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▶ ライカ・バイオシステムズ・メルボルン・プロプライエタリー・リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】サンプル処理組立体
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/31 20060101AFI20220825BHJP
【FI】
G01N1/31
【請求項の数】 21
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021042351
(22)【出願日】2021-03-16
(62)【分割の表示】P 2019091430の分割
【原出願日】2013-11-01
(65)【公開番号】P2021113810
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2021-04-13
(31)【優先権主張番号】61/721,280
(32)【優先日】2012-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504466373
【氏名又は名称】ライカ・バイオシステムズ・メルボルン・プロプライエタリー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LEICA BIOSYSTEMS MELBOURNE PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】ケネス・ヘン-チョン・ング
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ブライアン・ドックリル
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・トゥーグッド
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・リモン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ドブロゴルスキー
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ウィルコック
(72)【発明者】
【氏名】グレッグ・ボイズ
(72)【発明者】
【氏名】ブレンディン・ロジャース
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ジョン・バグナト
(72)【発明者】
【氏名】アシャン・チランガ・ペレラ
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-530545(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0025954(US,A1)
【文献】特表平11-502926(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0086428(US,A1)
【文献】特開2006-220654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00- 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材におけるサンプル処置用のサンプル処理組立体であって、
a.基材用の据付面と、
b.蓋部材を着脱可能に保持するクロージャー・ボディーで、開位置と閉位置との間で移動可能であるクロージャー・ボディーと、
c.力配分部材と、
d.クロージャー・ボディーへ閉鎖力を印加してクロージャー・ボディーを閉位置へ移動する閉鎖手段と、
e.クロージャー・ボディーへ開放力を印加する開放手段と、
を含み、
基材が組立体に置かれ、クロージャー・ボディーが蓋部材を保持しながら閉位置にある状態において、サンプルを処理する反応室が形成され、
閉位置において、蓋部材と基材との間の接合部分で密閉が形成されるように、力配分部材は、クロージャー・ボディーに印加された閉鎖力を配分
当該サンプル処理組立体は、さらに、クロージャー・ボディーに蓋部材を着脱可能に取り付ける連結手段を含み、該連結手段は、蓋部材及びクロージャー・ボディーを滑動的に連結する走路あるいはガイド溝を含む、
サンプル処理組立体。
【請求項2】
力配分部材は、クロージャー・ボディーに連結される、あるいは一体である、請求項1に記載のサンプル処理組立体。
【請求項3】
力配分部材は、閉位置において基材に垂直な平面において力配分部材の揺動を許容する形態でクロージャー・ボディーと連結される、請求項1又は2に記載のサンプル処理組立体。
【請求項4】
力配分部材は、基材対向面の全てあるいは一部、又は力配分部材の別の面にわたり分配された、波状の表面、隆起した部分、起伏、あるいは他の隆起したポイントの一もしくは複数を含む、請求項1から3のいずれかに記載のサンプル処理組立体。
【請求項5】
開放手段は、クロージャー・ボディーを開位置へ駆動するように構成されたモーターを含む、請求項1から4のいずれかに記載のサンプル処理組立体。
【請求項6】
閉鎖手段は、クロージャー・ボディーを閉位置へ駆動するように構成されたモーターを含む、請求項1から5のいずれかに記載のサンプル処理組立体。
【請求項7】
モーターは、ネジ駆動モーターを含む、請求項5又は6に記載のサンプル処理組立体。
【請求項8】
閉鎖手段は、開放力よりも大きい閉鎖力を印加するように構成されている、請求項1から7のいずれかに記載のサンプル処理組立体。
【請求項9】
クロージャー・ボディーを閉位置に留置するようにクロージャー・ボディーにおける凹部と協働するように配列された戻り止めを有する留置アーム、及び、留置アームの一端側に配置された負重面を含み、その結果、開放力が負重面に加えられる状態において、戻り止めがクロージャー・ボディーにおける凹部から解放され、クロージャー・ボディーが開位置へ移動する、請求項1から8のいずれかに記載のサンプル処理組立体。
【請求項10】
サンプル処理組立体における基材配置の間、少なくとも第1方向における基材の移動を制限する少なくとも一つの第1ガイドを含む、請求項1から9のいずれかに記載のサンプル処理組立体。
【請求項11】
少なくとも一つの第1ガイドは、据付面における突出部である、請求項10に記載のサンプル処理組立体。
【請求項12】
第1方向とは異なる第2方向に基材の移動を制限するために据付面において少なくとも一つの第2ガイドを含む、請求項10又は11に記載のサンプル処理組立体。
【請求項13】
少なくとも一つの第2ガイドは、蓋部材における対応の切欠きと協働するように形作られた突出部であり、少なくとも一つの第2ガイド及び対応する切欠きは、基材あるいは据付面と共に反応室を形成するため蓋部材の最適な配置に協働する、請求項12に記載のサンプル処理組立体。
【請求項14】
クロージャー・ボディーは、クロージャー・ボディーによって保持された蓋部材における流体ポートと流体連通するように構成された第1流体流路経路を含み、第1流体流路経路は、使用において反応室とサンプル処理組立体につながる流体源との間で流体の移転を許可する、請求項1から13のいずれかに記載のサンプル処理組立体。
【請求項15】
クロージャー・ボディー内の第1流体流路経路の一部を形成する配管を配向するように構成された、クロージャー・ボディーにおける着脱可能なハウジングをさらに含む、請求項14に記載のサンプル処理組立体。
【請求項16】
連結手段は、クロージャー・ボディー及び蓋部材の一方に、クロージャー・ボディー及び蓋部材の他方における面と係合する一もしくは複数の突出部を含み、クロージャー・ボディーと蓋部材との間に着脱可能な連結を形成する、請求項1から15のいずれかに記載のサンプル処理組立体。
【請求項17】
クロージャー・ボディー及び蓋部材の一方は、連結を解放する解放タブを含み、それによってクロージャー・ボディーからの蓋部材の解放を可能にする、請求項1から16のいずれかに記載のサンプル処理組立体。
【請求項18】
据付面と連結されたサーモモジュールを含み、このサーモモジュールは、反応室内の温度を変更するように操作可能である、請求項1から17のいずれかに記載のサンプル処理組立体。
【請求項19】
閉位置においてクロージャー・ボディーによって保持された状態において蓋部材の内壁の少なくとも一部と同一直線上に配列された、据付面における一もしくは複数の凹部を含み、この一もしくは複数の凹部は、蓋部材壁の少なくとも一部から試薬の清浄を容易にする、請求項1から18のいずれかに記載のサンプル処理組立体。
【請求項20】
据付面は、開口を含み、この開口は、流体源との間の流体移送を容易にする第2流体流路経路と連結される、請求項1から19のいずれかに記載のサンプル処理組立体。
【請求項21】
基材からの蓋部材の分離を支援する、クロージャー・ボディーにおける解放部材をさらに含む、請求項1から20のいずれかに記載のサンプル処理組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド上のサンプルの自動染色を容易にするため、実験室用器具で典型的に使用するためのスライド染色組立体に関する。また限定するものではないが特に、本発明は、蓋部材を着脱可能に保持するように構成され、スライドと共に反応室を形成する組立体、及び蓋部材そのものに関する。
【背景技術】
【0002】
免疫組織化学の染色及び生体位核酸分析(in situ nucleic acid analysis)は、組織診及び組織形態学の研究において使用される手段である。免疫組織化学の染色は、組織サンプルにおけるエピトープを有する抗体の特定の結合親和力、及びあるタイプの病気の細胞組織にのみ存在する独特なエピトープと特に結合する抗体の増加する可用性に依存する。免疫組織化学の染色は、選択的な染色によって疾病状態の、ある形態指標を強調するためにガラススライドに装着された組織サンプル(典型的に切片)において行われる一連の処置ステップを含む。
【0003】
典型的な処置ステップは、非特異的結合を減らすための組織サンプルの前処置、抗体処置及び培養、酵素標識された2次的な抗体処置及び培養、抗体と結合するエピトープを有する組織サンプルのエリアを強調する蛍光団あるいは発色団を生成するための酵素による基質反応、対比染色、等を含む。各処置ステップの間で、組織サンプルは、先のステップからの未反応の残りの試薬を除去するためにすすがれなければならない。ほとんどの処置ステップは、約25℃から約40℃までの周囲温度で典型的に行われる培養期間を含む。一方、細胞の条件付け(conditioning)ステップは、幾分高い温度、例えば90℃から100℃で典型的に行われる。生体位DNA分析は、細胞あるいは組織のサンプルにおける独特なヌクレオチド配列を有するプローブ(DNA結合蛋白質)の特定の結合親和力に依存し、同様に、様々な試薬及び工程温度要求を有する一連の工程段階を含む。いくつかの特異反応は、120℃から130℃までの温度を含んでいる。
【0004】
器具使用で自動化されたサンプル処理システムは、上で説明した処置工程のいくつかのステップを自動化するために存在する。しかしながら、反応室の使用を含む現在のシステムは、しばしば、試薬を適用する間に組織サンプルの乾燥を来す。これを補うために、絶えず組織サンプルに水分補給する必要がある。組織サンプルへの水和溶液の自動適用は、器具においてロボットの試薬分配システムの使用を必要とする。自動システムにおけるサンプルの脱水が理由で、器具において行われる他の反応に必要な本質的なステップのためのロボットディスペンサーの可用性を制限する工程に、余分な処置ステップを加えることが必要である。
【0005】
いくつかのシステムは、スライドの上方の、試薬が導入される幾分閉じられた反応室を用いることによってサンプルの脱水を低減するように設計されている。これらのシステムの多くは、組織サンプルの上に試薬を引き寄せるために吸い上げ動作(wicking action)に依存する。これらのシステムは、反応室内への均質で一様な試薬の流れを確保するために、吸い上げ目標(wicking target)への試薬の正確で精密な適用を要求する。システムが校正に失敗したときには、試薬の適用は吸い上げ目標を逃す場合がある。悪影響は意味深く、患者にとって重大な関わり合いを有することのある、サンプル処理におけるサンプルの劣化、試薬の消耗、不十分な染色、器具時間の損失、及び遅れを引き起こす場合がある。このような問題を回避するため、資格を有する専門技術者による定期的な器具校正が、正確な試薬の適用、均質な試薬の流れ、したがって均質なサンプル染色を確保するように要求される。
【0006】
本発明は、既存のサンプル染色システムを改善すること、及び/又は従来技術の幾つかの問題を克服あるいは緩和することを目的とする。
【0007】
文献、行為、材料、装置、物品、等への言及を含みここに含まれた本発明の背景の論議は、本発明の状況を説明するために意図されるものである。このことは、言及されたいずれの材料も、暫定的ないずれのクレームの優先日で公開され既知でありあるいは技術常識の一部であったという告白あるいは提示として見なされるものではない。
【発明の概要】
【0008】
一つの態様から見たならば、本発明は、基材上のサンプル処置用のサンプル処理組立体を提供し、この組立体は、基材用の据付面、及び蓋部材を着脱可能に保持するように構成されたクロージャー・ボディーを含み、このクロージャー・ボディーは、開位置と実質的に閉じられた位置との間で移動可能である。基材が組立体内に置かれ、蓋部材を保持しながらクロージャー・ボディーが実質的に閉位置にあるとき、反応室がサンプルを処理するために形成される。
【0009】
好ましい実施形態において、組立体は、組立体に基材を配置する間、少なくとも第1方向に、病理スライドのような基材の移動を制限するように構成された少なくとも一つの第1ガイドを含む。少なくとも一つの第1ガイドは、他の形状を取ってもよいが、理想的には据付面における突出部である。好ましくは、据付面に少なくとも一つの第2ガイドがさらに設けられる。第2ガイドは、第1方向とは異なる第2方向において基材の移動を制限する。典型的に、第1及び第2の方向は、直角に配置される。理想的には、少なくとも一つの第2ガイドは、蓋部材における対応の切欠きと協働するように形作られる突出部である。使用では、少なくとも一つの第2ガイド、及び蓋部材における対応の切欠きは、基材表面と共に反応室を形成する蓋部材の最適な配置のために協働する。反応室は、据付面上の基材/スライドによって、あるいはスライドのない適所における据付面によって形成されてもよい。前者の配置では、反応室は、反応室内へ分配された試薬によってスライド上のサンプルの抑制された処置を容易にする。後者では、反応室は、反応室内へ分配された洗浄試薬によって蓋部材の洗浄を容易にする。
【0010】
好ましくは、組立体は、クロージャー・ボディーが実質的に閉位置に付勢されるように付勢力を印加する閉鎖付勢手段を含む。開放付勢力を印加するための開放付勢手段も設けられてもよい。好ましくは、閉鎖付勢手段は開放付勢手段よりも大きな付勢力を加えるように構成される。
【0011】
いくつかの実施形態では、組立体は、閉位置にクロージャー・ボディーを留置するため、クロージャー・ボディーにおける凹部と協働するように配置された、戻り止めを有する留置アームを含む。このような配置において、留置アームの一端の方に負重面(bearing surface)が配置され、その結果、負重面に開放力が印加されたとき、クロージャー・ボディーにおける凹部から戻り止めが解放され、クロージャー・ボディーは開位置へ移動する。
【0012】
着脱可能(removable)なハウジングがそこに設置された操作部品を覆うようにクロージャー・ボディーに設けられてもよい。理想的には、着脱可能なハウジングは、クロージャー・ボディー内に配管を配向するように構成された形状、フードあるいはクリップを含む。
【0013】
反応室の周りに実質的に一様な密閉を達成するために実質的に均等に力が加えられるように、クロージャー・ボディーに加えられる力を分配する力配分部材が設けられてもよい。サーモモジュールも組立体の据付面に連結されてもよい。このサーモモジュールは、反応室内の温度を変更するように動作可能であり、処置ステップを加速する、あるいは処置ステップに影響を及ぼす。理想的には、サーモモジュールは、組立体を組み込む器具に組み込まれたコントローラーに制御される。このコントローラーは、さらに組立体の開閉、基材の配置、試薬の分配、正圧及び負圧の適用、等を制御してもよい。
【0014】
好ましい実施形態では、クロージャー・ボディーは、クロージャー・ボディーによって保持されるときに蓋部材における流体ポートと流体連通して形成された第1流体流路を含む。この第1流路は、組立体が使用されているとき、反応室と、サンプル処理組立体につながる流体源との間で流体の移転を許可する。
【0015】
理想的には、連結手段は、クロージャー・ボディーに蓋部材を着脱可能に取り付けるために設けられる。この連結手段は、クロージャー・ボディーと蓋部材との間に着脱可能な連結を形成するとき、クロージャー・ボディー及び蓋部材の一方に、クロージャー・ボディー及び蓋部材の他方における面と係合する一もしくは複数の突出部を含んでもよい。クロージャー・ボディー及び蓋部材の一方は、さらに、その連結を解放する解放タブを含んでもよく、それによって、クロージャー・ボディーから蓋部材の解放を可能にする。あるいはまた、連結手段は、蓋部材及びクロージャー・ボディーを滑動的に連結するための走路あるいはガイド溝、又は他の手段を含んでもよい。
【0016】
いくつかの実施形態において、組立体の据付面は、一もしくは複数の凹部を含む。理想的には、これら凹部は、実質的に閉じられた位置においてクロージャー・ボディーによって保持されたときに蓋部材の内壁の少なくとも一部と同一直線上に配列される。これらの凹部の配置は、蓋部材洗浄段階に組立体がある間、蓋部材壁の少なくとも一部から、試薬のクリーニングを容易にする。据付面はまた、第2流体流路経路と連結可能な開口を含んでもよく、第2流体流路経路は開口と流体源との間で流体の移動を容易にする。第2流体流路経路は、基材の下側に据付面開口を介して真空を適用することによって、例えば使用後、組立体の開放の間、据付面に基材を保持するために使用されてもよい。それは、また、据付面と蓋部材との間に形成された反応室へ洗浄試薬を配送する、あるいは蓋部材洗浄段階後、反応室から洗浄試薬を回収するために使用されてもよい。
【0017】
別の態様から見た場合、本発明は、上で説明した種類のようなサンプル処理組立体において使用される蓋部材を提供する。蓋部材は、第1側面と、第1側面に対向する第2側面と、第1側面における空間で、蓋部材が基材と接触するときに反応室を形成する空間と、反応室へ試薬を受け入れるための第1流体流路ポートと、及び、少なくとも一つの切欠きとを有する。蓋部材は、サンプル処理組立体のクロージャー・ボディーと着脱可能に係合するように構成され、少なくとも一つの切欠きは、サンプル処理組立体の据付面及びサンプル処理組立体のクロージャー・ボディーの一方における対応の突出部と協働するように形作られ、その結果、使用されるとき、切欠き及び突出部は、基材と共に反応室を形成するために組立体における位置へ蓋部材を案内する。
【0018】
さらに別の態様から見た場合、本発明は、サンプル処理組立体において使用するための蓋部材を提供する。この蓋部材は、第1側面と、第1側面に対向する第2側面と、第1側面における空間で、蓋部材が基材と接触するときに反応室を形成する空間と、使用時において反応室の周りに密閉を形成するように構成された、第1側面における圧縮可能部材であって、この圧縮可能部材の材料はさらに、蓋部材における流体流路ポートの周りに延在し、蓋部材の第2側面における流体流路ポートの開口の周りに密閉環(sealing annulus)を形成する圧縮可能部材と、を有する。蓋部材は、サンプル処理組立体のクロージャー・ボディーと着脱可能な係合にて構成される。一つの実施形態において、空間は、圧縮可能な部材によって形成される。別の実施形態では、空間は、蓋部材の第1側面において空間部あるいはキャビティによって少なくとも一部において形成される。
【0019】
蓋部材が反応室を形成する基材は、組織スライド(例えば試料処置ステップ用の)のようなスライド、あるいは組立体の据付面(例えば蓋部材洗浄段階用の)であってもよい。理想的には、2つもしくはそれを超える切欠きがある。
【0020】
蓋部材が少なくとも一部において柔軟な材料から製造されることは好ましい。蓋部材は、以下のものを含む群から選択された材料から少なくとも一部において製造あるいはコーティングされてもよい。即ち、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン(アセタール)、ポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)、高密度ポリエチレン(HDPE)及び超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)を含むポリエチレン、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)を含むポリプロピレン及びテフロンPEを含むテフロン、並びに環状オレフィン共重合体(COC)。
【0021】
いくつかの実施形態において、蓋部材は、少なくとも一つの付勢アームを含む。この付勢アームは、サンプル処理組立体の使用時に、付勢アームがクロージャー・ボディーにおける基準部材に当接し、クロージャー・ボディーの最終閉鎖の間、サンプル処理組立体における突出部の方へ蓋部材を押すように構成される。理想的には、使用に先立ちサンプル処理組立体における蓋部材の最適な配置のため、蓋部材における2つの対応する切欠きと協働する、据付面における突出部の方へ、閉鎖の最終段階の間、蓋部材を押す2つの付勢アームが存在する。
【0022】
好ましくは、蓋部材は、サンプル処理装置のクロージャー・ボディーに蓋部材を着脱可能に連結する連結手段を含む。連結手段を解放するためのタブも設けられてもよい。好ましい実施形態において、連結手段は、蓋部材及びクロージャー・ボディーの滑動可能な連結に適している。
【0023】
一もしくは複数の実施形態において、蓋部材は、第1側面において解放部材を含む。この解放部材は、処置段階後、組立体が開かれるときに、そうでないと据付面から基材を上げることができるだろう表面張力あるいはスティクションのいかなる力にも打ち勝つことによって、基材からの蓋部材の分離を支援するように構成されたトングあるいはスプリング付きの解放部材の形態を取ってもよい。他の配置では、解放部材は、蓋部材が使用されるクロージャー・ボディーに設けられてもよい。
【0024】
実施形態において、蓋部材は、複数の処置ステップに十分な流体量を受け入れ貯蔵するように構成された貯槽を含む。流体入口ポートも貯槽から反応室への流体進入のために設けられる。貯槽は、流体入口ポートと連通状態にあり、第1流体ポートに流体を注ぐように構成された一もしくは複数の傾斜した内壁を含んでもよい。いくつかの実施形態では、反応室を形成する空間のサイズ及び一定(consistent)形状において製造公差の悪影響を最小限にするために、厚い壁部分は、薄い壁部分よりも空間のより遠位に位置する。
【0025】
理想的には、流体流路ポートは、例えば蓋部材を保持するクロージャー・ボディーにおける対応する開口を通って、空間及び/又は密閉部材によって形成された反応室と、流体流路ポートに連結可能な流体源との間の流体連通のために設けられる。好ましくは、流体流路ポートは、蓋部材の第2側面において開口を有する。この開口は、使用されるときに、クロージャー・ボディーの対応する開口と実質的な密閉カップリングが形成されるように構成された柔軟な材料によって実質的に囲まれてもよい。この柔軟な材料は、流体流路ポートの周りに延在し、さらに使用の際に反応室の周囲にシーリングガスケットとして動作する圧縮可能な部材を形成する圧縮可能な材料の単片の一部として設けられてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態において、一もしくは複数のスロットが蓋部材の第1側面に設けられ、このスロットは、使用の際に反応室の周囲にシーリングガスケットを形成するように構成される圧縮可能な部材材料を、蓋部材の製造の間、受け入れるように配置される。好ましくは、一もしくは複数のスロットは、くさび形であり、くさび形開口の最も幅広部分が蓋部材の第2側面の方に配向されている。一もしくは複数のスロットは、第1側面から第2側面まで蓋部材を通る全てに渡り延在する貫通孔であってもよい。実施形態において、使用中、圧縮可能な部材の圧縮を制限するために、エンドストップ機構が蓋部材の第1側面に設けられる。いくつかの実施形態では、スペーサ部材が蓋部材の第2側面に設けられる。このスペーサ部材は、蓋部材が使用されるクロージャー・ボディーの負重面と接触するのに適している。
【0027】
いくつかの実施形態では、蓋部材は、蓋部材の第1側面において一もしくは複数のキャビティあるいは流体制御機構を含む。一つの実施形態において、蓋部材の第1側面における第1キャビティは、流体入口と流体連通にあり、使用のときに、反応室内に実質的に垂直な流体面(fluid front)を形成するように形作られる。蓋部材の第1側面における第2キャビティが、流体出口と流体連通において、設けられてもよい。この第2キャビティは、反応室の流体出口(排出)端の方に位置し、流体出口を通り排出するため、使用におけるとき反応室内の流体面から流体を取り出すように形作られる。理想的には、第2キャビティは、反応室の角に流体及び破片が集まるのを低減するように輪郭が形成される。
【0028】
いくつかの実施形態において、蓋部材は、蓋部材の表面の一部あるいは長さに沿って延在する隆起部あるいは突出部の形態における一もしくは複数の構造上の特徴を含む。理想的には、一もしくは複数の構造上の特徴は、使用にあるとき、蓋部材によって形成された反応室のサイズあるいは流れ特性に影響を与えずあるいは減じるものではない。構造上の特徴は、例えば、蓋部材の使用中にサンプル処置ステップを行なうために加熱あるいは冷却がなされたときに、蓋部材の反り、曲がり、あるいは捩れを実質的に不可能にするように支持を与える。一つの実施形態において、構造上の特徴は、蓋部材の実質的に全伸張長さに延びる増強する隆起部あるいは帯板(strip)であるが、直角な、平行な、交差する、角度の付いた、あるいはその他の配向された特徴部のような他の構造上の特徴も考えられる。
【0029】
別の態様から見た場合、本発明は、基材におけるサンプルの処置用のサンプル処理組立体を提供し、この組立体は、基材用の据付面と、蓋部材を着脱可能に保持するように構成されたクロージャー・ボディーで、開位置と実質的に閉じられた位置との間で移動可能であるクロージャー・ボディーと、当該組立体において基材配置の間に少なくとも第1方向における基材の移動を制限するように構成された少なくとも一つの第1ガイドとを含み、ここで、基材が組立体に置かれ、蓋部材を保持するときでクロージャー・ボディーが実質的に閉位置にあるとき、サンプルを処理する反応室が形成される。
【0030】
さらに別の態様から見た場合、本発明は、基材におけるサンプルの処置用のサンプル処理組立体を提供し、この組立体は、基材用の据付面と、蓋部材を着脱可能に保持するように構成されたクロージャー・ボディーで、開位置と実質的に閉じられた位置との間で移動可能であるクロージャー・ボディーと、クロージャー・ボディーが実質的に閉じられた位置に付勢されるように付勢力を印加する付勢手段とを含み、ここで、基材が組立体に置かれ、蓋部材を保持するときでクロージャー・ボディーが実質的に閉位置にあるとき、サンプルを処理する反応室が形成される。
【0031】
さらにまた別の態様から見た場合、本発明は、サンプル処理組立体において使用される蓋部材を提供し、この蓋部材は、第1側面と、第1側面に対向する第2側面と、第1側面における空間で、蓋部材が基材と接触するときに反応室を形成する空間と、反応室へ試薬を受け入れるための第1流体流路ポートと、サンプル処理組立体のクロージャー・ボディーに蓋部材を滑動可能に連結する着脱可能な係合手段とを有する。
【0032】
本発明はまた、蓋部材、特に圧縮可能な部材を組み込む、本発明による蓋部材の製造への新しいアプローチを提供する。このような方法は、射出成形等によって蓋部材本体を形成すること、及び、蓋部材本体を含む型に流動性で圧縮可能な材料を注入すること、を含み、上記型は、流動性で圧縮可能な材料が固まるとき蓋部材の第1側面において圧縮可能な部材を形成するように構成される。この技術を使用して、流動性で圧縮可能な材料は、一もしくは複数のスロットを埋めて、蓋部材の第1側面において輪郭を形成して圧縮可能な部材を形成する。流体圧縮可能な材料はまた、蓋部材における流体流路ポートの周りに、蓋部材の第2側面における流体流路ポートの周りの密閉環において終端する通路(via)を形成してもよく、密閉環は蓋部材の第1側面における圧縮可能な部材と共に単一の材料片の一部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、発明の実施形態による、正面から見たときの実質的に閉じられた位置におけるサンプル処理組立体の等角図である。
図2図2は、図1のサンプル処理組立体の等角図であり後部から見たときの図である。
図3図3は、正面から見た図1のサンプル処理組立体の等角図であり、閉鎖付勢手段が係合しクロージャー・ボディーに蓋部材が保持された状態で開位置における図である。
図4図4は、図3のサンプル処理組立体の等角図であり、閉鎖付勢手段が係合しておらず蓋部材が除去された状態の図である。
図5図5は、図1のクロージャー・ボディーの平面図であり、内部部品を表しながらハウジング蓋が除去された状態の図である。
図6図6は、図1図4のサンプル処理組立体の等角図であり、閉じられながら蓋部材が保持された状態の図である。
図7図7は、第1側面(底)から見た本発明の実施形態による蓋部材の等角図である。
図8図8は、第2側面(上)から見た図7の蓋部材の等角図である。
図9図9は、図9Aに示される拡大部分Aを有する図1のサンプル処理組立体の側面図である。
図10図10は、図1のサンプル処理組立体の側面の断面図であり、そこに位置するスライドを有し、図10Aに示す拡大部分Aを有する図である。
図11図11は、本発明によるサンプル処理組立体及び蓋部材が使用されてもよい器具の概略図である。
図12図12は、発明の実施形態によるサンプル処理組立体の閉位置における等角図である。
図13図13は、図12のサンプル処理組立体の端面図である。
図14図14は、図12及び図13のサンプル処理組立体の開口状態における等角図である。
図15図15は、発明の実施形態によるサンプル処理組立体の開位置における、ハウジング蓋がクロージャー・ボディーの内部部品を隠した状態の等角図である。
図16図16は、発明の実施形態による蓋部材の等角平面図である。
図17図17は、図16の蓋部材の平面図である。
図18図18は、図16及び図17の蓋部材の側面図である。
図19図19は、図16及び図17の蓋部材の等角底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、添付図面を参照して、より詳しく説明されるだろう。示された実施形態は、例だけのものであり、ここに添付された請求範囲において規定されるような発明の範囲を制限するものとして考えられるものではないことは理解されるべきである。
【0035】
図1は、発明の実施形態によるサンプル処理組立体1000の概略図である。この組立体は、図11に図示される器具4000の一部として設けられてもよく、器具4000はロボットヘッド4100を有し、このロボットヘッドは、組立体クロージャー・ボディーを開きかつ閉じ、また、当該器具の一部を形成するコントローラー4400から受け入れた命令に従いロボットヘッドにおけるプローブを通して試薬を組立体へ分配する。理想的には、その器具は、ここに記述され請求される種類の複数のサンプル処理組立体1000を含んでおり、その結果、ほとんど若しくは全く手動の介在を有しない自動化様式において器具4000によって多くの個々のサンプルが処理されるかもしれない。このような器具は、試薬を分配する単一のロボットヘッド4100を使用してもよく、あるいは、第2のもしくはそれに続くロボット4150が含まれていてもよい。
【0036】
典型的には、器具4000は、コントローラー4400によって制御される処置ステップを完了するために必要とされる様々な種類の試薬、典型的に流体試薬、の容器4200,4250を収納する。ロボットの分配ヘッド4100、4150は、流体分配システム(容器とヘッドとの間の配管)によって容器4200,4250に連結され、プローブを使用してサンプル処理組立体1000へ流体を分配する。流体はまた、プローブのない、すなわち配管を使用して、流体分配システムを介して器具4000に搭載された試薬容器4200,4250から分配されてもよい。プローブ及びロボットの分配システムは、2012年11月1日の出願日を有する「A Fluid Transport System」の発明名称による米国の仮特許出願61/721,269号、及び、2012年11月1日の出願日を有する「A Slide Transport System」の発明名称による米国の仮特許出願61/721,257号に記述されており、これら両方の全内容は、参考としてここに組み込まれる。また、サンプル処理組立体1000及び/又は当該器具における様々な洗浄ステーションから集められてもよい不用の試薬を廃棄するための廃棄物貯槽4300を有する廃棄物システムも存在する。当該器具は、いくつかの試薬を再利用してもよく、又は再利用あるいは器具から外す廃棄用のいくらかの試薬を集めてもよい。
【0037】
図1は、実質的に閉じられた位置における、正面から見た組立体1000を示す。図2は、後部から見た組立体を示す。両方の図は、明確にクロージャー・ボディー1100を示す。蓋部材2000(図7及び図8)は、クロージャー・ボディー1100によって保持され、蓋部材の貯槽2400が両方の図において見ることができる。一つの実施形態により、図1では蓋部材指グリップ2490が示され、一方、図2は蓋部材2000の連結突出部2160及び解放タブ2170を示している。
【0038】
図3は、開位置におけるときの正面から見た、図1のサンプル処理組立体の概略図である。据付面1200は、組立体1000を使用して処理するためにサンプルが取り付けられたスライドのような、不図示の、基材を支持するために設けられる。クロージャー・ボディー1100は、示されるような蓋部材2000を着脱可能に保持するように構成される。クロージャー・ボディー1100は、据付面1200に対して、開位置(図3図4)と実質的に閉じられた位置(図1図2図9)との間で移動可能である。
【0039】
理想的には、サンプル処理組立体1000は、通常、付勢され閉じられているクロージャー・ボディーを積極的に開くためにロボットヘッド4100の一部によって接触してもよい、クロージャー・ボディー1100における負重面1150を有する。典型的には、負重面1150は、クロージャー・ボディー1100から突出しロボットヘッド4100の接触部材によって接触されるカムコロを含む。よって、ロボットヘッド4100が負重面1150に接触して方向B(図4)において移動するとき、クロージャー・ボディー1100は、軸P(図1)の周りに旋回し、図3及び図4に示されるような開口配置まで開く。しかしながら、開く動きは、旋回することあるいは一緒に旋回することだけを意味するものではなく、すなわち、処理のためにサンプルを有するスライド/基材の、それらの間への配置を調整するために、2つの部品を相対的に滑らすことのみならず、クロージャー・ボディーを上昇させるあるいは据付面を下降させることによる据付面1200からクロージャー・ボディー1100を分離することもまた考えられることは理解されるべきである。
【0040】
理想的には、基材は、コントローラー4400の制御の下、自動化された方法において、サンプルを有する基材を組立体1000の中へ運ぶロボットヘッド4100を使用して、開いているサンプル処理組立体に置かれる。このようなシステムは、上で参照した米国の仮特許出願61/721,257号に記述されている。これは、例えば、据付面1200上で、クロージャー・ボディー1100が閉じられる準備ができている所定位置へ滑ることによる基材の移動を制御するロボットヘッド4100を必要とするかもしれない。ロボットヘッド4100は、組立体1000内で配置のために基材を保持/把持するため、例えばグリッパー、真空、あるいは他の適切な手段を使用して基材を操作してもよい。
【0041】
位置決めを支援するために、少なくとも一つの第1ガイド1220が、少なくとも第1方向A(図4)における基材の移動を制限するために、据付面1200において突出部あるいは柱の形で設けられる。よって、ロボットヘッド4100を使用して基材が置かれるとき、さらなる移動を制限する基準点を提供する第1ガイド1220に基材が達するまで、基材は据付面1200を横切って滑る。必要ならば、一もしくは複数のさらなる第1ガイドが方向Aにおける基材の動きを制限するために設けられてもよい。
【0042】
好ましい実施形態において、一もしくは複数の第2ガイド1230、1235も、方向B(図4)における基材の移動を制限するために据付面1200において突出部あるいは柱の形で典型的に設けられてもよい。基材は方向A及び方向Bにおいていずれの順にて移動されてもよく、また基材が方向A-B-A、あるいはB-A-Bなどにおいて移動するように位置決めが反復されてもよいことは理解されるべきである。第2ガイドは、サンプル処理組立体内に基材の配置を最適化するためにさらに基準点を提供する。実施形態において、一もしくは複数の第2ガイド1230、1235は、クロージャー・ボディー1100に保持された蓋部材2000における対応の切欠き2230、2235と協働するように形作られる。この配置において、少なくとも一つの第2ガイド1230、1235、及び対応の切欠き2230、2235は、反応室を形成するために、基材(図示せず)の上方への蓋部材2000の最適な配置のためクロージャー・ボディー1100を閉じる間、協働する。
【0043】
組立体1000が実質的に閉位置にあるとき、基材と蓋部材2000との間に形成された反応室は、空気への接触、すなわち従来においてサンプルを乾燥させるという欠点、を最小限にすることによって基材表面における組織サンプルを保護する。いくつかの従来技術の器具では、サンプル乾燥は、処理の間、規則的な水分補給を必要とした。このステップは、本発明の実施形態の使用によって回避されるかもしれない。
【0044】
図3は付勢手段1300を示し、これは、ばねクリップ1350が据付面1200におけるリップ1280と係合するとき、クロージャー・ボディーと連結される、あるいは一体となる力配分部材1400を押すことによって、クロージャー・ボディー1100を実質的に閉じられた位置の方へ付勢する。理想的には、力配分部材1400は、基材に垂直な平面に「浮いている」程度を許容する方法でクロージャー・ボディー1100と連結される。このことは、蓋部材2000を有するクロージャー・ボディー1100が基材上方に閉じられたとき、力配分部材1400が基材厚さ方向における小さな変動(スライドメーカー間で生じるかもしれないような)を補償することを可能にする。浮遊の力配分部材1400は、反り、波状起伏、あるいは他の変動のような、基材表面あるいは蓋部材表面における表面の変動を、表面変動の平滑化を増すことによって対処することを援助する。力配分部材1400はまた、洗浄段階の間、基材がないことを補う。図10は、そこに位置決めされた基材6000を有するサンプル処理組立体1000の側面の断面図である。図10Aに示される拡大部分Aは、据付面1200に位置決めされた、より詳細な基材6000を示す。蓋部材2000は、基材6000と共にクロージャー・ボディー1100によって保持され、反応室6500を形成する。
【0045】
例えば使用中のより容易なアクセスのためにクロージャー・ボディー1100が完全に開かれてもよいように、ばねクリップ1350は、図4におけるように、閉鎖付勢手段1300を切り離すためにリップ1280から解放されてもよい。係合されたとき、付勢手段1300によって印加された力は、力配分部材1400を通して単一のポイントで提供されるかもしれないし、あるいは、それは複数の場所で提供されるかもしれない。力配分部材1400は、基材対向面の全てあるいは一部にわたり分配された波状の表面、隆起した部分、起伏、あるいは他の隆起したポイントを備えてもよい。実施形態では、力配分部材1400は、少なくとも2つの表面の全てあるいは一部にわたり分配された波状の表面、隆起した部分、起伏、あるいは他の隆起したポイントを備えてもよい。理想的には、力配分部材1400は、蓋部材2000と基材との2つの間に反応室6500を形成するために組立体1000に位置したとき、実質的な閉位置において蓋部材2000と基材との間の接合部分で密閉が形成されるように、クロージャー・ボディー1100に印加された閉じる付勢力を幾分均等に分配する。付勢手段1300によって印加される力の大きさは、上記密閉を形成するのに十分なものであり、また、負重面1150に開く力を加えることによって組立体を開くときにロボットヘッド4100によって打ち勝つことができるものである。
【0046】
図12及び図13は、サンプル処理組立体1000のさらなる実施形態を示す。ここでクロージャー・ボディー1100は、閉位置にあるときにクロージャー・ボディー1100における凹部アーム1275における凹部1270と協働するように配置された、留置アーム1180から突出する戻り止め1170により閉位置に留置される。図12に示される実施形態において、スライド処置モジュール1000は、2つの対向する付勢手段を含む。具体的には、開放付勢手段1360は、開位置にクロージャー・ボディー1100を旋回するようにクロージャー・ボディー1100に付勢力を印加するために設けられ、より大きい閉鎖付勢手段1300は、閉位置にクロージャー・ボディーを旋回するようにクロージャー・ボディー1100に付勢力を印加するために設けられる。図示した実施形態では、それぞれの付勢手段はスプリングである。いくつかの実施形態において、開放付勢手段1360は、約5~10Nの力を加え、閉鎖付勢手段1300は、約45Nの閉鎖力を印加する。通常、凹部1270に着座する戻り止め1170の作用によって、クロージャー・ボディー1100は、開放付勢手段1360から発生する開放力の作用に対抗して閉位置に留置可能であり、あるいは、それはスライド処置モジュール1000のクロージャー・ボディー1100の偶発的な開放を防ぐように留置可能である。
【0047】
図12及び図13に図示した実施形態において、負重面1150は、クロージャー・ボディー1100を開位置に移動するためにロボットヘッド4100が負重面1150に接触するように、負重面1150は、留置アーム1180の一端に配置される。したがって、開放力を加えるためにロボットヘッド4100が負重面1150に接触したとき、スライド処置組立体1000に配置された旋回軸1030の周りにクロージャー・ボディー1100が開位置へ旋回可能であるので、戻り止め1170は凹部1270から解放される。
【0048】
図13及び図14は、留置アーム1180をさらに詳細に示す。留置アーム1180は、負重面1150に対向する端部にて、スライド処置組立体1000の部分に保持される留置旋回軸1130を含む。留置アーム1180は、クロージャー・ボディー1100の開位置と閉位置との間をロボットヘッド4100によって移動するとき、留置旋回軸1130の周りに回転する。図13は、凹部1270(図には示されていない)内に戻り止め1170を有する閉位置における留置アーム1180を示す。図14は、戻り止め1170が凹部1270と非係合の状態の開位置における留置アーム1180を示す。使用では、戻り止め1170を有する端部がその開位置まで凹部アーム1275に沿って移動し、したがってクロージャー・ボディー1100が開位置まで移動するように、ロボットヘッド4100の開動作は、エンドストップ1340の角度によって決定される角度まで、留置旋回軸1130の周りに留置アーム1180を回転する。開位置では、戻り止め1170は、クロージャー・ボディー1100の凹部1270から離れて移動されることがわかるであろう。
【0049】
さらに、クロージャー・ボディー1100を開き閉じるために、付勢手段以外の手段を組立体1000へ組み込むことができ、クロージャー・ボディーを開位置あるいは閉位置の方へ付勢することは理解されるべきである。例えば、戻り止め1170が解放された後、留置アーム1180の動きに結びつけられたクロージャー・ボディー1100を、その最終位置に到達するまで、モーター(不図示)が開位置へ駆動してもよい。このモーターは、さらに閉位置へクロージャー・ボディー1100を戻すように駆動してもよい。一つの実施形態では、モーターはネジ駆動モーターであるが、他の形態のモーター駆動部も考えられる。
【0050】
図15は、着脱可能なプラスチック成形体1110の形態におけるハウジングが図12及び図13に現されているクロージャー・ボディーの内部部品を隠した状態における、本発明の実施形態によるサンプル処理組立体の開位置における等角図である。プラスチック成形体1110は、出口ポート2500を覆うが蓋部材2000における入口ポート2450に開口する貯槽2400(設けられた場合)を覆わずに操作部品を隠すために、クロージャー・ボディー1100の上面にスナップフィットするように構成される。有利には、蓋部材2000の内側に流体経路の一部を形成する配管(不図示)は、クロージャー・ボディー1100内のその配向を制御する、成形体1110のフード1115によって覆われる。これは、ロボットヘッド4100のような可動部による、配管のよれの形成及び引っかけることを防止する。着脱可能な成形体1110は、また、きれいな外観を提供し、洗浄のために容易に除去される。
【0051】
図4及び図5は、クロージャー・ボディー1100のいくつかの特徴をより詳しく示す。第1流体経路1500は、理想的には器具4000に搭載されコントローラー4400の制御下の流体管理システムと流体連通のために構成される。第1流体経路1500はまた、反応室と流体管理システムとの間の流体の移送を許可するために、クロージャー・ボディー1100に保持される場合、蓋部材2000における流体流路ポート2500と連結するために構成される。図4は、力配分部材1400の下側における流体開口1520を示し、この流体開口は、蓋部材がクロージャー・ボディーによって保持されるとき、第1流体経路1500と反応室との間の流体移送を許可する。典型的には、第1流体経路1500は、試薬の撹拌及び/又は反応室からの試薬の排出を達成するため、負及び/又は正の流体圧力を印加して流体を反応室へあるいは反応室から流体を引き出させるように構成された圧力源及び/又は真空源あるいは他の源を備えた器具における廃液ラインと連結される。撹拌は、反応室における泡の存在にもかかわらず基材におけるサンプルと接触する試薬の可能性を増すことから、処理ステップの間、反応室内の泡管理を支援することができる。
【0052】
図5は、ハウジング蓋が除去されて第1流体経路1500を形成する配管を含む内部部品、及び力配分部材1400の内部接面を現した、図1から図6のクロージャー・ボディーの平面図である。
【0053】
実施形態において、連結面1160及び突出部2160の形態における連結手段は、クロージャー・ボディー内に蓋部材を着脱可能に保持するためにクロージャー・ボディー1100及び蓋部材2000にそれぞれ設けられる。典型的には、蓋部材2000は、サンプル処理用の組立体1000を準備するためにクロージャー・ボディー1100と手動で連結されるが、器具による自動連結及び自動分離もまた考えられる。図1から図10に示される実施形態において、ユーザーは、親指(指グリップ2490に載せて)と人差し指(解放タブ2170で載せて)との間に蓋部材2000を保持し、連結面1160を超えて曲げて連結面1160と係合するように突出部2160に十分な圧力を加えることにより、クロージャー・ボディー1100に蓋部材をクリックフィット(click-fit)させる。
【0054】
一旦、蓋部材2000が適所に位置すれば、それは交換が必要な前に多数回再度使用してもよい。交換のために取り外すため、ユーザーは、人差し指と親指との間に蓋部材2000を把持し、突出部2160を引っ込めるために解放タブ2170に圧力を加え、それによりクロージャー・ボディー1100から蓋部材2000を解放する。親指及び人差し指用の接触面の配置及び摩擦フィット連結(friction fit coupling)の使用は、行っているサービスの間、蓋部材の容易な交換を容易にする。
【0055】
図12から図19に示されるような他の実施形態において、蓋部材2000は、クロージャー・ボディー1100と滑動して連結することができる。したがって蓋部材2000は、滑ることによってクロージャー・ボディー1100に設置されてもよく、ここでは、滑動係合を調整しガイドするために、一もしくは複数の走路、経路、溝あるいはレールが設けられている。クロージャー・ボディーから蓋部材が偶発的に外れるのを回避するために、ばねクリップが設けられてもよい。あるいはまた、それぞれの部品が互いに摩擦フィットであってもよい。タブ2480は、クロージャー・ボディーからの蓋部材2000を滑らせて除去するために設けられる。理想的には、タブ2480は、ユーザーによる容易な把持を支援するために、少なくとも一つの側面にスロット、溝あるいは他のテクスチャ構造を有する。しかしながら、ここに記載した機械的連結の代わりに、蓋部材2000をクロージャー・ボディー1100の適所に保持するため、真空、化学結合、磁気、あるいは他の機械的機構のような他の手段が使用されてもよい。
【0056】
図7及び図8は、本発明の実施形態による蓋部材2000の一例を図示する。蓋部材は、第1側面2800と、第1側面に対向する第2側面2900とを有する。蓋部材2000の第1側面における内壁2100によって形成される空間2850は、蓋部材2000が組立体における基材と接触するとき、容積において20μlから500μl、より好ましくは50μlから300μl、さらにより好ましくは100から200μlの反応室を形成する。壁2100は、使用において、下方の基材(例えばスライドあるいは据付面の形態における)と共に密閉面2150を形成する厚さを有する。反応室へ試薬を受け入れるための第1流体流路ポート2450は、蓋部材2000の一端側に設けられる。理想的には、流体流路ポート2450は、例えばロボットヘッド4100における流体ディスペンサーによって試薬が分配されてもよい貯槽2400から満たされる。理想的には、貯槽2400は、流体流路ポート2450の方へ、そして反応室へ試薬をガイドするため少なくとも一つの傾斜壁2430を有する。
【0057】
試薬は、貯槽2400からの重力充填によって反応室を満たしてもよい。流体のレベルは、例えば第1流体経路1500が大気に開放されたとき、流体静力学的に制御されてもよい。このことは、基材上のサンプルを覆うように、あるいは洗浄の場合、理想的には反応室を満たすように、貯槽2400が十分な試薬/洗浄溶液を含むことを保証する。流体は、第2流体流路ポート2500の後のいずれの場所で下流の流体経路を閉じることにより、反応室への後の放出のために貯槽2400に保持されてもよい。これはバルブ(不図示)によって制御されてもよい。
【0058】
あるいはまた、圧力、例えば正圧が、貯槽2400にてロボットヘッド4100のプローブによって加えられてもよく、あるいは、貯槽から反応室へそして反応室を横切り流体を出すために、正あるいは負圧が蓋部材の反対側の方の流体流路ポート2500で印加されてもよい。ロボットヘッド4100のプローブは、反応室への試薬の注入のため流体流路ポート2450の面取りされた部分2460と連結されてもよい。クロージャー・ボディー1100における流体流路ポート1520及び蓋部材2000における流体流路ポート2500を介する充填、撹拌、及び反応室から流体を排出するときのプローブ及び流体管理システムの操作は、典型的に、器具4000内の流体移動を能動的に制御するコントローラー4400の制御にて行われる。このことは、サンプル処理ステップの間、均一な試薬適用、及び、よって均一な染色につながる。さらに、蓋部材の洗浄のみならず、より均一な洗浄が処理ステップ間で達成することができる。
【0059】
図16から図19は、クロージャー・ボディー1100との滑動的な係合に適している、蓋部材2000の別の実施形態を示す。試薬を配送するためにロボットヘッドを組立体1000に戻すことなく、蓋部材2000と基材6000との間に形成された反応室を充填するために、コントローラー4400の制御下で多数の分割量が分配されてもよいように、蓋部材2000は、より高容量の試薬を保持可能な増大した貯槽2400を有する。このことは、器具4000内部の他の組立体へのロボットの試薬配送可用性を自由にする。切欠き2240は、また、クロージャー・ボディー1100(不図示)におけるばねクリップとの係合のため設けられている。
【0060】
蓋部材2000の下面2800における空間によって、及び組立体1000の据付面1200あるいは置かれた場合には基材6000によって、形成される反応室の周りに密閉を形成するために、ガスケット2200の形態における圧縮可能な部材が設けられる。しかしながら、いくつかの実施形態では、その空間は、蓋部材本体の下面2800において輪郭形成空間(contoured void)が形成されることなく、圧縮可能な部材によって形成されてもよいことは理解されるべきである。
【0061】
蓋部材本体は、例えば射出成形、3D印刷などのような適切な工程を使用して製造されてもよい。理想的には、ガスケット2200は、蓋部材が金型に置かれて流体のガスケット材料が蓋部材のスロット及び空間に流し込まれながら金型へ加えられるような、簡単な射出工程において蓋部材2000に適用される。いくつかの実施形態では、蓋部材への流体ガスケット材料の流れをガイドするために、一もしくは複数のガスケット溝あるいは窪みが蓋部材の裏面2800に設けられてもよい。流動可能なガスケット材料によって充填されることを意図していないキャビティ及び空間(並びに、窪み及び溝)は、ガスケット形成工程の間、充填を妨げるために、一時的にマスクするあるいは金型の機構によって塞いでもよい。
【0062】
理想的には、蓋部材2000は、くさび形のスロットあるいは開口2250を有して製造される。これらは、蓋部材の表面2900に開くスロット2250の厚い部分と、蓋部材の裏面2800(スロットは蓋部材の全てを通り延在する必要はないけれども)に開くスロット2250の薄い部分とが設けられる。流体のガスケット材料はスロットに流れ込み、硬化すると、蓋部材2000にガスケット2200をしっかり固定する。
【0063】
蓋部材にガスケットを形成するため金型あるいはダイへ液体状の化合物を堆積する能力のために、フルオロシリコン、液体シリコンゴム、及び他のシリコン/ゴム化合物のようなものがガスケットに適していると考えられる。この工程を使用すると、流体ガスケット材料はまた、ガスケット2200が形成される蓋部材の裏面2800から延在し、流体流路溝2500をライニングし蓋部材の表面2900における開口2500の周りにO-リングあるいはシールを形成するスルー(through)つまり「ビア」を形成するように作製可能である。流体ガスケット材料が蓋部材2000の輪郭の上及び輪郭へ「成長」するこの製造アプローチは、接着剤なしでかつわずかな製造ステップで、ガスケット材料と蓋部材材料との間により均一でより有効な保持を生成する。出口ポート2500の周りの密閉O-リングの提供は追加の利点である。
【0064】
使用において、力配分部材1400は、スペーサ部材2950を介して閉鎖力を印加し、ガスケット2200を圧縮して密閉機能を提供する。組立体が閉じられるときに、ガスケット2200の圧縮可能な範囲を制限するために、実質的に剛体のエンドストップ(end stop)2840が蓋部材裏面2800に設けられる。エンドストップ2840は、特に蓋部材2000の多数回の使用後の過剰圧縮を防ぎ、ガスケット2200の完全性を維持する。さらにエンドストップ2840は、反応室容積を制御することによって反応室の均一性を確保するのに役立つ。エンドストップ2840は、蓋部材裏面2800の長辺及び一端に沿って延在するレールとして示されるが、蓋部材裏面に、ガスケットの過剰圧縮を防ぐ隆起部、歯、バンプ、タブあるいは他の機構のような多くの形態を取ってもよいことが理解されるべきである。
【0065】
追加的に、図16から図19における蓋部材2000は、反応室への試薬供給中の泡形成を、及び/又は、排出後の反応室における破片収集を、緩和するため蓋部材裏面2800においてキャビティ2860、2870を設ける。キャビティ2860は、反応室の幅を実質的に横切って延在し、流体入口2450と流体連通に形成される。入口2450へ分配された(存在する場合、貯槽2400を介して)流体は、出口2500の方へ反応室を横切って伝わるように、試薬用の一様な流体面を作るために形作られたキャビティ2860を最初に満たす。使用では、流体面は、泡形成の可能性を減少させ、よって組織サンプルのより均一な染色を達成しながら、実質的に直角に反応室を横切って伝わる。
【0066】
第2キャビティ2870は、反応室の反対側の端に位置決めされ、ガスケット2200の内壁あるいは蓋部材裏面2800の他の壁によって形成された反応室の反対側の角に試薬が到達する前に、流体面から試薬を取り出すように形作られる。キャビティ2870は、使用済の試薬が排出される出口2500と流体連通にある。反応室の角に試薬が到達する前にキャビティ2870を使用して試薬を捕らえることは、後続の処置ステップに悪影響を及ぼすことが可能な持ち越し試薬の可能性を減じることから、流体排出を援助する。キャビティ2870は、さらに、より一様な染色をもたらす、染色領域からの泡の除去を援助する。キャビティ2870の形状及び輪郭は例証のみにあり、逆C形状のキャビティが反応室の側面の壁に沿ってさらに延在してもよいことは理解されるべきである。
【0067】
いくつかの例において、ユーザーエラーは、蓋部材がクロージャー・ボディー1100に装着されていないときに、器具4000を使用することを試みることに結びつくかもしれない。このことが生じる可能性を最小限にするために、使用に先立って、染色の組立体1000における蓋部材2000の存在を保証するために、蓋部材2000は、作業者が容易に見ることができ、及び/又は器具4000によって認識可能な機構を組み込んでもよい。この機構は、器具による自動検出に適用可能な光学的な、磁気的な、無線周波数の、赤外線の、あるいは他の機械可読なエレメントを組み込んでもよい。ある実施形態において、その機構は、器具におけるサンプルで行われる処理を実行する前に、器具における検出装置によって検知可能である。このことは、蓋部材2000が組立体1000に存在していないことをそれが検出したときに、器具システムがユーザーに通知する、あるいはアラーム状態に入ることを可能にする。別法として/追加的に、蓋部材へ試薬を分配することを試みるとき、予期された連結位置を超えてプローブが移動したならば、器具は、蓋部材の欠如を自動的に検知してもよい。
【0068】
一つの実施形態において、蓋部材2000は、蓋部材の使用に関する情報を、下記のものに限定されないがこれらを含み、染色の組立体において蓋部材が使用された回数、蓋部材2000が受けた洗浄サイクルの回数、あるいは、蓋部材の使用可能なライフサイクルに関連するかもしれない他の情報を含む蓋部材の歴史、をさらに符号化してもよい。一もしくは複数の配向及び機能的な機構を有する蓋部材は、同時係属中の米国仮特許出願61/696,529号、発明の名称:「Cover Tile with Orientation Indicia」、出願日:2012年9月4日、に記述されており、この全内容は、参考としてここに組み込まれる。
【0069】
蓋部材2000は、例えば射出成形などによって容易に製造されるかもしれないように設計されている。組立体に組み込まれた公差、及びクロージャー・ボディー1100によって達成される力配分のために、蓋部材及び/又はガスケット材料における柔軟さを利用すること及び分配された閉鎖力を加えることによって、基材と共に密閉することがさらに達成されるかもしれないので、蓋部材2000は、精密に平坦な第1側面2800を有して製造される必要がない。使用では、力配分部材1400は、処置ステップの間、反応室から流体が制御されずに出て行くことが最小になるように、蓋部材2000と基材との間に実質的に一様な接触を達成する。さらに、ほとんどのデバイスは薄い壁であるので、蓋部材2000は、製造に関して多くの材料量を必要としない。図示される実施形態において、より多くの材料を消費する、より厚い壁2420は、射出成形工程から発生する製造欠陥を最小限にするために、反応室を形成する空間2850から、より遠くに位置する。
【0070】
一つの実施形態では、蓋部材2000は、空気キャビティのようなキャビティ、又はガス、流体あるいは粘着性の化合物で満たされるキャビティを備える。実施形態では、キャビティは、例えば、周囲環境から蓋部材を熱的に密閉する、温度調整容量を提供する。ある実施形態では、キャビティは、蓋部材及び/又は反応室の温度を維持する、あるいは変更するために利用されてもよい。
【0071】
好ましい実施形態では、蓋部材2000は、たとえ第1側面2800が完全に平坦に製造されなくても、サンプル処理組立体において基材と共に密封された反応室を今まで通り形成するであろう十分に柔軟な材料から製造される。蓋部材2000は、いずれかの単一の材料から、あるいは、例えば組織病理学実験室の臨床検査室で典型的に利用される試薬と一緒の使用に適した複数の材料の組み合わせから製造されてもよい。蓋部材2000の製造に適した材料は、疎水性材料及び熱安定性プラスチックのような熱安定性の材料を含むが、しかしこれらに限定されない。いくつかの適切な材料は、幾つか名を挙げると、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン(アセタール)、ポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)、高密度ポリエチレン(HDPE)及び超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)を含むポリエチレン、テフロンPEを含むテフロン、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)のようなポリプロピレン、環状オレフィン共重合体、あるいはこれらの組み合わせ、を含むが、しかしこれらに限定されない。
【0072】
一つの実施形態では、蓋部材2000は、2つもしくはそれよりも多くの成分において製造されてもよい。一つの実施形態において、蓋部材2000は、共同モールド成形(co-molding)、オーバーモールド成形(over-molding)、及び箔押し(hot foil stamping)[コンプライアントシール(compliant seal)及びヒートシールドラミネーション(heat sealed lamination)の箔押しを含む]の一もしくは複数を含む工程によって製造されてもよいが、しかしこれらに限定されない。このような配置において、主本体部分2600は、ポリカーボネート、ポリプロピレン、FEPあるいはCOCから製造されてもよい。複合材料が主本体部分2600用に使用された場合、本質的な(substantial)部分はFEPを備えてもよく、一方、支持部分はポリカーボネートを備えてもよい。あるいはまた、主本体部分2600の本質的部分は、支持部分用のポリカーボネートと結合してポリプロピレンを備えてもよい。箔押しの使用が密閉面2150を形成する壁2100の少なくとも一部にて適用されてもよい。同様に、スペーサ部材2950を形成するために、ヒートシールドラミネートポリプロピレンが第2側面2900における主本体部分2600に適用されてもよく、及び/又は、ガスケット2200を形成するために、フルオロシリコンが第1側面2800における主本体部分に適用されてもよい。
【0073】
多数のサンプル処理組立体1000を含む器具において、例えば、洗浄ステップの間、ほとんどの試薬粒子が反応室から移動され取り出されることを確保するために真空の適用を個々に制御するように、各組立体に充てられた掃除(scavenging)バルブが設けられてもよい。それぞれの掃除バルブは、廃棄あるいは再利用のための廃棄物貯槽4300へ廃棄物管理システムを介して接続されてもよい。コントローラー4400による、処置及び洗浄ステップの個々の制御は、器具4000に搭載の改善されたスケジューリングを可能にし、これは器具効率及びコスト有効度を改善する。
【0074】
蓋部材2000は、据付面1200における対応の突出部1230、1235と協働するように形作られる切欠き2230、2235を設けてもよく、その結果使用時において、反応室を形成するために、切欠き及び突出部は組立体1000における適所に蓋部材2000を案内する。このように、突出部1230、1235は、累積公差の影響を最小限にするために基材上方の適所に蓋部材を案内するだけでなく、組立体に基材を位置決めするためにも使用される。
【0075】
いくつかの実施形態において、蓋部材は、使用において、クロージャー・ボディーにおける基準部材1700、1710に接するように構成された一もしくは複数の付勢アーム2700、2710を有してもよく、それによって、クロージャー・ボディーが据付面に接近するような閉鎖の最終段階の間、組立体における突出部1230、1235の方へ蓋部材を押す。このことは、その下の基材に対して蓋部材2000の制御され反復可能な位置決めを提供する。別法として/追加的に、基材及び蓋部材を付勢し整列させる機構を据付面1200に組み込むことができる。
【0076】
蓋部材は、また、処理の終わりにてサンプル処理組立体1000が開かれるとき、基材からの蓋部材2000の分離を支援するために、空間に隣接する第1側面2800に解放部材2300を有してもよい。解放部材2300は、反応室における残余の試薬から生じる表面張力を壊すことによって基材からの蓋部材2000の分離を支援するように構成された湾曲したトングの形態におけるスプリング付きの開放部材であってもよい。これは、処理ステップの終わりにて、サンプルを有する基材と蓋部材との間に生じるかもしれないスティクション力に打ち勝つのに役立つ。しかしながら、この機構は本質的なものではなく、図16から図19に示す蓋部材2000から省略されている。染色後、基材からの蓋部材の分離は、別法として/追加的にいくつかの実施形態において、吸引/真空力によって基材が据付面に少なくとも瞬間的に保持されるように、据付面1200における開口1260での負圧(真空)の適用によって援助される。別法として/追加的に、組立体が開かれるとき、基材からの蓋部材の分離を援助するために、分離エレメントがクロージャー・ボディー1100に組み込まれてもよい。
【0077】
いくつかの実施形態において、蓋部材2000の第2側面2900は、また、隆起部あるいは壁の形態におけるスペーサ部材2950を設けてもよい。スペーサ部材2950は、密閉面2150と実質的に整列され、付勢手段1300及び力配分部材1400からの力を平等に分配することを支援する。スペーサ部材2950は、以下に述べるように、加熱の間、反応室からの熱損失を制御することを支援する。スペーサ部材2950はまた、口部2910の周りにも形成されてもよい。ここで、クロージャー・ボディー1100における第1流体経路1500を介して供給され流体流路ポート2500を介して反応室と取り交わされてもよい流体が通る口部2910の周りに、柔軟な材料は、ガスケット状の密閉(seal)2920を形成することを援助する。密閉2920は、蓋部材材料と一体であってもよく、あるいは一体ではなくより柔軟な材料から形成されてもよい。
【0078】
蓋部材2000がサンプル処理組立体1000に保持されている間、多くの処置ステップを行なうことができる。処理ステップ間で、反応室は、流体を回収するために、例えば第1流体経路1500を介して負圧を加えることによって空にされてもよい。幾つかのステップにおいて、例えば水(蒸留水、再蒸留水、脱イオン化水、及び他の水の種類を含む)、洗浄剤、塩類、酵素、酸化剤、消毒薬、界面活性剤、乳化剤、などのような成分を含む清浄液を使用して、反応室の内部で「洗浄する」ことは望ましいかもしれない。クリーニングは、組立体においてサンプルを有する基材と共に、あるいは基材なしで達成されるかもしれない。基材がない状態では、蓋部材2000は、据付面1200を有する洗浄反応室を形成する。いずれの場合も、洗浄流体は、貯槽2400を通して、あるいは開口1520、2910を介して蓋部材2000における流体流路ポート2500と連結する第1流体経路1500を通して、適用することができる。
【0079】
基材がサンプル処理組立体から除去されたとき、別個のサンプルの処理間において、蓋部材2000の完全な洗浄が行われてもよい。洗浄の有効性は、据付面1200において一もしくは複数の凹部1250を設けることによって増強されるかもしれない。ここで、実質的に閉じられた位置にてクロージャー・ボディー1100によって蓋部材2000が保持されたとき、凹部1250は、蓋部材2000の内壁2100と同一直線上に配置される。図9は、蓋部材2000に対して凹部1250の位置を図示するA領域と共にサンプル処理組立体1000の断面図である。A領域の拡大図は、図9Aにおいて提供される。一つの実施形態において、力配分部材1400は、クロージャー・ボディー1100に対して浮いている(すなわち、堅固に取り付けられていない)。このことは、クロージャー・ボディー1100の力配分部材の多少の独立した移動を可能にし、染色の組立体に基材が装填されていないとき、据付面1200との蓋部材2000の係合を提供する。
【0080】
図9Aは、据付面1200における凹部1250の上方に位置決めした蓋部材2000の内壁2100、及び洗浄反応室5000の形成を示す。図9Aに見られるように、洗浄反応室5000は、一つの分析(assay)の間に行なわれた処理ステップからそれに続く分析へ破片及び/又は蓄積(build-up)の持ち越しが最小であるように、蓋部材2000の内壁2100の洗浄を容易にするように構成される。有益には、蓋部材2000の完全な洗浄は、蓋部材が組立体内に保持されている間、実行可能であり、それによって、手動洗浄を排除する。洗浄試薬は、据付面における開口1260を介して、あるいは蓋部材2000における流体流路ポート2450、2500を介して集められてもよい。
【0081】
開口1260は、第2流体流路経路と連結することができてもよい。第2流体流路経路(不図示)は、開口1260と、洗浄反応室5000から試薬を排出するための負圧源を含む流体源との間の流体移動を容易にするかもしれない。集められた洗浄試薬は、廃棄物容器/排水管に、あるいは再利用に、転送されてもよい。真空はまた、使用において、組立体が開き始める間、基材からの蓋部材2000の分離を助けるために、すなわち、基材と蓋部材との間の表面張力あるいはスティクションの力を克服するために、据付面1200に位置決めされた基材に開口1260を介して適用されてもよい。
【0082】
図1から図4及び図9に示されるように、本発明の実施形態によるサンプル処理組立体1000は、据付面1200と連結したサーモモジュール1800を有する。サーモモジュール1800は、反応室内の温度を変更するために、好ましくはコントローラー4000の制御下で、操作可能である。これはいくつかの処置ステップに関して必要であり、加熱及び好ましくは冷却用の、サーモモジュールの個々の制御は、複数のサンプル処理組立体1000が存在しその各々が完全に異なるサンプル処理分析を行うかもしれない器具4000に搭載された増強された染色及び改善されたスケジューリング能力をもたらす。
【0083】
用語「備える、備えられた、備えている」(comprise, comprises, comprised, comprising)が本明細書(請求範囲を含む)において使用されており、これらは、言及した機構、整数、ステップ、あるいは部品の存在を明示するように解釈されるべきであり、一もしくは複数の他の機構、整数、ステップ、あるいは部品、あるいはそれらの群の存在を排除すると解釈されるべきではない。
【0084】
ここに添付した請求項に規定されるような本発明の範囲から外れることなく、様々な変形、追加、及び/又は変更が先に記述した部分になされることは理解されるべきである。
【0085】
以下の請求項が例のみとして提供されることは理解されるべきである。後日、一もしくは複数の発明を規定あるいは再規定するように、特徴が請求項に加えられ、あるいは請求項から省略されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図9A
図10
図10A
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19