(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】試料処理装置及び試料吸引方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20220825BHJP
【FI】
G01N35/10 C
G01N35/10 B
(21)【出願番号】P 2021151224
(22)【出願日】2021-09-16
(62)【分割の表示】P 2017105735の分割
【原出願日】2017-05-29
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 雄一
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-044631(JP,A)
【文献】特開2007-139462(JP,A)
【文献】特開2007-139463(JP,A)
【文献】特開2016-223922(JP,A)
【文献】特開平09-171026(JP,A)
【文献】特開2013-044720(JP,A)
【文献】特表平05-505030(JP,A)
【文献】中国実用新案第205484349(CN,U)
【文献】特開2016-191634(JP,A)
【文献】特開2007-101311(JP,A)
【文献】特開2014-122839(JP,A)
【文献】特開2011-064588(JP,A)
【文献】米国特許第4931256(US,A)
【文献】米国特許第4359447(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の自動吸引を行う第1領域と、試料の手動吸引を行う第2領域と、に移動可能に構成された吸引管と、
前記吸引管により吸引した試料の処理を行う処理部と、
筐体と、
前記第1領域では前記筐体内に配置された試料を前記吸引管に吸引させ、前記第2領域では前記筐体外に配置された試料容器から前記吸引管に試料を吸引させる制御部と、を備え、
前記制御部は、前記筐体外に配置された前記試料容器から試料を吸引可能な状態になったことに応じて、前記第2領域において、前記吸引管を前記筐体外に配置された前記試料容器に対して下降させる、試料処理装置。
【請求項2】
前記筐体外に配置された前記試料容器から試料を吸引可能な状態は、前記試料容器が前記筐体外に配置されたことをセンサによって検知した状態である、請求項1に記載の試料処理装置。
【請求項3】
前記筐体外に配置された前記試料容器から試料を吸引可能な状態は、ユーザから吸引開始の指示を受け付けた状態である、請求項1に記載の試料処理装置。
【請求項4】
前記筐体外に配置された前記試料容器から試料を吸引可能な状態は、前記試料容器が前記筐体外に配置されたことをセンサによって検知した状態、又は、ユーザから吸引開始の指示を受け付けた状態である、請求項1に記載の試料処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1領域と前記第2領域と間で、前記吸引管を直線状に移動させる、請求項1乃至4の何れか一項に記載の試料処理装置。
【請求項6】
複数の試料を保持する保持体を前記第1領域へ搬送するよう構成された試料搬送機構をさらに備える、請求項1乃至5の何れか一項に記載の試料処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1領域と前記第2領域とを結ぶ直線上の第1の方向に前記吸引管を移動させて複数の試料を順次吸引させ、
前記試料搬送機構は、前記保持体を前記第1の方向に直交する第2の方向に移動させる、請求項6に記載の試料処理装置。
【請求項8】
前記筐体は、前記試料搬送機構を収容する、請求項6または7に記載の試料処理装置。
【請求項9】
前記筐体は、前記保持体の設置位置および前記設置位置から前記第1領域に至る搬送経路を内部に収容する、請求項6乃至8の何れか一項に記載の試料処理装置。
【請求項10】
前記筐体は、前記設置位置に前記保持体を設置するための蓋体を備える、請求項9に記載の試料処理装置。
【請求項11】
前記第1領域と前記第2領域とを結ぶ直線上に、前記吸引管を洗浄する洗浄部を備える、請求項1乃至10の何れか一項に記載の試料処理装置。
【請求項12】
前記洗浄部は、前記第1領域と前記第2領域との間に位置する、請求項11に記載の試料処理装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記手動吸引の動作指示を受け付けると、前記吸引管を前記第2領域へ移動させる、請求項1乃至12の何れか一項に記載の試料処理装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記手動吸引の完了後又は前記手動吸引の開始後から所定時間の経過後に、前記吸引管を前記第1領域へ移動させる、請求項1乃至13の何れか一項に記載の試料処理装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記手動吸引中に自動吸引の動作指示を受け付けると、前記手動吸引の完了後又は前記手動吸引の開始後から所定時間の経過後に、前記吸引管を前記第1領域へ移動させる、請求項1乃至14の何れか一項に記載の試料処理装置。
【請求項16】
前記試料は核酸を含み、
前記処理部により前記核酸を処理する、請求項1乃至15の何れか一項に記載の試料処理装置。
【請求項17】
前記自動吸引において、前記吸引管が試料を吸引する前に、前記吸引管による試料の撹拌動作を行う、請求項1乃至16の何れか一項に記載の試料処理装置。
【請求項18】
前記自動吸引は、複数の試料を保持する保持体から前記吸引管により試料の吸引を行う処理である、請求項1乃至17の何れか一項に記載の試料処理装置。
【請求項19】
前記手動吸引は、ユーザが保持する前記試料容器から前記吸引管により試料の吸引を行う処理である、請求項1乃至18の何れか一項に記載の試料処理装置。
【請求項20】
前記手動吸引は、ユーザによって前記筐体外に配置された前記試料容器から、前記自動吸引の動作中に割り込んで、前記吸引管により試料の吸引を行う処理である、請求項1乃至19の何れか一項に記載の試料処理装置。
【請求項21】
前記処理部がフローサイトメータである、請求項1乃至20の何れか一項に記載の試料処理装置。
【請求項22】
前記筐体は開口が設けられ、
前記制御部は、前記開口を介して前記吸引管の先端部が前記筐体より外に位置するように前記吸引管を移動させる、請求項1乃至21の何れか一項に記載の試料処理装置。
【請求項23】
前記自動吸引では、複数行および複数列にわたって複数の試料が並んで収容されるよう構成された保持体から前記吸引管により試料の吸引を行う、請求項1乃至22の何れか一項に記載の試料処理装置。
【請求項24】
試料を吸引する吸引管を備える試料処理装置による試料吸引方法であって、
第1領域では、前記吸引管により、筐体内に配置された試料の自動吸引を行い、
第2領域では、前記筐体外に配置された試料容器から前記吸引管により試料の手動吸引を行い、
前記手動吸引では、前記筐体外に配置された前記試料容器から試料を吸引可能な状態になったことに応じて、前記第2領域において、前記吸引管を前記筐体外に配置された前記試料容器に対して下降させる、
試料吸引方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料処理装置及び試料処理方法に関し、詳しくは、自動吸引及び手動吸引による試料の吸引を行って試料を処理するための試料処理装置及び試料吸引方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
試料の分析などを行う試料処理装置では、試料容器に収容された検体等の試料を吸引し、その試料に対して所定の分析などの処理を行って、処理結果を得る。特許文献1には、試料容器を手動でセットするための試料容器セット部と、一又は複数の試料容器を保持するための保持台がセットされる保持台セット部と、保持台セット部にセットされた保持台より試料容器を試料容器セット部へ移送して供給するための試料容器供給部と、試料容器セット部にセットされた試料容器内の試料を吸引する吸引部とを備える試料分析装置が記載されている。試料分析装置は、手動モード及び自動モードでの動作制御が可能な制御部を備える。制御部は、手動モードが選択されると、試料容器セット部に手動でセットされた試料容器内の試料を吸引して分析するよう制御する。自動モードが選択されると、保持台セット部にセットされた保持台より試料容器を試料容器セット部へ移送し、試料容器セット部にセットされた試料容器内の試料を吸引して分析するように制御する。試料分析装置は、保持台に複数の試料容器を保持できるため、ユーザは、試料容器を1本ずつ試料分析装置にセットする必要がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の試料について試料処理装置により分析などの処理を行う場合、試料をセットしてから試料処理装置が全ての試料の処理を完了するまでに長い時間を要する場合がある。例えば、試料が96個のウェル全てに入っているウェルプレートを試料処理装置にセットした場合、全てのウェルの試料を処理するのに数時間(例えば約7時間)という単位の時間を必要とすることがある。このため、試料の処理中に、緊急で別の試料の処理が必要となった場合には、前記緊急の試料を処理するため、処理の割り込みを行う必要がある。つまり、継続中の自動処理を一旦中断させ、別の試料について手動による処理に切り換えるよう試料処理装置の動作を制御する必要がある。
【0005】
特許文献1に記載の試料分析装置は、自動モードと手動モードとを切り換えることを可能とするために、複数の試料容器を保持する保持台セット部から試料容器セット部に試料容器を移送する移送機構、手動及び前記移送機構の動作により試料容器がセットされる試料容器セット部の機構、試料容器セット部を吸引部へ移動させる機構等により自動モードと手動モードとの切り換えに対応する構成となっており、機構が複雑であり、そのため装置全体が大型化するという問題がある。
また、特許文献1に記載の試料分析装置のように、手動吸引の際に試料が収容された試料容器を筐体の内部に引き込む構成とすると、試料容器を引き込むための開口から筐体内に埃や異物などが入り込む。特に遺伝子検査を行う場合には、汗や唾液が試料に混入すると検査結果に大きな影響が出る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
試料処理装置(30)は、試料を吸引する吸引管(710)と、壁構成部材に覆われた、試料の自動吸引を行う第1領域(P1)と、第1領域(P1)から分離された、試料の手動吸引を行う第2領域(P2)と、に吸引管(710)を移動するよう構成された吸引管移動機構(720)と、吸引管(710)により吸引した試料の処理を行う処理部(38)と、を備える。
【0007】
上記の試料処理装置は、第1領域に配置された複数の試料を吸引管が順次吸引する自動吸引と、第2領域に配置された試料を吸引管が吸引する手動吸引とを、吸引管を第1領域と第2領域とに移動させることにより行っている。このため、構成を簡素化でき、装置の小型化を図ることができる。また、第2領域において、吸引管の少なくとも先端部を壁構成部材の外に位置させて壁構成部材の外に配置された試料を吸引することで、壁構成部材の内部に埃、異物などが入り込みにくくなり、自動吸引時に試料の汚染が防がれ正確な測定等を行うことができる。
【0008】
好ましい実施形態においては、第1領域(P1)を内部に含む筐体(50)をさらに備え、吸引管移動機構(720)は、第2領域(P2)において、吸引管(710)の先端部が筐体(50)より外に位置するように吸引管(710)を移動するよう構成される。
【0009】
上記の構成によれば、吸引管の先端部が筐体の外に位置して筐体の外に配置された試料を吸引するため、筐体の内部に埃、異物などが入り込みにくく、試料の汚染が防がれ正確な測定等を行うことができる。
【0010】
好ましい実施形態においては、吸引管移動機構(720)は、第1領域(P1)と第2領域(P2)と間で、吸引管(710)を直線状に移動させる。
【0011】
自動吸引及び手動吸引における吸引動作を行う位置を直線状に配置することで、吸引管の移動を迅速に行うことができる。また、吸引管移動機構は吸引管を直線移動させるだけの簡単な機構でよいため、小型化が可能となる。
【0012】
好ましい実施形態によれば、複数の試料を保持する保持体(500)を第1領域(P1)へ搬送するよう構成された試料搬送機構(12)をさらに備える。
【0013】
この実施形態によると、試料は試料搬送機構により第1領域に搬送されるので、ユーザが試料を第1領域にセットする必要がない。
【0014】
好ましい実施形態によれば、吸引管移動機構(720)は、第1領域(P1)と第2領域(P2)とを結ぶ直線上の第1の方向に吸引管(710)を移動させて複数の試料を順次吸引し、試料搬送機構(12)は、保持体(500)を第1の方向に直交する第2の方向に移動させる。
【0015】
保持体に複数行、複数列にわたって複数の試料が並んで収容されている場合には、自動吸引時において、吸引管移動機構によって吸引管を第1の方向に順次移動させ、試料搬送機構によって保持体を第2の方向に順次移動させることによって、保持体に収容された全ての試料を吸引することが可能となる。これにより、吸引管は効率的に試料を吸引することができる。
【0016】
好ましい実施形態によれば、筐体(50)は、試料搬送機構(12)を収容する。
【0017】
試料搬送機構により搬送される試料が筐体内に収容されるので、試料が埃、異物などにより汚染されにくい。
【0018】
好ましい実施形態によれば、筐体(50)は、保持体(500)の設置位置(421)および設置位置(421)から第1領域(P1)に至る搬送経路を内部に収容する。
【0019】
搬送経路が筐体の内部に含まれるので、搬送経路を搬送される試料が埃や異物等により汚染されにくい。
【0020】
好ましい実施形態によれば、筐体(50)は、設置位置(421)に保持体(500)を設置するための蓋体(11)を備える。
【0021】
上記の構成によれば、蓋体を開けば、設置位置に試料を速やかにセットできる。
【0022】
好ましい実施形態においては、第1領域(P1)と第2領域(P2)とを結ぶ直線上に、吸引管(710)を洗浄する洗浄部(33)を備え、吸引管移動機構(720)は、吸引管(710)を洗浄部(33)に移動するよう構成される。
【0023】
吸引管移動機構により吸引管を洗浄部に移動させることで、試料の吸引が完了する毎に吸引管を洗浄できる。また、洗浄部は第1領域と第2領域とを結ぶ直線上にあるため、吸引管を直線移動させるだけでよく、吸引管移動機構の構成が複雑化せず、小型化を阻害しない。
【0024】
より好ましくは、洗浄部(33)は、第1領域(P1)と第2領域(P2)との間に位置する。
【0025】
吸引管が第1領域、第2領域のいずれにあっても、吸引管を洗浄部まで短い移動距離で移動させることができる。
【0026】
好ましい実施形態においては、吸引管移動機構(720)の動作を制御する制御部(31)をさらに備え、制御部(31)は、手動吸引の動作指示を受け付けると、吸引管(710)を第2領域(P2)へ移動するように吸引管移動機構(720)を制御する。
【0027】
好ましい実施形態においては、制御部(31)は、手動吸引の完了後又は手動吸引の開始後から所定時間の経過後に、吸引管(710)を第1領域(P1)へ移動するように吸引管移動機構(720)の動作を制御する。
【0028】
手動吸引の完了後に、第1領域まで吸引管を移動させることで、速やかに自動吸引に復帰できる。また、所定時間を手動吸引が完了するのに要する時間以上の長さに設定し、手動吸引の開始後から所定時間の経過後に第1領域まで吸引管を移動させることによって、手動吸引を確実に完了させた後、自動吸引に復帰できる。
【0029】
好ましい実施形態においては、制御部(31)は、手動吸引中に自動吸引の動作指示を受け付けると、手動吸引の完了後又は手動吸引の開始後から所定時間の経過後に、吸引管(710)を第1領域(P1)へ移動するように吸引管移動機構(720)の動作を制御する。
【0030】
上記の構成によれば、自動吸引の動作指示を受け付けたときにのみ、手動吸引の完了後又は手動吸引の開始後から所定時間の経過後に、自動吸引の動作に復帰させることができる。所定時間を、手動吸引の開始後から手動吸引が完了するのに要する時間以上の長さに設定することによって、手動吸引を確実に完了させた後、自動吸引に復帰できる。
【0031】
好ましい実施形態によれば、試料は核酸を含み、処理部(38)により核酸を処理する。
【0032】
好ましい実施形態によれば、自動吸引において、吸引管(710)が試料を吸引する前に、吸引管(710)による試料の撹拌動作を行う。
【0033】
上記の構成によれば、試料内に含まれる粒子成分が試料中に均一に分散する。撹拌方法は、吸排撹拌、気泡撹拌のいずれであってもよい。手動吸引においては、吸引動作の前に既にユーザ等により試料の撹拌が行われていることが多いため、試料の撹拌動作を行わなくてもよいが、撹拌動作を行なってもよい。
【0034】
好ましい実施形態によれば、自動吸引は、複数の試料を保持する保持体(500)から吸引管(710)により試料の吸引を行う処理である。
【0035】
好ましい実施形態によれば、手動吸引は、ユーザが保持する試料容器から吸引管(710)により試料の吸引を行う処理である。
【0036】
好ましい実施形態によれば、処理部(38)がフローサイトメータである。
【0037】
好ましい実施形態によれば、筐体(50)は開口が設けられ、吸引管移動機構(720)は、開口を介して吸引管(710)の先端部が筐体(50)より外に位置するように吸引管(710)を移動するよう構成される。
【0038】
手動吸引時に、筐体の開口から吸引管の先端部のみを筐体の外に位置させることで、筐体の内部に埃、異物などが入り込みにくくなり、試料の汚染が防がれ正確な測定等を行うことができる。
【0039】
好ましい実施形態によれば、保持体(500)は、複数行および複数列にわたって複数の試料が並んで収容されるよう構成されている。
【0040】
吸引管移動機構によって吸引管を第1の方向に順次移動させ、試料搬送機構によって保持体を第1の方向に直交する第2の方向に順次移動させることによって、保持体に複数行および複数列にわたって収容された全ての試料を吸引することが可能となる。これにより、吸引管は効率的に試料を吸引することができる。
【0041】
本発明の試料処理方法は、試料を吸引する吸引管(710)と、吸引した試料を処理する処理部(38)とを備える試料処理装置により試料を処理する方法であって、壁構成部材に覆われた第1領域(P1)において吸引管(710)により試料の自動吸引を行う工程と、前記第1領域から分離された第2領域に前記吸引管を移動させ、第2領域(P2)において吸引管(710)により試料の手動吸引を行う工程と、を備える。
【0042】
上記の方法によれば、吸引管を第1領域と第2領域とに移動させることにより自動吸引と手動吸引とを行うことができ、構成を簡素化でき、装置の小型化を図ることができる。また、吸引管の先端部を壁構成部材の外に位置させて壁構成部材の外に配置された試料を吸引することで、壁構成部材の内部に埃、異物などが入り込みにくくなり、自動吸引時に試料の汚染が防がれ正確な測定等を行うことができる。
【0043】
本発明の試料処理装置は、複数の試料を保持する保持体(500)から試料を吸引するための吸引管(710)と、吸引管(710)を移動可能な吸引管移動機構(720)と、保持体(500)を搬送する試料搬送機構(12)と、吸引管(710)により吸引した試料の処理を行う処理部(38)と、を備え、吸引管移動機構(720)は、吸引管(710)を第1の方向に移動させて複数の試料を順次吸引し、試料搬送機構(12)は、保持体(500)を第1の方向に直交する第2の方向に移動させる。
【0044】
吸引管移動機構によって吸引管を第1の方向に順次移動させ、試料搬送機構によって保持体を第2の方向に順次移動させることによって、保持体に複数行および複数列にわたって収容された全ての試料を吸引することが可能となる。これにより、吸引管は効率的に試料を吸引することができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、1本の吸引管を第1領域と第2領域とに移動させることにより自動吸引と手動吸引との両方を行っているため、構成を簡素化でき、装置の小型化を図ることができる。また、吸引管の先端部を壁構成部材の外に位置させて壁構成部材の外に配置された試料を吸引することで、壁構成部材の内部に埃、異物などが入り込みにくくなり、自動吸引時に試料の汚染が防がれ正確な測定等を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図2】試料処理装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図3】試料処理装置の筐体の一部を切り欠いた状態の斜視図である。
【
図4】(a)は、吸引管移動機構をZ軸正方向に見た場合の構成を示す模式図であり、(b)は、ガイド部材、ローラおよび支軸をY軸負方向に見た場合の構成を示す模式図であり、(c)は、ガイド部材、ローラおよび支軸をX軸正方向に見た場合の構成を示す模式図である。
【
図7】(a)は、試料搬送装置を鉛直下方向に見た場合の構成を示す模式図である。(b)、(c)は、それぞれ、プレートが設置された保持体を上側および下側から見た場合の構成を示す模式図である。
【
図8】(a)、(b)は、保持体の搬送について説明するための模式図である。
【
図9】(a)、(b)は、保持体の搬送について説明するための模式図である。
【
図10】試料搬送装置を鉛直下方向に見た場合の構成を示す模式図である。
【
図11】試料処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図12】自動吸引の動作を示すフローチャートである。
【
図13】自動吸引の動作を示すフローチャートである。
【
図14】手動吸引の動作を示すフローチャートである。
【
図15】手動吸引の動作の他の態様を示すフローチャートである。
【
図16】手動吸引の動作の他の態様を示すフローチャートである。
【
図17】フローサイトメータの流体系の構成を示す模式図である。
【
図18】フローサイトメータの光学系の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1は、吸引管710によって実施される自動吸引と手動吸引とを模式的に示したものである。ここで、自動吸引とは、吸引管710及び保持体500を移動させつつ、
図1及び
図9(a)に示す第1領域P1において、保持体500に配置された複数の試料について試料毎の吸引動作を行う処理をいう。自動吸引における吸引動作は後述する制御部31により制御される。自動吸引には、ひとつの試料に対する吸引動作が完了する毎に、吸引管710が第3領域P3に移動して吸引管710等の洗浄動作を行う処理も含まれる。この一連の動作はサンプラ吸引とも呼ばれる。
【0048】
手動吸引とは、自動吸引中に手動吸引の動作指示を受けた場合に、
図1に示す第2領域P2において、筐体50の外に配置された試料について吸引動作を行う処理をいう。手動吸引における吸引動作は後述する制御部31により制御される。手動吸引には、試料の吸引が完了した後、吸引管710が第3領域P3に移動して吸引管710等の洗浄動作を行う処理も含まれる。この一連の動作はマニュアル吸引とも呼ばれる。
【0049】
図中、X軸方向は、吸引管710の移動方向に沿う第1の方向である。Z軸方向は、X軸方向と直交する方向である。Z軸方向に沿って、吸引管710が移動停止位置761aと吸引位置761bとの間、移動停止位置762aと吸引位置762bとの間、移動停止位置763aと洗浄位置763bとの間を移動する。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向に直交する方向である。自動吸引中に、保持体50は第2の方向であるY軸方向に沿って移動する。
【0050】
(試料処理装置の全体構成)
図2は、試料処理装置30の構成を示し、試料の吸引と、測定、分析などの処理とを行う処理装置20と、試料を処理装置20に搬送する試料搬送装置10とを備えている。処理装置20と試料搬送装置10とは筐体50に収容されている。筐体50は、処理装置20を覆う2つの側面壁50A(一方のみを図示)、前面壁50B、上面壁50C、図示しない後面壁を備え、また、試料搬送装置10を覆う側面壁50D、前面壁50E、図示しない後面壁、上面壁50F、蓋体11を備えている。これらの壁構成部材により筐体50の内部が略密閉状態となっている。
【0051】
筐体50の前面壁50Bの下部には窪み部21が存在する。窪み部21は、手動吸引においてユーザが試料を収容した試料容器Cを手作業で設置する空間であり、この空間の位置は筐体50の外である。窪み部21には試料容器Cの設置部材が設けられていてもよい。試料容器Cの設置位置の上方には、
図3に示すように天板50Gが設けられ、天板50Gに貫通孔50aが形成されている。第2領域P2において、吸引管710の少なくとも先端部は貫通孔50aより出没動作が可能となっている。蓋体11は、試料を保持する保持体500の設置位置421に対応する位置に設けられ、開閉が可能である。
【0052】
図3は筐体50の一部を切り欠いた状態の図である。処理装置20は、1以上の試料について試料毎の吸引を行うための1本の吸引管710と、自動吸引を行うための第1領域P1と手動吸引を行うための第2領域P2と洗浄動作を行うための第3領域P3との間で吸引管710を直線状に移動させる吸引管移動機構720と、吸引管710を洗浄するための洗浄部33を構成する洗浄槽40とを備えている。筐体50内部に第1領域P1、第3領域P3を含むように、吸引管移動機構720及び洗浄槽40が筐体50内に収容されている。
図1に示すように、第3領域P3は、第1領域P1と第2領域P2とを結ぶ直線上に位置し、第1領域P1と第2領域P2との間に設定されている。前記直線はX軸方向に沿っている。
【0053】
試料搬送装置10は、試料を設置位置421から処理装置20内の第1領域P1(後述する位置423に相当する)へ搬送する試料搬送機構12を含んでいる。試料搬送機構12は筐体50に収容され、設置位置421および設置位置421から第1領域P1に至る試料の搬送経路が筐体50の内部に含まれている。設置位置421にはユーザにより試料が配置された保持体500が配置される。
【0054】
第1領域P1とは、自動吸引において試料の吸引が行われるX-Y平面上の領域を指す。自動吸引においては、吸引管710は、
図7に示す後述するプレート600上に複数行、複数列に配置された複数の試料を試料毎に吸引する。X軸方向にn列、Y軸方向にm行に配置された試料を吸引する場合、吸引管710は、例えば、試料の列の数nに対応して
図1に示す位置P1-n1からP1-nnまでX軸方向に順に移動する。従って、第1領域P1は、吸引管710が移動する位置、すなわち、位置P1-n1からP1-nnを含む領域である。また、第1領域P1には、吸引管710が直線往復移動する位置である移動停止位置761aと、吸引管710が試料を吸引する位置である吸引位置761bとが含まれる。
【0055】
第2領域P2とは、手動吸引において、窪み部21に配置された試料の吸引が行われるX-Y平面上の領域を指す。
図1に示すように、第2領域P2には、吸引管710の移動停止位置762aと吸引位置762bとが含まれる。
【0056】
第3領域P3とは、手動吸引中及び自動吸引中に吸引管710の洗浄が行われるX-Y平面上の領域を指す。
図1に示すように、第3領域P3には、吸引管710の移動停止位置763aと、吸引管710が洗浄される位置である洗浄位置763bとが含まれる。
【0057】
吸引管710で吸引される試料は、核酸を含む細胞を含み、検出試薬と混合されたものであるが、これに限定されない。
【0058】
なお、本実施形態では、筐体50に形成した窪み部21は周囲が開放されているが、周囲を開閉可能な透明の樹脂シートで覆うようにしてもよい。また、第2領域P2の吸引位置762bにある吸引管710の先端部が筐体50の外に位置していれば、窪み部21は形成されていなくてもよい。
【0059】
(保持体)
図7(b)、(c)に示すように、試料が配置される保持体500は、プレート600を上面に設置可能に構成されている。プレート600には、X軸方向、すなわち列方向にn個、Y軸方向、すなわち行方向にm個のウェル601が形成されている。本実施形態のプレート600は、列方向に12個、行方向に8個、合計で96個のウェル601を有している。隣り合うウェル601の中心間の距離は、9mmであり、ウェル601の上端部分における直径は、5.5mmである。ユーザは、各ウェル601に試料を収容し、試料を保持するプレート600を保持体500の上面に設置する。なお、プレート600に形成されるウェル601の数は複数個であればよく、nまたはmが2以上であればよい。
【0060】
保持体500は、例えば、ポリアセタールにより形成される。一般に、ポリアセタールは、後述する
図7に示す支持板400の構成材料であるステンレスや電気亜鉛めっき鋼板(SECC)との摩擦抵抗が小さい。このため、保持体500をポリアセタールにより形成することにより、試料搬送装置10の後述する
図7に示す支持面401上において、保持体500を円滑に搬送できる。保持体500は、成形しやすく且つ支持面401との摩擦抵抗が小さい樹脂材料からなることが好ましい。
【0061】
図7(b)、(c)に示すように、保持体500の下面501には、第1凹部510と第2凹部520が配置されている。第1凹部510は、Y軸方向に延び下面501に形成された溝により構成されている。第2凹部520は、X軸方向に延び下面501に形成された溝により構成されている。第1凹部510は、下面501の中央位置を通るように配置されている。第2凹部520は、下面501の端部付近を通るように配置されている。
【0062】
(吸引管移動機構)
図4(a)に示すように、吸引管移動機構720は、第1、第2の移動機構730、740と支持部750を備える。第1の移動機構730は、ベルト731と、2つのプーリ732と、モータ733と、支持部材734と、留め具735と、レール736と、を備える。ベルト731は、2つのプーリ732間に架けられている。2つのプーリ732は、所定の間隔を開けてX軸方向に並んで配置されている。一方のプーリ732は、モータ733の駆動軸に接続されている。モータ733は、ステッピングモータにより構成される。支持部材734は、図示しないレールに支持されながらX軸方向に移動可能に構成される。支持部材734は、留め具735によりベルト731に接続されている。レール736は、Z軸方向に延びており、支持部材734に設置されている。
【0063】
第2の移動機構740は、ベルト741と、2つのプーリ742と、モータ743と、支持部材744と、留め具745と、ガイド部材746と、を備える。ベルト741は、2つのプーリ742間に架けられている。2つのプーリ742は、所定の間隔を開けてZ軸方向に並んで配置されている。
図4(a)には、便宜上、一方のプーリ742のみが示されている。プーリ742は、モータ743の駆動軸に接続されている。モータ743は、ステッピングモータにより構成される。支持部材744は、図示しないレールに支持されながらZ軸方向に移動可能に構成される。支持部材744は、留め具745によりベルト741に接続されている。ガイド部材746は、X軸方向に延びており、支持部材744に設置されている。
【0064】
支持部750は、摺動部材751と、支軸752と、ローラ753と、保持部材754と、を備える。摺動部材751は、レール736に支持されながらZ軸方向に移動可能に構成される。支軸752は、Y軸方向に延びており、支軸752の一方の端部は、摺動部材751に設置されている。ローラ753は、支軸752を中心として回転可能となるよう、支軸752の他方の端部に設置されている。保持部材754は、摺動部材751に設置されており、吸引管710を保持している。
【0065】
図4(b)、(c)に示すように、ガイド部材746は、X軸方向に延びた凹部746aを備える。ローラ753は、X軸方向に移動可能となるよう、凹部746aに収容されている。
【0066】
吸引管移動機構720が吸引管710をX軸方向に移動させる場合、モータ733が駆動される。これにより、ベルト731が移動し、ベルト731の動きに合わせて、支持部材734がX軸方向に移動する。支持部材734がX軸方向に移動すると、レール736を介して摺動部材751がX軸方向に力を受ける。このとき、ローラ753が凹部746a内にガイドされながらX軸方向に移動する。摺動部材751がX軸方向に力を受けると、保持部材754がX軸方向に移動する。こうして、吸引管710がX軸方向に移動される。
【0067】
これにより、
図1に示すように、吸引管710は、X軸方向に沿って第1から第3の各動作位置P1、P2、P3間を直線状に移動する。吸引管710が移動する際には、吸引管710は移動停止位置761a、762a、763aにある。移動停止位置761a、762a、763aは、吸引位置761b、762b及び洗浄位置763bよりも上方に位置し、吸引管710の第1から第3の各位置P1、P2、P3間の移動が保持体500や洗浄槽40に妨げられない位置に設定されている。また、自動吸引においては、吸引管710は、試料の配列間隔に対応する距離ずつ順送りされる。吸引管710は、第1領域P1において位置P1-n1から位置P1-nnまで順次移動する。
【0068】
吸引管移動機構720が吸引管710をZ軸方向に移動させる場合、モータ743が駆動される。これにより、ベルト741が移動し、ベルト741の動きに合わせて、支持部材744とガイド部材746がZ軸方向に移動する。ガイド部材746がZ軸方向に移動すると、凹部746aに挟まれたローラ753がZ軸方向に力を受ける。ローラ753がZ軸方向に力を受けると、支軸752を介して摺動部材751と保持部材754がZ軸方向に移動する。こうして、吸引管710がZ軸方向に移動される。
【0069】
これにより、
図1に示すように、吸引管710は、第1領域P1において移動停止位置761aと吸引を行う吸引位置761bとを移動し、第2領域P2において移動停止位置762aと吸引位置762bとを移動し、第3領域P3において移動停止位置763aと洗浄位置763bとを移動する。第2領域P2の吸引位置762bにおいては、吸引管710の先端部が筐体50の外に移動する。なお、吸引管710は、先端部だけでなく、基端部近傍まで筐体50の外に移動してもよい。
【0070】
(吸引動作)
試料処理装置30は
図5に示す吸引部32を備えている。吸引部32は吸引管710と第1ポンプ910とを備える。吸引管710と第1ポンプ910とは主流路920により接続されている。主流路920には後述する処理部38が接続されている。処理部38と吸引管710との間には主流路920を開閉する電磁弁PV1が設けられている。電磁弁PV1は、常時開である。なお、
図5においては、保持体500及びプレート600の記載を省略し、1つのウェル601を模式的に示している。
【0071】
第1ポンプ910は、例えば、シリンジポンプである。シリンジポンプは、吸引又は吐出により流体を移送するものであり、比較的少量の流体の移送に適し、正確な量の流体を正確な速度で移送する。第1ポンプ910はモータ910aによって動作する。後述する
図11に示す制御部31は、モータ910aを制御して第1ポンプ910に吸引圧力又は吐出圧力を発生させる。
【0072】
吸引管710が第1領域P1の吸引位置761bに位置したとき、吸引管710の先端部はウェルに収容された試料内にある。制御部31は、第1ポンプ910を駆動して吸引圧力を発生させ、主流路920を介して接続された吸引管710から、試料を吸引する。吸引された試料は、主流路920に流入する。所定量の試料が吸引されると第1ポンプ910は停止する。
【0073】
制御部31が、電磁弁PV1を閉状態とし、第1ポンプ910を駆動して吐出圧力を発生させると、主流路920中の試料が処理部38へ送られる。制御部31は、処理部38への試料の移送が完了すると、電磁弁PV1を開状態にする。
【0074】
吸引管710が手動吸引を行う第2領域P2の吸引位置763bに位置する場合にも、上記の吸引動作が行われる。
【0075】
(洗浄動作)
試料処理装置30は
図6に示す洗浄部33を備えている。洗浄部33は洗浄槽40と洗浄液容器130A、130Bとを備えている。洗浄液容器130Aは流路940を介して洗浄槽40と接続されている。流路940の途中には電磁弁PV2が設けられている。電磁弁PV2は常時閉である。洗浄液容器130Bは、流路930を介して第1ポンプ910と接続されている。第1ポンプ910には、洗浄液を第1ポンプ910内に導入する導入口910bが設けられており、導入口910bは、洗浄液容器130Bと接続されている。流路930の中途には、電磁弁SV3が設けられている。電磁弁SV3は、常時閉である。
【0076】
第3領域P3において、吸引管710が洗浄位置763bに位置したとき、吸引管710の少なくとも先端部は洗浄槽40内にある。制御部31は、電磁弁PV2を開状態とする。洗浄液にかけられた陽圧により、洗浄液が、洗浄液容器130Aから流路940を介して洗浄槽40に供給される。吸引管710の先端部は、その外周面が洗浄液と接することで洗浄される。このとき、吸引管710を上下に移動させて洗浄してもよい。洗浄槽40に供給された洗浄液は図示しない排出口から排出される。制御部31は、電磁弁PV2を閉状態にする。
【0077】
制御部31は、電磁弁SV3を開状態とする。洗浄液にかけられた陽圧により、洗浄液が、洗浄液容器130Bから、流路930、第1ポンプ910、主流路920、吸引管710へと流れ、洗浄液が洗浄槽40に排出される。これにより、第1ポンプ910、主流路920、吸引管710の内部が洗浄される。洗浄後、制御部31は、電磁弁SV3を閉状態とする。洗浄槽40に供給された洗浄液は図示しない排出口から排出される。
【0078】
(撹拌動作)
自動吸引において、制御部31は、吸引管710に試料を吸引させる前に、吸引管710に試料の撹拌を行わせる。第1ポンプ910を吸引駆動すると、吸引管710からウェル601に収容された試料が吸引され、主流路920に流入する。その後、第1ポンプ910を吐出駆動すると、主流路920に流入した試料が吸引管710からウェル601に戻される。このように、吸引管710が試料を吸引及び排出する動作を数回繰り返すことで、吸排撹拌の動作を行う。
【0079】
なお、撹拌用ノズル、撹拌用流路、ポンプを別途設けて、試料の吸引、吐出を行ってもよい。また、上記の吸排撹拌に代えて、試料に空気を吹き込むことによる気泡撹拌を行ってもよい。この場合、主流路920にエアポンプを接続して主流路920及び吸引管710を介して空気を吹き込んでもよく、空気用流路と、空気を吹き込むための撹拌用ノズルを別途設けてもよい。
【0080】
(試料搬送機構)
試料搬送装置10は
図7(a)に示す試料搬送機構12を備える。試料搬送機構12は、第1移動体100と、第2移動体200と、第1搬送部310と、第2搬送部320と、支持板400と、を備える。支持板400は、例えば、ステンレスや電気亜鉛めっき鋼板(SECC)からなっている。試料搬送機構12は、試料を2次元平面に沿って搬送する。本実施形態では、試料搬送機構12は、試料をXY平面に沿って搬送する。
【0081】
第1搬送部310は、第1移動体100と第1突部110とを含み、第1移動体100とともに第1突部110をX軸方向に搬送する。第2搬送部320は、第2移動体200と第2突部210とを含み、第2移動体200とともに第2突部210をY軸方向に搬送する。第1移動体100と第2移動体200は、支持板400の下面側すなわちZ軸正側に位置付けられている。第1移動体100には、一対の第1突部110が配置されている。第2移動体200には、一対の第2突部210が配置されている。一対の第1突部110は、第1移動体100においてY軸方向に並んでいる。一対の第2突部210は、第2移動体200においてX軸方向に並んでいる。第1突部110は、保持体500の第1凹部510と係合する。第2突部210は、保持体500の第2凹部520と係合する。
【0082】
Z軸方向に見たときに、第1移動体100の移動経路101と第2移動体200の移動経路201とが、互いに交差しないように設定されている。これにより、第1搬送部310の駆動機構と第2搬送部320の駆動機構とを、互いに接触することなく個別に配置できる。よって、第1搬送部310と第2搬送部320の構成は簡素になる。
【0083】
支持面401は、平面状に形成された支持板400の上面である。支持面401には、保持体500の移動範囲において、保持体500の下面501が載せられる。これにより、保持体500を支持面401に支持させながら、支持面401上を滑らかに搬送できる。なお、保持体500の下面501が、第1突部110と第2突部210によってのみ支持され、支持面401から離れていてもよい。
【0084】
支持板400には、一対の第1溝411と一対の第2溝412が形成されている。一対の第1溝411はX軸方向に延びている。一対の第2溝412はY軸方向に延びている。一対の第1突部110は、一対の第1溝411を介して、支持面401の上方へ突出している。一対の第2突部210は、一対の第2溝412を介して、支持面401の上方へ突出している。
【0085】
次に、
図8(a)~
図9(b)を参照して、保持体500の搬送について説明する。なお、
図8(a)~
図9(b)では、便宜上、第1移動体100と、第2移動体200と、第1搬送部310と、第2搬送部320と、プレート600の図示が省略されている。
【0086】
ここで、保持体500が支持面401のX軸に沿う負側の端部に位置付けられたときの、保持体500の位置を位置421とする。位置421は、保持体500の設置位置である。保・BR>搗フ500が支持面401のX軸に沿う正側の端部に位置付けられたときの、保持体500の位置を位置424とする。保持体500が位置421と位置424の中間に位置付けられたときの、保持体500の位置を位置422とする。保持体500が支持面401のY軸に沿う正側の端部側に位置付けられたときの、保持体500の位置を位置423とする。
【0087】
位置423は、自動吸引が行われる第1領域P1とX-Y平面上で重なる領域である。自動吸引においては、保持体500は、試料の行の数mに対応して試料搬送機構12によって、Y軸の負側に向けて位置P1-m1から位置P1-mmまで試料の配列間隔に対応する距離ずつ順送りされる。従って、位置423は保持体500が移動する位置、すなわち、位置P1-m1から位置P1-mmを含む領域である。
【0088】
図8(a)に示すように、保持体500は、第1溝411のX軸に沿う負側の端部に位置付けられた一対の第1突部110が第1凹部510に係合するように、支持面401上に配置される。これにより、保持体500は、位置421に位置付けられる。このとき、第1突部110は、第1凹部510に嵌まり込み、保持体500の下面501は、支持面401により支持される。続いて、第2突部210は、第2溝412のY軸に沿う負側の端部に位置付けられる。
【0089】
図8(a)の状態から、第1突部110がX軸正方向に移動される。これにより、第1突部110が第1凹部510の壁を押し、保持体500がX軸の正方向に搬送される。このとき、保持体500が第2突部210の位置に差しかかると、第2突部210が、第2凹部520のX軸に沿う正側の端部から第2凹部520に入り込む。そして、第1突部110が第1溝411のX軸方向における中央位置まで移動すると、
図8(b)に示すように、一対の第2突部210が第2凹部520に嵌まり込んだ状態となる。こうして、保持体500は、位置422に位置付けられる。
【0090】
続いて、
図8(b)の状態から、第2突部210がY軸の正方向に移動される。これにより、第2突部210が第2凹部520の壁を押し、保持体500がY軸の正方向に搬送される。このとき、保持体500の移動に合わせて、第1突部110が、第1凹部510のY軸に沿う負側の端部から保持体500の外部へと抜き取られる。そして、第2突部210が第2溝412のY軸に沿う正側の端部側まで移動すると、
図9(a)に示すように、保持体500が、位置423に位置付けられる。
【0091】
続いて、
図9(a)の状態から、第2突部210がY軸の負方向に移動される。これにより、第2突部210が第2凹部520の壁を押し、保持体500がY軸の負方向に搬送される。このとき、保持体500が第1突部110の位置に差しかかると、第1突部110が、第1凹部510のY軸に沿う負側の端部から第1凹部510に入り込む。そして、第2突部210が第2溝412のY軸に沿う負側の端部まで移動すると、
図9(b)に示すように、一対の第1突部110が第1凹部510に嵌まり込んだ状態となる。こうして、保持体500は、位置422に再び位置付けられる。
【0092】
その後、第1突部110がX軸の負方向に移動される。これにより、第1突部110が第1凹部510の壁を押し、保持体500がX軸の負方向に搬送される。このとき、保持体500の移動に合わせて、第2突部210が第2凹部520のX軸に沿う正側の端部から保持体500の外部へと抜き取られる。そして、第1突部110が第1溝411のX軸に沿う負側の端部まで移動すると、保持体500が元の位置421に位置付けられる。なお、
図9(b)の状態から、第1突部110がX軸の正方向に移動されてもよい。この場合、第2突部210が第2凹部520のX軸に沿う負側の端部から保持体500の外部へと抜き取られる。そして、保持体500が、位置424に位置付けられる。
【0093】
以上のように、第1搬送部310が第1移動体100をX軸の正方向に搬送すると、第1凹部510と第1突部110との係合により、保持体500がX軸に沿う正方向の力を受ける。このとき、第2凹部520はX軸方向に延びているため、第2凹部520に係合する第2突部210は、第2凹部520に沿ってX軸に沿う方向に移動可能である。したがって、保持体500は、第1移動体100の移動により付与されたX軸に沿う正方向の力によってX軸の正方向に移動できる。
【0094】
また、第2搬送部320が第2移動体200をY軸の正方向に搬送すると、第2凹部520と第2突部210との係合により、保持体500がY軸に沿う正方向の力を受ける。このとき、第1凹部510はY軸方向に延びているため、第1凹部510に係合する第1突部110は、第1凹部510に沿ってY軸方向に移動可能である。したがって、保持体500は、第2移動体200の移動により付与されたY軸に沿う正方向の力によってY軸の正方向に移動できる。
【0095】
このように、試料搬送機構12によれば、第1凹部510および第1突部110の係合と、第2凹部520および第2突部210の係合とを用いた簡素な構成によって、試料を保持する保持体500をXY平面に沿って円滑に搬送できる。
【0096】
上記の試料搬送機構12と吸引管移動機構720とにより、自動吸引での動作時に、吸引管710は、保持体500に設置されたプレート600の全てのウェル601から試料を吸引することが可能となる。すなわち、吸引管移動機構720は、吸引管710を、ウェル601上で、X軸の方向へ、試料間のX軸に沿う列方向の間隔に対応する距離ずつ順送りするように移動させる。試料搬送機構12は、保持体500をY軸の方向へ、試料間のY軸に沿う行方向の間隔に対応する距離ずつ順送りするように移動させる。これにより、吸引管710は、全てのウェル601内の試料を吸引できる。
【0097】
(試料搬送機構の具体的構成)
次に、
図8(a)~
図9(b)に示した試料搬送機構12の構成を、さらに具体的に説明する。
図10に示すように、第1移動体100は、X軸方向に長い形状を有している。第1移動体100のX軸に沿う正側の端部付近およびX軸に沿う負側の端部付近には、それぞれ、一対の第1突部110が配置されている。
【0098】
第1搬送部310は、ベルト311と、2つのプーリ312と、モータ313と、留め具314と、を備える。ベルト311は、2つのプーリ312間に架けられている。2つのプーリ312は、所定の間隔をあけてX軸方向に並んで配置されている。一方のプーリ312は、モータ313の駆動軸に接続されている。モータ313は、ステッピングモータにより構成される。第1移動体100は、図示しないレールに支持されながらX軸方向に移動可能に構成される。第1移動体100は、留め具314によりベルト311に接続されている。
【0099】
同様に、第2搬送部320は、ベルト321と、2つのプーリ322と、モータ323と、留め具324と、を備える。ベルト321は、2つのプーリ322間に架けられている。2つのプーリ322は、所定の間隔をあけてY軸方向に並んで配置されている。一方のプーリ322は、モータ323の駆動軸に接続されている。モータ323は、ステッピングモータにより構成される。第2移動体200は、留め具324によりベルト321に接続されている。
【0100】
支持板400は、支持面401の周囲に、壁部431~435、441~445を備える。壁部431~433は、位置421に位置付けられた保持体500の3つの側面を囲んでいる。壁部433~435は、位置424に位置付けられた保持体500の3つの側面を囲んでいる。壁部441~443は、位置423に位置付けられた保持体500の3つの側面を囲んでいる。このように、位置421、423、424において保持体500が3つの壁部に囲まれることにより、支持面401上における保持体500が、確実に位置421、423、424に位置付けられる。
【0101】
位置423においては、壁部441、442により保持体500のX軸方向の位置が規定され、保持体500上に設置されたプレート600のウェル601の位置と吸引管710が試料を吸引する第1領域P1とがX-Y平面上で一致する。これにより、吸引管710による試料の吸引を適正に行うことができる。
【0102】
壁部444、445は、位置422と位置423の間に設けられている。壁部444と壁部445のX軸方向における間隔は、位置422から位置423に向かうに従って、保持体500のX軸方向の幅より大きい状態から、保持体500のX軸方向の幅とほぼ等しい状態へと変化する。これにより、保持体500が位置422から位置423に搬送される際に、保持体500のX軸方向の位置がずれていても、壁部444、445により保持体500のX軸方向の位置が徐々に位置423のX軸方向の位置に合わせられる。よって、保持体500を位置422から位置423へと円滑に移送できる。
【0103】
(試料処理装置の構成)
図11に示すように、試料処理装置30は、試料搬送機構12と、吸引管移動機構720と、制御部31と、吸引部32と、洗浄部33と、表示部34と、入力部35と、駆動部36と、センサ部37と、処理部38と、を備える。試料搬送機構12は試料搬送装置10内に配置されている。吸引管移動機構720と、制御部31と、吸引部32と、洗浄部33と、表示部34と、入力部35と、駆動部36と、センサ部37と、処理部38とは、処理装置20内に配置されている。処理装置20に別途、情報処理装置が接続されている場合、制御部31、表示部34、入力部35は情報処理装置に配置されていてもよい。
【0104】
制御部31は、データ処理の作業領域に使用するメモリと、プログラムおよび処理データを記録する記憶部と、所定のデータ処理を行うCPU(Central Processing Unit)と、制御部31に接続された各部との間でデータの入出力を行うインタフェース部とを含む。
【0105】
以下の説明においては、特に断らない限り、制御部31が行う処理は、実質的には制御部31のCPUが行う処理を意味する。CPUはメモリを作業領域として必要なデータ(処理途中の中間データ等)を一時記憶し、記憶部に長期保存するデータを適宜記録する。制御部31は、記憶部またはメモリに格納されたプログラムを実行することにより、制御部31に接続された各部を制御する。
【0106】
具体的には、制御部31は、入力部35が手動吸引の動作指示を受け付けると、吸引管710を現位置から第2領域P2へ移動するように吸引管移動機構720の動作を制御する。また、制御部31は試料搬送機構12の動作を制御する。さらに、制御部31は、自動吸引において、吸引管710が試料を吸引する前の試料の撹拌動作を制御する。また、制御部31は、第1領域P1において、保持体500上に複数行、複数列に配置された複数の試料の吸引動作を行う場合に、吸引管710をX軸方向に沿って直線状に並んだ複数の試料の間隔に対応する距離ずつ順送りするように吸引管移動機構720の動作を制御し、保持体500をY軸方向に沿って直線状に並んだ複数の試料の間隔に対応する距離ずつ順送りするように試料搬送機構12の動作を制御する。
【0107】
処理部38は、吸引部32により吸引された試料の測定、分析などの処理を行う。例えば、処理部38は、フローサイトメータなどの分析装置により構成されるが、吸引された試料に対してBEAMing法に基づく処理を行う試料処理装置であってもよく、さらにこれらの装置に限定されない。処理部38の例については後述する。
【0108】
表示部34と入力部35は、例えば、処理装置20の側面部分や上面部分などに配置される。表示部34は、例えば、液晶パネルなどにより構成される。入力部35は、例えば、ボタンやタッチパネルなどにより構成される。駆動部36は、試料処理装置30内に配された他の機構を含む。センサ部37は、試料処理装置30内に配された種々のセンサを含む。
【0109】
(自動吸引)
試料処理装置30による自動吸引の動作に先立ち、まず、ユーザは、試料をプレート600のウェル601に収容する。ユーザは、試料搬送装置10の蓋体11を、
図2の点線矢印に示すように開ける。保持体500は、設置位置である位置421に位置決めされている。ユーザは、保持体500上に試料を収容したプレート600を設置し、蓋体11を閉じる。なお、位置421、422の両方に保持体500が位置決めされていてもよい。
【0110】
以下、試料処理装置30による自動吸引の動作について、
図12、
図13のフローチャートを用いて説明する。本実施形態では、以下のST10からST27のステップが行われている間に、入力部35は手動吸引の動作指示を受け付けることが可能である。なお、入力部35に代えて、手動吸引の動作指示を受け付けるボタンが別途設けられていてもよい。
【0111】
以下、
図7(b)に示すようにX軸方向(列方向)に12個、Y軸方向(行方向)に8個、すなわち8行12列に形成されたウェル601の全てに吸引対象の試料が収容されている場合について説明する。なお、全てのウェル601に試料が収容されていなくてもよい。この場合に、例えばセンサ等が試料が収容されたウェル601を検知して、制御部31が予め定められた試料の吸引順序に従って、吸引管710及び保持体500を移動させてもよい。また、ユーザが入力部35から吸引対象の試料が収容されたウェル601を特定する情報を入力してもよい。
【0112】
ST10において、制御部31は、入力部35がユーザによる自動吸引の動作指示を受け付けたことを検知すると、ST11において、制御部31は、試料搬送機構12を制御して、保持体500を
図8(a)に示す設置位置421から、
図8(b)に示す位置422へ搬送し、さらに、
図9(a)に示す第1領域P1(位置423)まで搬送する。例えば、1行目に配置された試料を吸引する場合には、制御部31は、保持体500を吸引管710の第1領域P1に1行目のウェル601が重なる位置P1-m1まで搬送し、ST12において、制御部31は、保持体500の現在の位置P1-mmを記憶する。
【0113】
ST13において、制御部31は吸引管移動機構720を制御し、第1領域P1の吸引を行う試料の位置、例えば位置P1-n1に吸引管710を移動させる。
【0114】
ST14において、制御部31は、吸引管移動機構720を制御して吸引管710を移動停止位置761aから吸引位置761bへ降下させる。ST15において、制御部31は、吸引部32の第1ポンプ910及びモータ910aを制御して試料の撹拌動作を行う。ST16において、制御部31は、吸引部32の第1ポンプ910及びモータ910aを制御して、予め定められた一定量の試料を吸引管710に吸引させる吸引動作を行う。吸引動作が完了すると、ST17において、制御部31は、吸引管移動機構720を制御して吸引管710を吸引位置761bから移動停止位置761aへ上昇させる。ST18において、制御部31は、現在の吸引管710の位置、例えば位置P1-n1を記憶する。
【0115】
ST19において、制御部31は、吸引管移動機構720を制御して吸引管710を第3領域P3に移動させる。ST20において、制御部31は吸引管移動機構720を制御して吸引管710を移動停止位置763aから洗浄位置763bへ降下させる。ST21において、制御部31は、吸引部32の洗浄動作を行う。ST22において、制御部31は、吸引管移動機構720を制御して吸引管710を洗浄位置763bから移動停止位置763aへ上昇させる。
【0116】
ST23において、制御部31は、入力部35が手動吸引の動作指示を受け付けたか否かを判断する。手動吸引の動作指示を受け付けていない場合には、ST24に進み、受け付けている場合には、
図14に示す手動吸引に移行する。
【0117】
ST24では、制御部31は、吸引管710が所定の行のウェル601に収容された試料を全て吸引したか否かを判断する。本実施形態ではウェル601が1行に12個形成されているので、ST18で記憶した吸引管710の位置P1―nnが、12個目のウェル601に対応する位置P1-n12か否かを判断する。記憶した吸引管710の位置が、12個目のウェル601に対応する位置ではない場合には、ST27へ進み、ST27において、制御部31は、吸引管移動機構720を制御して、吸引管710を、第1領域P1であって、ST18で記憶した吸引管710の位置から試料の配列間隔に対応する距離だけX軸に沿って移動した位置、例えば、次の位置P1-n2へ吸引管710を移動させる。そして、制御部31は、吸引管710による1行目の12個全てのウェル601に収容された試料の吸引が完了するまで、ST14~ST24を繰り返す。なお、吸引管710により所定の行の全ての試料の吸引が完了したときは、制御部31は、吸引管710を最後に吸引した列の位置P1-nnに留め置き、次の行の吸引時には、吸引管710を位置P1-nnから逆方向に移動させるが、これに限らず、所定の行の全ての試料の吸引が完了した後には必ず位置P1-n1に移動させてもよい。
【0118】
1行目の試料全ての吸引が完了している場合には、ST25に進み、ウェル601の全ての行において試料が吸引されたか否かを判断する。本実施形態では、ウェル601がY軸方向に沿って8行形成されているので、ST12で記憶した保持体500の位置P1―mmが、8行目のウェル601に対応する位置P1-m8か否かを判断する。記憶した保持体500の位置が、8行目のウェル601に対応する位置である場合には、ウェル601に収容された全ての試料の吸引が完了していると判断し、自動吸引を終了する。記憶した保持体500の位置P1―mmが、8行目のウェル601に対応する位置でない場合には、ST26に進み、制御部31は、試料搬送機構12を制御して保持体500を試料の配列間隔に対応する距離だけY軸に沿って移動させ、例えば、次の位置P1-m2へ移動させる。そして、制御部31は、ウェル601の全ての行で試料の吸引が完了するまでST12~ST25を繰り返す。
【0119】
なお、ST23の入力部35が手動吸引の動作指示を受け付けたか否かの判断は、ST10からST13の間、ST24とST25の間、ST25からST14の間、ST24とST27の間、ST27とST14との間でも行ってもよい。これにより、自動吸引が行われている間に手動吸引の動作指示を受け付けた場合に、迅速に手動吸引に移行することができる。
【0120】
ウェル601に収容された全ての試料の吸引が完了すると、制御部31は、試料搬送機構12を制御して、保持体500を第1領域P1(位置423)から、設置位置421へ搬送する。ユーザは、蓋体11を開けて、設置位置421に戻った保持体500からプレート600を取り外す。
【0121】
(手動吸引)
図13のST23において、入力部35が手動吸引の動作指示を受け付けている場合、ST23から
図14のST30へ進む。手動吸引に際し、ユーザは筐体50の窪み部21に、試料が収容された試料容器Cを配置しておく。
【0122】
ST30において、制御部31は、吸引管移動機構720を制御して吸引管710を第2領域P2へ移動させる。ST31へ進む前に、制御部31は、図示しないセンサ等により試料容器Cが窪み部21に配置されているか否かを検知し、配置されていない場合は表示部34にエラーメッセージを表示させる動作を行ってもよい。また、ST31へ進む前に、制御部31は、入力部35または別途設けられた吸引開始ボタンから吸引開始指示を受け付けたかどうかを判断し、吸引開始指示を受け付けた場合に限り、ST31へ移行するようにしてもよい。
【0123】
ST31において、制御部31は、手動吸引を開始し、吸引管移動機構720を制御して吸引管710を移動停止位置761aから吸引位置761bへ降下させる。このとき、吸引管710の少なくとも先端部は、天板50Gの貫通孔50aを通過して筐体50から外に移動し、窪み部21に配置された試料容器Cに挿入される。
【0124】
ST32において、制御部31は、吸引部32を制御して吸引管710に予め定められた一定量の試料を吸引させる。なお、試料容器Cに収容された試料が少ないか、試料容器Cに収容された試料に吸引管710の先端部が届かないために、一定量の試料が吸引できない場合には、制御部31は、表示部34にエラーメッセージを表示させる動作を行ってもよい。ST33において、制御部31は、吸引管移動機構720を制御して吸引管710を吸引位置761bから移動停止位置761aへ上昇させる。これにより、吸引管710の先端部は筐体50の内部に退避する。
【0125】
ST34において、制御部31は、吸引管移動機構720を制御して吸引管710を第3領域P3に移動させる。ST35において、制御部31は、吸引管移動機構720を制御して吸引管710を移動停止位置763aから洗浄位置763bへ降下させる。ST36において、制御部31は、吸引部32の洗浄動作を行う。ST37において、制御部31は、吸引管移動機構720を制御して吸引管710を洗浄位置763bから移動停止位置763aへ上昇させる。これにより、手動吸引が完了する。制御部31は、手動吸引の完了後に、
図13のST24の自動吸引に復帰し、ST27において、吸引管710を第1領域P1の次の試料の吸引を行う位置へ移動するように吸引管移動機構720の動作を制御する。
【0126】
なお、手動吸引で吸引される試料が複数ある場合には、一つ目の試料の手動吸引が完了した後、自動吸引に復帰せず、第2領域P2に再度移動して次の試料の手動吸引を行ってもよい。この場合、入力部35において、手動吸引を行う試料の数を受け付け、制御部31は入力部35で受け付けた試料の数だけ手動吸引を繰り返す。全ての試料の手動吸引が完了した後、自動吸引に復帰する。
【0127】
図15は、手動吸引の他の態様を示すフローチャートであり、
図14のフローチャートのST37の後にST40が追加されたものである。入力部35は、ST30からST37のステップの動作が行われている間に、自動吸引の動作指示を受け付けることが可能である。ST40において、制御部31は、入力部35が自動吸引の動作指示を受け付けているか否かを判断する。自動吸引の動作指示を受け付けている場合には、
図13のST24の自動吸引に復帰する。受け付けていない場合には、吸引管710は第2領域P2に留まり、自動吸引の動作指示が受け付けられるのを待つ。
【0128】
図16は、手動吸引の他の態様を示すフローチャートであり、
図14のフローチャートのST30の後にST41が追加され、さらにST37の後にST42が追加されたものである。ST30において、吸引管710が第2領域P2に移動した後、ST41において、制御部31はタイマーによる計時動作を開始させ、手動吸引の開始からの経過時間を計測する。次いで、ST31からST37のステップが行われた後、ST42において、制御部31は、計測した経過時間が予め制御部31に記憶された所定時間を経過しているか否かを判断する。所定時間を経過している場合には、
図13のST24の自動吸引に復帰する。所定時間を経過していない場合には、所定時間が経過するのを待ち、吸引管710は第2領域P2に留まる。なお、ST41はST30の前に追加してもよい。
【0129】
なお、手動吸引のさらに他の態様として、
図14のフローチャートのST30の後にST41が追加され、ST37の後にST40、ST42が追加されたものであってもよい。入力部35は、ST30、ST41、ST31からST37のステップが行われている間に、自動吸引の動作指示を受け付けることが可能である。ST40において、制御部31は、入力部35が自動吸引の動作指示を受け付けているか否かを判断する。受け付けていない場合には、自動吸引の動作指示が受け付けられるのを待つ。受け付けた場合には、ST42へ進み、制御部31は、計測した経過時間が予め制御部31に記憶された所定時間が経過しているか否かを判断する。所定時間が経過している場合には、
図13のST24の自動吸引に復帰する。所定時間が経過していない場合には、所定時間が経過するのを待ち、吸引管710は第2領域P2に留まる。なお、ST42の後にST40を行ってもよい。
【0130】
また、本実施形態では、試料処理装置30の自動吸引中に入力部35が手動吸引の動作指示を受け付けた例を示したが、試料処理装置30が自動吸引を行っていない停止中に手動吸引の動作指示を受け付けてもよい。この場合、制御部31は、
図14のST30からST37の動作を行う。
【0131】
また、本実施形態では、第3領域P3に洗浄槽40を備えており、制御部31は、吸引管移動機構720を制御して吸引管710を洗浄動作のための第3領域P3に移動させているが、第3領域P3に洗浄槽40を備えていなくてもよい。この場合、制御部31は、吸引管710を第3領域P3に移動させることはなく、吸引管710の洗浄動作は行われない。すなわち、
図12のST19からST22、
図14のST34からST37はスキップされる。
【0132】
(試料処理方法)
第2の実施形態としての試料処理方法は、試料を吸引する吸引管710と、吸引した試料を処理する処理部38とを備える試料処理装置により試料を処理する方法であり、壁構成部材に覆われた第1領域1において吸引管710により試料の自動吸引を行う工程と、第1領域から分離された第2領域に吸引管710を移動させ、第2領域P2において吸引管710により試料の手動吸引を行う工程と、を備える。
【0133】
(処理部)
図11に示す処理部38は、例えばフローサイトメータであり、以下、フローサイトメータを用いた例について、
図17、
図18を用いて説明する。
【0134】
図17はフローサイトメータの流体系の一例を示す模式図である。吸引部32からフローサイトメータに送られた試料は、チャンバー848に送られ、必要に応じて試料搬送試薬と混合される。以下、試料を含み、チャンバー848からセル830に送られる液を粒子含有液という。
【0135】
測定工程においては、バルブ846、847が開かれ、チャンバー848から粒子含有液が吸引装置849の負圧により吸引される。バルブ846とノズル831間の経路が粒子含有液で満たされると、バルブ846、847が閉じられる。次に、バルブ850が開かれると、シース液を収容したシース液チャンバー842からシース液が圧力装置843の圧力によりセル830へ送出され、廃液チャンバー845に排出される。
【0136】
次に、バルブ841が開かれると、圧力装置843からの圧力Pは定量シリンジ844を介してノズル831の先端へも伝達され、ノズル831の先端においてノズル831の外部のシース液の圧力とノズル831の内部の粒子含有液の圧力とが平衡する。従って、この状態で定量シリンジ844のピストン844bがモータ844aにより吐出方向に駆動されると、バルブ846とノズル831間に存在する粒子含有液はノズル831から容易に吐出され、シース液によって細く絞られて試料液となってセル830を通過し、廃液チャンバー845へ排出される。この期間に粒子含有液に含まれる試料中の粒子の光学的測定が行われる。そして、定量シリンジ844のピストン844bの駆動が終了すると、測定工程を終了する。
【0137】
次に、ノズル831、セル830等の洗浄が行われる。洗浄工程においては、モータ844aが逆転してピストン844bが吸引方向に引き戻され、定量シリンジ844は初期状態に復帰する。バルブ41、50は開かれているので、シース液チャンバー842からシース液が圧力装置843から印加される圧力Pによって送出され、バルブ841と定量シリンジ844とノズル831とを介して廃液チャンバー845へ排出されると共に、バルブ850とセル830とを介して廃液チャンバー845に排出され、所定時間後にバルブ841、850が閉じられる。これによって、定量シリンジ844、ノズル831、セル830およびその経路がシース液により洗浄される。なお、バルブ857は廃液チャンバー845から廃液を排出するバルブであり、必要に応じて開閉される。圧力装置843、モータ844a、吸引装置849、バルブ841、846、847、850、857等は信号処理部と接続されており、信号処理部によって動作が制御される。
【0138】
図18は、フローサイトメータの光学系の一例を示す模式図である。フローサイトメータは、粒子含有液を受け入れるセル830と、セル830を通過する粒子に光を照射する光源801、824と、粒子に由来する光の光学的情報を検出して電気信号に変換された検出信号を出力する受光素子800A~800Fとを備える。
【0139】
粒子含有液に含まれる粒子は、所定の光を照射された際に1又は2以上の光を発することが好ましい。所定の光を照射された際に粒子から発せられる光を、粒子に由来する光と総称する。前記粒子に由来する光には散乱光及び発光などが含まれる。粒子に由来する光は、どのような波長の光であってもよいが、400nm~850nmの範囲にピーク波長を有する光であることが好ましい。より具体的には、前記粒子に由来する光は蛍光であることが好ましい。前記粒子に由来する光は、粒子に含まれる物質自体が発する光であってもよい。あるいは、前記粒子に由来する光は、粒子を蛍光色素などの発光物質で標識し、この発光物質が発する光を粒子に由来する光として検出してもよい。また、粒子に由来する光は、抗原毎にピーク波長が異なることが好ましい。本実施態様においては、粒子に由来する蛍光は、検査試薬に含まれる各抗体に標識されている蛍光色素に由来する。
【0140】
光学的情報とは、粒子から発せられる1又は2以上の光波長スペクトルに含まれる情報である。光波長スペクトルにはその光波長スペクトルに含まれる個々の光波長、光波長領域、及びそのそれぞれの光波長、又は光波長領域の強さが含まれる。個々の光波長、及び波長領域は、後述する1または2以上の受光素子のいずれが受光したかによって特定することができる。また、それぞれの光波長、又は光波長領域の強さは、受光した前記受光素子が出力する電気信号によって特定することができる。
【0141】
以下、粒子に由来する光が散乱光及び蛍光である場合を例として具体的に説明する。光源801から出射された光は、コリメートレンズ802、ダイクロイックミラー803、集光レンズ804を経てセル830に照射される。セル830を通過する粒子に由来する光の前方散乱光は、集光レンズ805により集光され、ビームストッパー806、ピンホール板807、バンドパスフィルタ808を経て受光素子800Aに入射する。
【0142】
一方、セル830を通過する粒子に由来する光の側方散乱光及び側方蛍光は、集光レンズ809により集光される。側方散乱光は、ダイクロイックミラー810、811、812、ピンホール板803、バンドパスフィルタ814を経て受光素子800Bに入射する。波長が520nm以上、542nm以下の側方蛍光は、ダイクロイックミラー810、811を透過してダイクロイックミラー812で反射され、ピンホール板815、バンドパスフィルタ816を経て受光素子800Cに入射する。また、波長が570nm以上、620nm以下の側方蛍光は、ダイクロイックミラー810を透過してダイクロイックミラー811で反射され、ピンホール板817、バンドパスフィルタ818を経て受光素子800Dに入射する。さらに波長が670nm以上、800nm以下の側方蛍光は、ダイクロイックミラー810で反射され、ダイクロイックミラー819を透過してピンホール板820、バンドパスフィルタ821を経て受光素子800Eに入射する。
【0143】
光源824から出射された光は、コリメートレンズ825、ダイクロイックミラー803、集光レンズ804を経てセル830に照射される。セル830を通過する粒子に由来する光の側方蛍光は、集光レンズ809により集光される。662.5nm以上、687.5nm以下の側方蛍光はダイクロイックミラー810で反射され、ダイクロイックミラー819で反射された後、ピンホール板822、バンドパスフィルタ823を経て受光素子800Fに入射する。
【0144】
図18に示す一例では、光源801には488nmの波長のレーザダイオードを用い、光源824には642nmの波長のレーザダイオードを用いている。セル830にはシースフローセルを用いている。前方散乱光を受光する受光素子800Aにはフォトダイオードを用い、側方散乱光を受光する受光素子800Bにはアバランシェフォトダイオード(avalanche photodiode、APD)を用いている。側方蛍光を受光する受光素子800C~800Fにはフォトマルチプライアチューブ(Photo Multiplier Tube、PMT)を用いている。
【0145】
このように、
図18に示すフローサイトメータでは、側方蛍光を受光する受光素子800C~800Fの数は4個である。したがって、この例に示すフローサイトメータは、蛍光検出用の4個の受光素子を備え、合計4色の蛍光を同時に測定することができる。
【0146】
各受光素子800A~800Fから出力されるそれぞれの検出信号は、増幅回路(図示せず)において増幅され、A/D変換器(図示せず)においてA/D変換されてデジタルデータ化される。デジタルデータ化された検出信号は、信号処理部(図示せず)に送信され、粒子の分析が行われる。増幅回路は、例えばオペアンプ等から構成される既知の増幅回路である。
【0147】
光源は、1つであっても2つ以上であってもよい。光源は、粒子に由来する光の波長領域に応じて選択される。光源が2以上である場合には、これらの光源は異なるピーク波長を有する光を発することが好ましい。
【0148】
フォトダイオード、ダイクロイックミラー、及びバンドパスフィルタの数は、粒子に由来する光のピーク波長の数に応じて変更することができる。また、フォトダイオード、ダイクロイックミラー、及びバンドパスフィルタの種類も、粒子に由来する光のピーク波長、又は波長領域、及びその強さに応じて選択することができる。
【0149】
信号処理部は、受光素子800A~800Fが散乱光や蛍光を検出する際の検出感度に関する情報、検出された蛍光の組み合わせに応じた蛍光補正に関する情報、及び検出される粒子の分布領域を選択するためのゲーティングに関する情報をユーザから入力部35を介して受け付け、これらの情報に基づいて適切な光学的情報を取得できるように光源801、824等を制御する。なお、フローサイトメータの信号処理部は、制御部31に含まれていてもよいが、制御部31とは別に設けられてもよい。
【0150】
また、処理部38は、プレート600のウェル601に収容させる試料に対して、BEAMing(Bead, Emulsion, Amplification, and Magnetics)法に基づいて前処理を行う処理装置を備えてもよい。この処理装置が行うBEAMing法に基づく前処理には、例えば、DNA抽出処理、希釈処理、エマルジョン作製処理、PCR処理、エマルジョン破壊処理、ハイブリダイゼーション処理、洗浄処理、等を含む。
【0151】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0152】
12 試料搬送機構
30 試料処理装置
31 制御部
35 入力部
50 筐体
421 設置位置
710 吸引管
720 吸引管移動機構
P1 第1領域
P2 第2領域
P3 第3領域