(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)を調製するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C08G 63/42 20060101AFI20220825BHJP
C08G 63/78 20060101ALI20220825BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
C08G63/42
C08G63/78
C08L67/00
(21)【出願番号】P 2019520059
(86)(22)【出願日】2017-10-10
(86)【国際出願番号】 US2017055880
(87)【国際公開番号】W WO2018071383
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-10-05
(32)【優先日】2016-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】アン・ワイ・リアウー
(72)【発明者】
【氏名】ラジャ・ハリ・ポラディ
(72)【発明者】
【氏名】ハリ・バブ・スンカラ
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-146153(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0124763(US,A1)
【文献】特開2015-120838(JP,A)
【文献】特開2008-291244(JP,A)
【文献】国際公開第2015/095466(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/095473(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/42
C08G 63/78
C08L 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ix)95~99.9重量%のトリメチレンフランジカルボキシレート繰り返し単位と、
x)ポリマー骨格中の1重量%以下のジ-PDO繰り返し単位と、
xi)ポリマー1キログラム当たり20ミリ当量以下のアリル末端基と、
xii)ポリマー1キログラム当たり15ミリ当量以下のカルボン酸末端基と、
xiii)ポリマー1キログラム当たり10ミリ当量以下のアルキルエステル末端基と、
xiv)1重量%以下の環状二量体オリゴエステルと、
xv)ポリマー1キログラム当たり10ミリ当量以下のジ-PDO末端基と、
xvi)0.70~1.2dL/gの範囲の固有粘度と、を含み、
前記重量パーセントは、組成物中のポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーの総重量に基づく、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーを含む組成物。
【請求項2】
a)160℃~220℃の範囲の温度でフランジカルボン酸ジアルキルエステル、1,3-プロパンジオール、及び金属触媒を含む混合物を接触させてプレポリマーを形成する工程であって、前記フランジカルボン酸ジアルキルエステルの前記1,3-プロパンジオールに対するモル比は、1:1.3~1:2.2の範囲であり、金属触媒の濃度は、前記混合物の総重量に基づいて、20ppm~400ppmの範囲である工程と、
b)未反応の1,3-プロパンジオールの少なくとも一部を除去する工程と、
c)1,3-プロパンジオールを除去しながら前記プレポリマーを減圧下で230℃~260℃の範囲の温度に加熱してポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーを形成する工程と、を含み、
少なくとも50重量%の過剰な1,3-プロパンジオールが工程b)で除去される、
プロセス。
【請求項3】
xii)ポリマー1キログラム当たり21ミリ当量以下のカルボン酸末端基と、
xiii)ポリマー1キログラム当たり15ミリ当量以下のアルキルエステル末端基と、
xvi)0.60~1.2dL/gの範囲の固有粘度と、を含み、
前記重量パーセントは、組成物中のポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーの総重量に基づく、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年10月14日付けで出願された米国仮特許出願第62/408095号の利益を主張するものであり、その出願の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書の開示は、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)を含む組成物、及びその組成物のポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)を作製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
ポリエステルは、重要な部類の工業的に主要なポリマーである。ポリエステルは、衣料品、カーペット、包装用フィルム、塗料、電子機器、及び輸送など、多くの産業で使用されている。典型的には、ポリエステルは1つ以上の二酸又はこれらのジエステルと1つ以上のジオールとの縮合により製造され、ここで出発材料は石油に由来する。
【0004】
ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)(PTF)は重要な新規のポリマーであり、ここで出発材料であるフランジカルボン酸又はそのエステル及び1,3-プロパンジオールは、バイオマス原料から製造することができる。フランジカルボン酸(FDCA)は、ヒドロキシメチルフルフラール(これはいくつかの供給源、例えばバイオマス及び/又は高フルクトースコーンシロップから容易に入手可能である)の酸化から製造することができ、1,3-プロパンジオールは、砂糖の発酵によって製造することができる。これらの材料は両方とも、工業的にかなりの量で製造され始めている再生可能材料である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PTFは100%再生可能材料から作製することができるが、ポリマーの製造は重大な課題を提示してきた。課題のいくつかは、(i)所望の分子量、高い安定性及び薄い色で溶融重合からポリマーを製造すること、(ii)溶融重合から調製されたポリマーは、溶融温度を有さずにほとんど非晶性であること、(iii)溶融ポリマーは加熱により結晶化することができるが、それでもポリマーの結晶化速度は非常に遅いこと、(iv)結晶性ポリマーの低い溶融温度及び1,3-プロパンジオール副生成物の比較的低い揮発性のために、溶融ポリマーから高分子量を構築するための固相重合は非常に時間がかかり、この工程はかなり高価であることである。より高い分子量、より高い安定性、より速い結晶化速度、及び改良された色を有する改良されたPTFポリマー組成物、及びこのようなPTFポリマーを溶融重合から作製する方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
i)95~99.9重量%のトリメチレンフランジカルボキシレート繰り返し単位と、
ii)ポリマー骨格中の1重量%以下のジ-PDO繰り返し単位と、
iii)ポリマー1キログラム当たり20ミリ当量以下のアリル末端基と、
iv)ポリマー1キログラム当たり15ミリ当量以下のカルボン酸末端基と、
v)ポリマー1キログラム当たり10ミリ当量以下のアルキルエステル末端基と、
vi)1重量%以下の環状二量体オリゴエステルと、
vii)ポリマー1キログラム当たり10ミリ当量以下のジ-PDO末端基と、
viii)0.70~1.2dL/gの範囲の固有粘度と、を含み、
重量パーセントは、組成物中のポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーの総重量に基づく、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーを含む組成物が、本明細書に開示される。
【0007】
別の実施形態においては、フランジカルボン酸ジアルキルエステルは、2,5-フランジカルボキシレートジメチルエステルである。
【0008】
更に別の実施形態においては、ポリ(トリメチレン2,5-フランジカルボキシレート)ポリマーは、120℃で測定した結晶化半減期が100分以下である。
【0009】
一実施形態においては、組成物は、分光比色法によって決定される、15以下のb*色値を有する。別の実施形態においては、組成物は、分光比色法によって決定される、10未満のb*色値を有する。更に別の実施形態においては、組成物は、分光比色法によって決定される、60以上のL*色値を有する。一実施形態においては、フランジカルボン酸ジアルキルエステルは、2,5-フランジカルボキシレートジメチルエステルである。
【0010】
更なる実施形態においては、組成物は、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、核剤、加工助剤、トナー/光学的光沢剤、酸素遮断添加剤、鎖延長剤、鎖停止剤、再加熱剤、又は遮光剤を含む1つ以上の添加剤を更に含む。
【0011】
又、a)160℃~220℃の範囲の温度でフランジカルボン酸ジアルキルエステル、1,3-プロパンジオール、及び金属触媒を含む混合物を接触させてプレポリマーを形成する工程であって、フランジカルボン酸ジアルキルエステルの1,3-プロパンジオールに対するモル比は、1:1.3~1:2.2の範囲であり、金属触媒の濃度は、混合物の総重量に基づいて、20ppm~400ppmの範囲である工程と、
b)未反応の1,3-プロパンジオールの少なくとも一部を除去する工程と、c)1,3-プロパンジオールを除去しながらプレポリマーを減圧下で230℃~260℃の範囲の温度に加熱してポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーを形成する工程と、を含むプロセスが、本明細書に開示される。
【0012】
一実施形態においては、プロセスは、バッチ式、半連続式、又は連続式である。別の実施形態においては、少なくとも50重量%の過剰の1,3-プロパンジオールが工程b)で除去される。更に別の実施形態においては、少なくとも90重量%の過剰の1,3-プロパンジオールが工程b)で除去される。
【0013】
更なる実施形態においては、工程a)は、形成されたアルキルアルコールの少なくとも一部を同時に除去する工程を更に含む。更なる実施形態においては、このプロセスは、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーを約110℃~約130℃の範囲の温度で結晶化して結晶化したポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーを得る工程d)を更に含む。
【0014】
又、本明細書に開示されるプロセスによって得られるポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーが本明細書に開示される。更に別の実施形態においては、本明細書に開示されるプロセスによって得られるポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーは、
i)95~99.9重量%のトリメチレンフランジカルボキシレート繰り返し単位と、
ii)ポリマー1キログラム当たり20ミリ当量以下のアリル末端基と、
iii)ポリマー1キログラム当たり15ミリ当量以下のカルボン酸末端基と、
iv)ポリマー骨格中の1重量%以下のジ-PDO繰り返し単位と、
v)ポリマー1キログラム当たり10ミリ当量以下のアルキルエステル末端基と、
vi)1重量%以下の環状二量体オリゴエステルと、
vii)ポリマー1キログラム当たり10ミリ当量以下のジ-PDO末端基と、
viii)0.60~1.20dL/gの範囲の固有粘度と、を含み、
重量パーセントは、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーの総重量に基づく。
【0015】
又、i)95~99.9重量%のトリメチレンフランジカルボキシレート繰り返し単位と、
ii)ポリマー骨格中の1重量%以下のジ-PDO繰り返し単位と、
iii)ポリマー1キログラム当たり20ミリ当量以下のアリル末端基と、
iv)ポリマー1キログラム当たり25ミリ当量以下のカルボン酸末端基と、
v)ポリマー1キログラム当たり15ミリ当量以下のアルキルエステル末端基と、
vi)1重量%以下の環状二量体オリゴエステルと、
vii)ポリマー1キログラム当たり10ミリ当量以下のジ-PDO末端基と、
viii)0.60~1.2dL/gの範囲の固有粘度と、を含み、
重量パーセントは、組成物中のポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーの総重量に基づく、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーを含む組成物が、本明細書に開示される。
【0016】
一実施形態においては、フランジカルボン酸ジアルキルエステルは、2,5-フランジカルボキシレートジメチルエステルである。
【0017】
更に別の実施形態においては、ポリ(トリメチレン2,5-フランジカルボキシレート)ポリマーは、120℃で測定した結晶化半減期が100分以下である。
【0018】
一実施形態においては、組成物は、分光比色法によって決定される、15以下のb*色値を有する。別の実施形態においては、組成物は、分光比色法によって決定される、10未満のb*色値を有する。更に別の実施形態においては、組成物は、分光比色法によって決定される、60以上のL*色値を有する。一実施形態においては、フランジカルボン酸ジアルキルエステルは、2,5-フランジカルボキシレートジメチルエステルである。
【0019】
更なる実施形態においては、組成物は、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、核剤、加工助剤、トナー/光学的光沢剤、酸素遮断添加剤、鎖延長剤、鎖停止剤、再加熱剤、又は遮光剤を含む1つ以上の添加剤を更に含む。
【0020】
又、本明細書に開示されるプロセスによって得られるポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーが本明細書に開示される。
【0021】
更に別の実施形態においては、本明細書に開示されるプロセスによって得られるポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーは、
ix)95~99.9重量%のトリメチレンフランジカルボキシレート繰り返し単位と、
x)ポリマー1キログラム当たり20ミリ当量以下のアリル末端基と、
xi)ポリマー1キログラム当たり25ミリ当量以下のカルボン酸末端基と、
xii)ポリマー骨格中の1重量%以下のジ-PDO繰り返し単位と、
xiii)ポリマー1キログラム当たり15ミリ当量以下のアルキルエステル末端基と、
xiv)1重量%以下の環状二量体オリゴエステルと、
xv)ポリマー1キログラム当たり10ミリ当量以下のジ-PDO末端基と、
xvi)0.60~1.20dL/gの範囲の固有粘度と、を含み、
重量パーセントは、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーの総重量に基づく。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書で引用する全ての特許、特許出願及び刊行物は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
本明細書で使用される場合、「実施形態」又は「開示」という用語は、限定されることを意味するものではなく、特許請求の範囲で定義される又は本明細書に記載される実施形態のいずれかに一般的に適用される。これらの用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0024】
本開示では、多数の用語及び略語を使用する。他に特に明記されない限り、下記の定義が当てはまる。
【0025】
1つの要素又は成分に先行する冠詞「1つの」及び「その」は、その要素又は成分の事例(即ち、出現)の数に関して非制限的であることが意図されている。このため「1つの」及び「その」は、1つ又は少なくとも1つを含むと読むべきであり、要素又は成分の単数語形は又、特にその数が明らかに単数であることを意味しない限り複数形も含む。
【0026】
「を含む」という用語は、特許請求の範囲で言及された既定の特徴、整数、工程又は成分の存在を意味するが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、成分又はこれらの群の存在又は添加を排除するものではない。「を含んでいる」という用語は、「から本質的になる」及び「からなる」という用語によって包含される実施形態を含むことが意図される。同様に、「から本質的になる」という用語は、「からなる」という用語によって包含される実施形態を含むことが意図される。
【0027】
存在する場合、全ての範囲は、包括的及び結合可能である。例えば、「1~5」の範囲が列挙される場合、列挙された範囲は、「1~4」、「1~3」、「1~2」、「1~2及び4~5」、「1~3及び5」などの範囲を包含するものとして解釈されなければならない。
【0028】
本明細書において数値と結び付けて使用する場合、「約」という用語は、その用語がその状況において他に特に定義されていない限り、数値の±0.5の範囲を指す。例えば、「約6のpH値」という句は、pH値が他に特に定義されていない限り、5.5~6.5のpH値を指す。
【0029】
本明細書を通して示された数値の上限は全て、それより低い全ての数値限度を、そのようなより低い数値限度が本明細書に明確に記載されているかのように含むことが意図されている。本明細書を通して示された数値の下限は全て、それより高い全ての数値限度を、そのようなより高い数値限度が本明細書に明確に記載されているかのように含む。本明細書を通して示された数値範囲は全て、それより狭い数値範囲が本明細書に明確に記載されているかのように、そのようなより広い数値範囲に入る全てのより狭い数値範囲を含む。
【0030】
当業者であれば、以下の詳細な説明を読むことにより、本開示の特徴及び利点を更に容易に理解するであろう。又、明確にするために別個の実施形態の状況において上記及び下記の本開示の所定の特徴は、単一要素中で組み合わせて提供されてもよいことを理解すべきである。反対に又、簡潔にするために単一実施形態の状況で記載されている本開示の様々な特徴は、別個に、又は任意の部分的組み合わせで提供されてもよい。更に、文脈上特に明記されない限り、単数形を示す言葉は複数形も含むことができる(例えば、「1つの」は、1つ又は複数を指すことができる)。
【0031】
本出願に明記される様々な範囲の数値の使用は、特に明確に断らない限り、記載範囲内の最小値と最大値の両方とも「約」という語に続くかのように近似値として記載される。この方法で、記載された範囲の上下のわずかな変動を使用して、この範囲内の数値と実質的に同一の結果を達成することができる。又、これらの範囲の開示は、最小値と最大値の間のありとあらゆる数値を含む連続範囲であることが意図されている。
【0032】
本明細書で使用される場合:
「ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)」という句又はPTFは、1,3-プロパンジオール及びフランジカルボン酸から誘導された繰り返し単位を含むポリマーを意味する。いくつかの実施形態においては、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)は、1,3-プロパンジオール及びフランジカルボン酸から誘導された繰り返し単位を95モル%以上含む。更なる実施形態においては、1,3-プロパンジオール及びフランジカルボン酸の繰り返し単位のモル%は、95モル%、又は96モル%、又は97モル%、又は98モル%、又は99モル%以上であり、モルパーセントは、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)を形成するモノマーの総量に基づく。いくつかの実施形態においては、フランジカルボン酸は、2,3-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、又はこれらの組み合わせである。その他の実施形態においては、フランジカルボン酸は2,5-フランジカルボン酸である。
【0033】
「トリメチレンフランジカルボキシレート繰り返し単位」とう用語は、繰り返し単位として、フランジカルボキシレートと-CH
2CH
2CH
2O-基が交互になる構造を有するポリマーを意味し、ここで、「フランジカルボキシレート」は、フラン-2,3-ジカルボキシレート、フラン-2,4-ジカルボキシレート、及びフラン-2,5-ジカルボキシレートを包含する。この繰り返し単位の分子量は196g/モルである。「トリメチレンフラン-2,5-ジカルボキシレート繰り返し単位」という用語は、繰り返し単位として、式(I)による、フラン-2,5-ジカルボキシレートと、-CH
2CH
2CH
2O-基が交互になる構造を有するポリマーを意味する。
【化1】
【0034】
同様に、「トリメチレンフラン-2,4-ジカルボキシレート繰り返し単位」という用語は、繰り返し単位として、フラン-2,4-ジカルボキシレートと-CH2CH2CH2O-基が交互になる構造を有するポリマーを意味し、「トリメチレンフラン-2,3-ジカルボキシレート繰り返し単位」という用語は、繰り返し単位として、フラン-2,3-ジカルボキシレートと-CH2CH2CH2O-基が交互になる構造を有するポリマーを意味する。
【0035】
ポリマー中のトリメチレンフランジカルボキシレート繰り返し単位の数は、固有粘度に応じて変動し得る。
【0036】
「ポリマー骨格」及び「ポリマーの主鎖」という句は、本明細書では互換的に使用され、互いに共有結合して連結された2つ以上のモノマー単位がポリマーの連続鎖を形成することを意味する。
【0037】
本明細書で使用される場合、「末端基」という句は、ポリマー骨格の末端に存在する反応性又は非反応性官能基を意味する。
【0038】
「ジ-プロパンジオール」又は「ジ-PDO」の繰り返し単位という句又はポリマーの末端基は、式(II)による構造を有する単位を意味する。
【化2】
式中、Pはポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)であり、XはP又は水素である。ジ-PDO基は、Xが水素である末端基であり得る、又はジ-PDO基は、XがPであるポリマー骨格内の繰り返し単位であり得る。
【0039】
「アリル末端基」という句は、例えば式(III)による、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーの末端にあるアリル基を意味する。
【化3】
式中、Pはポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーを表す。
【0040】
「アルキルエステル末端基」という句は、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーの末端にあるアルキルエステル基を意味する。いくつかの実施形態においては、アルキル末端基はメチル、エチル、プロピル、又はブチルであり得る。「ヒドロキシル末端基」という句は、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーの末端にあるヒドロキシル基を意味する。「カルボン酸末端基」という句は、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーの末端にあるカルボン酸基を意味する。
【0041】
「環状オリゴエステル」という句は、式(I)による構造の2~8の繰り返し単位からなる環状化合物を意味する。「環状二量体オリゴエステル」という句は、式(IV)による構造を有する二量体を意味する。
【化4】
その他の環状オリゴエステルには、式(I)の繰り返し単位の三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、及び八量体が含まれる。
【0042】
「フランジカルボン酸」という句は、2,3-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、及び2,5-フランジカルボン酸を包含する。一実施形態においては、フランジカルボン酸は2,3-フランジカルボン酸である。一実施形態においては、フランジカルボン酸は2,4-フランジカルボン酸である。一実施形態においては、フランジカルボン酸は2,5-フランジカルボン酸である。
【0043】
「フランジカルボキシレートジアルキルエステル」という句は、フランジカルボン酸のジアルキルエステルを意味する。いくつかの実施形態においては、フランジカルボキシレートジアルキルエステルは、式(V)による構造を有することができる。
【化5】
式中、Rはそれぞれ、独立してC
1~C
8アルキルである。いくつかの実施形態においては、Rはそれぞれ、独立してメチル、エチル、又はプロピルである。別の実施形態においては、Rはそれぞれメチルであり、フランジカルボキシレートジアルキルエステルは2,5-フランジカルボン酸ジメチルエステル(FDME)である。更に他の実施形態においては、Rはそれぞれエチルであり、フランジカルボキシレートジアルキルエステルは2,5-フランジカルボン酸ジエチルエステルである。
【0044】
「a*値」、「b*値」、及び「L*値」という用語は、CIE L*a*b*色空間による色を意味する。a*値は、赤色度(正の値)又は緑色度(負の値)を表す。b*値は、黄色度(正の値)又は青色度(負の値)を示す。L*値は色空間の明度を表し、0は黒色を表し、100は拡散白色を表す。
【0045】
「プレポリマー」という用語は、少なくとも1つのトリメチレンフランジカルボキシレート繰り返し単位を有する比較的低分子量の化合物又はオリゴマーを意味する。典型的には、プレポリマーは約196~約6000g/モルの範囲の分子量を有する。最も小さいプレポリマーは、一般的には、ビス(1,3-プロパンジオール)フランジカルボキシレートであるが、最も大きいプレポリマーは、2~30の範囲のトリメチレンフランジカルボキシレート繰り返し単位を有することができる。一実施形態においては、プレポリマーは、約214~約6000g/モルの範囲の分子量を有する。
【0046】
「の少なくとも一部を除去する」という句は、除去プロセスが始まる前に、成分を含む初期混合物から少なくとも50重量%の列挙された成分が除去されるプロセスを意味する。その他の実施形態においては、少なくとも60%、又は70%、又は80%、又は90%、又は91%、又は92%、又は93%、又は94%、又は95%、又は96%、又は97%、又は98%、又は99%、又は99.5%、又は99.9%の列挙された成分が除去される。重量パーセントは、除去プロセスが始まる前の列挙された成分の過剰量に基づく。
【0047】
本明細書で使用される場合、「重量平均分子量」又は「Mw」は、Mw=ΣNiMi
2/ΣNiMiとして計算され、式中、Miは、鎖の分子量であり、Niは、その分子量の鎖の数である。重量平均分子量は、ガスクロマトグラフィー(GC)、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、及びゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などの技術によって決定することができる。
【0048】
本明細書で使用される場合、「数平均分子量」又は「Mn」は、試料中のポリマー鎖の全ての統計的平均分子量を指す。数平均分子量は、Mn=ΣNiMi/ΣNiとして計算され、式中、Miは、鎖の分子量であり、Niは、その分子量の鎖の数である。ポリマーの数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー、(Mark-Houwink式)による粘度測定、及び蒸気圧浸透圧法、末端基測定、又はプロトンNMRなどの併合法などの技術によって決定することができる。
【0049】
いくつかの実施形態においては、本開示は、
i)95~99.9重量%のトリメチレンフランジカルボキシレート繰り返し単位と、
ii)ポリマー骨格中の1重量%以下のジ-PDO繰り返し単位と、
iii)ポリマー1キログラム当たり20ミリ当量(meq)以下のアリル末端基と、
iv)ポリマー1キログラム当たり15ミリ当量以下のカルボン酸末端基と、
v)ポリマー1キログラム当たり10ミリ当量以下のアルキルエステル末端基と、
vi)1.0重量%以下の少なくとも1つの環状オリゴエステルと、
vii)ポリマー1キログラム当たり10meq以下のジ-PDO末端基と、
viii)0.70~1.2dL/gの範囲の固有粘度と、を含み
重量パーセントは、組成物中のポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーの総重量に基づく、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーを含む組成物に関する。
【0050】
ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーは、
a)フランジカルボン酸ジアルキルエステル、1,3-プロパンジオール、及び金属触媒を含む混合物を、160℃~220℃の範囲の温度で接触させて、プレポリマーを形成する工程であって、フランジカルボン酸ジアルキルエステルの1,3-プロパンジオールに対するモル比は、1:1.3から1:2.2までの範囲であり、金属触媒の濃度は、混合物の総重量に基づいて、20ppm~200ppmの範囲である工程と、
b)未反応の1,3-プロパンジオールの少なくとも一部を除去する工程と、
c)1,3-プロパンジオールを除去しながらプレポリマーを230℃~260℃の範囲の温度に減圧下で加熱してポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)を形成する工程と、
を含むプロセスによって製造することができる。
【0051】
トリメチレンフランジカルボキシレート繰り返し単位の重量パーセント、ポリマー骨格中のジ-PDO繰り返し単位の量、末端基の種類及び量、並びに環状オリゴエステル基は、例えばプロトンNMRによって決定することができる。又、カルボン酸末端基の量は、プロトンNMRによって、例えばカルボン酸末端基を無水トリフルオロ酢酸で誘導体化することによって、又は滴定によって決定することができる。
【0052】
トリメチレンフランジカルボキシレート繰り返し単位のパーセントは、組成物中のポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)の総量に基づいて、95~99.9重量%の範囲であり得る。その他の実施形態においては、トリメチレンフランジカルボキシレート繰り返し単位は、96~99.9重量%、又は97~99.9重量%、又は98~99.9重量%、又は99~99.9重量%の範囲で存在することができる。全てのパーセントは、組成物中のポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)の総重量に基づく。
【0053】
いくつかの実施形態においては、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーは、分光比色法によって決定される、15未満のb*色値を有する。いくつかの実施形態においては、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーは、0.60~1.2dL/gの範囲の固有粘度を有する。いくつかの実施形態においては、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)のL*色値は60超である。いくつかの実施形態においては、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーは、120℃で測定した100分以下、例えば50分未満、又は40分未満、又は35分未満の結晶化半減期(t1/2)を有する。
【0054】
その他のポリエステルと同様に、ポリ(トリメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)ポリマー(PTF)の特性は、例えば、その構造、組成、分子量、及び結晶化特性に依存する。更に、プロセス条件、触媒及び添加剤の種類及び量もポリマーの特性を変える。一般的に、分子量が大きいほど機械的特性は優れている。高分子量ポリエステルを作製するための多くのプロセスにおいて、ポリエステルは、最終ポリマーの溶融温度より高い温度での直接エステル化又はエステル交換(エステル交換)及び重縮合を含む二段階溶融重合で調製される。次いで、第1のエステル交換/重縮合段階の後に、ポリマーの溶融温度より低い温度で固相重合を続けることができる。しかしながら、結晶化PTFポリマーの溶融温度が比較的低く(<18℃)、反応副生成物である1,3-プロパンジオールの沸点が高い(214℃)ことから、固相重合工程において高分子量を構築するのにはるかに長い時間がかかり、これは固相重合プロセスを高価にし、生産性を低下させ、非実用的にする。
【0055】
本明細書に開示されるように、0.70~1.2dL/gの固有粘度及び/又は少なくとも15,000g/モルの数平均分子量を有するPTFポリマーが、溶融重合プロセスにおいて固相重合なしに調製される。又、本明細書に開示されるように、PTFポリマーは、0.60~1.2dL/gの固有粘度を有する。いくつかの実施形態においては、プロセスは連続プロセスであり得る。その他の実施形態においては、プロセスはバッチプロセス又はセミバッチプロセスであり得る。
【0056】
PTFポリマーの分子量は、種々の技術、例えば、末端基分析から数平均分子量を与えるプロトンNMR、数平均及び重量平均分子量を与えるサイズ排除クロマトグラフィー、並びに固有粘度によって測定することができる。開示されたプロセスに従って作製されたPTFポリマーの固有粘度は、例えば、本明細書において下記の実験の部に開示されている標準的な方法によって測定することができ、0.70~1.20dL/gの範囲であり得る。その他の実施形態においては、固有粘度は、0.60~1.20dL/g、又は0.70~1.00dL/g、又は0.70~0.90dL/g、又は0.70~0.80dL/g、又は0.65~1.00dL/g、0.70~0.95dL/g、又は0.70~0.90の範囲であり得る。本開示のプロセスに従って作製されたPTFポリマーの数平均分子量(Mn)は、15,000~40,000g/モルの範囲であり得る。その他の実施形態においては、数平均分子量は、12,000~40,000g/モル、又は15,000~30,000g/モル、又は15,000~25,000g/モルの範囲であり得る。PTFポリマーの重量平均分子量(Mw)は、24,000~80,000g/モル、又は30,000~80,000g/モル、又は30,000~70,000g/モル、又は30,000~60,000g/モルの範囲であり得る。
【0057】
示差走査熱量測定(DSC)は、開示された溶融重合プロセスを使用して調製されたPTFポリマーが、ポリマー試料を10℃/分で加熱したときに融点を有さないことを示し、これは、ポリマーがほとんど非晶性状態であることを示している。結晶化PTFポリマーを作製するためには、非晶性PTFポリマーを低温結晶化温度、例えば、100~130℃の範囲の温度に加熱して、結晶化PTFポリマーを得、融点を決定することができる。結晶化PTFポリマーの溶融温度は、繰り返し単位Iの分子構造、並びに結晶化速度及び形態に依存する。PTFポリマーの分子量が増加するにつれて、結晶化速度は低下し、従って溶融温度は低下する。形成された結晶の溶融温度(Tm)及び溶融エンタルピー又は溶融熱(ΔHm)は、DSCの熱-冷却及び熱サイクルから測定される。純粋な結晶性ポリマーの溶融熱は、ポリマーの結晶化度の推定のために100%結晶性PTFについての理論的溶融熱と共に使用することができる重要なパラメーターである。結晶化のパーセントは、脆性、靭性、剛性又は弾性率、光学的透明性、クリープ又はコールドフロー、バリア抵抗(ガスの流入又は流出を防止する能力)、及び長期安定性を含む、半結晶性ポリマーによって示される重要な特性の多くに直接関連する。
【0058】
結晶化PTFポリマーは、ポリマーを10℃/分で加熱するとDSCに複数のピークを伴う広い溶融温度範囲を有することができるのに対し、ポリマーを非常に遅い速度、例えば1℃/分で加熱すると単一の狭いピークを得ることができる。結晶化PTFポリマーの主要ピークの溶融温度は、第1の加熱DSCスキャンから測定され、155~185℃、好ましくは165~185℃の範囲である。ポリマーのガラス転移温度は、10℃/分の速度で第2の加熱DSCスキャンで取り込まれ、57~62℃の範囲内である。
【0059】
結晶性PTFの物理的、機械的、及び光学的特性は、ポリマーの形態的特徴、例えば、ポリマーのサイズ、形状、完成度、配向、及び/又は体積分率に大きく依存している。結晶化速度は、典型的には、等温結晶化半減期(t1/2)値を特定の温度で分又は秒の単位で使用することによって表され、DSC実験から得ることができる。等温結晶化温度は、PTFポリマーのガラス転移温度(Tg)と融点(Tm)の間であり、70~160℃の範囲の様々な温度で測定することができる。等温溶融結晶化後のその後のDSC加熱トレースは、ポリマーの溶融挙動に関する情報を提供することができる。結晶化半減期及び結晶化速度は、結晶化温度、平均分子量、分子量分布、ポリマーの鎖構造、任意のコモノマーの存在、核剤、及び可塑剤などの要因に依存する。溶融重合プロセスにおいて分子量を増加させると結晶化速度が低下し、従って、溶融物から調製されるポリマーはほとんど非晶性である。一般的に、遅い結晶化速度を有するポリマーは、工学用途及び包装用途において限られた用途しか見出されない。
【0060】
1,3-プロパンジオール二量体(ジ-PDO)は、2つのジオール分子間又はプレポリマー又はポリマーのジオールとジオール末端との間の酸触媒副反応を介して1,3-プロパングリコールから生成されるジオールエーテルである。一般的に、ポリマー骨格中に存在するエーテルの量は、モノマーがジカルボン酸よりもジアルキルエステルである場合には一般的に少ない(<1重量%)。驚くべきことに、2,5-フランジカルボン酸ジメチルエステルから調製されたポリトリメチレンフランジカルボキシレート中に存在するエーテルの量は予想外に多い(3重量%を超える)。ポリマー骨格中の1,3-プロパンジオール二量体(ジ-PDO)は、PTFポリマーの構造及び特性に悪影響を及ぼす可能性がある。例えば、ポリマー骨格中のエーテルの量に応じて、そのガラス転移温度、溶融温度はより低くなり得、結晶化度及び結晶化速度はより低くなり得、熱及び熱酸化安定性はより低くなり得、発色団及びアクレレインの生成は、低いジPDO含有量を有するより高いPTFポリマーであり得ることが望ましい。本明細書に開示される溶融重合プロセスに従って調製されるPTFポリマーは、ポリマー骨格中に、例えば、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーの総重量に基づいて、エーテル形成を抑えるためのいかなる添加剤をも添加することなく、約2重量パーセント未満の非常に低レベルのジ-PDOを含むことができる。いくつかの実施形態においては、PTFポリマーは、ポリマー骨格中に1.5重量%以下のジ-PDO繰り返し単位、又はポリマー骨格中に1重量%以下のジ-PDO繰り返し単位、又はポリマー骨格中に0.5重量%以下のジ-PDO繰り返し単位を含み、ここで、重量パーセントはポリマーの総重量に基づく。
【0061】
溶融重合プロセスから調製されたポリエステルは、不純物として環状オリゴマーエステルを含むことが知られている。ポリ(エチレンテレフタレート)の場合、環状オリゴマーエステルの大部分は、典型的には2~4重量%のレベルで存在する環状三量体である。対照的に、ポリ(トリメチレンテレフタレート)の場合、環状オリゴマーエステルの主要種は環状二量体であり、これはポリマー中に2.5重量%以上で存在することができる。環状オリゴマーエステル不純物は、重合中、加工中、及び射出成形部品、アパレル繊維、フィラメント、及びフィルムなどの最終用途において問題がある可能性がある。ポリマー中の環状オリゴマーエステル濃度を低下させることは、例えば、繊維紡糸中の拭き取り(wipe)サイクル時間の延長、射出成形部品のオリゴマーブルーミングの減少、及びフィルムの白化の減少によって、ポリマー製造に良好な影響を及ぼし得る。
【0062】
ポリ(エチレンテレフタレート)及びポリ(トリメチレンテレフタレート)などのポリエステル中の環状オリゴマーエステルの含有量を減らすための1つの方法は、固相重合を利用することによる。しかしながら、本発明者らは、驚くべきことに、本明細書に開示される溶融重合プロセスから得られる高分子量PTFポリマーは、固相重合工程がなくても非常に低レベルの環状オリゴエステルを含むことを見出した。PTFポリマー中の主要な環状オリゴエステルは環状二量体である。ポリマー中の二量体などの環状エステルの総量は、実験の部に記載されるプロトンNMR分析から決定されることができる。本明細書に開示されるプロセスによって得られるPTFポリマーは、PTFポリマーの総重量に基づいて、2重量%未満、例えば、1.5重量%未満、又は1重量%未満、又は0.5重量%未満の環状二量体オリゴエステルを含むことができる。中の環状オリゴエステルの量は、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーの総重量に基づいて、1.0重量%未満であり得る。その他の実施形態においては、環状オリゴエステルの量は、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーの総重量に基づいて、0.9、又は0.8、又は0.7、又は0.6、又は0.5、又は0.4、又は0.3、又は0.2、又は0.1重量%未満であり得る。
【0063】
ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーは、ヒドロキシル基以外の末端基、例えば、ポリマー鎖の熱的又は熱酸化的分解から生じるアリル、カルボン酸、デカルボン酸、アルキルエステル、アルデヒド及びエーテル末端基、溶融重合条件の間のその他の副反応物、及びモノマー中の不純物を含むことができる。本開示に従って調製されたPTFポリマーは、大部分のヒドロキシル末端及び比較的少量のこれらのその他の末端基を有する。
【0064】
一実施形態においては、プロセスの工程a)において、フランジカルボン酸ジアルキルエステル、1,3-プロパンジオール、及び金属触媒からなる、又はこれらから本質的になる混合物を、160℃から220℃の範囲の温度で接触させて、プレポリマーを形成する。「から本質的になる」とは、フランジカルボキシレートエステル又は1,3-プロパンジオールではない、1重量%以下のその他のジエステル、二酸、又はポリオールモノマーが混合物中に存在することを意味する。その他の実施形態においては、第1の工程で接触させる混合物は、酸官能性成分、例えば、フランジカルボン酸などの酸官能性モノマーを含まない、又は本質的に含まない。本明細書で使用される場合、「本質的に含まない」とは、混合物が、混合物中のモノマーの総重量に基づいて5重量%未満の酸官能性モノマーを含むことを意味する。その他の実施形態においては、酸官能性モノマーの量は、4%、又は3%、又は2%、又は1%未満である、或いは酸官能性モノマーの量は0%である。重合プロセス中に酸が存在すると、最終のポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)の色が強くなる可能性があることが判明しているので、酸の量はできるだけ少なく保つべきである。
【0065】
フランジカルボン酸ジアルキルエステルは、公知のジエステルのいずれか、例えばエステル基中に1~8の炭素原子を有するフランジカルボン酸ジアルキルエステルであり得る。「フランジカルボン酸ジアルキルエステル」という用語は、本明細書では「フランジカルボキシレートジアルキルエステル」という用語と互換的に使用される。いくつかの実施形態においては、フランジカルボキシレートジアルキルエステルは、フランジカルボキシレートジメチルエステル、フランジカルボキシレートジエチルエステル、フランジカルボキシレートジプロピルエステル、フランジカルボキシレートジブチルエステル、フランジカルボキシレートジペンチルエステル、フランジカルボキシレートジヘキシルエステル、フランジカルボキシレートジヘプチルエステル、フランジカルボキシレートジオクチルエステル、又はこれらの組み合わせである。その他の実施形態においては、フランジカルボキシレートジアルキルエステルは、フランジカルボキシレートジメチルエステル、フランジカルボキシレートジエチルエステル、又はフランジカルボキシレートジメチルエステルとフランジカルボキシレートジエチルエステルの混合物である。フランジカルボキシレートジアルキルエステルのエステル基は、フラン環の2,3-、2,4-、又は2,5-位に位置することができる。いくつかの実施形態においては、フランジカルボキシレートジアルキルエステルは、2,3-フランジカルボキシレートジアルキルエステル、2,4-フランジカルボキシレートジアルキルエステル、2,5-フランジカルボキシレートジアルキルエステル、又はこれらの混合物である。更なる実施形態においては、フランジカルボキシレートジアルキルエステルは、2,5-フランジカルボキシレートジアルキルエステルであり、一方、更に別の実施形態においては、2,5-フランジカルボキシレートジメチルエステルである。
【0066】
接触工程においては、フランジカルボン酸ジアルキルエステルの1,3-プロパンジオールに対するモル比は、1:1.3~1:2.2の範囲である。言い換えれば、1モルのフランジカルボン酸ジアルキルエステル当たりに対して、少なくとも1.3モル~2.2モルまでの1,3-プロパンジオールを使用することができる。原則として、1モルのフランジカルボン酸ジアルキルエステル当たりに対して2.2モルを超える1,3-プロパンジオールを使用することができるが、2.2モルを超える1,3-プロパンジオールはほとんど有効ではなく、未反応1,3-プロパンジオールの少なくとも一部を除去する工程b)に必要である時間及びエネルギー量を増加させる可能性がある。その他の実施形態においては、フランジカルボン酸ジアルキルエステルの1,3-プロパンジオールに対するモル比は、1:1.3~1:2.1まで、又は1:1.3~1:2.0までの範囲であり得る。更なる実施形態においては、フランジカルボン酸ジアルキルエステルの1,3-プロパンジオールに対する比は、1:1.4~1:1.8まで、又は1:1.5~1:1.8までの範囲であり得る。
【0067】
接触工程には少なくとも1つの金属触媒が存在する。金属触媒中の金属の量は、作製されたポリマーの100%の理論収率に基づいて、重量で20ppm~400ppmの範囲である。その他の実施形態においては、接触工程に存在する金属触媒の量は、25~250ppm、又は30~200ppm、又は20~200ppm、又は40~150ppm、又は50~100ppmの範囲であり得、ここで濃度(ppm)は、フランジカルボン酸ジアルキルエステル、1,3-プロパンジオール、及び接触工程の金属触媒の混合物に基づく。適切な金属触媒としては、例えば、チタン化合物、酸化ビスマスなどのビスマス化合物、二酸化ゲルマニウムなどのゲルマニウム化合物、テトラアルキルジルコネートなどのジルコニウム化合物、ブチルスタンニン酸などのスズ化合物、スズ酸化物及びアルキルスズ、三酸化アンチモン及び三酢酸アンチモンなどのアンチモン化合物、カルボン酸アルミニウム及びアルミニウムアルコキシドなどのアルミニウム化合物、アルミニウムの無機酸塩、酢酸コバルトなどのコバルト化合物、酢酸マンガンなどのマンガン化合物、酢酸亜鉛などの亜鉛化合物、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。或いは、触媒は、テトラアルキルチタネートTi(OR)4、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラキス(2-エチルヘキシル)チタネート、アセチルアセトネートチタネート、エチルアセトアセテートチタネート、トリエタノールアミンチタネート、乳酸チタネートなどのチタンキレート、又はこれらの組み合わせであり得る。適切な金属触媒は、市販のものから入手できる、又は公知のプロセスで調製することができる。
【0068】
接触工程中、フランジカルボン酸ジアルキルエステルは、1,3-プロパンジオールとエステル交換され、ビス(1,3-プロパンジオール)フランジカルボキシレートプレポリマーと、フランジカルボン酸出発材料のエステルのアルコールに対応するアルキルアルコールとが形成される。例えば、フランジカルボン酸ジメチルエステルを使用する場合、プレポリマーに加えてメタノールが形成される。工程a)の間に、アルキルアルコールが蒸留により除去される。接触工程は、大気圧で、又はその他の実施形態においてはわずかに高い圧力又は減圧された圧力で行うことができる。接触工程は、160℃~220℃の範囲、例えば、170℃~215℃、又は180℃~210℃、又は190℃~210℃、又は165℃~215℃、又は170℃~210℃、又は180℃~210℃の範囲の温度で行われる。
【0069】
プレポリマーの形成後、未反応の1,3-プロパンジオールの少なくとも一部を反応混合物から除去する。未反応の1,3-プロパンジオールの除去は、典型的には蒸留によって、例えば、接触工程の圧力に比べて圧力を下げることによって行われる。いくつかの実施形態においては、温度は接触工程で使用される温度範囲に維持することができる。その他の実施形態においては、温度は、約180℃~約220℃の範囲になるように上昇させることができる。一実施形態においては、少なくとも50重量%の未反応の1,3-プロパンジオールが除去される。その他の実施形態においては、少なくとも60重量%、又は65重量%、又は70重量%、又は75重量%、又は80重量%、又は85重量%、又は90重量%、又は95重量%、又は96重量%、又は97重量%、又は98重量%、又は99重量%の未反応の1,3-プロパンジオールが除去される。接触工程後に反応混合物中に存在する未反応の1,3-プロパンジオールの量は、接触工程で添加された1,3-プロパンジオールの総量からプレポリマーを生成するのに必要とされる1,3-プロパンジオールの量を差し引くことによって計算され、プレポリマーが100%ビス(1,3-プロパンジオール)フランジカルボキシレートであると仮定すると、これは、2モルの1,3-プロパンジオールが、使用される1モル当たりのフランジカルボン酸ジアルキルエステルと反応したことを意味する。
【0070】
未反応の1,3-プロパンジオールの少なくとも50重量%が除去されたら、副生成物の1,3-プロパンジオールを除去しながらプレポリマーを減圧下で230℃~260℃の範囲の温度に加熱してポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーを形成する。温度は、典型的には、230℃~260℃、例えば、230℃~255℃、又は230℃~250℃の範囲である。圧力は、約1気圧未満~0.0001気圧であり得る。工程c)の間に、プレポリマーは重縮合反応を受け、ポリマーの分子量を増加させ(増加した固有粘度により示されるように)1,3-プロパンジオールを遊離させる。工程c)は、ポリマーの固有粘度が0.70~1.2dL/gに達するような時間、230℃~260℃の範囲の温度で続けることができる。時間は、典型的には、1時間~数時間、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10時間、或いは1時間~10時間の間の任意の時間である。ポリマーの所望の固有粘度に達したら、反応器及びその内容物を例えば室温に冷却して、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーを得ることができる。必要に応じて、工程b)及び工程c)から除去された1,3-プロパンジオールをプロセスに再利用することができる。プロセス工程a)、b)及びc)は、バッチ式、半連続式、又は連続式溶融重合反応器で行うことができる。
【0071】
場合により、次いでPTFポリマーを約110℃~130℃、好ましくは約115℃~125℃の範囲の温度で結晶化することができる。室温からゆっくりと約110℃~130℃の所望の温度まで温度を上昇させることによってポリマーを結晶化させることが好ましい。典型的な結晶化時間は、この温度範囲で約1時間から数時間の範囲である。ポリマーの溶融温度は、10℃/分に対して1℃/分のより遅い速度でポリマーを加熱することによって、約170℃~約180℃に上昇させることができる。60より大きいL*値及び15未満のb*色値を有する結晶化ポリマーを得ることができる。いくつかの実施形態においては、b*色値は10未満であり得る。1.2dL/gを超える粘度を有するポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーが望まれる場合、更なる重縮合工程を利用することができるが、固有粘度を0.70~1.2dL/gの範囲に高めるための固相重縮合は必要ではない。
【0072】
本明細書に開示されるプロセスによって得られるポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーは、不純物、特に発色性不純物を比較的含まない。一実施形態においては、本明細書に開示されるプロセスによって得られるポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーは、
i)95~99.9重量%のトリメチレンフランジカルボキシレート繰り返し単位と、
ii)ポリマー1キログラム当たり20ミリ当量以下のアリル末端基と、
iii)ポリマー1キログラム当たり15ミリ当量以下のカルボン酸末端基と、
iv)ポリマー骨格中の1重量%以下のジ-PDO繰り返し単位と、
v)ポリマー1キログラム当たり10ミリ当量以下のアルキルエステル末端基と、
vi)1.0重量%以下の環状二量体オリゴエステルと、
vii)ポリマー1キログラム当たり10ミリ当量以下のジ-PDO末端基と、
viii)0.70~1.2dL/gの範囲の固有粘度と、を含み、重量パーセントは、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーの総重量に基づく。
【0073】
アリル末端基は、重縮合段階におけるポリマー鎖の熱分解によるものと考えられる。いくつかの実施形態においては、アリル末端基の量は、ポリマーの20ミリ当量/キログラムポリマー(meq/kg)未満、又は19、18又は17、又は16、又は15、又は14、又は13、又は12、又は11、又は10meq/kg未満であり得る。
【0074】
カルボン酸末端は、温度が高い重縮合段階の後半部分で分子量が増加する間に起こる分解又は副反応によって形成されると考えられている。典型的には、ポリマーの分子量が高いほど、カルボン酸末端濃度は高い。カルボン酸末端の濃度は、より低い重縮合温度のために、溶融ポリマーよりも固相重合ポリマーにおいて比較的低い。いくつかの実施形態においては、カルボン酸末端基の量は、ポリマーの15meq/kg未満、又はポリマーの14、又は13、又は12、又は11、又は10、又は9、又は8、又は7、又は6、又は5、又は4、又は3、又は2、又は1meq/kg未満であり得る。
【0075】
重縮合段階において高分子量のポリマーを構築するために、各フランジカルボキシレートの両方のエステル基を1,3-プロパンジオールと完全にエステル交換することが望ましい。いくつかの実施形態においては、本明細書に開示されるプロセスによって得られるPTFポリマーは、1NMR分光法によって決定されるアルキルエステル末端基を有さない。いくつかの実施形態においては、PTFポリマー中のアルキルエステル末端基の量は、ポリマーの10meq/kg未満であり得る。アルキルエステル末端基の量は、1,3-プロパンジオールからヒドロキシ官能性トリメチレン末端基を除外する。その他の実施形態においては、アルキルエステル末端基は、ポリマーの9、又は8、又は7、又は6、又は5、又は4、又は4、又は3、又は2、又は1meq/kg未満であり得る。
【0076】
CIE b*色は、黄色(正の値)及び青色(負の値)の両方の尺度であり、b*色値は0未満であり得る。典型的には、15未満のb*色値を有するポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)を更なる精製工程なしで又はb*色値を下げるための添加剤なしで生成することは困難である。前述で列挙した成分ii)からvii)の量を前述で列挙した量以下に最小化することにより、15未満のb*色値を有するポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーを提供することができる。いくつかの実施形態においては、b*色値は、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1未満であり得る。ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーのb*色値を測定する場合、色値は、より低いb*色値をもたらすことが知られている成分、例えば、青色顔料又は光学的光沢剤を除いて、色に寄与し得る任意の成分を添加する前に測定されるべきである。一実施形態においては、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーが青色顔料を含まない、且つ/又は光学的光沢剤を含まない15未満のb*色値を達成することができる。別の実施形態においては、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーが1つ以上の青色顔料及び/又は1つ以上の光学的光沢剤を含む15未満のb*色値を達成することができる。適切な青色顔料は、例えば、アントラキノンを含むことができる。適切な光学的光沢剤は、例えば、チオペン又はTELALUX(登録商標)KS1P顔料を含むことができる。青色顔料及び光学的光沢剤は市販されている。
【0077】
又、いくつかの実施形態においては、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーを含む組成物は、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、核剤、加工助剤(可塑剤)、トナー/光学的光沢剤、酸素遮断添加剤、鎖延長剤、連鎖停止剤、多官能性分岐剤、再加熱剤、遮光剤、又はこれらの組み合わせなどの1つ以上の添加剤を含むことができる。
【0078】
本明細書に開示されるPTFポリマーは、フィルム、シート、チューブ、プリフォーム、成形品、容器などを含む様々な造形品を形成するのに適している。物品を形成するための適切なプロセスは公知であり、押し出し、押し出しブロー成形、溶融キャスティング、射出成形、延伸ブロー成形、及び熱成形を含む。
【0079】
本明細書の開示の非限定的な実施形態は以下を含む。
1.a)160℃~220℃の範囲の温度でフランジカルボン酸ジアルキルエステル、1,3-プロパンジオール、及び金属触媒を含む混合物を接触させてプレポリマーを形成する工程であって、
フランジカルボン酸ジアルキルエステルの1,3-プロパンジオールに対するモル比は、1:1.3~1:2.2の範囲であり
金属触媒の濃度は、混合物の総重量に基づいて、20ppm~400ppmの範囲である工程と、
b)未反応の1,3-プロパンジオールの少なくとも一部を除去する工程と、c)1,3-プロパンジオールを除去しながらプレポリマーを減圧下で230℃~260℃の範囲の温度に加熱してポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーを形成する工程と、を含むプロセス。
2.ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーは、分光比色法によって決定される、15未満のb*色値を有する、実施形態1のプロセス。
3.ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーは、0.70~1.2dL/gの範囲の固有粘度を有する、実施形態1又は2のプロセス。
4.プロセスがバッチ式、半連続式、又は連続式である、実施形態1、2、又は3のプロセス。
5.工程b)において、少なくとも50重量%の過剰の1,3-プロパンジオールが除去される、実施形態1、2、3、又は4のプロセス。
6.少なくとも90重量%の過剰の1,3-プロパンジオールが工程b)で除去される、実施形態1、2、3、4又は5のプロセス。
7.フランジカルボン酸ジアルキルエステルが2,5-フランジカルボキシレートジメチルエステルである、実施形態1、2、3、4、5、又は6のプロセス。
8.ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーが120℃で測定した結晶化半減期が100分以下である、実施形態1、2、3、4、5、6、又は7のプロセス。
9.工程a)が、形成されたアルキルアルコールの少なくとも一部を同時に除去することを更に含む、実施形態1、2、3、4、5、6、7、又は8のプロセス。
10.約110℃~約130℃の範囲の温度でポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーを結晶化して、結晶化したポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーを得る工程d)を更に含む、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、又は9のプロセス。
11.実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のプロセスによって得られるポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマー。
12.i)95~99.9重量%のトリメチレンフランジカルボキシレート繰り返し単位と、
ii)ポリマー1キログラム当たり20ミリ当量以下のアリル末端基と、
iii)ポリマー1キログラム当たり15ミリ当量以下のカルボン酸末端基と、
iv)ポリマー骨格中の1重量%以下のジ-PDO繰り返し単位と、
v)ポリマー1キログラム当たり10ミリ当量以下のアルキルエステル末端基と、
vi)1重量%以下の環状二量体オリゴエステルと、
vii)ポリマー1キログラム当たり10ミリ当量以下のジ-PDO末端基と、
viii)0.70~1.20dL/gの範囲の固有粘度と、を含み、
重量パーセントは、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーの総重量に基づく、実施形態11のポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマー。
13.i)95~99.9重量%のトリメチレンフランジカルボキシレート繰り返し単位と、
ii)ポリマー1キログラム当たり20ミリ当量以下のアリル末端基と、
iii)ポリマー1キログラム当たり15ミリ当量以下のカルボン酸末端基と、
iv)ポリマー骨格中の1重量%以下のジ-PDO繰り返し単位と、
v)ポリマー1キログラム当たり10ミリ当量以下のアルキルエステル末端基と、
vi)1重量%以下の環状二量体オリゴエステルと、
vii)ポリマー1キログラム当たり10ミリ当量以下のジ-PDO末端基と、
viii)0.60~1.20dL/gの範囲の固有粘度と、を含み、
重量パーセントは、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーの総重量に基づく、実施形態11に記載のポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマー。
14.i)95~99.9重量%のトリメチレンフランジカルボキシレート繰り返し単位と、
ii)ポリマー骨格中の1重量%以下のジ-PDO繰り返し単位と、
iii)ポリマー1キログラム当たり20ミリ当量以下のアリル末端基と、
iv)ポリマー1キログラム当たり15ミリ当量以下のカルボン酸末端基と、
v)ポリマー1キログラム当たり10ミリ当量以下のアルキルエステル末端基と、
vi)1重量%以下の環状二量体オリゴエステルと、
vii)ポリマー1キログラム当たり10ミリ当量以下のジ-PDO末端基と、
viii)0.670~1.2dL/gの範囲の固有粘度を含み、
重量パーセントは、組成物中のポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーの総重量に基づく、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーを含む組成物。
15.i)95~99.9重量%のトリメチレンフランジカルボキシレート繰り返し単位と、
ii)ポリマー骨格中の1重量%以下のジ-PDO繰り返し単位と、
iii)ポリマー1キログラム当たり20ミリ当量以下のアリル末端基と、
iv)ポリマー1キログラム当たり15ミリ当量以下のカルボン酸末端基と、
v)ポリマー1キログラム当たり10ミリ当量以下のアルキルエステル末端基と、
vi)1重量%以下の環状二量体オリゴエステルと、
vii)ポリマー1キログラム当たり10ミリ当量以下のジ-PDO末端基と、
viii)0.60~1.2dL/gの範囲の固有粘度と、を含み、
重量パーセントは、組成物中のポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーの総重量に基づく、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーを含む組成物。
16.組成物が、分光測色法により決定される15以下のb*色値を有する、実施形態14の組成物。
17.組成物が、分光測色法により決定される10未満のb*色値を有する、実施形態14又は15の組成物。
18.組成物が、分光測色法により決定される60以上のL*色値を有する実施形態14、15、又は16の組成物。
19.分光比色法によって決定される60以上のL*色値を有する組成物を更に含む、実施形態14、15、16、又は17の組成物。
20.フランジカルボン酸ジアルキルエステルが2,5-フランジカルボキシレートジメチルエステルである、実施形態14、15、16、17、又は18の組成物。
【実施例】
【0080】
特に明記しない限り、全ての成分は、Sigma-Aldrich Chemical Company,St.Louis,Missouriから入手可能である。
【0081】
2,5-フランジカルボン酸(FDCA)及び2,5-フランジカルボン酸ジメチルエステル(FDME)は、Sarchem Laboratories Inc,Farmingdale,NJから入手した。
【0082】
1,3-プロパンジオール(BioPDO(商標))は、DuPont Tate&Lyle LLCから入手した。「PDO」という略語は、この成分の実施例を通して使用される。
【0083】
チタン(IV)イソプロポキシド(Tyzor(登録商標)TPT)及びテトラn-ブチルチタネート(Tyzor(登録商標)TBT)はAldrichから入手した。
【0084】
ブチルスタン酸(Fascat(登録商標)9100)は、PMC Organometallixから入手した。REACTHEAT BLUE-2(窒化チタン分散液)は、ColorMatrix、Berea、OHから入手した。
【0085】
特に明記しない限り、全ての材料は受け取ったまま使用した。
【0086】
本明細書で使用される場合、「Comp.Ex.」は比較例を意味し、「Ex.」は実施例を意味する。
【0087】
試験方法
色測定
Hunterlab COLORQUEST(商標)分光比色計(Reston,Virginia)を使用して、結晶化PTFポリマーの色を測定した。色データは、光源D65を用いて10度の観察者角度で得られた。色は三刺激値色スケール、CIE L*a*b*に関して測定され、色値(L*)は試料の明度又は暗度に対応し、色値(a*)は赤-緑スケール、及び色値(b*)は黄-青スケールにおける。報告された色値は、一般的に、真空下のオーブン内で一晩115~125℃で結晶化されたポリマーについてのものである。白色度指数(WI)は、式WI=L*-3bからの計算値であった。
【0088】
熱分析
ASTM D3418-08に従って実施した示差走査熱量測定(DSC)による結晶性ポリマーについての、ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)、及びエンタルピー(ΔHm)を決定した。DSCサーモグラムは、TA InstrumentsからのDSC Q2000を用いて記録した。3~4ミリグラム(mg)のPTF試験片を、220℃で3分間保持する加熱-冷却-再加熱温度プロファイルで10℃/分の加熱速度で0℃から230℃に加熱した。結晶化度パーセントは、参考文献、Polymer 62、28、2015に報告されているように、溶融熱を用いて141.7J/gのΔH°m値をとることによって計算した。
【0089】
等温結晶化
約2~3mgのPTF試料を30℃/分の加熱速度で室温から230℃に加熱し、3分間保持し、次いで30℃/分で0℃に冷却して非晶性PTFを得た(DSC機器で急冷する)。次いで、急冷した試験片を110℃~120℃の結晶化温度に急速加熱し、そこで2~4時間保持した。次いで、結晶化度を調べるために、結晶化した試験片に単一の加熱実験を行った。
【0090】
サイズ排除クロマトグラフィーによる分子量
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)システム、Alliance 2695(商標)(Waters Corporation、Milford、MA)は、Waters 2414(商標)示差屈折率検出器、マルチアングル光散乱光度計DAWN Heleos II(Wyatt Technologies、Santa Barbara、CA)、及びViscoStar II(商標)示差毛細管粘度計検出器(Wyatt)を備えた。データ取得及び削減のためのソフトウェアは、WyattのAstra(登録商標)バージョン6.1であった。使用したカラムは、2×107の排除限界、及び8,000/30cmの理論プレートを有する2つのShodex GPC HFIP-806M(商標)スチレン-ジビニルベンゼンカラム、並びに2×105の排除限界、及び10,000/30cmの理論プレートを有する1つのShodex GPC HFIP-804M(商標)スチレン-ジビニルベンゼンカラムであった。
【0091】
試験片を、0.01Mトリフルオロ酢酸ナトリウムを含む1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)に室温で4時間、穏やかな撹拌で混合することによって溶解し、次いで0.45μmのPTFEフィルターを通して濾過した。溶液の濃度は、約2mg/mLであった。
【0092】
データを、0.5ml/分の流速において、35℃に設定されたクロマトグラフを用いて採取した。注入体積は100μlであった。実行時間は80分であった。前述の3つの検出器全てからのデータを組み込んでデータ削減を行った。光散乱検出器には8つの散乱角が用いられた。データ処理には、カラム校正用の標準は含まれなかった。ポリマーの重量平均分子量(Mw)が報告される。
【0093】
固有粘度による分子量
固有粘度(IV)は、Viscotek(登録商標)Forced Flow Viscometer Model Y-501Cにおける校正標準として、PET T-3、DuPont(商標)SELAR(登録商標)PT-X250、DuPont(商標)Sorona(登録商標)2864を使用して、Goodyear R-103B Equivalent IV方法を用いて決定した。塩化メチレンが担体溶媒であり、塩化メチレン/トリフルオロ酢酸の50/50混合物がポリマー溶媒であった。試料を0.4%(w/v)で調製し、室温で一晩振動させた。
【0094】
1H(プロトン)NMRによる数平均分子量(Mn)と末端基定量
4.68秒の取得時間、90度パルス、30秒のリサイクル遅延、及び16のトランジェント平均を用いて、110℃で0.7mLの1,1,2,2-テトラクロロエタン-d2(tce-d2)に溶解した約55mgの試料について700MHz NMRを用いてNMRスペクトルを収集した。
【0095】
1H NMRの計算法
試料を積分し、当技術分野で標準であるモルパーセントを計算した。PTFポリマーのピーク帰属を下記の表1に示す。
【0096】
【0097】
1H NMRによるポリ(トリメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)中の環状エステルの総量の測定法
表1に示すように、環状二量体のフラン環水素(δ6.89)及びPTFポリマーのフラン環水素(δ7.2)は異なる化学シフトを有する。環状二量体の重量パーセントは、以下の式を用いて計算した。
【数1】
【0098】
比較例A
ポリ(トリメチレン-2,5-フランジカルボキシレート)(PTF)の合成
この比較例で使用したエステル交換温度は185~245℃であった。
【0099】
2,5-フランジカルボキシレートジメチルエステル(27kg)、1,3-プロパンジオール(20.08kg)、及びチタン(IV)テトラブトキシド(40.8g)を、ベントラインにおいて攪拌機、油で加熱したジャケット、及び冷却器を備えた15ガロンのステンレス鋼製オートクレーブに入れた。窒素パージを適用し、撹拌を50rpmで開始してスラリーを形成した。攪拌しながら、オートクレーブを50psiの窒素で3サイクルの加圧、続いて60psiでの圧力漏れ検査にかけた。次いで、弱い窒素パージを適用して不活性雰囲気を維持した。オートクレーブを240℃の設定点まで加熱している間に、メタノールの発生は175℃のバッチ温度で始まった。メタノール蒸留を180分間続け、その間にバッチ温度は185から245℃に上昇した。この時点で、真空ランプを開始し、30分の間に760トールから(101.3キロパスカルから110トール(14.66kPa)(カラムを通してポンピングする)次の2時間にわたって110トールから0.7トールまで減圧した(真空ポンプへの別のベントラインを通してポンピングする)。混合物を0.7トールで真空下に置き、2時間撹拌した。この間、撹拌機の速度を50rpm~20rpmに徐々に低下させ、その後窒素を使用して容器を760トールに加圧した。
【0100】
オートクレーブを50psiに加圧し、溶融物を容器の底部の出口弁を通してメルトギアポンプ、ダイ及び急冷浴中に押し込んでストランドを形成することによりPTFポリマーを回収した。ストランドを、エアジェットを備えたペレタイザーに通してポリマーを湿気から乾燥させ、ポリマーストランドを長さ約3mm、直径約2mmのチップに切断した。
【0101】
ペレット化したポリマーは、最初に材料を真空回転タンブル乾燥機に入れ、続いてペレットを真空下で110℃に6時間加熱することによって結晶化した。ポリマーをプロトンNMR、DSC、固有粘度、SEC、及び分光光度計によって特性評価し、結果を表2及び3に報告する。
【0102】
比較例B
比較例AのPTFポリマーの固相重合
ペレット化し結晶化したPTFポリマーを比較例Aに記載したように調製した。結晶化したポリマーを165℃の温度で回転タンブル乾燥機中にて加熱し、ペレットを窒素パージ条件下に154時間放置して高分子量を構築した。オーブンを止め、ペレットを冷却状態においた。固相重合したポリマーを分析し、結果を表2及び3に報告する。
【0103】
【0104】
【0105】
比較例A及びBは、ポリエチレンテレフタレートの形成に典型的な重縮合技術とそれに続く固相重合を用いたポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)の形成に関連する問題を例示する。即ち、(i)所望の高分子量PTFポリマーを構築するための非常に長い固相重合時間(>150時間)、(ii)結晶化ポリマー溶融生成物の低い溶融温度、(iii)ポリマーの特性及び安定性を変えることができるポリマー骨格及び鎖末端における高レベルのジ-PDO、(iv)樹脂の低いL*及び高いb*色値、(v)調製される溶融ポリマーは、熱サイクル中に溶融温度を有さず冷却時に溶融の結晶化ピークを有さない非晶性である、(vi)低温結晶化半減期によって示されるように、結晶化ポリマーは非常に遅い熱結晶化速度を有する、並びに(vii)ポリマー骨格中の低い結晶化度及び高レベルのジ-PDOの結果として等温結晶化後の固相ポリマーの溶融温度の著しい低下である。
【0106】
比較例C
比較例Cは、バッチサイズ及びエステル交換温度において比較例Aと異なる。
【0107】
2,5-フランジカルボン酸ジメチルエステル(60g、0.32モル)、BioPDO(商標)(1,3-プロパンジオール、44.6g、0.59モル)及びチタン(IV)イソプロポキシド(ポリマーの重量に基づいて200ppmのチタン)を、SS 304半月型撹拌棒、蒸留冷却器、及び窒素用の注入口/排出口を備えたオーバーヘッドスターラーを備え付けた予備乾燥した250mLの三口丸底ガラス反応器に入れた。23℃の温度に保たれたフラスコに窒素ブランケットを適用した。50rpmで撹拌を開始してスラリーを形成した。撹拌しながら、フラスコを0.13MPaまで排気し次いでN2で加圧することを合計3サイクル行った。
【0108】
3サイクルの排気と加圧の後、フラスコを190℃に設定した予熱した液体金属浴に浸した。フラスコを液体金属浴に入れた後、ゆっくりとN2ガスでパージしながらフラスコの内容物を10分間撹拌し、固体成分を溶融させた。反応媒体の実際の温度は、金属浴の設定温度より5~10℃わずかに低かった。次に、攪拌速度を180rpmに上げた。フラスコを初めに190℃に1時間保持し、次いで180rpmで撹拌しながら設定温度を更に1.5時間210℃まで上げ、反応で形成されるメタノールの大部分を留去した。このエステル交換工程の後、45分かけて反応器の圧力を約大気圧から約900ミリトールまでゆっくりと低下させながら、金属浴の設定温度を250℃に上昇させた。反応混合物が250℃にある間に、反応器中に存在する過剰のPDOの大部分を除去した。真空度が最大(典型的には150~250ミリトール)であり、反応副生物を除去しながら重縮合反応を250℃で3時間続けた。
【0109】
生成したポリマーは室温まで冷却した後にフラスコから回収した。回収したポリマーを、液体窒素で冷却したワイリーミル(Wiley mill)を用いてペレットに細断した。ポリマーペレットをオーブン中で真空下及び弱い窒素流下110℃で一晩乾燥させてペレットを結晶化させた。プロセス条件及び結晶化ポリマーの特性を表4に報告する。
【0110】
比較例D
2,5-フランジカルボキシレートジメチルエステルを2,5-フランジカルボン酸で置き換えたことを除いて、比較例Cに記載したようにPTFポリマーを調製した。プロセス条件及びポリマーの特性を表4に報告する。
【0111】
【0112】
これらの比較例は、記載された溶融条件下で得られたポリマーが、その外観から分かるように、ポリマー骨格中のジ-PDOレベルが1重量%を超え著しく変色することを示しており、これはほとんどの商業用途には望ましくない。比較例Dの場合、b*値は比較例Cのものよりも低いように見えるが、これは黄色度に対する黒色のマスキング効果(非常に低いL*値)のためである可能性がある。
【0113】
実施例1
プレポリマーを初めに下記のように調製した。1,3-プロパンジオールの2,5-フランジカルボキシレートジメチルエステルに対する1.5モルの比で、2,5-フランジカルボキシレートジメチルエステル(60g、0.326モル)及び1,3-プロパンジオール(37.2g、0.489モル)を、SS 304半月型撹拌棒、蒸留冷却器、及び窒素用の注入口/排出口を備えたオーバーヘッドスターラーを備え付けた予備乾燥した250mLの三口丸底ガラス反応器に入れた。0.23mLから10mLの1,3-プロパンジオールを添加することによって、テトラn-ブチルチタネートを希釈し、この溶液の1mL(ポリマーの重量に基づいてチタン50ppm)をフラスコに添加した。23℃の温度に保たれたフラスコに窒素ブランケットを適用した。50rpmで撹拌を開始してスラリーを形成した。撹拌しながら、フラスコを0.13MPaまで排気し、次いでN2で加圧することを合計3サイクル行った。
【0114】
3サイクルの排気と加圧の後、フラスコを190℃に設定した予熱した液体金属浴に浸した。N2ガスでゆっくりとパージしながら、フラスコの内容物を液体金属浴に入れた後10分間撹拌し、固体成分を溶融させた。反応媒体の実際の温度は、金属浴の設定温度より5~10℃わずかに低かった。次に、攪拌速度を180rpmに上げた。反応中に形成されるメタノール(24.5mL)の大部分を留去しながら、エステル交換反応を190℃の設定温度で1時間及び10℃で更に1時間行った。2時間後、2.5トール(0.33kPa)まで45分間にわたりゆっくりと真空にすることによって減圧した。45分後、全真空(150~220ミリトール)を90分間行い反応物から過剰のPDOを除去した。反応温度は210℃を超えないように維持され、この工程は予備重縮合工程と称される。
【0115】
圧力を大気圧にしながら、反応混合物を室温に冷却した。少量のプレポリマー試料を分析のために集め、残りの材料を再加熱して溶融し、重縮合反応を250℃の浴設定温度で3時間、全真空条件下で行った。ポリマーを回収し、120℃で真空オーブンにて一晩結晶化させた。プレポリマー及び最終ポリマーの特性を表5に報告する。
【0116】
実施例2
実施例2では250mL(実施例1)から3Lの反応器にスケールアップした。以下の量の成分を3Lの三口ガラス反応器に入れた。2,5-フランジカルボキシレートジメチルエステル(1.126kg、6.12モル)、1,3-プロパンジオール(0.698kg、9.176モル)、及びテトラn-ブチルチタネート(0.43g、ポリマーの重量に基づいて50ppmのチタン)。PDOのFDMEに対するモル比は1.5であった。フラスコを160℃に予熱した金属浴に入れた。反応混合物を100rpmで10分間撹拌して窒素雰囲気下で均質な溶液を得、次いで金属浴温度を190℃に上げてエステル交換反応を開始させた。反応をこの温度で2時間続け、温度を210℃に上げ、反応を更に30分間続けた。窒素パージを停止しながら真空ランプを開始した。圧力を大気圧から0.1mmHgから1.0mmHg(絶対圧)の最終の低い圧力まで徐々に低下させた。過剰のPDOを除去しながら、全真空と190℃の温度を60分間維持した。固体プレポリマーをフラスコから回収した。
【0117】
少量のプレポリマー(60g)を250mLの三口フラスコに入れ、フラスコを190℃に予熱した金属浴に入れた。完全真空に達したら、金属浴の温度を240℃に上げ、重縮合反応をこれらの条件下で4時間続けた。溶融重合後のポリマーを回収し、結晶化し分析した。プレポリマー及び最終ポリマーの特性を表5に報告する。
【0118】
実施例3
エステル交換反応及び予備重縮合工程は、以下に記載するようにより低い温度で実施した。以下の量の成分を3Lの三口ガラス反応器に入れた:2,5-フランジカルボキシレートジメチルエステル(1.408kg、7.64モル)及び1,3-プロパンジオール(0.873kg、11.47モル)。PDOのFDMEに対するモル比は1.5であった。フラスコを160℃に予熱した金属浴に入れた。反応混合物を100rpmで10分間撹拌して、窒素雰囲気下で均質な溶液を得た。触媒テトラn-ブチルチタネート(1.097g、ポリマーの重量に基づいて110ppmのチタン)をこの温度で添加した。金属浴温度を170℃に上げて、エステル交換反応を開始した。この温度で100分間反応を続け、温度を180℃に上げて40分間反応を続けた。温度を再び190℃に上げ、反応を更に40分間続けた。窒素パージを停止しながら真空ランプを開始した。圧力を大気圧から0.1mmHgから1.0mmHg(絶対圧)の最終の低い圧力まで徐々に低下させた。過剰のPDOを除去しながら、全真空と190℃の温度を60分間維持した。固体プレポリマーをフラスコから回収した。
【0119】
少量のプレポリマー(60g)を250mLの三口フラスコに入れ、フラスコを190℃に予熱した金属浴に入れた。完全真空に達したら、金属浴の温度を240℃に上げ、重縮合反応をこれらの条件下で4時間続けた。溶融重合後のポリマーを回収し、結晶化し分析した。プレポリマー及び最終ポリマーの特性を表5に報告する。
【0120】
【0121】
実施例1~3に記載したようにして調製したプレポリマーは、驚くべきことに非常に低レベルのジ-PDOを有した。エステル交換及び予備重縮合の間に温度を下げることは、エーテルの形成の減少に劇的な効果をもたらした。エステル交換及び予備重縮合の間の温度を制御して、いかなる添加剤をも添加することなくジ-PDOの量を調整することができる。エステル交換条件は3Lでは最適化されていないが、プレポリマー中のメチルエステルのレベルを減らすことは非常に好適である。比較例A(3.4重量%)と比較して、実施例1~3のPTF溶融ポリマーは、ポリマー骨格中に非常に低レベルのジ-PDO(0.17重量%もの低さ)を有し鎖末端で検出不能であった。エーテル形成は、重縮合工程におけるよりもエステル交換/予備重縮合工程においてより生じることが、データから明らかである。重縮合中のより高い温度は、ジ-PDOの形成にはほとんど影響を及ぼさず、これは副反応を制限する過剰なPDOが存在しないことに起因し得る。更に、実施例1~3のポリマーは、より少ないカルボン酸及びアリル末端を有し、より少ないポリマー分解及び副反応を示し、より高い安定性及び改善された色をもたらした。本発明のこれら3つの実施例は、開示されたプロセス条件及びチタン触媒の配合を使用して、高分子量PTFポリマーを優れた特性で溶融重合プロセスにて生成でき、これにより高価で時間のかかる固相重合工程を排除できることを実証している。
【0122】
実施例4及び実施例5
実施例4及び実施例5のポリマーは、以下の例外を除いて実施例1について記載した通り調製した。表6に示すように、触媒系は異なり、ポリマーは予備重縮合後に冷却することなく一段階で調製した。実施例4では、FDA(食品医薬品局)グレードのブチルスタン酸(Fascat(登録商標)9100)及びテトラ-n-ブチルチタネート(Tyzor(登録商標)TBT)触媒系(80ppmのスズ/20ppmのチタン)の混合物を使用した。実施例5では、ブチルスタン酸と窒化チタンの混合物(REACTHEAT BLUE-2)(90ppmのスズ/10ppmのチタン)を使用した。
【0123】
溶融重合後のポリマーを結晶化し分析した。ポリマーのプロセス及び特性を表6に報告する。
【0124】
【0125】
実施例2~5のPTFポリマーの特性を、それぞれの等温低温結晶化半減期を測定した前後にDSCにより分析した。このデータを表7及び8の比較例Bの固相PTFポリマーのデータと比較する。
【0126】
【0127】
実施例2、実施例4、及び実施例5の結晶化したPTFポリマーを、10℃/分ではなく1℃/分で加熱した場合、約119~128℃の明確な低温結晶化温度(Tcc)ピークが観察された。更に、ポリマーをより遅い加熱速度で結晶化させた場合、ポリマーの溶融温度はほぼ10℃高くなり、より均一な結晶形態を示した。ポリマーのこのより高い溶融温度は、固相重合速度をより速く向上させるのに有利であり得る。
【0128】
【0129】
表8のデータは、実施例2~5のPTFポリマーが、比較例Bの固相重合ポリマーよりも、著しく低い結晶化半減期(速い結晶化速度)、高いガラス転移温度及び高い溶融温度を有することを示している。ポリマー骨格中のジ-PDOレベルがより低いほど、ポリマーがより速い速度で結晶化するのを助ける。実施例2~5のPTFポリマーの推定結晶化度パーセントは、29~30%の範囲である。
比較例E
2,5-フランジカルボキシレートジメチルエステル(1.300kg、7.06モル)、1,4-ブタンジオール(0.955kg、10.6モル)及びテトラ-n-ブチルチタネート(0.21g、ポリマーの重量に基づいて50ppmのチタン)を入れることにより、3Lの三口ガラス反応器中でプレポリマーを作製することを試みた。1,4-ブタンジオールのFDMEに対するモル比は1.5であった。フラスコを160℃に予熱した金属浴に入れた。反応混合物を100rpmで10分間撹拌して、窒素雰囲気下で均質な溶液を得た。金属浴温度を180℃に上げ、エステル交換反応をこの温度で40分間続け、温度を200℃に上げ更に40分反応を続けた。この間に、理論量(571mL)のメタノールより多い600mLの留出物が集められた。留出物はまだ出ているが、過剰の1,4-ブタンジオールを除去するために真空を用いた。しかしながら、低揮発性ガス状生成物、テトラヒドロフラン(THF)の発生のために真空度を下げることができず、従って予備重縮合プロセスを終了した。留出物を分析すると、留出物は、83.8重量%のメタノール、及び3.5重量%の1,4-ブタンジオールと共にかなりの量のTHF(11.4重量%)を含んでいたことがわかった。この比較例は、使用したエステル交換及び予備重縮合プロセス条件が1,3-プロパンジオール系PTFポリマーに特有であり、1,4-ブタンジオール系ポリ(ブチレン2,5-フランジカルボキシレート)ポリマーには実施できないことを実証している。
【0130】
以上、本発明を要約すると以下のとおりである。
1.ix)95~99.9重量%のトリメチレンフランジカルボキシレート繰り返し単位と、
x)ポリマー骨格中の1重量%以下のジ-PDO繰り返し単位と、
xi)ポリマー1キログラム当たり20ミリ当量以下のアリル末端基と、
xii)ポリマー1キログラム当たり15ミリ当量以下のカルボン酸末端基と、
xiii)ポリマー1キログラム当たり10ミリ当量以下のアルキルエステル末端基と、
xiv)1重量%以下の環状二量体オリゴエステルと、
xv)ポリマー1キログラム当たり10ミリ当量以下のジ-PDO末端基と、
xvi)0.70~1.2dL/gの範囲の固有粘度と、を含み、
前記重量パーセントは、組成物中のポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーの総重量に基づく、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーを含む組成物。
2.前記組成物は、分光比色法によって決定される、15未満のb*色値を有する、上記1に記載の組成物。
3.前記組成物は、分光比色法によって決定される、10未満のb*色値を有する、上記1に記載の組成物。
4.前記組成物は、分光比色法によって決定される、60以上のL*色値を有する、上記1に記載の組成物。
5.熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、核剤、加工助剤、トナー/光学的光沢剤、酸素遮断添加剤、鎖延長剤、鎖停止剤、再加熱剤、又は遮光剤を含む1つ以上の添加剤を更に含む、上記1に記載の組成物。
6.前記フランジカルボン酸ジアルキルエステルは、2,5-フランジカルボキシレートジメチルエステルである、上記1に記載の組成物。
7.a)160℃~220℃の範囲の温度でフランジカルボン酸ジアルキルエステル、1,3-プロパンジオール、及び金属触媒を含む混合物を接触させてプレポリマーを形成する工程であって、前記フランジカルボン酸ジアルキルエステルの前記1,3-プロパンジオールに対するモル比は、1:1.3~1:2.2の範囲であり、金属触媒の濃度は、前記混合物の総重量に基づいて、20ppm~400ppmの範囲である工程と、
b)未反応の1,3-プロパンジオールの少なくとも一部を除去する工程と、c)1,3-プロパンジオールを除去しながら前記プレポリマーを減圧下で230℃~260℃の範囲の温度に加熱してポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーを形成する工程と、を含むプロセス。
8.前記ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーは、分光比色法によって決定される、15未満のb*色値を有する、上記7に記載のプロセス。
9.前記ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーは、0.70~1.2dL/gの範囲の固有粘度を有する、上記7に記載のプロセス。
10.前記プロセスは、バッチ式、半連続式、又は連続式である、上記7に記載のプロセス。
11.少なくとも50重量%の過剰の1,3-プロパンジオールが工程b)で除去される、上記7に記載のプロセス。
12.少なくとも90重量%の過剰の1,3-プロパンジオールが工程b)で除去される、上記7に記載のプロセス。
13.前記フランジカルボン酸ジアルキルエステルは、2,5-フランジカルボキシレートジメチルエステルである、上記7に記載のプロセス。
14.前記ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーは、120℃で測定した結晶化半減期が100分以下である、上記7に記載のプロセス。
15.工程a)は、形成されたアルキルアルコールの少なくとも一部を同時に除去することを更に含む、上記7に記載のプロセス。
16.前記ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーを約110℃~約1
30℃の範囲の温度で結晶化して結晶化したポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーを得る工程d)を更に含む、上記7に記載のプロセス。
17.上記7に記載のプロセスによって得られるポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマー。
18.xvii)95~99.9重量%のトリメチレンフランジカルボキシレート繰り返し単位と、
xviii)ポリマー1キログラム当たり20ミリ当量以下のアリル末端基と、
xix)ポリマー1キログラム当たり15ミリ当量以下のカルボン酸末端基と、
xx)ポリマー骨格中の1重量%以下のジ-PDO繰り返し単位と、
xxi)ポリマー1キログラム当たり10ミリ当量以下のアルキルエステル末端基と、
xxii)1重量%以下の環状二量体オリゴエステルと、
xxiii)ポリマー1キログラム当たり10ミリ当量以下のジ-PDO末端基と、
xxiv)0.70~1.20dL/gの範囲の固有粘度と、を含み、
前記重量パーセントは、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーの総重量に基づく、上記17に記載のポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマー。
19.ix)95~99.9重量%のトリメチレンフランジカルボキシレート繰り返し単位と、
x)ポリマー骨格中の1重量%以下のジ-PDO繰り返し単位と、
xi)ポリマー1キログラム当たり20ミリ当量以下のアリル末端基と、
xii)ポリマー1キログラム当たり21ミリ当量以下のカルボン酸末端基と、
xiii)ポリマー1キログラム当たり15ミリ当量以下のアルキルエステル末端基と、
xiv)1重量%以下の環状二量体オリゴエステルと、
xv)ポリマー1キログラム当たり10ミリ当量以下のジ-PDO末端基と、
xvi)0.60~1.2dL/gの範囲の固有粘度と、を含み、
前記重量パーセントは、組成物中のポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーの総重量に基づく、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ポリマーを含む組成物。