IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-密閉型電池 図1
  • 特許-密閉型電池 図2
  • 特許-密閉型電池 図3
  • 特許-密閉型電池 図4
  • 特許-密閉型電池 図5
  • 特許-密閉型電池 図6
  • 特許-密閉型電池 図7
  • 特許-密閉型電池 図8
  • 特許-密閉型電池 図9
  • 特許-密閉型電池 図10
  • 特許-密閉型電池 図11
  • 特許-密閉型電池 図12
  • 特許-密閉型電池 図13
  • 特許-密閉型電池 図14
  • 特許-密閉型電池 図15
  • 特許-密閉型電池 図16
  • 特許-密閉型電池 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】密閉型電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/578 20210101AFI20220825BHJP
   H01M 50/536 20210101ALI20220825BHJP
   H01M 50/54 20210101ALI20220825BHJP
   H01M 50/55 20210101ALI20220825BHJP
   H01M 50/176 20210101ALI20220825BHJP
【FI】
H01M50/578
H01M50/536
H01M50/54
H01M50/55 101
H01M50/176
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020502804
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(86)【国際出願番号】 JP2018042750
(87)【国際公開番号】W WO2019167357
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2021-07-02
(31)【優先権主張番号】P 2018033752
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】播磨 幸男
(72)【発明者】
【氏名】今西 裕明
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-531042(JP,A)
【文献】特開2016-046158(JP,A)
【文献】特開2016-195025(JP,A)
【文献】特開2016-164843(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104734(WO,A1)
【文献】特開2014-086177(JP,A)
【文献】国際公開第2014/033806(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10 - 50/198
H01M 50/50 - 50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するケースと、
前記ケース内に収納される電極体と、
前記ケースの開口部を密閉する蓋部材と、
前記蓋部材の外面に設けられる外部端子と、
電流遮断機構と、
一端が前記電極体から延出する電極タブと電気的に接続され、他端が電池内部に設けられた前記電流遮断機構に電気的に接続された集電部材と、
前記蓋部材を気密状態で貫通して設けられ、電池内部において前記電流遮断機構に電気的に接続され、電池外部において前記外部端子に電気的に接続される導通部材と、を備え、
前記電流遮断機構は、外周部が前記集電部材に接続され、内周部が前記導通部材に接続される薄板状の導電板を備え、前記導電板の内周部が前記集電部材の表面から突出した形状に形成されており、前記導電板は電池内部の圧力上昇を受けて前記内周部が前記導通部材から離間するように変位可能であり、前記集電部材には、前記導通部材から離間変位した前記導電板の内周部を受け入れる収容凹部が前記集電部材の厚み方向の内部に形成されている、
密閉型電池。
【請求項2】
前記収容凹部は、扁平な円柱状空間、又は、扁平な円錐台状空間を含む形状に形成されている、請求項1に記載の密閉型電池。
【請求項3】
前記導通部材は、導電性の筒状部材と、前記筒状部材の内部に配置された導電性の柱状部材とを含み、前記導電板の内周部は薄肉の脆弱部を含む破断板を介して前記柱状部材の一方の端部に連結されている、請求項1または2に記載の密閉型電池。
【請求項4】
前記筒状部材の外周面には前記電池内部と前記電池外部との間を気密状態に封止するガスケットが配置されている、請求項3に記載の密閉型電池。
【請求項5】
前記電極体から延出する電極タブは前記集電部材の一方端部に接合され、前記集電部材の他方端部に形成された前記収容凹部の周縁部に前記導電板の外周部が接合され、前記導電板の内周部が前記破断板の中央領域に位置する前記脆弱部に接合され、前記破断板において前記脆弱部の外周側に位置する部分が前記柱状部材の一方の端部に接合され、前記柱状部材の他方の端部が電池外部において前記筒状部材に接合されている、
請求項3または4に記載の密閉型電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、密閉型電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、蓄電装置が開示されている。この蓄電装置は、ケースと、電極組立体と、集電部材と、接続端子と、導電部材と、電流遮断装置とを備えている。電流遮断装置は、隔壁を備えている。電流遮断装置は、連通空間の圧力と隔離空間の圧力との差が設定値未満のときは、集電部材と接続端子との間を電流が流れる状態とし、連通空間と隔離空間の圧力との差が設定値以上となったときに隔壁が変形することによって集電部材と接続端子との間を電流が流れない状態とする。この蓄電装置では、ケースと隔壁の間に、連通空間が形成される一方でケースの内側には隔離空間が形成されている。
【0003】
上記特許文献1の蓄電装置における電流遮断装置では、一端が電極組立体に電気的に接続された集電部材の他端に隔壁が接続されている。集電部材の他端には、薄肉の脆弱部が形成されている。また、隔壁の集電体接続部に対してケース内側に隔離空間が形成されている。隔離空間の下方は隔離部材およびハウジングの下部によって覆われている。ハウジングには電池内部と連通する連通孔が形成されている。このような構成の電流遮断装置を備える蓄電装置では、電池内圧の上昇によって連通空間の圧力が上昇すると、隔壁が隔離空間側に押される。これにより、集電部材の脆弱部が破断して隔壁が隔離空間側に変形移動し、その結果、集電部材と接続端子とが接続解除されて電流が遮断される。特許文献1の蓄電装置によれば、集電部材と接続端子とを接続する電流経路を、隔壁及び隔離空間を回りこむように配置する必要がなく、上記電流経路を短く形成することができるので蓄電装置の電気的損失を小さくできると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-229156号公報
【発明の概要】
【0005】
昨今の高容量化と急速充電のニーズにより、体積効率の良い電池が求められている。この場合、充放電時の電流量が増加しているため、大電流が流れることによる電流経路構成部品の抵抗発熱が、その近傍に配置されている樹脂部品に影響して劣化を加速させることで、気密性や絶縁性に悪影響を与えるおそれがある。
【0006】
上記特許文献1の蓄電装置の電流遮断装置では、ケースの開口部を封止する蓋部材の下面にハウジングを配置し、このハウジングの内部に集電端子、隔壁、隔離空間および隔離部材が配置または形成され、隔離部材の下面がハウジングによって支持されている。このように蓋部材と電極組立体との間に多数の部材が重なった状態で配置または形成されると、これらの重なり寸法が大きくなる。その結果、電池ケース内のデッドスペースが大きくなり、電池の高容量化には不適である。
【0007】
本開示の目的は、電流遮断機構の薄型化によるデッドスペースの低減によって高容量化することに適した密閉型電池を提供することである。
【0008】
本開示に係る密閉型電池は、開口部を有するケースと、ケース内に収納される電極体と、ケースの開口部を密閉する蓋部材と、蓋部材の外面に設けられる外部端子と、一端が前記電極体から延出する電極タブと電気的に接続され、他端が電池内部に設けられた電流遮断機構に電気的に接続された集電部材と、蓋部材を気密状態で貫通して設けられ、電池内部において電流遮断機構に電気的に接続され、電池外部において外部端子に電気的に接続される導通部材と、を備える。電流遮断機構は、外周部が集電部材に接続され、内周部が導通部材に接続される薄板状の導電板を備える。導電板の内周部が集電部材の表面から突出した形状に形成されており、導電板は電池内部の圧力上昇を受けて内周部が導通部材から離間するように変位可能である。集電部材には、導通部材から離間変位した導電板の内周部を受け入れる収容凹部が集電部材の厚み方向の内部に形成されている。
【0009】
本開示に係る密閉型電池によれば、電流遮断機構を薄型化することができ、ケース内のデッドスペースを低減することができる。その結果、電極体の配置スペースを大きく確保することができ、高容量化に適した電池となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態である密閉型電池の縦方向断面図である。
図2図1における電流遮断機構の拡大断面図である。
図3】電流遮断機構において急速充電時に発熱する様子を示す図である。
図4】電流遮断機構が作動した状態を示す図である。
図5】密閉型電池の組立てを示す(a)斜視図と、(b)A-A線断面図である。
図6図5に続いて、密閉型電池の組立てを示す(a)斜視図と、(b)断面図である。
図7図6に続いて、密閉型電池の組立てを示す(a)斜視図と、(b)断面図である。
図8図7に続いて、密閉型電池の組立てを示す(a)斜視図と、(b)断面図である。
図9図8に続いて、密閉型電池の組立てを示す(a)斜視図と、(b)断面図である。
図10図9に続いて、密閉型電池の組立てを示す(a)斜視図と、(b)断面図である。
図11】密閉型電池の電極体の構成を示す斜視図である。
図12図9に続いて、密閉型電池の組立てを示す(a)斜視図と、(b)超音波接合を示す斜視図である。
図13図12に続いて、密閉型電池の組立てを示す(a)斜視図と、(b)断面図である。
図14図13に続いて、密閉型電池の組立てを示す(a)斜視図と、(b)断面図である。
図15図14に続いて、密閉型電池の組立てを示す(a)斜視図と、(b)断面図と、(c)電極体および蓋部材の斜視図である。
図16図15に続いて、密閉型電池の組立てを示す断面図である。
図17】集電部材に形成された収容凹部の変形例を示す、図2と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本開示の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
【0012】
図1は、本開示の一実施形態である密閉型電池10の縦方向断面図である。図1図2も同様)において、密閉型電池10の横方向(または幅方向)が矢印Xで示され、密閉型電池10の長さ方向が矢印Yで示され、密閉型電池10の縦方向(または上下方向、高さ方向)が矢印Zで示されている。矢印X,Y,Zで示す各方向は互いに直交する。
【0013】
図1に示すように、密閉型電池10は、横長の長方形状を有する角形電池である。また、密閉型電池10は、長さ方向Yの寸法が小さい扁平な角形電池である。さらに、密閉型電池10は、例えばリチウムイオン電池等の充放電が可能な二次電池である。
【0014】
図1に示すように、密閉型電池10は、例えば、アルミニウム合金等の金属からなるケース12を備える。ケース12は、底部と側壁部を有し、上部に開口部を有する。ケース12の開口部は、蓋部材14によって密閉されている。蓋部材14は、例えば、アルミニウム合金等からなる金属板で構成されている。蓋部材14は、例えば、レーザー溶接等によってケース12の開口縁部に固定される。
【0015】
ケース12内には、電極体16が収納されている。電極体16は、それぞれシート状をなす正極板と負極板とをセパレータを挟んで多数枚積層して構成される積層側電極体である。正極板、負極板、セパレータの詳細については後述する。電極体16は、多数枚の正極板、負極板およびセパレータが例えば粘着テープ等の結束部材によって一体にまとめられている。
【0016】
電極体16を構成する各正極板は、その上端部から延出する正極タブ(電極タブ)18をそれぞれ有する。各正極タブ18は、電極体16の横方向右側部分の上端部にそれぞれ設けられ、厚み方向Yに並んで配置されている。また、電極体16を構成する各負極板は、その上端部から延出する負極タブ(電極タブ)20をそれぞれ有する。各負極タブ20は、電極体16の横方向左側部分の上端部にそれぞれ設けられ、厚み方向Yに並んで配置されている。
【0017】
なお、本実施形態では電極体16が積層型電極体である場合について説明するが、これに限定されない。電極体は、セパレータを挟んで正極板および負極板を巻回して構成される巻回型電極体であってもよい。
【0018】
蓋部材14の上面には、負極端子部22nおよび正極端子部22pが設けられている。負極端子部22nは、導電性の負極外部端子24nを備える。負極外部端子24nと蓋部材14との間は、例えば樹脂部材である絶縁部材26によって絶縁されている。
【0019】
ケース12内において電極体16から延出する負極タブ20は、負極集電部材28の一方端部に電気的に接続されている。負極タブ20は、例えば、超音波接合等によって負極集電部材28に接合されている。
【0020】
負極集電部材28の他方端部には、略円柱状をなす導通部材30が突設されている。導通部材30は、例えば、中実の金属製リベットによって好適に構成される。導通部材30は、例えば、レーザー溶接等によって負極集電部材28に接合されている。導通部材30は、蓋部材14、絶縁部材26および負極外部端子24nを貫通して上方に延び、上端外周部が負極外部端子24n上で塑性変形により拡径されている。これにより、導通部材30が負極外部端子24nにカシメ固定されている。その結果、電極体16に含まれる各負極板が負極集電部材28および導通部材30を介して負極外部端子24nに電気的に接続される。
【0021】
導通部材30の外周には例えば、絶縁性の樹脂部材からなるガスケット32が配置され、導通部材30と蓋部材14の貫通孔との間が気密状態に封止されている。また、負極集電部材28と蓋部材14の間には絶縁部材33が配置され、これにより負極集電部材28と蓋部材14とが電気的に絶縁されている。
【0022】
他方、正極端子部22pは、導電性の正極外部端子24pを備える。正極外部端子24pと蓋部材14との間は例えば樹脂部材である絶縁部材26によって絶縁されている。この絶縁部材26は、負極端子部22nと同じものを用いることができる。
【0023】
ケース12内において電極体16から延出する正極タブ18は、正極集電部材34の一方端部34aに電気的に接続されている。正極タブ18は、例えば、超音波接合等によって正極集電部材34に接合されている。
【0024】
正極集電部材34は、導電性を有する金属製の部材である。正極集電部材34の他方端部34bは、電流遮断機構40を介して導通部材36に電気的に接続されている。導通部材36は、詳しくは後述するが、導電性の筒状部材36aと、筒状部材36aの内部に配置された導電性の柱状部材36bとを含む。導通部材36は、蓋部材14、絶縁部材26および正極外部端子24pを貫通して上方に延び、上端外周部が正極外部端子24p上で塑性変形により拡径されている。これにより、導通部材36が正極外部端子24pにカシメ固定されている。その結果、電極体16に含まれる各正極板は、正極集電部材34、電流遮断機構40および導通部材36を介して正極外部端子24pに電気的に接続される。
【0025】
導通部材36の外周には例えば絶縁性の樹脂部材からなるガスケット38が配置され、導通部材36と蓋部材14の貫通孔との間が気密状態に封止されている。
【0026】
次に、図1に加えて図2も参照して本実施形態の密閉型電池10における電流遮断機構(CID:Current Interrupt Device)40について説明する。図2は、図1における電流遮断機構40の拡大断面図である。図2では、溶接箇所が破線三角印によって示されている。
【0027】
図2に示すように、電流遮断機構40は、反転板42と刻印板48とを備える。反転板42は、金属製の薄板からなる導電板である。反転板42は、外周縁部が正極集電部材34の他方端部34bに例えばレーザー溶接等によって固定されている。より詳しくは、反転板42の外周部42aは、正極集電部材34の他方端部34bの上面に形成された浅い凹部に嵌まり込んだ状態で外周部42aが溶接されている。
【0028】
反転板42の内周部42bは、円錐台状をなして正極集電部材34の他方端部34bの上面(表面)から突出している。ここで、正極集電部材34は、一方端部34aと他方端部34bとの間に段差部34cが形成され、この段差部34cに相当する高さ分だけ他方端部34bの上面は一方端部34aの上面よりも低くなっている。このように正極集電部材34の他方端部34bの上面が低くなっていることで、反転板42の内周部42bが上方に突出していても段差部34cの高さの範囲内に収まっている。反転板42の内周部42bの先端平坦面は、正極集電部材34の一方端部34aの上面よりも低い位置にある。このように正極集電部材34に段差部34cを設け、この段差部34cの高さ範囲内に反転板42の突出した内周部42bを収めることにより、電流遮断機構40を薄型化することができる。
【0029】
本実施形態において正極集電部材34の他方端部34bの上面には、収容凹部35が形成されている。収容凹部35は、反転板42の内周部42bが電池内圧上昇により反転変位したときに内周部42bを収容する機能を有する。収容凹部35は、正極集電部材34の他方端部34bにおいて厚み方向の内部に形成されている。また、収容凹部35は、扁平な円柱状空間を含む形状に形成されている。収容凹部35内の内部空間は反転板42の外周部42aが全周にわたって溶接されることによって密閉された空間になっている。
【0030】
正極集電部材34の他方端部34bの下面は、側面がL字状をなす絶縁部材37によって覆われている。この絶縁部材37によって、図1に示すように、正極集電部材34の他方端部34bと、その下方近傍に位置する電極体16との間での絶縁性が確保されている。
【0031】
図2に示すように、反転板42の外周部42a上には、絶縁性のスペーサ部材44が配置されている。スペーサ部材44は、中央に円形の開口部46を有している。スペーサ部材44は、反転板42の内周部42bの中間位置まで覆って設けられており、反転板42の内周部42bの先端平面部は、スペーサ部材44の開口部46から上方に突出した位置となっている。
【0032】
スペーサ部材44の上面は側壁によって四方が囲まれており、その上面に刻印板(破断板)48が配置されている。刻印板48は金属製部材で構成される。刻印板48は、詳しくは後述するが、熱カシメによってスペーサ部材44に固定されている。
【0033】
刻印板48の上面には、上面視で円形の嵌合凹部50が形成されている。嵌合凹部50の底面は薄板状に形成されており、この底面にはV字状の溝からなる薄肉の脆弱部52が上面視で円形状に形成されている。この脆弱部52の内周側において、刻印板48の嵌合凹部50の底面と、反転板42の内周部42bの先端平面部とが、例えばレーザー溶接等によって接合されている。
【0034】
刻印板48は、導通部材36の下端部に電気的に接続されている。具体的には、導通部材36は、金属製の筒状部材36aと、筒状部材36aの内部に挿入配置されている金属製の柱状部材36bとによって構成される。柱状部材36bは下端部にフランジ部39を有しており、このフランジ部39が刻印板48の嵌合凹部に嵌合して配置されている。そして、脆弱部52に対して外周側に位置する部分である嵌合凹部の縁部と、導通部材36の一方端部であるフランジ部39の外周縁部とが、例えばレーザー溶接等によって接合されている。これにより、刻印板48と導通部材36の柱状部材36bとが電気的に接続されている。
【0035】
刻印板48および正極集電部材34の一方端部34aと蓋部材14との間には、樹脂部材からなる絶縁部材53が配置されている。これにより、刻印板48および正極集電部材34と蓋部材14との間が電気的に絶縁されている。
【0036】
導通部材36の柱状部材36bは、筒状部材36aの内部に挿入配置されている。柱状部材36bは、筒状部材36aに対して下方から挿入されて、フランジ部39が筒状部材36aの下端部に当接して位置決めされる。
【0037】
導通部材36の筒状部材36aは、筒部54と、筒部54の下端部に形成された下側フランジ部56とを有する。そして、筒部54の下部外周面と下側フランジ部56の外周面とにまたがって接触配置されたガスケット38によって、蓋部材14と導通部材36の筒状部材36aとの間が気密状態に封止されている。
【0038】
導通部材36において筒状部材36aの内部に挿入配置された柱状部材36bは、上端部外周が筒状部材36aの筒部54の上端内周に例えばレーザー溶接等によって接合される。これにより、導通部材36において柱状部材36bが筒状部材36aに対して確実に電気的に接続される。
【0039】
導通部材36の筒状部材36aは、上端部が塑性変形されて上側フランジ部が形成され、これにより筒状部材36aが正極外部端子24pに固定される。そして、筒状部材36aの上側フランジ部の外周部が正極外部端子24pに例えばレーザー溶接等によって接合される。これにより、導通部材36の筒状部材36aが正極外部端子24pに確実に電気的に接続される。
【0040】
図3は、電流遮断機構40において急速充電時に発熱する様子を示す図である。図3において、急速充電時に正極端子部22pに流れる電流が一点鎖線で示されている。
【0041】
図3に示すように、急速充電時には大きな値の電流が各部材間の溶接部分(破線三角印)を通って流れる。各溶接部分は部材間の他の接触部分よりも電気抵抗が小さいためである。具体的には、急速充電時の電流は、正極外部端子24pから、導通部材36の筒状部材36a、柱状部材36b、刻印板48および反転板42に順に流れ、反転板42の外周溶接部分から正極集電部材34に流れて、正極集電部材34を介して電極体16に充電される。
【0042】
このような電流経路において、刻印板48の脆弱部52はV字状の溝によって薄肉となっていて電気抵抗が大きくなるため、抵抗発熱が大きくなる。図3では脆弱部52における抵抗発熱が大きくなる様子を多数の小さな矢印で示している。また、反転板42も薄い金属板で構成されるため電気抵抗が比較的大きくなり、抵抗発熱が大きくなる。このような抵抗発熱がその近傍に配置された樹脂部品に伝わって高温になると劣化が加速して、当該樹脂部材による気密性や絶縁性に悪影響を与えるおそれがある。
【0043】
本実施形態の密閉型電池10では、刻印板48の脆弱部52が設けられた嵌合凹部50の底面に接触して導通部材36の柱状部材36bが配置されている。柱状部材36bは、熱容量が大きく且つ上端部に伝熱して電池外部に効率よく放熱することができる。したがって、急速充電時に、刻印板48の脆弱部52およびその近傍で抵抗発熱が生じた場合でも、その熱が樹脂部材であるガスケット38に伝わって高温になりにくくなる。その結果、ガスケット38が熱的影響により劣化が加速して気密性や絶縁性が低下するのを抑制することができる。
【0044】
このような抵抗発熱は、高負荷使用時に大電流が密閉型電池10から放電されるときにも生じるため、高負荷使用時のガスケット38への伝熱抑制対策としても有効である。
【0045】
また、本実施形態の密閉型電池10では、導通部材36の外周を封止するガスケット38が、刻印板48および反転板42の発熱によって高温になり易い柱状部材36bから筒状部材36aを隔てて配置されている。さらに、柱状部材36bの外周面は筒状部材36aの内周面に接触して配置されているが、両者の間には僅かな隙間が存在する。このように柱状部材36bとガスケット38との間に筒状部材36aが介在し且つ上記のような僅かな隙間が存在することで、柱状部材36bからガスケット38に伝熱しにくくなる。その結果、ガスケット38が熱的影響を受けにくくなり、劣化が加速して気密性や絶縁性が低下するのを抑制することができる。
【0046】
図4は、電流遮断機構40が作動した状態を示す図である。内部短絡等の原因によって電池内圧が所定の設定値以上に上昇すると、電池内部に設けられている電流遮断機構40において反転板42の内周部42bの傾斜した上面が受圧によって下方に押される。これにより、図4に示すように、刻印板48の嵌合凹部50の脆弱部52が破断して、反転板42の内周部42bが下方に凸状となるように反転変位する。すなわち、反転板42が刻印板48および導通部材36から離間する。このとき反転板42の内周部42bは下方へ凸状に塑性変形して収容凹部35内に収容される。その結果、正極端子部22pにおける電流経路が刻印板48と反転板42との間で絶たれることで電流が遮断される。
【0047】
このように作動する電流遮断機構40は、電池内圧上昇時に反転変形する反転板42の内周部42bを収容する収容凹部35を、正極集電部材34の他方端部34bの厚み方向の内部に形成したことで、反転板42の下方に反転空間を設けた場合であっても電流遮断機構40の縦方向寸法を小さくすることができる。したがって、ケース12内において蓋部材14と電極体16との間に形成されるデッドスペースを小さくでき、高容量化に適した電池とすることができる。
【0048】
次に、図5図16を参照して、本実施形態の密閉型電池10の製造工程について説明する。
【0049】
まず図5(a),(b)に示すようにして、蓋部材14に対する正極外部端子24pを組み付ける。より詳しくは、蓋部材14の貫通孔にガスケット38を下方から挿入配置し、ガスケット38の内部に導通部材36の筒状部材36aの筒部を下方から挿入する。そして、蓋部材14の上面に突出した筒状部材36aの筒部上端に絶縁部材26および正極外部端子24pを嵌め込んで配置し、この状態で筒状部材36aの筒部上端をカシメ固定する。
【0050】
続いて、図6図10に示すようにして、正極集電部材34に対する反転板42などを組み付ける。まず、図6(a),(b)に示すように、正極集電部材34を準備する。正極集電部材の他方端部34bの4つの角部には、厚み方向に貫通する貫通孔60がそれぞれ形成されている。
【0051】
続いて、図7(a),(b)に示すように、正極集電部材34の他方端部34bの上面に反転板42を組み付け、反転板42の外周部42aを例えばレーザー溶接によって固定する。図7図10等でも同様)には、反転板42を溶接するレーザーRが白抜き三角形で示されている。
【0052】
続いて、図8(a),(b)に示すように、正極集電部材34の他方端部34bの下面に絶縁部材37を組み付ける。熱可塑性樹脂からなる絶縁部材37には、4つのピン部62が突設されており、これらのピン部62を正極集電部材34の他方端部34bに形成されている4つの貫通孔60に挿通した状態で組み付ける。
【0053】
続いて、図9(a),(b)に示すように、正極集電部材34の他方端部34bの上面にスペーサ部材44を組み付ける。スペーサ部材44の4つの角部にも貫通孔が形成されており、これらの貫通孔に絶縁部材37のピン部62を挿通した状態で組み付ける。このとき、ピン部62の先端部はスペーサ部材44の上面から突出した状態になっている。
【0054】
続いて、図10(a),(b)に示すように、スペーサ部材44の上に刻印板48を組み付ける。刻印板48の4つの角部にも貫通孔が形成されており、これらの貫通孔に絶縁部材37のピン部62を挿通した状態で組み付ける。このとき、ピン部62の先端部は刻印板48の上面から突出した状態になっている。
【0055】
この状態で、ピン部62の先端部を加熱押圧して押しつぶす。これにより、正極集電部材34の他方端部34bに対して、絶縁部材37、スペーサ部材44および刻印板48が熱カシメによって一体に固定される。また、刻印板48の脆弱部52の内周部をレーザー溶接によって円形状に接合する。これにより、刻印板48と反転板42とが電気的に接続される。
【0056】
図11は、密閉型電池10の電極体16の構成を示す斜視図である。電極体16は、それぞれシート状をなす正極板17aと負極板17bとをセパレータ17cを挟んで多数枚積層して構成される。正極板17aの上端縁部から矩形状をなす正極タブ18が延出し、負極板17bの上端縁部から矩形状をなす負極タブ20が正極タブ18と横方向にずれた位置で延出している。
【0057】
ここで、密閉型電池10がリチウムイオン電池である場合の正極板17a、負極板17b、および、セパレータ17cについて説明する。正極板17aは、箔状の正極芯体の両側表面に正極活物質含有層を形成して構成される。正極芯体は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金箔からなる。正極タブ18は、正極活物質含有層が形成されていない正極芯体自体によって形成されている。
【0058】
正極活物質含有層は、例えば、正極活物質として、リチウムニッケル酸化物を用い、導電剤として、アセチレンブラック(AB)を用い、結着剤として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用い、分散媒として、N-メチル-2-ピロリドンを用いることで作製できる。正極活物質について更に詳細に説明すると、正極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出することが可能な化合物であれば適宜選択して使用できる。これらの正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物が好ましい。例えば、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出することが可能なLiMO2(但し、MはCo、Ni、Mnの少なくとも1種である)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物、すなわち、LiCoO2、LiNiO2、LiNiyCo1-y2(y=0.01~0.99)、LiMnO2、LiCoxMnyNiz2(x+y+z=1)や、LiMn24又はLiFePO4などを一種単独もしくは複数種を混合して用いることができる。さらには、リチウムコバルト複合酸化物にジルコニウムやマグネシウム、アルミニウム、タングステンなどの異種金属元素を添加したものも使用し得る。しかし、正極活物質含有層は、それら以外の公知の如何なる材料で作製されてもよい。
【0059】
正極板17aは、例えば、次のように作製される。正極活物質に導電剤や結着剤等を混合し、その混合物を分散媒中で混練することによってペースト状の正極活物質スラリーを作製する。その後、正極活物質スラリーを正極芯体上に塗布する。続いて、正極芯体に塗布された正極活物質スラリーを乾燥、及び圧縮して、正極活物質含有層を形成する。そして、正極芯体および正極活物質含有層を例えばレーザー溶断等によって切断することで、正極タブ18を有する正極板17aが形成される。
【0060】
負極板17bは、箔状の負極芯体の両側表面に負極活物質含有層を形成して構成される。負極芯体は、例えば、銅又は銅合金箔からなる。負極タブ20は、負極活物質含有層が形成されていない負極芯体自体によって形成されている。
【0061】
負極活物質含有層の負極活物質は、リチウムを可逆的に吸蔵・放出できるものであれば特に限定されず、例えば、炭素材料や、珪素材料、リチウム金属、リチウムと合金化する金属或いは合金材料や、金属酸化物などを用いることができる。なお、材料コストの観点からは、負極活物質に炭素材料を用いることが好ましく、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズピッチ系炭素繊維(MCF)、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス、ハードカーボンなどを用いることができる。特に、高率充放電特性を向上させる観点からは、負極活物質として、黒鉛材料を低結晶性炭素で被覆した炭素材料を用いることが好ましい。
【0062】
また、負極活物質含有層は、結着剤として、スチレンーブタジエン共重合体ゴム粒子分散体(SBR)を用い、増粘剤として、カルボキシメチルセルロース(CMC)を用い、分散媒として、水を用いて、作製されると好ましい。負極活物質含有層は、例えば、次のように作製される。負極活物質に導電剤や結着剤等を混合し、その混合物を分散媒中で混練することによってペースト状の負極活物質スラリーを作製する。その後、負極活物質スラリーを負極芯体上に塗布する。続いて、負極芯体に塗布された負極活物質スラリーを乾燥、及び圧縮すると、負極活物質含有層が形成される。そして、負極芯体および負極活物質含有層を例えばレーザー溶断等によって切断することで、負極タブ20を有する負極板17bが形成される。
【0063】
セパレータ17cとしては、非水電解質二次電池において一般に使用されている公知のものを用いることができる。例えば、ポリオレフィンからなるセパレータが好ましい。具体的には、ポリエチレンからなるセパレータのみならず、ポリエチレンの表面にポリプロピレンからなる層が形成されたものや、ポリエチレンのセパレータの表面にアラミド系の樹脂が塗布されたものを用いても良い。
【0064】
正極板17aとセパレータ17cとの界面ないし負極板17bとセパレータ17cとの界面には、無機物のフィラー層を形成してもよい。このフィラーとしては、チタン、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム等を単独もしくは複数用いた酸化物やリン酸化合物、またその表面が水酸化物などで処理されているものを用いることができる。また、このフィラー層は、正極板17a、負極板17b、又はセパレータ17cに、フィラー含有スラリーを直接塗布して形成してもよく、フィラーで形成したシートを、正極板17a、負極板17b、又はセパレータ17cに貼り付けることで形成してもよい。
【0065】
図12は、図9に続いて、密閉型電池10の組立てを示す(a)斜視図と、(b)超音波接合を示す斜視図である。図12(a)に示すように、電極体16の正極タブ18に正極集電部材34を接合するとともに、負極タブ20に負極集電部材28を接合する。
【0066】
ここで、正極集電部材34には、図6図10を参照して説明したように、他方端部34bに、反転板42、絶縁部材37、スペーサ部材44および刻印板48が一体に固定され、かつ、刻印板48と反転板42とが電気的に接続されたものが用いられる。このように反転板42等が他方端部34bに組み付けられた正極集電部材34の一方端部34aを電極体16から延出する多数の正極タブ18と重ね合わせて、超音波ホーンおよびアンビルで挟み込んで超音波接合する。これにより、各正極タブ18と正極集電部材34とが電気的に接続される。
【0067】
正極タブ18と正極集電部材34の接合工法としては、抵抗溶接では溶接棒に正極芯体であるアルミニウムが付着してしまって不適であり、レーザー溶接では正極タブ18を構成するアルミ箔の箔切れや箔細りなどが生じるため、多数枚の正極タブ18を重ねた状態で正極集電部材34に接合するのは不適である。したがって、正極タブ18と正極集電部材34の接合工法としては超音波接合が好適である。
【0068】
ただし、超音波接合において、正極タブ18と正極集電部材34に加えて、蓋部材14や電流遮断機構40の構成部材(例えば、反転板42等)などが重なった状態では超音波ホーンとアンビルとによって挟み込めない。しかし、本実施形態の密閉型電池10では、超音波ホーンとアンビルとの間に正極タブ18および正極集電部材34だけを挟みこんで超音波接合することができ、多数枚の正極タブを正極集電部材34に確実に接合することができる。
【0069】
また、図12(a)に示すように、電極体16から延出する負極タブ20に負極集電部材28を接合する場合にも、同様の理由から、超音波接合が好適に用いられる。ここで負極タブ20に接合される負極集電部材28には、導通部材30(図1参照)を事前に取り付けてもよいし、あるいは、負極タブ20に接合された後に導通部材30を負極集電部材28に取り付けてもよい。
【0070】
続いて、図13(a),(b)に示すように、正極集電部材34に固定された刻印板48に柱状部材36bの下端部を例えばレーザー溶接等によって接合する。
【0071】
続いて、図14(a),(b)に示すように、絶縁部材53を正極集電部材34に組み付ける。絶縁部材53の裏面には、矩形枠状の凸部が形成されており、この凸部がスペーサ部材44の矩形枠状の側壁の内側に嵌り込むことによって、絶縁部材53がスペーサ部材44を介して正極集電部材34に対して位置決めされる。また、図示していないが、負極集電部材28には絶縁部材33が組み付けられる。
【0072】
続いて、図15(a),(b)に示すように、図5を参照して説明した蓋部材14を、電極体16に取り付けられた正極集電部材34に組み付ける。具体的には、正極集電部材34に取り付けられた柱状部材36bを蓋部材14に取り付けられた筒状部材36aに挿入し、柱状部材36bの上端部外周と筒状部材36aの上端部内周とを例えばレーザー溶接等によって接合する。これにより、柱状部材36bと筒状部材36aとが固定されると共に電気的に接続される。また、負極集電部材28については、負極集電部材28に予め固定されている導通部材30を蓋部材14、絶縁部材26および負極外部端子24nを貫通させた状態に配置する。これにより、図15(c)に示すように、電極体16に接続されている正極集電部材34および負極集電部材28に蓋部材14が組み付けられる。
【0073】
続いて、図16に示すように、導通部材36の筒状部材36aの上端部外周と正極外部端子24pとを例えばレーザー溶接等によって接合する。これにより、電極体16の正極タブ18から、正極集電部材34、反転板42、刻印板48、柱状部材36bおよび筒状部材36aを経由して、正極外部端子24pに至る正極端子部22pの電流経路が形成される。
【0074】
また、負極端子部22nについては、まず、導通部材30の上端部をカシメ固定し、次いで、カシメられた上端部の外周を例えばレーザー溶接等によって負極外部端子24nに接合する。これにより、電極体16の負極タブ20から、負極集電部材28および導通部材30を経由して、負極外部端子24nに至る負極端子部22nの電流経路が形成される。
【0075】
このように蓋部材14が連結された電極体16をケース12(図1参照)に上方から収容し、蓋部材14によってケース12の開口部を閉じる。そして、蓋部材14の外周全体を例えばレーザー溶接等によって気密状態に接合する。これにより、密閉型電池10の組立てが完了する。
【0076】
最後に、蓋部材14の注液口15(図1参照)から非水電解質溶液を注入してから、注液口15を密封する。これにより、密閉型電池10の製造が完了する。
【0077】
非水電解質の溶媒としては、特に限定されるものではなく、非水電解質二次電池に従来から用いられてきた溶媒を使用することができる。例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート(VC)などの環状カーボネート;ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)などの鎖状カーボネート;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトンなどのエステルを含む化合物;プロパンスルトンなどのスルホン基を含む化合物;1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,2-ジオキサン、1,4-ジオキサン、2-メチルテトラヒドロフランなどのエーテルを含む化合物;ブチロニトリル、バレロニトリル、n-ヘプタンニトリル、スクシノニトリル、グルタルニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、1,2,3-プロパントリカルボニトリル、1,3,5-ペンタントリカルボニトリルなどのニトリルを含む化合物;ジメチルホルムアミドなどのアミドを含む化合物などを用いることができる。特に、これらのHの一部がFにより置換されている溶媒が好ましく用いられる。また、これらを単独又は複数組み合わせて使用することができ、特に環状カーボネートと鎖状カーボネートとを組み合わせた溶媒や、さらにこれらに少量のニトリルを含む化合物やエーテルを含む化合物が組み合わされた溶媒が好ましい。
【0078】
また、非水電解質の非水系溶媒としてイオン性液体を用いることもでき、この場合、カチオン種、アニオン種については特に限定されるものではないが、低粘度、電気化学的安定性、疎水性の観点から、カチオンとしては、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、4級アンモニウムカチオンを、アニオンとしては、フッ素含有イミド系アニオンを用いた組合せが特に好ましい。
【0079】
さらに、非水電解質に用いる溶質としても、従来から非水電解質二次電池において一般に使用されている公知のリチウム塩を用いることができる。そして、このようなリチウム塩としては、P、B、F、O、S、N、Clの中の一種類以上の元素を含むリチウム塩を用いることができ、具体的には、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(FSO22、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22、LiN(CF3SO2)(C49SO2)、LiC(C25SO23、LiAsF6、LiClO4、LiPF22などのリチウム塩及びこれらの混合物を用いることができる。特に、非水電解質二次電池における高率充放電特性や耐久性を高めるためには、LiPF6を用いることが好ましい。
【0080】
また、溶質としては、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩を用いることもできる。このオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩としては、LiBOB(リチウム-ビスオキサレートボレート)の他、中心原子にC24 2-が配位したアニオンを有するリチウム塩、例えば、Li[M(C24xy](式中、Mは遷移金属、周期律表の13族,14族,15族から選択される元素、Rはハロゲン、アルキル基、ハロゲン置換アルキル基から選択される基、xは正の整数、yは0又は正の整数である。)で表わされるものを用いることができる。具体的には、Li[B(C24)F2]、Li[P(C24)F4]、Li[P(C2422]などがある。ただし、高温環境下においても負極の表面に安定な被膜を形成するためには、LiBOBを用いることが最も好ましい。
【0081】
なお、上記溶質は、単独で用いるのみならず、2種以上を混合して用いても良い。また、溶質の濃度は特に限定されないが、非水電解液1リットル当り0.8~1.7モルであることが望ましい。更に、大電電流での放電を必要とする用途では、上記溶質の濃度が非水電解液1リットル当たり1.0~1.6モルであることが望ましい。
【0082】
上記したように本実施形態の密閉型電池10では、電極体16から延出する正極タブ18は正極集電部材34の一方端部34aに接合され、正極集電部材34の他方端部34bに形成された収容凹部35の周縁部に反転板42の外周部が接合される。また、反転板42の内周部が刻印板48の中央領域に位置する脆弱部52に接合され、反転板42において脆弱部52の外周側に位置する部分が柱状部材36bの下端部に接合され、柱状部材36bの上端部が電池外部において筒状部材36aに接合されている。このように構成したことで、正極タブ18および正極集電部材34だけを超音波ホーンおよびアンビル間に挟み込んで超音波接合することができ、他の抵抗溶接やレーザー溶接に比べて良好に接合することができる。
【0083】
なお、本開示は、上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能である。
【0084】
例えば、上記においては、正極集電部材34の他方端部において厚み方向の内部に形成される収容凹部35が扁平な円柱状空間を含む形状に形成される場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図17に示すように、収容凹部35aは、扁平が円錐台状空間を含む形状に形成されてもよい。このように収容凹部35が平坦な底面と傾斜した側壁面とを有する形状に形成することで、収容凹部35aの底部の剛性が高くなる。したがって、扁平な円柱状空間を含む形状とした場合より底部の厚みを薄くしても、下方から上方に作用する電池内圧に対して撓みにくくなる。その結果、反転変形した反転板42を収容した状態に維持するのに十分な深さの空間を確保することできる。
【0085】
また、上記の密閉型電池10においては電流遮断機構40を正極端子部22pに設けた例について説明したが、これに限定されるものではなく、電流遮断機構を負極端子部22nに設けてもよい。
【符号の説明】
【0086】
10 密閉型電池
12 ケース
14 蓋部材
15 注液口
16 電極体
17a 正極板
17b 負極板
17c セパレータ
18 正極タブ(電極タブ)
20 負極タブ(電極タブ)
22n 負極端子部
22p 正極端子部
24n 負極外部端子
24p 正極外部端子
26,33,37,53 絶縁部材
28 負極集電部材
30,36 導通部材
32,38 ガスケット
34 正極集電部材
34a 一方端部
34b 他方端部
34c 段差部
35,35a 収容凹部
36a 筒状部材
36b 柱状部材
39 フランジ部
40 電流遮断機構
42 反転板(導電板)
42a 外周部
42b 内周部
44 スペーサ部材
46 開口部
48 刻印板(破断板)
50 嵌合凹部
52 脆弱部
54 筒部
56 下側フランジ部
60 貫通孔
62 ピン部
R レーザー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17