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特許7129401動静脈瘻の成熟化速度を向上させる方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】動静脈瘻の成熟化速度を向上させる方法および装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20220825BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20220825BHJP
【FI】
A61M1/36 143
A61M25/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019507331
(86)(22)【出願日】2017-08-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 US2017045958
(87)【国際公開番号】W WO2018031580
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】62/372,109
(32)【優先日】2016-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591018693
【氏名又は名称】シー・アール・バード・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】C R BARD INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】1 Becton Drive Franklin Lakes NEW JERSEY 07417 UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100167243
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 充
(72)【発明者】
【氏名】ドゥー,ヒープ
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0218517(US,A1)
【文献】特開2013-022187(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0264133(US,A1)
【文献】特開2007-307429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の腕の動静脈瘻静脈部位のための成熟化速度改善装置であって、 (a)近位部分および遠位部分と、テーパ状先端を有する遠位端部分と、カテーテル壁(27)と、カテーテル穴(15)と、前記カテーテル壁(27)を通る1つ以上の流通ポート(19)と、を有するカテーテル(12)と、
(b)離間した位置(21)のところで前記カテーテル(12)に取り付けられる第1のシールおよび第2のシール(16、17)と
を備え、
(c)前記カテーテル(12)ならびに前記第1のシールおよび前記第2のシール(16、17)は、治療されるべき静脈部位(11)の管腔(23)内に位置決めされるように構成され、
(d)前記第1のシールおよび前記第2のシール(16、17)は、前記静脈部位の前記管腔内への挿入を可能にする第1の位置と、前記カテーテル壁(27)と前記静脈部位(11)との間にシールを形成する第2の位置と、の間で移動可能であり、
前記成熟化速度改善装置は、さらに、
(e)前記第1のシールおよび前記第2のシール(16、17)が前記第2の位置にあるとき、血液を除去するように前記静脈部位(11)を洗浄する第1の量の生理食塩水と、
(f)前記第2の位置にあるときの前記第1のシールおよび前記第2のシール(16、17)の間にあるとともに前記カテーテル(12)と静脈部位壁(24)との間にある空間(18)を占める第2の量の固定液(20)を備え、
)前記固定液(20)は、前記静脈部位(11)のタンパク質の架橋を促進し、
)前記第1のシールおよび前記第2のシール(16、17)の一方または両方は、前記第1の位置にあるときの第1の直径と、前記第2の位置にあるときの、前記第1の直径よりも大きい第2の直径と、を有する
成熟化速度改善装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記第1のシールおよび前記第2のシール(16、17)のうちの少なくとも一方は、膨張可能なシールである
装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の装置であって、
前記第1のシールおよび前記第2のシール(16、17)の各々は、膨張可能なシールである
装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の装置であって、
前記第1のシールおよび前記第2のシール(16、17)の各々は、膨張可能なバルーンである
装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の装置であって、
前記第1のシールおよび前記第2のシール(16、17)は、10mm以上、300mm以下だけ離間された(21)
装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の装置であって、
前記固定液(20)の前記第2の量は、1ミリリットル以上、25ミリリットル以下である
装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の装置であって、
前記カテーテル(12)は、0.33mm以上、5mm以下の直径を有する
装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の装置であって、
前記カテーテル穴(15)は、0.1mm以上、1mm以下の直径を有する
装置。
【請求項9】
請求項1に記載の装置であって、
前記第2の位置において、前記第1のシールおよび前記第2のシール(16、17)の各々は、2mm以上、10mm以下の拡張された直径を有し、前記第1のシールと前記第2のシール(16、17)との間の前記カテーテル壁(27)は、前記拡張された直径よりも小さい直径を有する
装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2016年8月8日に出願された米国特許仮出願第62/372,109号の利益を主張する。2016年8月8日に出願された米国特許仮出願第62/372,109号の優先権が本願において主張されており、当該米国特許仮出願は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
適用なし
【0003】
「マイクロフィッシュの補遺」に対する参照
適用なし
【技術分野】
【0004】
本発明は、架橋剤溶液(固定液)を使用して瘻を治療することによって動静脈瘻(AVF)の成熟化速度を向上または改善するための方法および装置に関する。架橋剤溶液は、タンパク質および生体分子を架橋し、したがって、組織構造を安定化させる架橋の形成が可能になる。
【背景技術】
【0005】
動静脈瘻は、感染症および狭窄症の長期率が低いので、透析血管アクセスの好ましい態様である。機能的動静脈瘻すなわちAVFを有する患者は、トンネル型透析カテーテル(すなわち、TDC)を用いて透析を行う患者と比べて、長生きし、治療コストがかからない。生まれつきの動静脈瘻には多くの利点があるものの、多数の研究が、吻合部静脈部位狭窄の結果としての動静脈瘻成熟化に関する大きな問題(透析を支援するための血流および直径の適切な増加の失敗)を立証している。
【0006】
近年、多数の医師が、動静脈瘻成熟化異常へのより積極的なアプローチに挑戦している。このアプローチでは、吻合部静脈部位を順次、拡張させるために、繰り返しの長い部位の血管形成処置が使用される。これらの処置に関していくつかの成功例があるものの、動静脈瘻成熟化異常の病変および発症に関して悪い結果も存在する。生物学レベルでは、積極的な新生内膜成長が中膜または外膜から移動する可能性が最も高い。病原レベルでは、血管損傷が、新生内膜過形成および外側に向けた再構成の欠如のイニシエータになる可能性がある。新生内膜過形成は、損傷または血管再構築に応じた血管内壁の厚みの増加として定義できる。それは、冠動脈バイパス手術後において、また、他の血管の早期閉塞において(例えば、透析アクセス装置において)、静脈グラフト閉塞の重要な原因である。それは、血管壁に損傷を与えるとともに炎症によるその損傷に寄与するサイトカインの解放の前のグラフトへのスムーズな筋細胞の移動によって特徴付けられる。
【0007】
概してバルーン治療方法に関するいくつかの特許が発行されている。場合によっては関係する次の米国特許文献は、参照によって本明細書に組み入れられる。
【0008】
【表1】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、当該分野において直面する問題を単純かつ容易な方法で解決する。本発明は、架橋剤溶液(固定液)を使用して瘻を治療することによって動静脈瘻(AVF)成熟化速度を改善することを目的とした方法および装置を提供する。固定液は、コラーゲンのアミン基および/またはカルボキシル基を介した架橋タンパク質および生体分子であり、組織構造を安定化させる架橋の形成を可能にする。本発明の方法および装置は、動静脈瘻成熟化異常に寄与する要因を解決する、すなわち、(1)血管損傷後の新生内膜過形成成長を停止させ、(2)静脈壁を安定化させて管腔が狭窄することを防止する。
【0010】
本発明は、動静脈瘻成熟化速度を改善するために、特別に構成されたダブルシ-ル(例えば、膨張可能なバルーンなどのデュアルバルーン)カテーテル移送システムと、架橋剤溶液または固定液と、を使用する療法治療を発展させることを目的としている。このカテーテル移送システムは、シャフトと、カテーテルの遠位端部分のところのデュアル(離間した)シールまたはバルーンと、を提供する。シールまたはバルーンは、目標治療長さ(例えば、約10~300mm)に等しい距離で配置されるか、離間される。シールまたはバルーン同士の位置の間の距離によって、固定液の注入または吸引を可能にするための複数の注入部またはポートまたは穴が存在する。本発明のカテーテルの挿入前に、静脈は、血管形成術を使用して所定サイズまで拡大される。例えば、この所定サイズは、約6mmの直径である。血管形成術に続いて、静脈は、固定液を注入することによってさらに安定化される。固定液は、例えば、次のもの、すなわち、酸化剤、グルタルアルデヒド、中性緩衝ホルマリン、パラホルムアルデヒド、スベルイミノ酸ジメチル、ジメチル3,3-ジチオビスプロピオンイミダート、アセチルアジエ、リシルオキシダーゼおよびトランスグルタミナーゼであってもよい。例えば、それは、Thermo ScientificによるDMS(スベリイミド酸ジメチル二塩酸塩)製品番号20700であってもよい。固定液は、様々なタンパク質(アミン基および/またはカルボキシル基を含む任意のコラーゲンが含まれる)と反応し、静脈部位組織構造を安定化させる架橋の形成を可能にする。その結果、バルーン血管形成術から生じる血管損傷反応のほとんどが阻止される。静脈部位血管壁は、タンパク質の架橋によって硬化する。
【0011】
治療は、動静脈瘻形成の前または後に適用され得る。最初に、静脈部位は、脈管管腔を拡大するために複数の血管形成を受け得る。次いで、デュアルバルーンカテーテルは、意図する静脈部位に経皮的に移送され、膨張されて両方向における血流を塞ぐ。管腔内の残りの血液は、吸引され、生理食塩水で洗浄されて、確実に血液がない状態になる。次いで、固定液は、静脈管腔内に注入され、タンパク質の架橋を可能にするために所定時間の間、培養される。次いで、培養時間を経過すると、固定液は取り除かれる。培養時間は、好ましくは、架橋剤の濃度、および、血管壁内の架橋の所望の程度に依存する。好ましくは、この時間は、約5分から約12時間までに及ぶ。培養時間は、典型的には、使用される固定液の濃度が高いときに短くなり、血管壁内の架橋の所望の程度が大きいときに長くなる。当業者は、過度の実験を行うことなく、所望の培養時間を決定することができる。
【0012】
本発明の本質、目的および利点をさらに理解するために、次の図面とともに次の詳細な説明を参照すべきである。この場合、同様の参照符号は、同様の要素を示している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の方法、および、本発明の装置の好ましい実施形態を示す概略図である。
図2】本発明の方法、および、本発明の装置の好ましい実施形態を示す概略図である。
図3】本発明の方法および装置を示す手順図である。
図4】本発明の方法および装置を示す手順図である。
図5】本発明の方法および装置を示す手順図である。
図6】本発明の装置の好ましい実施形態の概略図である。
図7】本発明の装置の好ましい実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1および図2は、患者の腕25と動静脈瘻26とを示す概略図であり、動静脈瘻成熟化速度改善装置10は、目標静脈部位11内に配置される。部位すなわち静脈11は、静脈すなわち血管壁24によって取り囲まれた静脈管腔23を有している。カテーテル12が、図1および図2に示されるように、静脈部位11の管腔23内に挿入されるように構成される。カテーテル12は、テーパ状先端14を有する遠位端部分13を備えている。カテーテル12は、内腔すなわち穴15と、ポートすなわち開口19と、を有している。これらは、静脈部位11に流体を注入することを可能にする(図6参照)。
【0015】
一対のシール、シール部材、または、膨張可能なバルーン16,17が、カテーテル12に取り付けられる。シール16,17は、距離21(例えば、約10~300mm)だけ離間している。カテーテル12は、所望の固定液20をシール16,17の間およびカテーテル12と血管壁24との間の空間18内に移送することができる注入部、ポートまたは開口19を有している。あるいは、両端にシールを形成するために、瘻形成のときに手術用クリップが使用されてもよい。
【0016】
図3~5は、本発明の方法を示している。図3では、離間したシール16,17(例えば、膨張可能バルーンまたは膨張バルーン)と、遠位端部分13と、先端14と、カテーテル内腔15と、を有するカテーテル12が、矢印22で示されるように患者の血管系内に挿入され、目標静脈部位11の近傍または目標静脈部位11のところに配置されている。
【0017】
図4では、各シール16,17は、カテーテル12から周方向に壁27の径方向に拡張され、血管部位11の壁24と係合し、壁24をシールする。このため、空間18が、シール16,17の間、および、カテーテル12の壁27と静脈部位11の壁24との間で隔離される。この空間18は、図5で分かるように、選択された固定液20によって充填される。固定液20は、コラーゲンの架橋を可能にするのに十分な選択された培養時間の間(約5分~12時間)、空間18内に留まる。固定液20は、(例えば、Thermo Scientific社からDMS(スベリイミド酸ジメチル二塩酸塩)との名称で)市販されている溶液であってもよい。
【0018】
本発明は、AVF成熟化異常に寄与する2つの重要な要因を解決するであろう。すなわち、(1)血管損傷後の新生内膜過形成成長を停止させ、(2)静脈壁を安定化させて管腔が狭窄することを防止するであろう。
【0019】
本発明は、好ましくは、療法治療システムを備えている。この治療システムは、AVF成熟化速度を改善するために、(a)デュアルバルーンカテーテル移送システム10と、(b)架橋剤溶液20と、を備えている。カテーテル移送システム10は、好ましくは、遠位端13のところに2つのバルーン16,17を有するシャフト12を備えている。バルーン16,17は、好ましくは、10~100mm離間しており、これは、目標治療長さに等しい。バルーン位置同士の間の距離内において、好ましくは、固定液20の注入および吸引を可能にする注入部すなわち穴19が存在する。固定液20は、次のもの、すなわち、酸化剤、グルタルアルデヒド、中性緩衝ホルマリン、パラホルムアルデヒド、スベルイミノ酸ジメチル、ジメチル3,3-ジチオビスプロピオンイミダート、アセチルアジエ、リシルオキシダーゼおよびトランスグルタミナーゼのうちの1つ以上であってもよい。例えば、固定液20は、Thermo ScientificによるDMS(スベリイミド酸ジメチル二塩酸塩)製品番号20700であってもよい。固定液20は、好ましくは、様々なタンパク質(アミン基および/またはカルボキシル基を含む任意のコラーゲンが含まれる)と反応し、静脈部位11の組織構造を安定化させる架橋の形成を可能にする。固定液20は、好ましくは、様々なタンパク質および他の生体分子と反応して、組織構造を安定化させる架橋の形成を可能にする。その結果、バルーン血管形成術によって生じ得る血管損傷反応のほとんどが阻止される。さらに、血管壁24は、タンパク質の架橋によって硬化する。
【0020】
本発明の治療システムは、AVF形成の前または後に適用され得る。好ましくは、静脈部位11は、最初に、管腔23を所定サイズ(例えば、6mmの直径)まで拡大するために複数の血管形成を受ける。次いで、本発明のデュアルバルーンカテーテル10は、好ましくは、意図する静脈部位11に経皮的に移送され、好ましくは膨張されて両方向における血流を塞ぐ。好ましくは、管腔内の残りの血液は、吸引され、生理食塩水で洗浄されて、治療領域に血液がない状態が確保される。次いで、固定液20は、好ましくは、静脈管腔23内に注入され、タンパク質の架橋を可能にするために所定時間の間、培養される。固定液20は、好ましくは、培養時間を経過すると、取り除かれる。所定時間は、例えば、約5分から約12時間であってもよい。当業者は、固定液の濃度および血管の所望の安定化レベルに基づいて、適切な培養時間を決定することができるであろう。
【0021】
本発明は、本発明のシステム10を使用して動静脈瘻26の成熟化速度を改善する方法を備えている。この方法は、
a)静脈部位壁24と静脈部位管腔23とを有する治療されるべき動静脈瘻静脈部位11を特定する工程と、
b)カテーテル壁27と、外面と、内面と、カテーテル穴15と、壁27の1つ以上の開口19と、を有するカテーテル12を静脈部位管腔23内に配置する工程と、
を備え、
c)工程「b」において、カテーテル12は、離間した第1のシール16および第2のシール17を備え、シール16,17の各々は、静脈部位壁24とカテーテルの外面との間にシールを形成することができ、
上記方法は、さらに、
d)カテーテル穴15とカテーテル開口19(単数または複数)とを介して、工程「c」のシール16,17の間、および、カテーテル12と静脈部位壁24との間にある空間内に固定液20の容積を移送する工程と、
e)タンパク質の架橋を可能にするのに十分な培養時間の間、固定液20を上記空間内に保持する工程と
を備えている。
【0022】
工程「e」の培養時間は、好ましくは、約5分~12時間である。より好ましくは、工程「e」の培養時間は、少なくとも5分である。
【0023】
好ましくは、工程「e」の培養時間は、工程「d」で使用される固定液20の濃度と、血管壁24内の架橋の所望の程度と、に依存する。
【0024】
好ましい実施形態では、工程「c」のシール16,17のうちの少なくとも一方は、膨張可能なシールである。より好ましくは、工程「c」のシール16,17のうちの少なくとも一方は、膨張可能なバルーンである。好ましくは、シール16,17の両方は、膨張可能なバルーンである。
【0025】
好ましくは、シール16,17の間隔は、約10~300mmである。
【0026】
好ましくは、工程「b」のカテーテル12は、約0.1~2mmの穴径を有する穴15を有している。
【0027】
好ましい実施形態では、この方法は、さらに、静脈部位11に少なくとも1つの血管形成術を施す予備工程を備えている。より好ましくは、この予備工程は、静脈部位11に複数の血管形成術を施す工程を伴う。
【0028】
好ましくは、工程「d」における固定液20の容積は、約1~25ミリリットルである。
【0029】
本発明は、動静脈瘻静脈部位成熟化速度改善装置を備えている。この装置は、(a)近位端部分および遠位端部分13と、カテーテル壁27と、カテーテル穴15と、カテーテル壁27を通る1つ以上の流通ポート19と、を有するカテーテル12と、(b)離間した21位置のところでカテーテル12に取り付けられる第1および第2のシール16,17と、を備え、(c)カテーテル12およびシール16,17は、治療されるべき静脈部位11の管腔23内に位置決めされるように構成され、(d)シール16,17は、静脈部位管腔内への挿入を可能にする第1の位置と、カテーテル壁27と静脈部位11との間にシールを形成する第2の位置と、の間で移動可能であり、装置は、さらに、(e)第2の位置にあるときのシール16,17の間にあり、また、カテーテル12と静脈部位壁24との間にある空間18を占める固定液20の容積を備え、(f)固定液20は、静脈部位11のタンパク質の架橋を促進し、(g)シール16,17の一方または両方は、第1の位置にあるときの第1の直径と、第2の位置にあるときの、第1の直径よりも大きい第2の直径と、を有する。
【0030】
好ましくは、シール16,17のうちの少なくとも一方は、膨張可能なシールである。より好ましくは、シール16,17の両方は、膨張可能なシールである。より好ましくは、シール16,17の各々は、膨張可能なバルーンである。最も好ましくは、シール16,17の各々は、膨張可能なバルーンである。
【0031】
好ましくは、シール16,17は、約10~300mmだけ離間21している。
【0032】
好ましくは、固定液20の容積は、約1~25ミリリットル(ml)である。
【0033】
好ましくは、カテーテル12は、約0.33~5mmの直径を有している。
【0034】
好ましくは、カテーテル穴15は、約0.1~1mmの直径を有している。
【0035】
本発明は、動静脈瘻成熟化速度改善装置を備えている。この装置は、(a)近位端部分および遠位端部分13と、カテーテル壁27と、カテーテル穴15と、カテーテル壁27を通る1つ以上の流通ポート19と、を有するカテーテル12と、(b)距離21だけ離間した位置のところでカテーテル12に取り付けられる第1および第2のシール16,17と、を備え、(c)カテーテル12およびシール16,17は、治療されるべき静脈部位11の管腔23内に位置決めされるように構成され、(d)シール16,17は、静脈部位管腔23内への挿入を可能にする第1の潰れた位置と、カテーテル壁27と静脈部位11との間にシールを形成する第2の拡張された位置と、の間で移動可能であり、装置は、さらに、(e)第2の位置にあるときのシール16,17の間にあり、また、カテーテル12と静脈部位壁24との間にある空間18を占める固定液20の容積を備え、(f)固定液20は、静脈部位11のタンパク質の架橋を促進し、(g)シール16,17の一方または両方は、第1の位置にあるときの第1の直径と、第2の位置にあるときの、第1の直径よりも大きい第2の直径と、を有し、(h)第2の位置において、シール16,17の各々は、2~10mmの拡張された直径を有し、シール16,17の間のカテーテル壁27は、上記拡張された直径よりも小さい直径を有する。
【0036】
好ましくは、工程「e」の培養時間は、工程「d」で使用される固定液20の濃度が大きいときに短く、工程「e」の培養時間は、血管壁24内の架橋の所望の程度が大きいときに長い。
【0037】
以下は、本発明において使用するのに適した部品および材料のリストである。
【0038】
部品リスト:
部品番号 説明
10 動静脈瘻成熟化速度向上システム
11 静脈部位/静脈
12 カテーテル
13 遠位端/遠位端部分
14 テーパ状先端
15 カテーテル管腔/カテーテル穴
16 第1のシール部材/第1のバルーン
17 第2のシール部材/第2のバルーン
18 空間
19 注入部/孔/開口
20 固定液
21 距離/間隔
22 矢印
23 静脈管腔
24 静脈壁/血管壁
25 腕
26 動静脈瘻
27 カテーテル壁
【0039】
本明細書に開示される全ての測定は、特に断らない限り、標準的な温度および圧力でのものであり、地球の海水位でのものである。人間において使用される、または、使用されることが意図される全ての材料は、特に断らない限り、生体適合性である。
【0040】
上述の実施形態は、例示目的のみで提示されており、本発明の範囲は、次の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7