(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】補強部材、および、補強部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
E02D 5/34 20060101AFI20220825BHJP
E04C 5/06 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
E02D5/34 Z
E04C5/06
(21)【出願番号】P 2018235005
(22)【出願日】2018-12-15
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】518447142
【氏名又は名称】有限会社大正鉄筋工業
(74)【代理人】
【識別番号】100127203
【氏名又は名称】奈良 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】仲村渠 久也
【審査官】大塚 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-050803(JP,A)
【文献】特開2013-122121(JP,A)
【文献】特開2010-174557(JP,A)
【文献】特開2013-241829(JP,A)
【文献】特開2007-278037(JP,A)
【文献】特開平11-229493(JP,A)
【文献】登録実用新案第3077293(JP,U)
【文献】実開昭57-70583(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/22-5/80
E04C 5/00-5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差する複数の主筋と複数のフープ筋とを備えた鉄筋籠を補強する補強部材であって、
第1の長尺平板の長手方向について曲げ加工し、両端部を結合して環状に成形してなるリング状部材と、
第2の長尺平板の長手方向の側面について曲げ加工し、両端部を結合して環状に成形してなるフランジ部材と、
を備え、
前記フランジ部材の外周縁が、前記リング状部材の内周面に接合されており、
前記主筋と幅方向に当接する前記リング状部材の外周面が平滑であることを特徴とする補強部材。
【請求項2】
前記主筋を係止する係止部を有した一対のボルトと、前記一対のボルトに取り付け可能な一対のナットとを有している固定具を複数備えており、
前記リング状部材が、前記一対のボルトを挿通可能な一対のボルト挿通孔を少なくとも前記固定具と同数有していることを特徴とする請求項1に記載の補強部材。
【請求項3】
交差する複数の主筋と複数のフープ筋とを備えた鉄筋籠を補強する補強部材の製造方法であって、
第1の長尺平板の長手方向について曲げ加工し、両端部を結合して環状に成形し、リング状部材を形成する工程と、
第2の長尺平板の長手方向の側面について曲げ加工し、両端部を結合して環状に成形し、フランジ部材を形成する工程と、
前記フランジ部材の外周縁を前記リング状部材の内周面に接合する工程と、
を有している補強部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場所打ち杭工法等に使用される鉄筋籠の補強部材、および、補強部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ビル等のコンクリート製建造物を建設する際には、建造物を地盤上に安定して支持するための基礎構造として、鉄筋コンクリート杭が地中深くに打設される。場所打ち杭工法による鉄筋コンクリート杭の施工では、先ず、掘削機によって地盤に縦穴を掘削する。そして、多数の鉄筋を縦横に交差させて立体的に組み上げた鉄筋籠と呼ばれる鉄筋組立体を縦穴の内部に挿入した後、コンクリートを流しこむことにより、鉄筋コンクリート杭が構築される。
【0003】
鉄筋コンクリート杭に埋め込まれる鉄筋籠は、建設現場付近または工場等で円筒形状に組み上げられた後に建設現場へ搬送され、クレーン等により吊り上げるようにして起立させ、掘削した縦穴の内部に建て込まれる。このような鉄筋籠は、円周上の中心軸方向に配列された多数の主筋と、これらの主筋回りに巻回される多数のフープ筋とを含んで構成されており、主筋とフープ筋との交差部分は、鉄線結束、溶接等により接合されている。
【0004】
さらに、鉄筋籠の剛性を高めるために、鉄筋籠の内側から各主筋に接するように補強用の環状鋼材が配置され、この環状鋼材は、各主筋にそれぞれ強固に溶接または無溶接金具により固定されている。例えば、特許文献1には、帯鋼の両端部を互いに重ね合わせて溶接等で接合することで形成された環状鋼材(補強リング)を備えた鉄筋籠が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、巨大建造物の基礎となる鉄筋コンクリート杭は、建造物本体を安定して支持するために大口径かつ長尺に形成される場合、内部に埋め込まれる鉄筋籠のサイズも大型になり、鉄筋籠全体の重量が極めて重くなる。このような場合、鉄筋籠の剛性が十分でない場合には、鉄筋籠の組立、搬送、掘削した縦穴への建て込み等の過程において、鉄筋籠が自重によって捩れたり撓んだりして大きく変形してしまうおそれがある。特に、大口径の鉄筋籠(一般的に1400mm程度以上の径を有するもの)では、口径が大きければ大きいほど、上記特許文献1の帯鋼を用いた補強リングのみでは鉄筋籠の剛性を十分に確保することが困難なため、鉄筋籠が型崩れを起こしたり、最悪の場合には崩壊してしまったりするおそれがある。また、鉄筋コンクリート杭の内部に鉄筋籠が埋め込まれ、当該鉄筋コンクリート杭が建造物本体を支持している状態で、建造物本体が地震などで揺れた際に上記環状鋼材(補強リング)が変形してしまった場合には、当該環状鋼材(補強リング)から主筋が乖離してしまうことがあり、当該鉄筋コンクリート杭の剛性が当初よりも大幅に低下するおそれがあった。
【0007】
そこで、鉄筋籠における補強用の環状鋼材として、断面L字形の長尺のアングル材(山形鋼材)を長手方向に曲げ加工を行い、アングル材の両端部を結合したリング状部材(
図9(a)参照)を用いる場合がある。このようなリング状部材の製造工程においては、鉄筋籠の剛性を高めるために、アングル材を可能な限り真円に近づけることが求められる。
【0008】
しかしながら、アングル材をリング状に曲げ加工する際には、ねじれが生じる場合があり、真円度の良いリング状部材を製造することは難しいという問題がある。また、アングル材は、曲げ強度の高い鋼材であるため、リング状に加工する過程で、曲げ加工を何度も繰り返して徐々に曲げて真円に近づけていく作業を行う必要があり、リング状部材の製造工程が煩雑になる。よって、リング状部材の製造には、多くの手間および時間がかかり、コストも高くなるという問題がある。また、鉄筋籠の主筋とリング状部材とを固定する場合、以下のような問題がある。
【0009】
図9(a)、(b)は、従来のリング状部材を示す図である。
図9(a)、(b)に示すように、リング状部材401の一方の平板部402は、内周面402aと外周面402bとを有し、短い円筒形状になっている。また他方の平板部403は、一方の平板部402の片方の周縁からリング状部材401の中心方向へ向かって鍔状に張り出すように形成されている。そして、
図9(b)に示すように、主筋411は、リング状部材401の平板部402の外周面402bに当接するように配置される。
【0010】
ここで、主筋411とリング状部材401とを固定する手段として溶接を用いる場合、主筋411とリング状部材401の平板部402の外周面402bとの当接部分は、溶接により接合されることになる。しかしながら、アングル材をリング状に曲げ加工して、歪みまたは反りがない平滑な平板部を形成することは難しく、実際には、
図9(b)に示したように、平板部402の外周面402bは歪みまたは反りを生じてしまうので、主筋411と平板部402の外周面402bとの間に、隙間405、406が生じてしまう。
【0011】
このような場合、高い溶接技術が求められるので、作業者の熟練度によって溶接強度および溶接品質に差が生じ、鉄筋籠の剛性にばらつきが出る可能性が高いという問題がある。また、主筋411と平板部402の外周面402bとの接触面積が少なく隙間が多い場合には、年月の経過とともに溶接部分における腐食が発生しやすくなり強度が低下したり、溶接部分から破断してしまったりするおそれがある。
【0012】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みなされたものであって、従来よりも容易に製造でき、鉄筋籠の主筋に確実かつ強固に固定することができる、リング状の補強部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1) 本発明は、交差する複数の主筋と複数のフープ筋とを備えた鉄筋籠を補強する補強部材であって、第1の長尺平板の長手方向について曲げ加工し、両端部を結合して環状に成形してなるリング状部材と、第2の長尺平板の長手方向の側面について曲げ加工し、両端部を結合して環状に成形してなるフランジ部材と、を備え、前記フランジ部材の外周縁が、前記リング状部材の内周面に接合されており、前記主筋と幅方向に当接する前記リング状部材の外周面が平滑であることを特徴とするものである。
【0014】
(2) 上記(1)の補強部材においては、前記主筋を係止する係止部を有した一対のボルトと、前記一対のボルトに取り付け可能な一対のナットとを有している固定具を複数備えており、前記リング状部材が、前記一対のボルトを挿通可能な一対のボルト挿通孔を少なくとも前記固定具と同数有していることが好ましい。
【0015】
(3) 別の観点として、本発明は、交差する複数の主筋と複数のフープ筋とを備えた鉄筋籠を補強する補強部材の製造方法であって、第1の長尺平板の長手方向について曲げ加工し、両端部を結合して環状に成形し、リング状部材を形成する工程と、第2の長尺平板の長手方向の側面について曲げ加工し、両端部を結合して環状に成形し、フランジ部材を形成する工程と、前記フランジ部材の外周縁を前記リング状部材の内周面に接合する工程と、を有しているものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来よりも容易に製造でき、鉄筋籠の主筋に確実かつ強固に固定することができる、リング状の補強部材を提供することができる。
【0017】
また、本発明の補強部材は、安価なフラットバーを用いて製造することができるため、高価なアングル材をリング状に曲げ加工して製造する従来の補強部材よりも、製造コストを大幅に抑えることができる。また、フラットバーは、アングル材よりも加工性に優れており、曲げ加工にかかる時間も短縮することができる。
【0018】
また、従来の補強部材の製造において、曲げ加工を行うアングル材(等辺山形鋼材、不等辺山形鋼材、不等辺不等厚山形鋼材など)は、予め決められた形状寸法の規格品を用いるが、本発明の補強部材は、鉄筋籠の重量、長さ、径の大きさ、剛性などを考慮して、形状寸法(厚み、幅など)を自由に設定することができる。
【0019】
また、本発明の補強部材と鉄筋籠の主筋との交差部分を溶接により接合する場合、補強部材の接合面は平滑な面形状となるので、従来よりも溶接欠陥の発生を低減し、溶接強度および溶接品質を向上させることができ、鉄筋籠の剛性を十分に確保することができる。
【0020】
したがって、本発明の補強部材を用いることにより、大口径の鉄筋籠の組立、搬送、建て込み等の過程で発生する型くずれ等の変形を防止するためのコストを大幅に削減することができ、鉄筋籠の組立等の作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る補強部材を用いた鉄筋籠を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る補強部材を示す図であって、(a)は補強部材のリング状部材の斜視図であり、(b)は補強部材のフランジ部材の斜視図である。
【
図4】
図1の鉄筋籠の補強部材と主筋との交差部分を示す図であって、(a)は縦断側面図であり、(b)は鉄筋籠の内側から交差部分を見た図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る補強部材を用いた鉄筋籠を示す平面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る補強部材のリング状部材の斜視図である。
【
図7】
図5の鉄筋籠の補強部材と主筋との交差部分を示す図であって、(a)は縦断側面図であり、(b)は鉄筋籠の内側から交差部分を見た図である。
【
図8】本変形例に係る補強部材を示す斜視図である。
【
図9】(a)は従来の補強部材(リング状部材)を示す斜視図であり、(b)は(a)の補強部材を用いた鉄筋籠の補強部材と主筋との交差部分を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る補強部材について説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明の補強部材100を用いた鉄筋籠10は、複数本の主筋11と複数の環状のフープ筋12とを組み合わせることにより、円筒形状に形成される。主筋11は、直線状異形棒鋼の長尺の鉄筋であり、鉄筋籠10の中心軸方向と平行に円形をなすように所定間隔で配置されている。また、フープ筋12は、円環状に形成された鉄筋であり、主筋11全体を周囲から束ねるようにして設けられている。すなわち、各主筋11がフープ筋12の内周に略直交状態で接触するようになっている。このようなフープ筋12は、主筋11の長手方向に所定間隔をおいて複数配置される。そして、主筋11とフープ筋12とが接触する部分は、溶接によって接合されている。
【0024】
なお、この溶接による主筋11とフープ筋12とが接触する部分の接合は、緊結用の金属線によって主筋11とフープ筋12とを結束するようにしてもよい。また、円環状のフープ筋12の代わりに、例えば、螺旋状に形成されたスパイラル筋で主筋11全体を周囲から束ねるようにしてもよい。
【0025】
さらに、
図1および
図2に示すように、鉄筋籠10の内周側には、リング状の補強部材100が、複数箇所に設けられている。ここで、主筋11の長手方向における補強部材100同士の配置間隔は、フープ筋12同士の配置間隔よりも広い配置間隔である。この補強部材100は、各主筋11に対して略直交状態で交差しつつ、各主筋11に接触するようになっている。そして、補強部材100と各主筋11とが接触する部分は、溶接によって接合され、鉄筋籠10の形状を確実に保持することができるようになっている。
【0026】
次に、補強部材100の構成について詳しく説明する。
図2に示すように、補強部材100は、主筋11に接触するリング状部材20と、このリング状部材20の中心方向へ向かって鍔状に張り出すフランジ部材30とを備えている。
【0027】
ここで、リング状部材20は、
図3(a)に示すように、長尺平板の一例であるフラットバー(平鋼)を長手方向に曲げ加工を行い、フラットバーの両端部を結合して円環状に成形したものである。また、フランジ部材30は、
図3(b)に示すように、長尺のフラットバー(平鋼)の長手方向の側面に対して曲げ加工を行い、フラットバーの両端部を結合して円環状に成形したものである。また、リング状部材20の内径の大きさとフランジ部材30の外径の大きさとは、ほぼ同じ径の大きさとなっており、リング状部材20の内周面21にフランジ部材30の外周縁31が接触するようになっている。そして、補強部材100は、断面がT字形(
図4(a)参照)になるように、リング状部材20の内周面21とフランジ部材30の外周縁31とを所定間隔で2箇所以上または全周において溶接により接合することで製造される。よって、
図4(a)、(b)に示すように、補強部材100は、フランジ部材30がリング状部材20の幅方向(主筋11の軸方向)の中央に位置するので、高い剛性を有する環状鋼材となっている。
【0028】
なお、上記フラットバーの曲げ加工には、一般に市販されているバーベンダーなどのフラットバー加工機を使用可能である。また、フラットバーは、アングル材よりも加工性に優れており、安価であるので、アングル材を用いて製造する従来の補強部材よりも、製造にかかる時間およびコストを削減することができる。また、鉄筋籠10の重量、長さ、径の大きさ、剛性などを考慮して、リング状部材20またはフランジ部材30の幅、厚み、径の大きさを設定することができる。すなわち、補強部材100の形状寸法を自由に設定することが可能となる。
【0029】
このような構成を有する補強部材100と各主筋11とを固定する際は、鉄筋籠10を横に倒した状態で、補強部材100を各主筋11に対して略直交状態で交差しつつ、各主筋11に接触するように配置する。そして、リング状部材20の外周面22と各主筋11とが接触している部分に溶接を行う。溶接が完了すると、高温に熱せられた溶接部分の温度が次第に低下し、この冷却過程によって溶接部分が収縮することで、補強部材100と各主筋11とが強力な力で相互に引き合うようになる。よって、補強部材100は、溶接による大きな接合力で各主筋11に確実かつ強固に固定される。このようにして補強部材100が鉄筋籠10に取り付けられた場合、各主筋11が剛性の高い補強部材100によって強力に支持されているので、従来よりも鉄筋籠10の形状安定性を向上させることができる。
【0030】
また、主筋11と交差し接触するリング状部材20の外周面22は、
図4(a)に示すように、平滑(平坦)な面形状となっており、主筋11と外周面22との接触面積が、従来のアングル材を用いたものよりも広いので、従来よりも容易に溶接を行うことができ、作業者の熟練度による溶接のばらつきを抑えることができる。したがって、従来よりも、主筋11と補強部材100との交差部分における溶接強度および溶接品質を向上させることが溶接の熟練者でなくても容易であり、鉄筋籠10の剛性を十分に確保することができるようになる。
【0031】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る補強部材について説明する。なお、本実施形態において、上述の第1実施形態と下2桁が同じ符号の部位は、特に説明する場合を除き、第1実施形態で説明したものと同様であるので説明および図示を省略する。
【0032】
第2実施形態に係る補強部材200においては、
図5に示すように、リング状部材220と、フランジ部材230とを備えている。リング状部材220は、
図5および
図6に示すように、予めU字ボルト241を挿通するための一対のボルト挿通孔240を複数開設した、長尺のフラットバーを長手方向に曲げ加工を行い、フラットバーの両端部を結合して円環状に成形したものである。
【0033】
ここで、一対のボルト挿通孔240は、リング状部材220の内周面221および外周面222において、リング状部材220の幅方向の中央位置から所定距離ずれた位置(幅方向に偏在した位置)に設けられている。また、ボルト挿通孔240は、各主筋211に対応して2つずつ設けられている。そして、補強部材200は、リング状部材220の内周面221におけるボルト挿通孔240を閉塞しない位置において、フランジ部材230の外周縁231を所定間隔で2箇所以上または全周において溶接により接合することで製造される。すなわち、
図7(a)、(b)に示すように、フランジ部材230が、リング状部材220の幅方向の中央位置から少しずれた位置(一例として
図7(a)ではリング状部材220の中央位置より上部)において、溶接により接合されており、補強部材200の断面は、略T字形となる。
【0034】
なお、
図7(a)、(b)では、フランジ部材230が、リング状部材220の幅方向の中央位置から上方向にずれた位置に接合されているが、この位置に限定されるものではない。例えば、ボルト挿通孔240がリング状部材220の幅方向の中央位置から上方向に設けられている場合は、フランジ部材230をリング状部材220の幅方向の中央位置から下方向にずれた位置において、溶接により接合してもよい。
【0035】
なお、上記フラットバーの孔あけ加工には、一般に市販されている電動油圧式パンチャーなどのフラットバー加工機を使用可能である。また、フラットバーは、アングル材よりも加工性に優れているので、孔あけ加工後に曲げ加工を行ってもボルト挿通孔240が潰れてしまうことはない。また、第1実施形態と同様に、鉄筋籠210の重量、長さ、径の大きさ、剛性などを考慮して、リング状部材220またはフランジ部材230の幅、厚み、径の大きさを設定することができる。すなわち、補強部材200の形状寸法を自由に設定することが可能となる。
【0036】
このような構成を有する補強部材200と各主筋211とを固定する際は、鉄筋籠210を横に倒した状態で、補強部材200を各主筋211に対して略直交状態で交差しつつ、各主筋211に接触するように配置する。このとき、各主筋211とリング状部材220のボルト挿通孔240とが対応するように位置合わせを行う。そして、
図7(a)に示すように、主筋211とリング状部材220との交差部分において、主筋211側からU字ボルト241をボルト挿通孔240に挿通して、ナット242で締め付けることにより、主筋211とリング状部材220とは圧接状態となる。したがって、補強部材200が各主筋211に確実かつ強固に固定されるので、鉄筋籠210の形状を確実に保持することができ、鉄筋籠210の剛性を高めることができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0038】
上記各実施形態では、鉄筋籠の各主筋が1本(単筋)の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、本発明の補強部材は、主筋が鉄筋籠の中心軸方向に向けて2本以上並べて配置される、いわゆる束ね筋方式の鉄筋籠に対しても適用することができる。また、第2実施形態において、主筋とリング状部材との交差部分を、U字ボルトおよびナットで締め付けて固定した後に、溶接により接合してもよい。
【0039】
また、上記各実施形態において、補強部材の剛性を高めるために、補強部材に連結板を設けてもよい。以下、本発明の変形例について、
図8に基づいて説明する。なお、本変形例において、上記各実施形態と下2桁が同じ符号の部位は、特に説明する場合を除き、上記各実施形態で説明したものと同様であるので説明および図示を省略する。
【0040】
図8に示すように、本変形例に係る補強部材300においては、リング状部材320と、フランジ部材330と、連結板350とを備えている。連結板350は、略直角三角形状の鋼板であり、補強部材300の周方向に所定間隔をおいて複数設けられている。この連結板350は、具体的には、リング状部材320の内周面321と、この内周面321に略直行するフランジ部材330の片方の面332とに接触するように配置され、溶接により取り付けられる。すなわち、連結板350とリング状部材320およびフランジ部材330とは、略直交状態となっており、補強部材300の剛性を高めることができる。
【0041】
したがって、このように構成された補強部材300が、鉄筋籠310に溶接または無溶接金具により取り付けられた場合、従来よりも鉄筋籠310の形状安定性を一段と向上させることができ、鉄筋籠310の型くずれ等の変形を防止することができる。なお、本変形例の補強部材300において、連結板350は、フランジ部材330の片方の面332にのみ設けることとしたが、同様に、フランジ部材330の両方の面に設けてもよい。この場合、補強部材300の剛性をさらに高めることができる。
【0042】
また、補強部材300においては、さらに、上記第2実施形態のように、一対のボルト挿通孔を複数設けるとともに、∪字ボルトおよびナットで主筋を締め付けて固定したものであってもよい。
【0043】
また、上記各実施形態および変形例における接合方法は溶接としたが、これに限られない。たとえば、接着剤による接合、または圧着による接合などでもよい。
【0044】
上記第2実施形態の固定具は、∪字ボルトとナットとからなるものであったが、これに限られず、主筋を補強部材に固定できるものであれば、どのようなものであってもよい。たとえば、一対のボルトと、一対のボルトが貫通する板状の係止部(∪字ボルトの折り返し部分と同様の機能を有した部位)と、当該係止部を主筋に当接しつつ一対のボルトを取り付けて、上記各実施形態と同様に締め付け可能な一対のナットと、を有しているものであってもよい。
【符号の説明】
【0045】
10、210、310 鉄筋籠
11、211、311、411、511 主筋
12、212 フープ筋
20、220、320 リング状部材
21、221、321、402a 内周面
22、222、322、402b 外周面
30、230、330 フランジ部材
31、231、331 外周縁
100、200、300 補強部材
240 ボルト挿通孔
241 U字ボルト
242 ナット
401 従来のリング状部材