(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】エレクトロポレーション用の増設キャップ及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61N 1/32 20060101AFI20220825BHJP
【FI】
A61N1/32
(21)【出願番号】P 2018565365
(86)(22)【出願日】2017-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2017064280
(87)【国際公開番号】W WO2017216102
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-06-11
(32)【優先日】2016-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】509168656
【氏名又は名称】オーフス ウニベルシテット
(73)【特許権者】
【識別番号】514318312
【氏名又は名称】リージョン ミッティランド
【氏名又は名称原語表記】REGION MIDTJYLLAND
【住所又は居所原語表記】Skottenborg 26, DK-8800 Viborg, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100203611
【氏名又は名称】奈良 大地
(72)【発明者】
【氏名】アアントフト,マイ-ブリット・ワーム
(72)【発明者】
【氏名】ヘールツ,トーベン
(72)【発明者】
【氏名】リュスケーア,イーベン
(72)【発明者】
【氏名】コールセン,モートン・ムービェアウ
(72)【発明者】
【氏名】ユーレ、ヴィベケ
(72)【発明者】
【氏名】ラスムッセン,マッツ・クリストファー・ハイルスコウ
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-530129(JP,A)
【文献】特開2004-261581(JP,A)
【文献】特開平10-328202(JP,A)
【文献】特表2003-502104(JP,A)
【文献】特開平11-009610(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0012247(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0058464(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00 - 1/44
A61B 1/00
18/12 - 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織のエレクトロポレーション用の増設キャップ(1)であって:
・ 円筒状の側壁などの少なくとも1つの閉鎖側壁(2)と;近位開放端部(5)と;遠位開放端部(8)と;前記少なくとも1つの閉鎖側壁並びに前記近位及び遠位開放端部が、内部体積を有する中空のボディを画定しており、
・ 前記内部体積の対向する側の2つの電極(3)であって、前記電極が、前記内部体積の内側に組織のエレクトロポレーション用の電界を適用するように構成された2つの電極と、
を含み、
前記近位開放端部(5)が、内視鏡などの機器の先端にシール係合するように適合され、
前記少なくとも1つの閉鎖側壁(2)及び前記近位及び遠位開放端部は、前記機器用の複合レシーバと、組織のエレクトロポレーション用の内部体積と、を形成
し、
前記増設キャップは、前記近位開放端部(5)から前記遠位開放端部(8)の直接的可視性を提供し、
前記遠位開放端部(8)は、前記機器の軸方向延長部に垂直な面に広がる開口であり、
真空が前記近位開放端部を通して前記内部体積に適用され得るようになっており、
エレクトロポレーションを用いて処理されるべき組織は、発生した前記真空によって前記遠位開放端部(8)を通して前記内部体積の中に引き込まれ得るようになっており、
前記内部体積は、真空が前記近位開放端部(5)を通して適用されて組織が前記遠位開放端部(8)を通して前記内部体積の中に引き込まれるとき、両開放端部(5、8)からシールされる、組織のエレクトロポレーション用の増設キャップ。
【請求項2】
前記増設キャップは、内視鏡などの、一方向に長い機器の先端に実装されるように適合され、前記増設キャップは、前記機器の軸方向に延びる、請求項1に記載の増設キャップ。
【請求項3】
前記増設キャップの長手方向の軸は、前記機器の長手方向の軸の延長部である、請求項2に記載の増設キャップ。
【請求項4】
前記2つの電極(3)は、前記2つの電極間のインピーダンスを測定するように構成される、請求項1~
3のいずれかに記載の増設キャップ。
【請求項5】
前記2つの電極(3)は、前記少なくとも1つの閉鎖側壁(2)の内側に実装される平坦な電極である、請求項1~
4のいずれかに記載の増設キャップ。
【請求項6】
少なくとも1つの温度センサ(4)を更に含み、任意的に、
前記少なくとも1つの温度センサ(4)は、前記2つの電極間の前記少なくとも1つの閉鎖側壁の内側に実装され、任意的に、
2つの温度センサ(4)が前記2つの電極間の前記内部体積の対向する側に実装される、請求項1~
5のいずれかに記載の増設キャップ。
【請求項7】
前記2つの電極(3)に連結されるケーブル(7)を更に含み、任意的に、
前記ケーブル(7)は、前記閉鎖側壁の外側に実装され、前記閉鎖側壁の穴を通して前記電極と連結する、請求項1~
6のいずれかに記載の増設キャップ。
【請求項8】
前記増設キャップの近位端部は、前記機器の遠位端部の外部表面に嵌合する、請求項1~
7のいずれかに記載の増設キャップ。
【請求項9】
前記少なくとも1つの閉鎖側壁(2)は、円筒状の閉鎖表面である、請求項1~
8のいずれかに記載の増設キャップ。
【請求項10】
・ 内視鏡と、
・ 請求項1~
9のいずれかに記載の増設キャップ(1)であって、前記内視鏡の先端に実装されるように適合され、前記内視鏡の軸方向に延びる、増設キャップと、
・ 電流発生器と、
を含み、任意的に、
前記内視鏡は、胃鏡、又は、結腸鏡、又は、膀胱鏡、又は、腎盂鏡、又は、気管支鏡、S字結腸鏡又はボアスコープである、組織のエレクトロポレーション用のシステム。
【請求項11】
前記増設キャップの前記近位開放端部(5)を通じた前記内部体積に関連する真空発生器を更に含む、請求項
10に記載のシステム。
【請求項12】
前記増設キャップの前記2つの電極(3)間のインピーダンスを測定するための手段を更に含む、請求項
10または
11に記載のシステム。
【請求項13】
前記温度センサ(4)によって測定された温度を所定の温度閾値と比較するように構成された処理手段を更に含み、および/または
前記内部体積の対向する側の前記2つの電極(3)間のインピーダンスを所定のインピーダンス閾値と比較するように構成された処理手段を更に含む、請求項
10~
12のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組織のエレクトロポレーション用の内視鏡などの機器のための増設キャップに関する。本開示は更に、増設キャップを含む組織のエレクトロポレーション用のシステムに関し、また、組織のエレクトロポレーション用の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロポレーションは、医療及び分子生物学の技術であって、電界が、細胞膜の透過性を増加させる目的で、細胞や分子に適用され、化学薬品、薬物、DNAが細胞の中に導入されるのを可能にする。エレクトロポレーションは、幾つかの可能な適用の分野を有しており、可逆的及び不可逆的の双方で使用される場合がある。典型的なエレクトロポレーションプロセスでは、短く激しい電気パルスは、一時的に細胞膜を透過性にするために発生される。
【0003】
例えば、化学療法に関連して使用されることがある可逆的なエレクトロポレーションでは、電界は、電界閾値よりも下であり、細胞が処置後に修復するのを可能にする。可逆的なエレクトロポレーションは、薬物や遺伝子などの物質を、普通であれば細胞死を誘導しなければこの物質について透過性を有しない細胞又は分子の中に、入れることを伴うことがある。細胞の電界閾値は、細胞に関して個別的である。不可逆的なエレクトロポレーションでは、電界は、電界閾値より大きく、恒久的なナノポアを細胞膜に作り出し、細胞の恒常性を崩壊させる。結果として、細胞は、アポトーシスによって死ぬ。
【0004】
可逆的なエレクトロポレーションは、公知であり、生体外(インビトロ)と生体内(インビボ)の双方で実行される。生体内でのエレクトロポレーションは、典型的に、例えば、腫瘍や周囲組織の中に挿入される針電極を用いて実行される。可逆的なエレクトロポレーション用の1つのデバイスは、Cliniporator(訳注:登録商標)システムである。不可逆的なエレクトロポレーションは、生体内で実行されることもある。不可逆的なエレクトロポレーションの1つのデバイスは、針や槍のような電極も用いるNanoKnife(訳注:登録商標)システムである。
【0005】
国際公開第2011/030322号は、組織を受容するためのチャンバと、内視鏡などの機器を受容するためのレシーバと、を含む、研究実験と組織に対する予防手順や処置手順を実行するための装置を説明している。真空が、組織をチャンバの中に引き込み、エレクトロポレーションは、その中で電極を使って適用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、組織のエレクトロポレーション用の改善された増設キャップに関し、キャップは:円筒状の側壁などの少なくとも1つの閉鎖側壁と;近位開放端部と;遠位開放端部と;少なくとも1つの閉鎖側壁ならびに近位および遠位開放端部は内部体積を有する中空のボディを画定している;そして、内部体積の対向する側の2つの電極であって、電極が、内部体積の内側に組織のエレクトロポレーション用の電界を適用するように構成され、近位開放端部が、内視鏡などの機器の先端にシール係合するように適合される、2つの電極と、を含む。
【0007】
2つの内部電極を備えたキャップは、2つの開放端部を有し、その一方が機器の先端にシール係合できるので、キャップは、エレクトロポレーションを実行するために内視鏡に容易に取り付けて使用することができ、同時に、キャップの中に吸引される組織をキャップの内側から画像化することによって、エレクトロポレーション前とエレクトロポレーション中の双方におけるデバイス位置決め時の可視性が提供される。真空発生器が内視鏡を通して内部体積に連結される場合、組織は、針電極の必要無しでキャップの内側で取り扱われることができ、同時に、プロセスは、キャップの内側から観察される。
【0008】
現在開示する増設キャップは、内視鏡の先端に直接取り付けられることができる。用語「内視鏡(endoscope)」は、剛性及び可撓性を有する内視鏡を含む任意の内視鏡と解釈すべきである。キャップの少なくとも1つの閉鎖側壁と開放端部は、増設キャップが機器の軸方向に延びるように、機器用の複合レシーバと、組織のエレクトロポレーション用の内部体積と、を形成することが好ましい。したがって、キャップは、2つの開放端部を備え、近位開放端部が内視鏡に嵌合する、実質的に円筒形状を有することがある。電極に対する電気的な配線は、閉鎖側壁の外側のケーブルを用いて提供されることがあり、ケーブルは、閉鎖側壁の穴を通して電極に連結される。ケーブルを外側に配置することにより、ケーブルを備えたキャップは、近位開放端部を先端に通すことによって、内視鏡の先端に容易に取り付けることができる。ケーブルは、次いで、内視鏡の外側で内視鏡に沿って進んで、例えば、内視鏡の上にクリップ留めすることができる。このセットアップは、更に、内部体積の内側の可視性と、エレクトロポレーション中の生検及び/又は注入による化学療法などの内部体積の内側での追加(活動)の可能性と、の双方を改善する。
【0009】
本開示は更に、組織のエレクトロポレーション用のシステムに関し、システムは:内視鏡と;内視鏡の先端に実装されるように適合され、内視鏡の軸方向に延びる、目下開示された増設キャップと;そして、電流発生器と、を含む。
【0010】
本開示は更に、内視鏡の先端に増設キャップが実装される、目下開示されたシステムを用いる組織のエレクトロポレーションのための方法に関し、方法は:エレクトロポレーションを用いて処理されるべき組織に隣接する増設キャップの遠位開放端部を位置決めするステップであって、位置決めするステップが遠位開放端部から近位開放端部に増設キャップを通して画像化することによって視覚的に補助される、位置決めするステップと;増設キャップの近位開放端部を通して内部体積に真空を適用し、それによって組織を内部体積の中に吸引するステップと;そして、電界を増設キャップの電極間に適用することによって、吸引された組織をエレクトロポレーションするステップと、を含む。画像化は、内視鏡の標準レンズを通して提供される場合がある。一実施態様では、方法は:吸引された組織のエレクトロポレーションの前に、2つの電極間のインピーダンスを測定し、所定のインピーダンス閾値と比較するステップと;そして、比較に基づいて、エレクトロポレーションが開始されるべきか否かを決定するステップと、を含む。キャップを位置決めすること及び組織の吸引のプロセス全体に亘るキャップの視覚的な観察と、電極間のインピーダンスを測定することと、の組合せは、エレクトロポレーションが正しく実行されるのを確実にする効率的なやり方を提供する。インピーダンスを測定することは、電極と吸引され組織との接触についての情報及び材料の特徴についての情報―ユーザに処置の結果を知らせるために更に使用されることがある―を提供することがある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】現在開示するエレクトロポレーション用の増設キャップの第1の実施形態を示す図である。
【
図2】異なった角度から
図1の増設キャップを示す図である。
【
図3】異なった角度から
図1~
図2の増設キャップを示す図である。
【
図4】現在開示するエレクトロポレーション用の増設キャップの第2の実施形態を示す図である。
【
図5】胃鏡の先端に実装された
図4の増設キャップを示す図である。
【
図6】現在開示するエレクトロポレーション用の増設キャップの内側からの図であり、キャップが腸空洞の中に位置決めされている。
【
図7】現在開示するエレクトロポレーション用の増設キャップの内側からの図であり、腸粘膜がキャップの中に吸引されている。
【
図8】現在開示するエレクトロポレーション用の増設キャップの内側からの図であり、腸粘膜がキャップの中に吸引され、硬化療法針が、吸引された組織の中に物質を注入するために使用されている。
【
図9】現在開示するエレクトロポレーション用の増設キャップの内側からの図であり、生検鉗子が腸粘膜のサンプルを収集するために使用されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、組織のエレクトロポレーション用のキャップに関し、キャップは:
・ 円筒状の側壁などの少なくとも1つの閉鎖側壁と;近位開放端部と;遠位開放端部と;少なくとも1つの閉鎖側壁ならびに近位および遠位開放端部が、内部体積を有する中空ボディを画定している;
・ 内部体積の対向する側の2つの電極であって、電極が、内部体積の内側に組織のエレクトロポレーション用の電界を適用するように構成される2つの電極と、
を含み、
近位開放端部が、内視鏡などの機器の先端にシール係合するように適合される。
【0013】
本開示の用語「近位(proximal)」及び「遠位(distal)」は、機器に関連して定義され、即ち、キャップの近位端部は、機器の方に位置し、キャップの遠位端部は、組織の方に位置する。
【0014】
キャップが2つの開放端部を有し、その一方が内視鏡などの機器の先端にシール係合できる、という事実は、キャップを通した可視性をユーザが有しながらエレクトロポレーションプロセスが実行できるように、それを内視鏡の先端に取り付けることを可能にする。国際公開第2011/030322号に開示された従来技術のデバイスは、機器を受容するための1つのレシーバと1つのチャンバとを有し、レシーバとチャンバが径方向にオフセットしている。現在開示するキャップでは、閉鎖側壁は、2つの開放端部を備えた中空ボディを有し、その一方が機器の先端のまわりに直接取り付けられる。それによって、ユーザは、エレクトロポレーションプロセスの全体に亘って可視性を有するであろう。第1の段階では、キャップの位置決め中、ユーザは、内視鏡の延長部を形成するキャップを通した可視性を有するであろう。国際公開第2011/030322号のデバイスと対照的に、ユーザは、キャップの前で組織を見ることができる。可視性は、例えば、内視鏡のような標準の画像化能力を用いて提供することができる。第2の段階では、組織は、内視鏡を通して連結される真空発生器を用いてキャップの中に引き込まれる。第2の段階では、ユーザは、キャップの中に引き込まれる組織をキャップの内側から観察することができる。第3の段階では、エレクトロポレーションは、中空のボディの電極を通して電界を適用することによって実行される。したがって、増設キャップは、機器の先端に直接実装することができ、使用するにおいてキャップを既存のシステムに更に適合させることは要しない。キャップは、電極に連結されるケーブルを具備することが好ましい。一実施形態では、ケーブルは、閉鎖側壁の外側に実装され、閉鎖側壁の穴を通して電極に連結される。ケーブルを外側に配置することにより、ケーブルを備えたキャップは、近位開放端部を先端に通すことによって、内視鏡の先端に容易に取り付けることができる。ケーブルは、次いで、内視鏡の外側で内視鏡に沿って進むことができ、例えば、内視鏡の上にクリップ留めすることができる。したがって、現在開示する増設キャップは、位置決めとキャップを通した実際のエレクトロポレーションの双方の視覚的な観察を可能にしながら、更なる統合の必要無しで内視鏡に対するエレクトロポレーションを提供することのできるデバイスと理解されることがある。
【0015】
キャップの少なくとも1つの閉鎖側壁と2つの開放端部は、増設キャップが機器の軸方向に延びるように、機器用の複合レシーバと、組織のエレクトロポレーション用の内部体積と、を形成することが好ましい。一実施形態では、増設キャップの縦軸は、キャップが機器に取り付けられるときの機器の縦軸の延長部である。この構成では、近位開放端部から遠位開放端部への直接の可視性が存在する。側壁は、機器の延長部として形成されることがある。遠位開放端部は、機器の軸方向延長部に実質上垂直である開口であることがある。
【0016】
「真空(vacuum)」は、一般に大気圧よりもずっと小さい圧力と呼ばれることがある。本発明との関係で、「真空」は、真空が組織をキャップの中に引き込むことができるという意図における少なくとも部分的な真空(不完全な真空)と広く解釈される。一実施形態では、近位開放端部は、真空が近位開放端部を通して内部体積に適用され得るように、機器にシール係合する。これの関連で、キャップの内部体積は、エレクトロポレーション中に閉鎖体積と理解されることがあり、その理由は、近位端部が機器の先端にシール係合し、遠位開放端部がキャップの中に引き込まれる組織によって典型的にシールされるからである。したがって、内部体積は、真空が近位開放端部を通して適用され、組織が遠位開放端部を通って内部体積の中に引き込まれるときに、両開放端部から実質上シールされ得る。
【0017】
エレクトロポレーション用のキャップを使用するために、幾つかの選択肢とシナリオが存在する。1つの選択肢は、薬物などの物質が循環システムに追加されるということである。エレクトロポレーションプロセス中に、細胞膜の透過性が増加し、循環システム内の物質が細胞の中に移動するのを可能にする。第2の選択肢は、内部体積を液体で満たすことであり、この液体は、化学薬品、薬物、遺伝子治療ベクター、siRNA、又は、DNAを含み、近位開放端部を通って細胞の中に導入されるべきであり、その間、組織は、キャップの内側にあり、キャップの遠位開放端部をブロックする。アデノウィルスCRISPR-Casベクター送達は、この選択肢を用いて行われることもある。このプロセス中、キャップの内側からのスコープから処置を観察することが可能である。現在開示するエレクトロポレーション用の増設キャップを用いることで可能になる第3の選択肢は、物質を組織の中に注入するために増設キャップを通る注入針を使用することである。また、このシナリオでは、利点は、注入がキャップを通して視覚的に観察できることである。
【0018】
[キャップの物理的特性]
キャップは、胃鏡、結腸鏡、膀胱鏡、腎盂鏡、気管支鏡、S字結腸鏡、及び、ボアスコープを含む内視鏡などの幾つかの機器に適合するように寸法決めされてよい。キャップの直径、特に、側壁の直径は、例えば、1~20mm、又は、5~20mm、又は、10~20mm、又は、5~15mm、又は、5~10mmであることがある。胃や十二指腸で使用するための胃鏡に適した一実施形態では、キャップは、8.8mmの外側直径を有する。大腸で使用するための結腸鏡に適した他の実施形態では、キャップは、13.2mmの外側直径を有する。膀胱や尿管で使用するための可撓性膀胱鏡に適した一実施形態では、キャップは、2.7mmの外側直径を有する。キャップの他の可能で公知の外側直径は、13.9mmと14.9mmである。
【0019】
キャップの長さ、即ち、2つの開放端部間の距離は、1~20mm、又は、5~20mm、又は、10~20mm、又は、5~15mm、又は、5~10mmの範囲にあってよい。適切な長さは、側壁の直径に依存するといえるのであって、また、キャップの内側からキャップを通しての可視性も考慮しなければならない。長めのキャップは、短めに比べてキャップ外側での乏しい可視性を有するであろう。他方、長めのキャップは、大きめの内部体積を有し、例えば、より多くの組織を処置するのに役立つことがある。したがって、直径と長さの適切な組合せは、5から15mmの間の直径と、5から15mmの間の長さであり得る。
【0020】
増設キャップの近位端部は、機器の遠位端部の外側表面に嵌合することが好ましい。これの関連で、少なくとも1つの閉鎖側壁は、円形の断面を典型的に有する機器の先端の上にスナップ止めできる又は先端を通すことができるように形状付けされることがある。したがって、開放近位端部は、実質上円形であることがあり、少なくとも1つの閉鎖側壁は、実質上円筒状の閉鎖表面であることがある。近位及び遠位の開放端部は、結果として、円筒体の上部及び底部部分として表されることがある。少なくとも1つの閉鎖側壁及び開放端部は、内視鏡キャップを形成してよい。中空のボディ、または閉鎖側壁の少なくとも近位セクションは、機器の先端のまわりにシール取付けする目的で、テーパ付けされ、並びに/或いは、円錐状及び/又は漏斗状に形状付けされることがある。更に、閉鎖側壁は、キャップが機器に実装されるときに、機器の軸方向の機器の延長部としてみられることがある。
【0021】
閉鎖側壁の内側の内部体積の対向する側に2つの電極が存在するが、実施形態によっては、透明なキャップを用いることによって可視性を更に増加させることが可能である。したがって、現在開示する増設キャップは、中空の透明な円筒体などの透明な内視鏡キャップにしてもよい。増設キャップは、プラスチック材料及び/又はシリコーンで作られることがあり、また、組織の損傷を回避するために円滑な外部表面を有することがある。
【0022】
キャップの他の形状や断面も可能である。例えば、中空のボディは、実質上矩形の3次元形状を有することがある。中空のボディの断面は、楕円であることもあり、或いは、多角形、好ましくは、等辺及び/又は凸状の多角形、三角形、四角形、五角形、六角形、又は七角形などの多角形を形成することもある。
【0023】
[温度センサ、インピーダンス測定、電気的特性]
現在開示する組織のエレクトロポレーション用の増設キャップは、内部体積の中に少なくとも1つの温度センサを更に含むことがある。少なくとも1つの温度センサは、2つの電極間の少なくとも1つの閉鎖側壁の内側に実装されることが好ましい。発生する熱は、生体内エレクトロポレーションについて考慮するためのファクタである。過剰の熱が放散される場合、体内の周囲の組織が損傷することがある。増設キャップが、組織がキャップの中に引き込まれるときにエレクトロポレーションの間の閉鎖された内部体積を提供し得る、という事実は、プロセス中に周囲の組織を保護する。温度センサは、2つの電極間の少なくとも1つの閉鎖側壁の内側であってプロセスと、キャップを通した可視性と、に干渉しない場所に配置され得る。温度センサは、エレクトロポレーションプロセスの全体に亘って周囲の組織の損傷の何らかのリスクが存在するかどうかをユーザに通知し続けることがある。測定した温度が所定の温度閾値よりも上にある場合、エレクトロポレーションは、手動又は自動で停止される場合がある。
【0024】
一実施形態では、2つの温度センサは、2つの電極間の内部体積の対向する側に実装される。対向する側の2つのセンサは、一方の側の温度だけが測定されて温度が他方の側で偶然に高めであるのを回避することによって、安全性を追加的に提供する。
【0025】
増設キャップの別実施形態では、2つの電極は、2つの電極間のインピーダンスを測定するように構成される。2つの電極は、少なくとも1つの閉鎖側壁の内側に実装される平坦な電極であることがある。インピーダンスは、電流に対する電圧の周波数領域比と定義される。インピーダンスは、抵抗と同じくらい容易には測定することのできないAC特性であると言われる場合がある。インピーダンスの測定は、1つの周波数で実行されることがあり、或いは、周波数範囲に亘るデバイスインピーダンスの変動が興味の対象となってもよい。現在の増設キャップに関して、インピーダンスは、例えば、約50kHzの測定周波数を実行されることがある。
【0026】
エレクトロポレーションプロセスは、可逆的及び不可逆的なエレクトロポレーションの双方のために使用されることがある。適用される電圧は、電圧の範囲に何ら限定されないが、30Vと400Vの間にであってよい。適用されるパルスは、長さが、10μsから1000μs、より好ましくは、200μsと800μsの間、更に好ましくは、600μsなどの500μsと700μsの間にすることがある。パルス間の時間は、10msから1000ms、好ましくは、10msと500msの間、より好ましくは、10msと200msの間にすることがある。
【0027】
[組織のエレクトロポレーションのためのシステム]
本開示は、更に、組織のエレクトロポレーション用のシステムに関し、システムは:
・ 内視鏡と;
・ 上で説明したような増設キャップであって、内視鏡の先端に実装されるように適合され、内視鏡の軸方向に延びる、増設キャップと;そして、
・ 電流発生器と、を含む。
【0028】
内視鏡は、胃鏡、又は、結腸鏡、又は、膀胱鏡、又は、腎盂鏡、又は、気管支鏡、又は、ボアスコープであることがある。システムは、更に、増設キャップの近位開放端部を通して内部体積に関連して真空発生器を説明することがある。内視鏡は、真空を適用するために使用することのできる内部チャネルを典型的に有する。
【0029】
システムは、インピーダンスを測定するための手段(デバイス)を更に含むことがある。システムは、処理手段及び/又は処理モジュールを更に含むことがある。処理モジュールは、コンピュータ又はコンピュータの一部にすることができよう。処理モジュールは、2つの電極間のインピーダンスを測定及び処理するように構成されることがある。インピーダンスは、次には、エレクトロポレーションが開始できるか否かを決定する目的で、定義済み閾値と比較される場合がある。インピーダンスチェックは、自動式である場合がある、及び/又は、測定したインピーダンスが閾値の上又は下であるか否かをユーザに表示することを伴うこともある。
【0030】
処理モジュールは、(単数または複数の)温度センサによって測定された温度を所定の温度閾値と比較するように構成されることもある。
増設キャップ及びシステムは、1対のケーブルを含むことがある。電極に連結されるケーブルは、内視鏡に沿って内視鏡の外側に位置決めされることがある。ケーブルを外側に配置することにより、ケーブルを備えたキャップは、近位開放端部を先端に通すことによって、内視鏡の先端に容易に取り付けることができる。ケーブルは、次いで内視鏡の外側で内視鏡に沿って進む場合があり、例えば、内視鏡の上にクリップ留めすることができる。
【0031】
システムは、サンプルを組織から取るための生検鉗子、及び/又は、物質を組織の中に注入するための皮下注射針、を更に含むことがある。現在開示する増設キャップは、エレクトロポレーション中の内部体積の内側の可視性を可能にする。
【0032】
[組織のエレクトロポレーションのための方法]
本開示は、更に、増設キャップが内視鏡の先端に実装される、本開示に係るシステムを用いる組織のエレクトロポレーションのための方法に関し、方法は:
a) エレクトロポレーションを用いて処理されるべき組織に隣接する増設キャップの遠位開放端部を位置決めするステップであって、位置決めするステップが遠位開放端部から近位開放端部に増設キャップを通して画像化することによって視覚的に補助される、位置決めするステップと;
b) 増設キャップの近位開放端部を通して内部体積に真空を適用し、それによって組織を内部体積の中に吸引するステップと;そして、
c) 電界を増設キャップの電極間に適用することによって、吸引された組織をエレクトロポレーションするステップと、を含む。
【0033】
方法は、現在開示する増設キャップ及びシステムの任意の変形例を用いることがある。ステップは、順番である。当技術分野で公知であるデバイス及び方法に関する1つの利点は、全プロセスがキャップの内側からの画像化モダリティによって視覚的に補助され得るということである。
【0034】
システムは、2つの電極間のインピーダンスを測定及び処理するように構成される処理モジュールを含むことがあるので、インピーダンスを測定すること及び定義済み閾値と比較することは、可能であり、電極がエレクトロポレーション開始前に組織と良好に接触することを検証する。一実施形態では、エレクトロポレーションは、測定したインピーダンスが定義済みのインピーダンス閾値よりも下にある場合に、開始される。方法は:
i. 吸引された組織のエレクトロポレーションの前に、2つの電極間のインピーダンスを測定し、所定のインピーダンス閾値と比較するステップと;
ii. 比較に基づいて、エレクトロポレーションが開始されるべきか否かを決定するステップと、をさらに含み得る。
【0035】
ステップi)及びii)は、ステップb)及びc)間で順番に実行することが好ましい。測定したインピーダンスが定義済みのインピーダンス閾値よりも上にある場合、電極と組織の接触が十分でないことを示すことがある。このケースでは、遠位開放端部は、より良い位置や角度を有するために再位置決めされることがある。一実施形態では、ステップa~b及びi~iiは、測定したインピーダンスが定義済みインピーダンス閾値よりも下にあるように、組織が配置されるまで、反復繰り返されることがある。
【0036】
方法は、エレクトロポレーション中に増設キャップの内側又は外側の温度を測定するステップを更に含むことがある。温度が定義済み温度閾値を超える場合、エレクトロポレーションは、周囲の組織を損傷させない目的で停止又は中断されることがある(ステップc)。
【0037】
[図面の詳細な説明]
発明は、以下において、添付図面を参照して詳細に説明されるであろう。図面は、例示的であり、現在開示するエレクトロポレーション用の増設キャップ及びシステムの幾つかの特徴を例証することを意図しており、現在開示する発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0038】
図1は、現在開示するエレクトロポレーション用の増設キャップ(1)の第1の実施形態を示す。キャップは、内部体積の対向する側の閉鎖側壁(2)2つの電極(3)を有する。例では、2つの電極(3)間の内部体積の対向する側に2つの温度センサ(4)が存在する。近位開放端部(5)は、内視鏡の先端に嵌合するためにシール係合するように設計される。第1のペアのケーブル(6)は、温度センサ(4)に連結され、第2のペアのケーブル(7)は、電極(3)に連結される。
【0039】
図2は、異なった角度から
図1の増設キャップ(1)を示す。理解できることは、閉鎖側壁(2)の近位セクション(14)が内視鏡の先端と嵌合するために僅かにテーパになっていることである。また、キャップは、透明であることがある遠位セクション(15)を有する。組織は、遠位開放端部(8)を通してキャップの中に引き込まれ得る。
【0040】
図3は、異なった角度から
図1~
図2の増設キャップ(1)を示す。閉鎖側壁(2)は、実質上円形の断面を有する。
図4は、現在開示するエレクトロポレーション用の増設キャップ(1)の第2の実施形態を示す。この実施形態は、温度センサを何ら有していない。側壁(2)は、実質上円筒状である。
【0041】
図5は、胃鏡(9)の先端に実装された
図4の増設キャップ(1)を示す。温度センサ(4)に連結された第1のペアのケーブル(6)と、電極(3)に連結された第2のペアのケーブル(7)と、が胃鏡(9)の外側に配置されることに留意されたい。
【0042】
図6は、現在開示するエレクトロポレーション用の増設キャップ(1)の内側からの図を示し、キャップが腸空洞(10)の中に位置決めされる。キャップは、閉鎖側壁(2)と、内部体積の対向する側の2つの電極(3)と、を有する。これは、デバイスの位置決め中の典型的な図である。内視鏡の画像化のリム(11)及びレンズ間の距離は、デバイスの位置決め中に視界が提供される角度を決定する。
【0043】
図7は、現在開示するエレクトロポレーション用の増設キャップ(1)の内側からの図を示し、腸粘膜(12)がキャップの中に吸引される。遠位開放端部(8)がそれによって実質上シールされることに留意されたい。
【0044】
図8は、現在開示するエレクトロポレーション用の増設キャップ(1)の内側からの図を示し、腸粘膜(12)がキャップの中に吸引され、硬化療法針(13)が、吸引された組織の中に物質を注入するために使用される。処理は、キャップ(1)の内側から観察される。
【0045】
図9は、現在開示するエレクトロポレーション用の増設キャップ(1)の内側からの図を示し、生検鉗子(14)が腸粘膜(12)のサンプルを収集するために使用される。処理は、キャップ(1)の内側から画像化することによって補助される。