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特許7129480ポリ乳酸3Dプリント材料及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】ポリ乳酸3Dプリント材料及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/04 20060101AFI20220825BHJP
   B29B 7/48 20060101ALI20220825BHJP
   B29B 11/10 20060101ALI20220825BHJP
   B29B 9/06 20060101ALI20220825BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20220825BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20220825BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20220825BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20220825BHJP
【FI】
C08L67/04 ZBP
B29B7/48
B29B11/10
B29B9/06
B29C64/106
B33Y70/00
B29C64/314
C08L101/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020533108
(86)(22)【出願日】2019-05-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 CN2019088826
(87)【国際公開番号】W WO2019237914
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2020-06-16
(31)【優先権主張番号】201810618934.X
(32)【優先日】2018-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520070792
【氏名又は名称】金発科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】KINGFA SCI. & TECH. CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.33 Kefeng Road, Science City, Hi-Tech Industrial Development Zone, Guangzhou, Guangdong 510663, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】熊 凱
(72)【発明者】
【氏名】袁 志敏
(72)【発明者】
【氏名】蔡 ▲トン▼旻
(72)【発明者】
【氏名】黄 険波
(72)【発明者】
【氏名】曾 祥斌
(72)【発明者】
【氏名】焦 建
(72)【発明者】
【氏名】盧 昌利
(72)【発明者】
【氏名】楊 暉
(72)【発明者】
【氏名】麦 開錦
(72)【発明者】
【氏名】董 学騰
(72)【発明者】
【氏名】区 偉達
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107936502(CN,A)
【文献】特開2016-037571(JP,A)
【文献】特開2016-169456(JP,A)
【文献】特開2015-150781(JP,A)
【文献】特開2008-273004(JP,A)
【文献】特開2007-002243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸3Dプリント材料であって、調製原料として、
(a)結晶性又は半結晶性ポリ乳酸40~95重量部、
(b)非結晶性ポリ乳酸5~60重量部、及び
(c)加工助剤0~1.0重量部
を含み、前記ポリ乳酸3Dプリント材料において、ポリD-乳酸の重量がポリ乳酸の全重量の0.5%~8%を占め、前記非結晶性ポリ乳酸の平均粒子径が1μm未満であって、恒温恒湿箱(温度60°C、湿度60%)に12日間放置した後の粘度保持率が70%以上である、ことを特徴とするポリ乳酸3Dプリント材料。
【請求項2】
調製原料として、
(a)結晶性又は半結晶性ポリ乳酸50~90重量部、
(b)非結晶性ポリ乳酸10~50重量部、及び
(c)加工助剤0~1.0重量部
を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸3Dプリント材料。
【請求項3】
前記ポリ乳酸3Dプリント材料において、ポリD-乳酸の重量がポリ乳酸の全重量の1.4%~6%を占める、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリ乳酸3Dプリント材料。
【請求項4】
前記加工助剤は潤滑剤である、ことを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸3Dプリント材料。
【請求項5】
前記加工助剤は、ステアラミド、オレアミド、エルカミド、ステアリン酸亜鉛、金属石鹸の高分子複合エステル、エチレンビスステアラミド、ポリエチレンワックス、シリコーン系潤滑剤のうちの少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸3Dプリント材料。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のポリ乳酸3Dプリント材料の調製方法であって、
重量部基準でポリ乳酸3Dプリント材料の調製原料のうちの各物質を秤量して、均一に混合し、混合物を得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた混合物を二軸押出機に投入して、押出して造粒し、組成物を得るステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた組成物を単軸押出機において延伸して、前記ポリ乳酸3Dプリント材料を得るステップ(3)と、
を含み、
前記ステップ(3)では、水タンクの温度が40-60℃である、
ことを特徴とする調製方法。
【請求項7】
前記ステップ(2)では、二軸押出機の温度が160-180℃である、ことを特徴とする請求項6に記載のポリ乳酸3Dプリント材料の調製方法。
【請求項8】
前記ステップ(3)では、単軸押出機において延伸する条件としては、延伸押出速度が10-60Kg/hであり、押出線材の線径が1.5-3.5cmである、ことを特徴とする請求項6に記載のポリ乳酸3Dプリント材料の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸3Dプリント材料及びその調製方法に関し、高分子材料の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
澱粉質に富むトウモロコシは、現代のバイオテクノロジーによって無色透明の液体である乳酸を生成し、次に特殊な重合プロセスを経て、粒状ポリマー材料であるポリ乳酸(PLA)を生成することができる。PLAは、最高の引張強さや延性を有し、溶融押出成形、射出成形、インフレーション成形、発泡成形や真空成形などの一般的なさまざまな加工方式で生産できる。ただし、PLAは、現在、汎用プラスチック、特に3Dプリントの消耗品の基材として、大規模で普及して使用することには一定の制限があり、これは、主にポリ乳酸が非常に脆く、ノッチ付き衝撃強度が3KJ/m未満であることから、その広範な適用が大幅に制限されるためである。したがって、押出安定性に影響を与えることなくポリ乳酸の靭性を向上することは、3Dプリント消耗品におけるポリ乳酸の用途を拡大するために解決しなければならない課題となっている。
【0003】
発明の名称が「3DプリントPLA消耗品及びその調製方法」である特許(出願番号:201510069937.9)は、3DプリントPLA消耗品及びその調製方法を提供しており、この3DプリントPLA消耗品は、PLAプラスチック99.3~99.7重量%、顔料0.1~0.3重量%、助剤0.2~0.4重量%から構成されるが、ポリ乳酸Dの含有量や線材の老化特性については言及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許(出願番号:201510069937.9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来技術の欠点を解決するために、良好な耐老化性を有するポリ乳酸3Dプリント材料及びその調製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成させるために、本発明が採用する技術案は、以下のとおりである。ポリ乳酸3Dプリント材料であって、調製原料として、
(a)結晶性又は半結晶性ポリ乳酸40~95重量部、
(b)非結晶性ポリ乳酸5~60重量部、及び
(c)加工助剤0~1.0重量部
を含み、前記ポリ乳酸3Dプリント材料において、ポリD-乳酸の重量がポリ乳酸の全重量の0.5%~8%を占める。
【0007】
ポリ乳酸にはポリD-乳酸とポリL-乳酸が含まれ、純粋なポリL-乳酸の旋光度は-156°、純粋なポリD-乳酸の旋光度は156°である。光学純度は、ポリ乳酸の結晶性と結晶化度に直接影響し、光学純度が高いほど、ポリ乳酸の結晶化速度が速く、結晶化度が高くなる。光学純度が低下するに伴い、ポリ乳酸の旋光度の絶対値が低下する。純粋なポリD-乳酸又はポリL-乳酸の融点は180℃に達し、結晶性が高いため、分解速度は非常に遅く、PLAの光学純度が低下するに伴い、PLAの融点と結晶性はアモルファスになるまで低下し、PLAの分解性が向上し、それに応じて機械的特性とレオロジー特性も変化するため、ポリ乳酸材料の性能は光学純度と密接に関連している。
【0008】
上記結晶性又は半結晶性ポリ乳酸は連続相、非結晶性ポリ乳酸は分散相である。本発明は、光学純度の異なる2種のポリ乳酸を原料として、両方の割合を合理的に設定し、そしてポリD-乳酸の含有量を限定することで、良好な耐老化性を有するポリ乳酸3Dプリント材料を得る。研究から明らかなように、本発明のポリ乳酸3Dプリント材料は、恒温恒湿箱(温度60°C、湿度60%)に12日間放置した後、粘度保持率が70%以上に達する。
【0009】
上記技術案では、ポリ乳酸の総重量は、(a)結晶性又は半結晶性ポリ乳酸と(b)非結晶性ポリ乳酸の合計である。ポリD-乳酸(ポリ乳酸の右旋光体)のテスト方法は、Agilent HP6890ガスクロマトグラフを使用して、ガスクロマトグラフィーカラム内のシクロデキストリンの分子によって形成された複合体の平衡定数が異なり、乳酸の2つのエナンチオマーに対する錯化能力が異なることを利用して、ガスクロマトグラフィーによりこの2つのエナンチオマーを簡単に分離することであり、この方法によってポリ乳酸中の2つのエナンチオマーの割合が得られる。具体的なステップは次のとおりである。1.ポリD-乳酸の含有量が既知の標準溶液を調製し、クロマトグラムにおける標準溶液のピーク出現時間を記録する。2.標準サンプルの濃度とピーク面積に従って、標準曲線方程式を取得する。3.同じクロマトグラフィー条件下でのサンプルのクロマトグラムをポリ乳酸の標準液体クロマトグラムと比較し、サンプル中のポリL-乳酸及びポリD-乳酸を保持時間に基づいて決定する。外部標準法によって定量化して、サンプル中のポリD-乳酸の含有量であるポリ乳酸の右旋光体の含有量を算出する。
【0010】
本発明の前記ポリ乳酸3Dプリント材料の好ましい実施形態として、前記ポリ乳酸3Dプリント材料は、調製原料として、
(a)結晶性又は半結晶性ポリ乳酸50~90重量部、
(b)非結晶性ポリ乳酸10~50重量部、及び
(c)加工助剤0~1.0重量部
を含む。
【0011】
本発明の結晶性又は半結晶性ポリ乳酸と非結晶性ポリ乳酸の重量配合比が製造されたポリ乳酸3Dプリント材料の耐老化性に影響を及ぼす。研究から明らかなように、好ましい重量部の範囲では、得られるポリ乳酸3Dプリント材料の耐老化性がより良好である。
【0012】
本発明の前記ポリ乳酸3Dプリント材料の好ましい実施形態として、前記ポリ乳酸3Dプリント材料において、ポリD-乳酸の重量がポリ乳酸の全重量の1.4%~6%を占める。
【0013】
本発明の前記ポリ乳酸3Dプリント材料の好ましい実施形態として、前記非結晶性ポリ乳酸の平均粒子径が1μm未満である。
【0014】
本発明の前記ポリ乳酸3Dプリント材料の好ましい実施形態として、前記加工助剤は潤滑剤である。
【0015】
本発明の前記ポリ乳酸3Dプリント材料のより好ましい実施形態として、前記加工助剤は、ステアラミド、オレアミド、エルカミド、ステアリン酸亜鉛、金属石鹸の高分子複合エステル、エチレンビスステアラミド、ポリエチレンワックス、シリコーン系潤滑剤のうちの少なくとも1種である。加工助剤は、前記物質のうちの1種、2種又は複数種であってもよいが、加工助剤は前記物質に制限されない。
【0016】
本発明は、上記ポリ乳酸3Dプリント材料の調製方法をさらに提供し、
重量部基準でポリ乳酸3Dプリント材料の調製原料のうちの各物質を秤量して、均一に混合し、混合物を得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた混合物を二軸押出機に投入して、押出して造粒し、組成物を得るステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた組成物を単軸押出機において延伸して、前記ポリ乳酸3Dプリント材料を得るステップ(3)と、
を含む、上記方法を用いて製造されるポリ乳酸3Dプリント材料は3Dプリント線材である。
【0017】
本発明の前記ポリ乳酸3Dプリント材料の調製方法の好ましい実施形態として、前記ステップ(2)では、二軸押出機の温度が160-180℃である。
【0018】
本発明の前記ポリ乳酸3Dプリント材料の調製方法の好ましい実施形態として、前記ステップ(3)では、単軸押出機において延伸する条件としては、延伸押出速度が10-60Kg/hであり、押出線材の線径が1.5-3.5cmであり、水タンクの温度が40-60℃である。
【発明の効果】
【0019】
従来技術に比べて、本発明の有益な効果は、以下のとおりである。本発明は、光学純度の異なる2種のポリ乳酸を原料として、両方の割合を合理的に設定し、そしてポリD-乳酸の含有量を限定することで、良好な耐老化性を有するポリ乳酸3Dプリント材料を得る。研究から明らかなように、本発明のポリ乳酸3Dプリント材料は、恒温恒湿箱(温度60°C、湿度60%)に12日間放置した後、粘度保持率が70%以上に達する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の目的、技術案及び利点をより明瞭に説明するために、以下、特定の実施例にて本発明をさらに説明する。
【0021】
下記実施では、材料の粘度のテスト方法は、以下のとおりである。25℃で、0.1250±0.0005gのサンプルを正確に量して25ml(o-ジクロロベンゼン:フェノール=2:3質量比)の溶液に溶解し、110℃の条件下で加熱しながら樹脂が完全に溶解するまで撹拌し、粘度計で測定し、粘度の数値を小数点以下2桁で表示する。
粘度保持率:老化後の粘度/初期粘度*100%。
【0022】
実施例1
本発明のポリ乳酸3Dプリント材料の一実施例では、本実施例の前記ポリ乳酸3Dプリント材料の調製原料は表1に示される。
本実施例の前記ポリ乳酸3Dプリント材料の調製方法は、以下のとおりである。
(1)重量部基準でポリ乳酸3Dプリント材料の調製原料のうちの各物質を秤量して、均一に混合し、混合物を得た。
(2)ステップ(1)で得られた混合物を二軸押出機に投入して、160-180℃で押出して造粒し、組成物を得た。
(3)ステップ(2)で得られた組成物を単軸押出機において延伸し、前記ポリ乳酸3Dプリント材料を得た。単軸押出機において延伸する条件としては、延伸押出速度が10-60Kg/hであり、押出線材の線径が1.5-3.5cmであり、水タンクの温度が40-60℃であり、ただし、一段水タンクは40℃、二段水タンクは50℃であった。
【0023】
実施例2~7
実施例2~7の前記ポリ乳酸3Dプリント材料の調製原料は表1に示され、実施例2~7の前記ポリ乳酸3Dプリント材料の調製方法は、実施例1と同様であった。
実施例1~7で製造されたポリ乳酸3Dプリント材料を恒温恒湿(温度60°C、湿度60%)の条件で12日間放置した後、その粘度保持率を測定し、その結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
表1から分かるように、本発明は、光学純度の異なる2種のポリ乳酸を原料として、両方の割合を合理的に設定し、そしてポリD-乳酸の含有量を限定することで、良好な耐老化性を有するポリ乳酸3Dプリント材料が得られた。本発明のポリ乳酸3Dプリント材料は、恒温恒湿箱(温度60°C、湿度60%)に12日間放置した後、粘度保持率が70%以上に達した。
【0026】
効果例1
本発明の非結晶性ポリ乳酸の平均粒子径が得られたポリ乳酸3Dプリント材料の耐老化性に影響を与え、本効果例では、実施例1に記載の方法によって試験群と対照群のポリ乳酸3Dプリント材料を調製し、そして調製したポリ乳酸3Dプリント材料を恒温恒湿(温度60°C、湿度60%)の条件で12日間放置した後、その粘度保持率を測定し、その結果を表2に示す。
試験群と対照群のポリ乳酸3Dプリント材料には、非結晶性ポリ乳酸の平均粒子径が異なる点だけが異なり、具体的には、試験群と対照群のポリ乳酸3Dプリント材料は、すべて、調製原料として、(a)結晶性又は半結晶性ポリ乳酸40~95重量部、(b)非結晶性ポリ乳酸5~60重量部、及び(c)加工助剤0~1.0重量部で調製され、前記ポリ乳酸3Dプリント材料において、ポリD-乳酸の重量がポリ乳酸の全重量の0.5%~8%を占め、前記加工助剤が潤滑剤であった。
【0027】
【表2】
【0028】
表2から分かるように、非結晶性ポリ乳酸の平均粒子径が1μm未満である場合、得られたポリ乳酸3Dプリント材料の耐老化性がより良好であった。
【0029】
効果例2
本効果例では、ポリ乳酸3Dプリント材料を調製する際に、水タンクの温度による得たポリ乳酸3Dプリント材料の耐老化性への影響を調べた。
本効果例では、まず、実施例1の方法によって試験群のポリ乳酸3Dプリント材料を調製し、具体的には、試験群のポリ乳酸3Dプリント材料は、調製原料として、(a)結晶性又は半結晶性ポリ乳酸40~95重量部、(b)非結晶性ポリ乳酸5~60重量部、及び(c)加工助剤0~1.0重量部で製造され、前記ポリ乳酸3Dプリント材料において、ポリD-乳酸の重量がポリ乳酸の全重量の0.5%~8%を占め、前記非結晶性ポリ乳酸の平均粒子径が1μm未満であり、前記加工助剤が潤滑剤であった。
本効果例では、対照群であるポリ乳酸3Dプリント材料も調製されており、対照群のポリ乳酸3Dプリント材料と試験群のポリ乳酸3Dプリント材料の区別としては、対照群を調製する際に、水タンクの温度が65-75℃であった。
試験群と対照群のポリ乳酸3Dプリント材料の粘度保持率を調べて、結果を表3に示す。
【0030】
【表3】
【0031】
表3から分かるように、本発明の方法で製造されたポリ乳酸3Dプリント材料の耐老化性がより良好であった。
【0032】
効果例3
本発明の結晶性又は半結晶性ポリ乳酸と非結晶性ポリ乳酸の重量配合比が製造されたポリ乳酸3Dプリント材料の耐老化性に影響を与え、本効果例では、結晶性又は半結晶性ポリ乳酸と非結晶性ポリ乳酸との重量比を変えて、実施例1に記載の方法によってさまざまな試験群と対照群のポリ乳酸3Dプリント材料を調製し、各試験群と対照群のポリ乳酸3Dプリント材料の耐老化性をテストした。本効果例では、試験群と対照群のポリ乳酸3Dプリント材料は、調製原料として、(a)結晶性又は半結晶性ポリ乳酸、(b)非結晶性ポリ乳酸、及び(c)加工助剤で調製され、前記ポリ乳酸3Dプリント材料において、ポリD-乳酸の重量がポリ乳酸の全重量の0.5%~8%を占め、前記非結晶性ポリ乳酸の平均粒子径が1μm未満であり、前記加工助剤が潤滑剤であり、前記加工助剤が0~1.0重量部であり、各試験群と対照群のポリ乳酸3Dプリント材料では、結晶性又は半結晶性ポリ乳酸と非結晶性ポリ乳酸との重量部だけが異なり、両方の重量部及び耐老化性を表4に示す。
【0033】
【表4】
【0034】
表4から分かるように、結晶性又は半結晶性ポリ乳酸と非結晶性ポリ乳酸との重量比が本発明の範囲内である場合、製造されたポリ乳酸3Dプリント材料の耐老化性が、両方の重量比が本発明の範囲外である場合よりも明らかに良好であり、特に両方の重量比が(50~90):(10~50)である場合、製造されるポリ乳酸3Dプリント材料の耐老化性がより良好であった。
【0035】
効果例4
本効果例では、ポリ乳酸3Dプリント材料を調製する際に、ポリ乳酸3Dプリント材料におけるポリD-乳酸の重量百分率による、得られるポリ乳酸3Dプリント材料の耐老化性への影響を調べた。
本効果例では、ポリ乳酸3Dプリント材料におけるポリD-乳酸の重量百分率を変えて、実施例1に記載の方法によってさまざまな試験群と対照群のポリ乳酸3Dプリント材料を製造し、そして各試験群と対照群のポリ乳酸3Dプリント材料の耐老化性をテストした。本効果例では、試験群と対照群のポリ乳酸3Dプリント材料は、調製原料として、(a)結晶性又は半結晶性ポリ乳酸40~95重量部、(b)非結晶性ポリ乳酸5~60重量部、及び(c)加工助剤0~1.0重量部で製造され、前記非結晶性ポリ乳酸の平均粒子径が1μm未満であり、前記加工助剤が潤滑剤であった。各試験群と対照群のポリ乳酸3Dプリント材料では、ポリD-乳酸の重量百分率だけが異なり、ポリD-乳酸の重量百分率及び耐老化性を表5に示す。
【0036】
【表5】
【0037】
表5から分かるように、ポリ乳酸3Dプリント材料におけるポリD-乳酸の重量百分率が本発明の範囲内である場合、製造されたポリ乳酸3Dプリント材料の耐老化性が、その重量百分率が本発明の範囲外である場合よりも明らかに良好であり、特にその重量百分率が1.4%~6%である場合、製造されたポリ乳酸3Dプリント材料の耐老化性はより良好であった。
【0038】
なお、以上の実施例は、本発明の技術案を説明するものに過ぎず、本発明の特許範囲を制限するものではなく、好適実施例を参照しながら本発明を詳細に説明したが、当業者であれば、本発明の技術案の主旨及び範囲を逸脱することなく、本発明の技術案を修正したり又は同等置換を行ったりすることができる。

本発明の好ましい態様は以下を包含する。
〔1〕ポリ乳酸3Dプリント材料であって、調製原料として、
(a)結晶性又は半結晶性ポリ乳酸40~95重量部、
(b)非結晶性ポリ乳酸5~60重量部、及び
(c)加工助剤0~1.0重量部
を含み、前記ポリ乳酸3Dプリント材料において、ポリD-乳酸の重量がポリ乳酸の全重量の0.5%~8%を占める、ことを特徴とするポリ乳酸3Dプリント材料。
〔2〕調製原料として、
(a)結晶性又は半結晶性ポリ乳酸50~90重量部、
(b)非結晶性ポリ乳酸10~50重量部、及び
(c)加工助剤0~1.0重量部
を含む、ことを特徴とする〔1〕に記載のポリ乳酸3Dプリント材料。
〔3〕前記ポリ乳酸3Dプリント材料において、ポリD-乳酸の重量がポリ乳酸の全重量の1.4%~6%を占める、ことを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載のポリ乳酸3Dプリント材料。
〔4〕前記非結晶性ポリ乳酸の平均粒子径が1μm未満である、ことを特徴とする〔1〕に記載のポリ乳酸3Dプリント材料。
〔5〕前記加工助剤は潤滑剤である、ことを特徴とする〔1〕に記載のポリ乳酸3Dプリント材料。
〔6〕前記加工助剤は、ステアラミド、オレアミド、エルカミド、ステアリン酸亜鉛、金属石鹸の高分子複合エステル、エチレンビスステアラミド、ポリエチレンワックス、シリコーン系潤滑剤のうちの少なくとも1種である、ことを特徴とする〔1〕に記載のポリ乳酸3Dプリント材料。
〔7〕〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載のポリ乳酸3Dプリント材料の調製方法であって、
重量部基準でポリ乳酸3Dプリント材料の調製原料のうちの各物質を秤量して、均一に混合し、混合物を得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた混合物を二軸押出機に投入して、押出して造粒し、組成物を得るステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた組成物を単軸押出機において延伸して、前記ポリ乳酸3Dプリント材料を得るステップ(3)と、
を含む、ことを特徴とする調製方法。
〔8〕前記ステップ(2)では、二軸押出機の温度が160-180℃である、ことを特徴とする〔7〕に記載のポリ乳酸3Dプリント材料の調製方法。
〔9〕前記ステップ(3)では、単軸押出機において延伸する条件としては、延伸押出速度が10-60Kg/hであり、押出線材の線径が1.5-3.5cmであり、水タンクの温度が40-60℃である、ことを特徴とする〔7〕に記載のポリ乳酸3Dプリント材料の調製方法。