(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】圧電アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H01L 41/053 20060101AFI20220825BHJP
H01L 41/09 20060101ALI20220825BHJP
H01L 41/187 20060101ALI20220825BHJP
H01L 41/083 20060101ALI20220825BHJP
H02N 2/04 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
H01L41/053
H01L41/09
H01L41/187
H01L41/083
H02N2/04
(21)【出願番号】P 2020527478
(86)(22)【出願日】2019-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2019024726
(87)【国際公開番号】W WO2020004269
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2020-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2018123308
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】里井 新作
【審査官】加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0003312(US,A1)
【文献】特開2018-007360(JP,A)
【文献】国際公開第2008/129783(WO,A1)
【文献】特開平11-022845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/053
H01L 41/09
H01L 41/187
H01L 41/083
H02N 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子と、
該圧電素子を内部に収容した、基体および筒体を含むケースとを備え、
前記基体は、底板部と該底板部に立設された環状凸部とを有し、
該環状凸部は、第1領域と、該第1領域より下に位置し該第1領域より相対的に外径の大きな第2領域とを有し、前記第1領域の外面から前記第2領域の外面にかけて段差状の外面になっており、
前記筒体の内側に前記第1領域が挿通され、前記筒体の端面が前記第2領域の上端に当接し、前記筒体と前記第2領域とが接合されて
おり、
前記第1領域は内側に傾いており、前記第1領域の外面と前記筒体の内面との間に隙間があって、当該隙間は前記第1領域の上側のほうが下側よりも広い、圧電アクチュエータ。
【請求項2】
圧電素子と、
該圧電素子を内部に収容した、基体および筒体を含むケースとを備え、
前記基体は、底板部と該底板部に立設された環状凸部とを有し、
該環状凸部は、第1領域と、該第1領域より下に位置し該第1領域より相対的に外径の大きな第2領域とを有し、前記第1領域の外面から前記第2領域の外面にかけて段差状の外面になっており、
前記筒体の内側に前記第1領域が挿通され、前記筒体の端面が前記第2領域の上端に当接し、前記筒体と前記第2領域とが接合されており、
前記第1領域は外側に傾いており、前記第1領域の外面と前記筒体の内面との間に隙間があって、当該隙間は前記第1領域の上側のほうが下側よりも狭い、圧電アクチュエータ。
【請求項3】
圧電素子と、
該圧電素子を内部に収容した、基体および筒体を含むケースとを備え、
前記基体は、底板部と該底板部に立設された環状凸部とを有し、
該環状凸部は、第1領域と、該第1領域より下に位置し該第1領域より相対的に外径の大きな第2領域とを有し、前記第1領域の外面から前記第2領域の外面にかけて段差状の外面になっており、
前記筒体の内側に前記第1領域が挿通され、前記筒体の端面が前記第2領域の上端に当接し、前記筒体と前記第2領域とが接合されており、
前記筒体と前記第2領域との接合部は、断面で見て前記筒体の外側の位置に凹部を有する、圧電アクチュエータ。
【請求項4】
前記筒体は、第3領域と、該第3領域より上に位置し該第3領域より相対的に内径の小さな第4領域とを有し、前記第3領域の内面から前記第4領域の内面にかけて段差状の内面になっており、
前記第3領域の内側に前記第1領域が挿通されている請求項1
乃至請求項3のうちのいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
【請求項5】
前記筒体の外径は、前記第2領域の外径と同じかまたはそれよりも小さい請求項
1乃至請求項3のうちのいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
【請求項6】
前記筒体と前記第2領域との接合部が、断面で見て前記筒体の端面の中央よりも外側に設けられている請求項1乃至請求項
5のうちのいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
【請求項7】
前記筒体と前記第2領域との接合部が、断面で見て前記筒体の端面の全域にわたって設けられている請求項1乃至請求項
5のうちのいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
【請求項8】
前記接合部は、前記筒体に接する部位において、前記筒体よりも外側に突出する凸部を有する請求項
3に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項9】
前記接合部は、前記第2領域に接する部位において、前記第2領域よりも外側に突出する凸部を有する請求項
3に記載の圧電アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧電アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電アクチュエータとして、例えば特開平4-165683号公報(以下、特許文献1とする)に記載の圧電アクチュエータが知られている。圧電アクチュエータは、圧電素子と、該圧電素子を内部に収容した、基体および筒体を含むケースとを備えている。この圧電アクチュエータは、例えば、筒体の下端部がステップ状に広がっていて、基体の上面に設けた環状凸部が前記筒体の下端部の内側に嵌め込まれ、圧電素子に圧縮荷重を印加した状態で接合されている。
【発明の概要】
【0003】
本開示の圧電アクチュエータは、圧電素子と、該圧電素子を内部に収容した、基体および筒体を含むケースとを備え、前記基体は、底板部と該底板部に立設された環状凸部とを有し、該環状凸部は、第1領域と、該第1領域より下に位置し該第1領域より相対的に外径の大きな第2領域とを有し、前記第1領域の外面から前記第2領域の外面にかけて段差状の外面になっており、前記筒体の内側に前記第1領域が挿通され、前記筒体の端面が前記第2領域の上端に当接し、前記筒体と前記第2領域とが接合されており、前記第1領域は内側に傾いており、前記第1領域の外面と前記筒体の内面との間に隙間があって、当該隙間は前記第1領域の上側のほうが下側よりも広い。
また、本開示の圧電アクチュエータは、圧電素子と、該圧電素子を内部に収容した、基体および筒体を含むケースとを備え、前記基体は、底板部と該底板部に立設された環状凸部とを有し、該環状凸部は、第1領域と、該第1領域より下に位置し該第1領域より相対的に外径の大きな第2領域とを有し、前記第1領域の外面から前記第2領域の外面にかけて段差状の外面になっており、前記筒体の内側に前記第1領域が挿通され、前記筒体の端面が前記第2領域の上端に当接し、前記筒体と前記第2領域とが接合されており、前記第1領域は外側に傾いており、前記第1領域の外面と前記筒体の内面との間に隙間があって、当該隙間は前記第1領域の上側のほうが下側よりも狭い。
また、本開示の圧電アクチュエータは、圧電素子と、該圧電素子を内部に収容した、基体および筒体を含むケースとを備え、前記基体は、底板部と該底板部に立設された環状凸部とを有し、該環状凸部は、第1領域と、該第1領域より下に位置し該第1領域より相対的に外径の大きな第2領域とを有し、前記第1領域の外面から前記第2領域の外面にかけて段差状の外面になっており、前記筒体の内側に前記第1領域が挿通され、前記筒体の端面が前記第2領域の上端に当接し、前記筒体と前記第2領域とが接合されており、前記筒体と前記第2領域との接合部は、断面で見て前記筒体の外側の位置に凹部を有する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】圧電アクチュエータの一例を示す概略斜視図である。
【
図2】
図1に示すA-A線で切断した圧電アクチュエータの一例の概略縦断面図である。
【
図3】
図2に示す圧電アクチュエータの領域B(要部)の拡大断面図である。
【
図4】
図1に示すA-A線で切断した圧電アクチュエータの他の例の概略縦断面図である。
【
図5】
図4に示す圧電アクチュエータの領域B(要部)の拡大断面図である。
【
図6】圧電アクチュエータの他の例の要部拡大断面図である。
【
図7】圧電アクチュエータの他の例の要部拡大断面図である。
【
図8】圧電アクチュエータの他の例の要部拡大断面図である。
【
図9】圧電アクチュエータの他の例の要部拡大断面図である。
【
図10】圧電アクチュエータの他の例の要部拡大断面図である。
【
図11】圧電アクチュエータの他の例の要部拡大断面図である。
【
図12】圧電アクチュエータの他の例の要部拡大断面図である。
【
図13】圧電アクチュエータの他の例の要部拡大断面図である。
【
図14】圧電アクチュエータの他の例の要部拡大断面図である。
【
図15】圧電アクチュエータの他の例の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下、本開示の圧電アクチュエータの実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0006】
図1~
図3に示す圧電アクチュエータ10は、圧電素子1と、圧電素子1を内部に収容した、基体21および筒体22を含むケース2とを備えている。
【0007】
圧電アクチュエータ10を構成する圧電素子1は、
図2に示すように、例えば圧電体層と内部電極層とが交互に複数積層された活性部と、活性部の積層方向の両端に積層された圧電体層からなる不活性部とを有する積層体を備えた積層型の圧電素子である。ここで、活性部は駆動時に圧電体層が積層方向に伸長または収縮する部位であり、不活性部は駆動時に圧電体層が積層方向に伸長または収縮しない部位である。
【0008】
圧電素子1を構成する積層体は、例えば縦4mm~7mm、横4mm~7mm、高さ20mm~50mm程度の直方体状に形成されている。なお、積層体は、例えば六角柱形状や八角柱形状などであってもよい。
【0009】
積層体を構成する圧電体層は、圧電特性を有する圧電セラミックスからなり、当該圧電セラミックスは平均粒径が例えば1.6μm~2.8μmとされたものである。圧電セラミックスとしては、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PbZrO3-PbTiO3)を有するペロブスカイト型酸化物、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)などを用いることができる。
【0010】
また、積層体を構成する内部電極層は、例えば銀、銀-パラジウム、銀-白金、銅などの金属を主成分とするものである。例えば、正極と負極とがそれぞれ積層方向に交互に配置されている。積層体の一つの側面に正極が引き出され、他の側面に負極が引き出されている。この構成により、活性部において、積層方向に隣り合う内部電極層同士の間に挟まれた圧電体層に駆動電圧を印加することができる。
【0011】
なお、積層体には、応力を緩和するための層であって内部電極層として機能しない金属層等が含まれていてもよい。
【0012】
そして、内部電極層の正極または負極(もしくはグランド極)が引き出された積層体の対向する一対の側面には、それぞれ外部電極が設けられ、引き出された内部電極層と電気的に接続されている。外部電極は、例えば銀およびガラスを有するメタライズ層である。
【0013】
一方、積層体の対向する他の一対の側面には、内部電極層の正極および負極(もしくはグランド極)の両極が露出しており、この側面には必要により絶縁体を有する被覆層が設けられている。被覆層を設けることにより、駆動時に高電圧をかけた際に発生する両極間での沿面放電を防止することができる。この被覆層となる絶縁体としては、セラミック材料が挙げられ、特に、圧電アクチュエータを駆動した際の積層体の駆動変形(伸縮)に追随でき、被覆層が剥がれて沿面放電が生じるおそれのないように、応力によって変形可能な材料を用いることができる。具体的には、応力が生じると局所的に相変態して体積変化して変形可能な部分安定化ジルコニア、Ln1-XSiXAlO3+0.5X(Lnは、Sn,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,TmおよびYbのうちから選ばれるいずれか少なくとも一種を示す。x=0.01~0.3)などのセラミック材料、あるいは、生じた応力を緩和するように結晶格子内のイオン間距離が変化するチタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛などの圧電材料が挙げられる。この被覆層は、例えばインク状にした後、ディッピングやスクリーン印刷によって積層体の側面に塗布され、焼結することによって形成される。
【0014】
圧電アクチュエータ10を構成するケース2は、基体21、筒体22および蓋体23を含んでいる。そして、ケース2は圧電素子1を内部に収容しており、基体21の上面に圧電素子1の下端面が当接し、蓋体23の下面に圧電素子1の上端面が当接している。
【0015】
基体21、筒体22および蓋体23は、例えばSUS304やSUS316Lなどの金属体を有する。
【0016】
筒体22は、上下に延びる両端開口の筒状体である。この筒体22は、例えば、所定の形状でシームレス管を作製した後、圧延加工や静水圧プレスなどによりベロー(蛇腹)形状に形成されたものである。筒体22は、圧電素子1に電圧を印加した際に圧電素子1の伸縮に追従できるように、所定のバネ定数を有しており、厚み、溝形状および溝数によってそのバネ定数を調整している。例えば、筒体22の厚みは例えば0.1~0.5mmとされる。
【0017】
蓋体23は、外径が筒体22の一端側開口の内径と同じ程度に形成されたものである。蓋体23は、筒体22の一端側開口から嵌め込まれ、筒体22の一端側開口の近傍(上端近傍)の内壁にその側面(外周)を例えば溶接により接合されている。
【0018】
基体21は、底板部211と、該底板部211に立設された環状凸部212とを有している。底板部211は円板状のもので、図に示す例では周縁部が他の部位よりも薄肉になっている。なお、基体21にはリードピン33を挿通可能な貫通孔が2つ形成されており、この貫通孔にリードピン33を挿通させている。そして、貫通孔の隙間には例えば軟質ガラス34が充填されていて、リードピン33が固定されている。リードピン33の先端にはリード線31が接続されているとともに、このリード線31がはんだ32で圧電素子1の外部電極に取り付けられていて、これらを介して圧電素子1に駆動電圧を印加するようになっている。
【0019】
そして、底板部211の上面に立設された環状凸部212は、上側に位置する相対的に外径の小さな第1領域2121と、下側に位置する相対的に外径の大きな第2領域2122とを有し、第1領域2121の外面から第2領域2122の外面にかけて段差状の外面になっている。ここで、相対的に外径の小さな第1領域2121とは、第1領域21221の外径が第2領域2122の外径よりも小さいことを意味している。同様に、相対的に外径の小さな第1領域2121とは、第1領域2121の外径が第2領域2122の外径よりも小さいことを意味している。より具体的には、第1領域2121は第2領域2122よりも薄くなっている。
【0020】
第1領域2121の外径は例えば5mm~20mmとされ、第2領域2122の外径は例えば5.2mm~20.2mmとされる。そして、第1領域2121の厚みと第2領域2122の厚みとの差は、例えば0.1mm~7.6mmとされる。
【0021】
さらに、筒体22の内側に第1領域2121が挿通され、筒体22の端面が第2領域2122の上端に当接し、筒体22と第2領域2122とが接合されている。このとき、筒体22の下端部から第2領域2122の上端部にかけて接合部4が形成される。筒体22と第2領域2122との接合には、例えば溶接が用いられる。
【0022】
このような構成によれば、第1領域2121によって、上下の振動を妨げにくくしつつ、水平方向の変形を抑制することができる。したがって、筒体22と環状凸部212との接合部4にクラックが生じにくく、長期間にわたって変位量が安定するとともに、耐久性も向上する。
【0023】
ここで、
図4および
図5に示すように、筒体22は、下側に位置する相対的に内径の大きな第3領域221と、上側に位置する相対的に内径の小さな第4領域222とを有し、第3領域221の内面から第4領域222の内面にかけて段差状の内面になっており、第3領域221の内側に第1領域2121が挿通されていてもよい。
【0024】
第3領域221の内径は例えば5.01mm~20.01mmとされ、第4領域222の内径は例えば4.91mm~19.91mmとされる。そして、第3領域221の厚みと第4領域222の厚みとの差は、例えば0.05mm~0.45mmとされる。
【0025】
これにより、引張りおよび圧縮荷重がかかる際に、第3領域221と第4領域222との境界部分および第1領域2121と第2領域2122との境界部分(厚い領域と薄い領域との境界部分)で応力が分散するので、接合部4にかかる応力が緩和される。
【0026】
また、
図6に示すように、筒体22の外径は第2領域2122の外径と同じかまたはそれより小さくてもよい。圧縮荷重がかかる際に、筒体22が外側に膨らむ(倒れる)方向の負荷がかかりにくくなり、接合部4にかかる応力が緩和される。
【0027】
また、
図7に示すように、筒体22と第2領域2122との接合部4が、断面で見て筒体22の端面の中央よりも外側に設けられていてもよく、この場合、筒体22の端面の中央よりも内側が接合されていないので、接合部にかかる応力が緩和される。
【0028】
一方、
図8に示すように、筒体22と第2領域2122との接合部4が、断面で見て筒体22の端面の全域にわたって設けられていてもよく、この場合、接合部が最も強固に固定されているので、引張り圧縮荷重をよく伝えることができる。
【0029】
また、
図9に示すように、第1領域2121は内側に傾いており、第1領域2121の外面と筒体22の内面との間に隙間があって、当該隙間は第1領域2121の上側のほうが下側よりも広くなっていてもよい。この構成によれば、圧電素子1の伸縮駆動により、第1領域2121と筒体22との間に圧電素子1の伸縮方向の動きが生じたとしても第1領域2121と筒体22とが擦れることがなく、長期間にわたって変位量が安定する。このとき、第1領域2121の傾きは、圧電素子1の伸縮方向に対し、内側に向かって例えば1~30度の範囲に設定される。
【0030】
一方、
図10に示すように、第1領域2121は外側に傾いており、第1領域2121の外面と筒体22の内面との間に隙間があって、当該隙間は第1領域2121の上側のほうが下側よりも狭くなっていてもよい。この構成によれば、第1領域2121の外面と筒体22の内面との間の隙間に結露が生じたとしても、結露した水分をトラップし、圧電素子1へ水分が伝わらないようにすることができる。
【0031】
このとき、第1領域2121の傾きは、圧電素子1の伸縮方向に対し、外側に向かって例えば1~30度の範囲に設定される。なお、第1領域2121の外面と筒体22の内面との距離が最も近い部位であっても、これらが接触しない程度の隙間があるのがよい。
【0032】
次に、
図11のように、筒体22と第2領域2122との接合部4は、断面で見て筒体22の外側の位置に凹部41を有していてもよい。これにより、接合部4に加わる応力を分散させることができる。その結果、接合部4にクラックが生じるおそれを低減することができる。
【0033】
また、凹部41は、筒体22の外周に沿って環状に位置していてもよい。また、凹部41は、断面で見て弓なりの形状であってもよい。この場合は、接合部4に加わる応力をより緩和することができる。これは筒体22の外周に沿って環状に弓なりの凹部41を設けることで応力が加わった時に凹部41がひずむが、円環状に凹部41があることで、応力が凹部に沿って円環状に分散することができるからである。このことにより接合部4のうち、筒体22の内側の領域には応力が加わらなくなり、筒体22と環状凸部212との境目に位置する接合部4から亀裂が生じたり、はがれたりするおそれを低減するこができる。
【0034】
また、
図12のように、接合部4は、筒体22に接する部位において、筒体22よりも外側に突出する凸部42を有していてもよい。接合部4は、特に筒体22に接する部位がクラックの起点になるおそれがある。接合部4が、筒体22に接する部位において、筒体22よりも外側に突出する凸部42を有していることにより、クラックの起点となるおそれがある部位の接合材の量を増やすことができる。そのため、筒体22に接する部位の強度を高めることができる。その結果、接合部4のうち筒体22に接する部位を起点としてクラックが生じるおそれを低減することができる。
【0035】
また、凸部42は、第2領域2122に接する部位において、第2領域2122よりも外側に突出して位置していてもよい。接合部4と第2領域2122との境界は、応力が集中するため、クラックの起点になるおそれがある。凸部42が、第2領域2122に接する部位において、第2領域2122よりも外側に突出して位置していることにより、接合部4と第2領域2122との境界の近くの接合材の量を増やすことができるため、クラックの起点となるおそれがある部位の接合材の量を増やすことができる。その結果、接合部4のうち第2領域2122に接する部位を起点としてクラックが生じるおそれを低減することができる。
【0036】
なお、凸部42は、円環状の凹部41に沿って、円環状に設けられていてもよい。これにより、接合部4の全周において、接合部4のうち筒体22に接する部位を起点としてクラックが生じるおそれを低減することができる。
【0037】
また、
図13のように、筒体22は、下側に位置する相対的に内径の大きな第3領域221と、上側に位置する相対的に内径の小さな第4領域222とを有し、第3領域221の内面から第4領域222の内面にかけて段差状の内面になっており、第3領域221の内側に環状凸部212の第1領域2121が挿通されていてもよい。これにより、応力が分散する効果に加え、圧電素子1の軸ブレを抑制できる。
【0038】
また、
図14のように、第3領域221の長さは、第1領域2121よりも短くてもよい。これにより、第2領域2122と第4領域222との間に空間を設けることができる。その結果、瞬間的に大きな応力が加わるような場合でも、凹部41での応力緩和を優先させることができる。
【0039】
また、
図15のように、第3領域221の厚みは、第1領域2121よりも薄くてもよい。これにより、第1領域2121と第3領域221との間に空間を設けることができる。その結果、瞬間的に大きな応力が加わるような場合でも、凹部41での応力緩和を優先させることができる。
【0040】
凹部41の形成方法は、例えば溶接方法としてレーザー溶接を用い、レーザーの照射領域の中央位置にエネルギーが集中するように焦点を制御して、円環状に溶接を行う。また照射方法をパルス照射しながら位置をシフトさせることで照射領域の外周に凸部42を設けることができるので、円環状に溶接を行うことで凸部42を円環状に設けることができる。
【0041】
次に、圧電アクチュエータの製造方法について説明する。
【0042】
まず、圧電体層となるセラミックグリーンシートを作製する。具体的には、圧電セラミックスの仮焼粉末と、アクリル系,ブチラール系等の有機高分子を有するバインダーと、可塑剤とを混合してセラミックスラリーを作製する。そして、周知のドクターブレード法、カレンダーロール法等のテープ成型法を用いることにより、このセラミックスラリーからセラミックグリーンシートを作製する。圧電セラミックスとしては、圧電特性を有するものであればよく、例えば、PbZrO3-PbTiO3を有するペロブスカイト型酸化物などを用いることができる。また、可塑剤としては、フタル酸ジブチル(DBP),フタル酸ジオクチル(DOP)などを用いることができる。
【0043】
次に、内部電極層となる導電性ペーストを作製する。具体的には、銀-パラジウム合金の金属粉末にバインダーおよび可塑剤を添加混合することによって、導電性ペーストを作製する。この導電性ペーストを上記のセラミックグリーンシート上にスクリーン印刷法を用いて印刷し、次に、導電性ペーストが印刷されたセラミックグリーンシートを複数枚積層するとともに積層方向の両端部に導電性ペーストが印刷されていないセラミックグリーンシートを複数枚積層して積層成形体を得る。この積層成形体を所定の温度で脱バインダー処理した後、900~1200℃で焼成することによって積層体が得られる。
【0044】
次に、積層体の側面のうち両内部電極層(正極および負極)が導出された一対の側面に、酸化物のインクをスクリーン印刷によって印刷した後、900~1200℃で焼成し、被覆層を形成する。酸化物のインクは、酸化物の粉体を溶剤、分散剤、可塑剤、及びバインダーの溶液に分散させた後、3本ロールを数回通すことにより、粉体の凝集を解砕するとともに、粉体を分散させて作製される。
【0045】
次に、メタライズ層から成る外部電極を形成する。まず、銀粒子およびガラス粉末にバインダーを加えて銀ガラス含有導電性ペーストを作製し、内部電極層の正極または負極が導出された積層体の対向する一対の側面にスクリーン印刷法によって印刷し、500~800℃程度の温度で焼き付け処理を行なう。これにより、メタライズ層から成る外部電極を形成して圧電素子1が完成する。
【0046】
次に、圧電素子1の外部電極とリード線31とをはんだ付けする。また、穴加工にて貫通孔を形成するとともに、図に示すような環状凸部212を形成した基体21を用意し、この基体21に形成された2つの貫通孔にそれぞれリードピン33を挿通するとともに隙間に軟質ガラス34を充填して固定し、さらに基体の上面21に圧電素子1の下端面を接着剤で接着する。そして、圧電素子1の外部電極にはんだにてはんだ付けしたリード線31と基体21に取り付けられたリードピン33とをはんだで接続する。
【0047】
ここで、
図2~
図10環状凸部212の形状とするには、基体21となる金属を所望の形状となるように旋盤で研削または鋳造すればよい。
【0048】
次に、例えばSUS304製のシームレスの円筒状の筒体22に圧延加工によりベロー形状を形成する。ここで、この筒体22の一端側(上端側)および他端側(下端側)は開口している。なお、圧延加工時に金型形状を変更することにより、溝部の厚み、及び曲率半径の変更することができる。
【0049】
また、筒体22を
図4~
図6に示すような形状とするには、端部を旋盤で研磨してもよく、最初から鋳造で作製するのがよい。
【0050】
この筒体の一端側(上端側)の開口を塞ぐように、SUS304製の蓋体23を当該開口に嵌め込んで、例えばレーザー溶接によって溶接する。
【0051】
次に、筒体22および蓋体23を基体21に接着した圧電素子1に被せ、所定の荷重で筒体22を引張り、圧電素子1に荷重を加えた状態で、筒体22と基体21とを例えばレーザー溶接によって溶接する。ここで、
図7および
図8に示すように、接合部4の形成される領域を調整するには、レーザー強度を調整すればよい。
【0052】
最後に、基体21に取り付けられたリードピン33に0.1~3kV/mmの直流電界を印加し、積層体を分極することによって、本実施形態の圧電アクチュエータ10が完成する。
【符号の説明】
【0053】
10・・・圧電アクチュエータ
1・・・圧電素子
2・・・ケース
21・・・基体
211・・・底板部
212・・・環状凸部
2121・・・第1領域
2122・・・第2領域
22・・・筒体
221・・・第3領域
222・・・第4領域
23・・・蓋体
31・・・リード線
32・・・はんだ
33・・・リードピン
34・・・軟質ガラス
4・・・接合部
41・・・凹部
42・・・凸部