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特許7129412多官能オレフィンコポリマー及びそれを含む潤滑油組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】多官能オレフィンコポリマー及びそれを含む潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/32 20060101AFI20220825BHJP
   C08F 210/16 20060101ALI20220825BHJP
   C08F 10/10 20060101ALI20220825BHJP
   C10M 169/04 20060101ALI20220825BHJP
   C10M 145/26 20060101ALI20220825BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20220825BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20220825BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20220825BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20220825BHJP
【FI】
C08F8/32
C08F210/16
C08F10/10
C10M169/04
C10M145/26
C10N30:00 Z
C10N30:02
C10N30:04
C10N40:25
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019531229
(86)(22)【出願日】2017-12-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 US2017065410
(87)【国際公開番号】W WO2018111726
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】15/381,701
(32)【優先日】2016-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ソルマズ・ピローズ
(72)【発明者】
【氏名】シェン・ジアン
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-307225(JP,A)
【文献】特開2007-063559(JP,A)
【文献】特表2015-503662(JP,A)
【文献】特開平11-315296(JP,A)
【文献】特開平08-081563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C10M 101/00-177/00
C10N 30/00
C10N 30/02
C10N 30/04
C10N 40/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応生成物である官能化ポリマーであって、
エチレン性不飽和カルボン酸材料でグラフト化された炭化水素ポリマーを、
i)1~99モル%の炭化水素置換ポリ(オキシアルキレン)アミン及び/又は炭化水素置換ポリ(オキシアルキレン)アルコール、及び
ii)1~99モル%のポリアミンと反応させ、
両方のモルパーセントをいずれも成分i)及びii)の合計モル数を基準とし、成分i)及びii)を任意の順序で添加することができるステップ、を含むプロセスによって得られ、
前記炭化水素ポリマーが、ポリイソブチレン、または、エチレン及び一つもしくは複数のC3-C28アルファオレフィンのコポリマーを含み、
前記ポリアミンが、下記a)~k)からなる群から選択される、官能化ポリマー
a)式III:
【化1】
で表されるN-アリールフェニレンジアミンであって、式中、R 7 が水素、-NH-アリール、-NH-アリールアルキル、-NH-アルキル、又はアルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、アルカリール、ヒドロキシアルキル又はアミノアルキルから選択される4~24個の炭素原子を有する分岐鎖若しくは直鎖ラジカルであり、R 8 が-NH 2 、-CH 2 -(CH 2 n -NH 2 、-CH 2 -アリーレン-NH 2 であり、
式中、nの値が1~10であり、R 9 が水素、4~24個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、アルカリールである、N-アリールフェニレンジアミン、
b)アミノチアゾール、
c)式IV:
【化2】
で表されるアミノカルバゾールであって、式中、R 10 及びR 11 が水素又は1~14個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル又はアルコキシルラジカルを表すアミノカルバゾールである、アミノカルバゾール、
d)式V:
【化3】
で表されるアミノインドールであって、式中、R 12 が水素又は1~14個の炭素原子を有するアルキルラジカルを表すアミノインドールである、アミノインドール、
e)式VI:
【化4】
で表されるアミノピロールであって、式中、R 13 が2~6個の炭素原子を有する2価のアルキレンラジカルであり、R 14 が水素又は1~14個の炭素原子を有するアルキルラジカルである、アミノピロール、
f)式VII:
【化5】
で表されるアミノ-インダゾリノンであって、式中、R 15 が水素又は1~14個の炭素原子を有するアルキルラジカルである、アミノ-インダゾリノン、
g)式VIII:
【化6】
で表されるアミノメルカプトトリアゾールであって、式中、R 16 がアミノ基であり、R 17 が不在であり得る又はアルキレン、アルケニレン、アリールアルキレン、又はアリーレンからなる群から選択されるC 1 -C 10 線状又は分岐鎖ヒドロカルビレンである、アミノメルカプトトリアゾール、
h)式IX:
【化7】
で表されるアミノペリミジンであって、式中、R 18 が水素又は1~14個の炭素原子を有するアルキル又はアルコキシラジカルを表す、アミノペリミジン、
i)アミノアルキルイミダゾール、
j)アミノアルキルモルホリン、および
k)3-アミノ-1-プロパノール。
【請求項2】
成分i)が、式I:
1-(O-CHR2-CHR3x-A
の炭化水素置換ポリ(オキシアルキレン)アミンを含有し、式中、R1~35個の炭素原子を有する炭化水素基であり、R2及びR3がそれぞれ独立して水素、メチル又はエチルであり、及び各R2及びR3が-O-CHR2-CHR3-ユニットにおいて独立して選択され、Aがアミノ、-CH2-アミノ又は~10個の炭素原子を有するN-アルキルアミノであり、xが45の整数である、請求項1に記載の官能化ポリマー。
【請求項3】
成分i)が、式:
1-(O-CHR2-CHR3x-R19OH
の炭化水素置換ポリ(オキシアルキレン)アルコールを含有し、式中、R135個の炭素原子を有する炭化水素基であり、R2及びR3がそれぞれ独立した水素、メチル又はエチルであり、及び各R2及びR3が-O-CHR2-CHR3-ユニットにおいて独立して選択され、R19が存在しないかC1-C10アルキレン基であり、xが45の整数である、請求項1に記載の官能化ポリマー。
【請求項4】
成分i)が、式II:
【化8】
の炭化水素置換ポリ(オキシアルキレン)アミンを含有し、式中、R435個の炭素原子を有する炭化水素基であり、R5が各繰り返しユニットで独立して水素又はC1-C10アルキル基であり、A’が-NH-R6であり、R6が水素又はC1-C10アルキル基であり、a及びbがa+bが2~45になる整数である、請求項1に記載の官能化ポリマー。
【請求項5】
式II中、aが1~30の整数であり、bが1~44の整数である、請求項4に記載の官能化ポリマー。
【請求項6】
式II中、aが1~15であり、bが10~40である、請求項4に記載の官能化ポリマー。
【請求項7】
前記炭化水素ポリマーが、エチレン及び一つ又は複数のC3-C28アルファオレフィンのコポリマーを含む、請求項1に記載の官能化ポリマー。
【請求項8】
前記エチレン及び一つ又は複数のC3-C28アルファオレフィンのコポリマーが、前記ポリマー骨格の1000数平均分子量ユニット当たり0.1~0.75のカルボキシル基を含む、請求項7に記載の官能化ポリマー。
【請求項9】
前記エチレン及び一つ又は複数のC3-C28アルファオレフィンのコポリマーが、5,000~250,000amuの数平均分子量を有する、及び10~80重量%のエチレン及び20~90重量%の前記一つ又は複数のC3-C28アルファオレフィンを含有する、請求項7に記載の官能化ポリマー。
【請求項10】
前記炭化水素ポリマーが、ポリイソブチレンを含有する、請求項1に記載の官能化ポリマー。
【請求項11】
前記炭化水素ポリマーが、水素化スチレン-ブタジエンスターコポリマーを含有する、請求項1に記載の官能化ポリマー。
【請求項12】
前記ポリアミンが、式III:
【化9】
で表されるポリアミンを含有し、式中、R7が水素、-NH-アリール、-NH-アリールアルキル、-NH-アルキル、又はアルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、アルカリール、ヒドロキシアルキル又はアミノアルキルであり得る4~24個の炭素原子を有する分岐鎖若しくは直鎖ラジカルであり、R8が、-NH 2 、-CH 2 -(CH 2 n -NH 2 、-CH 2 -アリーレン-NH 2 であり、式中、nの値が1~10であり、R9、が水素、4~24個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、アルカリールである、請求項1に記載の官能化ポリマー。
【請求項13】
前記ポリアミンが、N-フェニル-1,4-フェニレンジアミン、N-フェニル-1,3-フェニレンジアミン、及びN-フェニル-1,2-フェニレンジアミンからなる群から選択される、請求項1に記載の官能化ポリマー。
【請求項14】
前記炭化水素ポリマーが、無水マレイン酸でグラフト化される、請求項1に記載の官能化ポリマー。
【請求項15】
ともに添加剤濃縮物の総重量に基づいて、
50重量%超の基油と、
5~50未満重量%の請求項1に記載の官能化ポリマーと、を含む、粘度調整剤濃縮物。
【請求項16】
ともに潤滑組成物の総重量に基づいて、
50重量%超の基油と、
0.001~10重量%の請求項1に記載の官能化ポリマーと、を含む、潤滑組成物。
【請求項17】
官能化ポリマーの総量が、潤滑組成物の総重量に基づいて0.1重量%~重量%である、請求項16に記載の潤滑組成物。
【請求項18】
潤滑組成物がエンジンオイルである、請求項16に記載の潤滑組成物。
【請求項19】
請求項18に記載の潤滑組成物でエンジンを潤滑させるステップと、エンジンを作動させるステップと、を含む、エンジンの燃費を改善する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は良好な増粘力及び優れた分散性を有し、改善された燃費を提供する、グラフト官能化ポリマーに関する。本開示はまた、グラフト官能化オレフィンコポリマーを含む潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃費への関心が高まっている。車両の燃費を改善する一つの方法は、耐久性のために良好なフィルム厚さを維持しながら、摩擦を低減してより低い高温高せん断(「HTHS」)粘度を有する新しい潤滑油を設計することである。粘度調整剤(「VM」)はこれらの望ましい特性を有する潤滑油を配合するのに重要な役割を果たす。潤滑油を増粘させるという主な機能を提供することに加えて、燃費を改善する機能を提供するために、新しいVMを開発する必要がある。VMの一般的な構造は線状、星型及び分岐ポリマーを含む。線状ポリマーをさらに修飾して多官能性VMを提供することができる。
【0003】
潤滑油の粘度は通常、温度に依存する。油温度が上昇すると、油の粘度は一般的には低下する。油温が低下すると、油の粘度は一般的には増加する。現代のエンジンは通常、高温で動作する。エンジンの可動部品を適切に潤滑させるためには、潤滑油の粘度を指定された範囲内に維持することが重要である。また、潤滑油は、エンジンが動作していないときに環境からの低温にさらされる可能性がある。このような条件下で、エンジン始動条件下で遭遇する温度で油が流れるように油の粘度を十分に低く保たなければならない。高温及び低温で許容可能な油粘度範囲は、SAE J300規格によって指定されている。
【0004】
潤滑油はまた、エンジンに用いられるとき、高いせん断速度に遭遇する。10-1のような高いせん断速度が文献に報告されている。高温高せん断(HTHS)条件下での潤滑剤の粘度挙動は、燃費に影響を及ぼす可能性がある。比較的高いHTHS粘度を有する流体は通常、エンジン動作中にエンジン表面の境界により厚い油膜が形成されるため、燃費が悪くなる。対照的に、比較的低いHTHS粘度を有する流体は、より薄い油膜を形成し得るため、燃費が改善する。
【0005】
基油は、通常、VMsなどの添加剤を添加しなければSAE J300の粘度要件を満たすことができない。VMsは潤滑剤の粘度が温度とともに変化する程度を低下させ、SAE J300規格を満たす油を配合するために用いられる。好適なVMsは通常、エチレン-プロピレンコポリマー、ポリメタクリレート、水素化スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリイソブチレンなどから誘導され得るポリマー材料を含む。
【0006】
エチレン-プロピレンコポリマーは通常、エンジンオイル用のVMsを提供するために用いられる。このようなコポリマーのエチレン含有量は45~85モル%の範囲であり得る。約60モル%のエチレンを含むポリマーから誘導されたVMsは一般的に用いられ、かつSAE J300要件を満たすために比較的高い処理速度を油中で必要とする。約65モル%より高いエチレン~85モル%エチレンを含むコポリマーから誘導されたVMsは、一般的にはSAE J300要件を満たすために約60モル%のエチレンを含むものより低い処理速度を油中で必要とする。
【0007】
米国出願公開特許2013/0172220 A1は、(a)約5000~120000の数平均分子量を有し、0.5重量%~5.0重量%の少なくとも1個のカルボキシル酸基又は無水物基を有するエチレン性不飽和アシル化剤でグラフト化される、10~80未満%のエチレン、20重量%超から90重量%までの少なくとも一種のC-C28アルファオレフィンを含む、油溶性エチレン-アルファオレフィンコポリマーと、(b)式が:
-(O-CHR-CHR-A
【0008】
であり、式中、Rは約1~約35個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、R及びRはそれぞれ独立した水素、メチル又はエチルであり、Aは約1~10個の炭素原子を有するアミノ、-CH-アミノ又はN-アルキルアミノであり、かつxは2~45の整数である、ヒドロカルビル置換ポリ(オキシアルキレン)アミンとの反応生成物である、潤滑油組成物用の添加剤に関する。
【0009】
米国特許第6,107,257号は、多官能性オレフィンコポリマーの粘度調整剤を含む潤滑油組成物用の添加剤に関する。グラフト化エチレン-プロピレンコポリマーを、溶媒の存在下でエチレン-プロピレンコポリマー骨格に無水マレイン酸をグラフト化することによって最初に調製する。次いで界面活性剤の存在下で、多官能性オレフィンコポリマーの粘度調整剤を得るために、グラフト化されたエチレン-プロピレンコポリマーをN-アリールフェニレンジアミンと反応させる。
【0010】
潤滑剤組成物がSAE J300規格を満たすことを可能にし、それと同時に改善された燃費と望ましい低温特性を示す潤滑剤組成物のための粘度調整剤を提供する必要性が依然としてある。本発明は、潤滑組成物に配合されたとき、良好な増粘力(TP)、比較的低いHTHS粘度、良好な摩擦及びコールドスタート特性、優れた分散性を有し、かつ改善された燃費を提供することができる、グラフト化多官能性オレフィンコポリマーを提供する。
【発明の概要】
【0011】
本開示は、アシル化剤をグラフト化した炭化水素ポリマーと、
i)ヒドロカルビル置換ポリ(オキシアルキレン)アミン及び/又はポリ(オキシアルキレン)アルコールと、
ii)ポリアミンと、の2種類を反応させて得られる反応生成物を含む、官能化ポリマーに関する。
【0012】
上記実施形態において、ヒドロカルビル置換ポリ(オキシアルキレン)アミンは、式I:
-(O-CHR-CHR-A
【0013】
で表すことができ、
式中、R1は約1~約35個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、R2及びR3はそれぞれ独立して水素、メチル又はエチルであり、かつ各R2及びR3は-O-CHR2-CHR3-ユニットにおいて独立して選択され、Aはアミノ、-CH2-アミノ又は約1~10個の炭素原子を有するN-アルキルアミノであり、xは約2~45の整数である。
【0014】
いくつかの実施形態において、ヒドロカルビル置換ポリ(オキシアルキレン)アミンは式II:
【0015】
【化3】
【0016】
で表すことができ、
式中、R4は約1~約35個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、R5各繰り返しユニットで独立して水素又はC 1-C10アルキル基であり、R6は水素又はC1-C10アルキル基であり、A’は-NH-R6であり、R6は水素又はC1-C10アルキル基であり、a及びbはa+bが2~45になる整数である。
【0017】
上記実施形態において、aは1~30の整数であり得、及びbは1~44の整数であり得る。上記実施形態において、aは1~15の整数であり得、及びbは10~40の整数であり得る。
【0018】
上記各実施形態において、成分i)は式:
1-(O-CHR2-CHR3x-R19-OH
のヒドロカルビル置換ポリ(オキシアルキレン)アルコールを含み得、
式中、R1は約1~約35個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、R2及びR3はそれぞれ独立して水素、メチル又はエチルであり、かつ各R2及びR3は-O-CHR2-CHR3-ユニットにおいて独立して選択され、R19は存在しないか又はC1-C10 アルキレン基であり、xは約2~約45の整数である。
【0019】
上記各実施形態において、炭化水素ポリマーはポリイソブチレンを含み得る。上記各実施形態において、炭化水素ポリマーは水素化スチレン-ブタジエンスターコポリマーを含み得る。
【0020】
上記各実施形態において、炭化水素ポリマーは、エチレン及び一つ又は複数のC-C28アルファオレフィンのコポリマーを含み得る。エチレン及び一つ又は複数のC-C28アルファオレフィンのコポリマーは、5000~250,000amuの数平均分子量を有し、及び10~80重量%のエチレン及び20~90重量%の一つ又は複数のC-C28アルファオレフィンを含有する。
【0021】
上記各実施形態において、炭化水素ポリマーは、ポリマー骨格の1000数平均分子量ユニット当たり0.15~0.75のカルボキシル基、又はポリマー骨格の1000数平均分子量ユニット当たり0.3~0.75のカルボキシル基を含み得る。
【0022】
上記各実施形態において、ポリアミンは、
a) 式III:
【0023】
【化4】
【0024】
で表され、
式中、Rは水素、--NH-アリール、--NH-アリールアルキル、--NH-アルキル、又はアルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、アルカリール、ヒドロキシアルキル又はアミノアルキルであり得る4~24個の炭素原子を有する分岐鎖若しくは直鎖ラジカルであり、Rは--NH、CH--(CH--NH、CH-アリール-NHであり、1~10のnの値を有し、Rは水素、4~24個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、アルカリールである、N-アリールフェニレンジアミンと、
b)アミノチアゾールと、
c)式IV:
【0025】
【化5】
【0026】
で表され、
式中、R10及びR11は水素又は1~14個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル又はアルコキシルラジカルを表す、アミノカルバゾールと、
d)式V:
【0027】
【化6】
【0028】
で表され、
式中、R12は水素又は1~14個の炭素原子を有するアルキルラジカルを表す、アミノインドールと、
e)式VI:
【0029】
【化7】
【0030】
で表され、
式中、R13は2~6個の炭素原子を有する2価のアルキレンラジカルであり、及びR14は水素又は1~14個の炭素原子を有するアルキルラジカルである、アミノピロールと、
f)式VII:
【0031】
【化8】
【0032】
で表され、
式中、R15は水素又は1~14個の炭素原子を有するアルキルラジカルである、アミノ-インダゾリノンと、
g)式VIII:
【0033】
【化9】
【0034】
で表され、
式中、R16は不在であり得る又はアルキル、アルケニル、アリールアルキル、又はアリールからなる群から選択されるC-C10線状又は分岐鎖炭化水素であり、かつR17は不在であり得る又はアルキレン、アルケニレン、アリールアルキレン、又はアリーレンからなる群から選択されるC-C10線状又は分岐鎖ヒドロカルビレンである、アミノメルカプトトリアゾールと、
h)式IX:
【0035】
【化10】
【0036】
で表され、
式中、R18は水素又は1~14個の炭素原子を有するアルキル又はアルコキシラジカルを表す、アミノペリミジンと、
i)アミノアルキルイミダゾールと、及び
j)アミノアルキルモルホリンと、からなる群から選択され得る。
【0037】
上記各実施形態において、ポリアミンは式III:
【0038】
【化11】
【0039】
で表すことができ、
式中、Rは水素、-NH-アリール、-NH-アリールアルキル、-NH-アルキル、又はアルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、アルカリール、ヒドロキシアルキル又はアミノアルキルであり得る4~24個の炭素原子を有する分岐鎖若しくは直鎖ラジカルであり、Rは--NH、CH--(CH--NH、CH-アリール-NHであり、式中、nの値は1~10であり、Rは水素、4~24個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、アルカリールである。
【0040】
上記各実施形態において、ポリアミンは、N-フェニル-1,4-フェニレンジアミン、N-フェニル-1,3-フェニルジアミン及びN-フェニル-1,2-フェニレンジアミンからなる群から選択され得る。
【0041】
特定の上記実施形態において、ポリアミンは、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン、アミノエチルピペラジン、テトラエチレンペンタミン、N-メチル-1,3-プロパンジアミン、N、N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、アミノグアニジンビカーボネート、及びアミンボトムスからなる群から選択され得る。このような場合、官能化ポリマーは、a)非芳香族ジカルボン酸又は無水物、b)全てのカルボン酸又は無水物基(複)が芳香環に直接結合する、芳香族カルボン酸、芳香族ポリカルボン酸、又は芳香族無水物、及びc)成分a)とb)の両方の組み合わせ、のいずれかを用いて後処理を行い得る。
【0042】
上記各実施形態において、炭化水素ポリマーは無水マレイン酸でグラフト化され得る。
【0043】
他の実施形態において、本開示は、ともに添加剤濃縮物の総重量に基づいて、50重量%超の基油を含む濃縮物と、請求項1に記載の5~50未満重量%の官能化ポリマーを含む。
【0044】
他の実施形態において、本開示は、ともに潤滑組成物の総重量に基づいて、50重量%超の基油を含む潤滑組成物と、0.1~20重量%の任意の上記官能化ポリマーを含む。
【0045】
上記各潤滑組成物において、官能化ポリマーの総量は、潤滑組成物の総重量に基づいて約0.1重量%~約12重量%、又は潤滑組成物の総重量に基づいて約0.5重量%~約10重量%である。
【0046】
上記各実施形態において、潤滑組成物はエンジンオイルであり得る。
【0047】
他の態様では、本発明は、上記潤滑組成物のいずれかを用いてエンジンを潤滑させ、及びエンジンを作動させることによってエンジンの燃費を改善する方法に関する。
【0048】
他の態様では、本発明はエンジンの燃費を改善するための上記潤滑油組成物のいずれかの使用に関する。
【0049】
本明細書で用いられる特定の用語の意味を明確にするために以下の用語の定義が提供される。
【0050】
用語「油組成物」、「潤滑組成物(lubrication composition)」、「潤滑油組成物」、「潤滑油」、「潤滑剤組成物」、「潤滑組成物(lubricating composition)」、「完全配合潤滑剤組成物」、「潤滑剤」、「クランクケース油」、「クランクケース潤滑剤」、「エンジンオイル」、「エンジン潤滑剤」、「モーター油」、及び「モーター潤滑剤」は、潤滑能力に用いられ、かつ過半量の基油と粘度調整剤を含む少量の添加剤組成物を含む最終潤滑製品を指す、同義かつ完全に交換可能な用語であるとみなされる。
【0051】
本明細書で用いられるとき、用語「添加剤パッケージ」、「添加剤濃縮物」、「添加剤組成物」、「エンジンオイル添加剤パッケージ」、「エンジンオイル添加剤濃縮物」、「クランクケース添加剤パッケージ」、「クランクケース添加剤濃縮物」、「モーター油添加剤パッケージ」、「モーター油濃縮物」は、過半量の基油ストック混合物を除く、潤滑油組成物の一部を指す、同義かつ完全に交換可能な用語であるとみなされる。添加剤パッケージは粘度指数改善剤又は流動点降下剤を含んでも含まなくてもよい。
【0052】
用語「過塩基性」は、存在する金属の量が化学量論量を超える、スルホン酸塩、カルボン酸塩、サリチル酸塩、及び/又はフェネートなどの金属塩に関する。このような塩は、100%超の転化率を有し得る(すなわち、それらは酸をその「標準」、「中性」の塩に変換するのに必要な理論的金属量の100%以上を含み得る)。しばしばMRと略される表現「金属比」は、既知の化学反応性及び化学量論に従って過塩基性塩中の金属の総化学当量と中性塩中の金属の化学当量との比率を示すために用いられる。標準又は中性塩では金属比は1であるが、過塩基性塩ではMRは1より大きい。これらは一般的には過塩基性、高塩基性又は超塩基性塩と呼ばれ、有機硫黄酸、カルボン酸、サリチル酸塩、及び/又はフェノールの塩であり得る。
【0053】
本明細書で用いられるとき、用語「炭化水素ポリマー」は、直鎖状、分岐状及び星型ポリマー、並びにテーパー状、ブロック状、均一及びランダムコポリマーを含む。
【0054】
本明細書で用いられるとき、用語「ヒドロカルビル置換基」又は「ヒドロカルビル基」は当業者に既知の通常の意味で用いられる。具体的には、それは分子の残りに直接結合した炭素原子を有し、かつ主な炭化水素特性を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例は、
(a)炭化水素置換基であって、すなわち、脂肪族(例えば、アルキル又はアルケニル)、脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、及び芳香族置換基、脂肪族置換基及び脂環式置換芳香族置換基、並びに環が分子の他の部分を介して完成する(例えば、2個の置換基が一緒になって脂環式部分を形成する)置換基と、
(b)置換された炭化水素置換基であって、すなわち、本開示の範囲において主な炭化水素置換基を変化させない非炭化水素基(例えば、ハロ(特にクロロ及びフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、アミノ、アルキルアミノ及びスルホキシ)を含む置換基と、
(c)ヘテロ置換基であって、すなわち、本開示範囲において、主な炭化水素特性を有する一方で環又は鎖中に炭素以外のものを含み、それ以外は炭素原子からなる置換基と、を含む。ヘテロ原子は硫黄、酸素、及び窒素を含み、及び具体的にはピリジル、フリル、チエニル及びイミダゾリルなどの置換基を含み得る。一般的には、ヒドロカルビル基中の10個の炭素原子毎に2個以下、例えば1個以下の非炭化水素置換基が存在し、通常、ヒドロカルビル基中には非炭化水素置換基は存在しない。
【0055】
本明細書で用いられるとき、用語「重量パーセント」は、他に明確に述べられていない限り、記載された成分が組成物全体の重量に対して表すパーセンテージを意味する。
【0056】
用語「可溶性」、「油溶性」、又は「分散性」は、本明細書で用いられるとき、必ずしもそうとは限らないが、化合物又は添加剤が、任意の比率で油中に可溶性、溶解性、混和性、又は懸濁可能であることを示し得る。しかしながら、前述の用語は、それらが、油が用いられる環境において意図された効果を発揮するのに十分な程度に、油中で可溶性、懸濁性、溶解性、又は安定に分散性であることを意味する。さらに、必要に応じて、他の添加剤の追加の添加は、特定の添加剤のより高いレベルの配合を可能にし得る。
【0057】
本明細書で用いられる用語「TBN」は、ASTM D2896又はASTM D4739並びにDIN 51639-1の方法によって測定したmgKOH/gをユニットとする全塩基価を示すために用いられる。
【0058】
本明細書で用いられるとき、用語「粘度調整剤」は、温度変化時に潤滑剤の粘度が変化する傾向を低下させる成分を指す。粘度調整剤は通常、その動作温度で潤滑剤の粘度を増大させ、それによって潤滑油の粘度指数を増加させる。用語「粘度調整剤」は、用語「粘度指数改善剤」と交換可能に用いられる。
【0059】
本明細書で用いられるとき、用語「粘度調整剤濃縮物」、粘度調整剤成分に加えて基油又は炭化水素溶媒などの希釈剤を含む添加剤濃縮物を指す。粘度調整剤濃縮物は、特に潤滑油を配合するために用いられる添加剤濃縮物が粘度調整剤を含まない場合、又は追加の粘度調整剤が必要な場合に、粘度調整剤成分を潤滑油に供給するために用いられ得る。
【0060】
本明細書で用いられる用語「アルキル」は、約1~約100個の炭素原子の直鎖、分枝鎖、環状、及び/又は置換飽和鎖部分を指す。
【0061】
本明細書で用いられる用語「アルケニル」は、約3~約10個の炭素原子の直鎖状、分岐状、環状、及び/又は置換不飽和鎖部分を指す。
【0062】
本明細書で用いられる用語「アリール」は、アルキル、アルケニル、アルキルアリール、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロ置換基、及び/又は窒素、酸素、及び硫黄を含むがこれらに限定されないヘテロ原子を含み得る、単環式及び多環式の芳香族化合物を指す。
【0063】
本開示の潤滑剤、成分の組合わせ、又は個々の成分は、さまざまな種類の内燃エンジンにおいて用いることに好適であり得る。好適なエンジンタイプは、高負荷ディーゼル、乗用車、軽負荷ディーゼル、中速ディーゼル、又は船舶用エンジンを含むがこれらに限定されない。内燃エンジンは、ディーゼル燃料エンジン、ガソリン燃料エンジン、天然ガス燃料エンジン、バイオ燃料エンジン、ディーゼル/バイオ混合燃料エンジン、ガソリン/バイオ混合燃料エンジン、アルコール燃料エンジン、ガソリン/アルコール混合燃料エンジン、圧縮天然ガス(CNG)燃料エンジン、又はそれらの混合物であり得る。ディーゼルエンジンは圧縮点火エンジンであり得る。ガソリンエンジンはスパーク点火エンジンであり得る。内燃エンジンはまた、電気又はバッテリ電源と組み合わせて用い得る。このように構成されたエンジンは一般的にはハイブリッドエンジンと呼ばれている。内燃エンジンは、2ストローク、4ストローク、又はロータリーエンジンであり得る。好適な内燃エンジンは、船舶用ディーゼルエンジン(例えば内陸船舶)、航空用ピストンエンジン、低負荷ディーゼルエンジン、及びオートバイ、自動車、機関車、並びにトラックエンジンを含む。
【0064】
内燃エンジンは、アルミニウム合金、鉛、スズ、銅、鋳鉄、マグネシウム、セラミック、ステンレス鋼、複合材、及び/又はこれらの混合物のうちの一つ又は複数の構成要素を含み得る。構成要素は、例えば、ダイヤモンドライクカーボンコーティング、潤滑コーティング、リン含有コーティング、モリブデン含有コーティング、グラファイトコーティング、ナノ粒子含有コーティング、及び/又はこれらの混合物でコーティングし得る。アルミニウム合金は、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、又は他のセラミック材料を含み得る。一実施形態において、アルミニウム合金はケイ酸アルミニウム表面である。本明細書で用いられるとき、用語「アルミニウム合金」は、「アルミニウム複合体」と同義であり、その詳細な構造にかかわらず、顕微鏡レベル又はほぼ顕微鏡レベルで混合又は反応するアルミニウム及び他の成分を含む成分又は表面を表すことが意図される。これはアルミニウム以外の金属を有する従来の合金だけでなく、類似セラミック材料などの非金属元素又は化合物を有する複合又は合金様構造を含む。
【0065】
内燃エンジン用の潤滑油組成物は、硫黄、リン、又は硫酸灰分(ASTM D-874)の含有量にかかわらず、いかなるエンジン潤滑剤にも好適であり得る。エンジンオイル潤滑剤の硫黄含有量は、約1重量%以下、又は約0.8重量%以下、又は約0.5重量%以下、又は約0.3重量%以下、又は約0.2重量%以下であり得る。一実施形態において、硫黄含有量は、約0.001重量%~約0.5重量%、又は約0.01重量%~約0.3重量%の範囲であり得る。リン含有量は、約0.2重量%以下、又は約0.1重量%以下、又は約0.085重量%以下、又は約0.08重量%以下、又は約0.06重量%以下、約0.055重量%以下、又は約0.05重量%以下であり得る。一実施形態において、リン含有量は約50ppm~約1000ppm又は約325ppm~約850ppmであり得る。硫酸灰分の総含有量は、約2重量%以下、又は約1.5重量%以下、又は約1.1重量%以下、又は約1重量%以下、又は約0.8重量%以下、又は約0.5重量%以下であり得る。一実施形態において、硫酸灰分含有量は、約0.05重量%~約0.9重量%、又は約0.1重量%、又は約0.2重量%~約0.45重量%であり得る。他の実施形態において、硫黄含有量は約0.4重量%以下であり、リン含有量は約0.08重量%以下であり、硫酸灰分は約1重量%以下である。さらに他の実施形態において、硫黄含有量は約0.3重量%以下であり、リン含有量は約0.05重量%以下であり、硫酸灰分は約0.8重量%以下であり得る。
【0066】
一実施形態において、潤滑油組成物はエンジンオイルであり、潤滑油組成物は(i)約0.5重量%以下の硫黄含有量、(ii)約0.1重量%以下のリン含有量、及び(iii)約1.5重量%以下の硫酸灰分含有量を有し得る。
【0067】
一実施形態において、潤滑油組成物は2-ストローク又は4ストロークの船舶用ディーゼル内燃エンジンに好適である。一実施形態において、船舶用ディーゼル燃焼エンジンは2ストロークエンジンである。いくつかの実施形態において、潤滑油組成物は、船舶用エンジンの動力供給に用いられる燃料の高硫黄含有量及び船舶用エンジンに好適なエンジンオイルに必要な高いTBNを含むがこれらに限定されない(例えば、船舶用エンジンに好適なエンジンオイルでは約40TBNを超える)、一つ又は複数の理由で、2ストローク又は4ストロークの船舶用ディーゼル内燃エンジンには、好適ではない。
【0068】
いくつかの実施形態において、潤滑油組成物は、約1~約5%の硫黄を含む燃料などの低硫黄燃料を駆動源とするエンジンで用いることに好適である。高速走行車の燃料は約15ppmの硫黄(又は約0.0015%の硫黄)を含む。
【0069】
低速ディーゼルは、通常船舶用エンジンを指し、中速ディーゼルは通常機関車を指し、高速ディーゼルは通常高速走行車を指す。潤滑油組成物はこれらのタイプのうちの一つのみ又は全てのタイプに好適であり得る。
【0070】
さらに、本開示の潤滑剤は、ILSAC GF-3、GF-4、GF-5、GF-6、PC-11、CI-4、CJ-4、ACEA A1/B1、A2/B2、A3/B3、A3/B4、A5/B5、C1、C2、C3、C4、C5、E4/E6/E7/E9、Euro5/6、Jaso DL-1、Low SAPS、Mid SAPSなどの一つ又は複数の工業規格要件、又はDexo(商標)1、Dexos(商標)2、MB-Approval229.51/229.31、VW502.00、503.00/503.01、504.00、505.00、506.00/506.01、507.00、508.00、509.00、BMW Longlife-04、Porsche C30、Peugeot Citroen Automobiles B71 2290、B71 2296、B71 2297、B71 2300、B71 2302、B71 2312、B71 2007、B71 2008、Ford WSS-M2C153-H、WSS-M2C930-A、WSS-M2C945-A、WSS-M2C913A、WSS-M2C913-B、WSS-M2C913-C、GM6094-M、Chrysler MS-6395などの相手先商標製品製造業者の規格、又は本明細書に言及されていない過去又は未来のPCMO規格又はHDD規格を満たすことに好適であり得る。乗用車用モーター油(PCMO)用途のいくつかの実施形態では、完成品の流体中のリンの量は、1000ppm以下、又は900ppm以下、又は800ppm以下である。
【0071】
他のハードウェアは、開示される潤滑剤を使用するには好適ではない可能性がある。用語「機能性流体」は、トラクターの作動流体、自動変速機流体を含む動力伝達流体、連続可変トランスミッション流体及び手動トランスミッション流体、トラクターの作動流体を含む作動流体、一部のギア油、パワーステアリング流体、風力タービン、圧縮機に用いられる流体、一部の工業用流体、及び動力伝達装置の部品に関連する流体を含むがこれらに限定されないさまざまな流体を含む。自動変速機流体などのこれらの流体の各々の中には、顕著に異なる機能特性の流体を必要する異なる設計を有するさまざまなトランスミッションのためにさまざまな異なるタイプの流体が存在することに留意すべきである。これは動力の発生又は伝達に用いられない用語「潤滑流体」とは対照的である。
【0072】
例えば、トラクターの作動流体に関しては、これらの流体はエンジンを潤滑させることを除いて、トラクターの全ての潤滑剤用途に用いられる汎用品である。これらの潤滑用途はギアボックス、パワーテイクオフ及びクラッチ(複数可)、リアアクスル、減速機、湿式ブレーキ、及び油圧アクセサリーの潤滑を含み得る。
【0073】
機能性流体が自動変速機流体であるとき、自動変速機流体はクラッチ板が動力を伝達するのに十分な摩擦を有していなければならない。しかしながら、動作中に流体が加熱されるため、温度の影響により流体の摩擦係数は低下する傾向がある。トラクターの作動流体又は自動変速機流体は高温で高い摩擦係数を維持することが重要であり、さもなければブレーキシステム又は自動変速機が故障する可能性がある。これはエンジンオイルの機能ではない。
【0074】
トラクター流体、例えばスーパートラクターユニバーサルオイル(STUO)又はユニバーサルトラクタートランスミッションオイル(UTTO)は、エンジンオイルの性能と変速機、ディファレンシャル、ファイナルドライブプラネタリギア、湿式ブレーキ、及び油圧性能と組み合わせ得る。UTTO又はSTUO流体を配合するのに用いられる添加剤の多くは機能的に類似しているが、適切に添加されないと有害な影響を及ぼすおそれがある。例えば、エンジンオイルに用いられる特定の耐摩耗性及び極圧添加剤は、油圧ポンプの銅成分に対して極めて強い腐食性を有する。ガソリン又はディーゼルエンジンの性能に用いられる洗浄剤及び分散剤は、湿式ブレーキの性能に有害であり得る。静粛な湿式ブレーキ鳴きに特有の摩擦調整剤は、エンジンオイル性能に必要な熱安定性を欠いている可能性がある。これらの各流体は機能性、トラクター、又は潤滑性にかかわらず、特定の厳格な製造業者の要件を満たすように設計されている。
【0075】
本開示は、自動車用クランクケース潤滑剤として用いられるために配合された新規な潤滑油ブレンドを提供する。本開示は、2T及び/又は4Tオートバイ用クランクケース潤滑剤として用いられるために配合された新規な潤滑油ブレンドを提供する。本開示の実施形態は、クランクケースにおいて用いることに好適であり、かつ、空気混入、アルコール燃料適合性、酸化防止性、耐摩耗性能、バイオ燃料適合性、気泡低減特性、摩擦低減、燃費、プレイグニッション防止、錆抑制、汚泥及び/又は煤煙分散性、ピストン清浄性、堆積物形成、及び耐水性の特性に改善を有する潤滑油を提供する。
【0076】
本開示のエンジンオイルは、以下に詳細に記載されるように、一つ又は複数の添加剤を適切な基油配合物に添加することによって配合し得る。添加剤は添加剤パッケージ(又は濃縮物)の形態で基油と組み合わせてもよく、又は選択的には基油(又は両方の混合物)と個々に組み合わせてもよい。完全に配合されたエンジンオイルは添加された添加剤及びそれぞれの比率に基づいて、改善された特性を示し得る。
【0077】
本開示のさらなる詳細及び利点は、以下の説明に部分的に記載される、及び/又は本開示の実施によって習得し得る。本開示の詳細及び利点は、添付の特許請求の範囲に特に指摘された要素及び組み合わせによって実現及び達成し得る。前記の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、両方とも例示的及び説明的なものにすぎず、特許請求の範囲に記載のように本開示を限定するものではないことを理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0078】
本開示は、官能化ポリマー、多官能性粘度調整剤、官能化ポリマー濃縮物、粘度調整剤濃縮物及び官能化ポリマーを含む潤滑油組成物を提供する。潤滑油組成物は燃費を改善するために用い得る。官能化ポリマー及び粘度調整剤(VM)は、摩擦を低減し、許容可能な高温高せん断(「HTHS」)粘度を提供し、及び潤滑剤中に良好なフィルム厚を維持するために用い得る。本明細書に記載の官能化ポリマーはまた、潤滑油中で用いられるとき、燃費の改善、及び良好な増粘特性を提供し得る。本明細書に記載の官能化ポリマーはグラフト化多官能炭化水素ポリマーである。
【0079】
本開示はまた、グラフト官能化ポリマーを含む潤滑剤組成物及びグラフト官能化ポリマーを含む潤滑剤組成物を用いることによって改善されたエンジン動作性能、及び改善された燃費を提供する方法を提供する。
【0080】
潤滑組成物は、基油及び官能化ポリマー、並びに以下でさらに詳細に説明するように、潤滑組成物において有用であることが既知である一つ又は複数の追加の任意の添加剤を含む。官能化ポリマーはグラフト官能化ポリマーである。官能化ポリマーは、許容可能なHTHS粘度を提供し、良好なフィルム厚を維持し、及び煤分散性を改善し得る。これらの有益な特性のうちの一つ又は複数の組合わせが、官能化ポリマーが用いられるエンジンの燃費を改善する可能性があると考えられる。
【0081】
本開示の官能化ポリマーは、アシル化剤でグラフト化された炭化水素ポリマーと、i)ヒドロカルビル置換ポリ(オキシアルキレン)アミン又はポリ(オキシアルキレン)アルコール及びii)ポリアミンの両方と反応した反応生成物である。
【0082】
グラフト化炭化水素ポリマーを提供するために、アシル化剤でグラフト化された炭化水素ポリマーを製造するために、炭化水素ポリマーを最初にアシル化剤でグラフト化する。
【0083】
炭化水素ポリマー
グラフト化炭化水素ポリマーを提供するためのグラフト化反応において用いられる炭化水素ポリマーは、任意の好適な炭化水素ポリマーから選択し得る。好適な炭化水素ポリマーは、線状、分岐状及び星型ポリマー、並びにテーパー状、ブロック状、均一及びランダムコポリマーを含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、炭化水素ポリマーはポリイソブチレン(PIB)であり得る。好適なポリイソブチレンは通常、約350から約50,000まで、又は約5000まで、又は約3000までの範囲にある数平均分子量を有する。
【0085】
特定の実施形態において、ポリイソブチレンは、含まれるときには、50モル%超、60モル%超、70モル%超、80モル%超又は90モル%超の末端二重結合の含有量を有し得る。このようなPIBは高反応性PIB(「HR-PIB」)とも呼ばれる。約800~約5000の範囲にある数平均分子量を有するHR-PIBは、本開示の実施形態において用いることに好適である。従来のPIBは通常、50モル%未満、40モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、又は10モル%未満の末端二重結合の含有量を有する。
【0086】
約900~約3000の範囲にある数平均分子量を有するHR-PIBが好適であり得る。このようなHR-PIBは市販されているか、又はBoerzel, et al.の米国特許第4,152,499号及びGateau, et al.の米国特許第5,739,355号に記載されているように、三フッ化ホウ素などの非塩素化触媒の存在下でのイソブテンの重合によって合成することができる。上記熱エン反応で用いられるとき、HR-PIBは反応性の向上により反応中のより高い転化率、及びより少ない沈殿物形成量をもたらし得る。好適な方法は米国特許第7,897,696号に記載されている。
【0087】
他の実施形態において、炭化水素ポリマーは水素化スチレン-ブタジエン星型コポリマーであり得る。星型コポリマーの形成に用いられるモノマーに対するスチレンとブタジエンの比は、約3~25%のスチレンと97~75%のブタジエン、又は約5~20%のスチレンと95~80%のブタジエンである。一例では、星型コポリマー中の成分の結果のスチレンが約10%とブタジエンが90%である。
【0088】
放射状又は星型構造を有するコポリマーは、通常、コア部分に化学的に結合し得るポリマーアームを含む。コア部分は、多価ジビニル非アクリル系モノマー、オリゴマーポリマー、又はそれらのコポリマー、並びに四塩化ケイ素などの多価カップリング剤であり得る。一実施形態において、多価ジビニル非アクリル系モノマーはジビニルベンゼンである。
【0089】
多価カップリング剤の量は、星型コポリマーを提供するために、モノマー、オリゴマー、又はポリマー形態のカップリング剤を含むコア上にアームとしてあらかじめ調製されたコポリマーのカップリングを提供するのに好適な量であり得る。上記のように、たとえ一定の変数が関与する可能性があるとしても、当業者であれば最小限の実験で好適な量を容易に決定し得る。通常、コポリマーアームとカップリング剤とのモル比は、50:1~1:1、又は30:1~2:1、又は20:1~4.1、又は約15:1~10:1であり得る。所望の比率はまた、アームの長さ、ときにはより短いアームよりもより長いアームを許容する、又はより短いアームよりもより多くのカップリング剤を必要とすることを考慮に入れて調整し得る。通常、調製した材料は潤滑粘度の油に可溶である。
【0090】
一実施形態において、コポリマーのポリマーアームは、放射状又は星型コポリマーが形成される前又は未結合ユニットで測定した1~1.4などの、2以下、1.7以下、又は1.5以下の多分散性を有する。
【0091】
したがって、放射状又は星型構造を有するポリマーを含む組成物は、未結合ポリマーアーム(ポリマー鎖又は線状ポリマーとも呼ばれる)を有し得、ポリマー鎖の放射状又は星型ポリマーへの転化率は、少なくとも70%、少なくとも75%又は少なくとも80%などの少なくとも50%である。一実施形態において、ポリマー鎖の放射状又は星型コポリマーへの転化率は、90%、95%又は約100%であり得る。一実施形態において、ポリマー鎖の一部は星型コポリマーを形成せず、線状ポリマーとして残る。一実施形態において、ポリマーは(i)放射状又は星型構造を有するポリマー、及び(ii)線状ポリマー鎖(非結合ポリマーアームとも呼ばれる)の混合物である。異なる実施形態において、ポリマー組成物内の放射状又は星型構造の量は、ポリマーの量の10重量%~85重量%、25重量%~70重量%であり得る。異なる実施形態において、線状ポリマー鎖は、星型コポリマーの量の5重量%~90重量%、又は30重量%~75重量%であり得る。
【0092】
放射状又は星型構造を有するコポリマーは、3個以上のアーム、又は5個以上のアーム、又は7個以上のアーム、又は10個以上のアームを有し得る。他の実施形態において、12個以上のアーム、又は20個以上のアームがあり得る。一般的には、アームの数は3~30、又は4~20の範囲にある。
【0093】
最終星型コポリマーの分子量Mwは、各分子上のアームの大きさと平均数に依存する。一例では、星型コポリマーの分子量は、700,000超、又は選択的に650,000超、またさらに600,000超である。これらの星型分子上の各アームの分子量は70,000超、又は選択的に60,000超、またさらに選択的に50,000超である。
【0094】
星型コポリマーは水素化分子である。水素化度は99%超、又は98%超、またさらに約95%超である。以下の実施例において、チタン触媒はコポリマーの水素化に用いられる。好ましくは、水素化工程は欧州特許出願EP 914867及び欧州特許出願EP 816382に開示されている手順に従って行われる。
【0095】
星型コポリマーは米国特許第8,999,905号に記載されている方法などの任意の好適な方法によって調製し得る。
【0096】
他の実施形態において、炭化水素ポリマーは、エチレン及び一つ又は複数のC-C28アルファ-オレフィンのコポリマーであり得る。このようなポリマーは、エチレンとプロピレンから調製し得る、又はそれはC-C28アルファ-オレフィンの範囲内にあるエチレンと少なくとも一つの高級オレフィンから調製し得る。
【0097】
本発明に用いるための好ましいポリマーは、エチレン及び一つ又は複数のC-C28アルファ-オレフィンのコポリマーである。エチレン及びプロピレンのコポリマーが最も好ましい。プロピレンの代わりにコポリマーを形成するために用いる又はエチレン及びプロピレンと組み合わせてターポリマーを形成するために用いることに好適な他のアルファ-オレフィンは、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン及びスチレン、1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエンなどのα、ω-ジオレフィン;4-メチルブテン-1,5-メチルペンテン-1及び6-メチルヘプテン-1などの分岐鎖アルファ-オレフィン、及びそれらの混合物を含む。
【0098】
しばしばインターポリマーと呼ばれる,より複雑なポリマー基質は、第三の成分を用いて調製し得る。インターポリマー基質を調製するために用いられる第三の成分は、非共役ジエン及びトリエンから選択されるポリエンモノマーである。非共役ジエン成分は、鎖中に5~14個の炭素原子を有するものである。好ましくは、ジエンモノマーは、その構造内にビニル基が存在することを特徴とし、及び環状及びビシクロ化合物を含むことができる。代表的なジエンは、1,4-ヘキサジエン、1,4-シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、1,5-ヘプタジエン、及び1,6-オクタジエンを含む。インターポリマーの調製には2個以上のジエンの混合物を用いることができる。ターポリマー又はインターポリマー基質を調製するための好ましい非共役ジエンは、1,4-ヘキサジエンである。
【0099】
トリエン成分は、鎖中に、少なくとも2個の非共役二重結合及び約30個以下の炭素原子を有する。本発明のインターポリマーの調製に有用な典型的なトリエンは、1-イソプロピリデン-3α、4,7,7α-テトラヒドロインデン、1-イソプロピリデンジシクロペンタジエン、ジヒドロ-イソジシクロペンタジエン、及び2-(2-メチレン-4-メチル-3-ペンテニル)[2.2.1]ビシクロ-5-ヘプテンである。
【0100】
エチレン-プロピレン又はより高級なアルファ-オレフィンコポリマーは、約10~80モル%のエチレン、及び約90~20モル%のC-C28アルファ-オレフィンからなり得、好ましいモル比は約35~75モル%のエチレン及び約65~25モル%のC-C28アルファ-オレフィンであり、より好ましい比率は50~70モル%のエチレン及び50~30モル%のC-C28アルファ-オレフィンであり、最も好ましい比率は55~65モル%のエチレン及び45~35モル%のC-C28アルファ-オレフィンである。
【0101】
上記ポリマーのターポリマーの変異は約0.1~10モル%の非共役ジエン又はトリエンを含み得る。
【0102】
ポリマー基質、すなわちエチレンコポリマー又はターポリマーは、油溶性、線状又は分岐ポリマーであり、ゲル浸透クロマトグラフィー及びユニバーサルキャリブレーション法によって測定すると、その数平均分子量は約5,000~250,000であり、好ましい数平均分子量の範囲は20,000~120,000であり、より好ましい数平均分子量の範囲は30,000~110,000である。
【0103】
ポリマー及びコポリマーという用語は、エチレンコポリマー、ターポリマー、又はインターポリマーを包括するために一般的に用いられている。これらの物質は、エチレンコポリマーの基本特性が実質的に変化しない限り少量の他のオレフィンモノマーを含有し得る。
【0104】
エチレン-オレフィンコポリマーの基質を形成するために用いられる重合反応は、一般的には、従来のZiegler-Natta又はメタロセン触媒系の存在下で行われる。当業者に既知のように、重合媒体は特有のものではなく、溶液、スラリー、又は気相処理を含むことができる。溶液重合を用いるとき、溶媒はアルファ-オレフィンの重合のための反応条件下で液体である任意の好適な不活性炭化水素溶媒であり得、満足できる炭化水素溶媒の例は5~8個の炭素原子を有する直鎖パラフィンを含み、ヘキサンが好ましい。芳香族炭化水素、好ましくはベンゼン、トルエンなどのような単一のベンゼン核を有する芳香族炭化水素、及び上記の直状パラフィン系炭化水素及び芳香族炭化水素の沸点範囲に近似する沸点範囲を有する飽和環状炭化水素が特に好適である。選択された溶媒は上記炭化水素のうちの一つ又は複数の混合物であり得る。スラリー重合を用いるとき、重合の液相は好ましくは液状プロピレンである。重合媒体は触媒成分の活性を妨害する物質を含まないことが望ましい。
【0105】
アシル化剤
次に、エチレン性不飽和カルボン酸材料を所定のポリマー骨格にグラフト化してグラフト化炭化水素ポリマーを形成する。これらのエチレンコポリマーにグラフト化することに好適なカルボン酸反応物は、少なくとも一つのエチレン結合及び少なくとも1個の、好ましくは2個のカルボン酸又は無水物基、又は酸化又は加水分解によってカルボキシル基に変換可能な極性基を含む。好ましくは、カルボン酸反応物はアクリル酸、メタクリル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、及びイタコン酸反応物からなる群から選択される。より好ましくは、カルボン酸反応物はマレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸及びその誘導体、又はそれらの2個以上の混合物からなる群から選択される。無水マレイン酸又はその誘導体は、その商業的入手可能性及び反応の容易さのために一般的には最も好ましい。不飽和エチレンコポリマー又はターポリマーの場合には、フリーラジカルグラフト化処理中に架橋構造を形成する傾向が低下するため、イタコン酸又はその無水物が好ましい。
【0106】
エチレン性不飽和カルボン酸物質は通常、反応物1モル当たり1個又は2個のカルボキシル基をグラフト化ポリマーに提供することができる。例えば、メチルメタクリレートは1分子当たり1個のカルボキシル基をグラフト化ポリマーに提供することができ、無水マレイン酸は1分子当たり2個のカルボキシル基をグラフト化ポリマーに提供することができる。
【0107】
カルボキシル反応物は、ポリマー骨格の数平均分子量1000当たり約0.0.15~約0.75個のカルボキシル基を提供する量で、好ましくは数平均分子量ユニット1000当たり約0.3~約0.75個のカルボキシル基を提供する量で、より好ましくは数平均分子量ユニット1,000当たり約0.3~約0.5個のカルボキシル基を提供する量で、所定のポリマー骨格上にグラフトされる。例えば、20,000のMnを有するコポリマー基質は、ポリマー鎖当たり6~15個のカルボキシル基又はポリマー1モル当たり3~7.5モルの無水マレイン酸でグラフト化される。100,000のMnを有するコポリマーは、ポリマー鎖当たり30~75個のカルボキシル基又はポリマー鎖当たり15~37.5モルの無水マレイン酸でグラフト化される。最小レベルの官能性は、最小限の十分な分散性能を達成するために必要なレベルである。最大官能性レベルをわずかに超えると、たとえあったとしても追加の分散性はほとんど認められず、添加剤の他の特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0108】
グラフト化オレフィンコポリマーを形成するためのグラフト反応は、一般的には、フリーラジカル開始剤によって溶液中又はバルク中のいずれかで、例えば押出機又は強力混合装置内で行われる。重合がヘキサン溶液中で行われるとき、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,340,689号、米国特許第4,670,515号及び米国特許第4,948,842号に記載されているように、ヘキサン中でグラフト化反応を行うことが経済的に便利である。得られたポリマー中間体の特徴は、その構造内にランダムに分布したカルボン酸アシル化官能基を有することである。
【0109】
グラフト化オレフィンコポリマーを形成するためのバルク処理では、オレフィンコポリマーが押出機、強力ミキサー又はマスチケータなどのゴム又はプラスチック処理機器に供給され、150℃~400℃の温度に加熱される。エチレン性不飽和カルボン酸試薬及びフリーラジカル開始剤が、グラフト化を達成するために、溶融ポリマーに別々に同時供給される。この反応は、任意選択で、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,075,383号に従って、エチレンコポリマーのせん断及びグラフト化を達成する混合条件で行われる。処理機器は一般的には、ポリマーの酸化を防止し、未反応の試薬及びグラフト化反応の副生成物のベントを助けるために窒素で洗浄される。処理機器での滞留時間は、所望の程度のグラフト化を可能にする及びベントによるグラフト化コポリマーの精製を可能にするために十分である。グラフト化コポリマーを溶解させるために、ベント段階の後に鉱油系又は合成潤滑油を任意選択で処理機器に添加してもよい。
【0110】
エチレン-オレフィンコポリマーをエチレン性不飽和カルボン酸試薬との反応を達成させるための当該分野で既知の他の方法は、例えば、米国特許第6107207号に記載されている。
【0111】
キャッピング反応
次いで、炭化水素ポリマーは、油と組み合わされ、かつi)炭化水素置換ポリ(オキシアルキレン)アミン及び/又はポリ(オキシアルキレン)アルコール、及びii)ポリアミンの両方の化合物と反応し得る。これらの反応は同一の反応器中で同時に任意選択の順序で行い得る。成分i)及びii)は、官能化ポリマー生成物に添加される成分i)及びii)の全モル数に基づいて製造された官能化ポリマーが、1~99モル%の成分i)及び99~1モル%の成分ii)を含有するように保証する量でアシル化反応において用いられる。より好ましくは、製造された官能化ポリマーは、25~75モル%の成分i)及び75~25モル%の成分ii)を含有する、及び最も好ましくは製造された官能化ポリマーは40~60モル%の成分i)及び60~40モル%の成分ii)を含有する。
【0112】
成分i)
成分i)は、ヒドロカルビル置換ポリ(オキシアルキレン)アミン、ヒドロカルビル置換ポリ(オキシアルキレン)アルコール又はそれらの混合物であり得る。
【0113】
ヒドロカルビル置換ポリ(オキシアルキレン)アミン及びヒドロカルビル置換ポリ(オキシアルキレン)アルコールは式I:
1-(O-CHR2-CHR3x-A
で表すことができ、式中、R1は約1~約35個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、R2及びR3はそれぞれ独立して水素、メチル又はエチルであり、各R2及びR3は-O-CHR2-CHR3-ユニットにおいて独立して選択され、Aは-NH2、-CH2-NH2約1~10個の炭素原子を有するN-アルキルアミノ、-OH又はb-R19-OHであり、式中R19はC1-C10 アルキレン基であり、xは約2~約45の整数である。ヒドロカルビル置換ポリ(オキシアルキレン)アミンの製造方法は米国出願公開特許2013/0172220A1に開示されている。
【0114】
特に好適なヒドロカルビル置換ポリ(オキシアルキレン)アミン及びアルコールは、Rがアルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル及びアリールアルキルアリールからなる群から選択される化合物を含む。一態様は、Rが、例えばメチル、エチル、プロピル、及びブチルからなる群から選択される、1~10個の炭素原子を有するアルキルであるものに関する。Rはまた、フェニル、ナフチル、アルキルナフチル、及びアルキル、アリール、アルキルアリール及びアリールアルキルから選択される1~3個の置換基を有する置換フェニルからなる群から選択され得る。これに関して、Rは、フェニル、アルキルフェニル、ナフチル及びアルキルナフチルからなる群から選択される。
【0115】
本発明の他の態様では、本明細書においてポリエーテルアミン及びポリエーテルアルコールとも呼ばれるヒドロカルビル置換ポリ(オキシアルキレン)アミンは式II:
【0116】
【化12】
【0117】
で表すことができ、式中、R4は約1~約35個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、R5各繰り返しユニットで独立して水素又はC 1-C10アルキル基であり、A’は-OH、又は-NH-R6であり、R6は水素又はC1-C10アルキル基であり、a及びbはa+bが2~45になる整数である。より好ましくは、aは1~30の整数であり、及びbは1~44又は10~40の整数である。一態様では、エチレンオキシド「EO」のモル数はプロピレンオキシド「PO」のモル数より大きい。
【0118】
本発明の一実施形態において、ヒドロカルビル置換ポリ(オキシアルキレン)アミン及び/又はアルコールは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はそれらの組合わせから調製される。エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの両方を用いるとき、ランダムポリエーテルが望ましいときには酸化物を同時に反応させることができ、又はブロックポリエーテルが望ましいときには酸化物を順次に反応させることができる。一般的には、ヒドロカルビル置換ポリ(オキシアルキレン)アミン及び/又はアルコールを、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はこれらの組合わせから調製するとき、モル基準でのエチレンオキシドの量はヒドロカルビル置換ポリ(オキシアルキレン)アミンの約50%より大きく、好ましくはモル基準で約75%より大きく、より好ましくは約85%より大きい。
【0119】
本発明の実施形態において用いられるヒドロカルビル置換ポリ(オキシアルキレン)アミンは、米国特許第3,654,370号、米国特許第4,152,353号、米国特許第4,618,717号、米国特許第4,766,245号、米国特許第4,960,942号、米国特許第4,973,761号、米国特許第5,003,107号、米国特許第5,352,835号、米国特許第5,422,042号、及び米国特許第5,457,147号に記載されているような既知のアミノ化技術を用いて調製することができる。一般的には、ヒドロカルビル置換ポリ(オキシアルキレン)アミンは、Ni/Cu/Cr触媒などのニッケル含有触媒などの触媒の存在下で、ポリ(オキシアルキレン)アルコールをアンモニアでアミノ化することによって製造される。
【0120】
一態様では、Rがメチル、Rが水素のとき、特に好適な化合物はJEFFAMINE M-600(約MW600EO/PO-1/9)、JEFFAMINE M-1000(約MW1000EO/PO-19/3)、JEFFAMINE M-2070(約2000EO/PO-31/10)、及びJEFFAMINE M-2005(約MW2000EO/PO-6/29)を含む。好ましいポリエーテルアミンは、JEFFAMINE M-1000及びJEFFAMINE M-2070を含む。上記JEFFAMINE化合物は、Huntsman Chemicalsから入手可能である。本発明のより好ましいポリエーテルアミンは、約400~約2,500の範囲の分子量を有する。特に好ましいヒドロカルビル置換ポリ(オキシアルキレン)アミンは、約2~約35個のエチレンオキシドユニット及び1~約10個のプロピレンオキシドユニットを含む。
【0121】
上記のように、これらの特定のJEFFAMINE材料はメトキシ末端であるが、本発明の実施形態において用いられるポリエーテルアミンは、メトキシ基のメチル基が約18個までの炭素を含有する任意のアルキル置換基を含むエチル、プロピル、ブチルなどのより長い炭化水素によって置換することができる、他の任意の基でキャップされる。特に好ましくは、アミン末端基が第一級アミノ基である。
【0122】
特定のメタノール開始ポリエーテルアミンの式は:
【0123】
【化13】
【0124】
であり、式中、mは約1~約35であり、及びnは約1~約15であり、一態様では、m>nであり、mが約15~約25であり、nが約2~約10であるポリエーテルアミンを含む。
【0125】
一態様では、ヒドロキシル末端又はアミン末端ポリエーテルは、約1,000~約3,000の分子量を有する。
【0126】
グラフト化炭化水素ポリマーとヒドロカルビル置換ポリ(オキシアルキレン)アミン及び/又はアルコールとの混合は、バッチミキサー、連続ミキサー、ニーダー、及び押出機を含む慣用の混合装置中で行い得る。ほとんどの用途では、混合装置は、鉱物油又は潤滑油などの溶媒中で溶融物又は溶液中で行われる二段階又は一段階のプロセスで達成されるグラフト化及びポストグラフト化誘導を有する押出機である。溶液中では、カルボン酸アシル化基と、所定のポリエーテルアミン、ポリエーテルアミン、ポリエーテルアルコール又は混合物又はポリエーテルアミン及び/又はポリエーテルアルコールとを、グラフト化されたコポリマー中間体の溶液を反応条件下で混合しながら不活性条件下で加熱するのが便利である。通常、溶液は窒素雰囲気下で約125℃~約175℃に加熱される。ポリエーテルアミン及び/又はポリエーテルアルコールの量は通常、カルボン酸(無水物)官能基に対してアミン及び/又はアルコールの0.01~約0.99当量のオーダーである。一態様では、ポリエーテルアミン及び/又はアルコールの量は通常、カルボン酸(無水物)官能基に対してアミン及び/又はアルコールの0.25~約0.75当量のオーダーである。さらに他の態様では、ポリエーテルアミン及び/又はアルコールの量は、通常、カルボン酸(無水物)官能基に対してアミン及び/又はアルコールの0.4~約0.6当量のオーダーである。
【0127】
成分ii)
ポリアミン成分ii)は、官能化ポリマーに分散性を付与するのに好適な任意のポリアミンであり得る。さまざまな異なる種類のポリアミンは、アシル化反応で用いられることに好適である。オレフィンコポリマーのカップリング及び/又はゲル化を回避するために、ポリアミンは第一級アミン基を1個だけ含有することが好ましい。
【0128】
一実施形態において、ポリアミンは、
(a)式III:
【0129】
【化14】
【0130】
で表され、式中、Rは水素、--NH-アリール、--NH-アリールアルキル、--NH-アルキル、又はアルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、アルカリール、ヒドロキシアルキル又はアミノアルキルなどであり得る4~24個の炭素原子を有する分岐鎖若しくは直鎖ラジカルであり、Rは--NH、CH--(CH--NH、CH-アリール-NHであり、式中nの値は1~10であり、Rは水素、4~24個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、アルカリールであるN-アリールフェニレンジアミンと、
(b)アミノチアゾール、アミノベンゾチアゾール、アミノベンゾチアジアゾール及びアミノアルキルチアゾールからなる群からのアミノチアゾールと、
(c)式IV:
【0131】
【化15】
【0132】
で表され、式中、R10及びR11は水素又は1~14個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル及びアルコキシルラジカルを表す、アミノカルバゾールと、
(d)式V:
【0133】
【化16】
【0134】
で表され、式中、R12は水素又は1~14個の炭素原子を有するアルキルラジカルを表す、アミノインドールと、
(e)式VI:
【0135】
【化17】
【0136】
で表され、式中、R13は2~6個の炭素原子を有する2価のアルキレンラジカルであり、及びR14は水素又は1~14個の炭素原子を有するアルキルラジカルである、アミノピロールと、
(f)式VII:
【0137】
【化18】
【0138】
で表され、式中、R15は水素又は1~14個の炭素原子を有するアルキルラジカルである、アミノ-インダゾリノンと、
(g)式VIII:
【0139】
【化19】
【0140】
で表され、式中、R16は不在であり得る又はアルキル、アルケニル、アリールアルキル、又はアリールからなる群から選択されるC-C10線状又は分岐鎖炭化水素であり、かつR17は不在であり得る又はアルキレン、アルケニレン、アリールアルキレン、又はアリーレンからなる群から選択されるC-C10線状又は分岐鎖ヒドロカルビレンである、アミノメルカプトトリアゾールと、
h)式IX:
【0141】
【化20】
【0142】
で表され、式中、R18は水素又は1~14個の炭素原子を有するアルキル又はアルコキシラジカルを表す、アミノペリミジンと、
(i)1-(2-アミノエチル)イミダゾール、1-(3-アニノプロピル)イミダゾールなどのアミノアルキルイミダゾールと、
(j)4-(3-アミノプロピル)モルホリンなどのアミノアルキルモルホリンと、からなる群から選択される。
【0143】
上記ポリアミン(a)-(i)からのポリアミンの特に好ましいクラスは、式III:
【0144】
【化21】
【0145】
で表され、式中、Rは、水素、-NH-アリール、-NH-アリールアルキル、-NH-アルキル、又はアルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、アルカリール、ヒドロキシアルキル又はアミノアルキルなどの4~24個の炭素原子を有する分岐鎖若しくは直鎖ラジカルであり、Rは、--NH、CH--(CH--NH、CH-アリール-NHであり、式中nの値は1~10であり、Rは、水素、4~24個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、アルカリールである、H-アリール-フェニレンジアミンである。特に好ましいN-アリール-フェニレンジアミンは、例えば、N-フェニル-1,4-フェニレンジアミン、N-フェニル-1,3-フェニレンジアミン、及びN-フェニル-1,2-フェニレンジアミンである。
【0146】
他の実施形態において、ポリアミンは、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、アミノエチルピペラジン、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、N-メチル-1,3-プロパンジアミン、N、N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、アミノグアニジンビカーボネート(AGBC)、及びE100ヘビーアミンボトムスなどのヘビーポリアミンから選択される。ヘビーポリアミンは、TEPA及びPEHAなどの少量の低級ポリアミンオリゴマーを有し得るが、主にオリゴマーは1分子当たり7つ以上の窒素原子、2個以上の第一級アミン及び従来のポリアミン混合物よりも広範囲の分岐を有するポリアルキレンポリアミンの混合物を含み得る。ヒドロカルビル置換スクシンイミド分散剤を調製するために用いられ得るさらなる非限定的なポリアミンは、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6548458号に開示されている。好ましくは、これらのポリアミンは、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、E100ヘビーアミンボトムス、及びそれらの組合わせの群から選択される。好ましい一実施形態において、ポリアミンはテトラエチレンペンタミン(TEPA)であり得る。
【0147】
カルボン酸アシル化官能基nがその上にグラフト化されたポリマー基質中間体と特定のポリアミンとの間の反応は、好ましくは、ポリマー基質の溶液を不活性条件下で加熱した後、ポリアミンを一般的には混合しながら加熱溶液に添加して反応させることにより行う。溶液を窒素雰囲気下に維持しながら、140℃~175℃に加熱されたポリマー基質の油溶液を用いるのが便利である。この溶液にポリアミン化合物を添加し、かつ前記条件で反応を行う。
【0148】
通常、ポリアミン化合物(複数可)は、界面活性剤に溶解され、グラフト化オレフィンコポリマーを含有する鉱物油又は合成潤滑油並びに溶媒溶液に添加される。この溶液を不活性ガスパージ下で攪拌しながら、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,384,371号に記載されているように120~200℃の範囲の温度で加熱する。反応は窒素パージ下で撹拌反応器中で都合よく行われる。しかしながら、二軸スクリュー押出機中のグラフト反応-排気領域の下流領域にポリアミン化合物の界面活性剤溶液を添加することも可能である。
【0149】
グラフト化オレフィンコポリマーとポリアミン(複数可)との反応を行う際に用い得る界面活性剤は、それらを特徴付ける(a)鉱物油又は合成潤滑油に特に適合する溶解特性と、(b)油の引火点を変えないための沸点及び蒸気圧特性と、及び(c)ポリアミン(複数可)を可溶化することに適する極性と、を含むがこれらに限定されない。このような界面活性剤に好適なクラスは、脂肪族及び芳香族ヒドロキシ化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシド、又はそれらの混合物との反応生成物を含む。このような界面活性剤は、一般的には脂肪族又はフェノールアルコキシレートと呼ばれている。代表的な例は、SURFONIC(登録商標)N-40、N-60、L-24-5、L-46-7(Huntsman Chemical Company)、Neodol(登録商標)23-5及び25-7(Shell Chemical Company)並びにTergitol(登録商標)界面活性剤(Union Carbide)である。好ましい界面活性剤は、グラフト化オレフィンコポリマーと反応することができる-OHなどの官能基を含むこれらの界面活性剤を含む。
【0150】
界面活性剤を用いる量はポリアミンを可溶化するその能力にある程度依存する。通常、5~40重量%の濃度のポリアミンが用いられる。界面活性剤はまた、完成した添加剤中の界面活性剤の総重量が10重量%以下となるように、上記濃縮物の代わりに又はそれに加えて別々に添加することができる。
【0151】
場合によって、特にそれが第二級アミノ基を含むとき、官能化ポリマーを後処理又はキャップすることが望ましい可能性がある。後処理は例えば、芳香族カルボン酸、芳香族ポリカルボン酸、又は全てのカルボン酸又は無水物基(複数可)が芳香環に直接結合している芳香族無水物によって行うことができる。このようなカルボキシル含有芳香族化合物は、1,8-ナフタレン酸又はその無水物及び1,2-ナフタレンジカルボン酸又はその無水物、2,3-ナフタレンジカルボン酸又はその無水物、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸無水物、ジフェン酸又はその無水物、2,3-ピリジンジカルボン酸又はその無水物、3,4-ピリジンジカルボン酸又はその無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸又はその無水物、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸無水物、ピレンジカルボン酸又はその無水物などから選択され得る。ポリアミン1モル当たりに反応したこの後処理成分のモルは約0.1:1~約2:1の範囲であり得る。反応混合物中のこの後処理成分とポリアミンとの典型的なモル比は約0.2:1~約2.0:1の範囲であり得る。用いられ得るこの後処理成分とポリアミンの他のモル比は0.25:1~約1.5:1の範囲であり得る。この後処理成分は約140℃~約180℃の範囲にある温度で他の成分と反応させ得る。
【0152】
後処理は例えば、非芳香族ジカルボン酸又はその無水物との反応によっても行うことができる。非芳香族ジカルボン酸又はその無水物は500未満の数平均分子量を有し得る。好適なカルボン酸又はその無水物は、酢酸又はその無水物、シュウ酸及びその無水物、マロン酸及びその無水物、コハク酸及びその無水物、アルケニルコハク酸及びその無水物、グルタル酸及びその無水物、アジピン酸及びその無水物、ピメリン酸及びその無水物、スベリン酸及びその無水物、アゼライン酸及びその無水物、セバシン酸及びその無水物、マレイン酸及びその無水物、フマル酸及びその無水物、酒石酸及びその無水物、グリコール酸及びその無水物、1,2,3,6-テトラヒドロナフタル酸及びその無水物などを含むがこれらに限定されない。官能化ポリマーに対するこの成分のモル比は約0.1~約2.5の範囲であり得る。通常、この成分を用いる量は官能化ポリマー中の第二級アミノ基の数に対応する。したがって、官能化ポリマー中に第二級アミノ基当たり約0.2~約2.0モルの後処理剤を用い得る。他のモル比は官能化ポリマー1モル当たり0.25:1~約1.5:1モルの後処理剤の範囲であり得る。この成分は約140℃~約180℃の範囲にある温度で他の成分と反応させることができる。
【0153】
後処理工程は官能化ポリマーを形成する反応が完了したときに行い得る。また、後処理工程は、全てのカルボン酸又はその無水物基(複数可)が直接芳香環に結合される、非芳香族ジカルボン酸又はその無水物と上記芳香族カルボン酸、芳香族ポリカルボン酸又は芳香族無水物との組み合わせによって行い得る。
【0154】
反応に用いられるポリアミンの量は通常、グラフト化炭化水素ポリマー中のカルボン酸(無水物)官能基に対してアミンの0.01~約0.99当量のオーダーである。一態様において、ポリアミンの量は通常、カルボン酸(無水物)官能基に対してアミンの0.25~約0.75当量のオーダーである。さらに他の態様では、ポリアミンの量は通常、カルボン酸(無水物)官能基に対してアミンの0.4~約0.6当量のオーダーである。
【0155】
本開示の他の態様は官能化ポリマー又は粘度調整剤濃縮物に関する。これらの濃縮物は50重量%超の基油又は希釈油、及び5~50重量%の官能化ポリマーを含む。特定の実施形態において、ヒドロカルビルポリ(オキシアルキレン)アミン(誘導体-OCP)及びNPPDAと反応したグラフト化エチレン-アルファオレフィンコポリマーは、は潤滑油組成物の粘度調整剤として用いられる。好ましくは、官能化ポリマーは基油中に少なくとも10重量%の溶解度を有する。所望の生成物が最終生成物であるか他の添加剤濃縮物であるかに応じて、0.001~49重量%のこの組成物を基油又は潤滑油に配合する。
【0156】
官能化ポリマーを用いる量は基油の粘度指数を改善又は修正するのに有効な量、すなわち粘度改善有効量である。一般的には、この量は最終製品(例えば、完全配合潤滑油組成物)では、0.001~20重量%、又は0.001~10重量%、又は0.1重量%~約5重量%であり、他の実施形態において、代替の下限は0.01%、0.1%又は1%であり、代替の上限は15%又は10%である。列挙された下限のいずれかから列挙された上限のいずれかへの改良剤VIの濃度の範囲は、本発明の範囲内であり、当業者は最終的な溶液特性に基づいて適切な濃度範囲を容易に決定することができる。
【0157】
基油
本明細書の潤滑油組成物中に用いられる基油は、米国石油協会(API)基油互換性規格に明記されるように、グループI~V中の基油のいずれからも選択され得る。五つの基油グループは以下のとおりである:
【0158】
【表1】
【0159】
グループI、II、及びIIIは鉱油留分である。グループIVの基油は、オレフィン性不飽和炭化水素の重合によって生成される真の合成分子種を含有する。ほとんどのグループVの基油も真の合成生成物であり、ジエステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、アルキル化芳香族、ポリリン酸エステル、ポリビニルエーテル、及び/又はポリフェニルエーテルなどを含むが、植物油などの天然に存在する油であってもよい。グループIIIの基油は鉱油から誘導されるが、これらの流体が受ける厳密な処理はそれらの物理的特性をPAOなどの特定の真の合成と非常に類似したものにする一因となることに留意すべきである。したがって、グループIIIの基油から誘導された油は業界では合成流体と呼ばれることがある。
【0160】
開示された潤滑油組成物に用いられる基油は、鉱油、動物油、植物油、合成油、又はそれらの混合物であり得る。好適な油は水素化分解油、水素化油、水素化仕上げ油、未精製油、精製及び再精製油、及びその混合物から誘導し得る。
【0161】
未精製油はさらなる精製処理を行わない又はほとんど行わない、天然、鉱物、又は合成された供給源から誘導されたものである。精製油は、一つ以上の特性の改善をもたらし得る、一つ以上の精製工程で処理されることを除き、未精製油と類似である。好適な精製技術の例は、溶媒抽出、二次蒸留、酸又は塩基抽出、濾過、浸透などである。食用レベルに精製された油は有用である可能性又は有用でない可能性がある。食用油はホワイトオイルとも呼ばれる。特定の実施形態において、潤滑油組成物は食用油又はホワイトオイルを含まない。
【0162】
再精製油はまた、再生又は再処理油としても知られている。これらの油は同一の又は類似の処理を用いて得られる精製油と類似する。多くの場合、これらの油は使用済み添加剤及び油分解生成物の除去を目的とした技術によってさらに処理される。
【0163】
鉱油は、掘削によって又は植物及び動物又はそれらの混合物から得られた油を含み得る。例えば、このような油はヒマシ油、ラード油、オリーブ油、ピーナツ油、トウモロコシ油、ダイズ油、及び亜麻仁油、並びに液体石油、パラフィン系、ナフテン系、若しくはパラフィン-ナフテン混合系の溶媒処理又は酸処理鉱物潤滑油などの鉱物潤滑油を含むがこれらに限定されない。必要があれば、このような油は部分的又は完全に水素化され得る。石炭又は頁岩から誘導された油も有用であり得る。
【0164】
有用な合成潤滑油は、重合、オリゴマー化、又は共重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー)などの炭化水素油、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、1-デセンのトリマー又はオリゴマー、例えば、ポリ(1-デセン)(このような材料はしばしばα-オレフィンと呼ばれる)、及びそれらの混合物、アルキル-ベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ-(2-エチルヘキシル)-ベンゼン)、ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル)、ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルエーテル、及びアルキル化ジフェニルスルフィド、並びにそれらの誘導体、類似体、及び同族体又はそれらの混合物を含み得る。ポリアルファオレフィンは通常水素化材料である。
【0165】
他の合成潤滑油は、ポリオールエステル、ジエステル、リン含有酸の液体エステル(例えば、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート、及びデカンホスホン酸のジエチルエステル)、又はポリマーテトラヒドロフランを含む。合成油はフィッシャー・トロプシュ反応によって製造され得、通常水素化異性化フィッシャー・トロプシュ炭化水素又はワックスであり得る。一実施形態において、油はフィッシャー・トロプシュ気液合成手順及び他の合成油によって調製し得る。
【0166】
潤滑組成物に含まれる過半量の基油は、グループI、グループII、グループIII、グループIV、及び上記のうちの二つ以上の組合わせからなるグループから選択することができ、ここで、過半量の基油は添加剤成分又は粘度指数改善剤を組成物中に提供することによる基油以外のものである。他の実施形態において、潤滑組成物に含まれる過半量の基油は、グループII、グループIII、グループIV、グループV、及び上記二つ以上の組合わせからなるグループから選択することができ、過半量の基油は添加剤成分又は粘度指数改善剤を組成物中に提供することによる基油以外のものである。
【0167】
存在する潤滑粘度を有する油の量は、粘度指数改善剤(複数可)及び/又は流動点降下剤(複数可)及び/又は他のトップトリート添加剤を含む性能添加剤の量の合計を100重量%から差し引いた残りの残量であり得る。例えば、完成した流体中に存在し得る潤滑粘度を有する油は、約50重量%超、約60重量%超、約70重量%超、約80重量%より超、約85重量%より超、又は約90重量%超、などの過半量であり得る。
【0168】
酸化防止剤
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意で一つ又は複数の酸化防止剤を含み得る。酸化防止剤化合物は既知のものであり、例えば、フェネート、フェネートスルフィド、硫化オレフィン、ホスホ硫化テルペン、硫化エステル、芳香族アミン、アルキル化ジフェニルアミン(例えば、ノニルジフェニルアミン、ジ-ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ-オクチルジフェニルアミン)、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-アルファ-ナフチルアミン、ヒンダード非芳香族アミン、フェノール、ヒンダードフェノール、油溶性モリブデン化合物、高分子酸化防止剤、又はそれらの混合物を含む。酸化防止剤化合物は単独又は組み合わせて用いられ得る。
【0169】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、立体障害基として第二級ブチル基及び/又は第三級ブチル基を含み得る。フェノール基は、ヒドロカルビル基及び/又は第二芳香族基に結合する架橋基でさらに置換し得る。好適なヒンダードフェノール酸化防止剤の例は、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-プロピル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール又は4-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、又は4-ドデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールを含む。一実施形態において、ヒンダードフェノール酸化防止剤は、例えばBASFから入手可能なIrganox(商標)L-135又は2,6-ジ-tert-ブチルフェノール及びアルキルアクリレートから誘導される付加生成物を含み得、ここでアルキル基は約1~約18個、又は約2~約12個、又は約2~約8個、又は約2~約6個、又は約4個の炭素原子を含み得るエステルであり得る。他の市販されているヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであり得、Albemarle Corporationから入手可能なEthanox(商標)4716を含み得る。
【0170】
有用な酸化防止剤はジアリールアミン及び高分子量フェノールを含み得る。一実施形態において、潤滑油組成物は、ジアリールアミンと高分子量フェノールとの混合物を含有し得、その結果各酸化防止剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づき、最大約5重量%を提供するのに十分な量で存在し得る。一実施形態において、酸化防止剤は潤滑油組成物の最終重量に基づき、約0.3~約1.5重量%のジアリールアミンと約0.4~約2.5重量%の高分子量フェノールとの混合物であり得る。
【0171】
硫化して硫化オレフィンを形成するための好適なオレフィンの例は、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ポリイソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、又はそれらの混合物を含む。一実施形態において、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン又はこれらの混合物、並びにこれらの二量体、三量体、及び四量体は特に有用なオレフィンである。あるいは、オレフィンは、1,3-ブタジエンなどのジエン及びブチルアクリレートなどの不飽和エステルとのディールス・アルダー付加物であり得る。
【0172】
他のクラスの硫化オレフィンは硫化脂肪酸及びそれらのエステルを含む。脂肪酸はしばしば植物油又は動物油から得られ、通常約4~約22個の炭素原子を含有する。好適な脂肪酸及びそのエステルの例は、トリグリセリド、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、又はそれらの混合物を含む。多くの場合、脂肪酸はラード油、トール油、ピーナッツ油、大豆油、綿実油、ヒマワリ種子油、又はそれらの混合物から得られる。脂肪酸及び/又はエステルはα-オレフィンなどのオレフィンと混合し得る。
【0173】
一つ又は複数の酸化防止剤(複数可)は、潤滑組成物の約0重量%~約20重量%、又は約0.1重量%~約10重量%、又は約1重量%~約5重量%の範囲内で存在し得る。
【0174】
耐摩耗剤
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意で一つ又は複数の耐摩耗剤を含み得る。好適な耐摩耗剤の例は、金属チオホスフェート、金属ジアルキルジチオホスフェート、これらのリン酸エステル又は塩、ホスフェートエステル(複数可)、ホスファイト、リン含有カルボン酸エステル、エーテル、又はアミド、硫化オレフィン、チオカルバメートエステル、アルキレン結合チオカルバメート、及びビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドを含むチオカルバメート含有化合物、並びにこれらの混合物を含むがこれらに限定されない。好適な耐摩耗剤はモリブデンジチオカーバメートであり得る。リン含有耐摩耗剤は欧州特許第612839号においてより完全に記載されている。ジアルキルジチオホスフェート塩中の金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、チタン、又は亜鉛であり得る。有用な耐摩耗剤はジアルキルチオリン酸亜鉛であり得る。
【0175】
好適な耐摩耗剤のさらなる例は、チタン化合物、酒石酸塩、タルトリミド、リン化合物の油溶性アミン塩、硫化オレフィン、亜リン酸塩(例えば、亜リン酸ジブチル)、ホスホン酸塩、例えば、チオカルバミン酸エステル、チオカルバミン酸アミド、チオカルバミン酸エーテル、アルキレン結合チオカルバメートなどのチオカルバメート含有化合物、及び二硫化ビス(S-アルキルジチオカルバミル)を含む。酒石酸塩又はタルトリミドは、アルキル基上の炭素原子の合計が少なくとも8であり得るアルキル-エステル基を含み得る。一実施形態において、耐摩耗剤はクエン酸塩を含み得る。
【0176】
耐摩耗剤は、潤滑油組成物の約0重量%~約15重量%、又は約0.01重量%~約10重量%、又は約0.05重量%~約5重量%、又は約0.1重量%~約3重量%の範囲内であり得る。
【0177】
ホウ素含有化合物
本明細書の潤滑油組成物は任意で一つ又は複数のホウ素含有化合物を含み得る。
【0178】
ホウ素含有化合物の例は、米国特許第5,883,057号に開示されているように、ホウ酸エステル、ホウ酸脂肪アミン、ホウ酸ポキシド、ホウ酸化洗剤、及びホウ酸化スクシンイミド分散剤などのホウ酸化分散剤を含む。
【0179】
ホウ素含有化合物は、存在する場合、潤滑油組成物の約8重量%、約0.01重量%~約7重量%、約0.05重量%~約5重量%、若しくは約0.1重量%~約3重量%を提供するのに十分な量で用いることができる。
【0180】
洗浄剤
本潤滑油組成物は、任意で一つ又は複数の中性、低塩基性、又は過塩基性洗浄剤、又はこれらの混合物をさらに含み得る。好適な洗浄剤基質は、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホン酸、カリキサラート、サリキサレート、サリチル酸、カルボン酸、リン酸、モノ及び/又はジチオリン酸、アルキルフェノール、硫黄結合アルキルフェノール化合物、又はメチレン架橋フェノールを含む。好適な洗浄剤及びその調製方法は、米国特許第7732390号及びその中に引用されている参考文献を含む多数の特許公報により詳細に記載されている。洗浄剤基質は、これらに限定されないが、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、リチウム、バリウム、又はそれらの混合物などのアルカリ又はアルカリ土類金属で塩基化し得る。いくつかの実施形態において、洗浄剤はバリウムを含まない。好適な洗浄剤は、石油スルホン酸のアルカリ又はアルカリ土類金属塩、及びアリール基がベンジル、トリル、及びキシリルである長鎖モノ又はジアルキルアリールスルホン酸を含み得る。好適な洗浄剤の例は、カルシウムフェネート、カルシウム硫黄含有フェネート、スルホン酸カルシウム、カルシウムカリキサラート、カルシウムサリキサレート、サリチル酸カルシウム、カルボン酸カルシウム、リン酸カルシウム、カルシウムモノ及び/又はジチオリン酸、カルシウムアルキルフェノール、カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、カルシウムメチレン架橋フェノール、マグネシウムフェネート、マグネシウム硫黄含有フェネート、スルホン酸マグネシウム、マグネシウムカリキサラート、マグネシウムサリキサレート、サリチル酸マグネシウム、カルボン酸マグネシウム、マグネシウムリン酸、マグネシウムモノ及び/又はジチオリン酸、マグネシウムアルキルフェノール、マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、マグネシウムメチレン架橋フェノール、ナトリウムフェネート、ナトリウム硫黄含有フェネート、スルホン酸ナトリウム、ナトリウムカリキサラート、ナトリウムサリキサレート、サリチル酸ナトリウム、カルボン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、モノ及び/又はジチオリン酸ナトリウム、ナトリウムアルキルフェノール、ナトリウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、又はナトリウムメチレン架橋フェノールを含むがこれらに限定されない。
【0181】
過塩基性洗浄剤添加剤は当該技術分野において既知のものであり、アルカリ又はアルカリ土類金属の過塩基性洗浄剤添加剤であり得る。このような洗浄剤添加剤は、金属酸化物又は金属水酸化物を基質及び二酸化炭素ガスと反応させることによって調製し得る。基質は、通常酸であり、例えば、脂肪族置換スルホン酸、脂肪族置換カルボン酸、又は脂肪族置換フェノールなどの酸である。
【0182】
用語「過塩基性」は、存在する金属の量が化学量論量を超える、スルホン酸塩、カルボン酸塩、及びフェネートの金属塩などの金属塩に関する。このような塩は、100%超の転化率を有し得る(すなわち、それらは酸をその「標準」、「中性」の塩に変換するのに必要な理論的金属量の100%以上を含み得る)。しばしばMRと略される表現「金属比」は、既知の化学反応性及び化学量論に従って、過塩基性塩中の金属の総化学当量と中性塩中の金属の化学当量との比率を示すために用いられる。標準又は中性塩では金属比は1であるが、過塩基性塩ではMRは1より大きい。それらは一般的には過塩基性、高塩基性又は超塩基性の塩と呼ばれ、及び有機硫黄酸、カルボン酸又はフェノールの塩であり得る。
【0183】
潤滑油組成物の過塩基性洗浄剤は、約200mgKOH/グラム以上、又はさらに例として、約250mgKOH/グラム以上、又は約350mgKOH/グラム以上、又は約375mgKOH/グラム以上、若しくは約400mgKOH/グラム以上の全塩基価(TBN)を有し得る。
【0184】
好適な過塩基性洗浄剤の例は、過塩基性カルシウムフェネート、過塩基性カルシウム硫黄含有フェネート、過塩基性スルホン酸カルシウム、過塩基性カルシウムカリキサラート、過塩基性カルシウムサリキサレート、過塩基性サリチル酸カルシウム、過塩基性カルボン酸カルシウム、過塩基性リン酸カルシウム、過塩基性カルシウムモノ及び/又はジチオリン酸、過塩基性カルシウムアルキルフェノール、過塩基性カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、過塩基性カルシウムメチレン架橋フェノール、過塩基性マグネシウムフェネート、過塩基性マグネシウム硫黄含有フェネート、過塩基性スルホン酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカリキサラート、過塩基性マグネシウムサリキサレート、過塩基性サリチル酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカルボン酸、過塩基性マグネシウムリン酸、過塩基性マグネシウムモノ及び/又はジチオリン酸、過塩基性マグネシウムアルキルフェノール、過塩基性マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、過塩基性マグネシウムメチレン架橋フェノールを含むがこれらに限定されない。
【0185】
過塩基性洗浄剤の金属と基質の比は1.1:1、又は2:1、又は4:1、又は5:1、又は7:1、又は10:1である。
【0186】
いくつかの実施形態において、洗浄剤はエンジン内の錆びを低減又は防止するのに有効である。
【0187】
洗浄剤は約0重量%~約10重量%、又は約0.1重量%~約8重量%、又は約1重量%~約4重量%で、又は約4重量%~約8重量%超で存在し得る。
【0188】
分散剤
本潤滑油組成物は、任意選択で、一つ又は複数の分散剤又はこれらの混合物をさらに含み得る。分散剤は、潤滑油組成物に混合する前に灰分を形成する金属を含まず、潤滑剤に添加するとき通常灰分に寄与しないため、しばしば無灰タイプの分散剤と呼ばれている。無灰型分散剤は、極性基が比較的高分子量の炭化水素鎖に結合することを特徴とする。典型的な無灰型分散剤はN-置換長鎖アルケニルスクシンイミドを含む。N-置換長鎖アルケニルスクシンイミドの例は、約350~約50000、又は約5000~約3000のポリイソブチレン置換基の数平均分子量を有するポリイソブチレンスクシンイミドを含む。スクシンイミド分散剤及びその調製方法は、例えば米国特許第7,897,696号又は米国特許第4,234,435号に開示されている。ポリオレフィンは、約2個~約16個、又は約2個~約8個、又は約2個~約6個の炭素原子を含む重合性モノマーから調製し得る。スクシンイミド分散剤は通常、通常ポリ(エチレンアミン)であるポリアミンから形成されたイミドである。
【0189】
一実施形態において、本開示は、約350から約50,000まで、又は約5,000まで、又は約3,000までの範囲にある数平均分子量を有するポリイソブチレンから誘導される少なくとも一つのポリイソブチレンスクシンイミド分散剤をさらに含む。ポリイソブチレンスクシンイミドは、単独で又は他の分散剤と組み合わせて用い得る。
【0190】
特定の実施形態において、ポリイソブチレンは、含まれるときは、50モル%超、60モル%超、70モル%超、80モル%超又は90モル%超の末端二重結合の含有量を有し得る。このようなPIBは高反応性PIB(「HR-PIB」)とも呼ばれる。約800~約5000の範囲にある数平均分子量を有するHR-PIBは、本開示の実施形態において用いることに好適である。従来のPIBは、通常、50モル%未満、40モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、又は10モル%未満の末端二重結合の含有量を有する。
【0191】
約900~約3,000の範囲にある数平均分子量を有するHR-PIBが好適であり得る。このようなHR-PIBは市販されているか、又はBoerzel, et al.の米国特許第4,152,499号及びGateau, et al.の米国特許第5,739,355号に記載されているように三フッ化ホウ素などの非塩素化触媒の存在下でのイソブテンの重合によって合成することができる。上記熱エン反応で用いられるとき、HR-PIBは、反応性の改善により反応中のより高い転化率、並びにより少ない沈殿物の形成量をもたらし得る。好適な方法は米国特許第7,897,696号に記載されている。
【0192】
一実施形態において、本開示はポリイソブチレン無水コハク酸(「PIBSA」)から誘導される少なくとも一つの分散剤をさらに含有する。PIBSAはポリマー当たり平均約1.0~約2.0のコハク酸部分を有し得る。
【0193】
アルケニル又はアルキル無水コハク酸の%活性はクロマトグラフィー技術を用いて測定することができる。この方法は米国特許第5,334,321号の請求項5又は6に記載されている。
【0194】
ポリオレフィンの転化率は米国特許第5,334,321号の第5欄及び第6欄に記載の式を用いて活性%から算出される。
【0195】
特に説明しない限り、全てのパーセントは重量パーセントであり、全ての分子量は数平均分子量である。
【0196】
一実施形態において、分散剤はポリアルファオレフィン(PAO)無水コハク酸から誘導され得る。
【0197】
一実施形態において、分散剤はオレフィン無水マレイン酸コポリマーから誘導され得る。一例として、分散剤はポリPIBSAとして記載され得る。
【0198】
一実施形態において、分散剤はエチレン-プロピレンコポリマーにグラフト化される無水物から誘導され得る。
【0199】
好適な分散剤の一つのクラスはマンニッヒ塩基であり得る。マンニッヒ塩基は、高分子量のアルキル置換フェノール、ポリアルキレンポリアミン、及びホルムアルデヒドなどのアルデヒドの縮合によって形成される物質である。マンニッヒ塩基は米国特許第3,634,515号により詳細に記載されている。
【0200】
好適なクラスの分散剤は高分子量エステル又はハーフエステルアミドであり得る。
【0201】
好適な分散剤はまた、従来の方法によって任意のさまざまな薬剤のいずれかと反応させて後処理し得る。これらの中には、ホウ素、尿素、チオウレア、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシド、カーボネート、環状カーボネート、ヒンダードフェノールエステル、及びリン化合物などがある。米国特許第7,645,726号、米国特許第7,214,649号、及び米国特許第8,048,831号は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0202】
炭酸塩及びホウ酸の後処理に加えて、化合物はいずれも異なる特性を改善又は付与するように設計されたさまざまな後処理により後処理、又はさらに後処理され得る。このような後処理は、参照として本明細書に記載される米国特許第5,241,003号の請求項27-29に要約されたものを含む。このような処理は、
無機リン酸又は無水物(例えば、米国特許番号第3,403,102及び4,648,980号)、
有機リン化合物(例えば、米国特許第3,502,677号)、
五硫化二リン;
上記のホウ素化合物(例えば、米国特許第3,178,663号及び第4,652,387号)、
カルボン酸、ポリカルボン酸、無水物及び/又は酸ハロゲン化物(例えば、米国特許第3,708,522号及び4,948,386号)、
エポキシドポリエポキシド又はチオエポキシド(例えば、米国特許第3,859,318号及び第5,026,495号)、
アルデヒド又はケトン(例えば、米国特許第3,458,530号)、
二硫化炭素(例えば、米国特許第3,256,185号)、
グリシドール(例えば、米国特許第4,617,137号)、
尿素、チオ尿素又はグアニジン(例えば、米国特許第3,312,619号;第3,865,813号;及び英国特許第GB1065595号)、
有機スルホン酸(例えば、米国特許第3,189,544号及び英国特許第GB2140811号)、
アルケニルシアン化物(例えば、米国特許番号第3,278,550号及び3,366,569号)、
ジケテン(例えば、米国特許第3,546,243号)、
ジイソシアネート(例えば、米国特許第3,573,205号)、
アルカンスルトン(例えば、米国特許第3,749,695号)、
1,3-ジカルボニル化合物(例えば、米国特許第4,579,675号)、
アルコキシル化アルコール又はフェノールの硫酸塩(例えば、米国特許第3,954,639号)、
環状ラクトン(例えば、米国特許番号第4,617,138号;第4,645,515号;第4,668,246号;第4,963,275号;及び第4,971,711号);
環状カーボネート又はチオカーボネート直鎖モノカーボネート又はポリカーボネート、又はクロロホルメート(例えば、米国特許第4,612,132号;第4,647,390号;第4,648,886号;第4,670,170号)、
窒素含有カルボン酸(例えば、米国特許第4,971,598号及び英国特許第GB2140811号)、
ヒドロキシ保護クロロジカルボニルオキシ化合物(例えば、米国特許第4,614,522号)、
ラクタム、チオラクタム、チオラクトン又はジチオラクトン(例えば、米国特許番号第4,614,603号及び第4,666,460号);
環状カーボネート又はチオカーボネート、線状モノカーボネート又はプライカーボネート、又はクロロホルメート(例えば、米国特許第4,612,132号;第4,647,390号;第4,646,860号;及び第4,670,170号)、
窒素含有カルボン酸(例えば、米国特許第4,9715,98号及び英国特許第GB2440811号);
ヒドロキシ保護クロロジカルボニルオキシ化合物(例えば、米国特許第4,614,522号)、
ラクタム、チオラクタム、チオラクトン又はジチオラクトン(例えば、米国特許第4,614,603号及び第4,666,460号)、
環状カルバメート、環状チオカルバメート又は環状ジチオカルバメート(例えば、米国特許第4,663,062号及び第4,666,459号)、
ヒドロキシ脂肪族カルボン酸(例えば、米国特許第4,482,464号;第4,521,318号;第4,713,189号)、
酸化剤(例えば、米国特許第4,379,064号)、
五硫化二リンとポリアルキレンポリアミンとの組合わせ(例えば、米国特許第3,185,647号)、
カルボン酸又はアルデヒド又はケトン及び硫黄又は塩化硫黄の組合わせ(例えば、米国特許第3,390,086号;第3,470,098号)、
ヒドラジンと二硫化炭素の組合わせ(例えば、米国特許第3,519,564号)、
アルデヒドとフェノールの組合せ(例えば、米国特許第3,649,229号;第5,030,249号;第5,039,307号)、
アルデヒド及びジチオリン酸のO-ジエステルの組合わせ(例えば、米国特許第3,865,740号)、
ヒドロキシ脂肪族カルボン酸とホウ酸の組合わせ(例えば、米国特許第4,554,086号)、
ヒドロキシ脂肪族カルボン酸、そしてホルムアルデヒド及びフェノールの組合わせ(例えば、米国特許第4,636,322号)、
ヒドロキシ脂肪族カルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸の組合わせ(例えば、米国特許第4,663,064号)、
ホルムアルデヒド及びフェノール、グリコール酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,699,724号)、
ヒドロキシ脂肪族カルボン酸又はシュウ酸、ジイソシアネートの組合わせ(例えば、米国特許第4,713,191号)、
無機酸又はリンの無水物又はそれらの一部又は全部の硫黄類似体とホウ素化合物との組合わせ(例えば、米国特許第4,857,214号)、
有機二酸、不飽和脂肪酸、芳香族ニトロアミン、場合によってはホウ素化合物、そしてグリコール化剤との組合わせ(例えば、米国特許第4,973,412号)、
アルデヒドとトリアゾールの組合わせ(例えば、米国特許第4,963,278号)、
アルデヒドとトリアゾール、そしてホウ素化合物との組合わせ(例えば、米国特許第4,981,492号)、
環状ラクトンとホウ素化合物との組合わせ(例えば、米国特許第4,963,275号及び第4,971,711号)、との処理を含む。上記特許はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0203】
好適な分散剤のTBNは、油を含まない基準で約10~約65であり得、これは約50%の希釈油を含む分散剤試料で測定した場合、約5~約30TBNに相当する。
【0204】
分散剤は、存在する場合、潤滑油組成物の最終重量に基づいて最大で約20重量%を提供するのに十分な量で用いることができる。用いることができる分散剤の他の量は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0.1重量%~約15重量%、又は約0.1重量%~約10重量%、又は約3重量%~約10重量%、又は約1重量%~約6重量%、又は約7重量%~約12重量%であり得る。いくつかの実施形態において、潤滑油組成物は混合分散剤系を利用する。1種類又は任意の所望の比率の2種類以上の分散剤の混合物を用いてもよい。
【0205】
摩擦調整剤
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択で一つ又は複数の摩擦調整剤を含み得る。好適な摩擦調整剤は、イミダゾリン、アミド、アミン、スクシンイミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、第四級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアニジン、アルカノールアミド、ホスホネート、金属含有化合物、グリセロールエステル、硫化脂肪化合物及びオレフィン、ヒマワリ油、他の天然に生成する植物油又は動物油、ジカルボン酸エステル、ポリオールと一つ又はそれ以上の脂肪族又は芳香族カルボン酸とのエステル又は部分エステルなどを含み得るがこれらに限定されない、金属を含む及び金属を含まない摩擦調整剤を含む。
【0206】
好適な摩擦調整剤は、直鎖状、分岐鎖状、又は芳香族ヒドロカルビル基、又はそれらの混合物から選択されるヒドロカルビル基を含み得、かつ飽和又は不飽和であり得る。ヒドロカルビル基は炭素及び水素、又は硫黄若しくは酸素などのヘテロ原子で構成される。ヒドロカルビル基は約12~約25個の炭素原子の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、摩擦調整剤は長鎖脂肪酸エステルであり得る。他の実施形態において、長鎖脂肪酸エステルはモノエステル、又はジエステル、又は(トリ)グリセリドであり得る。摩擦調整剤は、長鎖脂肪酸アミド、長鎖脂肪エステル、長鎖脂肪エポキシド誘導体、又は長鎖イミダゾリンであり得る。
【0207】
他の好適な摩擦調整剤は、有機、無灰(金属を含まない)、無窒素有機摩擦調整剤を含み得る。このような摩擦調整剤は、カルボン酸と無水物をアルカノールと反応させることによって形成されるエステルを含み、及び一般的には親油性炭化水素鎖に共有結合した極性末端基(例えばカルボキシル又はヒドロキシル)を含み得る。有機無灰窒素非含有摩擦調整剤の例は、一般的にはオレイン酸のモノ-エステル、ジ-エステル及びトリ-エステルを含み得るモノオレイン酸グリセロール(GMO)が知られている。他の好適な摩擦調整剤は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,723,685号に記載されている。
【0208】
アミン系摩擦調整剤はアミン又はポリアミンを含み得る。このような化合物は、線状の、飽和又は不飽和なヒドロカルビル基又はその混合物を有することができ、及び約12~約25個の炭素原子を含み得る。好適な摩擦調整剤のさらなる例はアルコキシル化アミン及びアルコキシル化エーテルアミンを含む。このような化合物は線状の、飽和又は不飽和なヒドロカルビル基又はその混合物を有し得る。それらは約12~約25個の炭素原子を含み得る。例として、エトキシル化アミン及びエトキシル化エーテルアミンを含む。
【0209】
アミン及びアミドは、それ自体で、又は酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタホウ酸塩、ホウ酸又はモノ-アルキルボレート、ジ-アルキルボレート又はトリ-アルキルボレートなどのホウ素化合物の付加物又は反応生成物の形態で用い得る。他の好適な摩擦調整剤はその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6300291号に記載される。
【0210】
摩擦調整剤は、任意で、約0重量%~約10重量%、又は約0.01重量%~約8重量%、又は約0.1重量%~約4重量%などの範囲内で存在し得る。
【0211】
モリブデン含有成分
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択で一つ又は複数のモリブデン含有化合物を含み得る。油溶性モリブデン化合物は、耐摩耗剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、又はそれらの混合物の機能的特性を有し得る。油溶性モリブデン化合物は、モリブデンジチオカーバメート、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、ジチオホスフィン酸モリブデン、モリブデン化合物のアミン塩、キサントゲン酸モリブデン、チオキサントンモリブデン、モリブデン硫化物、カルボン酸モリブデン、モリブデンアルコキシド、三核有機モリブデン化合物、及び/又はこれらの混合物を含み得る。モリブデン硫化物は二硫化モリブデンを含む。二硫化モリブデンは安定な分散液の形態であり得る。一実施形態において、油溶性モリブデン化合物は、モリブデンジチオカーバメート、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、モリブデン化合物のアミン塩、及びこれらの混合物からなる群から選択され得る。一実施形態において、油溶性モリブデン化合物はモリブデンジチオカルバメートであり得る。
【0212】
用いることができるモリブデン化合物の好適な例は、R.T.Vanderbilt Co.,Ltd.のMolyvan 822(商標)、Molyvan(商標)A、Molyvan 2000(商標)及びMolyvan 855(商標)、並びにAdeka Corporationから入手可能なSakura-Lube(商標)S-165、S-200、S-300、S-310G、S-525、S-600、S-700、及びS-710などの商品名で販売されている市販の材料、及びそれらの混合物を含む。好適なモリブデン成分は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5650381号、米国特許第RE37363E1号、米国特許第RE38929E1号及び米国特許第RE40595E1号に記載されている。
【0213】
また、モリブデン化合物は酸性モリブデン化合物であり得る。含まれるものは、水素ナトリウムモリブデン酸塩、MoOCl4、MoO2Br2、Mo2O3Cl6、三酸化モリブデン又は類似する酸性モリブデン化合物である、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、及び他のアルカリ金属モリブデン酸塩及び他のモリブデン塩である。代替的に、組成物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,263,152号;第4,285,822号;第4,283,295号;第4,272,387号;第4,265,773号;第4,261,843号;第4,259,195号及び第4,259,194号並びにWO94/06897に記載されているように、塩基性窒素化合物のモリブデン/硫黄錯体によってモリブデンを提供することができる。
【0214】
他のクラスの好適な有機モリブデン化合物は、式Mo3SkLnQzの化合物などの三核モリブデン化合物及びそれらの混合物であり、式中、Sは硫黄を表し、Lは有機基が化合物を油中に可溶性又は分散性にするのに十分な炭素原子を有する独立して選択された配位子を表し、nは1~4であり、kは4~7であり、Qは水、アミン、アルコール、ホスフィン及びエーテルなどの中性電子供与性化合物の群から選択され、zは0~5の範囲にあり、非化学量論値を含む。全ての配位子の有機基中に、少なくとも25個、少なくとも30個、又は少なくとも35個などの少なくとも21個の総炭素原子が存在し得る。さらなる好適なモリブデン化合物はその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6723685号に記載されている。
【0215】
油溶性モリブデン化合物は、約0.5ppm~約2,000ppm、約1ppm~約700ppm、約1ppm~約550ppm、約5ppm~約300ppm、又は約20ppm~約250ppmのモリブデンを提供するのに十分な量のモリブデンを含む。
【0216】
遷移金属含有化合物
他の実施形態において、油溶性化合物は遷移金属含有化合物又は半金属であり得る。遷移金属はチタン、バナジウム、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、タンタル、タングステンなどを含み得るがこれらに限定されない。好適な半金属はホウ素、ケイ素、アンチモン、テルルなどを含むがこれらに限定されない。
【0217】
一実施形態において、油溶性遷移金属含有化合物は、耐摩耗剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、付着制御添加剤、又はこれらの機能の二つ以上として作用し得る。一実施形態において、油溶性遷移金属含有化合物はチタン(IV)アルコキシドなどの油溶性チタン化合物であり得る。開示された技術において、油溶性物質に用い得る又は油溶性物質の調製に用い得るチタンを含む化合物は、酸化チタン(IV)、硫化チタン(IV)、硝酸チタン(IV)などのさまざまなTi(IV)化合物、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド、チタン2-エチルヘキソキシドなどのチタン(IV)アルコキシド、及びチタンフェネートを含むがこれに限定されない他のチタン化合物又は錯体、チタン(IV)2-エチル-1-3-ヘキサンジオエート又はクエン酸チタン又はオレイン酸チタンなどのチタンカルボン酸塩、及びチタン(IV)(トリエタノールアミナート)イソプロポキシドである。開示された技術が含む他の形態のチタンは、ジチオリン酸チタンなどのリン酸チタン(例えば、ジアルキルジチオチオリン酸)及びスルホン酸チタン(例えば、アルキルベンゼンスルホン酸)、又は一般的には、油溶性塩などの塩を形成するチタン化合物とさまざまな酸物質との反応生成物を含む。したがって、チタン化合物はとりわけ、有機酸、アルコール及びグリコールから誘導することができる。Ti化合物はまた、Ti-O-Ti構造を含む二量体又はオリゴマー形態でも存在し得る。このようなチタン材料は市販されているか、又は当業者にとって既知の適切な合成技術によって容易に調製することができる。これらは特定の化合物に応じて固体又は液体として室温で存在し得る。これらはまた、適切な不活性溶媒中で溶液形態で提供され得る。
【0218】
一実施形態において、チタンはスクシンイミド分散剤などのTi修飾分散剤として供給することができる。このような材料は、チタンアルコキシドとアルケニル-(又はアルキル)無水コハク酸などのヒドロカルビル置換無水コハク酸との間にチタン混合無水物を形成することによって調製し得る。得られたチタン酸コハク酸塩中間体は直接使用することが可能である、又は(a)遊離の縮合可能な--NH官能基を有するポリアミン系スクシンイミド/アミド分散剤、(b)ポリアミン系スクシンイミド/アミド分散剤、すなわちアルケニル-(又はアルキル-)無水コハク酸及びポリアミンの成分、(c)置換無水コハク酸とポリオール、アミノアルコール、ポリアミンとの反応により調製されるヒドロキシ含有ポリエステル分散剤、又はこれらの混合物などの多種の物質のいずれかと反応させることが可能である。代替的に、チタン酸コハク酸塩中間体をアルコール、アミノアルコール、エーテルアルコール、ポリエーテルアルコール又はポリオール、又は脂肪酸などの他の薬剤と反応させてもよく、その生成物は潤滑剤にTiを付与するために直接用いられてもよく、又は上記のようにコハク酸分散剤とさらに反応させてもよい。一例として、チタン変性分散剤又は中間体を提供するために、テトライソプロピルチタネート1部(モル)をポリイソブテン置換無水コハク酸約2部(モル)と140~150℃で5~6時間反応させてもよい。チタン変性スクシンイミド分散剤を生成するために、得られた材料(30g)を、150℃で1.5時間、ポリイソブテン置換無水コハク酸及びポリエチレンポリアミン混合物(127グラム+希釈油)からのスクシンイミド分散剤とさらに反応させてもよい。
【0219】
他のチタン含有化合物はチタンアルコキシドとC-C25カルボン酸の反応生成物であり得る。反応生成物は式:
【0220】
【化22】
【0221】
で表し得、式中、nは2、3及び4から選択される整数であり、Rは約5~約24個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、又は式:
【0222】
【化23】
【0223】
で表し得、式中、R、R、R及びRの各々は互いに同一であるか又は異なり、及び約5~約25個の炭素原子を含むヒドロカルビル基から選択される。好適なカルボン酸は、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、ネオデカン酸などを含むがこれらに限定されない。
【0224】
一実施形態において、油溶性チタン化合物は、約0~約3,000重量ppmのチタン、又は25~約1,500重量ppmのチタン、又は約35~約500重量ppmのチタン、又は約50~約300重量ppmを提供するための量で潤滑油組成物中に存在し得る。
【0225】
他の任意の添加剤
他の添加剤は、潤滑流体に必要とされる一つ以上の機能を実行するように選択され得る。さらに、一つ又は複数の上記添加剤は多官能性であり得、本明細書で記述される機能にさらなる機能を提供し得、又はそれ以外の機能を提供し得る。
【0226】
本開示に基づく潤滑油組成物は任意選択で他の性能添加剤を含み得る。他の性能添加剤は、本開示の特定の性能添加剤に添加し得、及び/又は、金属不活性化剤、他の粘度指数改善剤、洗浄剤、無灰TBNブースター、摩擦調整剤、耐摩耗剤、腐食防止剤、防錆剤、分散剤、他の分散剤粘度指数改善剤、極圧剤、酸化防止剤、泡抑制剤、解乳化剤、乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、及びこれらの混合物の一つ又は複数を含み得る。通常、完全配合潤滑油はこれらの性能添加剤のうちの一つ又は複数を含む。
【0227】
好適な金属不活性化剤は、ベンゾトリアゾール誘導体(通常トリルトリアゾール)、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、1,2,4-トリアゾール、ベンズイミダゾール、2-アルキルジチオベンズイミダゾール、又は2-アルキルジチオベンゾチアゾール、エチルアクリレート及び2-エチルヘキシルアクリレート並びに任意の酢酸ビニルのコポリマーを含む泡抑制剤、トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及び(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)ポリマーを含む解乳化剤、無水マレイン酸-スチレンのエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、又はポリアクリルアミドを含む流動点降下剤を含む。
【0228】
好適な泡抑制剤はシロキサンなどのシリコン系化合物を含む。
【0229】
好適な流動点降下剤はポリメチルメタクリレート又はそれらの混合物を含み得る。潤滑油組成物の最終重量に基づいて、流動点降下剤は、約0重量%~約1重量%、約0.01重量%~約0.5重量%、又は約0.02重量%~約0.04重量%を提供するのに十分な量で存在し得る。
【0230】
好適な防錆剤は、フェラスメタル表面の腐食を抑制する特性を有する単一化合物、又は化合物の混合物であり得る。本明細書で有用な防錆剤の非限定的な例は、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、及びセロチン酸などの油溶性高分子量有機酸、並びにトール油脂肪酸、オレイン酸及びリノール酸から生成された二量体及び三量体酸を含む油溶性ポリカルボン酸を含む。他の好適な腐食防止剤は、約600~約3000の分子量範囲の長鎖アルファ、オメガ-ジカルボン酸、及びテトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、及びヘキサデセニルコハク酸などの、アルケニル基が約10個以上の炭素原子を含むアルケニルコハク酸を含む。他の有用な種類の酸性腐食防止剤は、アルケニル基中に約8~約24個の炭素原子を有するアルケニルコハク酸と、ポリグリコールなどのアルコールとのハーフエステルである。このようなアルケニルコハク酸の対応する半アミドも有用である。有用な防錆剤は高分子量の有機酸である。いくつかの実施形態において、エンジンオイルは防錆剤を含まない。
【0231】
潤滑油組成物の最終重量に基づき、防錆剤は、存在する場合、約0重量%~約5重量%、約0.01重量%~約3重量%、約0.1重量%~約2重量%を提供するのに十分な量で用いることができる。
【0232】
一般的には、好適なクランクケース潤滑剤は、以下の表に列挙する範囲にある添加剤成分を含み得る。
【0233】
【表2】
【0234】
上記各成分の百分率は、最終潤滑油組成物の重量に基づく各成分の重量パーセントを表す。潤滑油組成物の残部は一つ又は複数の基油からなる。
【0235】
本明細書に記載の組成物の配合に用いられる添加剤は、基油に個々に又はさまざまなサブコンビネーションで混合され得る。しかしながら、添加剤濃縮物(すなわち、添加剤プラス炭化水素溶媒などの希釈剤)を用いて、全ての成分を同時に混合することが好適であり得る。
【実施例
【0236】
以下の実施例は本開示の方法及び組成物を例示するものであり、限定するものではない。本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当該分野において通常用いられるさまざまな条件及びパラメータの他の好適な修正及び調整は、当業者にとって既知である。本明細書で引用した全ての特許及び刊行物は、その全体が参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0237】
実施例のポリマーを実施例1に記載の手順に従って製造した。三つの追加のポリマーを、比較例1~3に記載されているように、実施例1で用いた各反応物のさまざまな組合わせを用いて製造した。ポリマー上の窒素量、100℃での動粘度(「KV 100」)、増粘力(「TP」)、せん断安定性指数(「SSI」)、ポリマーの有効濃度(「Ec」)で表される分散性を含む、各ポリマーのさまざまな特性を測定した。異なるポリマーのこれらの特性の比較を表3に示す。
【0238】
実施例P1:溶液中のマレイン化オレフィンコポリマーの調製
エチレンプロピレンコポリマー(Mn=5400、反応質量の68.01重量%)、110N基油(反応質量の29.77重量%)、及び無水マレイン酸(反応質量の1.72重量%)を、窒素雰囲気下で凝縮器及びディーンスターク装置を備える二口丸底フラスコに充填した。ポリマーの良好な溶解を確実にするために、フラスコを165℃に加熱し、1時間保持した。完全に溶解した後、ジクミルペルオキシド(反応質量の0.25重量%)をフラスコに充填し、次いでフラスコを30分間保持し、続いてジクミルペルオキシド(反応質量の0.25重量%)を充填し、さらに1時間反応させた。反応が完了した後、フラスコを25”Hgの真空下で4時間230℃に加熱して未反応の無水マレイン酸を除去した。最終生成物は褐色透明粘稠液体であった。ポリマーは約2.0重量%のグラフト無水マレイン酸を有していた。
【0239】
実施例P2:溶液中のマレイン化オレフィンコポリマーの調製
エチレンプロピレンコポリマー(Mn=22000、反応質量の49.62重量%)、110N基油(反応質量の22.29重量%)、及び無水マレイン酸(反応質量の1.26重量%)を、窒素雰囲気下で凝縮器及びディーンスターク装置を備える二口丸底フラスコに充填した。ポリマーの良好な溶解を確実にするために、フラスコを165℃に加熱し、1時間保持した。完全に溶解した後、ジクミルペルオキシド(反応質量の0.19重量%)をフラスコに充填し、次いでフラスコを30分間保持し、続いてジクミルペルオキシド(反応質量の0.19重量%)を充填し、さらに1時間反応させた。反応が完了した後、フラスコを25”Hgの真空下で4時間230℃に加熱して未反応の無水マレイン酸を除去した。最終生成物は褐色透明粘稠液体であった。ポリマーは約2.0重量%のグラフト無水マレイン酸を有していた。
【実施例1】
【0240】
以下の実施例では、1000の数平均分子量(10重量%)当たり2.0重量%又は0.4カルボン酸基のマレイン化レベルを有するマレイン化エチレンプロピレンコポリマーを用いた。MA-EPコポリマーは、エチレン-プロピレンコポリマーを無水マレイン酸と反応させることによって製造することができる。油(110N、86.58重量%)と組み合わせたMA-EPコポリマーを、窒素雰囲気下で凝縮器及びディーンスターク装置を備える二口丸底フラスコに添加した。ポリマーの良好な溶解及び脱水を確実にするために、フラスコを24時間140~150℃に加熱した。完全に溶解した後、NPPDA(反応質量の0.26重量%)を混合物に添加した。フラスコを170℃に加熱し、窒素下でさらに24時間反応させた。反応完了後、ポリエーテルアミン、Jeffamine(登録商標)M-2005(反応質量の2.5重量%)を添加し、さらに8時間反応させた。次いで、110Nとノニルアルデヒドの混合物(反応質量の0.66重量%、50/50の重量比)をフラスコに添加し、及び1時間混合した。反応の最終生成物は褐色透明粘稠液体であった。この生成物はエンジンオイルの粘度調整剤として用いたとき、優れた分散性、優れた低温性能、及び燃費の改善を実現した。
【実施例2】
【0241】
実施例P1で調製した生成物(反応質量の44.20重量%)を110N基油(反応質量の40.00重量%)で、窒素雰囲気下で凝縮器及びディーンスターク装置を備える二口丸底フラスコ中に希釈した。ポリマーの良好な溶解及び脱水を確実にするために、フラスコを1時間以上145℃に加熱した。次いで温度を165℃に上げ、及びJeffamine(登録商標)M-2005(反応質量の7.52質量%)及び3-アミノ-1-プロパノール(反応質量の0.30質量%)を添加し、及び4時間反応させた。最終生成物は褐色透明粘稠液体であった。
【実施例3】
【0242】
実施例P2で調製した生成物(反応質量の76.14重量%)を110N基油(反応質量の19.87重量%)で、窒素雰囲気下で凝縮器及びディーンスターク装置を備える二口丸底フラスコ中に希釈した。ポリマーの良好な溶解及び脱水を確実にするために、フラスコを1時間以上145℃に加熱した。次いで温度を165℃に上げ、及びJeffamine(登録商標)M-600(反応質量の2.25質量%)及びNPPDA(反応質量の0.75質量%)を添加し、及び4時間反応させた。続いて、ノニルアルデヒド(反応質量の0.99重量%)を添加し、フラスコを165℃に一時間保持した。最終生成物は褐色透明粘稠液体であった。
【実施例4】
【0243】
本実施例では、1000の数平均分子量(10重量%)当たり2.0重量%又は0.4カルボン酸基のマレイン化レベルを有するマレイン化エチレンプロピレンコポリマー(Mn=40,000)を用いた。MA-EPコポリマーは、エチレン-プロピレンコポリマーを無水マレイン酸と反応させることによって製造することができる。油(110N、77.34重量%)と組み合わせたMA-EPコポリマーコポリマー(反応質量の20.0重量%)を、窒素雰囲気下で凝縮器及びディーンスターク装置を備える二口丸底フラスコに添加した。ポリマーの良好な溶解及び脱水を確実にするために、フラスコを24時間140~150℃に加熱した。完全に溶解した後、NPPDA(反応質量の0.5質量%)を混合物に添加した。フラスコを170℃に加熱し、窒素下でさらに24時間反応させた。反応完了後、ポリエーテルアミン、Jeffamine(登録商標)M-600(反応質量の1.50重量%)を添加し、さらに8時間反応させた。ノニルアルデヒド(反応質量の0.99重量%)を添加し、さらに2時間保持した。反応の最終生成物は褐色透明粘稠液体であった。
【0244】
比較例1
比較例1は、NPPDAをこの組成物にグラフト化していないことを除いて、実施例1と同一の手順を用いた。実施例1で用いたものと同一のMA-EPコポリマーを油と混合し、窒素雰囲気下で凝縮器及びディーンスターク装置を備える二口丸底フラスコに添加した。ポリマーの良好な溶解及び脱水を確実にするために、フラスコを24時間140~150℃に加熱した。Jeffamine M-2005(反応質量の6重量%)を添加し、及び8時間反応させた。
【0245】
比較例2
本実施例では、いかなる官能化もしていないOCPポリマーを用いた。
【0246】
比較例3
比較例3の生成は、NPPDA(反応質量の0.6重量%)を反応混合物に添加したことを除いて、比較例1と同一の手順を用いた。
【0247】
表3は、実施例1及び比較例1~3に従って製造された異なるポリマーの成分及び性質の比較を示す。動粘度はASTM D445を用いて測定した。せん断安定性指数(SSI)はASTM-D6022に従って測定した。増粘力は、100℃で約5.0cStの動粘度を有する基準油中に1重量%のポリマーを用いることによって測定した。分散性は米国特許第8,927,469号に開示された方法に従って測定した。この方法では、E(有効濃度)を、煤油粘度がせん断速度によって著しく変化しない最低ポリマー濃度として決定した。ポリマー上の窒素はCE Elantech Instrumentを用いて燃焼元素分析により決定した。
【0248】
【表3】
【0249】
5W-30の配合油を製造するために、実施例1及び比較例1~3に従って製造した各ポリマーを基油と混合した。100℃及び150℃で各油配合物について、ASTM D4683の方法を用いて、フィルム厚(「FT」)、摩擦、コールドクランクスタート(「CCS」)、粘度指数(「VI」)、高温高せん断(「HTHS」)粘度を測定した。結果を表4に示す。測定結果から、低摩擦及び低HTHSに基づいて、バージンエンジンオイル(「FEI1」)の燃費改善値を予測することができる。各5W-30油配合物に対する予測FEI 1も表4に示す。
【0250】
薄膜摩擦はミニトラクションマシン(MTM)で測定した。TFF試験は、PCS InstrumentsからのMini-Traction Machine(MTM)を用いて薄膜潤滑状態での牽引係数を測定する。これらの牽引係数は、油が500mm/sのエントレインメント速度で接触領域を通して引っ張られているときに、ANSI 52100鋼ディスクとANSI 52100鋼球との間の50Nの負荷荷重を用いて130℃で測定した。測定中、ボールとディスクとの間のスライド対ロール比は50%に維持した。
【0251】
【表4】
【0252】
100℃と150℃のHTHS、5W-30配合油中のより高いフィルム厚、及びより低い摩擦、並びに煤分散性の組合わせに基づき、実施例1のポリマーは表4に示すより高い予測燃費によって示されるように、比較例1~3のポリマーよりも優れた燃費を提供する可能性がある。
【0253】
フィルム厚はElastoHydrodynamic薄膜測定システムを用いて測定した。コールドクランクシミュレータ(CCS)はASTM D5293の方法に従って約30℃で測定した。
【0254】
表5は異なるエンジンオイル配合物における、比較例1~3のポリマーの性能と比較した実施例1及び2のポリマーの性能を示す。
【0255】
【表5】
【0256】
本開示の他の実施形態は、本明細書の考慮及び本明細書に開示される実施形態の実施から当業者にとっては明らかである。明細書及び特許請求の範囲を通して用いられているように、「a」及び/又は「an」は一つ又は二つ以上を指し得る。他に指示がなければ、本明細書及び特許請求の範囲で用いられる成分の量、分子量、パーセント、比、反応条件などの性質を表す全ての数字は、用語「約」が存在するか否かにかかわらず、全ての場合において用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載される数値パラメータは本開示によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。最低限、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各々の数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数及び通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。広範囲の開示を記載する数値範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載される数値は可能な限り正確に報告される。しかしながら、いかなる数値も、それらのそれぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる所定の誤差を本質的に含む。本明細書及び実施例は、例示的なものにすぎず、本開示の真の範囲及び趣旨は以下の特許請求の範囲によって示されるものとみなされることが意図される。
【0257】
上記実施形態は実際にはかなりの変形が可能である。したがって、実施形態は上記の特定の例示に限定されるものではない。むしろ、上記実施形態は法的に利用可能なそれらの等価物を含む添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内にある。
【0258】
特許権所有者はいずれかの開示される実施形態を公に開放することを意図しておらず、いずれかの開示された変更又は変形が文字通り特許請求の範囲に含まれない可能性がある限り、それらは均等論の一部であるとみなされる。