPを跨いで貫入されている。
上記のような構成によれば、ビス、釘、またはボルトである接合具22は、CLT10の外周側面10bと接合対象となる木質部材21の表面21bとの間に形成される接合面JPと、CLT10の表裏面10aとの、双方に直交する仮想直交平面OPに対して角度をつけて、接合面JPを跨いで貫入される。すなわち、接合具22が、CLT10の厚さ方向ZからCLT10を視た際に、接合面JPに対して直交する方向Xに対して角度をつけて、斜め方向に貫入されている。このため、接合具22の引張軸力と圧縮軸力によって接合面JPでのせん断抵抗力が増大される。したがって、CLT10と木質部材21を強固に接合することができる。
【0029】
また、接合具22は、第1接合具22Aと第2接合具22Bを備え、第1接合具22Aと第2接合具22Bは、接合面JP近傍で互いに交差するように、CLT10と木質部材21に貫入されている。
上記のような構成によれば、第1接合具22Aと第2接合具22Bは、接合面JP近傍で互いに交差するように、CLT10と木質部材21に貫入されている。このため、一方の接合具22が負担する引張軸力に対して、他方の接合具22が圧縮軸力を負担し、接合面JPに沿ったせん断抵抗力を高めることができる。したがって、CLT10と木質部材21を強固に接合することができる。
【0030】
また、接合具22は、更に、第3接合具22Cと第4接合具22Dを備え、第1接合具22Aと第2接合具22Bは、ともに仮想直交平面OPの一方の側OP1から仮想直交平面OPを挟んだ他方の側OP2へ向かうように貫入され、第3接合具22Cと第4接合具22Dは、ともに仮想直交平面OPの他方の側OP2から一方の側OP1へ向かうように、かつ、接合面JP近傍で互いに交差するように、CLT10と木質部材21に貫入されている。
上記のような構成によれば、第1接合具22Aと第2接合具22Bは、ともに仮想直交平面OPの一方の側OP1から仮想直交平面OPを挟んだ他方の側OP2へ向かうように、第3接合具22Cと第4接合具22Dは、ともに仮想直交平面OPの他方の側OP2から一方の側OP1へ向かうように、CLT10と木質部材21に貫入されている。すなわち、仮想直交平面OPに直交する方向Yにおいては、第1接合具22Aと第2接合具22Bと、第3接合具22Cと第4接合具22Dとが、互いに向かい合うように設けられている。このため、仮想直交平面OPに直交する方向Yにおいて生じ得る面内方向分力、面外方向分力は、第1及び第2接合具22A、22Bと、第3及び第4接合具22C、22Dが組み合わせられることで相殺され、CLT10と木質部材21の分離や、面外の変形を効果的に抑制できる。
更に、第1接合具22Aと第2接合具22Bと同様に、第3接合具22Cと第4接合具22Dは、接合面JP近傍で互いに交差するように、CLT10と木質部材21に貫入されている。このため、第3接合具22Cと第4接合具22Dは、第1接合具22Aと第2接合具22Bと同様に、一方の接合具22が負担する引張軸力に対して、他方の接合具22が圧縮軸力を負担し、接合面JPに沿ったせん断抵抗力を高めることができる。
以上の効果が相乗し、CLT10と木質部材21を強固に接合することができる。
【0031】
特に本実施形態においては、CLT10の厚さ方向ZからCLT10を視た際に、4本の接合具22A、22B、22C、22Dが一組となり、これらがそれぞれ異なる方向から、互いに向かい合うように、斜めに貫入されている構造となっている。したがって、様々な方向に生じ得る面内方向分力、面外方向分力を、各接合具22が相殺し、CLT10と木質部材21の離間や、面外の変形を効果的に抑制できる。
【0032】
また、既に実験の結果として説明したように、本実施形態においては、接合具22一本あたりの剛性及び最大耐力が高まるため、従来の、例えば
図14として示されるような、板材の厚さ方向から平面視した際に部材間の接合面に対して直交する方向から、釘やビス等を板材の厚さ方向に交差させるように斜め打ちする場合に比べると、接合具22の数を低減可能である。したがって、施工コストを低減できる。
【0033】
また、各接合具22は、頭部22aがCLT10及び木質部材21の表面10a、21a下に位置するように、埋設されて設けられている。
上記のような構成によれば、接合具22がCLT10上や木質部材21上に設けられる仕上げ材の収まりに影響を及ぼすことがない。したがって、設計自由度の高い木質構造を実現できる。
【0034】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態として、
図1にB矢視部分として示されている、CLT10を壁3とした際に、これを例えば木質部材により形成された床4に接合するような、CLT10を他の木質部材に垂直に接合する際の接合構造30を説明する。
図12は、本実施形態における木質部材接合構造30を方向Zから視た平面図である。
図13(a)、(b)は、それぞれ、
図12を方向Zにそれぞれ直交する方向Y、方向Xから視た側面図である。
図12、13においては、CLT10内部に設けられて外部からは視認されない接合具22も実線で示されている。
本実施形態の木質部材接合構造30においては、CLT10の接合対象となる木質部材21は板材であり、これは例えばCLTであってよいし、他の種類の木質の板材であってもよい。木質部材21は、CLT10と同様に、長さ方向に延在する辺と幅方向に延在する辺を外輪郭とする2つの表裏面21aと、厚さ方向に延在する辺を外輪郭として含む4つの外周側面21bを備えている。
CLT10と木質部材21の接合面JPは、CLT10のいずれかの外周側面10bと、木質部材21のいずれかの表面、特に本実施形態においては一方の表裏面21aとの間に形成されている。すなわち、CLT10の外周側面10bと木質部材21の表裏面21aが対向されて当接されるように、CLT10と木質部材21は設けられている。
【0035】
CLT10と木質部材21は、接合具22を用いて接合されて、木質部材接合構造30が構築されている。接合具22は、ビス、釘、またはボルトである。特に本実施形態においては、接合具22は、軸部の表面に全体的にネジが形成された、全ネジ型のビスである。
接合具22は、第1接合具22A、第2接合具22B、第3接合具22C、及び第4接合具22Dを備えている。
各接合具22A、22B、22C、22Dは、CLT10の表裏面10a、10cと接合面JPの双方に直交する仮想直交平面OPに対して角度をつけて、接合面JPを跨いで、CLT10及び木質部材21に貫入されている。
【0036】
第1接合具22Aは、仮想直交平面OPに直交する幅方向Yから視たときに(
図13(a)参照)、CLT10の表裏面10aからCLT10の内部を貫通して木質部材21に貫入するように、接合面JPに対して角度をつけて傾斜して、斜め方向に埋設されている。第1接合具22Aは、接合面JPを跨って設けられている。これにより、第1接合具22Aは、軸部22bの頭部側22cがCLT10内に、及び、軸部22bの先端側22dが木質部材21内に、それぞれ位置するように設けられている。
第1接合具22Aは、仮想直交平面OPに対して平行には設けられておらず、上記のように、仮想直交平面OPに対して一定以上の角度をつけて傾斜して設けられている。特に第1接合具22Aは、例えば
図13(b)に示されるように、幅方向Yに沿って延在する仮想線AY上において、仮想直交平面OPの一方の側OP1から仮想直交平面OPを挟んだ他方の側OP2へ向かうように、仮想直交平面OPに対して角度をつけて傾斜して、斜め方向に埋設されている。これにより、第1接合具22Aの先端22eは、頭部22aよりも他方の側OP2寄りに位置し、頭部22aは先端22eよりも一方の側OP1寄りに位置している。
【0037】
第2接合具22Bは、幅方向Yから視たときに、CLT10の第1接合具22Aが貫入された表裏面10aとは反対側の表裏面10cからCLT10の内部を貫通して木質部材21に貫入するように、接合面JPに対して角度をつけて傾斜して、斜め方向に埋設されている。第2接合具22Bは、接合面JPを跨って設けられている。これにより、第2接合具22Bは、軸部22bの頭部側22cがCLT10内に、及び、軸部22bの先端側22dが木質部材21内に、それぞれ位置するように設けられている。
第2接合具22Bは、仮想直交平面OPに対して平行には設けられておらず、上記のように、仮想直交平面OPに対して一定以上の角度をつけて傾斜して設けられている。特に第2接合具22Bは、第1接合具22Aと同様に、仮想線AY上において一方の側OP1から他方の側OP2へ向かうように、仮想直交平面OPに対して角度をつけて傾斜して、斜め方向に埋設されている。これにより、第2接合具22Bの先端22eは、頭部22aよりも他方の側OP2寄りに位置し、頭部22aは先端22eよりも一方の側OP1寄りに位置している。
第1接合具22Aと第2接合具22Bは、接合面JP近傍で近接して、互いに、略垂直に交差するように設けられている。第1接合具22Aと第2接合具22Bは、第1接合具22Aの軸部22bの頭部側22cと第2接合具22Bの軸部22bの先端側22dとの間と、及び第1接合具22Aの軸部22bの先端側22dと第2接合具22Bの軸部22bの頭部側22cとの間の各々に接合面JPが位置して、接合面JPを挟むように設けられている。
【0038】
第3接合具22Cは、幅方向Yから視たときに、第1接合具22Aと同様に、CLT10の表裏面10aからCLT10の内部を貫通して木質部材21に貫入するように、接合面JPに対して角度をつけて傾斜して、斜め方向に埋設されている。第3接合具22Cは、接合面JPを跨って設けられている。これにより、第3接合具22Cは、軸部22bの頭部側22cがCLT10内に、及び、軸部22bの先端側22dが木質部材21内に、それぞれ位置するように設けられている。
第3接合具22Cは、仮想直交平面OPに対して平行には設けられておらず、上記のように、仮想直交平面OPに対して一定以上の角度をつけて傾斜して設けられている。特に第3接合具22Cは、第1接合具22Aとは逆に、仮想線AY上において他方の側OP2から一方の側OP1へ向かうように、仮想直交平面OPに対して角度をつけて傾斜して、斜め方向に埋設されている。これにより、第3接合具22Cの先端22eは、頭部22aよりも一方の側OP1寄りに位置し、頭部22aは先端22eよりも他方の側OP2寄りに位置している。
【0039】
第4接合具22Dは、幅方向Yから視たときに、第2接合具22Bと同様に、CLT10の第3接合具22Cが貫入された表裏面10aとは反対側の表裏面10cからCLT10の内部を貫通して木質部材21に貫入するように、接合面JPに対して角度をつけて傾斜して、斜め方向に埋設されている。第4接合具22Dは、接合面JPを跨って設けられている。これにより、第4接合具22Dは、軸部22bの頭部側22cがCLT10内に、及び、軸部22bの先端側22dが木質部材21内に、それぞれ位置するように設けられている。
第4接合具22Dは、仮想直交平面OPに対して平行には設けられておらず、上記のように、仮想直交平面OPに対して一定以上の角度をつけて傾斜して設けられている。特に第4接合具22Dは、第3接合具22Cと同様に、仮想線AY上において他方の側OP2から一方の側OP1へ向かうように、仮想直交平面OPに対して角度をつけて傾斜して、斜め方向に埋設されている。これにより、第4接合具22Dの先端22eは、頭部22aよりも一方の側OP1寄りに位置し、頭部22aは先端22eよりも他方の側OP2寄りに位置している。
第3接合具22Cと第4接合具22Dは、接合面JP近傍で近接して、互いに、略垂直に交差するように設けられている。第3接合具22Cと第4接合具22Dは、第3接合具22Cの軸部22bの頭部側22cと第4接合具22Dの軸部22bの先端側22dとの間と、及び第3接合具22Cの軸部22bの先端側22dと第4接合具22Dの軸部22bの頭部側22cとの間の各々に接合面JPが位置して、接合面JPを挟むように設けられている。
【0040】
各接合具22は、上記のように設けられた結果、CLT10の厚さ方向XからCLT10を視た際に、接合面JPに対して直交する方向Zに対して、平行とはならないように角度をつけて、斜め方向に貫入されている。
第1及び第3接合具22A、22Cと、第2及び第4接合具22B、22Dは、
図12に示されるように、CLT10の厚さ方向Xの中心を通り表裏面10a、10cと平行な平面CPに関して略対称に設けられている。また、仮想直交平面OPを第1及び第2接合具22A、22Bの先端22e近傍に設けた場合には、第1及び第2接合具22A、22Bと、第3及び第4接合具22C、22Dは、仮想直交平面OPに関して略対称に設けられている。
このように、本実施形態においては、4本の接合具22A、22B、22C、22Dが一組として、それぞれ異なる方向からCLT10及び木質部材21に貫入されて設けられている。
第1接合具22Aと第3接合具22Cは、先端22e近傍が近接して互いに交差するように設けられている。第2接合具22Bと第4接合具22Dも、先端22e近傍が近接して互いに交差するように設けられている。
各接合具22は、頭部22aがCLT10の表面10a、10c下に位置するように、埋設されて設けられている。
【0041】
上記のような木質部材接合構造30において、例えば木質部材21がCLT10に対して、仮想直交平面OPの一方の側OP1側から他方の側OP2側へと向かう第1方向Y1に相対移動するように、接合面JPを境界としてせん断変形が作用した際には、第1接合具22Aと第2接合具22Bに対してこれらが引き抜かれるような力が作用する。これに対しては、第3接合具22Cと第4接合具22Dの圧縮軸力により抵抗可能である。
また、木質部材21がCLT10に対して第1方向Y1とは逆方向の第2方向Y2に相対移動するように、接合面JPを境界としてせん断変形が作用した際には、第3接合具22Cと第4接合具22Dに対してこれらが引き抜かれるような力が作用する。これに対しては、第1接合具22Aと第2接合具22Bの圧縮軸力により抵抗可能である。
同様に、接合面JPを境界としてせん断変形が方向Xに作用した際においても、いずれかの接合具22の圧縮軸力によりこれに抵抗可能である。
更に、木質部材21がCLT10から方向Zに離間しようとした際には、接合具22A、22B、22C、22Dの各々が接合面JPに直交する方向Zに対して斜めに設けられているため、接合具22の各々がこれに抵抗し得る。
【0042】
本実施形態においては、上記のように、接合具22は、CLT10の表裏面10a、10cと接合面JPの双方に直交する仮想直交平面OPに対して角度をつけて、接合面JPを跨いで、CLT10及び木質部材21に貫入されている。また、4本の接合具22A、22B、22C、22Dが一組として、それぞれ異なる方向からCLT10及び木質部材21に貫入されて設けられている。このように接合具22を設けた場合には、従来の他の形態に比べると、剛性と耐力が向上することは、第1実施形態において既に説明した実験によって検証されている。
【0043】
次に、第2実施形態の木質部材接合構造30の効果について説明する。
木質部材接合構造30は、CLT10と木質部材21とを接合具22を用いて接合する木質部材接合構造30であって、接合具22は、ビス、釘、またはボルトであり、CLT10の板厚方向の外周側面10bと木質部材21との間に接合面JPが形成され、接合具22は、CLT10の表裏面10a、10cと接合面JPの双方に直交する仮想直交平面OPに対して角度をつけて、接合面JPを跨いで貫入されている。
上記のような構成によれば、ビス、釘、またはボルトである接合具22は、CLT10の外周側面10bと接合対象となる木質部材21の表面21aとの間に形成される接合面JPと、CLT10の表裏面10a、10cとの、双方に直交する仮想直交平面OPに対して角度をつけて、接合面JPを跨いで貫入される。すなわち、接合具22が、CLT10の厚さ方向XからCLT10を視た際に、接合面JPに対して直交する方向Zに対して角度をつけて、斜め方向に貫入されている。このため、接合具22の引張軸力と圧縮軸力によって接合面JPでのせん断抵抗力が増大される。したがって、CLT10と木質部材21を強固に接合することができる。
【0044】
また、接合具22は、第1接合具22Aと第2接合具22Bを備え、第1接合具22Aと第2接合具22Bは、接合面JP近傍で互いに交差するように、CLT10と木質部材21に貫入されている。
上記のような構成によれば、第1接合具22Aと第2接合具22Bは、接合面JP近傍で互いに交差するように、CLT10と木質部材21に貫入されている。このため、一方の接合具22が負担する引張軸力に対して、他方の接合具22が圧縮軸力を負担し、接合面JPに沿ったせん断抵抗力を高めることができる。したがって、CLT10と木質部材21を強固に接合することができる。
【0045】
また、接合具22は、更に、第3接合具22Cと第4接合具22Dを備え、第1接合具22Aと第2接合具22Bは、ともに仮想直交平面OPの一方の側OP1から仮想直交平面OPを挟んだ他方の側OP2へ向かうように貫入され、第3接合具22Cと第4接合具22Dは、ともに仮想直交平面OPの他方の側OP2から一方の側OP1へ向かうように、かつ、接合面JP近傍で互いに交差するように、CLT10と木質部材21に貫入されている。
上記のような構成によれば、第1接合具22Aと第2接合具22Bは、ともに仮想直交平面OPの一方の側OP1から仮想直交平面OPを挟んだ他方の側OP2へ向かうように、第3接合具22Cと第4接合具22Dは、ともに仮想直交平面OPの他方の側OP2から一方の側OP1へ向かうように、CLT10と木質部材21に貫入されている。すなわち、仮想直交平面OPに直交する方向Yにおいては、第1接合具22Aと第2接合具22Bと、第3接合具22Cと第4接合具22Dとが、互いに向かい合うように設けられている。このため、仮想直交平面OPに直交する方向Yにおいて生じ得る面内方向分力、面外方向分力は、第1及び第2接合具22A、22Bと、第3及び第4接合具22C、22Dが組み合わせられることで相殺され、CLT10と木質部材21の離間や、面外の変形を効果的に抑制できる。
更に、第1接合具22Aと第2接合具22Bと同様に、第3接合具22Cと第4接合具22Dは、接合面JP近傍で互いに交差するように、CLT10と木質部材21に貫入されている。このため、第3接合具22Cと第4接合具22Dは、第1接合具22Aと第2接合具22Bと同様に、一方の接合具22が負担する引張軸力に対して、他方の接合具22が圧縮軸力を負担し、接合面JPに沿ったせん断抵抗力を高めることができる。
以上の効果が相乗し、CLT10と木質部材21を強固に接合することができる。
【0046】
特に本実施形態においては、方向ZからCLT10を視た際に、4本の接合具22A、22B、22C、22Dが一組となり、これらがそれぞれ異なる方向から、互いに向かい合うように、斜めに貫入されている構造となっている。したがって、様々な方向に生じ得る面内方向分力、面外方向分力を、各接合具22が相殺し、CLT10と木質部材21の離間や、面外の変形を効果的に抑制できる。
【0047】
また、上述の接合部実験で得られたように本実施形態においては、接合具22一本あたりの初期剛性及び最大耐力が高まるため、従来の、例えば
図14として示されるような、板材の厚さ方向から平面視した際に部材間の接合面に対して直交する方向から、釘やビス等を板材の厚さ方向に交差させるように斜め打ちする場合に比べると、接合具22の数を低減可能である。したがって、施工コストを低減できる。
【0048】
また、各接合具22は、頭部22aがCLT10の表面10a、10c下に位置するように、埋設されて設けられている。
上記のような構成によれば、接合具22がCLT10上に設けられる仕上げ材の収まりに影響を及ぼすことがない。したがって、設計自由度の高い木質構造を実現できる。
【0049】
なお、本発明の木質部材接合構造は、図面を参照して説明した上述の各実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において他の様々な変形例が考えられる。
例えば、上記各実施形態においては、CLT10を壁材や床材として使用した場合の、他の壁材や床材との接合構造を説明したが、これに限られず、例えば横架材と壁との接合や、横架材間の接合に適用可能であることは、言うまでもない。これらの場合において、横架材や壁のいずれかがCLTであってもよいし、双方がCLTであってもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記各実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 建物 21a 表裏面(表面)
2 基礎 21b 外周側面(表面)
3 壁 22 接合具
4 床 22A 第1接合具
10 CLT 22B 第2接合具
10a、10c 表裏面 22C 第3接合具
10b 外周側面 22D 第4接合具
11 ラミナ JP 接合面
12 プライ OP 接合面に対する仮想直交平面
20、30 木質部材接合構造 OP1 仮想直交平面を挟んだ一方の側
21 木質部材 OP2 仮想直交平面を挟んだ他方の側