(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】音響トランスデューサ、ウェアラブルサウンドデバイス及び音響トランスデューサの製造方法
(51)【国際特許分類】
H04R 1/28 20060101AFI20220825BHJP
H04R 1/10 20060101ALI20220825BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20220825BHJP
H04R 3/04 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
H04R1/28 310C
H04R1/10 101Z
H04R3/00 310
H04R3/04
(21)【出願番号】P 2021113892
(22)【出願日】2021-07-09
【審査請求日】2021-07-09
(32)【優先日】2020-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521287935
【氏名又は名称】エクスメムス ラブズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ジェム ユエ リヤーン
(72)【発明者】
【氏名】チオーン シー. ロー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ジョージ リム
(72)【発明者】
【氏名】陳 文健
(72)【発明者】
【氏名】マイケル デイヴィッド ハウショルダー
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド ホーン
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0211521(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0349665(US,A1)
【文献】特開2020-031444(JP,A)
【文献】特表2009-512375(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0007858(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0201192(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/28
H04R 1/10
H04R 3/00
H04R 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェアラブルサウンドデバイス内に配置される或いは該ウェアラブルサウンドデバイス内に配置されることが意図される音響トランスデューサであって、
第1のアンカ構造と、
第1のフラップとを含み、該第1のフラップは、
前記第1のアンカ構造によって固定される第1の端と、
一時的にベントを形成するために第1の上下移動を行うように構成される第2の端とを含み、
前記第1のフラップは、スペースを、外耳道に接続される第1の容積と、前記ウェアラブルサウンドデバイスの周囲に接続される第2の容積とに仕切り、
前記外耳道及び前記周囲は、一時的に開けられる前記ベントを介して接続される、
音響トランスデューサ。
【請求項2】
前記第1のフラップの前記第2の端は、前記第1の上下移動を行うときに当該音響トランスデューサの如何なるコンポーネントとも接触しない、請求項1に記載の音響トランスデューサ。
【請求項3】
前記ベントを形成することに起因して生成される正味空気移動は、実質的にゼロであり、前記ベントを形成することは、前記ベントを開く或いは前記ベントを閉じるフラップ移動を表す、請求項1に記載の音響トランスデューサ。
【請求項4】
第2のアンカ構造と、
第2のフラップとを含み、該第2のフラップは、
前記第2のアンカ構造によって固定される第1の端と、
前記ベントを形成する第2の上下移動を行うように構成される、前記第1のフラップの前記第2の端とは反対の第2の端とを含む、
請求項1に記載の音響トランスデューサ。
【請求項5】
前記第1のフラップ及び前記第2のフラップは、前記スペースを、前記外耳道に接続される前記第1の容積と、前記ウェアラブルサウンドデバイスの前記周囲に接続される前記第2の容積とに仕切る、請求項4に記載の音響トランスデューサ。
【請求項6】
第1の方向に向かって移動するように前記第1のフラップが作動されることの故に第1の空気移動が生成され、
第2の方向に向かって移動するように前記第2のフラップが作動されることの故に第2の空気移動が生成され、
前記第1の空気移動及び前記第2の空気移動は、前記ベントを形成するように前記第1のフラップ及び前記第2のフラップが同時に作動されるときに、互いに実質的に打ち消し合う、
請求項4に記載の音響トランスデューサ。
【請求項7】
前記第1のフラップは、第1の方向に向かって移動するように作動され、前記第2のフラップは、前記第1の方向とは反対の第2の方向に向かって移動するように作動される、請求項4に記載の音響トランスデューサ。
【請求項8】
時間瞬間に、前記第1のフラップの前記第2の端は、第1の方向に向かって第1の変位を有するように作動され、前記第2のフラップの第2の端は、第2の方向に向かって第2の変位を有するように作動され、
前記第1の変位及び前記第2の変位の距離は、実質的に等しい、
請求項4に記載の音響トランスデューサ。
【請求項9】
前記第1のフラップは、第1の信号に従って駆動され、前記第2のフラップは、第2の信号に従って駆動され、
前記第1の信号は、増分電圧を加えた共通信号であり、
前記第2の信号は、減分電圧を加えた共通信号である、
請求項4に記載の音響トランスデューサ。
【請求項10】
前記増分電圧及び前記減分電圧は、実質的に同じ大きさを有する、請求項9に記載の音響トランスデューサ。
【請求項11】
前記共通信号は、定バイアス電圧を含む、請求項9に記載の音響トランスデューサ。
【請求項12】
前記共通信号が定バイアス電圧であるときに、前記第1のフラップ及び前記第2のフラップは、水平表面に対して実質的に平行であり、前記ベントは、閉じられる、請求項9に記載の音響トランスデューサ。
【請求項13】
前記共通信号は、入力オーディオ信号を含む、請求項9に記載の音響トランスデューサ。
【請求項14】
前記増分電圧及び前記減分電圧の両方がゼロであるときに、前記ベントは閉じられる、請求項9に記載の音響トランスデューサ。
【請求項15】
前記ウェアラブルサウンドデバイスは、
感知された量を示す感知結果を生成するように構成される感知デバイスを含み、
前記第1のフラップは、第1の信号に従って駆動され、前記第1の信号は、増分電圧を加えた共通信号であり、
前記増分電圧は、前記感知結果に従って生成される、
請求項1に記載の音響トランスデューサ。
【請求項16】
前記増分電圧は、前記感知結果によって示される前記感知された量と単調な関係を有する、請求項15に記載の音響トランスデューサ。
【請求項17】
前記感知デバイスは、近接センサを含み、前記感知された量は、物体と前記近接センサとの間の距離を表し、前記増分電圧の大きさは、前記距離が減少するか或いは閾値より下に減少するに応じて増大する、請求項15に記載の音響トランスデューサ。
【請求項18】
前記感知デバイスは、運動センサを含み、前記感知された量は、前記ウェアラブルサウンドデバイスの動きを表し、前記増分電圧の大きさは、前記動きが増大するに応じて増大する、請求項15に記載の音響トランスデューサ。
【請求項19】
前記感知デバイスは、力センサを含み、前記感知された量は、前記力センサに加えられる力を表し、前記増分電圧の大きさは、前記力が増大するに応じて増大する、請求項15に記載の音響トランスデューサ。
【請求項20】
前記感知デバイスは、光センサを含み、前記感知された量は、前記光センサによって感知される周囲光を表し、前記増分電圧の大きさは、前記周囲光が減少するに応じて増大する、請求項15に記載の音響トランスデューサ。
【請求項21】
前記第1のフラップ及び前記第2のフラップは、第1の層内に配置され、
前記第1のアンカ構造及び前記第2のアンカ構造は、第2の層内に配置される、
請求項4に記載の音響トランスデューサ。
【請求項22】
音響変換を行うように構成される膜を含む、請求項1に記載の音響トランスデューサ。
【請求項23】
前記膜は、前記第1のフラップを含む、請求項22に記載の音響トランスデューサ。
【請求項24】
前記ウェアラブルサウンドデバイスは、前記膜を作動させる駆動信号を生成するように構成される駆動回路を含み、
前記駆動回路は、等価器を含み、
前記等価器は、前記ベントが開かれていることに起因する前記音響トランスデューサの低周波応答の劣化を補償するように構成される、
請求項22に記載の音響トランスデューサ。
【請求項25】
音響変換を行うように構成される音響トランスデューサと、
第1のハウジング開口と、第2のハウジング開口とを含む、ハウジング構造とを含み、
前記音響トランスデューサは、
少なくとも1つのアンカ構造と、
前記少なくとも1つのアンカ構造によって固定されるフィルム構造と、
前記フィルム構造上に配置されるアクチュエータであって、ベントを一時的に形成するために前記フィルム構造を作動させるように構成されるアクチュエータとを含み、
前記音響トランスデューサは、前記第1のハウジング開口と前記第2のハウジング開口との間で前記ハウジング構造内に配置され、
前記ハウジング構造内に形成されるスペースが、前記フィルム構造によって第1の容積と第2の容積とに仕切られ、前記第1の容積は、前記第1のハウジング開口に接続され、前記第2の容積は、前記第2のハウジング開口に接続され、
前記第1の容積及び前記第2の容積は、一時的に閉じられる前記ベントを介して接続されることが意図される、
ウェアラブルサウンドデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、音響トランスデューサ(音響変換器)(acoustic transducer)、ウェアラブルサウンドデバイス(wearable sound device)、および音響トランスデューサの製造方法に関し、より具体的には、閉塞効果(occlusion effect)を抑制することができる音響トランスデューサ、音響トランスデューサを有するウェアラブルサウンドデバイス、および音響トランスデューサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、インイヤ(in-ear)(外耳道内への挿入)イヤホン、オンイヤ(on-ear)又はオーバーイア(over-ear)イヤホンなどのような、ウェアラブルサウンドデバイスが、音の生成及び音の受信のために一般的に使用されている。磁石および可動コイル(MMC)ベースのマイクロスピーカが何十年にも亘って開発されており、多くのそのようなデバイスにおいて広く使用されている。最近、半導体製造プロセスを利用するMEMS(微小電気機械システム)音響トランスデューサは、ウェアラブルサウンドデバイスにおける音生成/受信コンポーネント(構成要素)であり得る。
【0003】
閉塞効果は、聴取者による大きな知覚音圧を引き起こす外耳道の密封容積に起因する。例えば、閉塞効果は、聴取者が(例えば、歩行、ジョギング、会話、食事、音響トランスデューサに触れることなどのような)骨伝導音を生成する特定の(複数の)運動を行い、ウェアラブルサウンドデバイスを使用する(例えば、ウェアラブルサウンドデバイス装置が外耳道に充填される)間に生じる。閉塞効果は、加速度ベースのSPL(音圧レベル)生成(SPL∝a=dD2/dt2)と圧縮ベースのSPL生成(SPL∝D)との違いの故に、バス(低音部)に向かって特に強い。例えば、20Hzでの単なる1μmの変位は、閉塞した外耳道内でSPL=1μm/25mm atm=106dBを引き起こす(25mmは、成人の外耳道の平均長である)。従って、閉塞効果が生じるならば、聴取者は閉塞ノイズを聴取し、聴取者の経験の質は悪い。
【0004】
従来の技術において、ウェアラブルサウンドデバイスは、外耳道とデバイス外部の周囲との間に存在する気流チャネル(airflow channel)を有することで、閉塞効果によって引き起こされる圧力は、閉塞効果を抑制するために、この気流チャネルから解放されることができる。しかしながら、気流チャネルは常に存在するため、周波数応答においては、より低い周波数(例えば、500Hzより低い周波数)のSPLは、有意な降下を有する。例えば、従来のウェアラブルサウンドデバイスが、典型的な115dBスピーカドライバを使用するならば、20HzのSPLは、110dBよりもはるかに低い。加えて、気流チャネルを形成するように構成される固定ベント(通気口)のサイズがより大きいならば、SPL降下はより大きく、防水及び防塵はより困難になる。
【0005】
場合によっては、従来のウェアラブルサウンドデバイスは、気流チャネルの存在に起因するより低い周波数でのSPLの損失を補償するために、典型的な115dBスピーカドライバよりも強いスピーカドライバを使用することがある。例えば、SPLの損失が20dBであると仮定すると、気流チャネルの存在の下で同じ115dBのSPLを維持するために必要とされるスピーカドライバは、それが密封外耳道で使用されるならば、135dBのSPLである。しかしながら、10倍より強いバス出力は、スピーカ膜の移動が10倍だけ増加することも必要とし、それはスピーカドライバのコイルおよび磁束ギャップの両方の高さを10倍だけ増加させる必要があることを暗示する。よって、強力なスピーカドライバを有する従来のウェアラブルサウンドデバイスが小さいサイズ及び軽い重量を有するようにさせることは困難である。
【0006】
従って、閉塞効果を抑制するために先行技術を改良する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、閉塞効果を抑制することができる音響トランスデューサを提供すること、音響トランスデューサを有するウェアラブルサウンドデバイスを提供すること、および音響トランスデューサの製造方法を提供することが、本発明の主要な目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態が、ウェアラブルサウンドデバイス内に配置される或いはウェアラブルサウンドデバイス内に配置されることが意図される音響トランスデューサを提供する。音響トランスデューサは、第1のアンカ構造と、第1のフラップとを含む。第1のフラップは、第1の端と、第2の端とを含む。第1の端は、第1のアンカ構造によって固定され、第2の端は、一時的にベントを形成するために第1の上下移動を行うように構成される。第1のフラップは、スペースを、外耳道に接続される第1の容積と、ウェアラブルサウンドデバイスの周囲に接続される第2の容積とに仕切る。外耳道及び周囲は、一時的に開けられるベントを介して接続される。
【0009】
本発明の別の実施形態が、音響トランスデューサと、ハウジング構造とを含む、ウェアラブルサウンドデバイスを提供する。音響トランスデューサは、音響変換を行うように構成される。音響トランスデューサは、少なくとも1つのアンカ構造と、フィルム構造と、アクチュエータとを含む。フィルム構造は、アンカ構造によって固定される。アクチュエータは、フィルム構造上に配置され、アクチュエータは、ベントを一時的に形成するためにフィルム構造を作動させるように構成される。ハウジング構造は、第1のハウジング開口と、第2のハウジング開口とを含む、ハウジング構造とを含み、音響トランスデューサは、第1のハウジング開口と第2のハウジング開口との間でハウジング構造内に配置される。ハウジング構造内に形成されるスペースが、フィルム構造によって第1の容積と第2の容積とに仕切られ、第1の容積は、第1のハウジング開口に接続され、第2の容積は、第2のハウジング開口に接続される。第1の容積及び第2の容積は、一時的に閉じられるベントを介して接続されることが意図される。
【0010】
本発明のこれらの目的および他の目的は、様々な図および図面に図示される好ましい実施形態の以下の詳細な記述を読んだ後に、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に従った音響トランスデューサを示す概略的な頂面図である。
【0012】
【
図2】本発明の第1の実施形態に従った音響トランスデューサを示す概略的な断面図である。
【0013】
【
図3】本発明の第1の実施形態に従った音響トランスデューサおよびハウジング構造を図示する概略的な断面図である。
【0014】
【
図4】本発明の第1の実施形態に従った第1のモードにある第1の膜を図示する概略図である。
【0015】
【
図5】本発明の別の実施形態に従った第2のモードにある第1の膜を図示する断面図である。
【0016】
【
図6】本発明の第1の実施形態に従ったスリットの異なる側面にある相対的位置ペアの複数の例を図示する概略図である。
【0017】
【
図7】本発明の第1の実施形態に従った複数の例の周波数応答を図示する概略図である。
【0018】
【
図8】本発明の別の実施形態に従った第1のモードにある第1の膜を図示する概略的な断面図である。
【0019】
【
図9】本発明のある実施形態に従った音響トランスデューサを備えるウェアラブルサウンドデバイスを図示する概略図である。
【0020】
【
図10】本発明のある実施形態に従った別のタイプの音響トランスデューサを図示する概略的な断面図である。
【
図11】本発明のある実施形態に従った別のタイプの音響トランスデューサを図示する概略的な断面図である。
【
図12】本発明のある実施形態に従った別のタイプの音響トランスデューサを図示する概略的な断面図である。
【0021】
【
図13】本発明の第2の実施形態に従った音響トランスデューサを図示する概略的な断面図である。
【0022】
【
図14】本発明の別の第2の実施形態に従った音響トランスデューサを図示する概略的な断面図である。
【0023】
【
図15】本発明の第3の実施形態に従った音響トランスデューサを図示する概略的な頂面図である。
【0024】
【
図16】本発明の第4の実施形態に従った音響トランスデューサを図示する概略的な頂面図である。
【0025】
【
図17】本発明の第5の実施形態に従った音響トランスデューサを図示する概略的な頂面図である。
【0026】
【
図18】本発明の第6の実施形態に従った音響トランスデューサを図示する概略的な頂面図である。
【0027】
【
図19】本発明の第7の実施形態に従った音響トランスデューサを図示する概略的な頂面図である。
【0028】
【0029】
【
図21】本発明の第8の実施形態に従った音響トランスデューサを図示する概略的な頂面図である。
【0030】
【
図22】本発明の第9の実施形態に従った音響トランスデューサを図示する概略的な頂面図である。
【0031】
【
図23】本発明の第10の実施形態に従った音響トランスデューサを図示する概略的な頂面図である。
【0032】
【
図24】本発明のある実施形態に従った音響トランスデューサの製造方法の異なる段階での構造を図示する概略図である。
【
図25】本発明のある実施形態に従った音響トランスデューサの製造方法の異なる段階での構造を図示する概略図である。
【
図26】本発明のある実施形態に従った音響トランスデューサの製造方法の異なる段階での構造を図示する概略図である。
【
図27】本発明のある実施形態に従った音響トランスデューサの製造方法の異なる段階での構造を図示する概略図である。
【
図28】本発明のある実施形態に従った音響トランスデューサの製造方法の異なる段階での構造を図示する概略図である。
【
図29】本発明のある実施形態に従った音響トランスデューサの製造方法の異なる段階での構造を図示する概略図である。
【
図30】本発明のある実施形態に従った音響トランスデューサの製造方法の異なる段階での構造を図示する概略図である。
【0033】
【
図31】本発明のある実施形態に従った音響トランスデューサの概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
当業者に本発明のより良い理解を提供するために、好ましい実施形態および鍵となるコンポーネント(構成要素)のための典型的な材料または範囲パラメータを以下の記述において詳述する。本発明のこれらの好ましい実施形態は、達成されるべき内容および効果について詳述するために、番号付き要素を伴う添付の図面に例示される。図面は簡略化された概略図であり、鍵となるコンポーネントの材料及びパラメータ範囲は、今日の技術に基づく例示であり、従って、本発明の基本的な構造、実装又は動作についてのより明確な記述を提供するよう、本発明に関連するコンポーネント及び組み合わせのみを示していることが留意されるべきである。コンポーネントは、現実にはより複雑であり、使用される材料又はパラメータの範囲は、将来の技術進歩に伴って進化することがある。加えて、説明の容易さのために、図面に示すコンポーネントは、それらの実際の数、形状、及び寸法を表していないことがある。詳細は、設計要件に従って調整されることがある。
【0035】
以下の記述および特許請求の範囲において、「含む(include)」、「含む(comprise)」および「有する(have)」という用語は、オープンエンド方式で使用され、よって、「含むが、~に限定されない」を意味すると解釈されるべきである。よって、「含む(include)」、「含む(comprise)」および/または「有する(have)」という用語が本発明の記述において使用されるとき、対応する特徴、領域、ステップ、動作および/またはコンポーネントは、1つまたは複数の対応する構成、領域、ステップ、動作および/またはコンポーネントの存在に向けられているが、これらに限定されない。
【0036】
以下の記述及び特許請求の範囲において、「A1コンポーネントがB1によって形成される/からなる」とき、B1はA1コンポーネントの形成において存在するか、或いはB1はA1コンポーネントの形成において使用され、他の構成、領域、ステップ、動作及び/又はコンポーネントのうちの1つ以上の存在及び使用はA1コンポーネントの形成において除外されない。
【0037】
以下の記述および特許請求の範囲において、「実質的に(substantially)」という用語は、一般的に、小さな偏差が存在することがあるか或いは存在しないことがあることを意味する。例えば、「実質的に平行な(substantially parallel」および「実質的に沿う(substantially along)」という用語は、2つのコンポーネント間の角度が、特定の角度閾値以下、例えば、10度、5度、3度または1度であってよいことを意味する。例えば、「実質的に整列させられている(substantially alighted)」という用語は、2つのコンポーネント間の偏差が、特定の差閾値以下、例えば、2μmまたは1μmであってよいことを意味する。例えば、「実質的に同じ(substantially the same)」という用語は、偏差が、例えば、所与の値又は範囲の10%以内にあることを意味し、或いは、所与の値又は範囲の5%、3%、2%、1%または0.5%以内にあることを意味する。
【0038】
第1、第2、第3などのような用語は、多様なコンポーネントを記述するために使用されることがあるが、そのような構成要素(constituent element)は、それらの用語によって限定されない。それらの用語は、構成要素を明細書中の他の構成要素と区別するためにのみ使用され、それらの用語は、明細書に記載がないならば、製造のシーケンスに関連しない。請求項は、同じ用語を使用しないことがあるが、その代わりに、要素が特許請求される順序に関して、第1、第2、第3などの用語を使用することがある。従って、以下の記述では、第1の構成要素は、ある請求項において第2の構成要素であることがある。
【0039】
以下に記載する異なる実施形態における技術的構成を、本発明の精神から逸脱することなく、互いに置き換え、再結合し、或いは混合して、別の実施形態を構成し得ることが留意されるべきである。
【0040】
本発明において、音響トランスデューサ(音響変換器)(acoustic transducer)は、音響変換(acoustic transformation)を実行してよく、音響変換は、信号(例えば、電気信号または他の適切なタイプを有する信号)を音波(acoustic wave)に変換してよく、或いは音波を他の適切なタイプを有する信号(例えば、電気信号)に変換してよい。いくつかの実施形態において、音響トランスデューサは、電気信号を音波に変換するために、サウンド生成デバイス、スピーカ、マイクロスピーカまたは他の適切なデバイスであってよいが、それらに限定されない。いくつかの実施形態において、音響トランスデューサは、音波を電気信号に変換するために、サウンド測定デバイス、マイクロホンまたは他の適切なデバイスであってよいが、それらに限定されない。
【0041】
以下において、音響トランスデューサは、当業者に本発明をより良く理解させるように構成された例示的なサウンド生成デバイスであってよいが、それに限定されない。以下において、音響トランスデューサは、ウェアラブルサウンドデバイス(例えば、インイヤデバイス(in-ear device))内に配置されてよいが、それに限定されない。音響トランスデューサの動作は、音響変換が音響トランスデューサによって実行される(例えば、音波は電気駆動信号で音響トランスデューサを作動させることによって生成される)ことを意味することが留意されるべきである。
【0042】
図1~
図3を参照すると、
図1は、本発明の第1の実施形態に従った音響トランスデューサを図示する概略的な頂面図であり、
図2は、本発明の第1の実施形態に従った音響トランスデューサを図示する概略的な断面図であり、
図3は、本発明の第1の実施形態に従った音響トランスデューサおよびハウジング構造を図示する概略的な断面図である。
図1および
図2に示すように、音響トランスデューサ100は、ベースBSを含む。ベースBSは、硬質またはフレキシブル(可撓)であってよく、ベースBSは、シリコン、ゲルマニウム、ガラス、プラスチック、石英、サファイア、金属、ポリマ(例えば、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET))、任意の他の適切な材料、またはそれらの組み合わせを含んでよい。一例として、ベースBSは、ラミネート(積層板)(例えば、銅クラッドラミネート、CCL)、ランドグリッドアレイ(LGA)ボード、または導電性材料を含む任意の他の適切なボードを含む回路基板であってよいが、それらに限定されない。
【0043】
図1および
図2において、ベースBSは、方向Xおよび方向Yに平行な水平表面SHを有し、方向Yは、方向Xに平行でない(例えば、方向Xは、方向Yに対して垂直であってよい)。本発明の方向X及び方向Yは、水平方向と考えられてよいことに留意のこと。
【0044】
音響トランスデューサ100は、フィルム構造FSと、ベースBSの水平表面SHに配置された少なくとも1つのアンカ構造140とを含み、フィルム構造FSは、アンカ構造140によって固定される。
図1に示すように、音響トランスデューサ100は、4つのアンカ構造140を含んでよく、フィルム構造FSは、第1の膜110を含む。アンカ構造140は、第1の膜110の外側に配置され、第1の膜110の外縁110eのうちの少なくとも1つに接続され、第1の膜110の外縁110eは、第1の膜110の境界を画定する。例えば、アンカ構造140は、第1の膜110を取り囲んでよく、第1の膜110の全ての外縁110eに接続されてよいが、これに限定されない。
【0045】
音響トランスデューサ100の動作において、第1の膜110は、運動を有するように作動されることができる。この実施形態において、第1の膜110は、上方および下方に移動するように作動されてよいが、それらに限定されない。例えば、
図2では、第1の膜110が作動されると、第1の膜110は、変形したタイプ110Dfに変形してよいが、それに限定されない。本発明において、「上方に移動する(move upwardly)」および「下方に移動する(move downwardly)」という用語は、膜が、第1の膜110の法線方向に平行な或いはベースBSの水平表面SHの法線方向に平行な方向Zに実質的に沿って移動することを表す(すなわち、方向Zは方向Xおよび方向Yに対して垂直であってよい)ことに留意のこと。
【0046】
音響トランスデューサ100の動作中、アンカ構造140は不動化されてよい。すなわち、アンカ構造140は、音響トランスデューサ100の動作中に第1の膜110に対する固定端(または固定縁)であってよい。
【0047】
第1の膜110(フィルム構造FS)およびアンカ構造140は、任意の適切な(複数の)材料を含んでよい。いくつかの実施形態において、第1の膜110(フィルム構造FS)およびアンカ構造140は、個々に、シリコン(例えば、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン)、シリコン化合物(例えば、炭化シリコン、酸化シリコン)、ゲルマニウム、ゲルマニウム化合物(例えば、窒化ガリウムまたはヒ化ガリウム)、ガリウム、ガリウム化合物、ステンレス鋼、またはそれらの組み合わせを含んでよいが、これらに限定されない。第1の膜110およびアンカ構造140は、同じ材料または異なる材料を有してよい。
【0048】
加えて、第1の膜110およびアンカ構造140の存在の故に、第1のチャンバCB1が、ベースBSと第1の膜110との間に存在してよい。この実施形態において、ベースBSは、バックベントBVT(例えば、
図3に示すバックベントBVT)をさらに含んでよく、第1チャンバCB1は、バックベントBVTを通じて音響トランスデューサ100の外側の後方(すなわち、ベースBSの背後の空間)に接続されてよい。
【0049】
音響トランスデューサ100は、第1の膜110(フィルム構造FS)上に配置され、第1の膜110(フィルム構造FS)を作動させるように構成された、第1のアクチュエータ120を含む。例えば、
図1および
図2において、第1のアクチュエータ120は、第1の膜110と接触してよいが、これに限定されない。さらに、この実施形態では、
図1および
図2に示すように、第1のアクチュエータ120は、
図1において方向Z視野で示すように、第1の膜110と完全にオーバーラップしなくてよいが、これに限定されない。任意的に、
図2において、第1のアクチュエータ120は、アンカ構造140上に配置され、アンカ構造140とオーバーラップしてよいが、これに限定されい。別の実施形態において、第1のアクチュエータ120は、
図1において方向Z視野に示すように、アンカ構造140とオーバーラップしなくてよいが、これに限定されない。
【0050】
第1のアクチュエータ120は、Z方向に沿う膜110の移動に対して単調な電気機械変換機能を有する。いくつかの実施形態において、第1のアクチュエータ120は、圧電アクチュエータ、静電アクチュエータ、ナノスコピック静電駆動(NED:nanoscopic-electrostatic-drive)アクチュエータ、電磁アクチュエータ、または任意の他の適切なアクチュエータを含んでよいが、それらに限定されない。例えば、ある実施形態において、第1のアクチュエータ120は、圧電アクチュエータを含んでよく、圧電アクチュエータは、例えば、2つの電極と、電極間に配置された圧電材料層(例えば、ジルコン酸チタン酸鉛、PZT)とを含んでよく、圧電材料層は、電極によって受信される駆動信号(例えば、駆動電圧)に基づいて第1の膜110を作動させてよいが、これらに限定されない。例えば、別の実施形態において、第1のアクチュエータ120は、(平面コイルのような)電磁アクチュエータを含んでよく、電磁アクチュエータは、受信される駆動信号(例えば、駆動電流)および磁場に基づいて第1の膜110を作動させられてよい(すなわち、第1の膜110は電磁力によって作動されてよい)が、これらに限定されない。例えば、さらに別の実施形態において、第1のアクチュエータ120は、(導電板のような)静電アクチュエータまたはNEDアクチュエータを含んでよく、静電アクチュエータまたはNEDアクチュエータは、受信される駆動信号(例えば、駆動電圧)および静電界に基づいて第1の膜110を作動させてよい(すなわち、第1の膜110は静電力によって作動させられてよい)が、これらに限定されない。
【0051】
この実施形態において、第1の膜110および第1のアクチュエータ120は、音響変換を行うように構成されてよい。すなわち、音波は、第1のアクチュエータ120によって作動される第1の膜110の移動に起因して生成され、第1の膜110の移動は、音波の音圧レベル(SPL)に関連する。
【0052】
第1のアクチュエータ120は、第1の膜110を作動させて、受信した(複数の)駆動信号に基づいて音波を生成してよい。音波は、入力オーディオ信号に対応し、駆動信号は、入力オーディオ信号に対応する(関連する)。
【0053】
いくつかの実施形態において、音波、入力オーディオ信号および駆動信号は、同じ周波数を有するが、それに限定されない。すなわち、音響トランスデューサ100は、音の周波数で音を生成する(すなわち、音響トランスデューサ100は、古典的な音波の定理(acoustic wave theorems)のゼロ平均流の仮定(zero-mean-flow assumption)に従った音波を生成するが、それに限定されない)。
【0054】
図1~
図3に示すように、音響トランスデューサ100のフィルム構造FSは、少なくとも1つのスリット130を含み、スリット130は、第1の側壁S1と、第1の側壁S1に対向する第2の側壁S2とを有してよい。本発明では、スリット130のギャップ130Pが、方向Xおよび方向Yに平行な平面において第1の側壁S1と第2の側壁S2との間に存在し(すなわち、スリット130のギャップ130Pは、ベースBSの水平表面SHに平行であり)、スリット130のギャップ130Pの幅は、(複数の)要件に基づいて設計されてよい(例えば、幅は、約1μmであってよいが、それに限定されない)。本発明では、第1のアクチュエータ120によって受信される駆動信号に基づいて、スリット130は、第1の側壁S1と第2の側壁S2との間にベント130T(通気口)を一時的に生成してよく(すなわち、フィルム構造FSは、ベント130Tを一時的に形成するように作動されるように構成され)、ベント130Tの開口は、ベント130Tの開口が方向X及び方向Yに対して実質的に垂直な表面を形成するように、Z方向にある。本出願の明細書及び特許請求の範囲において、「ギャップ130P」は、方向X及び方向Yに平行な平面にあり、スリット130に沿う幅方向の空間(すなわち、方向X及び方向Yに平行な平面における第1の側壁S1と第2の側壁S2との間の空間)を指し、「ベント130T」は、方向X及び方向Yに対して垂直なZ方向(ベースBSの水平表面SHの法線方向)における第1の側壁S1と第2の側壁S2との間の空間を指す。
【0055】
スリット130は、第1のアクチュエータ120によって受信される駆動信号に基づいて第1の側壁S1と第2の側壁S2との間にベント130Tを生成することができる限り、任意の適切なタイプであってよい。
【0056】
スリット130は、任意の適切な位置に配置されてよい。この態様では、
図1に示すように、第1の膜110が、スリット130の第1の側壁S1および第2の側壁S2を含むことがあるように、第1の膜110は、スリット130を有してよい(すなわち、スリット130は、第1の膜110内に形成されるように、第1の膜110を通じる切れ目(cut)である)が、それらに限定されない。すなわち、この実施形態において、音響変換を行う第1の膜110は、ベント130Tを形成するように作動されるように構成されてよく、ベント130Tは、スリット130の故に形成される。
【0057】
別の実施形態(例えば、
図10)において、スリット130は、第1の膜110が、スリット130の第1の側壁S1を含み、スリット130の第2の側壁S2を含まないように、第1の膜110の境界であってよく、スリット130の第1の側壁S1は、第1の膜110の外縁110eのうちの1つであってよいが、それに限定されない。
【0058】
本発明において、音響トランスデューサ100に含まれるスリット130の数は、(複数の)要件に基づいて調整されてよい。例えば、
図1に示すように、第1の膜110が、スリット130a、130b、130cおよび130dによって分割された4つの膜部分112a、112b、112cおよび112dを含む(すなわち、各スリット130が、第1の膜110を2つの膜部分に分割する)ように、音響トランスデューサ100は、4つのスリット130a、130b、130cおよび130dを含んでよいが、それらに限定されない。
図1において、膜部分112aは、スリット130aと130dとの間にあり、膜部分112bは、スリット130aと130bとの間にあり、以下同様である。相応して、第1のアクチュエータ120は、膜部分112a、112b、112cおよび112d上にそれぞれ配置された4つの作動部分120a、120b、120cおよび120dを含む。
【0059】
従って、スリット130の第1の側壁S1および第2の側壁S2は、それぞれ、第1の膜110の異なる膜部分に属してよい。スリット130aを例にとると、スリット13aの第1の側壁S1及び第2の側壁S2が、それぞれ膜部分112a及び112bに属するように、スリット130aは、膜部分112a及び112bの間に形成される。換言すれば、膜部分112a及び作動部120aは、スリット130aの1つの側にあり、膜部分112b及び作動部120bは、スリット130aの別の側にある。例えば、点C及び点Dがそれぞれ膜部分112a及び112bに属し、スリット130aのギャップ130Pによって分離された一対の点を形成するように、点Cはスリット130aの第1の側壁S1上にあり、点Dはスリット130aの第2の側壁S2上にある。
【0060】
本発明において、スリット130の形状/パターンは限定されない。例えば、スリット130は、直線スリット、湾曲スリット、直線スリットの組み合わせ、湾曲スリットの組み合わせ、または(複数の)直線スリットと(複数の)湾曲スリットとの組み合わせであってよい。この実施形態では、
図1および
図2に示すように、スリット130は、湾曲スリットであってよいが、それに限定されない。この態様では、
図1および
図2に示すように、スリット130は、例えば、第1の膜110の隅110Rから、第1の膜110の中央部分に向かって延びてよい。この実施形態では、スリット130がフックパターンとして形成されることがあるように、スリット130の曲率は、スリット130が第1の膜110の隅110Rから第1の膜110の中央部分に向かって延びるに応じて増加してよいが、これに限定されない。具体的には、スリット130aを例にとると、スリット130a上の点Aにおける第1の曲率半径は、スリット130a上の点Bにおける第2の曲率半径よりも小さく、点Aは、点Bに比べて隅110Rから更に離れている(すなわち、点Aと隅110Rとの間のスリット130aに沿う第1の長さは、点Bと隅110Rとの間のスリット130aに沿う第2の長さよりも大きい)が、それに限定されない。その上、
図1に示すように、スリット130は、第1の膜110上で内向きに延び、渦パターンを形成してよいが、それに限定されない。
【0061】
別の態様では、
図3に示すように、スリット130は、第1の膜110(フィルム構造FS)を互いに対向する2つのフラップに分割してよい。すなわち、スリット130によって分割された第1の膜110の2つの膜部分は、第1の側壁S1が第1のフラップに属することがあり且つ第2の側壁S2が第2のフラップに属することがあるように、第1のフラップ及び第2のフラップであってよい。第1のフラップは、第1の端部と、(自由端とも呼ぶ)第2の端部とを含んでよく、第1の端は、1つのアンカ構造140によって固定されてよく、第2の端(すなわち、自由端)は、ベント130Tを形成するために第1の上下移動を行う(すなわち、第1のフラップの第2の部が上向きおよび下向きに移動することがある)ように構成されてよい。第2のフラップは、第1の端と、(自由端とも呼ぶ)第2の端とを含んでよく、第1の端は、1つのアンカ構造140によって固定されてよく、第2の端(すなわち、自由端)は、ベント130Tを形成するために第2の上下移動を行う(すなわち、第2のフラップの第2の端が上向きおよび下向きに移動することがある)ように構成されてよい。第2のフラップの自由端の動きは、(例えば、
図4の実施形態において)第1のフラップの自由端の動きと異なってよく、(例えば、
図8の実施形態において)第1のフラップの自由端の動きと反対であってよい。
【0062】
図1の膜部分112a及び112bの間に形成されたスリット130aを例に取ると、スリット130aの第1の側壁S1は、第1のフラップの自由端にあることがあり(すなわち、点Cは、第1のフラップの第2の端にあることがあり)、スリット130aの第2の側壁S2は、第2のフラップの自由端にあることがる(すなわち、点Dは、第2のフラップの第2の端にあることがあるが、それらに限定されない。
【0063】
その上、スリット130は、第1の膜110の残留応力を解放することがあり、残留応力は、第1の膜110の製造プロセス中に生成されるか、或いは第1の膜110内にもともと存在する。
【0064】
図1及び
図2に示すように、スリット130の配置の故に、第1の膜110は、任意的に、膜部分112a、112b、112c及び112dに接続された連結プレート114を含んでよい。この実施形態において、全ての膜部分112a、112b、112cおよび112dは、連結プレート114に接続され、連結プレート114は、膜部分112a、112b、112cおよび112d(すなわち、連結プレート114は、第1の膜110の中央部である)および/またはスリット130に囲まれているが、それに限定されない。例えば、連結プレート114は、膜部分112a、112b、112c及び112dにのみ接続されるが、それに限定されない。例えば、
図1において、第1のアクチュエータ120は、Z方向(ベースBSの水平表面SHの法線方向)において連結プレート114と重なり合わないが、それに限定されない。この実施形態では、連結プレート114が存在するため、第1の膜110の構造強度がスリット130の形成の故に弱められるとしても、第1の膜110の破壊の可能性は、低減されることがあり、且つ/或いは、第1の膜110の破壊は、製造中に防止されることがある。換言すれば、連結プレート114は、第1の膜110の構造強度を特定のレベルに維持することがある。
【0065】
(複数の)スリット130が存在するため、第1の膜110は、(複数の)スリット130の故に形成される複数のバネ構造を含むと考えられてよい。
図1および
図2において、バネ構造は、連結プレート114と第1のアクチュエータ120と重なり合う第1の膜110の部分との間に接続されると考えられる。バネ構造の存在のために、第1の膜110の変位は、増加されることがあり、且つ/或いは、第1の膜110は、音響トランスデューサ100の動作中に弾性的に変形することがある。
【0066】
この実施形態において、音響トランスデューサ100は、任意的に、ベースBSの水平表面SHに配置されるチップを含んでよく、チップは、少なくとも、(第1の膜110およびスリット130を含む)フィルム構造FSと、アンカ構造140と、第1のアクチュエータ120とを含んでもよい。チップの製造方法は、限定されない。例えば、この実施形態において、チップは、少なくとも1つの半導体プロセスによってMEMS(Micro Electro Mechanical System:微小電気機械システム)チップであるように形成されてよいが、それに限定されない。
【0067】
本発明の第1の膜110、スリット130、第1のアクチュエータ120、およびアンカ構造140は、第1のユニットU1とみなされてよいことに留意されたい。
【0068】
図3に示すように、音響トランスデューサ100は、ウェアラブルサウンドデバイスの内側にあるハウジング構造HSS内に配置される。
図3において、ハウジング構造HSSは、第1のハウジング開口HO1と、第2のハウジング開口HO2とを有してよく、第1のハウジング開口HO1は、ウェアラブルサウンドデバイスのユーザの外耳道に接続されてよく、第2のハウジング開口HO2は、ウェアラブルサウンドデバイスの周囲に接続されてよく、フィルム構造FSは、第1のハウジング開口HO1と第2のハウジング開口HO2との間にある。ウェアラブルサウンドデバイスの周囲は、外耳道の内側にない場合がある(例えば、ウェアラブルサウンドデバイスの周囲は、耳の外側の空間に直接的に接続される場合がある)ことに留意されたい。さらに、
図3では、第1のチャンバCB1は、ベースBSと第1の膜110(フィルム構造FS)との間に存在することがあるので、第1のチャンバCB1は、ベースBSのバックベントBVTおよびハウジング構造HSSの第2のハウジング開口HO2を通じてウェアラブルサウンドデバイスの周囲に接続されることがある。
【0069】
図3に示すように、第1の膜110(第1のフラップおよび第2のフラップを含むフィルム構造FS)は、ハウジング構造HSS内に形成された空間を、ウェアラブルサウンドデバイスのユーザの外耳道に接続されるべき第1の容積VL1およびウェアラブルサウンドデバイスの周囲に接続されるべき第2の容積VL2に分割することがある。よって、ベント130Tが、第1のアクチュエータ120の作動によって方向Z(ベースBSの水平表面SHの法線方向)においてスリット130の第1の側壁S1(すなわち、第1のフラップの自由端/第2の端)と第2の側壁S2(すなわち、第2のフラップの自由端/第2の端)との間に一時的に形成されるときに、第1の容積VL1は、ウェアラブルサウンドデバイスの周囲とウェアラブルサウンドデバイスのユーザの外耳道とが互いに接続されるように、ベント130Tを通じて第2の容積VL2に接続されるようになる。すなわち、ウェアラブルサウンドデバイスの周囲および外耳道は、第1の膜110が作動されるときに、一時的に開放されるベント130Tを介して接続されることになる。逆に、ベント130Tが、Z方向においてスリット130の第1の側壁S1(すなわち、第1のフラップの自由端/第2の端)と第2の側壁S2(すなわち、第2のフラップの自由端/第2の端)との間に形成されないときに、第1の容積VL1は、ウェアラブルサウンドデバイスの周囲とウェアラブルサウンドデバイスのユーザの外耳道とが互いに実質的に分離されるように、第2の容積VL2から実質的に切り離される。すなわち、ウェアラブルサウンドデバイスのユーザの周囲及びウェアラブルサウンドデバイスのユーザの外耳道は、ベント130Tが形成されないときに及び/又はベント130Tが閉じられるときに、互いから実質的に分離(隔離)される。
【0070】
「ベント130Tが閉じられる」という条件は、
図3のスリット130の第1の側壁S1(すなわち、第1のフラップの自由端/第2の端)が、水平方向において
図3のスリット130の第2の側壁S2(すなわち、第2のフラップの自由端/第2の端)と部分的にまたは完全に重なり合うことを意味し、「ベント130Tが開かれる」または同義の「ベント130Tが形成される」という条件は、
図3のスリット130の第1の側壁S1(すなわち、第1のフラップの自由端/第2の端)が、水平方向において
図3のスリット130の第2の側壁S2(すなわち、第2のフラップの自由端/第2の端)と重なり合わないことを意味する。第1の側壁S1および第2の側壁S2の高さは、第1の膜110の厚さによって画定されることに留意されたい。
【0071】
図3において、第1の容積VL1は、ハウジング構造HSSの第1のハウジング開口HO1に接続され、第2の容積VL2は、ハウジング構造HSSの第2のハウジング開口HO2に接続されている。よって、第1の容積VL1は、第1のハウジング開口HO1を通じてウェアラブルサウンドデバイスのユーザの外耳道に接続されることになり、第2の容積VL2は、第2のハウジング開口HO2を通じてウェアラブルサウンドデバイスの周囲に接続されることになる。第1のチャンバCB1は、第2の容積VL2の一部であることに留意されたい。
【0072】
さらに
図4を参照すると、
図4は、本発明の第1の実施形態に従った第1のモードにおける第1の膜を図示する概略図である。
図2および
図4に示すように、第1の膜110が作動されるとき、第1の膜110は、変形したタイプ110Dfに変形する。本発明では、音響トランスデューサ100が、第1のモードと、第2のモードとを含んでよく、第1のアクチュエータ120は、第1モードにおいて(複数の)第1の駆動信号を受信して、方向Z(ベースBSの水平表面SHの法線方向)においてスリット130の第1の側壁S1(すなわち、第1のフラップの自由端/第2の端)と第2の側壁S2(すなわち、第2のフラップの自由端/第2の端)との間に形成されるベント130Tを生成し、第1のアクチュエータ120は、第2モードにおいて(複数の)第2の駆動信号を受信して、方向Zにおいてスリット130の第1の側壁S1と第2の側壁S2との間にベント130Tを生成しない。
【0073】
図4に示すように、第1のモードにおいて、スリット130の第1の側壁S1および第2の側壁S2は、異なる変位を有してよく、それは第1の側壁S1と第2の側壁S2との間のスリット103のギャップ130Pに亘る重なり合い(オーバーラップ)を変化させる。方向Zにおけるこれらの変位の差が第1の膜110の厚さよりも大きいとき、第1の側壁S1は、もはや第2の側壁S2と重なり合わず、第1の側壁S1と第2の側壁S2との間の開口が形成され、ベント130Tは開かれると言われる。
図1のスリット130aの両側の点C及びDを例にとると、第1の膜110が第1のモードにおいて作動されると、膜部分112a上の第1の側壁S1の点Cが、Z方向に沿って第1の変位Uz_aを有するように第1の駆動信号(例えば、電圧)に従って作動され、膜部分112b上の第2の側壁S2上の点Dが、Z方向に沿って第2の変位Uz_bを有するように第1の駆動信号に従って作動され、点Cの第1の変位Uz_aは、点Cに近い第1の側壁S1のセグメント及び点Dに近い第2の側壁S2のセグメントが重なり合わないようになり且つベント130Tが形成される(又は「開かれる」)ように、点Dの第2の変位Uz_bよりも有意に大きい。ベント130Tの開口サイズUzoは、第1の変位Uz_aと第2の変位Uz-bとの間の膜変位差ΔUz及び第1の膜110の厚さによって決定される、すなわち、Uzo=ΔUz-T110であり、ここで、ΔUz=|Uz_a-Uz
_b|によって決定され、T110は、第1の膜110の厚さであり、T110は、実際には5~7μmであってよいが、それに限定されない。膜変位差ΔUzが、第1のモードにおいて第1の膜110(フィルム構造FS)の厚さT110より大きいとき、ベント130Tは、「一時的に開かれる」と言われる。ベント130Tの開口サイズUzoが大きければ大きいほど、ベント130Tはより広く開く。
【0074】
図4に図示するように、ベント130Tが一時的に開かれると、閉塞効果を抑制するために、閉塞効果によって引き起こされる圧力が解放されることがある(すなわち、外耳道とウェアラブルサウンドデバイスの周囲との間の圧力差がベント130Tを通じて流れる空気流を通じて解放されることがある)ように、空気は、第1の膜110の2つの側の間の圧力差の故に、容積(すなわち、第1の容積VL1及び第2の容積VL2)間を流れ始めることがある。
【0075】
ベント130Tを形成することの理論的根拠を以下に記載する。
図1に図示するスリット130aの点CおよびDを参照のこと。点Cは、膜部分112a上の第1の側壁S1上に位置し、点Dは、膜部分112b上の第2の側壁S2上に位置し、点Dは、スリット130のギャップ130Pを横切って点Cと反対である。点Cにおける膜部分112aの変位は、作動部分120aによって駆動され、点Dにおける膜部分112bの変位は、作動部分120bによって駆動される。点Cから膜部分112aのアンカ縁までの距離DCは、点Dから膜部分112bのアンカ縁までの距離DDよりも長い。より少ない距離はより高い剛性を示唆するので、点Dでの変形は、同じ駆動力を適用してさえも、点Cの変形よりも少ない。加えて、矢印DDは、作動部分の領域と重なり合う一方で、矢印DDは、作動部分の領域と重なり合わず、それは点Cで作動部分120aによって適用される駆動力は、点Dで作動部分120bによって適用される駆動力よりも強いことを示唆する。これらの要因を総合すると、駆動力の強度がより強い一方で剛性がより低い、点Cでの膜部分112aの変位は、点Dでの膜部分112bの変位よりも大きい。
【0076】
第2のモードにおいて、膜変位差は、第1の膜110の厚さよりも小さい、すなわち、ΔUz≦T110であり、換言すれば、第1の側壁S1の点Cにおける側壁と第2の側壁S2の点Dにおける側壁とは、水平方向において部分的にまたは完全に重なり合うことがある。例えば、第2のモードにおけるスリット130に関連する2つの膜部分(すなわち、第1のフラップおよび第2のフラップ)が
図3に示されており、これらの2つの膜部分(2つのフラップ)は、互いに実質的に平行であってよく、ベースBSの水平表面SHに実質的に平行であってよいが、それらに限定されない。別の例では、第2のモードにおけるスリット130に関連する2つの膜部分(例えば、第1のフラップおよび第2のフラップ)が
図5に図示されており、これらの2つの膜部分(2つのフラップ)は、ベースBSの水平表面SHに平行でなくてよく、第1のフラップの自由端/第2の端(第1の側壁S1)は、第1のフラップの固定された端/第1の端よりもベースBSに近くてよく、第2のフラップの自由/第2の端(第2の側壁S2)は、第2のフラップの固定された端/第1の端よりもベースBSに近くてよいが、それらに限定されず、ΔU
Z≦T110であってよい。よって、スリット130およびその関連する膜部分が第2のモードにある、すなわち、ΔUZ≦T110である、いずれの場合においても、ベント130Tは開かれず/生成されず、且つ/或いはベント130Tは閉じられる。
【0077】
スリット130のギャップ130Pの幅は、十分に小さくなければならない、例えば、実際には1μm~2μmでなければならない。狭いチャネルを通じる気流は、流体力学の分野内で境界層効果(boundary layer effect)として知られる気流経路の壁に沿う粘性力/抵抗の故に、高度に減衰させられることができる。よって、第2のモードにおけるスリット130のギャップ130Pを通じる空気流は、第1のモードにおけるスリット130のベント130Tを通じる空気流と比べて遙かに小さくてよい(例えば、第2のモードにおけるスリット130のギャップ130Pを通じる空気流は、第1のモードにおけるスリット130のベント130Tを通じする空気流よりも10分の1少なくてよい)。換言すれば、スリット130のギャップ130Pの幅は、第2のモードにおけるスリット130のギャップ130Pを通じる空気流/漏れが第1のモードにおけるベント130Tを通じる空気流(の、例えば、10%未満)と比べて無視できるように、十分に小さい。
【0078】
上記によれば、第1のモード及び第2のモードにおいて、第1のフラップの自由端/第2の端として機能する第1の側壁S1は、第1の上下移動を行うことがあり、第2のフラップの自由端/第2の端として機能する第2の側壁S2は、第2の上下移動を行うことがある。特に、
図3~
図5に示すように、第1の側壁S1(第1のフラップの自由端/第2の端)が第1の上下移動を行うとき、第1の側壁S1は、音響トランスデューサ100内の他のコンポーネントと物理的に接触せず、第2の側壁S2(第2のフラップの自由端/第2の端)が第2の上下移動を行うとき、第2の側壁S2は、音響トランスデューサ100内の他のコンポーネントと物理的に接触しない。
【0079】
図6および
図7を参照すると、
図6は、本発明の第1の実施形態に従ったスリットの異なる側面にある相対的位置ペアの複数の例を図示する概略図であり、
図7は、本発明の第1の実施形態に従った複数の例の周波数応答を図示する概略図である。
図6は、
図6の水平軸上に印すような6つの段階的により高いアクチュエータ駆動電圧V1~V6に対応する、膜部分112a(または第1のフラップ)上の点C(または自由端/第2の端)及び膜部分112b(または第2のフラップ)上の点D(または自由端/第2の端)の相対的位置ペアの6つの例Ex1~Ex6を図示している。
図6の垂直軸は、方向Zにおける点Cおよび点Dの変位(Uz)を表している。
図6に示す点Cおよび点Dを表すブロックの高さは、第1の膜110の厚さに対応することに留意されたい。
図7は、第1の膜110が
図6に示す駆動電圧V1~V6(例、Ex1~Ex6)によって作動されるときの音響トランスデューサ100の周波数応答を図示している。
図6及び
図7に示す数値は、例示的な目的のためにあり、実際に印加される電圧は、実際の状況に従って調整されることがある。
【0080】
図4及び
図6に示すように、この場合(第1の駆動方法)において、第1のアクチュエータ120に印加される電圧が増加し、電圧が電圧V5又はV6のような閾値電圧より上に上昇して、ベント130Tを生成する/開くと、スリット130の第1の側壁S1(すなわち、第1のフラップの第2の端)の点C及び第2の側壁S2(すなわち、第2のフラップの第2の端)の点Dは、同じ方向に移動し、すなわち、第1の側壁S1及び第2の側壁S2の両方は、正方向Zにおいて上向きに移動し、逆に、第1のアクチュエータ120に印加される電圧が減少し、電圧がV1~V3のような閾値電圧より下に低下して、ベント130Tを閉じると、第1の側壁S1及び第2の側壁S2の両方は、正方向Zにおいて下向きに移動する。
【0081】
図6に示すように、点Cは、電圧V1(例えば、1V)が第1のアクチュエータ120に印加されるときに、点Dよりも低く、点Cは、電圧V2(例えば、8V)が第1のアクチュエータ120に印加されるときに、点Dに実質的に整列させられ、点Cは、閾値電圧V4(例えば、22V)が第1のアクチュエータ120に印加されるときに、正に第1の膜の厚さだけ点Dよりも高く、点Cは、電圧V5~V6が第1のアクチュエータ120に印加されるときに、第1の膜110の厚さよりも多く点Dより高い。従って、
図6では、第1のアクチュエータ120が電圧V5~V6のような閾値電圧V4よりも高い電圧を受け取るときに、ベント130Tが生成され、その場合、ベント130Tが開かれ、逆に、第1のアクチュエータ120が電圧V1~V3のような閾値電圧V4よりも低い電圧を受け取るときに、ベント130Tは生成されず、ベント130Tは閉じられると言われる。
【0082】
換言すれば、電圧V1が第1のアクチュエータ120に印加されるときに、点Cにおける膜部分112aは、点Dにおける膜部分112bより部分的下にある。電圧V2が第1のアクチュエータ120に印加されるときに、点Cにおける膜部分112aは、水平方向において、点Dにおける膜部分112bに実質的に整列させられる。電圧V3が第1のアクチュエータ120に印加されるときに、点Cにおける膜部分112aは、点Dにおける膜部分112bよりも部分的に上にある。電圧V4が第1のアクチュエータ120に印加されるときに、点Cにおける膜部分112aの下方縁は、水平方向において、点Dにおける膜部分112bの上方縁に実質的に整列させられる。ベント130Tが生成され且つ開かれるように、電圧V5またはV6のような閾値電圧V4よりも大きい電圧が第1のアクチュエータ120に印加されるときに、点Cにおける膜部分112aは、水平方向Zにおいて、点Dにおける膜部分112bより完全に上にある。
【0083】
図6に示すように、この実施形態において、電圧V5またはV6は、第1のモードで第1のアクチュエータ120に印加され、電圧V1、V2またはV3は、第2のモードで第1のアクチュエータ120に印加される。換言すれば、第1のモードで第1のアクチュエータ120に印加される第1の駆動信号の絶対値は、閾値以上であってよく、第2のモードで第1のアクチュエータ120に印加される第2の駆動信号の絶対値は、閾値よりも小さくてよく、閾値は、
図6では電圧V4(22V)として図示されているが、これに限定されない。
【0084】
上記によれば、第2のモードにおいて、膜部分112aは、膜部分112bより部分的に下にあり、部分的に上にあり、或いは膜部分112bに実質的に整列させられてよい。すなわち、第1のアクチュエータ120は、第2のモード第2の駆動信号を受信して、第1の側壁S1がベースBSの水平表面SHに平行な水平方向において第2の側壁S2に対応する(或いは重なり合う)ようにする(すなわち、ベント130Tは閉じられ、且つ/或いは生成されない)。この実施形態において、第1の側壁S1全体は、第2のモードで水平方向において第2の側壁S2に対応する。
【0085】
他方、第1のモードでは、ベント130Tが、第1の側壁S1と第2の側壁S2との間の重なり合わない領域によって形成されるように、第1のアクチュエータ120は、第1の駆動信号を受信して、第1の側壁S1の少なくとも一部が水平方向において第2の側壁S2に対応しないか或いは重なり合わないようにする。
【0086】
図7に示すように、スリット130のギャップ130Pの幅は十分に小さくなければならないので、音響トランスデューサ100の周波数応答において、第2モードにおけるSPLの低周波数ロールオフ(LFRO)折点周波数(corner frequency)は低く、典型的には、35Hz以下である。逆に、ベント130Tが第1のモードで開いている/存在するとき、空気は、ベント130Tを通じて流れ、空気流インピーダンスは、ベント130Tの開口サイズに反比例し、従って、音響トランスデューサ100の周波数応答において、第1のモードにおけるLFROコーナー周波数は、第2のモードにおけるLFRO折点周波数よりも有意に高い。例えば、第1のモードにおけるLFRO折点周波数は、ベント130Tの開口サイズに依存して、80~400Hzの間にあってよいが、これらに限定されない。
【0087】
音響トランスデューサ100の第1の駆動方法では、閉塞効果を抑制するために、閉塞誘発圧力がベント130Tを通じる空気流によって解放されるよう、ベント130Tが生成される/開かれるように、閉塞効果が発生するときに、第1の駆動信号を第1のアクチュエータ120に印加して、音響トランスデューサ100を第1のモードにしてよい。例えば、この実施形態において、第1の駆動信号は、ベント生成信号(例えば、電圧V5またはV6)と、共通信号(例えば、共通信号にベント発生信号を加えたもの)とを含んでもよいが、それに限定されない。閉塞効果が生じないときには、ベント130Tが生成されないように、第2の駆動信号を第1のアクチュエータ120に印加して、音響トランスデューサ100を第2のモードにしてよい。例えば、この実施形態において、第2の駆動信号は、ベント拘束信号(例えば、電圧V1、V2またはV3)と、共通信号(例えば、共通信号にベント拘束信号を加えたもの)とを含んでよいが、これらに限定されない。
【0088】
共通信号は、(複数の)要件に基づいて設計されてよい。いくつかの実施形態において、共通信号は、定(DC)バイアス電圧、入力オーディオ(AC)信号、またはそれらの組み合わせを含んでよい。例えば、共通信号が入力オーディオ信号を含むとき、共通信号は、第1の膜110が第1のモードでベント130Tを形成する間に音波を生成することがあるように、或いは、代替的に、第1の膜110がベント130Tを抑制する(閉じる)間に音波を生成することがあるように、入力オーディオ信号の(複数の)値に対応する(関連する)信号を含む。ある実施形態において、共通信号は、第1の膜110を特定の位置に維持するように、定バイアス電圧を含んでよい。例えば、第1のアクチュエータ120に印加される定バイアス電圧は、第1の膜110(例えば、第1のフラップおよび第2のフラップ)をベースBSの水平表面SHに実質的に平行にさせることがある。
【0089】
図4~
図7に示す実施形態および例は、スリット130の第1の側壁S1および第2の側壁S2が、ベント130Tを生成/開閉するために同じ方向に移動する、第1の駆動方法に属することに留意されたい。ベント130Tを生成するための第2の駆動方法は、第1の側壁S1および第2の側壁S2を異なる方向に移動させることを含んでよく、ベント130Tを生成するための第3の駆動方法は、第1の側壁S1のような側壁の一方のみが移動する一方で、第2の側壁S2のような他方の側壁が静止していることを含む。
【0090】
図8を参照すると、
図8は、本発明の別の実施形態に従った第1のモードにある第1の膜を図示する概略的な断面図であり、
図8は、音響トランスデューサ100の第1の膜110が、第2の駆動方法に従って第1のモードで作動されることを示している。
図8に示すように、1つのスリット130に関して、第1のフラップ(スリット130の第1の側壁S1を含む1つの膜部分)は、第1の方向に向かって移動するように作動されてよく、第2のフラップ(スリット130の第2の側壁S2を含む1つの膜部分)は、ベント130Tが形成されるように、第1の方向と反対の第2の方向に向かって移動するように作動されてよい。すなわち、第1の側壁S1(第1のフラップの自由端/第2の端)の第1の上下移動は、第2の側壁S2(第2のフラップの自由端/第2の端)の第2の上下移動とは反対である。例えば、第1の方向および第2の方向は、方向Zに実質的に平行であってよく、
図3に図示するモードのような第2のモードから
図8に示すモードのような第1のモードへの移行において、第1のフラップの自由端/第2の端(第1の側壁S1)は、上向きに移動することがあるのに対し、第2のフラップの自由端/第2の端(第2の側壁S2)は、下向きに移動することがある。逆に、
図8に示すような第1のモードから
図3に示すような第2のモードに戻る移行において、第1のフラップの自由端/第2の端(第1の側壁S1)は、下向きに移動することがあり、第2のフラップの自由端/第2の端(第2の側壁S2)は、上向きに移動することがある。上記で議論したいずれの移行においても、第1のフラップの第1の側壁S1および第2のフラップの第2の側壁S2は、反対方向に移動する。
【0091】
加えて、第1のフラップの自由端/第2の端(第1の側壁S1)は、第1の方向に向かう第1の変位Uz_aを有するように作動されてよく、第2のフラップの自由端/第2の端(第2の側壁S2)は、第2の方向に向かう第2の変位Uz_bを有するように作動されてよい。ある実施形態において、第1の側壁S1の第1の変位および第2の側壁S2の第2の変位は、実質的に等距離であってよいが、反対方向であってよい。
【0092】
さらに、第1の側壁S1の第1の変位および第2の側壁S2の第2の変位は、一時的に対称であってよい、すなわち、第1の側壁S1および第2の側壁S2の動きは、実質的に長さ方向が等しいが、任意の時間期間に亘って反対方向であってよい。
図8の第1の側壁S1及び第2の側壁S2の動きが一時的に対称であるとき、1つのスリット130に関して、第1のフラップ(スリット130の第1の側壁S1を含む1つの膜部分)が第1の方向に向かって移動するように作動されるので、第1の空気移動が生成され、第1の空気移動の方向は、第1の方向に関連し、第2のフラップ(スリット130の第2の側壁S2を含む1つの膜部分)が第1の方向とは反対の第2の方向に向かって移動するように作動されるので、第2の空気移動が生成され、第2の空気移動の方向は、第2の方向に関連する。第1の空気移動及び第2の空気移動は、それぞれ、反対方向に関連することがあるので、第1のフラップ(スリット130の第1の側壁S1を含む1つの膜部分)と第2のフラップ(スリット130の第2の側壁S2を含む1つの膜部分)が同時に作動してベント130Tを開閉するときに、第1の空気移動の少なくとも一部及び第2の空気移動の少なくとも一部は、互いに相殺し合うことがある。
【0093】
いくつかの実施形態において、第1の空気移動及び第2の空気移動は、第1のフラップ及び第2のフラップが同時に作動してベント130Tを開閉するときに、実質的に互いに相殺し合うことがある(例えば、第1の方向に向かう第1の変位及び第2の方向に向かう第2の変位は、等距離であってよいが、方向は反対であってよい)。すなわち、第1の空気移動および第2の空気移動を含むベント130Tの開閉に起因して生成される正味の空気移動は、実質的にゼロである。その結果、正味の空気移動は、ベント130Tの開閉動作の間に実質的にゼロであるので、ベント130Tの動作は、音響トランスデューサ100のユーザに知覚可能な音響外乱を生成せず、ベント130Tの開閉動作は、「隠されている(concealed)」と言われる。
【0094】
図1、
図2、
図4、
図6及び
図7に関連する実施形態では、本明細書では第1の駆動方法と呼ばれる1つの駆動信号が、第1のアクチュエータ120に適用される。
図8の実施形態のための駆動信号のような第2の駆動方法において、第1のフラップ(第1の側壁S1を含む部分)上の第1のアクチュエータ120の作動部分に適用される駆動信号は、第2のフラップ(第2の側壁S2を含む部分)上の第1のアクチュエータ120の作動部分に適用される駆動信号とは異なることがある。詳細には、第1のフラップ(第1の側壁S1を含む膜部分)上に配置される第1のアクチュエータ120は、第1の信号を受信し、第2のフラップ(第2の側壁S2を含む膜部分)上に配置される第1のアクチュエータ120は、第2の信号を受信する。よって、第1のフラップは、第1の信号に従って移動し、第2のフラップは、第2の信号に従って移動する。
【0095】
第1の信号および第2の信号は、第1のフラップ(第1の側壁S1を含む膜部分)および第2のフラップ(第2の側壁S2を含む膜部分)をそれぞれ反対方向に移動させるように設計された成分信号を含んでよい。例えば、第1の信号は、共通信号に加えて増分電圧を含んでよく、第2の信号は、同じ共通信号に加えて減分電圧を含んでよく、増分電圧は、0V⇔10Vのように、0V~正電圧の間でトグルしてよく、減分電圧は、0V⇔-10Vのように、0V~負電圧の間で変化してよいが、これに限定されない。共通信号は、定バイアス電圧、入力オーディオ信号、またはそれらの組み合わせを含んでよいが、それらに限定されないことに留意されたい。
【0096】
例えば、
図8の音響トランスデューサ100の第1のモードにおいて、増分電圧は、正電圧、例えば、10Vを有して、第1の信号10Vを共通信号より高くしてよく、減分電圧は、負電圧、例えば、-10Vを有して、第2の信号10Vを共通信号より低くしてよく、ベント130Tは、(第1の側壁S1を含む)第1の膜部分および(第2の側壁S2を含む)第2の膜部分のデルタ変位が第1の膜110の厚さより大きいときに開かれる/形成される。逆に、音響トランスデューサ100の第2のモードにおいて、第1の信号の増分電圧および第2の信号の減分電圧の両方は、約0Vであり、第1の膜110の両方の部分でアクチュエータに印加される実質的に同じ駆動信号をもたらし、ほぼ同じ変位を生む両方の膜部分(1つの膜部分は第1の側壁S1を含み、他の膜部分は第2の側壁S2を含む)をもたらし、その結果、ベント130Tは形成されない/開かれないか、或いは閉じられる。
【0097】
従って、特定の状況の下で、増分電圧および減分電圧は、実質的に同じ大きさであってよいが、これに限定されない。ベント130Tが開かれる第1のモードのような特定の状況の下で、第1の信号は、デルタ変位を膜の厚さより大きくするのに十分な電圧レベルだけ第2の信号よりも高くてもよいが、それに限定されない。ベント130Tが閉じられる第2のモードのような特定の状況の下で、増分電圧および減分電圧は、両方とも、0Vであるか或いは0Vに近くてよいが、これに限定されない。
【0098】
上記によれば、本発明のスリット130は、音響トランスデューサ100のダイナミックフロントベントとして機能するよう、第1の駆動方法または第2の駆動方法によって駆動されてよく、ハウジング構造HSS内の第1の容積VL1および第2の容積VL2は、ダイナミック(動的)フロントベントが開けられる(すなわち、スリット130のベント130Tが開けられる及び/又は形成される)ときに接続され、ハウジング構造HSS内の第1の容積VL1および第2の容積VL2は、ダイナミックフロントベントが閉じられる(すなわち、スリット130のベント130Tが閉じられるおよび/または形成されない)ときに互いから分離される。ベント130Tが広ければ広いほど、ダイナミックフロントベントはより大きい。よって、フロントベントのサイズは、(複数の)要件に基づいて(複数の)駆動信号によって変更されることができる。
【0099】
その上、本発明の音響トランスデューサ100は、ダイナミックフロントベントによる良好な水保護および良好なダスト保護を有することができる。
【0100】
本発明において、音響トランスデューサ100は、任意の適切なドライバを使用してよい。例えば、音響トランスデューサ100は、本発明の音響トランスデューサ100が小型デバイスに適することがあるように、小型ドライバ(例えば、典型的な115dBドライバ)を使用してよい。
【0101】
図9を参照すると、
図9は、本発明のある実施形態に従った音響トランスデューサを備えるウェアラブルサウンドデバイスを図示する概略図である。
図9に示すように、ウェアラブルサウンドデバイスは、感知デバイス150と、感知デバイス150と音響トランスデューサ100のアクチュエータ(例えば、第1のアクチュエータ120)とに電気的に接続された駆動回路160とをさらに含んでよい。
【0102】
感知デバイス150は、ウェアラブルサウンドデバイスの外側で任意の所要の要因を感知し、相応して感知結果を生成するように構成されてよい。例えば、感知デバイス150は、赤外(IR)感知方法、光感知方法、超音波感知方法、容量感知方法、または他の適切な感知方法を使用して、任意の所要の要因を感知してよいが、これらに限定されない。
【0103】
いくつかの実施形態では、ベント130Tが形成されるかどうかは、感知結果に基づいて決定される。ベント130Tは、感知結果によって示される感知された量が第1の極性を有する特定の閾値を越えるときに開かれ(或いは形成され)、ベント130Tは、感知された量が第1の極性とは反対の第2の極性を有する特定の閾値を越えるときに閉じられる(或いは形成されない)。例えば、感知された量が特定の閾値よりも低いものから特定の閾値よりも高いものに変えられるときに、ベント130Tが開き、感知された量が特定の閾値よりも高いものから特定の閾値よりも低いものに変えられるときに、ベント130Tが閉じられるように、第1の極性は、低から高であってよく、第2の極性は、高から低であってよいが、それに限定されない。
【0104】
その上、いくつかの実施形態では、ベント130Tの開放の程度は、感知結果によって示される感知量に単調に関連することがある。すなわち、ベント130Tの開放の程度は、感知された量が増大又は減少するに応じて増大又は減少する。
【0105】
いくつかの実施形態において、感知デバイス150は、任意的に、ユーザの身体の動きおよび/またはウェアラブルサウンドデバイスの動きを検出するように構成された運動センサを含んでよい。例えば、感知デバイス150は、歩行、ジョギング、会話、摂食等のような、閉塞効果を引き起こす身体の動きを検出してよい。いくつかの実施形態において、感知結果によって示される感知された量は、ユーザの身体の動きおよび/またはウェアラブルサウンドデバイスの動きを表し、ベント130Tの開放の程度は、感知される距離と相関する。例えば、ベント130Tの開放の程度は、動きが増加するに応じて増加する。
【0106】
いくつかの実施形態において、感知デバイス150は、任意的に、物体と近接センサとの間の距離を感知するように構成された近接センサを含んでよい。いくつかの実施形態において、感知結果によって示される感知される量は、物体と近接センサとの間の距離を表し、ベント130Tの開放の程度は、感知される動きと相関する。例えば、ベント130Tは、この距離が所定の距離よりも小さいときに開かれ(或いは形成され)、ベント130Tの開放の程度は、この距離が減少するに応じて増加する。例えば、ユーザがベント130Tを開く(或いは形成する)ことを望むならば、ユーザは、近接センサにこの物体を感知させ、相応して、感知結果を生成し、それによって、ベント130Tを開く/形成するために、任意の適切な物体(例えば、手)を使用して、ウェアラブルサウンドデバイスに近づくことができる。
【0107】
加えて、近接センサは、ユーザが音響トランスデューサ100を有するウェアラブルサウンドデバイスを(予想通りに)タップする或いは触れることを検出する機能をさらに有してよい。何故ならば、これらの動きも閉塞効果を引き起こすことがあるからである。
【0108】
いくつかの実施形態において、感知デバイス150は、任意的に、ウェアラブルサウンドデバイスの力センサに加えられる力を感知するように構成された力センサを含んでよく、感知結果によって示される感知された量は、ウェアラブルサウンドデバイスを圧迫する力を表し、ベント130Tの開放の程度は、感知される力と相関する。
【0109】
いくつかの実施形態において、感知デバイス150は、任意的に、ウェアラブルサウンドデバイスの周囲光を感知するように構成された光センサを含んでよく、感知結果によって示される感知された量は、光センサによって感知された周囲光の輝度を表し、ベント130Tの開放の程度は、感知された周囲光の輝度と相関する。
【0110】
駆動回路160は、第1の膜110を作動させるために、アクチュエータ(例えば、第1のアクチュエータ120)に加えられる(複数の)駆動信号を生成するように構成され、(複数の)駆動信号は、感知デバイス150の感知結果および入力オーディオ信号の値に基づいてよい。
図9において、駆動回路160は、集積回路であってよいが、これに限定されない。
【0111】
例えば、第1の駆動方法において、第1の駆動信号及び第2の駆動信号は、駆動回路160によって生成されてよく、第1の駆動信号のベント生成信号及び第2の駆動信号のベント抑制信号は、感知結果に従って生成されてよいが、これに限定されない。
【0112】
例えば、第2の駆動方法において、第1の信号及び第2の信号は、駆動回路160によって生成されてよく、第1の信号の増分電圧及び第2の信号の減分電圧は、感知結果に従って生成されてよいが、これに限定されない。
【0113】
同様に、ベント130Tの開放の程度は、感知結果によって示される感知される量に単調に関連することがあるので、第2の駆動方法における増分電圧および/または減分電圧(または第1の駆動方法におけるベント生成信号)は、感知結果によって示される感知量との単調な関連を有することがある。
【0114】
同様に、感知デバイス150が運動センサを含むとき、第2の駆動方法における増分電圧の大きさ及び/又は減分電圧の大きさ(又は第1の駆動方法におけるベント発生信号)は、運動が増加するに応じて増加(又は減少)することがあるが、これに限定されない。同様に、感知デバイス150が近接センサを含むとき、第2の駆動方法における増分電圧の大きさ及び/又は減分電圧の大きさ(又は第1の駆動方法におけるベント発生信号)は、距離が減少するか或いは閾値より下に減少するに応じて増加(又は減少)することがあるが、これに限定されない。同様に、感知デバイス150が力センサを含むとき、第2の駆動方法における増分電圧の大きさおよび/または減分電圧の大きさ(または第1の駆動方法におけるベント生成信号)は、力が増加するに応じて増加(または減少)することがあるが、これに限定されない。同様に、感知デバイス150が光センサを含むとき、第2の駆動方法における増分電圧の大きさおよび/または減分電圧の大きさ(または第1の駆動方法におけるベント生成信号)は、周囲光の輝度が減少するに応じて増加(または減少)することがあるが、これに限定されない。
【0115】
加えて、駆動回路160は、任意の適切なコンポーネントを含んでよい。例えば、駆動回路160は、アナログデジタル変換器(ADC)162、デジタル信号処理(DSP)ユニット164、デジタルアナログ変換器(DAC)166、任意の他の適切なコンポーネント(例えば、環境音のSPLまたは閉塞雑音のSPLを検出するマイクロホン)、またはそれらの組み合わせを含んでよい。
【0116】
この実施形態では、感知デバイスによって生成される感知結果に基づいて、駆動回路160は、音響トランスデューサ100を第1のモードまたは第2のモードにするために、駆動信号を第1のアクチュエータ120に相応して加えてよい。第1のモードにおいて、音響トランスデューサ100は、閉塞効果を抑制するために、ベント130Tを形成する。また、第1のモードにある音響トランスデューサ100は、任意的に、音波を生成してよい。第2のモードにおいて、音響トランスデューサ100は、音波を生成する。
【0117】
任意的に、駆動回路160は、特定の周波数範囲において音響トランスデューサ100の駆動信号を調整するように構成された周波数応答等化器をさらに含んでよい。
図7に示すように、4つの異なるベント130T条件に対応する音響トランスデューサ100の周波数応答における4つの異なるLFRO折点周波数が示されている。ある実施形態では、周波数応答等化器を含む信号処理ユニットが、ベント130Tの異なる開放の程度の故に音響トランスデューサ100の周波数応答の異なるLFRO折点周波数を補償するように構成されてよい。例えば、周波数応答等化器は、駆動電圧V5(又はV6)が第1のアクチュエータ120に印加され、ベント130Tが
図6に示すように開かれるときに、例Ex5(又はEx6)のLFRO周波数応答曲線を補償するように有効にされてよい。換言すれば、周波数応答等化器は、第1のモードにおいて有効にされてよく(周波数応答等化器は、ベント130Tが開いているときに有効にされてよく)、周波数応答等化器は、第2のモードにおいて無効にされてよい(周波数応答等化器は、ベント130Tが閉じているときに無効にされてよい)。さらに、周波数応答等化器によって生成される等化の量は、適応的であってよく、ベント130Tの開口サイズに従って動的に変化してよい。その結果、周波数応答等化器は、音響トランスデューサ100の周波数応答の変化が等化され、トランスデューサ100のサウンド生成特性の破壊が最小限に抑えられ、聴取者のオーディオリスニング経験が最適化されることがあるように、ベント130Tが開いていることに起因する音響トランスデューサ100の低周波数応答の変化するLFROを補償してよい(すなわち、周波数応答等化器は、第1のモードにおける音響トランスデューサ100の低周波数応答の劣化を補償してよい)。
【0118】
本発明の音響トランスデューサは、上記の(複数の)実施形態によって制限されない。本発明の他の実施形態を以下に記載する。比較を容易にするために、以下において、同じコンポーネントは、同じ記号で印される。以下の記述は、実施形態の各々の相違に関し、繰り返し部分を重複して記載されない。
【0119】
図10~
図12を参照すると、
図10~
図12は、本発明のある実施形態に従って別のタイプの音響トランスデューサを図示する断面図であり、
図10は、音響トランスデューサ100’の第2のモードを示しており、
図11および
図12は、音響トランスデューサ100’の第1のモードを示している。
図10~
図12に示すように、この音響トランスデューサ100’と音響トランスデューサ100との相違は、この実施形態の音響トランスデューサ10’0の第1の膜110が、スリット130の第1の側壁S1を含むが、第1の膜110は、スリット130の第2の側壁S2を含まないことである。すなわち、スリット130は、第1の膜110の境界の一部である(すなわち、スリット130の第1の側壁S1は、第1の膜110の外縁110eの1つであってよい)。
図10~
図12において、スリット130の第2の側壁S2は、音響トランスデューサ100’の動作中に静止的/不動であってよい。例えば、スリット130の第2の側壁S2は、アンカ構造140に属してよいが、それに限定されない。
図10~
図12に示すスリット130の設計のために、アンカ構造140は、第1の膜110の外縁110eの一部に接続されなくてよいが、それに限定されない。
【0120】
別の態様では、
図10~
図12に示すように、第1の膜110は、第1のフラップのみを含み、第2のフラップを含まず、第1のフラップの第1の端は、1つのアンカ構造140によって固定され、第1のフラップの第2の端/自由端は、ベント130Tを形成するために(ベント130Tは、
図11および
図12に示されている)、第1の上下移動を行う(すなわち、第1のフラップの第2の端は、上向き及び下向きに移動してよい)ように構成され、スリット130の第1の側壁S1は、第1のフラップの第2の端/自由端に属する。
【0121】
この設計では、第2の側壁S2は、音響トランスデューサ100’の動作中に静止的/不動であるため、ベント130Tは、
図11の場合のように、第1のアクチュエータ120に加えられる駆動信号を増加させて、第1の側壁S1をZ方向において上向きに移動させることによって、形成されてよい。例えば、第1のアクチュエータ120の電極に亘る電圧は、第1の側壁S1を方向Zにおいて上向きに移動させるために、30Vであるが、それに限定されない。代替的に、
図12の場合、第1の膜110は、負の初期変位を有することがある、すなわち、一例として、第1のアクチュエータ120の電極に亘る電圧が0Vであるとき、方向Zにおける第1の側壁S1の変位は、-18μmであることがある。一例として、膜厚が5μmであると仮定すると、第1の側壁S1の高さは、5μmであることを意味し、0Vが第1のアクチュエータ120に印加されるときのベント130Tの状態は「開」であり、ベント130Tの開口サイズは、18-5=13μmに等しい。よって、この実施形態において、ベント130Tは、正の駆動信号(例えば、16V)を第1のアクチュエータ120に加えて、
図10に示すように、第1の膜110の表面を水平表面SHに対して実質的に平行にならせることによって、第2のモードに入れられることがあり、ベント130Tは、第1のアクチュエータ120に0Vを印加することによって第1のモードに入れられてよい。
【0122】
図13を参照すると、
図13は、本発明の第2の実施形態に従った音響トランスデューサを図示する概略的な断面図である。
図13に示すように、この実施形態と第1の実施形態との間の相違は、この実施形態の音響トランスデューサ200が、さらに、第2の膜210と、第2のアクチュエータ220と、ベースBSの水平表面SHに配置されたアンカ構造240とを含み、第2の膜210は、アンカ構造240によって固定され、第2のアクチュエータ220は、第2の膜210を作動させるように構成され、第2のチャンバCB2が、ベースBSと第2の膜210との間に存在することである。この実施形態において、フィルム構造FSは、第1の膜110と、第2の膜210とを含んでよいが、それに限定されない。この実施形態において、音響トランスデューサ200は、任意的に、ベースBSの水平表面SHに配置されたチップを含んでよく、チップは、少なくとも、(第1の膜110と第2の膜210とを含む)フィルム構造FSと、第1のアクチュエータ120と、第2のアクチュエータ220と、アンカ構造140および240とを含んでよい(すなわち、これらの構造は、1つのチップに集積される)が、それに限定されない。
【0123】
第1の膜110および第1のアクチュエータ120から提供される機能は、第2の膜210および第2のアクチュエータ220から提供される機能と異なる。この実施形態において、第1の膜110および第1のアクチュエータ120は、閉塞効果を抑制するように構成されてよく、第2の膜210および第2のアクチュエータ220は、音響変換を行うように構成されてよい。すなわち、第1の膜110および第1のアクチュエータ120は、音響変換を行わない。
【0124】
詳細には、第1のモードにおいて、第1のアクチュエータ120は、Z方向(ベースBSの水平表面SHの法線方向)においてスリット130の第1の側壁S1と第2の側壁S2との間に形成されるベント130Tを生成することがある。第2のモードにおいて、第1のアクチュエータ120は、Z方向においてスリット130の第1の側壁S1と第2の側壁S2との間のベント130Tを生成しないことがある。音響トランスデューサ200が第1のモードであろうと第2のモードであろうと、第2のアクチュエータ220は、音波を生成するために、入力オーディオ信号の(複数の)値に対応する(関連する)音響駆動信号を受信してよい。すなわち、第1のアクチュエータ120に加えられる(複数の)駆動信号は、入力オーディオ信号の(複数の)値に対応しない(関連しない)ことがある。例えば、第1の駆動方法において、第1の駆動信号は、ベント生成信号(例えば、
図11に関連する議論における30V、又は
図12に関連する議論における0V)を含んでよく、第2の駆動信号は、ベント抑制信号(例えば、
図10に関連する議論における16V)を含んでよいが、これらに限定されない。
【0125】
第2の膜210、第2のアクチュエータ220、およびアンカ構造240は、(複数の)要件に基づいて設計されてよく、第2の膜210、第2のアクチュエータ220、およびアンカ構造240の設計は、音波の生成に適している必要がある。例えば、この実施形態において、第2の膜210、第2のアクチュエータ220、およびアンカ構造240の頂面図は、
図1に示す第1の実施形態の第1の膜110、第1のアクチュエータ120、およびアンカ構造140に類似してよいが、それらに限定されない。第2の膜210は、第2の膜210の変位が増加されてよく、且つ/或いは第2の膜210が音響トランスデューサ200の動作中に弾性的に変形してよいように、少なくとも1つのスリット230を有してよいが、これらに限定されないことに留意されたい。
【0126】
第2の膜210の材料およびタイプは、第1の実施形態において記載した第1の膜110が参照されてよく、従って、これらは冗長に記載されない。第2のアクチュエータ220の材料およびタイプは、第1の実施形態において記載した第1のアクチュエータ120が参照されてよく、よって、これらは冗長に記載されない。アンカ構造240の材料は、第1の実施形態において記載したアンカ構造140が参照されてよく、よって、これは冗長に記載されない。
【0127】
第2の膜210、(複数の)スリット230、第2のアクチュエータ220、およびアンカ構造240は、第2のユニットU2と考えられてよい。
【0128】
第1のユニットU1は、(複数の)要件に基づいて設計されてよく、第1の膜110、第1のアクチュエータ120、および(複数の)スリット130の設計は、閉塞効果を抑制するのに適する必要がある。この実施形態において、この実施形態の第1のユニットU1の第1の膜110は、スリット130の第1の側壁S1を含むが、スリット130の第2の側壁S2を含まない(すなわち、第1の膜110は、第1のフラップのみを含み、第2のフラップを含まない)。例えば、
図13に示すように、第1のユニットU1は、
図10に示す音響トランスデューサ100’に類似してよいが、それに限定されない。
【0129】
その上、第1のチャンバCB1は、第2のチャンバCB2に接続されてよい。この実施形態において、ベースBSは、複数のバックベントBVT1およびBVT2を含んでよく、第1チャンバCB1は、バックベントBVT1を通じて音響トランスデューサ200の後部外側(すなわち、ベースBSの背後にある空間)に接続されてよく、第2チャンバCB2は、バックベントBVT2を通じて音響トランスデューサ200の後部外側(すなわち、ベースBSの背後にある空間)に接続されてよく、第1チャンバCB1は、バックベントBVT1、音響トランスデューサ200の後部外側(すなわち、第2容積VL2の一部)及びバックベントBVT2を通じて、第2チャンバCB2に接続されてよいが、それに限定されない。
【0130】
別の実施形態では、第1のチャンバCB1が空気チャネルを通じて第2のチャンバCB2に接続されることがあるように、空気チャンバが第1の膜110とベースBSとの間に存在してよい。例えば、第1のチャンバCB1が、穴HLを通じて第2のチャンバCB2に接続されることがあるように、空気チャネルは、アンカ構造140/240の2つの対向する横方向側面を通過する穴HLであってよいが、これに限定されない。
【0131】
製造の間に、本開示において後に詳述するように、第1の膜110および第2の膜210は、全て、1つの単一の平面的な薄膜製造シーケンスの間に製造されてもよく、第1のアクチュエータ120および第2のアクチュエータ220は、全て、別の単一の平面的な薄膜製造シーケンスの間に製造されてよく、第1のチャンバCB1、第2のチャンバCB2およびアンカ構造140、240、140/240は、1つの単一のバルクシリコンエッチングシーケンスの間に形成されてよい。
【0132】
図14を参照すると、
図14は、本発明の別の第2の実施形態に従った音響トランスデューサを図示する概略的な断面図である。
図14に示すように、
図13の音響トランスデューサ200と比べて、音響トランスデューサ200’の第1のユニットU1の第1の膜110は、スリット130の第1の側壁S1および第2の側壁S2を含む(すなわち、第1の膜110は、第1のフラップおよび第2のフラップを含む)。例えば、
図14に示すように、第1のユニットU1は、
図1に示す音響トランスデューサ100に類似してよいが、それに限定されない。
【0133】
図14に図示するようないくつかの実施形態において、第1のユニットU1(第1の膜110、第1のアクチュエータ120およびスリット130)の設計は、特定の視野から、第2のユニットU2(第2の膜210、第2のアクチュエータ220およびスリット230)の設計と同じ断面を有してよい。
【0134】
図15を参照すると、
図15は、本発明の第3の実施形態に従った音響トランスデューサを図示する概略的な頂面図である。第3の実施形態の音響トランスデューサ300の膜、アクチュエータ、(複数の)スリットおよびアンカ構造の設計は、第1のユニットU1および/または第2のユニットU2に適用されてよいことに留意されたい。
【0135】
図15に示すように、第1の実施形態とこの実施形態の相違は、スリット130及び第1のアクチュエータ120の構成である。この実施形態において、スリット130は、直線スリットと湾曲スリットとの組み合わせであってよい。
図15において、この実施形態のスリット130は、第1の部分e1と、第1の部分e1に接続された第2の部分e2と、第2の部分e2に接続された第3の部分e3とを含み、第1の部分e1、第2の部分e2及び第3の部分e3は、第1の膜110の外縁110eから内側に順に配列されている。スリット130において、第1の部分e1及び第2の部分e2は、異なる方向に延びる直線状のスリットであってよく、第3の部分e3は、曲線スリットであってよいが、それらに限定されない。第3の部分e3は、スリット130のフック形状の湾曲した端を有してよく、フック形状の湾曲した端は、第1の膜110の連結プレート114を取り囲む。フック形状の湾曲した端は、頂面図の視野から、湾曲した端または第3の部分e3における曲率が、第1の部分e1または第2の部分e2における(複数の)曲率よりも大きいことを示唆する。加えて、フック形状を有するスリット130は、第1の膜110の中心に向かって或いは第1の膜110内の連結プレート114に向かって延びる。スリット130は、第1の膜110内の隅肉(fillet)を切り出している(carving out)ことがある。
【0136】
第3の部分e3の湾曲した端は、スリット130の端付近の応力集中を最小限に抑えるように構成されてよい。
【0137】
図16を参照すると、
図16は、本発明の第4の実施形態に従った音響トランスデューサを図示する概略的な頂面図である。なお、第4実施形態の音響トランスデューサ400の膜、アクチュエータ、(複数の)スリットおよびアンカ構造の設計は、第1のユニットU1および/または第2のユニットU2に適用されてよいことに留意されたい。
【0138】
図16に示すように、第3の実施形態とこの実施形態との間の相違は、スリット130の構成である。この実施形態において、いくつかのスリット130は、より短くてよく、各々のより短いスリット130_Sは、2つのより長いスリット130_Lの間にあるが、それに限定されない。
図16において、より短いスリット130_Sは、第1の膜110の外縁110eに接続されなくてよいが、それに限定されない。
【0139】
より短いスリット130_Sは、直線スリットと湾曲スリットとの組み合わせであってよく、より短いスリット130_Sのパターンは、より長いスリット130_Lのパターンと類似してよい。その上、
図16において、より短いスリット130_Sは、第1のアクチュエータ120が配置される領域内に位置しなくてよいが、それに限定されない。
【0140】
図17を参照すると、
図17は、本発明の第5の実施形態に従った音響トランスデューサを図示する概略的な頂面図である。第5実施形態の音響トランスデューサ500の膜、アクチュエータ、(複数の)スリット及びアンカ構造の設計は、第1のユニットU1および/または第2のユニットU2に適用されてよいことに留意されたい。
【0141】
図17に示すように、第1の実施形態とこの実施形態との間の相違は、スリット130及び第1のアクチュエータ120の構成である。この実施形態において、より長いスリット130_Lは、直線スリット(例えば、Y字形を形成する3つの直線スリット)の組み合わせであってよいが、それに限定されない。この実施形態において、より短い方のスリット130_Sは、2つのより長いスリット130_Lの間にあってよく、より短いスリット130_Sは、第1の膜110の外縁110eに接続されなくてよいが、それに限定されない。
図17において、より短いスリット130_Sは、直線スリットであってよく、より短いスリット130_Sは、より長いスリット130_Lの一部に平行であってよいが、それに限定されない。
【0142】
図18を参照すると、
図18は、本発明の第6の実施形態に従った音響トランスデューサを図示する概略的な頂面図である。第6の実施形態の音響トランスデューサ600の膜、アクチュエータ、(複数の)スリットおよびアンカ構造の設計は、第1のユニットU1および/または第2のユニットU2に適用されてよいことに留意されたい。
【0143】
図18に示すように、第1の実施形態とこの実施形態との間の相違は、スリット130及び第1のアクチュエータ120の構成である。この実施形態において、スリット130は、直線スリットと曲線スリットとの組み合わせ(例えば、2つの直線スリット及び1つの曲線スリットと1つの直線スリットとで形成された組み合わせスリット、及びY形状を形成するこれらのスリット)であってよいが、それらに限定されない。
【0144】
第1の膜110の4分の1を実質的に示す
図18の上方部分を参照すると、1つのスリット130の直線スリットと、別のスリット130の組み合わせスリットの直線スリットとは、互いに平行であり、方向Yに沿って重なり合うが、それに限定されない。
【0145】
図19および
図20を参照すると、
図19は、本発明の第7の実施形態に従った音響トランスデューサを図示する概略的な頂面図であり、
図20は、
図19の中心部を図示する拡大図である。第7実施形態の音響トランスデューサ700の膜、アクチュエータ、(複数の)スリットおよびアンカ構造の設計は、第1のユニットU1および/または第2のユニットU2に適用されてよいことに留意されたい。
【0146】
図19および
図20に示すように、第1の実施形態とこの実施形態との間の相違は、スリット130および第1のアクチュエータ120の構成である。この実施形態において、より長いスリット130_Lは、直線スリット(例えば、3つの直線スリット)の組み合わせであってよいが、これに限定されない。この実施形態において、第1の膜110の外縁110eに接続されないより短いスリット130_Sは、直線スリットであってよく、より短いスリット130_Sは、より長いスリット130_Lの一部に平行であってよいが、それに限定されない。
【0147】
その上、
図19および
図20に示すように、第1の膜110の領域に対する連結プレート114の領域の比は、ずっと小さくてよいが、これに限定されない。
【0148】
図21を参照すると、
図21は、本発明の第8の実施形態に従った音響トランスデューサを概略的に図示する頂面図である。第8の実施形態の音響トランスデューサ800の膜、アクチュエータ、(複数の)スリットおよびアンカ構造の設計は、第1のユニットU1および/または第2のユニットU2に適用されてよいことに留意されたい。
【0149】
図21に示すように、第1の実施形態とこの実施形態との間の相違は、スリット130及び第1のアクチュエータ120の構成である。この実施形態において、外側スリット130_Tは、Y字形を形成する直線スリットの組み合わせであってよいが、これに限定されない。この実施形態において、第1の膜110の外縁110eに接続されない内側スリット130_Nは、W形状を形成する直線スリットの組み合わせであってよい。
図21では、内側スリット130_Nの一部が、外側スリット130_Tの一部に平行であるが、これに限定されない。
【0150】
その上、
図21では、第1の膜110の領域に対する連結プレート114の領域の比は、ずっと小さくてよいが、これに限定されない。
【0151】
上記実施形態で記載したスリット130の構成は例であることに留意されたい。本発明ではスリット130の任意の適切な構成を使用することができる。
【0152】
図22を参照すると、
図22は、本発明の第9の実施形態に従った音響トランスデューサを概略的に示す頂面図である。
図22に示すように、音響トランスデューサ900は、複数の膜を含むために、複数のユニット902(すなわち、(複数の)第1のユニットU1、(複数の)第2のユニットU2またはそれらの組み合わせ)を含んでよい。
図22において、音響トランスデューサ900は、2×2アレイを形成するよう4つのユニット902を含むが、これに限定されない。本発明において、音響トランスデューサ900は、全てのユニット902を含む単一のチップを含んでよく、或いは、音響トランスデューサ900は、複数のユニット902を達成するよう複数のチップを含んでよい(チップは、同じでも異なってもよい)。
【0153】
図22は、複数のサウンド生成ユニット902を含む音響トランスデューサ900の概念を実証する例示的な目的のためのものであることに留意されたい。各々の膜の構造は限定的でなく、膜は同じでも異なってもよい。
【0154】
音響トランスデューサ900に含まれる複数のユニット902の故に、音波は、これらのユニット902によって任意の適切な方法で生成されることがある。いくつかの実施形態において、ユニット902は、音波のSPLがより大きいことがあるように、同時に音波を生成してよいが、これに限定されない。
【0155】
いくつかの実施形態において、ユニット902は、時間的にインターリーブされた(interleaved)方法で音波を生成してよい。時間的にインターリーブされた方法に関して、サウンド生成ユニット902は、複数のグループに分割され、空気パルスを生成し、異なるグループによって生成される空気パルスは、時間的にインターリーブされてよく、これらの空気パルスは組み合わされて、音波を再生する全体的な空気パルスになる。ユニット902がM個のグループに分割され、各グループによって生成される空気パルスのアレイが脈拍数PRGを有するならば、全体的な空気パルスの全体的な脈拍数は、M・PRGである。すなわち、1つのグループ(すなわち、1つ以上のユニット)によって生成される空気パルスのアレイの脈拍数は、グループの数が1よりも大きいならば、全てのグループ(すなわち、ユニット902の全て)によって生成される全体的な空気パルスの全体的な脈拍数よりも小さい。
【0156】
図23を参照すると、
図23は、本発明の第10の実施形態に従った音響トランスデューサを図示する概略的な頂面図ある。
図23に示すように、第9の実施形態とこの実施形態との間の相違は、この実施形態の音響トランスデューサ1000のユニット902が、異なるサイズを有してよく、より小さいユニット902は、高周波サウンドユニット(ツイーター)1002であってよく、より大きいユニット902は、低周波サウンドユニット(ウーファー)1004であってよい。なお、高周波サウンドユニット1002の設計は、前述の第1のユニットU1、前述の第2のユニットU2またはそれらの組み合わせであってよく、低周波サウンドユニット1004の設計は、前述の第1のユニットU1、前述の第2のユニットU2またはそれらの組み合わせであってよい。
【0157】
音響トランスデューサ1000の動作において、高周波サウンドユニット1002は、高周波音響変換に構成され、低周波サウンドユニット1004は、低周波音響変換に構成されるが、これに限定されない。高周波サウンドユニット1002および低周波サウンドユニット1004の詳細は、ここでは簡潔セインおために説明されない、出願人により出願された特許文献1が参照されてよい。
【0158】
以下では、音響トランスデューサの製造方法の詳細をさらに例示的に説明する。製造方法は、例示的に提供される以下の実施形態によって制限されず、製造方法は、(複数の)第1のユニットU1および/または(複数の)第2のユニットU2を含む音響トランスデューサを製造してよいことに留意されたい。以下の製造方法において、音響トランスデューサ内のアクチュエータ(例えば、第1のアクチュエータ120および/または第2のアクチュエータ220)は、例えば、圧電アクチュエータであってよいが、それに限定されないことに留意されたい。音響トランスデューサにおいて任意の適切なタイプのアクチュエータを使用することができる。
【0159】
以下の製造方法において、形成プロセスは、原子層成長法(ALD)、化学気相成長法(CVD)および他の好適な(服数の)工程、またはそれらの組み合わせを含んでよい。パターン化プロセスは、フォトリソグラフィ、エッチングプロセス、任意の他の適切な(複数の)プロセス、またはそれらの組み合わせなどを含んでよい。
【0160】
図24~
図30を参照すると、
図24~
図30は、本発明のある実施形態に従った音響トランスデューサの製造方法の異なる段階における構造を図示する概略図である。この実施形態において、音響トランスデューサは、少なくとも1つの半導体プロセスによって製造されてよいが、それに限定されない。
図24に示すように、ウェーハWFが提供され、ウェーハWFは、第1の層W1と、電気絶縁層W3と、第2の層W2とを含み、絶縁層W3は、第1の層W1と第2の層W2との間に形成される。
【0161】
第1の層W1、絶縁層W3および第2の層W2は、ウェーハWFが任意の適切なタイプであってよいように、任意の適切な材料を個々に含んでよい。例えば、第1の層W1および第2の層W2は、シリコン(例えば、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン)、炭化シリコン、ゲルマニウム、窒化ガリウム、ヒ化ガリウム、ステンレス鋼、および他の適切な高剛性材料、またはそれらの組み合わせを含んでよい。いくつかの実施形態において、第1の層W1は、ウェーハWFがシリコンオンインシュレータ(SOI:silicon on insulator)ウェーハWFであるように、単結晶シリコンを含んでよい、これに限定されない。いくつかの実施形態において、第1の層W1は、ウェーハWFがポリシリコンオンインシュレータ(POI:polysilicon on insulator)であるように、多結晶シリコンを含んでよいが、これに限定されない。例えば、絶縁層W3は、酸化ケイ素(例えば、二酸化ケイ素)のような酸化物を含んでよいが、それに限定されない。
【0162】
第1の層W1、絶縁層W3および第2の層W2の厚さは、(複数の)要件に基づいて個々に調整されてよい。例えば、第1の層W1の厚さは、5μmであってよく、第2の層W2の厚さは、350μmであってよいが、これらに限定されない。
【0163】
図24において、補償酸化物層CPSは、任意的に、ウェーハWFの第1の側面に形成されてよく、第1の側面は、第1の層W1が、補償酸化物層CPSと第2の層W2との間にあるように、第2の層W2とは反対側の第1の層W1の上面W1aよりも上方にある。補償酸化物層CPSに含まれる酸化物の材料および補償酸化物層CPSの厚さは、(複数の)要件に基づいて設計されてよい。
【0164】
図24では、第1の導電層CT1が作動材料AMと第1の層W1との間(例えば、及び/又は作動材料AMと補償酸化物層CPSとの間)にあるように、第1の導電層CT1及び作動材料AMがウェーハWFの第1の側面上(第1の層W1上)に順に形成されてよい。いくつかの実施形態において、第1の導電層CT1は、作動材料AMと接触する。
【0165】
第1の導電層CT1は、任意の適切な導電性材料を含んでよく、作動材料AMは、任意の適切な材料を含んでよい。幾つかの実施形態において、第1の導電層CT1は、(プラチナのような)金属を含んでよく、作動材料AMは、圧電材料を含んでよいが、これらに限定されない。例えば、圧電材料は、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)材料を含んでよいが、それに限定されない。その上、第1の導電層CT1および作動材料AMの厚さは、(複数の)要件に基づいて個々に調整されてよい。
【0166】
図25に示すように、作動材料AM、第1の導電層CT1および補償酸化物層CPSは、パターン化されてよい。いくつかの実施形態において、作動材料AM、第1の導電層CT1および補償酸化物層CPSは、順にパターン化されてよい。
【0167】
図26に示すように、分離絶縁層SILが作動材料AM上に形成され、パターン化されてよい。分離絶縁層SILの厚さおよび分離絶縁層SILの材料は、(複数の)要件に基づいて設計されてよい。例えば、分離絶縁層SILの材料は、酸化物であってもよいが、これに限定されない。
【0168】
図27に示すように、第2の導電層CT2が、作動材料AM及び分離絶縁層SIL上に形成されてよく、次に、第2の導電層CT2は、パターン化されてよい。第2の導電層CT2の厚さおよび第2の導電層CT2の材料は、(複数の)要件に基づいて設計されてよい。例えば、第2の導電層CT2は、(金(aurum)のような)金属を含んでよいが、それに限定されない。
【0169】
パターン化された第1の導電層CT1は、アクチュエータのための第1の電極EL1として機能し、パターン化された第2の導電層CT2は、アクチュエータのための第2の電極EL2として機能し、作動材料AM、第1の電極EL1および第2の電極EL2は、アクチュエータを圧電アクチュエータにするために、音響トランスデューサ内のアクチュエータ(例えば、第1のアクチュエータ120および/または第2のアクチュエータ220)のコンポーネントであってよい。例えば、第1電極EL1及び第2電極EL2は、作動材料AMと接触するが、これに限定されない。
【0170】
図27において、分離絶縁層SILは、第1の導電層CT1の少なくとも一部を第2の導電層CT2の少なくとも一部から分離するように構成されてよい。
【0171】
図28に示すように、ウェーハWFの第1の層W1は、トレンチラインWL(trench line)を形成するために、パターン化されてよい。
図28において、トレンチラインWLは、第1の層W1が除去される部分にある。すなわち、トレンチラインWLは、第1の層W1の2つの部分の間にある。
【0172】
図29に示すように、保護層PLが、ウェーハWF、第1の導電層CT1、作動材料AM、分離絶縁層SILおよび第2の導電層CT2を覆うために、第2の導電層CT2上に任意的に形成されてよい。保護層PLは、任意の適切な材料を含んでよく、適切な厚さを有してよい。
【0173】
いくつかの実施形態において、保護層PLは、アクチュエータ120を周囲曝露から保護し、アクチュエータ120の信頼性/安定性を保証する、ように構成されてよいが、それらに限定されない。
図29に示すように、保護層PLの一部が、トレンチラインWL内に配置されてよい。
【0174】
任意的に、
図29において、保護層PLは、外側デバイスに電気的に接続されるべき接続パッドCPDを形成するために、第2の導電層CT2の一部及び/又は第1の導電層CT1の一部を露出するためにパターニングされてよい。
【0175】
図30に示すように、ウェーハWFの第2の層W2は、第2の層W2に少なくとも1つのアンカ構造140(および/または240)を形成させ、第1の層W1にアンカ構造140(および/または240)によって固定される(例えば、第1の膜110および/または第2の膜210を含む)フィルム構造FSを形成させるために、パターニングされてよく、フィルム構造FSは、第1の膜110および/または第2の膜210を含む。別の態様において、フィルム構造FSは、第1のフラップ(第1の部分)及び第2のフラップ(第2の部分)を含む。詳細には、ウェーハWFの第2の層W2は、第1の部分および第2の部分を有してよく、第2の層W2の第1の部分は除去されてよく、第2の層W2の第2の部分は、アンカ構造140(および/または240)を形成してよい。第2の層W2の第1の部分は除去されるので、第1の層W1は、フィルム構造FSを形成する。すなわち、第1の膜110、第2の膜210、第1のフラップおよび/または第2のフラップのような、フィルム構造FSに含まれるコンポーネントは、同じプロセスによって製造されてよく、同じプロセスは、
図24~
図30に図示する同じ一連のステップを表す。
【0176】
任意的に、
図30では、ウェーハWFの絶縁層W3が存在するので、ウェーハWFの第2の層W2がパターン化された後に、第2の層W2の第1の部分に対応する絶縁層W3の一部が、第1の層W1にフィルム構造FSを形成させるために、除去されてもよいが、これに限定されない。
【0177】
図30では、第1の層W1にフィルム構造FSを形成させるために、第2の層W2の第1の部分が除去されるので、スリット130は、トレンチラインWLの故に、フィルム構造FS内に形成され、フィルム構造FSを貫通する。スリット130は、トレンチラインWLの故に形成されるので、トレンチラインWLの幅は、スリット130の要件に基づいて設計されることがある。例えば、溝ラインWLの幅は、スリット130に所望の幅を有するギャップ130Pを有させるために、5μm以下、3μm以下、又は2μm以下であってよいが、これらに限定されない。その上、保護層PLの一部がトレンチラインWLの内側に配置されることがあるので、保護層PLは、スリット130のギャップ130Pの幅をトレンチラインWLの幅未満にさせることがある。
【0178】
図31は、本発明の別の実施形態に従った音響トランスデューサの概略的な断面を図示する概略図である。別の実施形態では、
図30に示す構造と比較して、
図31に示す構造は、ウェーハWFの絶縁層W3を有しない。すなわち、第1の層W1は、第2の層W2上に直接的に(接触して)形成される。その結果、フィルム構造FSは、ウェーハWFの第2の層W2をパターン化のお陰で、ウェーハWFの第1の層W1から直接的に形成される。この場合、第1の層W1(すなわち、フィルム構造FS)は、二酸化シリコンのような酸化物を含む絶縁層を含んでよいが、これに限定されない。
【0179】
次に、ベースBSが設けられ、音響トランスデューサの製造を完了するために、
図30に示す構造または
図31に示す構造がベースBS上に配置されてよい。
【0180】
要約すると、スリットの存在の故に、音響トランスデューサは、音波を生成することがあり、第1のモードにおいて閉塞効果を抑制するベントを形成することがあり、音響トランスデューサは、第2のモードにおいてベントを形成しないことがある。すなわち、スリットは、音響トランスデューサのダイナミックフロントベントとして働く。
【0181】
当業者は、本発明の教示を保持しながら、デバイスおよび方法の多くの修正および変更が行われてよいことを容易に観察するであろう。従って、上記開示は、添付の特許請求の範囲の範囲によってのみ限定されると解釈されるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0182】
【文献】米国特許出願第17/153,849号明細書