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特許7129431ファウリング防止方法およびオレフィンのオリゴマー化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】ファウリング防止方法およびオレフィンのオリゴマー化方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 2/02 20060101AFI20220825BHJP
   C07C 11/107 20060101ALI20220825BHJP
   C07C 11/02 20060101ALI20220825BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220825BHJP
【FI】
C07C2/02
C07C11/107
C07C11/02
C07B61/00 300
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019568605
(86)(22)【出願日】2018-05-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 KR2018005477
(87)【国際公開番号】W WO2018230844
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-04-21
(31)【優先権主張番号】10-2017-0076529
(32)【優先日】2017-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】515215276
【氏名又は名称】エスケー ジオ セントリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】パク ヒョスン
(72)【発明者】
【氏名】パク チャンセム
(72)【発明者】
【氏名】シム ソ ヒ
(72)【発明者】
【氏名】ソン インヒョプ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン イルグ
(72)【発明者】
【氏名】キム ミュンジン
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-523306(JP,A)
【文献】国際公開第2016/205194(WO,A1)
【文献】特表2016-514767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器内に投入された媒質に無機塩を含むファウリング防止剤を投入するステップと、
前記反応器に触媒組成物を投入するステップと、
前記反応器内にオレフィンを投入し、オリゴマー化反応させるステップとを含む、オレフィンのオリゴマー化方法であって、
前記無機塩は、アルカリ金属塩を含み、
前記触媒組成物は、クロムとヘテロ原子リガンドとが配位結合した錯体を含む、
オレフィンのオリゴマー化方法
【請求項2】
前記無機塩は、さらにアルカリ土類金属、遷移金属、ポスト遷移金属および半金属から選択される金属イオンを含む無機塩である、請求項に記載のオレフィンのオリゴマー化方法。
【請求項3】
前記ファウリング防止剤は、さらにアンモニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、イミダゾリウム、イミダゾリニウム、ピラゾリウム、スルホニウム、ピロリジニウムおよびピペリジニウムから選択されるカチオンを含む有機塩を含む、請求項に記載のオレフィンのオリゴマー化方法。
【請求項4】
前記有機塩は、テトラアルキルアンモニウム塩、テトラアルキルホスホニウム塩である、請求項に記載のオレフィンのオリゴマー化方法。
【請求項5】
前記有機塩は、テトラアルキルアンモニウムホスフェート系化合物、テトラアルキルアンモニウムサルフェート系化合物、テトラアルキルアンモニウムハライド系化合物、テトラアルキルアンモニウム擬ハライド系化合物、テトラアルキルホスホニウムホスフェート系化合物、テトラアルキルホスホニウムサルフェート系化合物、テトラアルキルホスホニウムハライド系化合物およびテトラアルキルホスホニウム擬ハライド系化合物から選択される、請求項に記載のオレフィンのオリゴマー化方法。
【請求項6】
前記無機塩または有機塩は、ハライド基を含む、請求項またはに記載のオレフィンのオリゴマー化方法。
【請求項7】
前記無機塩は、反応器内の媒質の全重量を基準として0.001~1,000ppmで含まる、請求項に記載のオレフィンのオリゴマー化方法。
【請求項8】
前記触媒組成物は、主触媒および助触媒を含み、
前記主触媒は、クロムと、下記化学式Aで表されるヘテロ原子リガンドとが配位結合された錯体である、請求項に記載のオレフィンのオリゴマー化方法。
〔化学式A〕
(RA-B-C(R
[前記化学式A中、
AおよびCは、それぞれ独立して、リン、ヒ素、アンチモン、酸素、ビズマス、硫黄、セレンおよび窒素を含む群から選択され、
Bは、AとCとの連結基であり、
nおよびmは、それぞれ独立して、AまたはCの各原子価および酸化状態で決定された整数であり、
およびRは、それぞれ独立して、置換または非置換のヒドロカルビル、および置換または非置換のヘテロヒドロカルビルを含む群から選択され、前記Rは、n≧2の時、互いに同一または異なっていてもよく、前記Rは、m≧2の時、互いに同一または異なっていてもよい。]
【請求項9】
前記反応させるステップは、0~200℃の温度範囲で行われる、請求項からのいずれか1項に記載のオレフィンのオリゴマー化方法。
【請求項10】
前記反応させるステップは、40~100℃の温度範囲で行われる、請求項からのいずれか1項に記載のオレフィンのオリゴマー化方法。
【請求項11】
前記反応させるステップは、1~800barの圧力範囲で行われる、請求項からのいずれか1項に記載のオレフィンのオリゴマー化方法。
【請求項12】
1‐ヘキセン、1‐オクテンまたはこれらの混合物を選択的に製造する、請求項からのいずれか1項に記載のオレフィンのオリゴマー化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファウリング防止方法およびオレフィンのオリゴマー化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高付加価値の直鎖状低密度ポリエチレンの製造に必要な直鎖状アルファ‐オレフィン(Linear alpha‐olefin、LAO)は、オレフィンのオリゴマー化反応によって得られる。しかし、オレフィンのオリゴマー化反応は、相当量のブテン、その他のオレフィンおよびこれらの異性体、特定の高級オリゴマー、重合体(例えば、ポリエチレン)などがともに生成され、反応器の内壁および反応器内に設置された熱交換器の表面に、担体から離脱した触媒およびオレフィンのオリゴマー化反応の際に生成された副生成物(例えば、ポリエチレン)の一部が付着したり、これらが反応器の中で浮遊しファウリング(fouling)を形成する。
【0003】
前記のような反応器内のファウリングは、反応熱の制御を困難とし、オレフィンモノマーの均一な拡散を妨害し、熱効率および生産効率を低下させる。
【0004】
したがって、前記のような反応器内のファウリングを抑制するための様々な様態の技術が提示されている。先ず、米国特許第4,956,427号では、反応器内の金属の表面にアミノシリコンを加水分解し、これを硬化してコーティングする方法を提示している。しかし、かかる方法は、コーティング作業の際に生産を長期間中断しなければならないなど、高費用が求められるという問題がある。次に、米国特許第3,984,387号では、反応器内に窒素、ヘリウムなどの不活性気体をオレフィンモノマーとともに投入する方法を提示しているが、オレフィンモノマーの分圧が減少し、重合活性が低下するという問題がある。次に、米国特許第4,012,574号では、重合時にパーフルオロカーボン基(perfluorocarbon group)と親水基(hydrophilic group)を含むファウリング防止剤を投入する方法を提示しているが、ファウリング抑制効果が十分でないという問題がある。
【0005】
したがって、本発明者らは、鋭意研究の結果、オレフィンのオリゴマー化方法において、反応器内のファウリング(fouling)、管詰まり(plugging)などの工程上の問題を効果的に解消し、向上した作業性と生産性を提供することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明に開示されている具体例では、従来技術の問題を解決すべく、ファウリング防止剤として有用なイオン性化合物を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明に開示されている具体例では、イオン性化合物を使用することで、反応中に発生するファウリングの低減効果の顕著性は言うまでもなく、反応効率に悪い影響を与えない反応器ファウリング防止方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明に開示されている具体例では、オレフィンのオリゴマー化反応の際に、発生する副生成物(例えば、ポリエチレン)の生成を抑制するとともに、生成された副生成物による反応器内の固着を効果的に抑制することで、卓越したファウリング低減効果を奏するオレフィンのオリゴマー化方法を提供することを目的とする。
【0009】
特に、本発明によるオレフィンのオリゴマー化方法によると、上述の効果により反応熱の除熱が容易であることに加え、触媒活性を極大化することができ、オリゴマー化によって1‐ヘキセンと1‐オクテンを高選択的に製造することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態によると、イオン性化合物を含むファウリング防止剤を化学反応器に投入するステップを含む反応器ファウリング防止方法を提供する。
【0011】
本発明の一実施形態による反応器ファウリング防止方法は、無機塩および有機塩などから選択される様々な様態のイオン性化合物をファウリング防止剤として使用してもよい。
【0012】
本発明の一実施形態による反応器ファウリング防止方法において、無機塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、ポスト遷移金属塩および半金属塩などから選択されてもよい。
【0013】
本発明の一実施形態による反応器ファウリング防止方法において、有機塩のカチオンは、アンモニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、イミダゾリウム、イミダゾリニウム、ピラゾリウム、スルホニウム、ピロリジニウムおよびピペリジニウムなどから選択されてもよい。
【0014】
本発明の一実施形態による反応器ファウリング防止方法において、イオン性化合物は、媒質の全重量を基準として0.001~1,000ppmの範囲で含まれてもよい。
【0015】
本発明の一実施形態によると、反応器内に投入された媒質にイオン性化合物を含むファウリング防止剤を投入するステップと、反応器に触媒組成物を投入するステップと、反応器内にオレフィンを投入し、オリゴマー化反応させるステップとを含むオレフィンのオリゴマー化方法を提供する。
【0016】
本発明の一実施形態によるオレフィンのオリゴマー化方法において、イオン性化合物は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、ポスト遷移金属および半金属などから選択される金属イオンを含む無機塩であってもよい。
【0017】
本発明の一実施形態によるオレフィンのオリゴマー化方法において、イオン性化合物は、アルカリ金属塩などから選択されてもよい。
【0018】
本発明の一実施形態によるオレフィンのオリゴマー化方法において、イオン性化合物は、アンモニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、イミダゾリウム、イミダゾリニウム、ピラゾリウム、スルホニウム、ピロリジニウムおよびピペリジニウムなどから選択されるカチオンを含む有機塩から選択されてもよい。
【0019】
本発明の一実施形態によるオレフィンのオリゴマー化方法において、イオン性化合物は、テトラアルキルアンモニウム塩、テトラアルキルホスホニウム塩などから選択されてもよい。
【0020】
本発明の一実施形態によるオレフィンのオリゴマー化方法において、イオン性化合物は、テトラアルキルアンモニウムホスフェート系化合物、テトラアルキルアンモニウムサルフェート系化合物、テトラアルキルアンモニウムハライド系化合物およびテトラアルキルアンモニウム擬ハライド系化合物などから選択されるテトラアルキルアンモニウム塩;およびテトラアルキルホスホニウムホスフェート系化合物、テトラアルキルホスホニウムサルフェート系化合物、テトラアルキルホスホニウムハライド系化合物およびテトラアルキルホスホニウム擬ハライド系化合物;などから選択されるテトラアルキルホスホニウム塩;などから選択されてもよい。
【0021】
本発明の一実施形態によるオレフィンのオリゴマー化方法において、イオン性化合物は、ハライド基を含んでもよい。
【0022】
本発明の一実施形態によるオレフィンのオリゴマー化方法において、イオン性化合物は、媒質の全重量を基準として0.001~1,000ppmの範囲で含まれてもよい。
【0023】
本発明の一実施形態によるオレフィンのオリゴマー化方法において、触媒組成物は、主触媒および助触媒を含み、主触媒は、遷移金属と下記化学式Aで表されるヘテロ原子リガンドが配位結合された錯体であってもよい。
〔化学式A〕
(RA-B-C(R
[前記化学式A中、
AおよびCは、それぞれ独立して、リン、ヒ素、アンチモン、酸素、ビズマス、硫黄、セレンおよび窒素を含む群から選択され、
Bは、AとCとの連結基であり、
nおよびmは、それぞれ独立して、AまたはCの各原子価および酸化状態で決定された整数であり、
およびRは、それぞれ独立して、置換または非置換のヒドロカルビル、および置換または非置換のヘテロヒドロカルビルを含む群から選択され、Rはn≧2の時、互いに同一または異なっていてもよく、Rはm≧2の時、互いに同一または異なっていてもよい。]
【0024】
本発明の一実施形態によるオレフィンのオリゴマー化方法において、反応させるステップは、0~200℃の温度範囲で行われてもよい。
【0025】
本発明の一実施形態によるオレフィンのオリゴマー化方法において、反応させるステップは、40~100℃の温度範囲で行われてもよい。
【0026】
本発明の一実施形態によるオレフィンのオリゴマー化方法において、反応させるステップは、1~800barの圧力範囲で行われてもよい。
【0027】
本発明の一実施形態によるオレフィンのオリゴマー化方法は、1‐ヘキセン、1‐オクテンまたはこれらの混合物を選択的に製造してもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、反応中に生成される固着性副生成物の生成量を効果的に抑制することは言うまでもなく、所定のイオン性化合物を用いることにより固着性副生成物だけでなく、浮遊性副生成物の生成量を著しく抑制することで、反応中に生成された副生成物が反応器の内壁にファウリングされることを最初から防止することができる。これにより、反応器の内壁での熱伝導を一定に維持することができ、反応時に温度の調節が容易となり、反応効率を極大化することができる。
【0029】
本発明によると、効果的に制御されたファウリング低減効果により、極大化した反応効率でオレフィンのオリゴマー化反応の迅速な開始、安定な運転および良好な再現性を実現することができる。
【0030】
さらに、本発明によると、反応中に生成される副生成物のうち反応器の内壁に固着する固着性副生成物の生成量を最小に抑制できることは言うまでもなく、従来技術が有する技術的障害要因を解消し、反応中に生成された副生成物の生成量の減少においてシナジー効果を達成することができ、生産効率の増大効果を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明による実施例1の反応後の反応器の内部を撮影した画像である。
図2】本発明による比較例1の反応後の反応器の内部を撮影した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明によるファウリング防止方法およびオレフィンのオリゴマー化方法について以下で詳述するが、このときに使用される技術用語および科学用語において他の定義がない限り、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明において本発明の要旨を不明瞭にし得る公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0033】
本発明での「イオン性化合物」という用語は、単純にイオンのみを含む任意の極性液体だけでなく、-100~300℃の温度範囲で蒸気圧が0に近く、極性である化合物のいずれをも含む。また、前記極性は、アニオン物質の種類に応じて変化し得、非常に弱い極性から非常に強い極性に至るまで様々な種類のイオン性化合物を本発明の一様態として使用し得る。
【0034】
本発明での「ファウリング」という用語は、反応器内の不連続的に誘発される反応中に生成された副生成物による連続した作業の問題を意味し、ファウリングは、少なくとも2個の相違する形態で存在する。2個の形態のファウリングは、反応中に生成された副生成物が反応器の如何なる位置で形成されるかによって固着性副生成物または浮遊性副生成物と記述される。また、固着性副生成物は、本発明での用語の固着性重合体、2次重合体、固着性ポリエチレン、2nd PEなどに表現され、浮遊性副生成物は、本発明において、浮遊性重合体、1次重合体、浮遊性ポリエチレン、1st PEなどの用語に表現される。
【0035】
本発明での「オリゴマー化」という用語は、オレフィンが小重合することを意味する。 重合されるオレフィンの個数によって、三量体化(trimerization)、四量体化(tetramerization)と称し、これをまとめて多量体化(multimerization)と言う。特に、本明細書では、エチレンから三量体化および四量体化し、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の主なコモノマーである1‐ヘキセンおよび1‐オクテンを選択的に製造することを意味する。
【0036】
本発明の一実施形態によるファウリング防止剤は、ファウリングの低減効果が著しい。特に、反応器の内壁に固着する固着性浮遊物の生成量を最小に抑制することで、上述の効果に顕著性を与える。
【0037】
また、本発明の一実施形態によるファウリング防止剤は、上述のオリゴマー化反応によって生成される直鎖状アルファオレフィン(例えば、1‐ヘキセン、1‐オクテンなど)の物性および触媒効率に影響を与えず、少ない使用量にもかかわらず卓越したファウリング低減効果を奏する。
【0038】
本発明の一実施形態によるファウリング防止剤は、イオン性化合物を含む。
【0039】
本発明の一実施形態によるファウリング防止剤に含まれ得るイオン性化合物は、アニオン成分とともにカチオン成分を含むものを意味し、それぞれの成分は、相違する媒質でのイオン性化合物の溶解度に相当な影響を及ぼし得る。
【0040】
本発明の一実施形態によると、イオン性化合物のアニオン成分は、通常の1価または2価以上の多価アニオン成分であってもよい。アニオン成分は、制限されないが、アニオン成分の非限定的な一例としては、RO(ここで、Rは、アルキルまたはアリールである)などのアルコキシ基(alkoxide group)またはアリールオキシ基(aryloxide group);F、Cl、Br、Iなどのハライド基(halide group);BF 、PF 、CFSO 、(CFSO、CN、SCN、OCNなどの擬ハライド基(pseudohalide group);CFSO 、CH(C)SO 、CHSO 、COOH(C)SO 、CFSO 、SO 2-などのスルホネート基(sulfonate group)またはサルフェート基(sulfate group);CO 2-、CCOO、CHCOO、CFCOOなどのカーボネート基(carbonate group)またはカルボキシレート基(carboxylate group);B 2-、BF 、B(C などのボレート基(borate group);AsF などのアルセネート基(arsenate group);ホスフェート基(phosphate group);ニトリト基(nitrite group)またはニトレート基(nitrate group);などから選択される一つ以上のアニオン性基を有してもよい。
【0041】
本発明の一実施形態によるファウリング防止剤に含まれるイオン性化合物は、無機塩および有機塩などから選択される一つ以上であってもよい。
【0042】
本発明の一実施形態によるファウリング防止剤に含まれる無機塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、ポスト遷移金属および半金属などから選択される金属イオンをカチオン成分として含んでもよい。この際、金属イオンは、Li、Na、K、Csなどのアルカリ金属;Be、Ca、Mgなどのアルカリ土類金属;Au、Ag、Fe、Cu、Ni、Coなどの遷移金属;Al、Ga、Inなどのポスト遷移金属;およびB、Si、Ge、Asなどの半金属;などが挙げられるが、これに限定されないことは言うまでもない。
【0043】
本発明の一実施形態によるファウリング防止剤に含まれる無機塩の非限定的な一例としては、NaCl、NaBr、NaF、NaI、KCl、KBr、KF、KI、NaS、KS、NaHCO、NaCO、NaHSO、NaPO、NaHPO、KHCO、KCO、KHSO、KPO、およびKHPOなどから選択される一つ以上であってもよい。特に、本発明の一実施形態によるファウリング防止剤に含まれる無機塩は、固着性副生成物を最適に低減させることができるという面で、アルカリ金属塩であってもよく、その非限定的な一例としては、NaCl、NaBr、NaF、NaI、KCl、KBr、KF、KI、NaPO、NaHPO、KPO、およびKHPOなどが挙げられる。
【0044】
本発明の一実施形態によるファウリング防止剤に含まれる有機塩は、アンモニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、イミダゾリウム、イミダゾリニウム、ピラゾリウム、スルホニウム、ピロリジニウムおよびピペリジニウムなどから選択されるカチオン成分を含んでもよい。
【0045】
本発明の一実施形態によるファウリング防止剤に含まれる有機塩の非限定的な一例としては、N‐エチル‐N,N‐ジメチル‐N‐プロピルアンモニウム、N,N,N‐トリメチル‐N‐プロピルアンモニウム、N‐メチル‐N,N,N‐トリブチルアンモニウム、N‐エチル‐N,N,N‐トリブチルアンモニウム、N‐メチル‐N,N,N‐トリヘキシルアンモニウム、N‐エチル‐N,N,N‐トリヘキシルアンモニウム、N‐メチル‐N,N,N‐トリオクチルアンモニウムまたはN‐エチル‐N,N,N‐トリオクチルアンモニウムなどのアンモニウム;N‐エチル‐N,N‐ジメチル‐N‐プロピルホスホニウム、N,N,N‐トリメチル‐N‐プロピルホスホニウム、N‐メチル‐N,N,N‐トリブチルホスホニウム、N‐エチル‐N,N,N‐トリホスホアンモニウム、N‐メチル‐N,N,N‐トリヘキシルホスホニウム、N‐エチル‐N,N,N‐トリヘキシルホスホニウム、N‐メチル‐N,N,N‐トリオクチルホスホニウムまたはN‐エチル‐N,N,N‐トリオクチルホスホニウムなどのホスホニウム;テトラヒドロピリジニウム、ジヒドロピリジニウムなどのピリジニウム;イミダゾリウム;1‐エチル‐3‐メチルイミダゾリニウムなどのイミダゾリニウム;ピラゾリウム;スルホニウム;1‐メチル‐1‐プロピルピロリジニウムなどのピロリジニウムと、メチル‐1‐プロピルピペリジニウムなどのピペリジニウム;などから選択されるカチオン成分と上述のアニオン成分を含むイオン性化合物が挙げられる。
【0046】
本発明の一実施形態によるファウリング防止剤は、特に、テトラアルキルアンモニウムおよびテトラアルキルホスホニウムから選択されるカチオン成分を含む所定のイオン性化合物を含む場合、固着性副生成物だけでなく、浮遊性副生成物の生成量を著しく抑制することができる。
【0047】
すなわち、上述の所定のイオン性化合物をファウリング防止剤として使用する場合、反応中に生成される副生成物の総量を最小化することは言うまでもなく、これらによって反応器の内壁にファウリングされる現象を最初から防止することができる。
【0048】
好ましくは、所定のイオン性化合物は、テトラアルキルアンモニウムホスフェート系化合物、テトラアルキルアンモニウムサルフェート系化合物、テトラアルキルアンモニウムハライド系化合物、テトラアルキルアンモニウム擬ハライド系化合物、テトラアルキルホスホニウムホスフェート系化合物、テトラアルキルホスホニウムサルフェート系化合物、テトラアルキルホスホニウムハライド系化合物およびテトラアルキルホスホニウム擬ハライド系化合物などから選択される一つ以上であってもよい。
【0049】
イオン性化合物でのアルキルは、炭素数1~50の直鎖状または分岐鎖状であってもよく、溶解度および反応溶媒との混和性に優れ、生成された副生成物の発生挙動を効果的に変化させることができるという面で、炭素数1~7の低級アルキルを一つ以上含むことが好ましい。しかし、炭素数8以上の高級アルキルも本発明の一様態であることは言うまでもない。
【0050】
また、イオン性化合物は、F、Cl、Br、Iなどのハライド基(halide group);BF 、PF 、CFSO 、(CFSO、CN、SCN、OCNなどの擬ハライド基(pseudohalide group);下記化学式1で表されるサルフェート基(sulfate group);および下記化学式2で表されるホスフェート基(phosphate group);から選択されるアニオン成分を含むことができる。
【0051】
【化1】
【0052】
【化2】
【0053】
[前記化学式1および2中、
~Rは、それぞれ独立して、水素、置換または非置換のヒドロカルビル、および置換または非置換のヘテロヒドロカルビルから選択され、RおよびRは、同時に水素ではない。]
【0054】
化学式1および2で表されるアニオン成分において、好ましくは、R~Rは、それぞれ独立して、水素、(C6‐C20)アリール、(C6‐C20)アル(C1‐C10)アルキル、(C1‐C10)アルキル、(C1‐C10)アルコキシカルボニル(C1‐C10)アルキル、カルボニル(C1‐C10)アルキル、(C2‐C10)アルケニル、(C2‐C10)アルキニル、(C3‐C7)シクロアルキル、(C5‐C20)ヘテロアリール、(C3‐C7)ヘテロシクロアルキル、(C1‐C10)アルコキシ、(C6‐C20)アリールオキシなどから選択され、RおよびRは、同時に水素ではなくてもよい。
【0055】
また、本発明の一実施形態によるファウリング防止剤に含まれるイオン性化合物は、ハライド基を含んでもよい。
【0056】
以下、本発明の一様態によるファウリング防止剤を用いたファウリングを防止する方法について説明する。ファウリング防止剤は、オレフィンのオリゴマー化工程に使用され得る。
【0057】
本発明の一実施形態によるファウリングを防止する方法は、イオン性化合物を投入するステップを含む。
【0058】
この際、前記方法においてイオン性化合物を投入する条件は制限されず、例えば、オレフィンのオリゴマー化のための助触媒および主触媒よりも優先して投入されてもよく、助触媒と主触媒が投入される途中に投入されてもよく、助触媒と主触媒の投入が完了してからさらに投入されてもよい。
【0059】
本発明の一実施形態によるファウリングを防止する方法において、イオン性化合物の使用量は、制限されないが、反応に使用される媒質内に、0.001~1,000ppm、0.01~500ppm、0.1~50ppmまたは10~30ppmと適宜調節して使用することができる。
【0060】
本発明の一実施形態によると、反応中にイオン性化合物が滑剤(lubricant)として働き、反応中に生成された副生成物が反応器の内壁に固着することを効果的に抑制し、反応中に副生成物として生成される重合体の発生挙動を変化させて重合体の総生成量を最小化することができると推定される。
【0061】
これにより、反応器の内壁での熱伝導を一定に維持することができ、反応熱の制御を容易に行い、オレフィンの均一な拡散および触媒活性に役立ち、向上した生産効率を提供することができる。
【0062】
具体的には、本発明の一様態によるファウリング防止剤を用いたファウリングを防止する方法として、ファウリングが低減したオレフィンのオリゴマー化方法について説明する。
【0063】
本発明の一実施形態によるとオレフィンのオリゴマー化の際、生成される副生成物のうち反応器内に固着する固着性副生成物の生成量を最小に抑制することができる。また、本発明による所定のイオン性化合物を採用することによって、固着性副生成物だけでなく、浮遊性副生成物の生成量を効果的に抑制させることで、これらによって発生する工程上の問題を著しく防止することができる。
【0064】
したがって、本発明の一実施形態によると、オレフィンのオリゴマー化の際、発生する反応器内のファウリング(fouling)、管詰まり(plugging)などの工程上の問題を解消し、向上した作業性と生産性を提供することができる。さらに、反応器内のファウリング(fouling)、管詰まり(plugging)などの工程上の問題を効果的に抑制することで、反応中に生じ得る触媒活性の低下を防止することができる。この際、反応中に生成される副生成物、特に固着性副生成物は、反応器内に固着して熱伝逹を妨害し、LAO生産収率を阻害し、工程を長期間運転することができないように誘導する働きをする。
【0065】
また、本発明の一実施形態によると、向上した触媒活性で、特に、エチレンを用いて三量体化および四量体化し、1‐ヘキセンと1‐オクテンを高い選択度で生産することができる。
【0066】
本発明の一実施形態によるファウリングが低減したオレフィンのオリゴマー化方法は、反応器内に投入された媒質に、イオン性化合物を含むファウリング防止剤を投入するステップと、反応器に触媒組成物を投入するステップと、反応器内にオレフィンを投入し、オリゴマー化反応させるステップとを含む。この際、イオン性化合物は、無機塩および有機塩から選択される一つ以上であってもよい。
【0067】
本発明の一実施形態によるファウリングが低減したオレフィンのオリゴマー化方法において、イオン性化合物は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、ポスト遷移金属および半金属などから選択される金属イオンを含む無機塩;およびアンモニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、イミダゾリウム、イミダゾリニウム、ピラゾリウム、スルホニウム、ピロリジニウムおよびピペリジニウムなどから選択されるカチオン成分を含む有機塩;などから選択されてもよい。
【0068】
本発明の一実施形態によるファウリングが低減したオレフィンのオリゴマー化方法において、無機塩から選択される一つ以上のイオン性化合物を使用する場合、LAO生成量に不都合をもたらさないことは言うまでもなく、固着性副生成物の生成量を著しく抑制することができる。
【0069】
また、本発明の一実施形態によるファウリングが低減したオレフィンのオリゴマー化方法において、有機塩から選択される一つ以上のイオン性化合物を使用する場合、固着性副生成物の生成量だけでなく、浮遊性副生成物の生成量を最小化し、反応器の内壁にファウリングされる現象を著しく低減することができる。
【0070】
好ましくは、本発明の一実施形態によるファウリングが低減したオレフィンのオリゴマー化方法において、有機塩として、テトラアルキルアンモニウムホスフェート系化合物、テトラアルキルアンモニウムサルフェート系化合物、テトラアルキルアンモニウムハライド系化合物、テトラアルキルアンモニウム擬ハライド系化合物、テトラアルキルホスホニウムホスフェート系化合物、テトラアルキルホスホニウムサルフェート系化合物、テトラアルキルホスホニウムハライド系化合物およびテトラアルキルホスホニウム擬ハライド系化合物などから選択される一つ以上のイオン性化合物を含むことが好ましい。
【0071】
より好ましくは、本発明の一実施形態によるファウリングが低減したオレフィンのオリゴマー化方法において、テトラメチルアンモニウムブロミド(tetramethylammonium bromide)、テトラメチルアンモニウムクロリド(tetramethylammonium chloride)、テトラメチルアンモニウムフルオリド(tetramethylammonium fluoride)、テトラメチルアンモニウムシアニド(tetramethylammonium cyanide)、テトラエチルアンモニウムブロミド(tetraethylammonium bromide)、テトラエチルアンモニウムクロリド(tetraethylammonium chloride)、テトラエチルアンモニウムフルオリド(tetraethylammonium fluoride)、テトラエチルアンモニウムシアニド(tetraethylammonium cyanide)、テトラブチルアンモニウムブロミド(tetrabutylammonium bromide)、テトラブチルアンモニウムクロリド(tetrabutylammonium chloride)、テトラブチルアンモニウムフルオリド(tetrabutylammonium fluoride)、テトラブチルアンモニウムシアニド(tetrabutylammonium cyanide)などから選択される一つ以上の有機塩をイオン性化合物として含む場合、目的とするファウリング効果が著しくなり、好まれる。
【0072】
本発明の一実施形態によるファウリングが低減したオレフィンのオリゴマー化方法において、イオン性化合物は、ハライド基を含んでもよい。
【0073】
また、上述の所定のイオン性化合物を含む場合、反応中に生成された副生成物の総生成量を低減し、反応器内のファウリングを効果的に抑制するとともに反応効率を著しく向上させることで、オレフィンのオリゴマー化、特にエチレンの三量体化および四量体化に高選択性を与えることができる。
【0074】
この際、イオン性化合物、触媒組成物の投入順序は、反応に何らの影響を及ぼさず、工程上の都合によって投入順序は適宜調節し得る。
【0075】
本発明の一実施形態によるファウリングが低減したオレフィンのオリゴマー化方法において、イオン性化合物の使用量は制限されないが、オレフィンのオリゴマー化工程の媒質の全重量を基準として、0.001~1,000ppm、0.01~500ppm、0.1~50ppmまたは10~30ppmと適宜調節して使用することができる。
【0076】
本発明の一実施形態によるファウリングが低減したオレフィンのオリゴマー化方法において、触媒組成物は、主触媒および助触媒を含み、主触媒は、オレフィンをオリゴマー化することができる錯体形態の触媒であれば限定されるものではないが、好ましくは、遷移金属を含み、ヘテロ原子リガンドが配位結合したものであってもよい。
【0077】
好ましくは、本発明による主触媒は、遷移金属と下記化学式Aで表されるヘテロ原子リガンドと配位結合した錯体形態であってもよい。
〔化学式A〕
(RA-B-C(R
[前記化学式A中、
AおよびCは、それぞれ独立して、リン、ヒ素、アンチモン、酸素、ビズマス、硫黄、セレンおよび窒素を含む群から選択され、
Bは、AとCとの連結基であり、
nおよびmは、それぞれ独立して、AまたはCの各原子価および酸化状態で決定された整数であり、
およびRは、それぞれ独立して、置換または非置換のヒドロカルビル、および置換または非置換のヘテロヒドロカルビルを含む群から選択され、Rは、n≧2の時、互いに同一または異なっていてもよく、Rは、m≧2の時、互いに同一または異なっていてもよい。]
【0078】
ヒドロカルビルまたはヘテロヒドロカルビルは、ヒドロカーボンまたはヘテロヒドロカーボンから誘導される1個の結合位置を有するラジカルを意味し、ヒドロカルビレンまたはヘテロヒドロカルビレンは、ヒドロカーボンまたはヘテロヒドロカーボンから誘導される2個の結合位置を有するラジカルを意味し、ヘテロとは、炭素がO、S、N、B、Si、Pなどのヘテロ原子で置換されたものを意味する。
【0079】
また、置換は、それぞれ独立して、ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビルおよびハロゲンなどの群から選択されるものであってもよく、非限定的な一例としては、(C6‐C20)アリール、(C6‐C20)アル(C1‐C10)アルキル、(C1‐C10)アルキル、(C2‐C10)アルケニル、(C2‐C10)アルキニル、(C3‐C7)シクロアルキル、(C5‐C20)ヘテロアリール、(C3‐C7)ヘテロシクロアルキル、(C1‐C10)アルコキシ、(C6‐C20)アリールオキシ、‐NR2122、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードなどから選択され、R21およびR22は、それぞれ独立して、水素、(C1‐C10)アルキル、(C1‐C10)アルコキシ、(C6‐C20)アリールおよび(C6‐C20)アリールオキシなどから選択され、R21およびR22のアルキル、アルコキシ、アリールまたはアリールオキシは、それぞれ独立して、(C1‐C10)アルキル、(C1‐C10)アルコキシ、(C6‐C20)アリールオキシおよびハロゲンなどから一つ以上がさらに置換されていてもよいことは言うまでもない。
【0080】
本発明の一実施形態によるヘテロ原子リガンドのBは、置換または非置換のヒドロカルビレンおよび置換または非置換のヘテロヒドロカルビレンを含む有機連結基;および単一原子リンクを含む無機連結基;から選択されてもよく、その非限定的な一例としては、メチレン、ジメチルメチレン、エタン‐1,2‐ジイル、エテン‐1,2‐ジイル、1,2‐プロピレン、プロパン‐1,2‐ジイル、プロパン‐1、3‐ジイル、シクロプロパン‐1,1‐ジイル、シクロプロパン‐1,2‐ジイル、ブタン‐2,3‐ジイル、シクロブタン‐1,2‐ジイル、シクロペンタン‐1,2‐ジイル、シクロヘキサン‐1,2‐ジイル、シクロヘキサン‐1,1‐ジイル、1,2‐フェニレン、ナフタレン‐1,8‐ジイル、フェナントレン‐9,10‐ジイル、フェナントレン‐4,5‐ジイル、9,10‐アントラセン‐ジイル、1,2‐カテコレート、1,2‐ジアリールヒドラジン‐1,2‐ジイル(‐N(Ar)‐N(Ar)‐、ここで、Arは、アリール基である)、1,2‐ジアルキルヒドラジン‐1,2‐ジイル(‐N(Alk)‐N(Alk)‐、ここで、Alkは、アルキルまたはシクロアルキル基である)、1‐アルキル‐2‐アリールヒドラジン‐1,2‐ジイル(‐N(Alk)‐N(Ar)‐、ここで、Alkは、アルキルまたはシクロアルキル基であり、Arは、アリール基である)、‐N(R´)‐X‐N(R´´)‐(ここで、R´およびR´´は、それぞれ独立して、アルキル、シクロアルキルまたはアリール基であり、Xは、ヒドロカルビレン基である)、=C(R´)‐N(R´´)‐、=C(R´‐C(R´´)(R´´´)‐(ここで、=は、二重結合を示し、R´、R´´およびR´´´は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリール基である)、‐B(R´)‐、‐Si(R´)‐、‐P(R´)‐、および‐N(R´)‐(ここで、R´は水素、ヒドロカルビル基、ヘテロヒドロカルビル基またはハロゲンである)などの有機連結基;および単一原子または2原子連結スペーサ(linker spacer)などの無機連結基;から選択されてもよい。
【0081】
本発明の一実施形態による遷移金属は、好ましくはクロムであってもよい。クロムは、クロム(III)アセチルアセトネート、三塩化クロムトリステトラヒドロフランおよびクロム(III)2‐エチルヘキサノエートなどから選択される一つ以上のクロム前駆体によって提供され得るが、これに限定されるものではない。
【0082】
また、本発明の一実施形態によるヘテロ原子リガンドは、‐P‐C‐C‐P‐骨格構造を有するものであり、2個のホスフィン原子間の炭素原子に隣り合う構造が立体的に変化することによって、三量体化および四量体化反応の活性と選択度を目的に応じて変更することができ、非対称に、より容易に空間を制御することができる面で好ましい一例としては、下記化学式Bのリガンドであってもよく、骨格構造内の炭素は、キラル炭素として、(R,R)または(S,S)配列対を有することがより好ましいが、これに限定されるものではない。
【0083】
【化3】
【0084】
[前記化学式B中、
11~R14は、それぞれ独立して、置換または非置換のヒドロカルビルおよび置換または非置換のヘテロヒドロカルビルを含む群から選択され;
15およびR16は、それぞれ独立して、置換または非置換のヒドロカルビルであるか、R15とR16は、互いに置換または非置換のヒドロカルビレンまたは置換または非置換のヘテロヒドロカルビレンで結合されて環を形成してもよい。]
【0085】
本発明の一実施形態によるファウリングが低減したオレフィンのオリゴマー化方法において、主触媒は、クロム前駆体によって提供されたクロムと化学式Bで表されるリガンドが結合されたものであってもよい。
【0086】
本発明の一実施形態によるファウリングが低減したオレフィンのオリゴマー化方法において、触媒組成物は、主触媒1モルを基準として、1~10000モル範囲で助触媒を含んでもよい。好ましくは、触媒組成物は、主触媒と助触媒を1:10~1:10000モルの比率で混合したものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0087】
本発明の一実施形態によるファウリングが低減したオレフィンのオリゴマー化方法において、助触媒は、主触媒の活性を高め、より安定した触媒活性の実現のために投入されるものとして通常使用される化合物であれば制限されず、その非限定的な一例としては、有機アルミニウム化合物および有機ホウ素化合物などが挙げられる。
【0088】
有機アルミニウム化合物は、アルミノキサン、アルキルアルミニウム化合物、アルキルアルミニウムクロリド化合物、アルキルオキシアルミニウム化合物およびアリールオキシアルミニウム化合物などであってもよい。
【0089】
この際、アルミノキサンは、直鎖状、環状、かご状などの形態を有してもよく、その非限定的な一例としては、メチルアルミノキサン(MAO)、メチルイソブチルアルミノキサン(MMAO)、エチルアルミノキサン(EAO)、イソブチルアルミノキサン(IBAO)、テトライソブチルアルミノキサン(TIBAO)などから選択されるアルキルアルミノキサンだけでなく、修飾メチルアルミノキサン(mMAO)などの修飾されたアルキルアルミノキサン(一例として、[(R(R1-nAlO]、化学式中、RおよびRは、それぞれ独立して、ヒドロカルビル、ハロゲンで置換されたヒドロカルビルまたはハロゲンであり、nは、0と1との間の数、mは、1以上の整数である。)などが挙げられる。
【0090】
また、アルキルアルミニウム化合物の非限定的な一例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムおよびトリオクチルアルミニウムなどが挙げられ、アルキルアルミニウムクロリド化合物の非限定的な一例としては、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジオクチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、ヘキシルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリドなどが挙げられる。また、アルキルオキシアルミニウム化合物は、ジメチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジプロピルアルミニウムヒドリド、ジイソプロピルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリドおよびジオクチルアルミニウムヒドリドなどが挙げられ、アリールオキシアルミニウム化合物の非限定的な一例としては、トリフェノキシアルミニウム、ジメチルアルミニウムフェノキシド、メチルアルミニウムジフェノキシドなどのアリールオキシアルミニウム化合物が挙げられる。
【0091】
また、有機ホウ素化合物の非限定的な一例としては、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6‐テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,5‐テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,4,5‐トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4‐トリフルオロフェニル)ボラン、フェニルビス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,5,6‐テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4,5‐テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,4,5‐テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,2,4‐トリフルオロフェニル)ボレート、フェニルビス(ペンタフルオロフェニル)ボレートおよびテトラキス(3,5‐ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートなど;フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1´‐ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、銀テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチルテトラキス(3,5‐ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ノルマルブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ノルマルブチル)アンモニウムテトラキス(3,5‐ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N‐ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N‐ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N‐2,4,6‐ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N‐ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5‐ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジイソプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、およびトリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどから選択され得、このうち最も好ましいものは、N,N‐ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、トリフェニルメチリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレートおよびトリスペンタフルオロボランから選択されることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0092】
この際、助触媒は、主触媒のクロム原子のモル比を基準として、アルミニウムまたはホウ素原子のモル比がそれぞれ1:0.01~1:1000になるように含まれ得、好ましくは、1:0.1~1:500のモル比、より好ましくは、1:0.1~1:100のモル比で含まれたことが好適である。
【0093】
本発明の一実施形態によるファウリングが低減したオレフィンのオリゴマー化方法において、助触媒は、反応溶媒(媒質)に溶解可能であるか反応溶媒に均一に分散可能なものであってもよく、反応溶媒の好ましい一例としては、C3‐C20の炭化水素系溶媒が挙げられる。この際、炭化水素系溶媒の非限定的な一例としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン(MCH)、メチルシクロペンタン(MCP)、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどから選択される一つ以上であってもよく、好ましくは、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン(MCH)、メチルシクロペンタン(MCP)などから選択される一つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0094】
本発明の一実施形態によるファウリングが低減したオレフィンのオリゴマー化方法において、生成されるオリゴマーは、例えば、1‐ブテン、1‐ヘキセン、1‐オクテン、1‐デセン、1‐ドデセン、1‐テトラデセン、1‐オクタデセンなどが製造され得る。本発明では、特に、1‐ヘキセンおよび1‐オクテンを高選択的に製造することができ、これらの生成物が好まれる。また、本発明によるとオレフィンを用いたオリゴマー化反応の際、1‐ヘキセンおよび1‐オクテン以外の副生成物として形成され得るポリオレフィンに対する減少した選択性によって、ポリオレフィンの総生成量を最小化できることは言うまでもなく、生成された副生成物による反応器の内壁にファウリングされる現象を最初から防止することができることが発見された。
【0095】
これに加え、オリゴマー化反応は、スラリー相の条件または溶液相の条件などで行われ得ることは言うまでもない。
【0096】
本発明の一実施形態によるファウリングが低減したオレフィンのオリゴマー化方法は、任意の適した温度で行われる。この際、適した温度は、0~200℃であってもよく、好ましくは40~100℃、より好ましくは40~70℃で行われることが好適である。
【0097】
また、溶液相の条件において使用される反応溶媒は、制限されないが、C3‐C20の炭化水素系溶媒から選択され得、炭化水素系溶媒の非限定的な一例としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン(MCH)、メチルシクロペンタン(MCP)、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどから選択される一つ以上であってもよく、好ましくは、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン(MCH)、メチルシクロペンタン(MCP)などから選択される一つ以上であることが好適である。
【0098】
また、本発明の一実施形態によるファウリングが低減したオレフィンのオリゴマー化方法は、大気圧(1bar)~800barで行われ得、好ましくは大気圧~100bar、より好ましくは大気圧~60barで行われたことが好適である。
【0099】
本発明によると、イオン性化合物を投入することによって、反応中に生成される固着性副生成物の生成量を効果的に抑制することは言うまでもなく、所定のイオン性化合物を用いることによって、固着性副生成物だけでなく、浮遊性副生成物の生成量を著しく抑制し、これにより、反応中に生成された副生成物が反応器の内壁にファウリングされることを効果的に抑制することができることを確認した。
【0100】
本発明の一実施形態によるファウリングが低減したオレフィンのオリゴマー化方法において、オレフィンのオリゴマー化触媒組成物は、好ましくは、主触媒:助触媒のモル比が1: 10~1:10000の範囲で混合され得るが、これに限定されるものではない。
【0101】
本発明の一実施形態によると、イオン性化合物と、アルファ‐オレフィンオリゴマーとを含むアルファ‐オレフィンオリゴマー組成物を含む。
【0102】
本発明の一実施形態によるアルファ‐オレフィンオリゴマーは、1‐ヘキセン、1‐オクテンまたはこれらの混合物が好まれる。
【0103】
この際、アルファ‐オレフィンオリゴマー組成物のうちイオン性化合物の含有量は、制限されないが、アルファ‐オレフィンオリゴマー組成物の中に、0.001~1,000ppm、0.01~500ppm、0.1~50ppmまたは10~30ppmで含有され得る。
【0104】
本発明は、下記の実施例によってより明確に理解することができ、下記の実施例は、本発明の例示のためであって、発明の領域を制限するものではない。また、本発明の下記実施例は、特に断る場合を除き、セミ‐バッチ反応器(semi‐batch reactor)で行われ、反応に使用されるすべての有機溶媒は、シリカゲル、分子体5A活性アルミナが充填された管を通過させた後、高純度の窒素でバブリングさせて、水分、酸素およびその他の触媒毒物質などを十分に除去してから使用した。すべての反応は、窒素雰囲気下で行われ、ほとんどの試薬は、Aldrich社製やSTREM社製のものを購入し使用した。メチルアルミノキサンあるいは修飾アルミノキサン(一例として、mMAO‐12、mMAO‐3AまたはmMAO‐7)は、AkzoNobel社製のものを購入し使用した。メチルアルミノキサンの分子量は58.016g/mol、実施例で使用した修飾アルミノキサン(mMAO‐3A)の分子量は70.07g/molと計算した。下記の実施例および比較例で取得した反応生成物の量は、下記の方法によって分析した。
【0105】
1.反応生成物(LAO)中の1‐ヘキセンと1‐オクテンの含量(重量%)
Agilent GC 7890を用いて、反応溶液中の1‐ヘキセンおよび1‐オクテンの重量%を分析した。
【0106】
2.反応後副生成物として取得されたポリエチレン(総PE)の含量(重量%)の分析
反応後副生成物として取得されたポリエチレンの含量は、1次副生成物(浮遊性ポリエチレン、1st PE)と2次副生成物(固着性ポリエチレン、2nd PE)を含む総ポリエチレンの含量を意味する。浮遊性ポリエチレンは、反応生成物がろ過された後、分離された固体であり、固着性ポリエチレンは、反応器内に付着された固体を意味する。それぞれの固体を70℃に加温されたベンゼンで溶解させ、溶媒の除去のために60℃の真空オーブンで8時間乾燥して重量を測定し、それぞれの含量(重量%)を分析した。
【0107】
(製造例1)
ビス‐[(S,S)‐(フェニル)PCH(メチル)CH(メチル)P(フェニル)二塩化(μ‐塩化)クロム]([CrCl(μ‐Cl){(P,P)‐k2‐(S,S)‐((Ph)P(Me)CH‐CH(Me)P(Ph))}])の製造
トリステトラヒドロフラン三塩化クロム(CrCl(THF))1.1g(3.0mmol)を二塩化メタン100mLに溶解した後、(S,S)‐(フェニル)PCH(メチル)CH(メチル)P(フェニル)リガンド化合物1.28g(3.0mmol)をまた二塩化メタン50mLに溶解し、徐々に加えた。反応物を3時間攪拌した後、真空で揮発物を除去した後、石油エーテル100mLを滴加し、青色の固体を沈殿で取得した。石油エーテル100mLで2回洗浄し、表題化合物1.58g(収率90%)を得た。
【0108】
(実施例1)
十分に乾燥した後、窒素で置換した2L容量のセミ‐バッチ反応器にメチルシクロヘキサン(MCH)1Lを投入し、塩化ナトリウム(NaCl)20mgをMCH10mlに分散させ、セミ‐バッチ反応器に投入した。助触媒18wt%mMAO‐3Aヘプタン溶液1.57g(4mmol)を反応器に投入した後、セミ‐バッチ反応器の温度を60℃に加熱した。次に、エチレンで反応器内の圧力を27barまで満たした。セミ‐バッチ反応器の上部触媒ポートにビス‐[(S,S)‐(フェニル)PCH(メチル)CH(メチル)P(フェニル)二塩化(μ‐塩化)クロム]3.1mg(5.3μmol‐Cr)を投入した後、エチレンで反応器内の圧力を30barまで満たした後、連続してエチレンを供給し、80分間オリゴマー化反応を行った(攪拌条件;200rpm)。次に、100ml 10vol%塩酸水溶液を含有するエタノール(wt:wt、10vol%塩酸水溶液:エタノール=1:1)を反応溶液に投入して反応を終了した後、反応生成物をろ過および分離した。反応ろ液から回収した反応生成物は、60℃の真空オーブンで8時間乾燥した。
【0109】
ろ過によって回収された1次副生成物の重量を測定した。また、反応生成物が除去されたセミ‐バッチ反応器(図1)にMCH1Lを投入し、150℃で1時間攪拌した後、反応溶液をドレーン(drain)し、2次副生成物の重量を測定した。
【0110】
結果、反応生成物(LAO、C6+C8)を1.36比率(C8/C6)で取得し、副生成物として取得されたポリエチレンの総量(総PE)は2.61gであり、このうち、1次副生成物は1.83gであり、2次副生成物は0.79gであった(下記の表1参照)。
【0111】
(実施例2)
実施例1で塩化ナトリウム(NaCl)の代わりに、リン酸ナトリウム(NaPO)を使用する以外は、同様に行って反応生成物を取得し、実施例1の方法と同様に1次副生成物および2次副生成物の重量を測定した。
【0112】
結果、反応生成物(LAO、C6+C8)を1.58比率(C8/C6)で取得し、副生成物として取得されたポリエチレンの総量(総PE)は1.52gであり、このうち、1次副生成物は0.82gであり、2次副生成物は0.70gであった(下記の表1参照)。
【0113】
(実施例3)
実施例1で塩化ナトリウム(NaCl)の代わりに、イミダゾリウムクロリド(imidazolium chloride)を使用する以外は、同様に行って反応生成物を取得し、実施例1の方法と同様に1次副生成物および2次副生成物の重量を測定した。
【0114】
結果、反応生成物(LAO、C6+C8)を1.48比率(C8/C6)で取得し、副生成物として取得されたポリエチレンの総量(総PE)は1.55gであり、このうち、1次副生成物は0.98gであり、2次副生成物は0.57gであった(下記の表1参照)。
【0115】
(実施例4)
実施例1で塩化ナトリウム(NaCl)の代わりに、シアン化テトラブチルアンモニウム(tetrabutylammonium cyanide、TBACN)を使用する以外は、同様に行って反応生成物を取得し、実施例1の方法と同様に1次副生成物および2次副生成物の重量を測定した。
【0116】
結果、反応生成物(LAO、C6+C8)を1.91比率(C8/C6)で取得し、副生成物として取得されたポリエチレンの総量(総PE)は0.64gであり、このうち、1次副生成物は0.29gであり、2次副生成物は0.35gであった(下記の表1参照)。
【0117】
(実施例5)
実施例1で塩化ナトリウム(NaCl)の代わりに、塩化テトラブチルアンモニウム(tetrabutylammonium chloride、TBACl)を使用する以外は、同様に行って反応生成物を取得し、実施例1の方法と同様に1次副生成物および2次副生成物の重量を測定した。
【0118】
結果、反応生成物(LAO、C6+C8)を1.61比率(C8/C6)で取得し、副生成物として取得されたポリエチレンの総量(総PE)は0.48gであり、このうち、1次副生成物は0.36gであり、2次副生成物は0.12gであった(下記の表1参照)。
【0119】
(実施例6)
実施例1で塩化ナトリウム(NaCl)の代わりに、ヨウ化ナトリウム(Sodium iodide、NaI)を使用する以外は、同様に行って反応生成物を取得し、実施例1の方法と同様に1次副生成物および2次副生成物の重量を測定した。
【0120】
結果、反応生成物(LAO、C6+C8)を1.33比率(C8/C6)で取得し、副生成物として取得されたポリエチレンの総量(総PE)は0.95gであり、このうち、1次副生成物は0.29gであり、2次副生成物は0.66gであった(下記の表1参照)。
【0121】
(実施例7)
実施例1で塩化ナトリウム(NaCl)の代わりに、臭化ナトリウム(Sodium bromide、NaBr)を使用する以外は、同様に行って反応生成物を取得し、実施例1の方法と同様に1次副生成物および2次副生成物の重量を測定した。
【0122】
結果、反応生成物(LAO、C6+C8)を1.31比率(C8/C6)で取得し、副生成物として取得されたポリエチレンの総量(総PE)は1.53gであり、このうち、1次副生成物は0.82gであり、2次副生成物は0.71gであった(下記の表1参照)。
【0123】
(実施例8)
実施例1で塩化ナトリウム(NaCl)の代わりに、臭化カリウム(Potassium bromide、KBr)を使用する以外は、同様に行って反応生成物を取得し、実施例1の方法と同様に1次副生成物および2次副生成物の重量を測定した。
【0124】
結果、反応生成物(LAO、C6+C8)を1.29比率(C8/C6)で取得し、副生成物として取得されたポリエチレンの総量(総PE)は1.79gであり、このうち、1次副生成物は0.98gであり、2次副生成物は0.81gであった(下記の表1参照)。
【0125】
(比較例1)
実施例1で塩化ナトリウム(NaCl)を使用しない以外は、同様に行って反応生成物を取得した。
【0126】
次に、ろ過によって回収された1次副生成物の重量を測定した。また、反応生成物が除去されたセミ‐バッチ反応器(図2)にMCH 1Lを投入し、150℃で1時間攪拌した後、反応溶液をドレーン(drain)し、2次副生成物の重量を測定した。
【0127】
測定されたそれぞれの重量は、下記の表1に示す。
【0128】
(比較例2)
実施例1で塩化ナトリウム(NaCl)の代わりに、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol、Sigma‐Aldrich社製、Mw=2000、PPG2000)を使用する以外は、同様に行って反応生成物を取得し、実施例1の方法と同様に1次副生成物および2次副生成物の重量を測定した。
【0129】
測定されたそれぞれの重量は、下記の表1に示す。
【0130】
(比較例3)
実施例1で塩化ナトリウム(NaCl)の代わりに、トリエチルアミン(Triethylamine、Sigma‐Aldrich社製、TEA)を使用する以外は、同様に行って反応生成物を取得し、実施例1の方法と同様に1次副生成物および2次副生成物の重量を測定した。
【0131】
【表1】
【0132】
表1に示されているように、本発明によると、温和な条件で、高い収率で1‐ヘキセンおよび1‐オクテンを生成するだけでなく、副生成物として生成されるポリエチレン(総PE)のうち固着性ポリエチレンである2次副生成物の生成量を効果的に低減できることを確認した。特に、ハライド基およびホスフェート基から選択されるアニオン成分を含む所定の無機塩をファウリング抑制剤として使用する場合、2次副生成物の生成量を著しく低減することができ、好ましい。
【0133】
さらに、所定のイオン性化合物を用いる場合、2次副生成物の生成量を低減するだけでなく、浮遊性ポリエチレンである1次副生成物の生成量を同時に低減することで、反応器内で発生し得るファウリング現象を効果的に抑制することができることを確認した。特に、テトラアルキルアンモニウムおよびテトラアルキルホスホニウムから選択されるカチオン成分を含む所定のイオン性化合物を含む有機塩をファウリング抑制剤として使用する場合、2次副生成物の生成量を低減することは言うまでもなく、総PEの生成量を著しく低減することができ、好ましい。
【0134】
かかる効果は、従来技術では、これを認識することができず、これに関する具体的な応用例もなかった。
【0135】
以上で説明したとおり、本発明の実施例について詳細に記述したが、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、添付の請求の範囲に定義されている本発明の思想および範囲から逸脱することなく、本発明を様々に変形し実施することができる。したがって、本発明のこれからの実施例の変更も本発明の保護範囲内に含まれる。
図1
図2