(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】車室半体の上下反転方法、それに用いる回転シャフトブラケット及び反転用架台
(51)【国際特許分類】
F01D 25/28 20060101AFI20220825BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
F01D25/28 E
F01D25/00 X
F01D25/28 C
(21)【出願番号】P 2019026837
(22)【出願日】2019-02-18
【審査請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【氏名又は名称】山下 和也
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】尾刀 武馬
(72)【発明者】
【氏名】野村 篤嗣
(72)【発明者】
【氏名】井川 達哉
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05316436(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0199009(US,A1)
【文献】実開平01-113108(JP,U)
【文献】再公表特許第2014/013534(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/28
F01D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンの車室半体を上下反転させる車室半体の上下反転方法であって、
回転シャフトを有する回転シャフトブラケットを、タービン軸方向における前記車室半体の一方側及び他方側に配置し、一方側の前記回転シャフトと他方側の前記回転シャフトとが同軸状で且つ前記タービン軸方向と平行となるように前記車室半体に取り付ける工程と、
前記回転シャフトの中心軸を中心に前記回転シャフトを回転させることで、前記車室半体を上下反転させる工程と、を備え、
前記車室半体と他の車室半体は、それぞれに設けられた継手面を突き当て、前記継手面のそれぞれに設けられたボルト孔に跨がって挿入されるボルトにより連結されるようになっており、
前記回転シャフトブラケットは、前記車室半体の前記継手面に突き当てられる台板を有するブラケット本体を備え、前記台板を前記車室半体の前記継手面に突き当てられた状態で、前記車室半体の前記継手面に設けられた前記ボルト孔と前記台板に設けられたボルト孔とに挿入されるブラケット締結用ボルトにより前記車室半体に取り付けられる、車室半体の上下反転方法。
【請求項2】
前記回転シャフトは、前記タービン軸方向で前記車室半体から突出するように前記車室半体に取り付けられる、請求項1に記載の車室半体の上下反転方法。
【請求項3】
前記回転シャフトブラケットは、前記台板から立ち上がる一対の取付け板を有し、前記一対の取付け板の間で前記回転シャフトが支持されている、請求項1又は2に記載の車室半体の
上下反転方法。
【請求項4】
前記タービン軸方向の一方側の前記回転シャフト及び他方側の前記回転シャフトのそれぞれを反転用架台に載せ、前記反転用架台上に前記車室半体を支持する工程をさらに備え、
前記回転シャフトを前記反転用架台上で回転させることで、前記車室半体を上下反転させる、請求項1乃至3のいずれかに記載の車室半体の上下反転方法。
【請求項5】
前記反転用架台は、前記回転シャフトを回転可能に支持する支持面を有し、
前記回転シャフトは、前記支持面上で回転される、請求項4に記載の車室半体の上下反転方法。
【請求項6】
前記回転シャフトブラケットは、前記回転シャフトの中心軸が前記車室半体の重心と重なるように前記車室半体に取り付けられる、請求項1乃至5のいずれかに記載の車室半体の上下反転方法。
【請求項7】
蒸気タービンの車室半体を上下反転させる車室半体の上下反転方法であって、
回転シャフトを有する回転シャフトブラケットを、タービン軸方向における前記車室半体の一方側及び他方側に配置し、一方側の前記回転シャフトと他方側の前記回転シャフトとが同軸状で且つ前記タービン軸方向と平行となるように前記車室半体に取り付ける工程と、
前記回転シャフトの外周面に牽引用ワイヤの一端を連結して、前記牽引用ワイヤを前記回転シャフトの外周面に沿わせる工程
と、
前記回転シャフトの中心軸を中心に前記回転シャフトを回転させることで、前記車室半体を上下反転させる工程と、を備え、
前記回転シャフトは、前記牽引用ワイヤの他端が引っ張られることで回転される、車室半体の上下反転方法。
【請求項8】
前記牽引用ワイヤの他端がチェーン牽引具のチェーンの一端に連結され、前記チェーン牽引具の前記チェーンにより前記牽引用ワイヤの他端が引っ張られる、請求項7に記載の車室半体の上下反転方法。
【請求項9】
蒸気タービンの車室半体を上下反転させるために前記車室半体に取り付けられる回転シャフトブラケットであって、
回転シャフトと、
前記回転シャフトを支持するとともに、前記車室半体に取り付けられるブラケット本体と、を備え、
前記ブラケット本体が前記車室半体に取り付けられた際に、前記回転シャフトがタービン軸方向と平行になり、前記回転シャフトの中心軸を中心に前記回転シャフトが回転することで、前記車室半体を回転させる
ようになっており、
前
記車室半体と他の車室半体は、それぞれに設けられた継手面を突き当て、前記継手面のそれぞれに設けられたボルト孔に跨がって挿入されるボルトにより連結されるようになっており、
前記ブラケット本体は、前記車室半体の前記継手面に突き当てられる台板を有し、前記台板を前記車室半体の前記継手面に突き当てられた状態で、前記ブラケット本体を貫通して前記ボルト孔と前記台板に設けられたボルト孔とに挿入されるブラケット締結用ボルトにより前記回転シャフトブラケットは前記車室半体に取り付けられる、回転シャフトブラケット。
【請求項10】
前記回転シャフトブラケットは、前記台板から立ち上がる一対の取付け板を有し、前記一対の取付け板の間で前記回転シャフトが支持されている、請求項9に記載の回転シャフトブラケット。
【請求項11】
蒸気タービンの車室半体を上下反転させるために前記車室半体に取り付けられる回転シャフトブラケットであって、
回転シャフトと、
前記回転シャフトを支持するとともに、前記車室半体に取り付けられるブラケット本体と、を備え、
前記ブラケット本体が前記車室半体に取り付けられた際に、前記回転シャフトがタービン軸方向と平行になり、
前記回転シャフトは、前記ブラケット本体との相対位置を調整可能に前記ブラケット本体に支持さ
れ、
前記回転シャフトの中心軸を中心に前記回転シャフトが回転することで、前記車室半体を回転させる、回転シャフトブラケット。
【請求項12】
蒸気タービンの車室半体を上下反転させるために前記車室半体に取り付けられる回転シャフトブラケットであって、
回転シャフトと、
前記回転シャフトを支持するとともに、前記車室半体に取り付けられるブラケット本体と、を備え、
前記ブラケット本体が前記車室半体に取り付けられた際に、前記回転シャフトがタービン軸方向と平行になり、
前記回転シャフトの外周面に、牽引用ワイヤの一端を連結可能な連結部が設けら
れ、
前記回転シャフトの中心軸を中心に前記回転シャフトが回転することで、前記車室半体を回転させる、回転シャフトブラケット。
【請求項13】
蒸気タービンの車室半体を上下反転させるために前記車室半体に取り付けられる、回転シャフトを有する回転シャフトブラケットを介して前記車室半体を支持する反転用架台であって、
前記回転シャフトを回転可能に支持する支持面を上部に備えるとともに、前記支持面に支持された前記回転シャフトの外周面に一端が連結された牽引用ワイヤの他端にチェーンの一端を連結させたチェーン牽引具のチェーン駆動部を保持する工具保持部を側部に備え、
前記チェーンの一端が前記工具保持部に保持された前記チェーン駆動部に向けて移動した際に、前記回転シャフトを前記支持面上で回転させる、反転用架台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、車室半体の上下反転方法、それに用いる回転シャフトブラケット及び反転用架台に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンは、ノズル(静翼)で加速した蒸気流を動翼に流入させ、蒸気の持つエネルギーを動翼によってタービンロータの回転エネルギーに変換する外燃機関である。蒸気タービンは、ノズル及び動翼を車室と呼ばれる容器に収容している。車室は、一般に、ノズル、動翼及び動翼を保持するタービンロータを収容する内部車室と、内部車室の外側に設けられ、内部車室を収容する外部車室と、から構成される。また、内部車室及び外部車室は、一般に、それぞれ上下に車室上半と車室下半とに分かれている。これら車室上半及び車室下半は、通常、車室上半及び車室下半の周縁部に設けられた継手面を互いに突き当てた状態でボルトにより締結されることで連結されている。
【0003】
発電所は、定期検査の実施を義務づけられており、このような定期検査では、蒸気タービンの検査も実施される。この際、蒸気タービンの検査とともに、蒸気タービン各部の補修工事等を実施する場合がある。例えば、車室の内外面の非破壊検査とともに、内外面の補修工事を行ったり、又は車室上半及び車室下半の継手面の修正加工を行ったりする場合がある。継手面は、蒸気タービンの運転中に蒸気の熱により変形が生じ易い部分であり、修正加工等が必要となること多分にある。
【0004】
上述のような補修工事等を行う際には、通常、据付状態で下方を向く車室上半の継手面を上向きにさせるべく車室上半の上下反転作業が実施される。この場合、発電所のタービン建屋に据え付けられている天井クレーンを用いて、車室上半を上下反転させることがある。
【0005】
発電所のタービン建屋に設置された天井クレーンが主巻と補巻とを有し、補巻能力が車室半体の重量の半分以上である場合には、主巻と補巻とを併用した4点吊りによる上下反転が可能である。しかし、補巻能力が車室半体の重量の半分以下である場合や、補巻を有さない天井クレーンである場合には、4点吊りによる上下反転を行うことができない。この場合、天井クレーン主巻のみによる2点吊りにて上下反転を行う必要がある。
【0006】
上記4点吊りも2点吊りも技術的に難しく危険な作業である。特に2点吊りは4点吊りに比べ技術的に難しい作業であるため、熟練した特殊技能を持つクレーン運転手・玉掛け合図者による作業が必要となる。しかし、近時、このような技能者は減少傾向にあり、希少になりつつある。
【0007】
また、定期検査中においては、蒸気タービン以外の部分、例えば発電機等の分解や保修においても天井クレーンが使用される場合があり、天井クレーンの使用頻度が高くなる。そのため、天井クレーンを車室上半の上下反転に優先して使用することが難しくなる状況が生じ得る。また、車室上半の上下反転作業における天井クレーンの使用時間は当然に短縮化を求められる。
【0008】
以下、一般的な4点吊り及び2点吊りによる車室の上下反転方法を、
図22及び
図23を参照しつつ説明する。
図22及び
図23において、符号1は車室上半を示している。車室上半1の2つの側部のうちの一方には一対の車室トラニオン2a,2bが設けられ、他方にも一対の車室トラニオン2c,2dが設けられている。車室トラニオン2a,2cは、タービン軸方向の一方側に設けられ、車室トラニオン2b,2dは、タービン軸方向の他方側に設けられている。なお、車室トラニオン2c,2dは
図22及び
図23の紙面の奥側に位置するため、図中には表れないが、それぞれの設置位置は、説明の便宜上、破線の引き出し線で示されている。また、
図22には、主巻フック101及び補巻フック102を有する天井クレーン100が示され、
図23には、補巻フックを有さず、一つのフック111を有する天井クレーン110が示されている。
【0009】
まず、4点吊りによる上下反転について説明する。
図22(A)を参照し、ワイヤ300aを、車室トラ二オン2aに掛けるとともに、主巻フック101に掛け、ワイヤ300cを、車室トラ二オン2cに掛けるとともに、主巻フック101に掛ける。また、ワイヤ300bを、車室トラ二オン2bに掛けるとともに、補巻フック102に掛け、ワイヤ300dを、車室トラ二オン2dに掛けるとともに、補巻フック102に掛ける。その後、主巻フック101と補巻フック102とを同時に巻き上げて、車室上半1を吊り上げる。
【0010】
次いで、
図22(B)に示すように、主巻フック101に対して補巻フック102を吊り下げ、
図22(C)に示すように車室上半1の継手面が上下方向に沿う位置まで、車室上半1を回転させる。
【0011】
次いで、
図22(D)に示すように、補巻フック102に掛けられているワイヤ300b,300dを車室トラニオン2b,2dから取り外す。そして、主巻フック101に吊り下げられている車室上半1を垂直方向軸を中心に回転させ、
図22(E)に示すように、垂直方向軸回りで反転させる。この際、補巻フック102に掛けられているワイヤ300b,300dが車室上半1と干渉しないように、ワイヤ300b,300dを所定位置に保持する。
【0012】
次いで、
図22(D)で取り外したワイヤ300b,300dを再び車室トラニオン2b,2dに掛ける。そして、
図22(F)に示すように、車室上半1の継手面が水平方向に沿う位置まで、補巻フック102を巻き上げ、これにより、車室上半1が上下反転する。
【0013】
続いて、2点吊りによる車室の上下反転を説明する。まず、
図23(A)に示すように、ワイヤ300aを、車室トラ二オン2aに掛けるとともに、フック111に掛け、ワイヤ300cを、車室トラ二オン2cに掛けるとともに、フック111に掛ける。
【0014】
次いで、
図23(B)に示すように、フック111を巻き上げて、車室上半1の片側を吊り上げる。この際、矢印Cに示すように、フック111を車室上半1の床面接地位置の側に横行させる。そして、
図23(C)に示すように、車室上半1の継手面が上下方向に沿う位置まで、車室上半1を回転させる。
【0015】
次いで、フック111で吊り下げられた車室上半1を垂直方向軸を中心に回転させ、
図23(C)に示すように、垂直方向軸回りで反転させる。
【0016】
次いで、
図23(D)に示すように、車室上半1を反転用架台400Aに仮置きする。この際、車室上半1における車室トラ二オン2b,2d側の端部を反転用架台400Aの上面に上方から当てる。続いて、
図23(E)の矢印Dに示すように、フック111を、反転用架台400Aから離れる側に横行させつつ下げて、反転用架台400Aに接する車室上半1の端部を支点として、車室上半1を傾ける。そして、車室上半1の継手面が水平方向に沿う位置まで、フック111を操作し、これにより、車室上半1が上下反転する。この際、車室上半1における車室トラ二オン2a,2c側の端部を反転用架台400Aとは別の反転用架台400Bに載せる。
【0017】
以上のように4点吊り及び2点吊りは特殊技能が必要な作業であり、熟練した特殊技能を持つクレーン運転手・玉掛け合図者を招聘し、作業を実施する必要がある。このような点を考慮し、車室の上下反転や分解を容易に且つ効率的に行うことを目的とした技術がこれまでに種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】特開平10-317912号公報
【文献】特開2014-177888号公報
【文献】特開2017-125411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明が解決しようとする課題は、天井クレーンの使用時間を可及的に抑制しつつ、低コストで且つ容易に車室半体の上下反転を実施できる車室半体の上下反転方法、それに用いる回転シャフトブラケット及び反転用架台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
一実施の形態にかかる車室半体の上下反転方法は、蒸気タービンの車室半体を上下反転させる車室半体の上下反転方法であって、回転シャフトを有する回転シャフトブラケットを、タービン軸方向における前記車室半体の一方側及び他方側に配置し、一方側の前記回転シャフトと他方側の前記回転シャフトとが同軸状で且つ前記タービン軸方向と平行となるように前記車室半体に取り付ける工程と、前記回転シャフトの中心軸を中心に前記回転シャフトを回転させることで、前記車室半体を上下反転させる工程と、を備える。
【0021】
また、一実施の形態にかかる回転シャフトブラケットは、蒸気タービンの車室半体を上下反転させるために前記車室半体に取り付けられる回転シャフトブラケットであって、回転シャフトと、前記回転シャフトを支持するとともに、前記車室半体に取り付けられるブラケット本体と、を備える。回転シャフトブラケットは、前記ブラケット本体が前記車室半体に取り付けられた際に、前記回転シャフトが前記タービン軸方向と平行になるように構成されている。そして、この回転シャフトブラケットは、前記回転シャフトの中心軸を中心に前記回転シャフトが回転することで、前記車室半体を回転させるように構成されている。
【0022】
また、一実施の形態にかかる反転用架台は、蒸気タービンの車室半体を上下反転させるために前記車室半体に取り付けられる、回転シャフトを有する回転シャフトブラケットを介して前記車室半体を支持する反転用架台である。反転用架台は、前記回転シャフトを回転可能に支持する支持面を上部に備えるとともに、前記支持面に支持された前記回転シャフトの外周面に一端が連結された牽引用ワイヤの他端にチェーンの一端を連結させたチェーン牽引具のチェーン駆動部を保持する工具保持部を側部に備える。この反転用架台は、前記チェーンの一端が前記工具保持部に保持された前記チェーン駆動部に向けて移動した際に、前記回転シャフトを前記支持面上で回転させるように構成されている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、天井クレーンの使用時間を可及的に抑制しつつ、低コストで且つ容易に車室半体の上下反転を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】一実施の形態にかかる車室半体の上下反転方法によって上下反転される車室上半が回転シャフトブラケットを介して反転用架台に支持された状態を示す図である。
【
図2】
図1の矢印IIの方向に車室上半を見た図である。
【
図4】
図1に示す回転シャフトブラケットの正面図である。
【
図5】
図1に示す回転シャフトブラケットの側面図である。
【
図6】
図1に示す回転シャフトブラケットの平面図である。
【
図7】一実施の形態にかかる車室半体の上下反転方法を説明する図であって、車室上半が段取用受台に設置された状態を示す図である。
【
図8】
図7の矢印VIIの方向に車室上半を見た図である。
【
図9】段取用受台に設置された車室上半に回転シャフトブラケットを取り付ける作業を説明する図である。
【
図10】回転シャフトブラケットが取り付けられた車室上半を吊り上げる作業を説明する図である。
【
図11】
図10に示す状態から吊り上げた車室上半を反転用架台上に置く作業を説明する図である。
【
図12】車室上半に取り付けられた回転シャフトブラケットと反転用架台との間にチェーン牽引具を設ける作業を説明する図である。
【
図13】
図12に示す矢印XIIIの方向に車室上半を見た図である。
【
図14】
図12に示したチェーン牽引具によって、車室上半を反転用架台上で回転させる作業を説明する図である。
【
図15】
図12に示したチェーン牽引具によって、車室上半を反転用架台上で回転させる作業を説明する図である。
【
図16】
図12に示したチェーン牽引具によって、車室上半を反転用架台上で回転させる作業を説明する図である。
【
図17】
図12に示したチェーン牽引具によって、車室上半を反転用架台上で回転させる作業を説明する図である。
【
図18】
図7に示す状態から上下反転された車室上半が反転用架台に支持された状態を示す図である。
【
図19】
図18に示す車室上半を吊り上げる作業を説明する図である。
【
図20】
図18に示す状態から吊り上げた車室上半を再び、段取用受台上に置く作業を説明する図である。
【
図21】
図20に示す車室上半から回転シャフブラケットを取り外した状態を示す図である。
【
図22】一般的な4点吊りによる車室の上下反転方法を説明する図である。
【
図23】一般的な2点吊りによる車室の上下反転方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照して一実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態における構成要素のうち、
図21及び
図22で説明した部材等と同様のものには、同一の符号が付されている。
【0026】
図1は、一実施の形態にかかる蒸気タービンの車室半体の上下反転方法によって上下反転される車室上半1が、回転シャフトブラケット20A,20Bを介して反転用架台40A,40Bに支持された状態を示している。
図2は、
図1の矢印IIの方向に、反転用架台40A,40Bに支持された車室上半1を見た図である。
【0027】
本実施の形態にかかる車室半体の上下反転方法では、車室上半1が
図1及び
図2に示す状態から反転用架台40A,40B上で
図2の矢印の方向に回転されることで、上下反転される。以下、車室上半1、これを反転させるために用いる回転シャフトブラケット20A,20B及び反転用架台40A,40B、並びに上下反転方法の詳細について説明する。
【0028】
(車室上半)
まず、
図3A及び
図3Bを参照しつつ上下反転の対象となる車室上半1について説明する。車室上半1は、図示しない車室下半と対をなして、ノズル(静翼)及び動翼を収容するものである。一般に、蒸気タービンは、内部車室と、内部車室の外側に設けられた外部車室と、を有する。ここで説明する車室上半1は、外部車室の車室上半に対応する。
【0029】
図2及び
図8等も参照し、車室上半1は、ノズル及び動翼を収容する半円筒状の上半本体1Aを有する。上半本体1Aがノズル及び動翼を収容した際、動翼を支持するタービンロータのロータ軸は、上半本体1Aの軸方向に沿って上半本体1Aの軸方向端部を通過する。つまり、上半本体1Aがノズル及び動翼を収容した際には、上半本体1Aの軸方向はタービン軸方向TDと同一の方向となる。したがって、以下において、車室上半1の向き及び各部について説明する際、説明の便宜のために、タービン軸方向TDという用語を用いる場合がある。
図1、
図3A及び
図3Bには、タービン軸方向TDが矢印によって示されている。
【0030】
車室上半1は、平面視でタービン軸方向TDと直交する方向で互いに対向するように位置してタービン軸方向TDに沿って延びる上半本体1Aの両側部から張り出すフランジ部1Bを有している。図示のフランジ部1Bには、タービン軸方向TDに沿って延びる一対の部分と、これら各部分の両端部から上半本体1Aの軸方向端部側へ回り込むように延びる部分とが含まれている。フランジ部1Bの下面は継手面4を形成しており、継手面4には、その反対側の面へ貫通する複数のボルト孔6が設けられている。車室上半1及び車室下半は、継手面4が車室下半(図示せず)の継手面に突き当てられ、継手面4のボルト孔6と車室下半の継手面に設けられたボルト孔とに跨がって挿入されるボルトが締結されることにより、互いに一体化されるようになっている。
【0031】
また、平面視においてタービン軸方向TDと直交する方向で一方側を向くフランジ部1Bの側面には、車室トラニオン2a,2bが設けられ、タービン軸方向TDと直交する方向で他方側を向くフランジ部1Bの側面には、車室トラニオン2c,2dが設けられる。車室トラニオン2aと車室トラニオン2cとはタービン軸方向TDと直交する方向で対向する位置にあり、タービン軸方向TDで一方側(
図3A,
図3Bの左側)に位置している。車室トラニオン2bと車室トラニオン2dとはタービン軸方向TDと直交する方向で対向する位置にあり、タービン軸方向TDで他方側(
図3A,
図3Bの右側)に位置している。車室トラニオン2a~2dは、ワイヤを掛けられるようになっており、車室上半1をクレーンで吊り上げるための吊り点として構成されている。
【0032】
また、上半本体1Aの上部には、蒸気入口管連結部8が設けられている。蒸気入口管連結部8には、図示しないボイラからの蒸気を供給する蒸気入口管(図示せず)が連結される。また、上半本体1Aの上部には、クロスオーバー管連結部9が設けられている。クロスオーバー管連結部9には、車室上半1から他の蒸気タービン(低圧タービン)に蒸気を供給するクロスオーバー管(図示せず)が連結される。
【0033】
(回転シャフトブラケット)
次に、
図4乃至
図6を参照しつつ回転シャフトブラケット20A,20Bについて説明する。回転シャフトブラケット20Aはタービン軸方向TDにおける一方側で車室上半1に取り付けられ、回転シャフトブラケット20Bはタービン軸方向TDにおける他方側で車室上半1に取り付けられる。回転シャフトブラケット20A,20Bは、取り付け位置が異なる点を除いて基本的に同一の構成であるため、以下では、車室上半1の一方側に取り付けられる回転シャフトブラケット20Aのみについて説明し、回転シャフトブラケット20Bの説明は省略する。
【0034】
図4乃至
図6に示すように、回転シャフトブラケット20Aは、回転シャフト21と、回転シャフト21を支持するとともに、車室上半1に取り付けられるブラケット本体22と、を備えている。
図1及び
図2に示すようにブラケット本体22が車室上半1に取り付けられた際に、回転シャフト21は、タービン軸方向TDと平行になるようにブラケット本体22に支持されている。後述するように、回転シャフトブラケット20Aは、回転シャフト21がその中心軸を中心に回転することで、車室上半1を回転させる。すなわち、回転シャフト21は、車室上半1を上下反転させる際の回転中心軸として機能するようになっている。
【0035】
ブラケット本体22は、車室上半1の継手面4に固定される平板状の台板23と、台板23から立ち上がる一対の取付け板24と、を有し、一対の取付け板24の間で回転シャフト21を支持している。
図6に示すように、台板23には、車室上半1の継手面4に設けられた複数のボルト孔6に重ね合わされる複数の台板ボルト孔23Aが貫通して設けられている。
【0036】
図1に示すように、台板23は、継手面4に突き当てられ、この状態で、互いに重なり合った複数のボルト孔6と複数の台板ボルト孔23Aとに挿入されるブラケット締結用ボルト23Bがフランジ部1Bの上面に配置されたナット23Cに締結される。これにより、台板23が車室上半1に取り付けられる。このように台板23が継手面4に固定された際、回転シャフト21は、タービン軸方向TDで車室上半1から突出し、
図2に示すように、タービン軸方向TDで見た際に車室上半1の内側に位置するようになっている。
【0037】
回転シャフト21は、一対の取付け板24のそれぞれを貫通した支持ボルト24Aによって支持されており、回転シャフト21の一対の取付け板24の間に位置する部分には、支持ボルト24Aをねじ込まれる被締結部21A(
図4、
図6参照)が設けられている。また本例では、回転シャフト21が、ブラケット本体22との相対位置を調整可能にブラケット本体22に支持されている。具体的には、一対の取付け板24には、
図5に示すように支持ボルト24Aを挿入可能な複数のボルト孔24Bがマトリクス状に設けられ、複数のボルト孔24Bの中から所望の位置のボルト孔を選択して支持ボルト24Aを挿入することで、回転シャフト21の高さ位置を調節可能となっている。
【0038】
回転シャフト21のブラケット本体22に対する相対位置を調整可能である場合、車室上半1に回転シャフトブラケット20Aを取り付けた際の回転シャフト21の位置を所望の位置に調節可能となる。この際、例えば、タービン軸方向TDで見た際の車室上半1の重心に回転シャフト21が重なるように、とりわけ同軸となるように回転シャフト21の位置を調節した場合には、車室上半1の上下反転を安定的に行うことが可能となる。
【0039】
また、回転シャフト21の外周面には、牽引用ワイヤ32(
図1、
図2参照)の一端を連結可能な一対の連結部25が設けられている。後述するように、回転シャフト21には連結部25を介して牽引用ワイヤ32が連結され、回転シャフト21は、牽引用ワイヤ32が牽引されることで回転されることになる。連結部25は、牽引用ワイヤ32を連結可能であれば特に限られるものではないが、本例の連結部25は、回転シャフト21の軸方向に延びる回転軸を中心に揺動自在な環状の金具で構成されている。また、連結部25は回転シャフト21の外周面に2つ設けられ、2つの連結部25の一方は回転シャフト21の上面に設けられ、他方は回転シャフト21の下面に設けられる。本例における2つの連結部25は、回転シャフト21の中心軸を挟んで対向するように設けられている。
【0040】
また回転シャフト21の上面には、
図6を参照し、連結部25を挟むように配置された2つのアイボルト取付用ネジ穴26が設けられている。アイボルト取付用ネジ穴26にアイボルトを設けた際には、例えばアイボルトにワイヤを掛けることで、回転シャフトブラケット20Aを吊り上げて運搬することが可能となる。
【0041】
(反転用架台)
次に、
図1及び
図2を参照しつつ反転用架台40A,40Bについて説明する。反転用架台40Aは、タービン軸方向TDの一方側で車室上半1に取り付けられた回転シャフトブラケット20Aの回転シャフト21を支持し、反転用架台40Bは、タービン軸方向TDの他方側で車室上半1に取り付けられた回転シャフトブラケット20Bの回転シャフト21を支持する。反転用架台40A,40Bは、配置が異なる点を除いて基本的に同一の構成である
【0042】
図1及び
図2に示すように、反転用架台40A,40Bは、回転シャフト21を支持する支持面41を上部に備えるとともに、両側部にチェーン牽引具50のチェーン駆動部51を保持する工具保持部42を備えている。支持面41は上方に開放した円弧面であり、回転シャフト21の外周面に接して、回転シャフト21が中心軸を中心として回転可能な状態で回転シャフト21を支持する。本実施の形態では、支持面41に支持された回転シャフト21の外周面に上述した連結部25を介して一端が連結された牽引用ワイヤ32の他端にチェーン牽引具50のチェーン52の一端が連結され、チェーン52を牽引することで回転シャフト21が回転される。
【0043】
チェーン牽引具50は、チェーン52をチェーン駆動部51によって牽引するものであり、チェーン駆動部51は手動式のレバーを有し、レバー操作によりチェーン52を牽引又は繰り出すもの(所謂、レバーブロック(登録商標))でもよいし、電動モータによりチェーン52を牽引又は繰り出すものでもよい。工具保持部42は、このようなチェーン牽引具50のチェーン駆動部51を反転用架台40A,40B上に保持するために設けられ、これにより、チェーン52の一端が工具保持部42に保持されたチェーン駆動部51に向けて移動した際に、回転シャフト21を支持面41上で回転させることができる。
【0044】
また
図2に示すように、反転用架台40A,40Bにおいて支持面41と工具保持部42のそれぞれとの間に位置する上側角部にはそれぞれ、ワイヤ摺れカバー43が取り付けられている。ワイヤ摺れカバー43は表面が円弧面となっており、比較的柔軟で摩擦抵抗の小さいプラスチック材料等から形成されることが好ましい。上述したように回転シャフト21の外周面と工具保持部42との間に牽引用ワイヤ32及びチェーン牽引具50を介在させた際には、ワイヤ摺れカバー43が牽引用ワイヤ32を接触し得ることで、チェーン牽引具50による牽引をスムーズに行うことが可能となる。
【0045】
(上下反転方法)
続いて、以上に説明した回転シャフトブラケット20A,20B及び反転用架台40A,40Bを用いた本実施の形態にかかる上下反転方法について
図7乃至
図20を参照しつつ詳述する。
【0046】
図7及び
図8は、車室上半1が段取用受台60A,60Bに設置された状態を示している。本実施の形態では、まず、2つの段取用受台60A,60B上に車室上半1が載せられる。車室上半1は、継手面4を下方に向けた状態で2つの段取用受台60A,60Bに支持されている。2つの段取用受台60A,60Bの一方の段取用受台60Aは、
図8に示すようにタービン軸方向TDに直交する方向における車室上半1の一方側の側部を支持し、他方の段取用受台60Aは、タービン軸方向TDに直交する方向における車室上半1の他方側の側部を支持している。
【0047】
2つの段取用受台60A,60Bは、タービン軸方向TDにおける車室上半1の中央部を支持しており、車室上半1は2つの段取用受台60A,60Bからタービン軸方向TDにオーバーハングしている。2つの段取用受台60A,60B上に車室上半1を載せる際、本実施の形態では、天井クレーンにより車室トラニオン2a~2dを介して車室上半1を吊り上げるが、その説明は省略する。
【0048】
次いで、
図9に示すように回転シャフトブラケット20A,20Bが車室上半1に取り付けられる。回転シャフトブラケット20Aは、タービン軸方向TDにおける車室上半1の一方側に配置された後、車室上半1に取り付けられ、回転シャフトブラケット20Bは、タービン軸方向TDにおける車室上半1の他方側に配置された後、車室上半1に取り付けられる。この際、回転シャフト21に設けられたアイボルト取付用ネジ穴26にアイボルト(図示せず)が取り付けられ、その後、回転シャフトブラケット20A,20Bは、一つのフック111を有する天井クレーン110によりアイボルトを介して吊り上げられる。なお、回転シャフトブラケット20Aの吊り上げ作業と、回転シャフトブラケット20Bの吊り挙げ作業とは別々に行われる。
【0049】
車室上半1への回転シャフトブラケット20A,20Bの取り付けは、吊り上げられた状態の回転シャフトブラケット20A,20Bを天井クレーン110により水平方向に移動させて、車室上半1に対して位置決めした後に行われる。回転シャフトブラケット20Aは、ブラケット本体22の台板23がタービン軸方向TDにおける継手面4の一方側の部分に突き当てられ、複数のボルト孔6と複数の台板ボルト孔23Aとが互いに重なり合うように位置決めされた後(
図3B、
図6参照)、ブラケット締結用ボルト23Bによって車室上半1に取り付けられる。回転シャフトブラケット20Bも、ブラケット本体22の台板23がタービン軸方向TDにおける継手面4の他方側の部分に突き当てられた後、上述と同様の手順で車室上半1に取り付けられる。
【0050】
そして、車室上半1に取り付けられた回転シャフトブラケット20A,20Bにおいては、それぞれの回転シャフト21が同軸状で且つタービン軸方向TDと平行となる。また、各回転シャフト21は、タービン軸方向TDで車室上半1から突出し、タービン軸方向TDで見た際に車室上半1の内側に位置する。また、回転シャフトブラケット20A,20Bは、回転シャフト21の中心軸が、タービン軸方向TDで見た際の車室上半1の重心と重なるように車室上半1に取り付けられている。この場合、回転シャフト21の中心軸を中心に、車室上半1を安定的に回転させることができる。
【0051】
ここで、図示の例では、フック111とアイボルトとがチェーンブロック61と中継ワイヤ62とにより連結される。チェーンブロック61は、一端にフックを有するフックチェーンと、フックチェーンの一端と他端との間の部分と噛み合うとともにフックを有する巻き上げ部と、巻き上げ部操作用の巻き上げチェーン及び巻き下げチェーンとを有し、巻き上げチェーンが牽引された際にフックチェーンの一端が巻き上げ部側に牽引され、巻き下げチェーンが牽引された際にフックチェーンが繰り出される工具である。
図9においては、フックチェーンの一端のフックが中継ワイヤ62に連結され、巻き上げ部のフックが天井クレーン110のフック111に掛けられている。このようなチェーンブロック61を用いた場合には、チェーンブロック61の操作により回転シャフトブラケット20A,20Bの姿勢を水平に維持し易くなり、作業効率が向上する。
【0052】
次いで、
図10に示すように、車室上半1の車室トラニオン2a~2dと天井クレーン110のフック111との間にワイヤ300a~300dを掛けて、天井クレーン110により車室上半1を吊り上げる。
【0053】
次いで、
図11に示すように、反転用架台40A,40B上に回転シャフトブラケット20A,20Bを介して車室上半1が載せられる。この際、回転シャフトブラケット20Aの回転シャフト21は、反転用架台40Aの支持面41に回転可能に支持され、回転シャフトブラケット20Bの回転シャフト21は、反転用架台40Bの支持面41に回転可能に支持される。このとき、車室上半1の全荷重が反転用架台40A,40Bにかからないように、天井クレーン110が車室上半1の荷重の一部又は全部を負担した状態にする。これにより、車室上半1が自重により反転用架台40A,40B上で不意に回転することを抑制できる。
【0054】
次いで、
図12及び
図13に示すように、回転シャフトブラケット20Aの回転シャフト21の外周面の2つの連結部25のうちの一方と、反転用架台40Aの2つの工具保持部42のうちの一方とが、牽引用ワイヤ32及びチェーン牽引具50で連結される。また、回転シャフトブラケット20Aの回転シャフト21の外周面の2つの連結部25のうちの他方と、反転用架台40Aの2つの工具保持部42のうちの他方とが、牽引用ワイヤ32及びチェーン牽引具50で連結される。回転シャフトブラケット20Bの回転シャフト21の外周面の2つの連結部25と反転用架台40Aの2つの工具保持部42も対応するもの同士でそれぞれ、牽引用ワイヤ32及びチェーン牽引具50で連結される。
【0055】
詳しくは、牽引用ワイヤ32の一端が回転シャフト21の外周面の連結部25に連結され、牽引用ワイヤ32は、回転シャフト21の外周面に沿うように引き出される。そして、牽引用ワイヤ32は、その他端がチェーン牽引具50のチェーンの一端に設けられたフックに掛けられる。また、チェーン牽引具50のチェーン駆動部51に設けられたフックが反転用架台40Aの工具保持部42に掛けられる。ここで、回転シャフト21の外周面の2つの連結部25のうちの一方に連結された牽引用ワイヤ32と、2つの連結部25のうちの他方に連結された牽引用ワイヤ32は、回転シャフト21の周方向で互いに逆向きに引き出されて、対応するチェーン牽引具50に連結される。
【0056】
以上のように牽引用ワイヤ32及びチェーン牽引具50を設けた後、各チェーン牽引具50を牽引操作(巻き上げ操作)し、各牽引用ワイヤ32にテンションを掛けることで、車室上半1が回転しないように保持される。その後、天井クレーン110のフックと、回転シャフト21のアイボルトとの間に設けられたチェーンブロック61及び中継ワイヤ62が取り外される。この際は、車室上半1が自重により回転しないことを確認する。車室上半1が回転しようとした場合は、チェーン牽引具50を牽引操作し、牽引用ワイヤ32によって回転が規制されるよう牽引用ワイヤ32のテンションを強める。
【0057】
次いで、車室上半1が上下反転される。この際、回転シャフトブラケット20A,20Bのそれぞれにおいて、回転シャフト21の外周面の2つの連結部25のうちの一方と、反転用架台40Aの2つの工具保持部42のうちの一方との間のチェーン牽引具50を牽引操作するとともに、2つの連結部25のうちの他方と、2つの工具保持部42のうちの他方との間のチェーン牽引具50を繰り出し操作(巻き下げ操作)する。これにより、
図14~
図17に示すように、回転シャフト21の中心軸を中心に回転シャフト21を回転させることで、車室上半1が反転用架台40A,40Bの支持面41上で回転される。そして、
図17に示すように、車室上半1の継手面4が水平となって上方を向いた際に、チェーン牽引具50の操作を停止して、車室上半1の回転を停止させる。
【0058】
次いで、回転シャフトブラケット20A,20Bの取り外しが行われる。この際、まず、
図18及び
図19に示すように、車室上半1の車室トラニオン2a~2dと天井クレーン110のフック111との間にワイヤ300a~300dを掛けて、天井クレーン110により車室上半1を吊り上げる。そして、
図20に示すように、段取用受台60A,60B上に車室上半1が載せられる。
【0059】
そして、各回転シャフト21の連結部25と反転用架台40Aの工具保持部42との間の牽引用ワイヤ32及びチェーン牽引具50が取り外される。その後は、
図21に示すように、回転シャフトブラケット20A,20Bが、天井クレーン110によりアイボルトを介して吊り上げられながら、車室上半1から取り外される。
【0060】
以上に説明した本実施の形態では、回転シャフト21を有する回転シャフトブラケット20A,20Bが、タービン軸方向TDにおける車室上半1の一方側及び他方側に配置され、一方側の回転シャフト21と他方側の回転シャフト21とが同軸状で且つタービン軸方向TDと平行となるように車室上半1に取り付けられる。そして、回転シャフト21の中心軸を中心に回転シャフト21を回転させることで、車室上半1が上下反転される。このような上下反転方法においては、車室上半1を上下反転させる際の天井クレーンの使用が不要となる。また、回転シャフト21を有する回転シャフトブラケット20A,20Bを車室上半1に取り付けて回転シャフト21を回転させる場合、回転のための力を付与するための工具(牽引用ワイヤ32、チェーン牽引具50)等を回転シャフト21に取り付け易く、また取り付けのための構造を簡素化できる。そのため、本実施の形態によれば、天井クレーンの使用時間を可及的に抑制しつつ、低コストで且つ容易に車室半体(車室上半1)の上下反転を実施できる。
【0061】
とりわけ、回転シャフト21はタービン軸方向TDで車室上半1から突出するように車室上半1に取り付けられるため、回転のための力を付与するための工具の取り付けが極めて容易である。また、本実施の形態では、牽引用ワイヤ32の一端が回転シャフト21の外周面に連結され、牽引用ワイヤ32の他端がチェーン牽引具50のチェーンの一端に連結され、チェーン牽引具50のチェーンにより牽引用ワイヤ32の他端が引っ張られることで、回転シャフト21が回転される。回転シャフト21を用いた場合には、牽引用ワイヤ32及びチェーン牽引具50のような簡易的な工具で、車室上半1を上下反転させることが可能となるため、装置コスト及び作業負荷を効果的に抑制することが可能となる。
【0062】
また、回転シャフトブラケット20A,20Bは、回転シャフト21の中心軸が車室上半1の重心と重なるように車室上半1に取り付けられる。この場合、車室上半1の上下反転を安定的に行うことが可能となる。また、本実施の形態では、回転シャフト21のブラケット本体22に対する相対位置が調整可能となっているため、回転シャフト21の位置を所望の位置に容易に調節することができ、利便性を確保できる。
【0063】
また、回転シャフトブラケット20A,20Bは、車室上半1の継手面4に設けられたボルト孔6に挿入されるブラケット締結用ボルト23Bにより車室上半1に取り付けられる。この場合、継手面4が、回転シャフト21の回転により車室上半1に伝わる回転力(トルク)を面で受けることで、継手面4に局所的に過大な面圧が生じることを抑制できるため、回転シャフトブラケット20A,20Bと車室上半1との間に不所望な損傷が生じることを抑制しつつ、車室上半1を回転させることができる。
【0064】
また、回転シャフト21は反転用架台40A,40Bに載せられ、反転用架台40A,40B上で回転されることで、車室上半1が上下反転される。この場合、車室上半1を安定的に回転させることができる。とりわけ本実施の形態では、回転シャフト21が反転用架台40A,40Bに設けられた支持面41に回転可能に支持され、支持面41上で回転されるため、回転シャフト21を一定の位置で回転させることができ、車室上半1を安定的に且つ作業スペースを抑えて回転させることができる。
【0065】
以上、一実施の形態及びその変形例を説明したが、上記の実施の形態及び変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態及び変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上述の実施の形態や変形例及びその他の変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0066】
例えば、上述の実施の形態では、蒸気タービンの車室上半1の上下反転作業について説明したが、本実施の形態にかかる上下反転方法、回転シャフトブラケット20A,20B及び反転用架台40A,40Bは車室下半の上下反転にも適用できる。
【符号の説明】
【0067】
1…車室上半、1A…上半本体、1B…フランジ部、2a,2b,2c,2d…車室トラニオン、4…継手面、6…ボルト孔、20A,20B…回転シャフトブラケット、21…回転シャフト、22…ブラケット本体、23…台板、23A…台板ボルト孔、23B…ブラケット締結用ボルト、23C…ナット、24…取付け板、32…牽引用ワイヤ、40A,40B…反転用架台、41…支持面、42…工具保持部、50…チェーン牽引具、51…チェーン駆動部、60A,60B…段取用受台、61…チェーンブロック、62…中継ワイヤ、100,110…天井クレーン、101…主巻フック、102…補巻フック、111…フック、300a,300b,300c,300d…ワイヤ