(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】介助装置
(51)【国際特許分類】
   A61G   5/14        20060101AFI20220825BHJP        
   A61G   7/10        20060101ALI20220825BHJP        
【FI】
A61G5/14 
A61G7/10 
(21)【出願番号】P 2020560677
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(86)【国際出願番号】 JP2018046541
(87)【国際公開番号】W WO2020129152
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人  共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】公文  智子
(72)【発明者】
【氏名】野村  英明
(72)【発明者】
【氏名】清水  聡志
【審査官】黒田  正法
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/189823(WO,A1)    
【文献】特開2010-131225(JP,A)      
【文献】特開2017-070627(JP,A)      
【文献】特開2018-134430(JP,A)      
【文献】米国特許出願公開第2015/0165265(US,A1)    
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G      5/14
A61G      7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  被介助者の上半身の姿勢を変えながら、前記被介助者の起立動作及び着座動作を補助する介助装置であって、
  基台と、
            
  一端が前記基台に支持されると共に前記基台に対して前後方向へ揺動可能に設けられたアームと、
            
              前記アームの他端に設けられ、前記被介助者の少なくとも上半身を支持すると共に、前記基台に対して変位可能に設けられた支持部と、
  前記支持部を
前記基台に対して変位させるように駆動する駆動部と、
  
前記支持部の前方に設けられ、前記被介助者の両手で把持可能なハンドルと、
            
              前記ハンドルに対して前方に離間して配置されるように前記アームに装着され、前記起立動作及び前記着座動作に際して、前記支持部に支持された前記被介助者の視界を遮る遮蔽部と、
  を備える、介助装置。
【請求項2】
  前記遮蔽部は
、前記アームに対し、着脱可能に装着される、請求項
1に記載の介助装置。
【請求項3】
  前記遮蔽部は
、前記アームに対する装着位置を調整可能である、請求項
1または2に記載の介助装置。
【請求項4】
  前記遮蔽部は、前記被介助者が着座した状態で前記被介助者の上半身を前記支持部で支持した際に、正面を向く前記被介助者の頭部よりも上方に前記遮蔽部の上端が位置するように設けられる、請求項1-
3の何れか一項に記載の介助装置。
【請求項5】
  前記遮蔽部は、前記被介助者が臀部を浮かせた状態で前記被介助者の上半身を前記支持部で支持した際に、正面を向く前記被介助者の頭部の下方に前記遮蔽部が位置するように設けられる、請求項1-
4の何れか一項に記載の介助装置。
【請求項6】
  前記遮蔽部は、前記支持部に支持された前記被介助者の正面から見て、前記被介助者の頭部よりも大きい、請求項1-
5の何れか一項に記載の介助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本明細書は、介助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
  高齢化社会の進展に伴い、介助装置のニーズが増大している。例えば、特許文献1には、被介助者の座位姿勢からの移乗動作を介助する介助装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
  特許文献1に記載の介助装置を用いて被介助者の移乗動作を介助するにあたり、被介助者の中には、介助装置に支えられながら体勢を変えられることに不安を感じる人がいるため、そうした被介助者の不安を軽減したいとの要請がある。
【0005】
  本明細書は、被介助者の不安を軽減できる介助装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
  本明細書は、被介助者の上半身の姿勢を変えながら、前記被介助者の起立動作及び着座動作を補助する介助装置を開示する。前記介助装置は、基台と、前記被介助者の少なくとも上半身を支持すると共に、前記基台に対して変位可能に設けられた支持部と、前記支持部を駆動する駆動部と、前記起立動作及び前記着座動作に際して、前記支持部に支持された前記被介助者の視界を遮る遮蔽部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
  本明細書で開示する介助装置は、被介助者の起立動作及び着座動作を補助する際に、遮蔽部によって被介助者の視界が遮られた状態を維持できる。よって、介助装置は、被介助者の不安を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
            【
図1】実施形態における介助装置の側面部分断面図であり、被介助者が介助装置に搭乗した際の初期状態を示している。
 
            【
図2】被介助者の背面側から見た遮蔽部の形状を模式的に示した図である。
 
            【
図3】介助装置の側面部分断面図であり、被介助者の臀部を椅子から浮かせる際の介助装置の動作過程を示す。
 
            【
図4】介助装置の側面部分断面図であり、被介助者の臀部を椅子から浮かせた状態を示す。
 
            【
図5】変形例における介助装置の側面部分断面図であり、被介助者が介助装置に搭乗した際の初期状態を示している。
 
          
【発明を実施するための形態】
【0009】
  1.介助装置1の主な使用態様
  以下、本明細書に開示する介助装置を適用した実施形態について、図面を参照しながら説明する。まず、
図1を参照しながら、介助装置1の主な使用態様について説明する。
 
【0010】
  介助装置1は、例えば、被介助者Mのベッドと車椅子の間の移乗や、車椅子と便座の間の移乗など、異なる二箇所の間の移乗を介助する。介助装置1は、被介助者Mの胴体を支持して、座位姿勢から移乗時姿勢への起立動作、および移乗時姿勢から座位姿勢への着座動作を補助する。ここで、移乗時姿勢は、臀部が座面から浮いた姿勢であり、立位姿勢および中腰姿勢を含む。つまり、移乗時姿勢は、上半身が起立した状態および前かがみの状態などを含む。また、介助装置1は、移乗する二箇所が離れている場合に、移乗時姿勢の被介助者Mを移送することができる。
【0011】
  2.介助装置1の概略構成
  続いて、
図1を参照しながら、介助装置1の概略構成を説明する。
図1に示すように、介助装置1は、基台2と、アーム3と、支持部4と、アクチュエータ5と、リンク機構6と、緩衝機構7と、図略の制御部とを主に備える。
 
【0012】
  基台2は、足載置台21と、後輪23と、基台ロッド24と、下腿当て部25と、左右一対の取り付け板26と、左右一対の前輪28とを主に備える。足載置台21は、床面Fに近接した位置に配置される。また、足載置台21は、足載置台21の上面を形成する足載置面211を備える。足載置面211は、被介助者Mが足を載せる位置となる部位であって、概ね水平に形成される。
【0013】
  左右一対の後輪23は、足載置台21の後側の左右に設けられる。左右一対の基台ロッド24は、足載置台21の前面の左右からそれぞれ前向きに設けられる。基台ロッド24は、前方から上方へ屈曲した後、後方に傾いて延在する。下腿当て部25は、2本の基台ロッド24の上部に、後向きに設けられる。下腿当て部25は、足載置台21の前寄りの上方に位置であって、被介助者Mの下腿付近が接触可能な位置に設けられている。
【0014】
  左右一対の取り付け板26は、基台ロッド24の前方から上方へ屈曲した屈曲部の少し上寄りの位置であって、向かい合う内側の位置にそれぞれ固設される。取り付け板26は、基台ロッド24から前方に延びる。左右一対の前輪28は、左右一対の取り付け板26の下側の前部に設けられる。介助装置1は、前輪28および後輪23の転舵機能により、直進移動および旋回移動だけでなく、横移動および超信地旋回が可能となっている。これにより、介助者は、介助装置1を容易に移動させることができる。なお、前輪28は、移動を規制するロック機能を備える。よって、介助者は、被介助者Mを介助装置1に搭乗させる際に介助装置1の移動を規制することで、被介助者Mを安全に介助装置1に搭乗させることができる。
【0015】
  アーム3は、取り付け板26に対し、前後方向へ揺動可能に支持される。なお、アーム3の前方への揺動は、被介助者Mを起立させる起立方向に対応し、後方への揺動は、被介助者Mを着座させる着座方向に対応する。また、アーム3には、アクチュエータ5及び制御部(図示せず)の電源となるバッテリ(図示せず)が収納される。
【0016】
  支持部4は、胴体支持部41と、左右一対の脇支持部45とを主に備える。胴体支持部41は、被介助者Mの上半身を前方から支持する部位である。胴体支持部41は、ハンドル42と、ベースプレート43と、胴体接触部材44とを備える。ハンドル42は、概ね四角形の枠形状に形成されている。ハンドル42は、被介助者Mが把持する部位であると共に、介助装置1を移動させる際に介助者が把持する部位でもある。
【0017】
  ベースプレート43は、概ね矩形状の部材であって、金属や樹脂等の剛性の大きな板材を用いて形成される。ベースプレート43は、アーム3の上部に対して前後方向へ揺動可能に支持される。なお、支持部4の前方への揺動は、被介助者Mを起立させる起立方向に対応し、後方への揺動は、被介助者Mを着座させる着座方向に対応する。また、ベースプレート43には、ハンドル42が一体的に揺動可能に固定される。胴体接触部材44は、ベースプレート43の上面に取り付けられる。また、胴体接触部材44は、被介助者Mが上半身を当てる部位であり、ベースプレート43よりも柔軟性のある材料で形成される。
【0018】
  左右一対の脇支持部45は、胴体支持部41の左右両側の胸部寄りに取り付けられる。各々の脇支持部45は、鈍角に屈曲するL字状に形成される。脇支持部45の取り付け側の基端から屈曲位置までの短い直線状部分は肩受け部となり、屈曲位置から先端までの長い直線状部分は脇進入部となる。肩受け部は、被介助者Mの肩の前面を支持し、脇進入部は、被介助者Mの胴体の両側の脇に進入する。
【0019】
  脇支持部45は、芯部材(図示せず)と、外周部材47とを主に備える。芯部材は、例えば、金属又は硬質樹脂等で形成された丸棒やパイプを屈曲することにより形成される。外周部材47は、芯部材の外周を覆う筒状の部材であり、心部材よりも柔軟性のある材料で形成される。
【0020】
  アクチュエータ5は、本体部51と、可動部52と、モータ53とを主に備える。本体部51は、円筒状の部材である。本体部51の下端は、足載置台21の前側寄りの左右方向の中央に設けられた緩衝機構7を介して基台2に接続される。可動部52は、本体部51に収容された丸棒状の部材である。可動部52は、本体部51の上端から出没可能に設けられる。
【0021】
  モータ53は、本体部51の下部の前側に付設される。モータ53は、図略の制御部によって流れる電流の方向が制御される。可動部52は、モータ53からの駆動によって本体部51に対して出没し、アクチュエータ5が伸縮する。なお、アクチュエータ5は、モータ53の代わりに、油圧や空気圧を用いた圧力駆動源などの別種の駆動源を用いることができる。
【0022】
  リンク機構6は、第一リンク部材61と、第二リンク部材62と、規制部材63とを主に備える。第一リンク部材61は、アーム3に設けられた支持軸31に揺動可能に支持される。第一リンク部材61は、
図1に示す支持軸31よりも前方側において、可動部52の上端に接続される。また、第一リンク部材61には、
図1に示す支持軸31よりも後方側に、第二リンク部材62に係合可能な係合ピン611が突出形成される。この係合ピン611は、第一リンク部材61が
図1に示す反時計回りに揺動した際に、第二リンク部材62を下方へ押し下げる。
 
【0023】
  第二リンク部材62の前方側端部は、第一リンク部材61に設けられた係合ピン611の下方に位置する。第二リンク部材62の後方側端部は、ベースプレート43に固定され、支持部4及び第二リンク部材62は、アーム3に対して一体的に揺動する。規制部材63は、第一リンク部材61の上方であって、第一リンク部材61に当接可能な位置でアーム3に固定される。なお、
図1に示す状態において、第一リンク部材61と規制部材63との間には、隙間が形成される。
 
【0024】
  図略の制御部は、操作装置8及び制御本体部などで構成される。操作装置8は、アクチュエータ5を操作する上昇ボタン81及び下降ボタン82を有する。操作装置8は、介助者により操作される。制御本体部は、CPUを有してソフトウェアで動作するコンピュータ装置を用いて構成される。制御本体部は、上昇ボタン81及び下降ボタン82の操作情報に応じて、アクチュエータ5のモータ53に流れる電流の有無及び流れる方向を制御する。アクチュエータ5は、上昇ボタン81が押されている間、伸長し続け、下降ボタン82が押されている間、短縮し続ける。そして、アクチュエータ5は、限界まで伸長したところで伸長を停止し、限界まで短縮したところで短縮を停止する。
【0025】
  3.遮蔽部9
  介助装置1は、支持部4に支持された状態で正面を向く被介助者Mの視界を遮る遮蔽部9を更に備える。遮蔽部9は、支持部4に支持された被介助者Mの顔の前に配置される。このように、介助装置1は、起立動作及び着座動作に際して、支持部4に支持された被介助者Mの視界を遮ることで、起立動作及び着座動作を介助する際に被介助者Mの視界に入る景色が変わることを防止できる。その結果、介助装置1は、起立動作及び着座動作を介助する際に被介助者Mに与える不安を軽減できる。ここで、本実施形態では、遮蔽部9がハンドル42に装着される場合を例に挙げて説明する。
【0026】
  遮蔽部9は、ハンドル42に対し、着脱可能に装着される。よって、介助者は、遮蔽部9が不要である場合に、遮蔽部9をハンドル42から取り外すことができる。つまり、介助装置1は、使用する被介助者Mに応じて遮蔽部9の着脱を適宜行うことができるので、利便性を高めることができる。
【0027】
  また、遮蔽部9は、ハンドル42に対する装着位置を調整することができる。例えば、介助装置1は、遮蔽部9がハンドル42に装着された状態で、ハンドル42の形状に沿って遮蔽部9を上下方向へ移動させることにより、被介助者Mから見た上下方向における遮蔽部9の位置調整を行うことができる。即ち、介助者は、被介助者Mの体型に合わせて、遮蔽部9が被介助者Mの顔の前に配置されるように遮蔽部9の位置調整を行うことができる。このように、介助装置1は、使用する被介助者Mにとって適した位置に遮蔽部9を装着できるので、被介助者Mの視界を確実に遮ることができる。
【0028】
  ここで、本実施形態において、遮蔽部9は、ハンドル42よりも被介助者Mの顔に近い位置に装着される。よって、介助装置1は、遮蔽部9をより被介助者Mの顔に近づけることができる。これにより、介助装置1は、支持部4に支持された被介助者Mが視点を動かしたとしても、被介助者Mの視点が遮蔽部9から外れることを抑制できる
【0029】
  さらに、ハンドル42は、遮蔽部9から離れる方向に湾曲した形状を有する。そして、被介助者Mから見た遮蔽部9の裏側とハンドル42との間に、被介助者Mの指を挿入可能な隙間が設けられている。これにより、被介助者Mは、被介助者Mから見て遮蔽部9の裏側となる位置で、ハンドル42を把持することができる。よって、被介助者Mは、ハンドル42を把持する位置の自由度を高めることができる。またその結果、被介助者Mは、支持部4に支持された状態でバランスの良い体勢をとることができるので、介助装置1は、被介助者Mに与える不安を和らげることができる。
【0030】
  ここで、
図2に示すように、ハンドル42の左右方向における幅寸法w1は、概ね被介助者Mの肩幅を想定して設定される。具体的に、ハンドル42の幅寸法w1は、被介助者Mが脇支持部45にもたれかかった状態で、被介助者Mが無理なく両手でハンドル42を把持可能な寸法に設定される。
 
【0031】
  そして、支持部4に支持された被介助者Mが正面から遮蔽部9を見た場合に、遮蔽部9は、上下方向及び左右方向における寸法が、少なくとも被介助者Mの頭部よりも大きな寸法となるように形成される。これにより、介助装置1は、被介助者Mの視界を十分に遮ることができる。さらに、遮蔽部9の左右方向における幅寸法w2は、少なくともハンドル42の幅寸法w1よりも大きな寸法に設定される。これにより、介助装置1は、支持部4に上半身を支持された被介助者Mが視点を左右に動かしたとしても、被介助者Mの視点が遮蔽部9から外れることを抑制できる。
【0032】
  4.介助装置1の動作態様
  次に、介助装置1の動作態様について説明する。ここでは、被介助者Mを座らせた状態から臀部を浮かせた状態へ移行させる際の介助装置1の動作態様を説明する。
図1に示すように、介助者は、最初に、ハンドル42を把持して介助装置1を移動させ、座らせた被介助者Mの正面に配置する。
 
【0033】
  その後、被介助者Mは、下半身を支持部4の下方の領域に進入させ、両足を足載置台21に載置する。このとき、被介助者Mは、下腿の一部を下腿当て部25に接触させることで、姿勢を安定させることができる。なお、
図1に示す状態において、第二リンク部材62は、
図1に示す時計回りに揺動可能である。よって、被介助者Mは、支持部4を前方へ揺動させることで、支持部4の下方の領域を拡げることができる。その結果、被介助者Mは、下半身を支持部4の下方の領域に容易に進入させることができる。
 
【0034】
  続けて、被介助者Mは、座ったままの状態で前傾し、上半身を胴体支持部41に当てる。また、被介助者Mは、両脇で脇支持部45にもたれかかりながら、両手でハンドル42を掴む。これにより、介助装置1は、被介助者Mの顔を自然と遮蔽部9に向けることができる。その結果、介助装置1は、正面を向く被介助者Mの視界を遮蔽部9によって遮ることができる。なお、介助者は、上記した被介助者Mの一連の動作を介助してもよい。
【0035】
  ここで、
図1に示す状態において、遮蔽部9の上端91は、被介助者Mの頭部よりも上方に位置する。よって、介助装置1は、支持部4に上半身を支持された被介助者Mが視点を上方へ動かしたとしても、視点が遮蔽部9から外れることを抑制できる。また、被介助者Mは、ハンドル42全体のうち、被介助者Mから見た遮蔽部9の裏側に位置する部位を把持することで、体勢を安定させることができる。
 
【0036】
  その後、介助者は、操作装置8の上昇ボタン81を押す。介助者が上昇ボタン81を押している間、アクチュエータ5が伸長し、可動部52に接続された第一リンク部材61の前方側端部が押し上げられる。これに伴い、第一リンク部材61は、
図1に示す反時計回りに揺動し、第一リンク部材61の後方側端部に設けられた係合ピン611が、第二リンク部材62を押し下げる。その結果、第二リンク部材62は、
図1に示す時計回りに揺動し、支持部4は、前方(起立方向)に揺動する。このように、支持部4は、駆動部としてのアクチュエータ5に駆動されることで、基台2に対して変位する。
 
【0037】
  図3に示すように、
図1に示す状態からアクチュエータ5が所定長さまで伸長すると、脇支持部45が前下がりとなる。これにより、被介助者Mは、後方への移動が脇支持部45により規制される。また、
図3に示す状態において、第一リンク部材61は、規制部材63に当接し、アーム3に対する第一リンク部材61の揺動が規制される。その結果、支持部4のアーム3に対する揺動が規制される。
 
【0038】
  ここで、
図1に示す状態から
図3に示す状態へ移行する間、又は、
図3に示す状態から
図1に示す状態へ移行する間、被介助者Mの上半身は、支持部4の変位に伴って変位する。そして、ハンドル42に装着された遮蔽部9は、支持部4と一体的に変位する。これにより、介助装置1は、被介助者Mの顔と遮蔽部9との相対位置を維持することができる。つまり、介助装置1は、被介助者Mの上半身の体勢を変える際に、被介助者Mの顔の前に遮蔽部9が配置された状態を維持できるので、被介助者Mの視界が遮蔽部9に遮られた状態を維持できる。
 
【0039】
  図3に示す状態から更にアクチュエータ5が伸長すると、アーム3は、第一リンク部材61を介してアクチュエータ5に押し上げられ、アーム3は、基台2に対し、
図3に示す時計回り方向へ揺動する。また、アクチュエータ5は、可動部52と第一リンク部材61との接続位置が変位するのに伴い、前方に傾動する。一方、支持部4は、アーム3に対して一定の姿勢を維持する。
 
【0040】
  図3に示す状態から
図4に示す状態までアーム3が揺動すると、被介助者Mが更に前傾し、被介助者Mの上半身は、前方斜め上方へ移動する。その結果、被介助者Mの臀部が座面から大きく上昇し、被介助者Mは、脚部が伸びた移乗時姿勢となる。そして、
図4に示す状態において、支持部4に支持された被介助者Mの顔は、自然と下を向き、正面を向く被介助者Mの視線が下方へ向けられる。
 
【0041】
  これに対し、遮蔽部9は、被介助者Mとの相対位置を維持しながら支持部4と一体的に変位する。そして、遮蔽部9は、
図4に示す状態において、正面を向く被介助者Mの頭部の下方に位置する。よって、介助装置1は、被介助者Mが移乗時姿勢となった状態であっても、遮蔽部9が被介助者Mの顔の前に位置する状態を維持できる。
 
【0042】
  このように、介助装置1は、座位姿勢から移乗時姿勢へと体勢を変える際に、及び、移乗時姿勢から座位姿勢へと体勢を変える際に、被介助者Mの視界を遮ることで、被介助者Mの不安を和らげることができる。また、遮蔽部9は、ハンドル42に装着されるので、介助装置1は、座位姿勢から移乗時姿勢へと体勢を変える際に、及び、移乗時姿勢から座位姿勢へと体勢を変える際に、被介助者Mの顔と遮蔽部9との相対位置を維持できる。その結果、介助装置1は、被介助者Mの視界に入る景色の変化を抑制できるので、被介助者Mに与える不安を効果的に和らげることができる。
【0043】
  なお、遮蔽部9は、平板状に形成される。さらに、遮蔽部9は、
図1に示す状態において、被介助者Mの頭部よりも前に配置されると共に、
図3及び
図4に示す状態において、被介助者Mの頭部よりも下方に位置する。この場合、被介助者Mの視線が遮蔽部9によって遮られるのに対し、介助者は、被介助者Mの側方から被介助者Mの表情を確認することができる。つまり、介助者は、被介助者Mの表情を確認しながら介助装置1による起立動作及び着座動作の介助を行うことができるので、被介助者Mに何らかの異常があったとしても、異常に対する対処を即座に行うことができる。
 
【0044】
  5.遮蔽部の変形例
  次に、遮蔽部の変形例について説明する。上記実施形態では、遮蔽部がハンドル42に装着される場合を例に挙げて説明したが、遮蔽部は、ハンドル2以外の部位、例えばアーム3に装着されるものであってもよい。以下において、
図5を参照しながら、遮蔽部の変形例を説明する。
 
【0045】
  図5には、アーム3に遮蔽部209が装着された介助装置1が図示されている。
図5に示すように、遮蔽部209は、支持部4に支持された被介助者Mの顔の前に配置され、支持部4に支持された状態で正面を向く被介助者Mの視界を遮る。また、遮蔽部209は、アーム3に対し、着脱可能に装着される。例えば、遮蔽部209の下方部分には、アーム3の外形形状に倣って形成された挿通穴と、その挿通孔にアーム3を挿通させる際の入口となる開口とが形成され、挿通孔にアーム3が挿通された状態で開口を塞ぐことで、遮蔽部209がアーム3に装着される。このように、介助装置1は、使用する被介助者Mに応じて遮蔽部209の着脱を適宜行うことができるので、利便性を高めることができる。
 
【0046】
  また、遮蔽部209は、アーム3に対する装着位置を調整することができる。遮蔽部209がアーム3に装着される場合、遮蔽部209は、アーム3の形状に沿って、被介助者Mから見た前後方向における位置調整を行うことができる。介助装置1は、使用する被介助者Mにとって適した位置に遮蔽部209を装着できるので、被介助者Mの視界を確実に遮ることができる。さらに、遮蔽部209をアーム3に装着する場合、遮蔽部209は、ハンドル42よりも被介助者Mの顔から離れた位置に装着される。この場合において、介助装置1は、遮蔽部209との被介助者Mの顔との距離を大きくすることにより、被介助者Mに与える圧迫感を軽減することができる。
【0047】
  このように、遮蔽部209は、介助装置1による起立動作及び着座動作に際して、支持部4に支持された被介助者Mの視界を遮ることで、起立動作及び着座動作を介助する際に被介助者Mの視界に入る景色が変わることを防止できる。その結果、介助装置1は、起立動作及び着座動作を介助する際に被介助者Mに与える不安を軽減できる。
【0048】
  6.その他
  以上、上記実施形態及び上記変形例に基づいて本明細書に開示する介助装置について説明したが、上記形態に何ら限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0049】
  例えば、被介助者Mが正面から見たときの遮蔽部9,209の上下方向及び左右方向における寸法は、遮蔽部9,209との被介助者Mの顔との距離に応じて、適宜調整すればよい。つまり、介助装置1は、遮蔽部9,209との被介助者Mの顔(目)との距離が小さいほど、遮蔽部9,209の寸法を小さくしたとしても被介助者Mの視界を十分に遮ることができる分、遮蔽部9,209の小型化を図ることができる。一方、介助装置1は、遮蔽部9,209との被介助者Mの顔との距離が大きくすることにより、被介助者Mに与える圧迫感を軽減することができる。
【0050】
  本実施形態において、遮蔽部9,209が無地である場合を例に挙げて説明したが、遮蔽部9,209の被介助者Mへ向けられる側の面に模様や図柄等を付してもよい。これにより、介助装置1は、被介助者Mの視点を安定させることができる。またこの場合、介助装置1は、遮蔽部9,209に付された模様や図柄等に意識を向けさせることで、被介助者Mの不安を軽減できる。さらに、介助装置1による起立動作及び着座動作の補助を行う際に、遮蔽部9,209と被介助者Mとの相対位置が維持されるので、被介助者Mは、視線を動かす必要がない。よって、介助装置1は、視線を動かすことで遮蔽部9,209から視線が外れることを防止できる。
【符号の説明】
【0051】
    1:介助装置、  2:基台、  4:支持部、  5:アクチュエータ(駆動部)、  9,209:遮蔽部、  91:遮蔽部の上端、  M:被介助者