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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20220825BHJP
   F02D 41/22 20060101ALI20220825BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20220825BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20220825BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20220825BHJP
   B60K 15/05 20060101ALI20220825BHJP
   B60K 15/077 20060101ALI20220825BHJP
   G01N 33/22 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
F02D45/00 369
F02D45/00 345
F02D41/22
F02D29/00 B
E02F9/00 D
E02F9/26 A
B60K15/05 Z
B60K15/077 Z
G01N33/22 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019170756
(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公開番号】P2021046842
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 泰
(72)【発明者】
【氏名】早川 祐人
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-149403(JP,A)
【文献】特開2017-106410(JP,A)
【文献】特表2010-501843(JP,A)
【文献】特開2008-8234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 45/00
F02D 29/00
E02F 9/00
B60K 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンに供給される燃料を貯留するタンク本体、前記タンク本体内に燃料を供給するための供給口、および前記供給口を開閉可能なキャップを有する燃料タンクと、
前記タンク本体内の燃料が酸化劣化しているか否かを判定する劣化判定装置と、
を備えた建設機械において、
前記燃料タンクには、
前記供給口に対する前記キャップの開閉を検出し、前記劣化判定装置に開信号または閉信号を出力する開閉センサが取り付けられており、
前記タンク本体内には、
前記タンク本体内の燃料の液面の位置を検出する液面センサが設けられており、
前記劣化判定装置は、
前記開閉センサからの前記閉信号を取得すると、前記キャップが閉じられた時刻である閉時刻を記録し、
前記閉時刻を記録した後に、前記開閉センサからの前記開信号を取得し、かつ、前記開信号を取得した際の前記液面センサで検出された値が前回の検出値よりも大きくなっている場合、前記タンク本体内に燃料が供給されたと判定して記録された前記閉時刻をリセットし、
前記リセットされた前記閉時刻と現在の時刻とに基づいて、前記キャップが閉じられてからの経過時間を算出し、
算出された前記経過時間が、燃料が酸化劣化するまでの時間として予め設定された時間以上である場合、前記タンク本体内の燃料が酸化劣化している状態であると判定する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項に記載の建設機械において、
前記劣化判定装置は、
前記閉時刻を記録した後に前記開閉センサからの前記開信号を取得すると、前記キャップが開けられている開放時間をカウントし、
カウントされた前記開放時間が、前記燃料タンクの点検に要する時間として予め設定された時間よりも長い場合においても、前記タンク本体内に燃料が供給されたと判定して記録された前記閉時刻をリセットする
ことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項に記載の建設機械において、
前記タンク本体内の燃料が酸化劣化している旨を報知する報知装置を備え、
前記劣化判定装置は、
前記タンク本体内の燃料が酸化劣化している状態であると判定した場合、前記報知装置に対して報知指令に係る信号を出力する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項に記載の建設機械において、
前記エンジンを始動するためのエンジン始動装置を備え、
前記劣化判定装置は、
前記エンジン始動装置がオンされた場合に、前記タンク本体内の燃料が酸化劣化しているか否かを判定する
ことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項に記載の建設機械において、
前記劣化判定装置は、
前記タンク本体内の燃料が酸化劣化している状態であると判定した場合、前記エンジンをロック状態に制御する
ことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの燃料にバイオディーゼル燃料を用いた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、油圧ショベルやホイールローダといった建設機械においても、エンジンに供給される燃料として、例えば菜種油やパーム油等の原料から生成されたバイオディーゼル燃料が広く使われている。このバイオディーゼル燃料は、軽油と比べて時間の経過と共に酸化劣化しやすい。酸化劣化したバイオディーゼル燃料を使用した場合、熱によって燃料内にスラッジが形成され、エンジンのピストンリングが固着したり、フィルタの目詰まりが発生したりする等エンジンの故障につながる。そこで、燃料タンク内のバイオディーゼル燃料が酸化劣化しているか否かを予測することが求められる。
【0003】
例えば、特許文献1には、燃料が酸化劣化する速度と燃料の温度との関係、および燃料の酸化劣化度と燃料が酸化劣化する速度と燃料の温度毎の計測時間との関係が予め記憶部に記憶されており、これらの関係に対し、温度センサで検出された燃料タンク内の燃料の温度やタイマーで計測された燃料の温度検出に要する時間を対応させて複雑な演算を行うことにより、燃料タンク内の燃料の酸化劣化度を予測する燃料の劣化予測装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5876730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料タンク内の燃料の酸化劣化については、特に、建設機械が稼働後において長期間保管される場合や、建設機械が工場から出荷されて実際に稼働するまで長期間使用されない場合等、長期に亘って建設機械が稼働しない場合が問題となる。
【0006】
建設機械が長期間稼働しない場合には、その間に燃料タンク内の燃料の温度も多様に変化することから、特許文献1に記載の燃料の劣化予測装置のように、燃料の温度に対応させて複雑な演算を行うことにより燃料の酸化劣化度を予測する方法は不向きである。また、燃料の酸化劣化度を求める際に複雑な演算を行うことにより、装置の構成が複雑になって高価になるため、燃料の劣化予測装置が搭載された建設機械が普及していないのが実態である。
【0007】
そこで、本発明の目的は、燃料タンク内の燃料が酸化劣化しているか否かについて簡単に判定することが可能な建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、エンジンと、前記エンジンに供給される燃料を貯留するタンク本体、前記タンク本体内に燃料を供給するための供給口、および前記供給口を開閉可能なキャップを有する燃料タンクと、前記タンク本体内の燃料が酸化劣化しているか否かを判定する劣化判定装置と、を備えた建設機械において、前記燃料タンクには、前記供給口に対する前記キャップの開閉を検出し、前記劣化判定装置に開信号または閉信号を出力する開閉センサが取り付けられており、前記タンク本体内には、前記タンク本体内の燃料の液面の位置を検出する液面センサが設けられており、前記劣化判定装置は、前記開閉センサからの前記閉信号を取得すると、前記キャップが閉じられた時刻である閉時刻を記録し、前記閉時刻を記録した後に、前記開閉センサからの前記開信号を取得し、かつ、前記開信号を取得した際の前記液面センサで検出された値が前回の検出値よりも大きくなっている場合、前記タンク本体内に燃料が供給されたと判定して記録された前記閉時刻をリセットし、前記リセットされた前記閉時刻と現在の時刻とに基づいて、前記キャップが閉じられてからの経過時間を算出し、算出された前記経過時間が、燃料が酸化劣化するまでの時間として予め設定された時間以上である場合、前記タンク本体内の燃料が酸化劣化している状態であると判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、燃料タンク内の燃料が酸化劣化しているか否かについて簡単に判定することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の各実施形態に係る油圧ショベルの外観を示す側面図である。
図2】劣化判定装置の電気的な接続関係を示す図である。
図3】第1実施形態に係る劣化判定装置が有する機能を示す機能ブロック図である。
図4】第1実施形態に係る劣化判定装置で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図5】第2実施形態に係る劣化判定装置が有する機能を示す機能ブロック図である。
図6】第2実施形態に係る劣化判定装置で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態に係る建設機械の一態様として、クローラ式の油圧ショベルについて説明する。
【0012】
<油圧ショベル1の構成>
まず、油圧ショベル1の構成について、図1および図2を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の各実施形態に係る油圧ショベル1の外観を示す側面図である。図2は、劣化判定装置7の電気的な接続関係を示す図である。
【0014】
油圧ショベル1は、走行体2と、走行体2の上方に旋回装置30を介して旋回可能に設けられた旋回体3と、旋回体3の前方に取り付けられて掘削作業等を行うフロント作業装置4と、を備えている。
【0015】
走行体2は、クローラ21と、クローラ21を回転駆動させるための走行モータ22と、を有しており、走行モータ22の駆動力によりクローラ21を地面に接触させた状態で回転させて車体を移動させる。本実施形態では、走行体2はクローラ式であるが、これに限らず、ホイール式であってもよい。なお、クローラ21および走行モータ22はいずれも、走行体2の左右両側にそれぞれ配置されているが、図1では、左右一側のクローラ21および走行モータ22のみを示している。
【0016】
旋回体3は、旋回フレーム31と、オペレータが搭乗する運転室32と、車体が傾倒しないようにフロント作業装置4とのバランスを保つためのカウンタウェイト33と、エンジン341を内部に収容するエンジン室34と、燃料タンク5を内部に収容するタンク室35と、を備えている。
【0017】
旋回フレーム31において、運転室32は前部に、カウンタウェイト33は後部に、エンジン室34は運転室32とカウンタウェイト33との間に、タンク室35はエンジン室34の前方であって運転室32の側方に、それぞれ配置されている。油圧ショベル1では、左右方向の中央部分にフロント作業装置4が配置されており、運転室32はフロント作業装置4の一側に、タンク室35はフロント作業装置4を挟んで運転室32の逆側に、それぞれ配置されている。
【0018】
フロント作業装置4は、基端部が旋回フレーム31に回動可能に取り付けられたブーム41と、ブーム41の先端部に回動可能に取り付けられたアーム42と、アーム42の先端部に回動可能に取り付けられたバケット43と、を備えている。
【0019】
また、フロント作業装置4は、旋回フレーム31とブーム41とを連結するブームシリンダ41Aと、ブーム41とアーム42とを連結するアームシリンダ42Aと、アーム42とバケット43とを連結するバケットシリンダ43Aと、これらの各シリンダ41A,42A,43Aへ作動油を導くための複数の配管(不図示)と、を備えている。
【0020】
ブームシリンダ41Aはロッドを伸縮させることによりブーム41を旋回体3に対して上下方向に回動(俯仰)させ、アームシリンダ42Aはロッドを伸縮させることによりアーム42をブーム41に対して前後方向に回動させ、バケットシリンダ43Aはロッドを伸縮させることによりバケット43をアーム42に対して前後方向に回動させる。
【0021】
バケット43は、土砂等の荷を掬い上げて所定の位置に荷を下ろすものである。このバケット43は、例えば、木材や岩石、廃棄物等を掴むグラップルや、岩盤を掘削するブレーカ等のアタッチメントに変更することが可能である。これにより、油圧ショベル1は、作業内容に適したアタッチメントを用いて、掘削や破砕等を含む様々な作業を行うことができる。
【0022】
図2に示すように、旋回体3のタンク室35に収容された燃料タンク5は、エンジン341に供給される燃料を貯留するタンク本体51と、タンク本体51内に燃料を供給するための供給口52と、供給口52を開閉可能なキャップ53と、を有する。
【0023】
タンク本体51内には、貯留されている燃料の液面の位置Lを検出する液面センサとしてのフロートセンサ61が設けられている。また、キャップ53には、供給口52に対するキャップ53の開閉を検出する開閉センサ62が取り付けられている。なお、開閉センサ62は、必ずしもキャップ53に取り付けられていなくてもよく、キャップ53の開閉を検出することが可能であれば燃料タンク5における他の位置に取り付けられていてもよい。
【0024】
油圧ショベル1では、エンジン341の燃料として、バイオディーゼル燃料が用いられている。バイオディーゼル燃料は、軽油と比べて時間の経過と共に酸化劣化しやすいことから、油圧ショベル1には、タンク本体51内のバイオディーゼル燃料(以下、単に「燃料」とする)が酸化劣化しているか否かを判定する劣化判定装置7が搭載されている。
【0025】
また、油圧ショベル1は、劣化判定装置7においてタンク本体51内の燃料が酸化劣化していると判定された場合に、タンク本体51内の燃料が酸化劣化している旨を報知する報知装置としてのモニタ321が運転室32内に設けられている。
【0026】
劣化判定装置7は、CPU、RAM、ROM、HDD、入力I/F、および出力I/Fがバスを介して互いに接続されて構成される。そして、フロートセンサ61、開閉センサ62、およびエンジン341を始動するためのエンジン始動装置としてのキースイッチ322が入力I/Fに接続され、モニタ321およびエンジン341を始動させるスタータ342が出力I/Fに接続されている。以下、劣化判定装置7の機能構成について、実施形態ごとに説明する。
【0027】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る劣化判定装置7の機能構成および処理内容について、図3および図4を参照して説明する。
【0028】
(劣化判定装置7の機能構成)
まず、劣化判定装置7の機能構成について、図3を参照して説明する。
【0029】
図3は、第1実施形態に係る劣化判定装置7が有する機能を示す機能ブロック図である。
【0030】
劣化判定装置7は、前述したハードウェア構成において、ROMやHDD若しくは光学ディスク等の記録媒体に格納された判定プログラム(ソフトウェア)をCPUが読み出してRAM上に展開し、展開された判定プログラムを実行することにより、判定プログラムとハードウェアとが協働して、劣化判定装置7の機能を実現する。
【0031】
なお、本実施形態では、劣化判定装置7をソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって構成されるコンピュータとして説明しているが、これに限らず、例えば他のコンピュータの構成の一例として、油圧ショベル1の側で実行される判定プログラムの機能を実現する集積回路を用いてもよい。
【0032】
劣化判定装置7は、データ取得部70と、時刻記録部71と、時刻記憶部72と、燃料供給判定部73と、リセット部74と、エンジン状態判定部75と、時計部76と、経過時間算出部77と、酸化劣化判定部78と、閾値記憶部78Aと、指令信号出力部79と、を含む。
【0033】
データ取得部70は、開閉センサ62から出力されたキャップ53の開信号または閉信号、キースイッチ322から出力されたON信号、およびフロートセンサ61で検出された検出値(タンク本体51内の燃料の液面の位置)Lに関するデータをそれぞれ取得する。なお、以下の説明において、キャップ53の開信号を単に「キャップ開信号」、キャップ53の閉信号を単に「キャップ閉信号」とする。
【0034】
時刻記録部71は、データ取得部70でキャップ閉信号が取得されると、供給口52に対してキャップ53が閉じられた時刻である閉時刻を記録する。記録された閉時刻は、時刻記憶部72に記憶される。
【0035】
燃料供給判定部73は、データ取得部70で取得されたフロートセンサ61の検出値Lに基づいて、タンク本体51内に燃料が供給されたか否かを判定する。具体的には、燃料供給判定部73は、フロートセンサ61で検出された検出値Lが前回の検出値Lpよりも大きくなっている場合(L>Lp)、タンク本体51内に燃料が供給されたと判定する。他方で、燃料供給判定部73は、フロートセンサ61で検出された検出値Lが前回の検出値Lp以下であった場合(L≦Lp)、タンク本体51内に燃料は供給されていないと判定する。
【0036】
リセット部74は、時刻記録部71が閉時刻を記録した後に、データ取得部70が開閉センサ62からのキャップ開信号を取得し、かつ燃料供給判定部73においてタンク本体51内に燃料が供給されたと判定された場合、時刻記憶部72に記憶されている閉時刻をリセットする。
【0037】
エンジン状態判定部75は、データ取得部70で取得されたキースイッチ322からのON信号に基づいて、エンジン341が始動される状態にあると判定する。他方、エンジン状態判定部75は、データ取得部70においてキースイッチ322からのON信号が取得されていない場合、エンジン341は始動される状態にない、すなわちエンジン341は停止状態のままであると判定する。
【0038】
時計部76は、現在の時刻を取得する。経過時間算出部77は、時刻記録部71により記録されて時刻記憶部72に記憶された閉時刻と時計部76で取得された現在の時刻とに基づいて、供給口52に対してキャップ53が閉じられてからの経過時間Te(以下、単に「経過時間Te」とする)を算出する。
【0039】
酸化劣化判定部78は、経過時間算出部77で算出された経過時間Teに基づいて、タンク本体51内の燃料が酸化劣化している状態であるか否かを判定する。具体的には、酸化劣化判定部78は経過時間Teが、燃料が酸化劣化するまでの時間として予め設定された時間Tth(以下、単に「設定時間Tth」とする)以上である場合(Te≧Tth)、タンク本体51内の燃料が酸化劣化している状態であると判定する。他方、酸化劣化判定部78は、経過時間Teが設定時間Tthよりも小さい場合(Te<Tth)、タンク本体51内の燃料は酸化劣化していない状態であると判定する。なお、設定時間Tthは、閾値記憶部78Aに記憶されている。
【0040】
指令信号出力部79は、酸化劣化判定部78においてタンク本体51内の燃料が酸化劣化している状態であると判定された場合、モニタ321に対してタンク本体51内の燃料が酸化劣化している旨を表示させる表示指令信号(報知指令に係る信号)を出力する。なお、この場合において、指令信号出力部79は、スタータ342に対しては駆動指令信号を出力しない。これにより、劣化判定装置7は、タンク本体51内の燃料が酸化劣化している状態であると判定した場合にエンジン341をロック状態に制御する。
【0041】
(劣化判定装置7内での処理)
次に、劣化判定装置7内で実行される具体的な処理の流れについて、図4を参照して説明する。
【0042】
図4は、第1実施形態に係る劣化判定装置7で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【0043】
まず、データ取得部70が開閉センサ62からのキャップ閉信号を取得すると(ステップS701)、時刻記録部71が閉時刻を記録する(ステップS702)。続いて、データ取得部70が開閉センサ62からのキャップ開信号を取得した場合(ステップS703/YES)、燃料供給判定部73は、データ取得部70で取得されたフロートセンサ61の検出値Lが前回の検出値Lpよりも大きいか否かを判定する(ステップS704)。
【0044】
このように、本実施形態では、タンク本体51内に燃料が供給されたか否かの判定にフロートセンサ61で検出した検出値を用いていることで正確な判定を行うことが可能である。なお、タンク本体51内に燃料が供給されたか否かの判定については、フロートセンサ61を用いる方法以外の方法でも可能であり、他の方法については第2実施形態で説明する。
【0045】
ステップS704においてフロートセンサ61の検出値Lが前回の検出値Lpよりも大きい(L>Lp)と判定された場合(ステップS704/YES)、燃料供給判定部73は、タンク本体51内に燃料が供給された判定する(ステップS705)。そして、リセット部74は、時刻記憶部72に記憶されている閉時刻をリセットして(ステップS706)、ステップS701に戻る。これにより、タンク本体51内の燃料の酸化劣化を判定するために用いる経過時間Teをより正確に算出することができる。
【0046】
一方、ステップS704においてフロートセンサ61の検出値Lが前回の検出値Lp以下である(L≦Lp)と判定された場合(ステップS704/NO)、燃料供給判定部73は、タンク本体51内に燃料は供給されていないと判定する(ステップS707)。そして、データ取得部70が開閉センサ62からのキャップ閉信号を取得すると(ステップS708)、ステップS703に戻る。
【0047】
ここで、ステップS703においてデータ取得部70が開閉センサ62からのキャップ開信号を取得した(ステップS703/YES)にもかかわらず、タンク本体51内に燃料は供給されていないと判定される場合(ステップS707)とは、オペレータや作業員が点検等のためにキャップ53を開けてタンク本体51内を見たような場合である。
【0048】
ステップS702において時刻記録部71が閉時刻を記録した後、ステップS703においてデータ取得部70が開閉センサ62からのキャップ開信号を取得していない場合(ステップS703/NO)、すなわちキャップ53が閉じられたままの状態である場合、エンジン状態判定部75は、キースイッチ322がONされたか否かを判定する(ステップS709)。
【0049】
ステップS709においてキースイッチ322がONされたと判定された場合(ステップS709/YES)、時計部76は現在の時刻を取得する(ステップS710)。続いて、経過時間算出部77は、ステップS702で記録された閉時刻とステップS710で取得された現在の時刻とに基づいて、経過時間Teを算出する(ステップS711)。
【0050】
次に、酸化劣化判定部78は、ステップS711で算出された経過時間Teが設定時間Tth以上であるか否かを判定する(ステップS712)。ステップS712において経過時間Teが設定時間Tth以上である(Te≧Tth)と判定された場合(ステップS712/YES)、酸化劣化判定部78は、タンク本体51内の燃料が酸化劣化していると判定する(ステップS713)。一方、ステップS712において経過時間Teが設定時間Tthよりも小さい(Te<Tth)と判定された場合(ステップS712/NO)、ステップS703に戻る。
【0051】
ステップS713においてタンク本体51内の燃料が酸化劣化していると判定された場合、指令信号出力部79は、モニタ321に対して表示指令信号を出力する一方、スタータ342に対しては駆動指令信号を出力せずにエンジン341をロック状態に制御し(ステップS714)、劣化判定装置7内での処理が終了する。
【0052】
このように、劣化判定装置7においてタンク本体51内の燃料が酸化劣化していると判定された場合に、モニタ321にその旨を表示させることにより、オペレータに対してエンジン341を始動させないように注意喚起することができる。さらに、本実施形態では、劣化判定装置7は、タンク本体51内の燃料が酸化劣化していると判定された場合に、エンジン341をロック状態に制御することから、誤ってエンジン341が始動されるといった事態を防ぐことができる。
【0053】
以上より、油圧ショベル1では、燃料タンク5のキャップ53に開閉センサ62を取り付けて、劣化判定装置7がキャップ53の開閉時間から燃料タンク5内における燃料の酸化劣化を判定するといった簡単な方法を用いているため、酸化劣化した燃料を使用することによって発生するエンジン341の不具合や故障を低コストで抑制することができる。
【0054】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る劣化判定装置8の機能構成および処理内容について、図5および図6を参照して説明する。図5および図6において、第1実施形態に係る劣化判定装置7について説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0055】
図5は、第2実施形態に係る劣化判定装置8が有する機能を示す機能ブロック図である。図6は、第2実施形態に係る劣化判定装置8で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【0056】
本実施形態に係る劣化判定装置8は、タンク本体51内に燃料が供給されたか否かの判定方法が第1実施形態に係る劣化判定装置7と異なる。図5に示すように、劣化判定装置8は、開放時間カウント部81をさらに含む。
【0057】
図6に示すように、ステップS702において時刻記録部71により閉時刻が記録された後に、データ取得部70が開閉センサ62からのキャップ開信号を取得すると(ステップS703/YES)、開放時間カウント部80は、供給口52に対してキャップ53が開けられている開放時間Toをカウントする(ステップS801)。
【0058】
続いて、燃料供給判定部82は、ステップS801でカウント開始された開放時間Toが燃料タンク5の点検に要する時間として予め設定された時間Tm(以下、単に「点検時間Tm」とする)よりも長いか否かを判定する(ステップS802)。
【0059】
ステップS802において開放時間Toが点検時間Tmよりも長い(To>Tm)と判定された場合(ステップS802/YES)、燃料供給判定部82はタンク本体51内に燃料が供給されたと判定する(ステップS705)。一方、ステップS802において開放時間Toが点検時間Tm以下である(To≦Tm)と判定された場合(ステップS802/NO)、燃料供給判定部82はタンク本体51内に燃料は供給されていないと判定する(ステップS707)。
【0060】
このように、キャップ53が開けられている開放時間に基づいてタンク本体51内に燃料が供給されたか否かを判定することも可能である。本実施形態によっても、第1実施形態における作用および効果と同様の作用および効果が得られる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0062】
例えば、劣化判定装置7,8は、少なくともタンク本体51内の燃料が酸化劣化している状態であるかどうかを判定すればよく、その際に、供給口52に対してキャップ53が閉じられてからの経過時間Teに基づいて判定処理を行えば足りる。
【0063】
また、上記実施形態では、報知装置の一態様としてモニタ321について説明したが、これに限らず、ブザー等の音を用いた報知装置であってもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、建設機械の一態様として油圧ショベル1について説明したが、これに限らず、例えばホイールローダやダンプトラック等の他の建設機械についても本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1:油圧ショベル(建設機械)
5:燃料タンク
7,8:劣化判定装置
51:タンク本体
52:供給口
53:キャップ
61:フロートセンサ(液面センサ)
62:開閉センサ
321:モニタ(報知装置)
322:キースイッチ(エンジン始動装置)
341:エンジン
図1
図2
図3
図4
図5
図6