(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】濾過材及びその使用
(51)【国際特許分類】
B01D 39/14 20060101AFI20220825BHJP
D04H 1/4374 20120101ALI20220825BHJP
D04H 1/58 20120101ALI20220825BHJP
B01D 39/20 20060101ALI20220825BHJP
B01D 39/16 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
B01D39/14 C
B01D39/14 A
D04H1/4374
D04H1/58
B01D39/20 B
B01D39/16 A
B01D39/16 Z
B01D39/20 Z
(21)【出願番号】P 2019554956
(86)(22)【出願日】2018-04-13
(86)【国際出願番号】 FI2018050266
(87)【国際公開番号】W WO2018189425
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-03-12
(32)【優先日】2017-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】518147286
【氏名又は名称】アールストローム - ムンクショー オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビスカリ、アンナ
(72)【発明者】
【氏名】カウコパーシ、ヤン
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-518770(JP,A)
【文献】特開2014-121699(JP,A)
【文献】特表2008-518772(JP,A)
【文献】特開2015-007303(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0110354(US,A1)
【文献】特開2017-013068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00-41/04、46/00-46/90
D04H 1/00-18/04
B32B 5/00-5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を濾過するための濾過材であって、濾過材は、ホットメルトバインダー又は接着剤によって微細フィルター基材が積層された前置フィルター基材で少なくとも形成され
、前置フィルター基材が合成繊維及び第1のバインダーを含み、前置フィルター基材が組み合わされた表面及び深層フィルター基材として働き、及び微細フィルター基材が第2のバインダー並びに合成繊維及び無機繊維の少なくとも1つを含み、前置フィルター基材の平均流量細孔径が8~10マイクロメートル、微細フィルター基材の平均流量細孔径が3~10マイクロメートル、及び積層された濾過材の平均流量細孔径が1.5~6マイクロメートルであることを特徴とする、濾過材。
【請求項2】
第1のバインダーが、多成分繊維、完全に溶融可能な繊維、及び第1のバインダー樹脂のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載の濾過材。
【請求項3】
前置フィルター基材が、無機繊維をさらに含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の濾過材。
【請求項4】
前置フィルター基材が、20~95重量%の合成繊維、5~80重量%の第1のバインダーを含むことを特徴とする、請求項1に記載の濾過材。
【請求項5】
微細フィルター基材が、前置フィルター基材と同一であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の濾過材。
【請求項6】
微細フィルター基材が、無機繊維及び合成繊維の両方を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の濾過材。
【請求項7】
微細フィルター基材が、20~60重量%の合成繊維、10~80重量%の無機繊維及び2~15重量%の第2のバインダーを含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の濾過材。
【請求項8】
前置フィルター基材及び微細フィルター基材の少なくとも一方が、少なくとも2つの異なる直径グレードからの合成繊維及び/又は無機繊維を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の濾過材。
【請求項9】
微細フィルター基材が、平均直径が1~30マイクロメートルであるチョップストランドグラスファイバーを含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の濾過材。
【請求項10】
第1のバインダー樹脂及び第2のバインダーが、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、多環芳香族樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリ尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアセチル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、レゾルシノール樹脂、スチレン樹脂、尿素フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、酢酸ビニル樹脂及び塩化ビニル樹脂の少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項2から9のいずれか一項に記載の濾過材。
【請求項11】
微細フィルター基材の合成繊維が、PET、PP、PBT、PA、リヨセル、レーヨン、アラミド、ナイロン、ポリオレフィン、ポリエステル、ビスコース、及びアクリル繊維のうちの少なくとも1つを含み、合成繊維の平均直径が0.1~100マイクロメートルであることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の濾過材。
【請求項12】
多成分繊維が、PET/co-PET、PET/co-PE、PET/co-PP、及びPET/co-PA繊維のうちの少なくとも1つを含み、多成分繊維の微細さが1~15デニールであることを特徴とする、請求項2に記載の濾過材。
【請求項13】
無機繊維が、平均直径が0.01~5マイクロメートルであることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の濾過材。
【請求項14】
前置フィルター基材及び微細フィルター基材を結合して濾過材を形成するために、第3のバインダーを使用することを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の濾過材。
【請求項15】
第3のバインダーが、エチレン-酢酸ビニル(EVA)共重合体、ポリオレフィン(PO)、アタクチックポリプロピレン(PP又はAPP)、ポリブテン-1、酸化ポリエチレン、ポリアミド及びポリエステル、スチレンブロック共重合体(SBC)及びポリウレタンホットメルト接着剤のうちの少なくとも1つであることを特徴とする、請求項14に記載の濾過材。
【請求項16】
溶融可能な繊維が、PE(ポリエチレン)、PP、ポリ塩化ビニル(PVC)及びポリビニルアルコール(PVA)繊維のうちの少なくとも1つであることを特徴とする、請求項2に記載の濾過材。
【請求項17】
ガスタービン若しくは内燃機関の吸気フィルターにおける、HVAC若しくはAPC用途における、又は、エンジンオイル若しくは油圧オイルの濾過における、請求項1から16のいずれか一項に記載の濾過材の使用。
【請求項18】
請求項1から16のいずれか一項に記載の濾過材を含む、ガスタービン若しくは内燃機関フィルター用の吸気フィルター、HVAC若しくはAPC用途のフィルター、又は、エンジンオイル若しくは油圧オイルを濾過するためのフィルター。
【請求項19】
濾過材を製造する方法であって、以下のステップ:
a)少なくとも合成繊維及び第1のバインダーの前置フィルター完成紙料を調製し、
b)前置フィルター完成紙料を表面に積層してウェブを形成し、
c)前置フィルター基材を形成するためにウェブを加熱して、第1のバインダーを硬化させ、
d)前置フィルター基材に第3のバインダーを適用し、
e)第1のバインダー上に微細フィルター基材を配置し、
f)基材を一緒に組み合わせて濾過材を形成することを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の濾過材を製造する方法。
【請求項20】
ステップe)の前に、少なくとも第2のバインダー並びに合成繊維及び無機繊維のうちの1つの微細フィルター完成紙料を調製し、表面上に前記微細フィルター完成紙料を積層してウェブを形成し、微細フィルター基材を形成するために前記ウェブを加熱して、前記バインダーを硬化させることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送及び工業用濾過の両方で使用するための濾過材(filter medium)に関する。具体的には、本発明は、表面及び深層濾過(surface and depth filtration)の両方を利用して気体から固体粒子を除去するのに効率的であり、パルス洗浄が可能な濾過材に関する。
【0002】
大気、蒸気、液体、すなわち、あらゆる種類の流体から不純物を濾過する必要が高まっている。特に、輸送用濾過及び工業用空気濾過の両方、特にガスタービン、内燃機関、大気汚染規制(APC)の分野では、粒子除去の観点から効率的な濾過材が必要である。さらに、工業文明では、呼吸器疾患、アレルギー、喘息の症状が頻繁に発生するため、室内の空気の質が重要になっている。暖房、換気、及び空調(HVAC)フィルターは高い粒子除去能力を提供できるが、これらのフィルターは大きな空気抵抗も生み出す。その結果、高効率のHVAC濾過方式には、空気を移動させる強力なファンが必要である。同様に、ガスタービン及び輸送における吸気処理用の従来技術の濾過材は、エネルギー消費の増加をもたらす。さらに、空気濾過に加えて、例えばエンジンオイル、油圧オイルなどの液体から不純物を濾過する必要がある。
【背景技術】
【0003】
従来、工業用濾過では、いわゆるフロースルーフィルターが使用され、その動作は、濾過材が詰まるまで、又は厳密に言えば、濾過材を交換しなければならない程度に濾過材の圧力損失が大きくなるまで、ほぼ直角に、濾過される流体を濾過材を通して導入することに基づいている。そのような従来技術の濾過材は、例えば空気の濾過に無機繊維及び合成繊維を使用する。そのようなフィルターの基本的な欠点は、空気の流れに対する抵抗が空気から除去される粒子の量とともに増加するため、濾過のエネルギー消費が時間とともに増加するという事実である。
【0004】
エネルギー消費を制御する1つの方法は、フィルターの交換間隔を短縮して、空気の流れに対する抵抗が大きくなりすぎないようにすることである。しかし、この種の方法では、フィルターの供給及び交換の両方に関連する費用が増加する。交換間隔を短縮する方法は、平面フィルター要素の代わりに、プリーツフィルター要素を使用することであり、これにより、有効フィルター面積が増加する。
【0005】
フロースルーフィルターには2つの基本的な種類があり、すなわち、1つは表面濾過を利用し、もう1つは深層濾過を利用する。表面濾過とは、濾過材の表面が非常に高密度であるため、流体から分離された固体がフィルターの表面に残るプロセスを指す。深層濾過では、濾過材に細孔があり、細孔に固体粒子が閉じ込められる。多くの場合、フィルターには様々なサイズの細孔があり、細孔が位置するフィルターの深部ほど細孔径が小さくなる。そのようなフィルターは、勾配構造フィルター又は勾配細孔構造フィルターと呼ばれることが多い。実際には、大きなサイズの固体はフィルターの入口表面に近い細孔に閉じ込められ、小さな固体は閉じ込められるまで濾過材内部の奥深くまで長く移動することを意味する。マイクログラスファイバーは、特にHVACタイプのフィルターにおいて、深層フィルターの最適な材料として考えられることが最も多い。しかし、マイクログラス製のフィルター又はフィルター要素は、本質的に壊れやすく、すなわち、丁寧に扱う必要があり、洗浄できないため、定期的に交換する必要があり、交換間隔は比較的短い。当然、表面及び深層濾過(surface and depth filtration)の両方を利用する製品もある。
【0006】
様々な工業用途でのフィルターの交換間隔、つまり寿命を延ばす方法は、パルス洗浄の使用である。そのような用途では、フィルター装置には、通常の濾過方向とは反対の方向にフィルターを通して圧縮流体を定期的に吹き込むための手段が設けられ、それにより、流体パルスは、フィルターの細孔に閉じ込められた固体の大部分をフィルターから洗い流す。パルス洗浄は簡単に自動化できるため、人件費やその他のサービス及びメンテナンス費用を節約できる。しかし、パルス洗浄では圧縮流体を使用するため、フィルターに大きな機械的ストレスがかかり、それにより、市場では数種類のパルス洗浄可能なフィルター要素しか見当たらないことを意味する。そのような種類の1つは、例えば国際公開第2009152439号A1で議論されているメンブレンフィルターであり、支持面上に膜層を有し、膜層は流入する流体に面している。別の種類は、流入する流体に面するナノファイバー表面を有するフィルターである。両方のフィルターはパルス洗浄可能であるが、表面フィルターとしてのみ機能し、すなわち、固体を収集するための細孔はないが、固体はフィルターの表面に残る。したがって、フィルター上の圧力差は急速に大きくなり、パルス洗浄の必要性がほとんど瞬時に生じる。メンブレンフィルターとナノファイバーフィルターの両方に特徴的な機能は、パルス洗浄を行っても予期せぬ方法でフィルター機能が突然失われるため、交換間隔が予測できないことである。さらに、ナノファイバーとメンブレンはいずれも高価な材料であるため、そのようなフィルターの市場価格はすでに高くなっており、突然の交換の必要性に関する継続的な状態監視を含む様々な費用は言うまでもなく高くなっている。
【0007】
例えばガスタービン用途などの工業用濾過では、HEPAフィルター(HEPA=高効率微粒子空気フィルター)の使用が必要である。従来技術により、2種類のHEPAフィルターが既知である。最初の種類は、大量のマイクログラスの使用に基づくフロースルーフィルターである。上記フィルターは、深層フィルター(depth filter)として機能するが、そのシンプルな構造とマイクログラスの含有量が多いため、交換間隔が比較的短いので、パルス洗浄可能なフィルターではない。2番目のHEPAフィルタータイプは、メンブレンフィルター(国際公開第2009152439号A1)であり、表面濾過としてPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルムを通して濾過が行われる。メンブレンフィルターは、すでに述べたように、パルス洗浄可能なフィルターであるが、表面フィルターであるため、パルス洗浄に関係なく、フィルターの表面の開口部が突然詰まるため、交換間隔を予測することは困難である。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、上記の問題の少なくとも1つを解決することを目的とする。
【0009】
本発明の目的は、従来技術のHEPAフィルターよりも長期間にわたってその濾過能力を維持する、すなわち、予期しない方法で突然詰まらない深層タイプのパルス洗浄可能なHEPAフィルターを導入することである。
【0010】
本発明の別の目的は、従来技術のHEPAフィルターとは異なるパルス洗浄が可能な構造、すなわち、通常の操作方向とは反対方向での洗浄パルスに耐えるのに十分に強い濾過材のパルス洗浄可能なHEPAフィルターを導入することである。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、工業用濾過材の有効寿命を延ばす、改良されたパルス洗浄可能な濾過材を導入することである。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、改良されたパルス洗浄可能なHEPA濾過材を導入することであり、その交換間隔は予測可能である。
【0013】
したがって、本発明は、請求項1で定義される流体を濾過するためのパルス洗浄可能な濾過材に関する。
【0014】
本発明に特徴的な他の機能は、従属請求項から明らかになるであろう。
【0015】
本発明は多くの利点をもたらし、それらの利点のうち少なくとも以下の、
・本発明の濾過材は、パルス洗浄可能用途及びパルス洗浄不可能用途の両方で使用することができ、
・本発明の濾過材は、いくつかの異なるHEPAグレードに合わせて容易に調整することができ、
・湿度に対する高い忌避性、
・濾過材の組み合わせに応じて最適な深層又は表面濾過特性を有するHEPAフィルター、
・低コストの材料で作成されたパルス洗浄可能なフィルター、
・長寿命、
・低いメンテナンス及び交換コスト、並びに
・予期しない交換はなく、予測可能な寿命
を挙げることができる。
【0016】
定義
二成分繊維、又はより一般的には多成分繊維では、この用語は、1つの繊維を形成する少なくとも2つのポリマーから形成される繊維を指す。多成分繊維の特定の例として、「二成分繊維」は、二成分繊維の断面を横切って実質的に一定に位置する別個のゾーンに配置され、二成分繊維の長さに沿って連続的に延びる2つのポリマーを含む。そのような二成分繊維の構成は、例えば、1つのポリマーが別のポリマーに囲まれているシース/コア構成であってもよく、あるいは並列構成又は「海の島」構成であってもよい。二成分繊維の場合、ポリマーは、75/25、50/50、25/75の比率で、又は他の望ましい比率で存在してもよい。二成分繊維は通常、低融点のシース及び高融点のコアを有するため、その主な機能は、他の繊維を結合して機械的に強力な基材を形成することである。二成分繊維は通常、以下のような方式、PET/co-PET、PET/co-PE(PE=ポリエチレン)、PET/co-PP(PP=ポリプロピレン)又はPET/co-PAで指定され、前者のポリマーはシースを形成し、後者のポリマーはコアを形成する。より一般的には、二成分繊維は、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、PCTなど)、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,12などのナイロンを含む様々な熱可塑性材料から作成できる。適切な融点を有することができる任意の熱可塑性物質は、二成分繊維の低融点成分に使用できる。二成分(コア/シェル又はシース及び並列)繊維のポリマーは、例えば、ポリオレフィン/ポリエステル(シース/コア)二成分繊維などの様々な熱可塑性材料で構成され、それによりポリオレフィン、例えばポリエチレンシースは、コア、例えばポリエステルよりも低い温度で溶融する。典型的な熱可塑性ポリマーには、ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、及びそれらの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタラート、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、例えばポリアクリラート、及びポリメチルアクリラート、ポリメチルメタクリラート、ポリアミド、すなわちナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、セルロース系樹脂、すなわち硝酸セルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、エチルセルロースなど、上記材料のいずれかの共重合体、例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、クラトンゴムなどが挙げられる。
【0017】
バインダー-様々な繊維を互いに結合するために使用される手段の総称。液体及び固体バインダー樹脂が含まれる。固体は、粉末、顆粒、完全に溶融可能な繊維、及び部分的に溶融可能な繊維(二成分繊維及び多成分繊維)を含む。
【0018】
バインダー繊維-完全に溶融可能な繊維と、二成分繊維及び多成分繊維を含む繊維の総称。
【0019】
バインダー樹脂-様々な繊維を機械的に安定した基材に結合する物質の総称。熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂に分けることができる。熱可塑性バインダー樹脂材料は、乾燥粉末、顆粒又は液体の形態で使用されてもよい。通常、それらはビニル熱可塑性樹脂の水性分散液である。バインダーとして使用される樹脂は、繊維懸濁液に直接添加される水溶性又は分散性ポリマーの形態、又は基材が形成された後に加えられる熱によってバインダーとして活性化される繊維懸濁液と混ざった樹脂材料の熱可塑性バインダー繊維の形態であってもよい。樹脂には、酢酸ビニル材料、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアセチル樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、尿素フェノール、尿素ホルムアルデヒド、メラミン、エポキシ、ポリウレタンなどの熱硬化性樹脂、硬化性不飽和ポリエステル樹脂、多環芳香族樹脂、レゾルシノール樹脂及び類似のエラストマー樹脂が挙げられる。水溶性又は分散性バインダーポリマーの好ましい材料は、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリ尿素、ポリウレタン、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリエステル及びアルキド樹脂などの水溶性又は水分散性熱硬化性樹脂であり、一般的に、及び特に、水溶性アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂が工業で一般的に使用されている。そのようなバインダー樹脂は、典型的には、繊維を被覆し、最終的な不織マトリックスで繊維と繊維を接着する。十分な樹脂を完成紙料に添加し、シート、濾過材、又はフィルター材料に形成された細孔をフィルムで覆わずに繊維を完全に被覆する。樹脂は、不織ウェブの形成中に完成紙料に添加されてもよく、又はその形成後にウェブに塗布されてもよい。
【0020】
機械交差方向(CD又はXMD)-形成中に繊維状ウェブが移動する方向に垂直な方向。
【0021】
DEHS-濾過効率-標準BS EN 1822は、アブソリュートフィルター、すなわち、効率的微粒子空気(EPA)、高効率微粒子空気(HEPA)、及び超低浸透空気(ULPA)フィルターの濾過特性の工場試験について説明している。フィルターは、その濾過効率に基づいていくつかのグループに分けられる。濾過効率は、濾過される粒子としてジエチルヘキシルセバキャット(DEHS)液滴を使用して決定される。濾過効率は、濾過されるフロー内の粒子の全量と比較した、フィルターに捕捉された粒子の割合を示す。フィルター群及び必要な最小の濾過効率は以下の通りである:
・E10-≧85%、
・E11-≧95%、
・E12-≧99.5%、
・H13-≧99.95%、
・H14-≧99.995%、
・U15-≧99.9995%、
・U16-≧99.99995%、及び
・U17-≧99.999995%。
【0022】
深層濾過-濾過材に様々なサイズの細孔があり、その結果、細孔が位置するフィルターの深部ほど細孔径が小さくなり、多くの場合、そのようなフィルター構造は、勾配構造フィルター又は勾配細孔構造フィルターと呼ばれるプロセスを指す。
【0023】
微細さ(finess)-繊維又はトウの厚さ、通常はデニールで示される。
【0024】
無機繊維-例えば、ガラス、カーボン、シリカなどの無機材料で作成された繊維。
【0025】
機械方向(CD又はXMD)-形成中に繊維状ウェブが移動する方向。
【0026】
溶融可能な繊維-加熱すると完全に溶融し、繊維同士を接着するために使用され、例えばPE(ポリエチレン)、PP、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアルコール(PVA)で作成された繊維。
【0027】
パルス洗浄可能-この用語は、洗浄される流体の流れ方向と反対の方向の流体ジェットによる、濾過材の洗浄可能性を指す。濾過材の洗浄可能性を決定するために使用されるテスト手順は、VDI 3926-2004、洗浄可能な濾過材の試験、洗浄可能な濾過材の評価のための標準試験で説明されている。ISO 11057:2011ではまた、パルスジェット洗浄可能な濾過材の比較特性決定及び評価のための標準参照試験方法について議論されている。
【0028】
表面濾過-濾過材の表面が非常に高密度であるため、流体から分離された固体がフィルターの表面に残るプロセスを指す。
【0029】
合成繊維-例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、アクリル、リヨセル、レーヨン、アラミド、ナイロン、ポリオレフィン、ポリエステル、又はビスコースなどで作成された繊維。
【発明を実施するための形態】
【0030】
一般的に言えば、本発明の濾過材は、少なくとも2つの別個に製造されたフィルター基材、すなわち前置フィルター(pre-filter)基材及び微細フィルター(fine-filter)基材で作成され、互いに積層されてパルス洗浄可能な濾過材を形成し、又は別個に製造された前置フィルター基材上に微細フィルター基材を配置し、パルス洗浄可能な濾過材を形成する。
【0031】
<前置フィルター基材(Pre-filter substrate)>
前置フィルター基材は、平均直径が0.1~100マイクロメートル、好ましくは0.1~50マイクロメートル、より好ましくは0.1~30マイクロメートルであるポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、アクリル、リヨセル、レーヨン、アラミド、ナイロン、ポリオレフィン、ポリエステル、又はビスコース繊維などの少なくとも合成繊維及び適切な第1のバインダーで構成される。合成繊維の一部は、平均直径が0.01~5マイクロメートルであるマイクログラス、カーボン、又はシリカ繊維などの無機繊維で置き換えることができる。第1のバインダーの好ましい選択肢は、多成分繊維であり、好ましくは、必須ではないが、微細さが1~15デニール、好ましくは約2.2デニール、4デニール又は6デニール、すなわち直径が8~25μm程度であり、硬化後、シースの溶融が元々少ない、例えばPET/co-PET、PET/co-PE、PET/co-PP、又はPET/co-PA繊維などの二成分繊維である(より詳細には上記の「定義」を参照)。二成分繊維又は多成分繊維に加えて、又はその代わりに、第1のバインダーの別の選択肢は、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、多環芳香族樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリ尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアセチル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、レゾルシノール樹脂、スチレン樹脂、尿素フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、酢酸ビニル樹脂及び塩化ビニル樹脂、又は繊維を互いに結合する際に使用できるそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つなどのバインダー樹脂である。二成分繊維又は多成分繊維及び/又は上記のバインダー樹脂の代わりに、又はそれらに加えて、第1のバインダーの少なくとも一部として、例えばPE(ポリエチレン)、PP、ポリ塩化ビニル(PVC)及びポリビニルアルコール(PVA)繊維の少なくとも1つなどの完全に溶融可能な繊維を使用することも可能である。
【0032】
第1のバインダー、好ましくは、必ずしもそうではないが、前置フィルター基材に設けられた二成分繊維は、フィルターの機械的強度及び完全性の大部分を確保し、フィルターの通常の作業方向に逆らう方向で、パルス洗浄、すなわち圧縮流体の強力な噴流を可能にし、フィルターの洗浄に適用できる。さらに、前置フィルター基材は、本発明の実施形態の少なくとも大部分において、基材に微細フィルター能力及び機械的強度の両方を与えるマイクログラスファイバーを含む。
【0033】
本発明のすべての実施形態に共通する特徴は、前置フィルターのタイプに応じて、最終的なDEHS効率へのその寄与が変化し得ることである。言い換えれば、前置フィルター基材は、HEPAフィルターにその機械的強度の大部分を提供し、すなわち、フィルターのパルス洗浄可能な構造を確保し、及びHEPAフィルターにフィルター全体のDEHS効率の一部を提供し、フィルターのDEHS効率の差は、主に微細フィルター基材によって提供される。
【0034】
したがって、本発明の前置フィルター基材は、20g/m2~80g/m2、好ましくは約30g/m2~70g/m2、より好ましくは約35~50g/m2の坪量を有する。坪量は、ISO 536:2012、紙及び板紙-グラメージの決定に従って測定される。前置フィルター基材は、一般的に、本発明の第1の好ましい実施形態に従って、20~95重量%、好ましくは25~80重量%、より好ましくは約25~50重量%の合成繊維;0~50重量%、好ましくは20~40重量%、より好ましくは約30~35重量%の二成分繊維;0~30重量%、好ましくは10~25重量%、より好ましくは約15~20重量%のマイクログラスファイバー;及び、場合により、0~20重量%、好ましくは約0~15重量%、より好ましくは約2~10重量%のバインダー樹脂又は完全に溶融可能な繊維を含む。明細書全体の重量%は、中間基材又は最終生成物、すなわち、パルス洗浄可能な濾過材を形成する成分の乾燥量を指す。
【0035】
本発明の第2の好ましい実施形態に従って、前置フィルター基材は、20~95重量%の合成繊維及び5~80重量%の第1のバインダーを含む。
【0036】
本発明の第3の好ましい実施形態に従って、前置フィルター基材は、25~80重量%、好ましくは約35~50重量%の合成繊維;20~75重量%、好ましくは約40~55重量%の二成分繊維又は多成分繊維;及び0~15重量%、好ましくは2~10重量%のバインダー樹脂又は完全に溶融可能な繊維を含む。
【0037】
本発明の第4の好ましい実施形態に従って、前置フィルター基材は、55~85重量%、好ましくは60~80重量%の合成繊維;10~30重量%、好ましくは約15~25重量%のマイクログラスファイバー;及び2~15重量%、好ましくは約2~10重量%のバインダー樹脂又は完全に溶融可能な繊維を含む。
【0038】
本発明の第5の好ましい実施形態に従って、前置フィルター基材は、25~60重量%、好ましくは30~60重量%、より好ましくは約40~50重量%の合成繊維;20~45重量%、好ましくは30~40重量%の二成分繊維;10~30重量%、好ましくは約15~20重量%のマイクログラスファイバー;及び0~20重量%、好ましくは約0~15重量%、より好ましくは約2~10重量%のバインダー樹脂又は完全に溶融可能な繊維を含む。
【0039】
本発明の第6の好ましい実施形態に従って、前置フィルター基材は、2種類の合成繊維、好ましくはPET繊維、すなわち直径6μmの30~35重量%、好ましくは33重量%のPET繊維及び直径10μmの5~15重量%、好ましくは10重量%のPET繊維;30~40重量%の二成分繊維;2種類のマイクログラスファイバー、すなわち直径0.1~1μmの10~15重量%、好ましくは13重量%のマイクログラスファイバー及び直径0.1~0.6μm、直径5%の1~9重量%、好ましくは5重量%のマイクログラスファイバー、及び5重量%のアクリルバインダーを含む。
【0040】
本発明の第7の好ましい実施形態に従って、上記の前置フィルター基材のいずれか1つは、ウェットレイド(wet-laid)技術を使用することにより形成することができ、すなわち、前置フィルター基材を形成する様々な異なる成分を液体、好ましくは水に混合し、繊維懸濁液又は完成紙料を形成させる。第1のバインダーは、適切な形態、すなわち液体又は固体である場合、完成紙料に添加するか、又は繊維構造に低い衝撃を与えながら製造プロセスを通して適用することができる。完成紙料は、均一な混合物に混合された後、繊維状不織布ウェブを形成するためにヘッドボックスから液体透過性ワイヤ上に置かれる。フィルター基材のウェットレイ(wet-laying)は、ウェブを形成するための異なる速度の結果として、完成紙料に存在する場合、より細くて重いマイクログラスファイバーの濃度は、ワイヤの近くで最高となっており、他のより軽い繊維は、ワイヤから離れた場所で高濃度となっているという利点がある。実際には、これは、フィルター基材に多孔度勾配があることを意味し、すなわち、フィルター基材の細孔は、基材のワイヤ側に近づくにつれてサイズが小さくなる。したがって、フィルター基材は、いわゆる深層濾過を行うことができる。マイクログラスファイバーがなくても、同じ現象が発生する可能性があり、完成紙料には、ウェブへの沈降を考慮して比重、繊維長などの異なる特性を有する繊維が存在する可能性がある。
【0041】
本発明の第7の好ましい実施形態のさらなる変形例に従って、前置フィルター基材の製造に使用されるヘッドボックスは、垂直方向に、それぞれ独自のスライス開口部を有する2つの別個のチャンバーに分割される。ヘッドボックスの両方のチャンバーには、繊維懸濁液又はそれ自体の完成紙料が備えられており、それにより、実際の前置フィルター基材は、互いに絡み合った2つの異なる層を有する繊維状不織布ウェブに形成される。ワイヤ上にウェブを作成する際に複数の層の完成紙料を堆積する基本原理は、例えば、米国特許第3,598,696号で議論されている。ウェットレイド法により2層基材を製造する場合、ワイヤ上に形成される最初の層、すなわち下層の完成紙料は、例えば10~45重量%、好ましくは10~20重量%の合成繊維;0~30重量%、好ましくは10~20重量%の二成分繊維又は多成分繊維;及び0~10重量%、好ましくは0~5重量%の第1のバインダー樹脂及び/又は完全に溶融可能な繊維を含んでもよい。第1の層にウェットレイドされた第2の層用の第2の完成紙料は、例えば、15~30重量%、好ましくは15~25重量%の合成繊維;0~20重量%、好ましくは10~20重量%の二成分繊維又は多成分繊維;10~30重量%、好ましくは15~20重量%のマイクログラス;及び0~10重量%、好ましくは0~5重量%の第1のバインダー樹脂及び/又は完全に溶融可能な繊維を含んでもよい。上記のパーセンテージ値は、基材全体の乾燥重量を示す。合成繊維は、例えば6又は10マイクロメートルのPET繊維である同じ品質のもの、又は異なる直径を有する繊維の混合物であってもよい。マイクログラスファイバーの平均直径は0.01~5マイクロメートルで、その大部分、すなわち繊維の60%超が平均直径0.1~2マイクロメートルである。しかし、マイクログラスファイバーは様々なグレードで市販されているため(0.4、0.6、0.8など、又は0.1~0.6マイクロメートル、0.1~0.8マイクロメートル、0.1~1マイクロメートル、0.5~5マイクロメートルなど、グレードの繊維の平均直径を参照)、完成紙料に使用されるマイクログラスは、1つのグレードのみ、又は少なくとも2つの異なるグレードの混合物であってもよい。
【0042】
上述のようにして、上述の完成紙料の基材を製造する場合、合成繊維、及び場合によりバインダー繊維の比較的緻密な層が、最初にワイヤ上に配置され、その後、使用されるならば、上層用の完成紙料の様々な繊維の最も重い繊維として、マイクログラスファイバーが、すでにワイヤ上に存在する合成繊維又は合成バインダー繊維の層上に定着し、第2の完成紙料の合成繊維及び場合によりバインダー繊維が、マイクログラスファイバー上に定着することが、二層製造により保証される。したがって、基材を形成するためのウェブが加熱されてフィルターに結合されると、基材の両面に強力な合成二成分繊維のマットができ、基材に優れた内部強度をもたらす。
【0043】
本発明の第7の好ましい実施形態のさらに別の変形例に従って、前置フィルター基材の製造に使用されるヘッドボックスは、例えば米国特許第3,598,696号で議論されるように、垂直方向に、それぞれ独自のスライス開口を有する3つの別個のチャンバーに分割される。ヘッドボックスの各チャンバーには、繊維懸濁液又はそれ自体の完成紙料が備えられており、それにより、実際の前置フィルター基材は、互いに絡み合った3層を有する繊維状不織布ウェブに形成される。3つの完成紙料はすべて異なっていてもよく、又は2つの完成紙料が同じであり1つが異なっていてもよく、それにより、後者の場合、外層が同じ完成紙料で、異なる完成紙料の中央層が形成されることが有利である。当然、3つの完成紙料がすべて同じである場合もある。特定の例に従って、前置フィルター基材の2つの最外層は、少なくとも第1のバインダー(好ましくは二成分繊維)及び合成繊維を含む完成紙料で形成され、中央層は、少なくとも第1のバインダー(好ましくは二成分繊維)、マイクログラスファイバー及び合成繊維で形成される。
【0044】
本発明の第7の好ましい実施形態のさらなる変形例に従って、上記のウェットレイド方法の好ましいバージョンを用いて3層基材を製造する場合、ワイヤ上に第1の層、すなわち最下層、及び第3の層、すなわち最上層を形成するための第1及び第3の完成紙料は、それぞれ5~30重量%、好ましくは5~20重量%の合成繊維;0~20重量%、好ましくは5~15重量%の二成分繊維又は多成分繊維;及び0~10重量%、好ましくは0~5重量%の第1のバインダー樹脂及び/又は完全に溶融可能な繊維を含む。第1層上にウェットレイドされた第2の層用の第2の完成紙料は、15~25重量%、好ましくは15~20重量%の合成繊維;0~20重量%、好ましくは10~20重量%の二成分繊維又は多成分繊維;10~30重量%、好ましくは15~20重量%のマイクログラスファイバー;及び0~10重量%、好ましくは0~5重量%の第1のバインダー樹脂及び/又は完全に溶融可能な繊維を含む。上記のパーセンテージ値は、基材全体の乾燥重量を示す。合成繊維は、例えば6又は10マイクロメートルの繊維である同じ品質のもの、又は異なる直径を有する繊維の混合物であってもよい。マイクログラスファイバーの平均直径は0.01~5マイクロメートルで、その大部分、すなわち繊維の60%超が平均直径0.1~2マイクロメートルである。しかし、マイクログラスファイバーは様々なグレードで市販されているため(0.4、0.6、0.8など、又は0.1~0.6マイクロメートル、0.1~0.8マイクロメートル、0.1~1マイクロメートル、0.5~5マイクロメートルなど、グレードの繊維の平均直径を参照)、完成紙料に使用されるマイクログラスは、1つのグレードのみ、又は少なくとも2つの異なるグレードの混合物であってもよい。
【0045】
上述のようにして、上述の完成紙料の基材を製造する場合、合成繊維及びバインダー繊維の比較的緻密な層が、最初にワイヤ上に配置され、その後、第2の層用の第2の完成紙料の様々な繊維の最も重い繊維として、マイクログラスが、すでにワイヤ上に存在する合成バインダー繊維の層上に定着し、第2及び第3の完成紙料の合成繊維及びバインダー繊維が、マイクログラスファイバー上に定着することが、三層製造により保証される。したがって、基材を加熱及び圧縮すると、基材の両面に強力な合成バインダー繊維のマットができ、基材に優れた内部強度をもたらす。
【0046】
各変形例では、ワイヤに堆積した後、繊維状不織布ウェブから水を排出又は引き出して、ウェブを所望の乾燥度まで乾燥させる。ウェットレイ(wet-laying)を使用する明らかな利点は、各層において勾配構造が形成される、すなわち、基材における定着の観点から常に様々な特性を有する繊維が存在するので、特定の繊維がより迅速に沈降し、したがって、基材の上にある種の繊維がよりゆっくりと留まるため、勾配構造が形成される、すなわち深層濾過を可能にする構造であることである。
【0047】
本発明の第8の好ましい実施形態に従って、繊維状不織布ウェブは、公知の乾式堆積方法、例えばカーディング、エアレイ、スパンレイド、メルトブローン又はそれらの組み合わせを使用することによって、表面にエアレイド又はドライレイドすることもできる。
【0048】
ウェブ形成前に第1のバインダーが繊維の混合物に添加されず、その使用が必要であると考えられる場合、第1のバインダーは、スプレー、グラビアコーティング、含浸、散布などにより繊維状不織布ウェブに適用され、その後、ウェブを加熱して、バインダー繊維及び/又はバインダー樹脂を溶融し、様々な繊維を互いに結合させることができる。
【0049】
最後に、必要に応じて、前置フィルター基材に、水、湿度、炭化水素及び/又はアルコールに対して忌避性にする手段を提供してもよい。そのような化学的手段は、シリコーン又はフルオロケミカルで形成されてもよく、又はそれらを含んでもよい。化学物質は、完成紙料の形成前に基材を形成する繊維の1つ以上に配置されるか、完成紙料にそれぞれの液体化学物質を提供するか、あるいはウェブに例えば含浸又はコーティングによって化学物質を提供してもよい。
【0050】
前置フィルター基材の上記の様々な実施形態を考慮して、上述の前置フィルター基材のいずれの実施形態も、以下の例及び下記の製品例の両方で議論された様々な微細フィルター基材の実施形態でも使用できることを理解されたい。
【0051】
<微細フィルター基材(Fine-filter substrate)>
微細フィルター基材は、第2のバインダー、合成繊維及び/又は無機繊維の少なくともいずれかを含む。第2のバインダーは、二成分繊維、多成分繊維、完全に溶融可能な繊維、及びバインダー樹脂のうちの少なくとも1つを含む。合成繊維は、好ましくは、平均直径が0.1~100マイクロメートルであるポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)、PBT、ポリアミド(PA)、アクリル、レーヨン、アラミド、ナイロン、ポリオレフィン、ポリエステル、リヨセル、又はビスコース繊維、あるいは無機繊維から選択される。無機繊維は、マイクログラス、炭素又はシリカ、好ましくは平均直径が0.01~5マイクロメートルであるマイクログラスファイバーである。バインダー樹脂は、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、多環芳香族樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリ尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアセチル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、レゾルシノール樹脂、スチレン樹脂、尿素フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、又はそれらの組み合わせの少なくとも1つを含む。微細フィルター基材は、上記の繊維に加えて、平均直径が1~30マイクロメートルであるチョップストランド(chop-strand)グラスファイバーを含んでもよい。
【0052】
一般に、本発明の第9の好ましい実施形態に従って、本発明の微細フィルター基材は、20~60重量%、好ましくは20~50重量%の合成繊維;10~80重量%、好ましくは15~70重量%のマイクログラスファイバー及び2~15重量%、好ましくは3~10重量%の第2のバインダーを含む。
【0053】
本発明の第10の好ましい実施形態に従って、微細フィルター基材は、35~55重量%、好ましくは40~50重量%の合成繊維;10~25重量%、好ましくは15~20重量%のマイクログラスファイバー;20~45重量%、好ましくは30~40重量%の二成分繊維又は多成分繊維、及び2~15重量%、好ましくは3~10重量%の第2のバインダーを含む。
【0054】
本発明の第11の好ましい実施形態に従って、微細フィルター基材は、15~40重量%、好ましくは20~35重量%の合成繊維、50~80重量%、好ましくは60~70重量%のマイクログラスファイバー及び2~15重量%、好ましくは3~10重量%の第2のバインダーを含む。
【0055】
微細フィルター基材は、ウェブ形成の任意の公知の手段によって製造することができる。したがって、エアレイド(air-laid)及びウェットレイド(wet-laid)の両方の製造プロセスを使用することができる。しかし、その多様性のために、ウェットレイ(wet-laying)が製造の好ましい選択肢である。したがって、前置フィルター基材の製造に関連して前述した基本的なウェットレイ方法はすべて、ここでも適用できる。言い換えれば、微細フィルター基材は、単層、2層、又は多層基材として製造されてもよく、勾配細孔構造フィルター、すなわち深層型濾過材をもたらす。
【実施例】
【0056】
<例1-E10濾過材>
本発明の第12の好ましい実施形態による濾過材は、E10濾過材、すなわち少なくとも85%のDEHS効率を有するフィルターについてBS EN 1822によって設定された要件を満たすように設計されている。濾過材の総坪量は50g/m2~150g/m2、好ましくは約70~110g/m2である。濾過材は、上記のような前置フィルター基材を含む。
【0057】
E10濾過材は、上述のように、この実施形態では、その製造に関して、上述の前置フィルター基材と同様に、別の基材、すなわち、微細フィルター基材を含む。しかし、微細フィルター基材は、上記の前置フィルター基材のバージョンとは幾分異なる組成を有してもよい。微細フィルター基材の所望の動作のために、その完成紙料が10~80重量%、好ましくは10~25重量%、より好ましくは15~20重量%のマイクログラスファイバー及び適切な形状の少なくとも5重量%の第2のバインダーを含むことが好ましいが、必須ではない特徴である。第2のバインダーは、前置フィルター基材で使用されてもよい同じバインダー、すなわち、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、多環芳香族樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリ尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアセチル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、レゾルシノール樹脂、スチレン樹脂、尿素フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、酢酸ビニル樹脂及び塩化ビニル樹脂、又はそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つであってもよく、あるいは二成分繊維、例えばPET/co-PET、PET/co-PE、PET/co-PP、又はPET/co-PA繊維(より詳細には上記の「定義」を参照)など、又は多成分繊維であってもよく、あるいはPE(ポリエチレン)、PP、ポリ塩化ビニル(PVC)及びポリビニルアルコール(PVA)繊維の少なくとも1つなどの完全に溶融可能な繊維であってもよい。第2のバインダーは、好ましくは、2~15重量%、好ましくは3~10重量%のバインダー又は完全に溶融可能な繊維、及び20~45重量%、好ましくは30~40重量%の二成分繊維又は多成分繊維を含む。さらに、完成紙料は、20~60重量%、好ましくは35~55重量%、より好ましくは40~50重量%の合成繊維も含む。また、二成分繊維又は多成分繊維を使用して、バインダー及び合成繊維の少なくとも一部を置き換えることができ、又はその逆も可能であり、すなわち二成分繊維又は多成分繊維の量を増やすことにより、バインダー及び合成繊維の量を減らすことができ、あるいは二成分繊維又は多成分繊維の量を減らすことにより、バインダー及び合成繊維の量を増やすことができる。
【0058】
微細フィルター基材に関しては、前置フィルター基材に関連して上述したように、2層又は3層のウェブで形成されてもよい。
【0059】
最後に、必要に応じて、微細フィルター基材に、水、湿度、炭化水素及び/又はアルコールに対して忌避性にするための手段を提供してもよい。そのような化学的手段は、シリコーン又はフルオロケミカルで形成されてもよく、又はそれらを含んでもよい。化学物質は、完成紙料の形成前に微細フィルター基材を形成する繊維の1つ以上に配置されるか、完成紙料にそれぞれの液体化学物質を提供するか、あるいはウェブに例えば含浸又はコーティングによって化学物質を提供してもよい。
【0060】
E10濾過材を製造するために、例えばグラビアコーティング、カーテンコーティング又はスプレーにより、適切な第3のバインダー、すなわち、例えばエチレン酢酸ビニル(EVA)共重合体、ポリオレフィン(PO)、アタクチックポリプロピレン(PP又はAPP)、ポリブテン-1、酸化ポリエチレン、ポリアミド及びポリエステル、スチレンブロック共重合体(SBC)などのホットメルトバインダー又は接着剤、好ましくはポリウレタンホットメルト接着剤を基材の1つで、例えば3~10g/m2、好ましくは約5g/m2で適用することにより、2つの基材は互いに積層され、その後、基材を組み合わせてパルス洗浄可能な濾過材を形成する。2つの基材を一緒に積層する別の方法は、基材の少なくとも1つを加熱して、その中の熱可塑性物質を粘着性にし、その後基材を組み合わせてパルス洗浄可能な濾過材を形成することである。上記の熱可塑性物質は、溶融可能な繊維及び二成分繊維又は多成分繊維の両方を含む。
【0061】
本発明の第12の好ましい実施形態の変形例に従って、ウェブのワイヤ側、すなわち、ウェブの製造中にワイヤに対向して位置するウェブの側は、最終的なE10濾過材において互いに対向して配置される。本発明の別の変形例に従って、一方のウェブのワイヤ側は、最終的なE10濾過材の他方のウェブのワイヤから離れた側に対向して配置される。本発明の第12の好ましい実施形態のさらなる変形例に従って、ウェブのワイヤ側は、濾過材の外面として、すなわち、製造段階でワイヤとは反対側を向けている側が、最終的なE10濾過材で互いに対向して配置されるように配置される。濾過材を使用する場合、それは、汚染側として配置されるワイヤ側として、すなわち、濾過材への汚染された流体の流れに対向して配置されるワイヤ側として、又は清浄側としてのワイヤ側として、すなわち、汚染された流体の流れとは反対側を向けているワイヤ側として使用することができる。
【0062】
例示的なE10製品として、前置フィルター基材及び微細フィルター基材を含む濾過材を挙げることができる。前置フィルター基材は、上記の本発明の第7の好ましい実施形態の変形例に従って、表面層が同様の完成紙料であり、中央層が異なる完成紙料であるように、2つの異なる完成紙料を備えた3層ヘッドボックスを使用することにより製造される。前置フィルター基材は、直径が6マイクロメートルである33重量%のPET繊維、直径が10マイクロメートルである10重量%のPET繊維、平均直径が0.1~0.6マイクロメートルである13重量%のマイクログラスファイバー、平均直径が0.1~1.0マイクロメートルである5重量%のマイクログラスファイバー、平均直径が8~25マイクロメートルである34重量%の二成分繊維、5重量%のバインダー又は溶融可能な繊維を含む。
【0063】
微細フィルター基材は前置フィルター基材と同等である。したがって、前置フィルター基材及び微細フィルター基材の両方の引張強度は、標準のScan-P38:80、すなわちISO 1924-2:1994に従って、600~700N/m程度の機械方向(MD)、及び400~500N/m程度の機械交差方向(CD)で決定される。同様に、前置フィルター基材及び微細フィルター基材の両方が、標準のScan-P24、ペーパーアンドボード、又はISO 2758に従って決定された、同じミューレン破裂強度を有している。基材の乾燥及び湿潤ミューレン破裂強度は、いずれも100~150kPa程度である。Porometer 3G(米国フロリダ州ボイントンビーチのQuantachrome Instruments)を使用して決定された平均流量細孔径(mean flow pore size)は、8~10マイクロメートルの間で変化する。微細フィルター基材は、当然ながら、同じ平均流量細孔値を有している。
【0064】
積層されたE10製品の引張強度は、MD方向で1500~1600N/m程度であり、CD方向で800~900N/m程度であり、ミューレン破裂強度(湿潤及び乾燥の両方)は、200~400kPa以内、好ましくは250~400kPa以内であり、及び平均流量細孔径は、5~6マイクロメートルである。
【0065】
上記の濾過材の積層構造により、濾過材の強度特性が優れているため、濾過材はパルス洗浄、すなわち、濾過材の通常の作動方向とは反対の方向の強力な流体ジェットに耐えることができる。
【0066】
<例2-E12濾過材>
本発明の第13の好ましい実施形態による濾過材は、E12濾過材に対してBS EN 1822によって設定された要件を満たすように設計されており、すなわち、DEHS効率は少なくとも99.5%である。本発明のE12濾過材は、50~200g/m2、好ましくは80~150g/m2、より好ましくは100~130g/m2の総坪量を有する。本発明のE12濾過材は、上記の前置フィルター基材に対応する、坪量が20g/m2~80g/m2、好ましくは30g/m2~70g/m2、より好ましくは35~50g/m2の前置フィルター基材、及び坪量が30g/m2~180g/m2、好ましくは50~120g/m2、より好ましくは約60~90g/m2の微細フィルター基材を含む。
【0067】
微細フィルター基材は、例えば、PET、PBT、PP、PA、アクリル、リヨセル、レーヨン、アラミド、ナイロン、ポリオレフィン、ポリエステル、ビスコース繊維などの合成繊維;マイクログラスファイバー;及び第2のバインダーで形成される。第2のバインダーは、二成分繊維、多成分繊維、完全に溶融可能な繊維及びバインダー樹脂のうちの少なくとも1つを含む。バインダー樹脂は、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、多環芳香族樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリ尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアセチル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、レゾルシノール樹脂、スチレン樹脂、尿素フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、酢酸ビニル樹脂及び塩化ビニル樹脂又はそれらの組み合わせの少なくとも1つを含む。微細フィルター基材は、10~80重量%、好ましくは50~80重量%、より好ましくは60~70重量%のマイクログラスファイバー;20~60重量%、好ましくは15~40重量%、より好ましくは20~35重量%の合成繊維;及び2~15重量%、好ましくは約3~10重量%の第2のバインダー(粉末、顆粒又は液体バインダーを含む)を含む。第2のバインダーに関して、二成分繊維又は多成分繊維も使用できることを理解されたい。しかし、このような場合、合成繊維及びバインダーの両方の量を減らす必要がある。例えば、合成繊維の半分を二成分繊維又は多成分繊維で置き換えることにより、バインダーの量もほぼ半分にすることができる。マイクログラスファイバーの平均直径は0.01~5マイクロメートルで、その大部分、すなわち繊維の60%超が平均直径0.1~2マイクロメートルである。しかし、マイクログラスファイバーは様々なグレードで市販されているため(0.4、0.6、0.8など、又は0.1~0.6マイクロメートル、0.1~0.8マイクロメートル、0.1~1マイクロメートル、0.5~5マイクロメートルなど、グレードの繊維の平均直径を参照)、完成紙料に使用されるマイクログラスは、1つのグレードのみ、又は少なくとも2つのグレードの混合物であってもよい。
【0068】
本発明の第13の実施形態の好ましい変形例に従って、少なくとも2つの異なるグレード又は直径範囲のマイクログラスファイバーが使用され、例えば、平均直径が1~3マイクロメートルのグレードに由来する約10~20重量%のマイクログラス、及び平均直径が0.1~1.0マイクロメートルのグレードに由来する残り(90~80重量%)のマイクログラスが使用される。好ましくは、合成繊維は、平均直径が10~15マイクロメートルであるPET繊維である。
【0069】
微細フィルター基材用のウェブは、市販の長網抄紙機、ワイヤシリンダー、スティーブンスフォーマー、ロトフォーマー、インバーフォーマー、ベンティフォーマー、及び傾斜デルタフォーマーなどの任意の既知の製紙型機械で製造することができる。微細フィルター基材用の繊維状ウェブが適切な乾燥状態まで乾燥した後、微細フィルター基材を作成するための完成紙料に添加しない限り、第2のバインダーは、スプレー、グラビアコーティング、含浸、散布などによってウェブに適用され、その後、ウェブを加熱して、様々な繊維を互いに結合させる。
【0070】
最後に、必要に応じて、微細フィルター基材に、水、湿度、炭化水素及び/又はアルコールに対して忌避性にするための手段を提供してもよい。そのような化学的手段は、シリコーン又はフルオロケミカルで形成されてもよく、又はそれらを含んでもよい。化学物質は、完成紙料の形成前に微細フィルター基材を形成する繊維の1つ以上に配置されるか、完成紙料にそれぞれの液体化学物質を提供するか、あるいはウェブに例えば含浸又はコーティングによって化学物質を提供してもよい。
【0071】
E12濾過材を製造するために、例えばグラビアコーティング、カーテンコーティング又はスプレーにより、適切な第3のバインダー、すなわち、例えばエチレン酢酸ビニル(EVA)共重合体、ポリオレフィン(PO)、アタクチックポリプロピレン(PP又はAPP)、ポリブテン-1、酸化ポリエチレン、ポリアミド及びポリエステル、スチレンブロック共重合体(SBC)などのホットメルトバインダー又は接着剤、好ましくはポリウレタンホットメルト接着剤を基材の1つで、例えば3~10g/m2、好ましくは約5g/m2で適用することにより、2つの基材、すなわち前置フィルター基材及び微細フィルター基材は互いに積層され、その後、基材を組み合わせてパルス洗浄可能な濾過材を形成する。2つの基材を一緒に積層する別の方法は、基材の少なくとも1つを加熱して、その中の熱可塑性物質を粘着性にし、その後基材を組み合わせてパルス洗浄可能な濾過材を形成することである。ここでの熱可塑性樹脂とは、溶融可能な繊維あるいは二成分繊維又は多成分繊維のいずれかを指す。
【0072】
本発明の第13の好ましい実施形態の別の変形例に従って、基材のワイヤ側、すなわち、基材の製造中にワイヤに対向して位置するウェブの側は、最終的なE12濾過材において互いに対向して配置される。本発明の第13の好ましい実施形態のさらに別の変形例に従って、一方のウェブのワイヤ側は、最終的なE12濾過材の他方のウェブのワイヤから離れた側に対向して配置される。本発明の第13の好ましい実施形態のさらなる変形例に従って、ウェブのワイヤ側は、濾過材の外面として、すなわち、製造段階でワイヤとは反対側を向けている側が、最終的なE12濾過材で互いに対向して配置されるように配置される。濾過材を使用する場合、それは、汚染側として配置されるワイヤ側として、すなわち、濾過材への汚染された流体の流れに対向して配置されるワイヤ側として、又は清浄側としてのワイヤ側として、すなわち、汚染された流体の流れとは反対側を向けているワイヤ側として使用することができる。
【0073】
例示的なE12製品として、前置フィルター基材及び微細フィルター基材を含む濾過材を挙げることができる。前置フィルター基材は、上記の本発明の第7の好ましい実施形態の変形例に従って、表面層が同様の完成紙料であり、中央層が異なる完成紙料であるように、2つの異なる完成紙料を備えた3層ヘッドボックスを使用することにより製造される。前置フィルター基材は、直径が6マイクロメートルである33重量%のPET繊維、直径が10マイクロメートルである10重量%のPET繊維、平均直径が0.1~0.6マイクロメートルである13重量%のマイクログラスファイバー、平均直径が0.1~1.0マイクロメートルである5重量%のマイクログラスファイバー、平均直径が8~25マイクロメートルである34重量%の二成分繊維、5重量%のバインダー又は溶融可能な繊維を含む。前置フィルター基材のMD引張強度は600~700N/m程度であり、CD引張強度は400~500N/m程度であり、平均流量細孔径は8~10マイクロメートルの間で変化する。
【0074】
微細フィルター基材は、平均直径が10~15マイクロメートルである28重量%のPET繊維、平均直径が0.1~1.0マイクロメートルである56重量%のマイクログラスファイバー、平均直径が1~3マイクロメートルである9重量%のマイクログラスファイバー、及び7重量%のバインダー又は溶融可能な繊維を含む。微細フィルター基材のMD引張強度は1800~1900N/m程度であり、CD引張強度は800~900N/m程度であり、ミューレン破裂強度(湿潤及び乾燥の両方)は50~100kPa以内であり、平均流量細孔径は5~6マイクロメートルの間で変化する。
【0075】
積層されたE12製品のMD引張強度は2000~2100N/m程度であり、CD引張強度は900~1000N/m程度であり、ミューレン破裂強度(湿潤及び乾燥の両方)は200~400kPa以内であり、平均流量細孔径は3~4マイクロメートルである。
【0076】
<例3-H13濾過材>
本発明の第15の好ましい実施形態による濾過材は、H13濾過材に対してBS EN 1822によって設定された要件を満たすように設計されており、すなわち、DEHS効率は少なくとも99.95%である。本発明のH13濾過材は、50~200g/m2、好ましくは80~150g/m2、より好ましくは100~130g/m2の総坪量を有する。本発明のH13濾過材は、上記の前置フィルター基材に対応する、坪量が20g/m2~80g/m2、好ましくは30g/m2~70g/m2、より好ましくは35~50g/m2の前置フィルター基材、及び坪量が30g/m2~100g/m2、好ましくは50~90g/m2、より好ましくは約60g/m2の微細フィルター基材を含む。
【0077】
微細フィルター基材は、例えば、PET、PP、PBT、PA、アクリル、リヨセル、レーヨン、アラミド、ナイロン、ポリオレフィン、ポリエステル、ビスコース繊維などの合成繊維;マイクログラスファイバー;及び第2のバインダーで形成される。第2のバインダーは、二成分繊維、多成分繊維、完全に溶融可能な繊維及びバインダー樹脂のうちの少なくとも1つを含む。バインダー樹脂は、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、多環芳香族樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリ尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアセチル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、レゾルシノール樹脂、スチレン樹脂、尿素フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、酢酸ビニル樹脂及び塩化ビニル樹脂又はそれらの組み合わせの少なくとも1つを含む。微細フィルター基材は、10~80重量%、好ましくは50~80重量%、より好ましくは約60~70重量%のマイクログラスファイバー;20~60重量%、好ましくは15~40重量%、より好ましくは約20~35重量%の合成繊維及び2~15重量%、好ましくは約3~10重量%の第2のバインダー(粉末、顆粒又は液体バインダーを含む)を含む。第2のバインダーに関して、二成分繊維又は多成分繊維も使用できることを理解されたい。しかし、このような場合、合成繊維及びバインダーの両方の量を減らす必要がある。例えば、合成繊維の半分を二成分繊維又は多成分繊維で置き換えることにより、バインダーの量もほぼ半分にすることができる。マイクログラスファイバーの平均直径は0.01~5マイクロメートルで、その大部分、すなわち繊維の60%超が平均直径0.1~2マイクロメートルである。しかし、マイクログラスファイバーは様々なグレードで市販されているため(0.4、0.6、0.8など、又は0.1~0.6マイクロメートル、0.1~0.8マイクロメートル、0.1~1マイクロメートル、0.5~5マイクロメートルなど、グレードの繊維の平均直径を参照)、完成紙料に使用されるマイクログラスは、1つのグレードのみ、又は少なくとも2つのグレードの混合物であってもよい。
【0078】
本発明の第15の実施形態の好ましい変形例に従って、少なくとも2つの異なるグレード又は直径範囲のマイクログラス、すなわち、平均直径が1~3マイクロメートルのグレードに由来する約3~10重量%のマイクログラス、及び平均直径が0.1~1.0マイクロメートルのグレードに由来する残り(97~90重量%)のマイクログラスが使用される。好ましくは、合成繊維は、平均直径が10~15マイクロメートルであるPET繊維である。
【0079】
微細フィルター基材用のウェブは、市販の長網抄紙機、ワイヤシリンダー、スティーブンスフォーマー、ロトフォーマー、インバーフォーマー、ベンティフォーマー、及び傾斜デルタフォーマーなどの任意の既知の製紙型機械で製造することができる。微細フィルター基材用の繊維状ウェブが適切な乾燥状態まで乾燥した後、微細フィルター基材を作成するための完成紙料に添加しない限り、第2のバインダーは、スプレー、グラビアコーティング、含浸、散布などによってウェブに適用され、その後、ウェブを加熱して、様々な繊維を互いに結合させる。
【0080】
最後に、必要に応じて、微細フィルター基材に、水、湿度、炭化水素及び/又はアルコールに対して忌避性にするための手段を提供してもよい。そのような化学的手段は、シリコーン又はフルオロケミカルで形成されてもよく、又はそれらを含んでもよい。化学物質は、完成紙料の形成前に微細フィルター基材を形成する繊維の1つ以上に配置されるか、完成紙料にそれぞれの液体化学物質を提供するか、あるいはウェブに例えば含浸又はコーティングによって化学物質を提供してもよい。
【0081】
H13濾過材を製造するために、例えばグラビアコーティング、カーテンコーティング又はスプレーにより、適切な第3のバインダー、すなわち、例えばエチレン酢酸ビニル(EVA)共重合体、ポリオレフィン(PO)、アタクチックポリプロピレン(PP又はAPP)、ポリブテン-1、酸化ポリエチレン、ポリアミド及びポリエステル、スチレンブロック共重合体(SBC)などのホットメルトバインダー又は接着剤、好ましくはポリウレタンホットメルト接着剤を基材の1つで、例えば3~10g/m2、好ましくは約5g/m2で適用することにより、2つの基材、すなわち前置フィルター基材及び微細フィルター基材は互いに積層され、その後、基材を組み合わせてパルス洗浄可能な濾過材を形成する。2つの基材を一緒に積層する別の方法は、基材の少なくとも1つを加熱して、その中の熱可塑性物質を粘着性にし、その後基材を組み合わせてパルス洗浄可能な濾過材を形成することである。ここでの熱可塑性樹脂とは、溶融可能な繊維あるいは二成分繊維又は多成分繊維のいずれかを指す。
【0082】
本発明の第15の好ましい実施形態の別の変形例に従って、基材のワイヤ側、すなわち、基材の製造中にワイヤに対向して位置するウェブの側は、最終的なH13濾過材において互いに対向して配置される。本発明の第15の好ましい実施形態のさらに別の変形例に従って、一方の基材のワイヤ側は、最終的なH13濾過材の他方の基材のワイヤから離れた側に対向して配置される。本発明の第15の好ましい実施形態のさらなる変形例に従って、ウェブのワイヤ側は、濾過材の外面として、すなわち、製造段階でワイヤとは反対側を向けている側が、最終的なH13濾過材で互いに対向して配置されるように配置される。濾過材を使用する場合、それは、汚染側として配置されるワイヤ側として、すなわち、濾過材への汚染された流体の流れに対向して配置されるワイヤ側として、又は清浄側としてのワイヤ側として、すなわち、汚染された流体の流れとは反対側を向けているワイヤ側として使用することができる。
【0083】
例示的なH13製品として、前置フィルター基材及び微細フィルター基材を含む濾過材を挙げることができる。前置フィルター基材は、上記の本発明の第7の好ましい実施形態の変形例に従って、表面層が同様の完成紙料であり、中央層が異なる完成紙料であるように、2つの異なる完成紙料を備えた3層ヘッドボックスを使用することにより製造される。前置フィルター基材は、直径が6マイクロメートルである33重量%のPET繊維、直径が10マイクロメートルである10重量%のPET繊維、平均直径が0.1~0.6マイクロメートルである13重量%のマイクログラスファイバー、平均直径が0.1~1.0マイクロメートルである5重量%のマイクログラスファイバー、平均直径が8~25マイクロメートルである34重量%の二成分繊維、5重量%のバインダー又は溶融可能な繊維を含む。前置フィルター基材のMD引張強度は600~700N/m程度であり、CD引張強度は400~500N/m程度であり、平均流量細孔径は8~10マイクロメートルの間で変化する。
【0084】
微細フィルター基材は、平均直径が10~15マイクロメートルである28重量%のPET繊維、平均直径が0.1~1.0マイクロメートルである62重量%のマイクログラスファイバー、平均直径が1~3マイクロメートルである3重量%のマイクログラスファイバー、及び7重量%のバインダー又は溶融可能な繊維を含む。微細フィルター基材のMD引張強度は1800~1900N/m程度であり、CD引張強度は800~900N/m程度であり、ミューレン破裂強度(湿潤及び乾燥の両方)は50~100kPa以内であり、平均流量細孔径は4~5マイクロメートルの間で変化する。
【0085】
積層されたH13製品のMD引張強度は2000~2100N/m程度であり、CD引張強度は900~1000N/m程度であり、ミューレン破裂強度(湿潤及び乾燥の両方)は200~400kPa以内であり、平均流量細孔径は2.5~3.5マイクロメートルである。
【0086】
<例4-H14濾過材>
本発明の第16の好ましい実施形態による濾過材は、H14濾過材に対してBS EN 1822によって設定された要件を満たすように設計されており、すなわち、DEHS効率は少なくとも99.995%である。本発明のH14濾過材は、50~200g/m2、好ましくは80~150g/m2、より好ましくは100~130g/m2の総坪量を有する。本発明のH14濾過材は、上記の前置フィルター基材に対応する、坪量が20g/m2~80g/m2、好ましくは30g/m2~70g/m2、より好ましくは35~50g/m2の前置フィルター基材、及び坪量が30g/m2~180g/m2、好ましくは50~120g/m2、より好ましくは60~90g/m2の微細フィルター基材を含む。
【0087】
微細フィルター基材は、例えば、PET、PP、PBT、PA、アクリル、リヨセル、レーヨン、アラミド、ナイロン、ポリオレフィン、ポリエステル、ビスコース繊維などの合成繊維;マイクログラスファイバー、及びバインダー、すなわち、例えば、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、多環芳香族樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリ尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアセチル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、レゾルシノール樹脂、スチレン樹脂、尿素フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、酢酸ビニル樹脂及び塩化ビニル樹脂又はその任意の組み合わせの少なくとも1つで形成される。微細フィルター基材は、10~80重量%、好ましくは50~80重量%、好ましくは約60~70重量%のマイクログラスファイバー、20~60重量%、好ましくは15~40重量%、より好ましくは約20~35重量%の合成繊維及び2~15重量%、好ましくは約3~10重量%の第2のバインダー(粉末、顆粒又は液体バインダーを含む)を含む。第2のバインダーに関して、二成分繊維又は多成分繊維も使用できることを理解されたい。しかし、このような場合、合成繊維及びバインダーの両方の量を減らす必要がある。例えば、合成繊維の半分を二成分繊維又は多成分繊維で置き換えることにより、バインダーの量もほぼ半分にすることができる。マイクログラスファイバーの平均直径は0.01~5マイクロメートルで、その大部分、すなわち繊維の60%超が平均直径0.1~2マイクロメートルである。しかし、マイクログラスファイバーは様々なグレードで市販されているため(0.4、0.6、0.8など、又は0.1~0.6マイクロメートル、0.1~0.8マイクロメートル、0.1~1マイクロメートル、0.5~5マイクロメートルなど、グレードの繊維の平均直径を参照)、完成紙料に使用されるマイクログラスは、1つのグレードのみ、又は少なくとも2つのグレードの混合物であってもよい。
【0088】
本発明の第16の実施形態の好ましい変形例に従って、少なくとも2つの異なる供給源又は直径範囲からのマイクログラス、すなわち、平均直径が0.1~0.8マイクロメートルの供給源に由来する約25~40重量%のマイクログラス、及び平均直径が0.1~1.0マイクロメートルの供給源に由来する残り(75~60重量%)のマイクログラスが使用される。好ましくは、合成繊維は、平均直径が10~15マイクロメートルであるPET繊維である。
【0089】
微細フィルター基材用のウェブは、市販の長網抄紙機、ワイヤシリンダー、スティーブンスフォーマー、ロトフォーマー、インバーフォーマー、ベンティフォーマー、及び傾斜デルタフォーマーなどの任意の既知の製紙型機械で製造することができる。微細フィルター基材用の繊維状ウェブが適切な乾燥状態まで乾燥した後、微細フィルター基材を作成するための完成紙料に添加しない限り、第2のバインダーは、スプレー、グラビアコーティング、含浸、散布などによってウェブに適用され、その後、ウェブを加熱して、様々な繊維を互いに結合させる。
【0090】
最後に、必要に応じて、微細フィルター基材に、水、湿度、炭化水素及び/又はアルコールに対して忌避性にするための手段を提供してもよい。そのような化学的手段は、シリコーン又はフルオロケミカルで形成されてもよく、又はそれらを含んでもよい。化学物質は、完成紙料の形成前に微細フィルター基材を形成する繊維の1つ以上に配置されるか、完成紙料にそれぞれの液体化学物質を提供するか、あるいはウェブに例えば含浸又はコーティングによって化学物質を提供してもよい。
【0091】
H14濾過材を製造するために、例えばグラビアコーティング、カーテンコーティング又はスプレーにより、適切な第3のバインダー、すなわち、例えばエチレン酢酸ビニル(EVA)共重合体、ポリオレフィン(PO)、アタクチックポリプロピレン(PP又はAPP)、ポリブテン-1、酸化ポリエチレン、ポリアミド及びポリエステル、スチレンブロック共重合体(SBC)などのホットメルトバインダー又は接着剤、好ましくはポリウレタンホットメルト接着剤を基材の1つで、例えば3~10g/m2、好ましくは約5g/m2で適用することにより、2つの基材、すなわち前置フィルター基材及び微細フィルター基材は互いに積層され、その後、基材を組み合わせてパルス洗浄可能な濾過材を形成する。
【0092】
本発明の第16の好ましい実施形態の別の変形例に従って、ウェブのワイヤ側、すなわち、ウェブの製造中にワイヤに対向して位置するウェブの側は、最終的なH14濾過材において互いに対向して配置される。本発明の第16の好ましい実施形態のさらに別の変形例に従って、一方のウェブのワイヤ側は、最終的なH14濾過材の他方のウェブのワイヤから離れた側に対向して配置される。本発明の第16の好ましい実施形態のさらなる変形例に従って、ウェブのワイヤ側は、濾過材の外面として、すなわち、製造段階でワイヤとは反対側を向けている側が、最終的なH14濾過材で互いに対向して配置されるように配置される。濾過材を使用する場合、それは、汚染側として配置されるワイヤ側として、すなわち、濾過材への汚染された流体の流れに対向して配置されるワイヤ側として、又は清浄側としてのワイヤ側として、すなわち、汚染された流体の流れとは反対側を向けているワイヤ側として使用することができる。例示的なH14製品として、前置フィルター基材及び微細フィルター基材を含む濾過材を挙げることができる。前置フィルター基材は、上記の本発明の第7の好ましい実施形態の変形例に従って、表面層が同様の完成紙料であり、中央層が異なる完成紙料であるように、2つの異なる完成紙料を備えた3層ヘッドボックスを使用することにより製造される。前置フィルター基材は、直径が6マイクロメートルである33重量%のPET繊維、直径が10マイクロメートルである10重量%のPET繊維、平均直径が0.1~0.6マイクロメートルである13重量%のマイクログラスファイバー、平均直径が0.1~1.0マイクロメートルである5重量%のマイクログラスファイバー、平均直径が8~25マイクロメートルである34重量%の二成分繊維、及び5重量%のバインダー又は溶融可能な繊維を含む。前置フィルター基材のMD引張強度は600~700N/m程度であり、CD引張強度は400~500N/m程度であり、平均流量細孔径は8~10マイクロメートルの間で変化する。
【0093】
微細フィルター基材は、平均直径が10~15マイクロメートルである28重量%のPET繊維、平均直径が0.1~0.8マイクロメートルである23重量%のマイクログラスファイバー、平均直径が0.1~1.0マイクロメートルである42重量%のマイクログラスファイバー、及び7重量%のバインダー又は溶融可能な繊維を含む。微細フィルター基材のMD引張強度は1800~1900N/m程度であり、CD引張強度は800~900N/m程度であり、ミューレン破裂強度(湿潤及び乾燥の両方)は50~100kPa以内であり、平均流量細孔径は3~4マイクロメートルの間で変化する。
【0094】
積層されたH14製品のMD引張強度は2000~2100N/m程度であり、CD引張強度は900~1000N/m程度であり、ミューレン破裂強度(湿潤及び乾燥の両方)は200~400kPa以内であり、平均流量細孔径は1.5~2.5マイクロメートルである。
【0095】
<例5>
本発明の第17の好ましい実施形態による濾過材は、80~140g/m2、好ましくは100~130g/m2、より好ましくは約110~120g/m2の総坪量を有する。本発明の濾過材は、上記の「前置フィルター基材」に対応する、坪量が30g/m2~60g/m2、好ましくは35g/m2~50g/m2、より好ましくは40~50g/m2の前置フィルター基材、及び坪量が30g/m2~100g/m2、好ましくは50~90g/m2、より好ましくは約60~70g/m2の微細フィルター基材を含む。
【0096】
先に説明した実施形態とは異なり、微細フィルター基材は、前置フィルター基材上に直接適用され、すなわち、微細フィルター基材としてそれ自体のウェブを製造することなく適用される。したがって、前置フィルター基材が調製された後、その一方の表面、すなわちそのワイヤ側の表面又は反対側の表面のいずれかに、例えばグラビアコーティング、カーテンコーティング又はスプレーにより、3~10g/m2、好ましくは約5g/m2で、例えばエチレン-酢酸ビニル(EVA)共重合体、ポリオレフィン(PO)、アタクチックポリプロピレン(PP又はAPP)、ポリブテン-1、酸化ポリエチレン、ポリアミド及びポリエステル、スチレンブロック共重合体(SBC)などの適切な第3のバインダー、好ましくは前置フィルター基材上のポリウレタンホットメルト接着剤が適用され、及びその後、微細フィルター材料、すなわち少なくとも50~100重量%の微細フィルター基材、好ましくは70~100重量%、より好ましくは、85~100重量%のマイクログラスがバインダー層に適用される。マイクログラスと一緒に、0~50重量%、好ましくは0~10重量%、より好ましくは2~6重量%の追加の第2のバインダーを適用できる。前置フィルター基材上に所望の量の微細フィルター材料を適用した後、2つの基材を組み合わせてパルス洗浄可能な濾過材を形成する。
【0097】
例えば、シリコーン又はフルオロケミカルを用いて、水、湿度、炭化水素及び/又はアルコールに対して微細フィルター基材を忌避性にすることに関して、微細フィルター基材を形成する繊維は、微細フィルター基材用の繊維混合物の形成前に化学物質で処理されてもよく、又は繊維混合物にそれぞれの液体化学物質を提供してもよく、又は2つの基材のパック全体に、例えば含浸又はコーティングにより化学物質を提供してもよい。
【0098】
本発明の濾過材は、本発明の使用を列挙された用途に限定することを意図することなく、いくつかの選択肢を挙げると、エンジンオイルフィルター又は油圧オイルフィルター、ガスタービン又は内燃機関用の吸気フィルター、及びHVAC又はAPCフィルターで使用することができる。本明細書に記載の濾過材を使用できる濾過システムは、当技術分野で周知である。例えば、濾過材はプリーツを付けて、取り外し可能又は使い捨て可能なフィルター要素を形成することができ、すなわち、濾過システムでは、必要に応じてフィルター要素を定期的に交換することができる。そのようなすべてのフィルターにおいて、濾過材は、プリーツ、波形、円筒形又は平面構成のいずれかで、濾過される流体の流路に配置されたケーシング内のカートリッジ、パネル又はバッグの形で配置される。好ましい実施形態では、本発明の濾過材は、濾過される流体が、微細フィルター基材が割り当てられた濾過材の側で濾過材から出るように使用される。
【0099】
現在最も好ましい実施形態であると考えられるものと関連して、本発明を例として本明細書で説明したが、本発明は、開示された実施形態に限定されるものではなく、その特徴の様々な組み合わせ又は修正をカバーすることを意図するものであり、添付の特許請求の範囲に定義されるように、本発明の範囲内に含まれるいくつかの他の用途を包含することを理解されたい。上記の任意の実施形態に関連して述べられた詳細な特徴は、そのような組み合わせが技術的に実現可能である場合にはいつでも、他の実施形態と関連して使用されてもよい。
以下、本発明及びその詳細の関係について、番号付けされた態様を用いて説明する。
1. 流体を濾過するための濾過材であって、濾過材は、ホットメルトバインダー又は接着剤によって微細フィルター基材が積層された前置フィルター基材で少なくとも形成され、前置フィルター基材で少なくとも形成され、前置フィルター基材が合成繊維及び第1のバインダーを含み、前置フィルター基材が組み合わされた表面及び深層フィルター基材として働き、及び微細フィルター基材が第2のバインダー並びに合成繊維及び無機繊維の少なくとも1つを含み、前置フィルター基材の平均流量細孔径が8~10マイクロメートル、微細フィルター基材の平均流量細孔径が3~10マイクロメートル、及び積層された濾過材の平均流量細孔径が1.5~6マイクロメートルであることを特徴とする、濾過材。
2. 第1のバインダーが、多成分繊維、完全に溶融可能な繊維、及び第1のバインダー樹脂のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、態様1に記載の濾過材。
3. 前置フィルター基材が、無機繊維をさらに含むことを特徴とする、態様1又は2に記載の濾過材。
4. 前置フィルター基材が、20~95重量%の合成繊維、5~80重量%の第1のバインダーを含むことを特徴とする、態様1に記載の濾過材。
5. 微細フィルター基材が、前置フィルター基材と同一であることを特徴とする、態様1から4のいずれか一項に記載の濾過材。
6. 微細フィルター基材が、無機繊維及び合成繊維の両方を含むことを特徴とする、態様1から5のいずれか一項に記載の濾過材。
7. 微細フィルター基材が、20~60重量%の合成繊維、10~80重量%の無機繊維及び2~15重量%の第2のバインダーを含むことを特徴とする、態様1から6のいずれか一項に記載の濾過材。
8. 前置フィルター基材及び微細フィルター基材の少なくとも一方が、少なくとも2つの異なる直径グレードからの合成繊維及び/又は無機繊維を含むことを特徴とする、態様1から7のいずれか一項に記載の濾過材。
9. 微細フィルター基材が、平均直径が1~30マイクロメートルであるチョップストランドグラスファイバーを含むことを特徴とする、態様1から8のいずれか一項に記載の濾過材。
10. 第1のバインダー樹脂及び第2のバインダーが、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、多環芳香族樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリ尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアセチル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、レゾルシノール樹脂、スチレン樹脂、尿素フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、酢酸ビニル樹脂及び塩化ビニル樹脂の少なくとも1つを含むことを特徴とする、態様2から9のいずれか一項に記載の濾過材。
11. 前置フィルター基材及び微細フィルター基材の少なくとも一方が、ウェットレイによって製造されることを特徴とする、態様1から10のいずれか一項に記載の濾過材。
12. 微細フィルター基材の合成繊維が、PET、PP、PBT、PA、リヨセル、レーヨン、アラミド、ナイロン、ポリオレフィン、ポリエステル、ビスコース、及びアクリル繊維のうちの少なくとも1つを含み、合成繊維の平均直径が0.1~100マイクロメートルであることを特徴とする、態様1から11のいずれか一項に記載の濾過材。
13. 多成分繊維が、PET/co-PET、PET/co-PE、PET/co-PP、及びPET/co-PA繊維のうちの少なくとも1つを含み、多成分繊維の微細さが1~15デニールであることを特徴とする、態様2に記載の濾過材。
14. 無機繊維が、平均直径が0.01~5マイクロメートルであることを特徴とする、態様1から13のいずれか一項に記載の濾過材。
15. 前置フィルター基材及び微細フィルター基材を結合して濾過材を形成するために、第3のバインダーを使用することを特徴とする、態様1から14のいずれか一項に記載の濾過材。
16. 第3のバインダーが、エチレン-酢酸ビニル(EVA)共重合体、ポリオレフィン(PO)、アタクチックポリプロピレン(PP又はAPP)、ポリブテン-1、酸化ポリエチレン、ポリアミド及びポリエステル、スチレンブロック共重合体(SBC)及びポリウレタンホットメルト接着剤のうちの少なくとも1つであることを特徴とする、態様15に記載の濾過材。
17. 溶融可能な繊維が、PE(ポリエチレン)、PP、ポリ塩化ビニル(PVC)及びポリビニルアルコール(PVA)繊維のうちの少なくとも1つであることを特徴とする、態様2に記載の濾過材。
18. ミューレン破裂強度(湿潤及び乾燥)が、200~400kPa以内であることを特徴とする、態様1から17のいずれか一項に記載の濾過材。
19. ガスタービン又は内燃機関の吸気フィルターにおける、態様1から18のいずれか一項に記載の濾過材の使用。
20. HVAC又はAPC用途における、態様1から18のいずれか一項に記載の濾過材の使用。
21. エンジンオイル又は油圧オイルの濾過における、態様1から18のいずれか一項に記載の濾過材の使用。
22. 態様1から17のいずれか一項に記載の濾過材を含む、ガスタービン又は内燃機関フィルターの吸気フィルター。
23. 態様1から17のいずれか一項に記載の濾過材を含む、HVAC又はAPC用途のフィルター。
24. 態様1から17のいずれか一項に記載の濾過材を含む、エンジンオイル又は油圧オイルを濾過するためのフィルター。
25. ケーシング及びその中に配置された少なくとも1つのフィルターカートリッジ、フィルターパネル又はフィルターバッグを含むフィルターであって、少なくとも1つのフィルターカートリッジ、フィルターパネル又はフィルターバッグは、態様1から17のいずれか一項に記載の濾過材で製造される、フィルター。
26. 濾過材は、プリーツ付き、波形、円筒形又は平面構成で使用される、態様24に記載のフィルター。
27. フィルターが、ガスタービン、内燃機関、油圧、HVAC用途及びAPC用途のうちの1つで使用される、態様23、24又は25に記載のフィルター。
28. 濾過材を製造する方法であって、以下のステップ:
a)少なくとも合成繊維及び第1のバインダーの前置フィルター完成紙料を調製し、
b)前置フィルター完成紙料を表面に積層してウェブを形成し、
c)前置フィルター基材を形成するためにウェブを加熱して、第1のバインダーを硬化させ、
d)前置フィルター基材に第3のバインダーを適用し、
e)第1のバインダー上に微細フィルター基材を配置し、
f)基材を一緒に組み合わせて濾過材を形成することを含む、態様1から17のいずれか一項に記載の濾過材を製造する方法。
29. ステップe)の前に、少なくとも第2のバインダー並びに合成繊維及び無機繊維のうちの1つの微細フィルター完成紙料を調製し、表面上に前記微細フィルター完成紙料を積層してウェブを形成し、微細フィルター基材を形成するために前記ウェブを加熱して、前記バインダーを硬化させることを特徴とする、態様27に記載の方法。
30. ウェットレイにより前記前置フィルター基材及び前記微細フィルター基材のうちの少なくとも1つを調製することを特徴とする、態様28に記載の方法。
31. ウェットレイ及び多層ヘッドボックスの使用により、前記前置フィルター基材及び前記微細フィルター基材のうちの少なくとも1つを調製することを特徴とする、態様28に記載の方法。