(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】フィルタ装置、およびフィルタ装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 36/00 20060101AFI20220825BHJP
B01D 35/30 20060101ALI20220825BHJP
F02M 37/24 20190101ALI20220825BHJP
【FI】
B01D36/00
B01D35/30
F02M37/24
(21)【出願番号】P 2021507336
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2020011402
(87)【国際公開番号】W WO2020189618
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2019052934
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000161840
【氏名又は名称】京三電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(74)【代理人】
【識別番号】100170689
【氏名又は名称】金 順姫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇文
(72)【発明者】
【氏名】安喰 敏明
(72)【発明者】
【氏名】米本 敏幸
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/008327(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/110542(WO,A1)
【文献】特開2018-112141(JP,A)
【文献】特開2016-053329(JP,A)
【文献】特開平05-261211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/00-37/04
F02M 37/00-37/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の通路(10)を提供するケース(2)と、
前記ケースの中に収容され、流体を濾過するためのエレメント(6)と、
前記ケースの中に収容され、流体から水分を分離させるための水分離器(7)と、
前記エレメントと前記水分離器との間において流体の通路を形成するとともに、前記エレメントと前記水分離器とを分離可能に連結するための通路連結部材(51、52)と、
前記ケースに対して前記水分離器を可動範囲において移動可能としながら、前記ケースに対して前記水分離器を保持するための保持部材(16、B16、L16、M16)とを備
え、
前記ケースは、径方向(RD)における可動距離(MV6)だけ前記エレメントを移動可能に支持する支持部材(3、4)を備え、
前記径方向における前記水分離器の可動距離(MV7)は、前記エレメントの前記可動距離(MV6)より大きく(MV6<MV7)設定されているフィルタ装置。
【請求項2】
前記保持部材は、前記水分離器と接触することにより、前記水分離器の中心軸(AX7)を前記ケースの中心軸(AX4)に向けて案内する位置決め面(17、B17、N17、N46、o17、o46)を有している
請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
流体の通路(10)を提供するケース(2)と、
前記ケースの中に収容され、流体を濾過するためのエレメント(6)と、
前記ケースの中に収容され、流体から水分を分離させるための水分離器(7)と、
前記エレメントと前記水分離器との間において流体の通路を形成するとともに、前記エレメントと前記水分離器とを分離可能に連結するための通路連結部材(51、52)と、
前記ケースに対して前記水分離器を可動範囲において移動可能としながら、前記ケースに対して前記水分離器を保持するための保持部材(16、B16、L16、M16)とを備
え、
前記保持部材は、前記水分離器と接触することにより、前記水分離器の中心軸(AX7)を前記ケースの中心軸(AX4)に向けて案内する位置決め面(17、B17、N17、N46、o17、o46)を有しているフィルタ装置。
【請求項4】
前記位置決め面(17、B17、N17、N46、o17、o46)は、前記ケースの中心軸(AX4)を回転軸とする斜面または曲面である
請求項2または請求項3に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記通路連結部材は、
前記エレメントおよび前記水分離器のいずれか一方に設けられたエンドパイプ(55)、および、他方に設けられたセンタボア(56)と、
前記エレメントと前記水分離器との間に設けられた結合部材とを備え、
前記エンドパイプは、前記センタボアに挿入されることにより、前記エレメントと前記水分離器とを径方向(RD)に関して噛み合わせており、
前記結合部材は、前記エレメントと前記水分離器とを周方向(CD)に関して互いに連動するように結合しており、
前記エレメントと前記水分離器とは、軸方向(AD)において、直接的に、または、間接的に、接触することにより、前記エレメントにより前記水分離器を押さえている請求項1から請求項4のいずれかに記載のフィルタ装置。
【請求項6】
流体の通路(10)を提供するケース(2)を形成する第1ケース(3)および第2ケース(4)を準備する工程と、
前記ケース内に収容可能であって、流体を濾過するためのエレメント(6)を準備する工程と、
前記ケース内に収容可能であって、流体から水分を分離させるための水分離器(7)を準備する工程と、
前記第2ケースに対して前記水分離器を保持させる保持工程と、
前記エレメントと前記水分離器との間において流体の通路を形成するように、前記エレメントと前記水分離器とを分離可能に連結する連結工程と、
可動範囲において、前記第2ケースに対して前記水分離器を移動させる移動工程と、
前記第1ケースと前記第2ケースとを連結し、前記ケースを閉じる閉じ工程とを備
え、
前記移動工程において、前記水分離器は、前記ケースが提供する位置決め面(17、B17、N17、N46、o17、o46)に沿って滑るように移動するフィルタ装置の製造方法。
【請求項7】
前記連結工程は、前記エレメントに設けられた通路連結部材(51)と前記水分離器に設けられた通路連結部材(52)とを接触させる工程であり、
前記移動工程は、2つの前記通路連結部材を接触させながら、前記水分離器を移動させる工程である請求項6に記載のフィルタ装置の製造方法。
【請求項8】
前記連結工程は、
エンドパイプ(55)をセンタボア(56)に挿入し、前記エレメントと前記水分離器とを径方向(RD)に関して噛み合わせる工程と、
前記エレメントと前記水分離器とを周方向(CD)に関して噛み合わせる工程と、
前記エレメントと前記水分離器とを軸方向(AD)において、直接的に、または、間接的に、接触させ、前記エレメントにより前記水分離器を押さえる工程とを含む
請求項6または請求項7に記載のフィルタ装置の製造方法。
【請求項9】
前記移動工程は、前記水分離器の中心軸(AX7)を前記ケースの中心軸(AX4)に向けて移動させる工程を含む請求項6から
請求項8のいずれかに記載のフィルタ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2019年3月20日に日本に出願された特許出願第2019-52934号を基礎としており、基礎の出願の内容を、全体的に、参照により援用している。
【技術分野】
【0002】
この明細書における開示は、フィルタ装置、およびフィルタ装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1および特許文献2は、水分離器と、固体除去用のエレメントとを備えるフィルタ装置を開示する。先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/110542号パンフレット
【文献】国際公開第2018/008327号パンフレット
【発明の概要】
【0005】
水分離器と固体除去用のエレメントは、多くの場合一体になっているため、同時に交換されている。上述の観点において、または言及されていない他の観点において、フィルタ装置、およびフィルタ装置の製造方法にはさらなる改良が求められている。
【0006】
開示されるひとつの目的は、異なる交換周期に対応可能なフィルタ装置、およびフィルタ装置の製造方法を提供することである。
【0007】
開示される他のひとつの目的は、水分離器を残して、固体除去用のエレメントを交換可能なフィルタ装置、およびフィルタ装置の製造方法を提供することである。
【0008】
開示されるさらに他のひとつの目的は、誤差を許容するフィルタ装置、およびフィルタ装置の製造方法を提供することである。
【0009】
ここに開示されたフィルタ装置は、流体の通路を提供するケースと、ケースの中に収容され、流体を濾過するためのエレメントと、ケースの中に収容され、流体から水分を分離させるための水分離器と、エレメントと水分離器との間において流体の通路を形成するとともに、エレメントと水分離器とを分離可能に連結するための通路連結部材と、ケースに対して水分離器を可動範囲において移動可能としながら、ケースに対して水分離器を保持するための保持部材とを備え、ケースは、径方向(RD)における可動距離(MV6)だけエレメントを移動可能に支持する支持部材(3、4)を備え、径方向における水分離器の可動距離(MV7)は、エレメントの可動距離(MV6)より大きく(MV6<MV7)設定されている。
ここに開示されたフィルタ装置は、流体の通路(10)を提供するケース(2)と、ケースの中に収容され、流体を濾過するためのエレメント(6)と、ケースの中に収容され、流体から水分を分離させるための水分離器(7)と、エレメントと水分離器との間において流体の通路を形成するとともに、エレメントと水分離器とを分離可能に連結するための通路連結部材(51、52)と、ケースに対して水分離器を可動範囲において移動可能としながら、ケースに対して水分離器を保持するための保持部材(16、B16、L16、M16)とを備え、保持部材は、水分離器と接触することにより、水分離器の中心軸(AX7)をケースの中心軸(AX4)に向けて案内する位置決め面(17、B17、N17、N46、o17、o46)を有している。
【0010】
開示されるフィルタ装置によると、水分離器は、ケースに保持される。エレメントと水分離器とは、通路連結部材によって分離可能に連結されている。水分離器は、ケースに対して可動範囲において移動可能である。よって、可動範囲において水分離器の移動を許容しながら、通路連結部材は、流体の通路を形成することができる。この結果、エレメントの交換が可能となる。
【0011】
ここに開示されたフィルタ装置の製造方法は、流体の通路を提供するケースを形成する第1ケースおよび第2ケースを準備する工程と、ケース内に収容可能であって、流体を濾過するためのエレメントを準備する工程と、ケース内に収容可能であって、流体から水分を分離させるための水分離器を準備する工程と、第2ケースに対して水分離器を保持させる保持工程と、エレメントと水分離器との間において流体の通路を形成するように、エレメントと水分離器とを分離可能に連結する連結工程と、可動範囲において、第2ケースに対して水分離器を移動させる移動工程と、第1ケースと第2ケースとを連結し、ケースを閉じる閉じ工程とを備え、移動工程において、水分離器は、ケースが提供する位置決め面(17、B17、N17、N46、o17、o46)に沿って滑るように移動する。
【0012】
開示されるフィルタ装置の製造方法によると、水分離器は、ケースに保持される。エレメントと水分離器とは、分離可能に連結される。水分離器は、ケースに対して可動範囲において移動する。よって、可動範囲において水分離器の移動を許容しながら、流体の通路を形成することができる。この結果、エレメントの交換が可能となる。
【0013】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態のフィルタ装置を示す断面図である。
【
図11】第2実施形態の通路連結機構を示す拡大断面図である。
【
図12】第3実施形態の通路連結機構を示す拡大断面図である。
【
図13】第4実施形態の通路連結機構を示す拡大断面図である。
【
図14】第5実施形態の通路連結機構を示す拡大断面図である。
【
図16】水分離器における接触線を示す拡大断面図である。
【
図17】第6実施形態の通路連結機構を示す拡大断面図である。
【
図18】第7実施形態の通路連結機構を示す拡大断面図である。
【
図19】第8実施形態の通路連結機構を示す拡大断面図である。
【
図20】第9実施形態の通路連結機構を示す拡大断面図である。
【
図21】第10実施形態の通路連結機構を示す拡大断面図である。
【
図22】第11実施形態のフィルタ装置を示す断面図である。
【
図23】第12実施形態のフィルタ装置を示す断面図である。
【
図24】第13実施形態のフィルタ装置を示す部分断面図である。
【
図25】第14実施形態のフィルタ装置を示す部分断面図である。
【
図26】第15実施形態のフィルタ装置を示す部分断面図である。
【
図27】第16実施形態のフィルタ装置を示す部分断面図である。
【
図28】第17実施形態のフィルタ装置を示す部分断面図である。
【
図29】第18実施形態のフィルタ装置を示す部分断面図である。
【
図30】第19実施形態のフィルタ装置を示す部分断面図である。
【
図31】第20実施形態のフィルタ装置を示す部分断面図である。
【
図32】第21実施形態のフィルタ装置を示す部分断面図である。
【
図33】第22実施形態のフィルタ装置を示す部分断面図である。
【
図34】第23実施形態のフィルタ装置を示す部分断面図である。
【
図35】第24実施形態のフィルタ装置を示す部分断面図である。
【
図36】第25実施形態のフィルタ装置を示す部分断面図である。
【
図37】第26実施形態のフィルタ装置を示す部分断面図である。
【
図38】第27実施形態のフィルタ装置を示す部分断面図である。
【
図39】
図38のXXXIX-XXXIX線における断面図である。
【
図40】第28実施形態の嵌合部を示す断面図である。
【
図41】第29実施形態の嵌合部を示す断面図である。
【
図42】第30実施形態のフィルタ装置を示す部分断面図である。
【
図43】第31実施形態のフィルタ装置を示す部分断面図である。
【
図44】第32実施形態のフィルタ装置を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
複数の実施形態が、図面を参照しながら説明される。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0016】
第1実施形態
図1において、フィルタ装置1は、流体を濾過することにより、流体に含まれる異物を除去する。フィルタ装置1は、異物としての水分と、異物としての固形微粒子とを除去する。濾過対象の流体は、燃料、水、オイル、空気など多様な液体、または気体である。
【0017】
この実施形態では、流体は、燃料である。フィルタ装置1は、燃料消費装置に供給される燃料を濾過する燃料フィルタ装置を提供する。フィルタ装置1は、燃料タンクから燃料消費装置へ燃料を供給する燃料供給装置が提供する通路10に設けられている。典型的な例において、燃料消費装置は、ディーゼル機関、またはガソリン機関を含む内燃機関である。フィルタ装置1は、燃料消費装置、または燃料消費装置を搭載する機器に装着されている。機器は、車両、船舶、航空機、アミューズメント機器、シミュレーション機器などを含む。機器は、移動型機器、定置型機器を含む。典型的な例において、フィルタ装置1は、車両のボディに固定されている。典型的な例において、燃料は、ディーゼル燃料、またはガソリンを含む液体燃料である。多くの場合、ディーゼル燃料は、水分を含む。フィルタ装置1は、固形微粒子を捕捉して分離する。さらに、フィルタ装置1は、微小な水分を捕捉して凝集させ分離する。
【0018】
フィルタ装置1は、中心軸AXを有する。フィルタ装置1は、重力によって燃料と水とを分離するために、軸方向ADを上下方向に一致させて固定されている。フィルタ装置1の多くの部品は、中心軸AXを対称軸とする回転体として形成されている。以下の説明に置いて、径方向RDおよび周方向CDは、中心軸AXに対して規定されている。
【0019】
フィルタ装置1は、ケース2を備える。ケース2は、流体の通路10を提供する。ケース2は、第1ケース3と、第2ケース4とを備える。第1ケース3は、車両のボディに固定された固定部を提供する。第1ケース3は、キャップとも呼ばれる。第1ケース3は、固定状態においてアッパケースを提供する。第1ケース3は、入口通路11、入口ギャラリ13、および出口通路12を区画している。第2ケース4は、カップとも呼ばれる。第2ケース4は、上部が開口した有底容器である。第2ケース4は、第1ケース3に対して着脱可能に構成されている。第2ケース4は、ロアケースを提供する。第2ケース4は、作業者によって操作可能に構成されている。
【0020】
第1ケース3と、第2ケース4との間には、連結機構5が形成されている。連結機構5は、第1ケース3と、第2ケース4とを分離可能に連結している。連結機構5は、ネジ機構によって提供されている。連結機構5は、バヨネットロック機構、ボルトナット式の締め付け機構、リテーナ式の締め付け機構によって提供されてもよい。
【0021】
フィルタ装置1は、固体除去用のエレメント6を備える。エレメント6は、ケース2の中に収容されている。エレメント6は、流体を濾過する。エレメント6は、燃料から微小な異物を除去する濾過体を備える。エレメント6は、ケース2を開くことにより交換可能である。
【0022】
フィルタ装置1は、水分離用の水分離器7を備える。水分離器7は、コアレッサとも呼ばれる。水分離器7は、流体から水分を分離させる。水分離器7は、エレメント6の濾過エレメントよりも粗い濾過エレメントを備える。この結果、水分離器7の交換周期は、エレメント6の交換周期より長い。
【0023】
フィルタ装置1は、水レベルセンサ8を備える。水レベルセンサ8は、ケース2内に貯留された水の液面を検出する。水レベルセンサ8は、例えば、水位が所定の閾値THを超えると検出信号を出力する。閾値THは、許容貯水量を示す。検出信号は、使用者または作業者に対して排水操作を指示する。検出信号は、例えば、警告ランプ、または自動排水弁を駆動する。
【0024】
フィルタ装置1は、排水弁9を備える。排水弁9は、ケース2の下部から、ケース2内の液体を排出する。多くの場合、排水弁9は水を排出するために操作される。
【0025】
図2において、第2ケース4は、内部に容積室4aを区画している。入口ギャラリ13および容積室4aは、エレメント6と水分離器7とを収容する。第2ケース4は、開口端にエレメント6の軸方向ADにおける位置を規定する位置決め面4bを有する。位置決め面4bは、第2ケース4の開口端によって提供されている。位置決め面4bは、第2ケース4内に形成された段部によって提供されていてもよい。第1ケース3は、内部にエレメント6の径方向RDにおける位置を規定する位置決め面4cを有する。位置決め面4cは、円筒面によって提供されている。位置決め面4cは、後述するフランジ24と接触することにより、エレメント6の径方向RDにおける可動範囲を規定する。
【0026】
連結機構5は、第1ケース3の内面に形成された雌ネジ面5aを備える。連結機構5は、第2ケース4の開口端部の外面に形成された雄ネジ面5bを備える。雌ネジ面5aと、雄ネジ面5bとは、第1ケース3と第2ケース4とが相対的に周方向CDへ操作されることによって、締め付けられ、または緩められる。
【0027】
第2ケース4は、カップ状のボディ15を有する。ボディ15は、容積室4aを区画している。第2ケース4は、内部に複数のリブ16を有する。複数のリブ16は、第2ケース4に水分離器7を保持する保持部材を提供している。保持部材は、ケース2に対して水分離器7を可動範囲において移動可能としながら、ケース2に対して水分離器7を保持する。この結果、水分離器7は、エレメント6を交換する場合においても、第2ケース4に保持され続ける。
【0028】
複数のリブ16は、複数の位置決め面17を有する。複数のリブ16は、それらの内側に、仮想の曲面を区画している。仮想の曲面は、内曲面でもある。複数の位置決め面17は、仮想の曲面の一部を提供している。曲面は、半径R17を有している。仮想の曲面は、中心軸AXを対称軸とする軸対称の曲面である。仮想の曲面は、水分離器7に向けて凹状の曲面である。複数の位置決め面17は、軸方向ADにおける水分離器7の可動範囲の下端を規定している。水分離器7は、上から下に押されるから、複数の位置決め面17は、水分離器7の規定の位置を規定している。エレメント6と水分離器7とは、軸方向ADにおいて、直接的に接触している。これにより、エレメント6により水分離器7を直接的に押さえている。
【0029】
複数の位置決め面17は、底面17aから側面17bにわたって滑らかに延びている。底面17aは、径方向RDに対して平行な面である。側面17bは、軸方向ADに対して平行な面である。この実施形態における複数の位置決め面17は、底面17aと側面17bとの両方を含む。これに代えて、複数の位置決め面17は、底面17a、側面17b、または、底面17aおよび側面17bの両方を備えない形状でもよい。複数の位置決め面17は、曲面だけを備えていてもよい。底面17aは、水分離器7が傾斜した場合に、軸方向ADにおける可動範囲の下端を規定している。側面17bは、水分離器7の径方向RDにおける可動範囲の端部を規定している。
【0030】
複数の位置決め面17は、水分離器7と接触可能である。複数の位置決め面17は、その上を水分離器7が滑らかに滑動することを許容する。複数の位置決め面17は、水分離器7の軸方向ADにおける位置を規定する。複数の位置決め面17は、水分離器7の下端位置を規定する。複数の位置決め面17は、水分離器7の径方向RDにおける位置を規定する。複数の位置決め面17は、水分離器7の外側位置を規定する。
【0031】
水分離器7が上から下へ押される場合、水分離器7は、複数の位置決め面17に沿って滑るように移動する。この結果、複数の位置決め面17は、水分離器7を中心軸AXへ案内する調芯機能を提供する。この観点から、複数の位置決め面17は、調芯面とも呼ばれる。
【0032】
複数のリブ16は、複数の保持片18を有する。複数の保持片18は、第2ケース4に対して水分離器7を保持する。言い換えると、複数の保持片18は、第2ケース4からの水分離器7の分離を阻止する阻止部材でもある。複数の保持片18は、軸方向ADにおける水分離器7の可動範囲の上端を規定する。
【0033】
複数の位置決め面17と、複数の保持片18とを含む複数のリブ16は、水分離器7を規定の可動範囲に位置付けている。可動範囲は、複数のリブ16によって区画されている。水分離器7は、可動範囲の中において移動可能である。水分離器7は、可動範囲において、少なくとも径方向RDへ移動可能である。水分離器7は、可動範囲において、少なくとも軸方向ADへ移動可能である。この実施形態では、水分離器7は、可動範囲において、径方向RDと軸方向ADとの両方へ移動可能である。
【0034】
図3において、複数のリブ16は、周方向CDに関して等間隔に配置されている。複数のリブ16は、第2ケース4内に不等間隔に配置されていてもよい。複数のリブ16は、4本以上のリブを含むことができる。
【0035】
図1および
図2に戻り、エレメント6は、フレーム21と、濾過体22とを有する。フレーム21は、樹脂製である。濾過体22は、燃料を軸方向ADに流す軸方向流型である。濾過体22は、菊花型など燃料を径方向RDに流す径方向流型でもよい。フレーム21は、濾過対象としての液体の入口と出口とを提供するセンタブロック23を備える。センタブロック23は、第1ケース3に接触することにより、ダーティサイドと、クリーンサイドとを区画するシール部材を備える。シール部材は、ゴム製のリップシールによって提供することができる。フレーム21は、フランジ24を有する。フランジ24は、位置決め面4bに当接することにより、エレメント6の軸方向ADにおける位置を規定する。フレーム21は、センタパイプ25を有する。センタパイプ25は、センタブロック23から、エレメント6の下端にまで延びている。センタパイプ25は、エレメント6の下端に到達するセンタ通路26を提供する。センタ通路26は、燃料通路の一部を提供する。さらに、フレーム21は、濾過体22から流出した流体を出口通路12に導く出口ギャラリ27を区画している。この結果、フレーム21は、ダーティサイドとしての入口ギャラリ13と、クリーンサイドとしての出口ギャラリ27とを区画している。
【0036】
水分離器7は、フレーム41と、凝集体42とを有する。フレーム41は、樹脂製である。フレーム41は、凝集体42を支持する。フレーム41は、アッパプレート43と、ロアプレート44と、センタパイプ45とを有する。アッパプレート43およびロアプレート44は、複数のリブ16と接触可能な部材である。凝集体42は、水の微粒子を捕捉し、水滴への成長を促す。
【0037】
アッパプレート43およびロアプレート44は、複数のリブ16と干渉することにより、水分離器7の可動範囲を規定している。特に、ロアプレート44は、複数のリブ16と接触可能な縁部46を有する。縁部46は、複数の位置決め面17の上に接触しながら移動可能である。縁部46は、曲面によって形成されている。曲面は、半径R46を有している。半径R46は、半径R17より小さい(R46<R17)。半径R46は、半径R17より明らかに小さい(R46<<R17)。この結果、縁部46は、複数の位置決め面17の上を滑らかに移動することができる。
【0038】
エレメント6と水分離器7とは、通路連結機構50によって連結可能に構成されている。言い換えると、エレメント6と水分離器7とは、通路連結機構50によって分離可能に構成されている。通路連結機構50は、少なくとも軸方向ADにおける、エレメント6と水分離器7との噛み合いを提供する。軸方向ADにおける噛み合いは、エレメント6によって、軸方向ADに向けて、水分離器7を複数のリブ16に押しつける。これにより、水分離器7が軸方向ADに関して固定される。通路連結機構50は、少なくとも径方向RDにおける、エレメント6と水分離器7との噛み合いを提供する。径方向RDにおける噛み合いは、エレメント6によって、水分離器7を径方向RDの規定の位置に位置づける。これにより、水分離器7が径方向RDに関して固定される。さらに、通路連結機構50は、少なくとも周方向CDにおける、エレメント6と水分離器7との噛み合いを提供する。周方向CDにおける噛み合いは、エレメント6によって、水分離器7を周方向CDの規定の位置に位置づける。これにより、水分離器7が周方向CDに関して固定される。
【0039】
図2において、通路連結機構50は、通路連結部材51と、通路連結部材52とを備える。2つの通路連結部材51、52は、エレメント6と水分離器7との間において流体の通路を形成する。2つの通路連結部材51、52は、エレメント6と水分離器7とを分離可能に連結する。通路連結部材51と通路連結部材52とは、互いに噛み合うことにより、エンドパイプ55と水分離器7内とを連通する燃料の通路を形成する。通路連結部材51と通路連結部材52とは、燃料の漏洩を抑制するシール性を提供する。シール性は、燃料が凝集体42を通過するように設定されている。シール性は、完全である必要はない。通路連結部材51は、エレメント6に設けられている。通路連結部材52は、水分離器7に設けられている。
【0040】
通路連結部材51は、主として軸方向ADにおける噛み合いを提供するフランジ53を有する。フランジ53は、中心軸AXに対して直交している。フランジ53は、径方向RDに広がっている。アッパプレート43とフランジ53とは、軸方向ADに関して接触して、または微小隙間を形成して対向することにより軸方向シール部材を提供する。軸方向シール部材は、径方向RDに関してエレメント6および水分離器7に誤差があっても、比較的安定したシール性能を提供する。
【0041】
通路連結部材51は、少なくともひとつのキー突起54を有する。通路連結部材51は、等間隔、または不等間隔に配置された複数のキー突起54を有する。キー突起54は、フランジ53とエンドパイプ55との間に形成されている。キー突起54は、周方向CDに面する面を提供する。
【0042】
通路連結部材51は、エンドパイプ55を有する。エンドパイプ55は、センタパイプ25の延長上に位置づけられている。エンドパイプ55は、燃料通路の一部を提供する。エンドパイプ55は、主として径方向RDにおける噛み合いを提供する。
【0043】
通路連結部材52は、センタパイプ45が提供するセンタボア56を有する。センタボア56は、エンドパイプ55を受け入れ可能である。言い換えると、エンドパイプ55は、センタボア56の中に挿入可能である。
【0044】
通路連結部材52は、少なくともひとつのキー溝57を有する。通路連結部材52は、等間隔、または不等間隔に配置された複数のキー溝57を有する。キー溝57は、周方向CDに面する面を提供する。キー溝57は、キー突起54を受け入れ可能である。言い換えると、キー突起54は、キー溝57に挿入可能である。キー溝57は、アッパプレート43とセンタパイプ45との角部に形成されている。キー突起54とキー溝57とは、互いに噛み合うことにより、主として周方向CDにおける、エレメント6と水分離器7との噛み合いを提供する。キー突起54とキー溝57とは、結合部材を提供する。結合部材は、エレメント6と水分離器7とを周方向CDに関して互いに連動するように結合している。
【0045】
図4において、通路連結部材52は、キー溝57に隣接して形成された斜面58を有する。斜面58は、軸方向ADに面している。斜面58は、軸方向ADにおける深さが、周方向CDに沿って徐々に増減している。斜面58は、周方向CDに沿って傾斜している。斜面58は、キー突起54とキー溝57との噛み合いを補助する。エレメント6と水分離器7とが相対的に周方向CDに回転させられると、キー突起54は、斜面58の上を滑るように移動する。この結果、斜面58は、周方向CDにおけるキー突起54とキー溝57との噛み合い位置の探索を補助する。
【0046】
図1に戻り、濾過される燃料の流れが矢印によって図示されている。燃料は、入口通路11に供給される。燃料は、入口通路11から入口ギャラリ13に流入する。燃料は、入口ギャラリ13から、センタブロック23に開口するセンタ通路26に流入する。燃料は、センタ通路26を通り、水分離器7に流入する。燃料に含まれる微小な水分は、凝集体42によって捕捉される。凝集体42は、水分を捕捉し、蓄積することで、水滴に成長させる。さらに、凝集体42は、成長した水滴を、燃料の流れの中に再び放出する。放出された水滴は、容積室4aの中において、重力によって燃料から分離される。水滴は、容積室4aの中において沈降し、容積室4aの下部に溜まる。燃料は、容積室4aから、濾過体22に流入する。燃料は、濾過体22によって濾過される。濾過体22は、燃料に含まれる固体粒子を除去する。濾過体22を通過した燃料は、出口ギャラリ27に流出する。燃料は、出口ギャラリ27から、センタブロック23を通り、出口通路12に流入する。燃料は、出口通路12から流出する。
【0047】
フィルタ装置の製造方法における複数の工程は、エレメントの交換方法における複数の工程の一部でもある。エレメントの交換方法においては、フィルタ装置の製造方法における複数の工程が実行される。エレメントの交換方法は、フィルタ装置の再製造方法でもある。フィルタ装置の製造方法が最初のフィルタ装置の製造段階において実行される場合、水分離器とエレメントとの異なる交換周期を提供可能なフィルタ装置が製造される。別の観点では、水分離器を残して、エレメントを交換可能なフィルタ装置が製造される。さらに別の観点では、水分離器とエレメントとの誤差を許容するフィルタ装置が製造される。フィルタ装置の製造方法が、エレメントの交換方法において実行される場合、水分離器とエレメントとの異なる交換周期を提供可能なフィルタ装置が再び製造される。別の観点では、水分離器を残して、エレメントを交換可能なフィルタ装置が再び製造される。さらに別の観点では、水分離器とエレメントとの誤差を許容するフィルタ装置が再び製造される。
【0048】
フィルタ装置の製造方法は、第1ケース3、第2ケース4、エレメント6、および水分離器7のそれぞれを準備する複数の工程を有する。フィルタ装置の製造方法は、第2ケース4に水分離器7を装着する工程を有する。この工程は、第2ケース4に対して水分離器7を保持させる保持工程を提供する。この工程では、複数のリブ16によって区画される可動範囲に、水分離器7が位置づけられる。複数の保持片18は、塑性域および/または弾性域における変形によって水分離器7を可動範囲に受け入れる。これに代えて、複数の保持片18は、水分離器7を可動範囲に受け入れた後に形成されてもよい。これに代えて、水分離器7と複数の保持片18は、周方向CDに関して水分離器7を特定位置に位置づけた場合にのみ、水分離器7を可動範囲に受け入れるように構成されてもよい。水分離器7は、例えば、特定位置においてのみ、複数の保持片18と噛み合う凹凸部分を有することができる。
【0049】
フィルタ装置の製造方法は、通路連結部材51と通路連結部材52とを連結する連結工程を有する。連結工程は、エレメント6に設けられた通路連結部材51と水分離器7に設けられた通路連結部材52とを接触させる工程である。連結工程は、第2ケースアセンブリに、エレメント6を挿し込む工程を有する。第2ケースアセンブリは、第2ケース4と、水分離器7とを含む。この工程では、通路連結機構50によってエレメント6と水分離器7とが通路を形成するように連結される。この工程では、エレメント6と水分離器7とは、分離可能に連結される。さらに、エレメント6と水分離器7とが規定の位置に位置付けられてもよい。
【0050】
連結工程は、エンドパイプ55をセンタボア56に挿入し、エレメント6と水分離器7とを径方向RDに関して噛み合わせる径方向噛み合い工程を含む。連結工程は、キー突起54をキー溝57に挿入し、エレメント6と水分離器7とを周方向CDに関して噛み合わせる周方向噛み合い工程を含む。さらに、連結工程は、エレメント6と水分離器7とを軸方向ADに接触させ、エレメント6により水分離器7を押さえる軸方向押圧工程を含む。軸方向押圧工程は、フランジ53を水分離器7に押し付ける。
【0051】
フィルタ装置の製造方法は、可動範囲において、第2ケース4に対して水分離器7を移動させる移動工程を有する。移動工程は、2つの通路連結部材51、52を接触させながら、水分離器7を移動させる工程である。水分離器7は、第2ケース4に対して、可動範囲において移動可能である。このため、通路連結機構50を連結させる作業において、エレメント6を装着する作業が改善される。移動工程において、水分離器7は、ケース2が提供する位置決め面17に沿って滑るように移動する。
【0052】
移動工程を備えることにより、エレメント6、および/または、水分離器7の径方向RDにおけるずれが許容される。別の観点では、エレメント6、および/または、水分離器7の傾斜が許容される。
【0053】
移動工程において、複数の位置決め面17は、水分離器7と接触することにより、水分離器7を中心軸AXに向けて案内する。言い換えると、位置決め面17は、調芯機能を提供する。さらに、キー突起54とキー溝57との噛み合いは、水分離器7の回転を可能として、調芯作用を促進する。
【0054】
フィルタ装置の製造方法は、第1ケース3と第2ケース4とを連結し、ケース2を閉じる閉じ工程を有する。この工程では、第1ケース3と第2ケース4とを連結機構5によって連結する。この工程では、ケース2内にエレメント6と水分離器7とを収容するように第1ケース3と第2ケース4とが連結される。この工程では、軸方向ADおよび径方向RDの両方に関して、エレメント6と水分離器7とが規定の位置に位置づけられる。この工程においても、水分離器7が可動範囲において移動可能であるため、第1ケース3と第2ケース4とを連結する作業が改善される。
【0055】
図5は、第2ケースアセンブリに、エレメント6を挿し込む工程の一例を示す。第2ケース4の中心軸AX4に対して、エレメント6の中心軸AX6が傾斜している場合が例示されている。水分離器7は、可動範囲において移動可能である。このため、中心軸AX6の傾斜にもかかわらず、工程の初期段階において、エンドパイプ55をセンタボア56に挿入することができる。工程の中期段階においては、軸方向ADに沿って、エレメント6をさらに深く押し込むことができる。この過程において、水分離器7は、可動範囲内を移動し、中心軸AX6が中心軸AX4に一致することを許容する。しかも、複数のリブ16が提供する調芯機能は、水分離器7の中心軸AX7を、中心軸AX4に一致させる。よって、移動工程は、水分離器7の中心軸AX7を第2ケース4の中心軸AX4に向けて移動させる工程を含む。
【0056】
図6は、第2ケースアセンブリに、エレメント6を挿し込む工程の一例を示す。第2ケース4の中心軸AX4に対して、水分離器7の中心軸AX7が傾斜している場合が例示されている。この場合も、水分離器7は、可動範囲において移動可能である。このため、中心軸AX7の傾斜にもかかわらず、工程の初期段階において、エンドパイプ55をセンタボア56に挿入することができる。工程の中期段階においては、軸方向ADに沿って、エレメント6をさらに深く押し込むことができる。この過程において、水分離器7は、可動範囲内を移動し、中心軸AX6が中心軸AX4に一致することを許容する。しかも、複数のリブ16が提供する調芯機能は、水分離器7の中心軸AX7を、中心軸AX4に一致させる。ここでも、移動工程は、水分離器7の中心軸AX7を第2ケース4の中心軸AX4に向けて移動させる工程を含む。
【0057】
図7は、第2ケースアセンブリに、エレメント6を挿し込む工程の一例を示す。第2ケース4の中心軸AX4に対して、水分離器7の中心軸AX7が傾斜している場合が例示されている。工程の中期から終期の段階において、キー突起54がキー溝57に噛み合うと、エレメント6に加えられた回転RTが、水分離器7に伝達される。水分離器7の回転は、水分離器7が位置決め面17に沿って滑るように移動することを助長する。この結果、軸方向ADに沿って、エレメント6をさらに深く押し込むことができる。
【0058】
図8は、第1ケース3と第2ケース4とを連結する工程の一例を示す。第1ケース3と第2ケース4との間に相対的な回転RTが加えられている場合が例示されている。この場合も、キー突起54がキー溝57に噛み合うと、回転RTがエレメント6を経由して水分離器7に伝達される。この結果、軸方向ADに沿って、エレメント6をさらに深く押し込むことができる。
【0059】
図9において、第1ケース3と第2ケース4とが完全に連結された状態が図示されている。エレメント6は、第1ケース3と、第2ケース4との間に保持されている。エレメント6の軸方向ADにおける位置は、位置決め面4bによって規定されている。通路連結機構50は、軸方向ADに関して、水分離器7を押さえつけている。この結果、水分離器7は、通路連結機構50と複数のリブ16との間に保持されている。しかも、位置決め面17の曲面によって水分離器7が調芯されるから、水分離器7を中心軸AXに配置することができる。
【0060】
図10において、フランジ53は、エンドパイプ55より径方向外側に向けて広く延びだしている。フランジ53は、直径D53の円形板である。フランジ53は、アッパプレート43に接触している。エレメント6は、フランジ53を介して水分離器7を下方に向けて押し付けている。これにより、エレメント6と水分離器7との間において必要なシール性が提供されている。エンドパイプ55とセンタボア56とは、容易な挿入を可能とするために比較的大きい隙間を有している。キー突起54とキー溝57とは、容易な挿入を可能とするために比較的大きい隙間を有している。
【0061】
図9に戻り、エレメント6は、ケース2内において、径方向RDに関して中心軸AXから可動距離MV6だけ移動可能である。可動距離MV6は、径方向RDにおける誤差範囲でもある。第1ケース3および第2ケース4は、エレメント6を支持する支持部材でもある。よって、ケース2は、径方向RDにおける可動距離MV6だけエレメント6を移動可能に支持する支持部材を備える。
【0062】
水分離器7は、径方向RDに関して中心軸AXから可動距離MV7だけ移動可能である。可動距離MV7は、径方向RDにおける誤差範囲でもある。可動距離MV6は、可動距離MV7より小さく設定されている(MV6<MV7)。望ましい実施形態においては、可動距離MV6は、可動距離MV7の1/2より小さく設定されている(MV6<1/2・MV7)。
【0063】
このような設定は、エンドパイプ55をセンタボア56に挿入する初期作業を容易に実行することを可能とする。さらに、エンドパイプ55をセンタボア56の奥に挿し込む作業を可能とする。よって、作業の誤差が許容される。加えて、水分離器7の誤差範囲は、ケース2を閉じた状態において、通路連結機構50においてシール機能の形成を可能とする。エレメント6および水分離器7の寸法誤差があっても、通路連結機構50においてシール機能が得られる。この実施形態でも、エレメント6および水分離器7の異なる交換周期に対応可能なフィルタ装置、およびフィルタ装置の製造方法が提供される。
【0064】
この実施形態において、図示は、説明される要素をやや誇張して描かれている。この実施形態における要素のさらに詳細な説明として、必要に応じて、国際公開第2017/110542号パンフレット、および/または国際公開第2018/008327号パンフレットの記載を参照により導入することができる。
【0065】
以上に述べた実施形態によると、エレメント6と水分離器7との異なる交換周期に対応可能なフィルタ装置、およびフィルタ装置の製造方法を提供することができる。しかも、水分離器7を残して、固体除去用のエレメント6を交換可能なフィルタ装置、およびフィルタ装置の製造方法を提供することができる。しかも、軸方向AD、および/または径方向RDに関する誤差が許容される。
【0066】
この実施形態では、水分離器7は、複数のリブ16によって可動範囲の中に保持されている。このため、誤差を許容しながら、エレメント6と水分離器7との通路連結を実現可能である。しかも、水分離器7は、中心軸AXに向けて自動的に調節される。このため、誤差を許容しながら、水分離器7を規定の位置に保持することができる。
【0067】
第2実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、エンドパイプ55とセンタボア56との間には、比較的大きい隙間が形成されている。これに代えて、この実施形態では、径方向RDの隙間にシール要素が付加されている。シール要素は、圧力損失要素によって提供されている。この実施形態の形状は、この明細書に開示される他の実施形態においても利用可能である。
【0068】
図11において、エンドパイプ55は、圧力損失要素としての環状溝258を有する。エンドパイプ55は、複数の環状溝258を有する。環状溝258は、矩形の断面形状を提供する。
【0069】
複数の環状溝258は、エンドパイプ55の根本部分にのみ形成されている。複数の環状溝258は、エンドパイプ55の先端部には形成されていない。これにより、エンドパイプ55をセンタボア56に挿入する工程における干渉が抑制される。
【0070】
環状溝258は、流路面積の変化を与えることにより、圧力損失を発生させる。環状溝258は、径方向シール部材を提供する。しかも、環状溝258は、非接触型の径方向シール部材を提供している。環状溝258は、エレメント6と水分離器7との間におけるシール性を高める。圧力損失要素としての環状溝は、センタボア56に設けられてもよい。
【0071】
第3実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態の形状は、この明細書に開示される他の実施形態においても利用可能である。
図12において、エンドパイプ55は、環状溝358を有する。環状溝358は、傾斜面をもつ断面形状を提供する。傾斜面は、エンドパイプ55の径方向外側、かつ、エンドパイプ55の軸方向先端側を指向する面である。傾斜面は、エンドパイプ55をセンタボア56に挿入する工程における干渉を抑制する。
【0072】
第4実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、通路連結部材51は、直径D53をもつフランジ53を備える。これに代えて、この実施形態では、軸方向ADの隙間にシール要素が付加されている。シール要素は、物理的な接触によりシール機能を提供する。シール要素は、より広い接触面積によって提供されている。この実施形態の形状は、この明細書に開示される他の実施形態においても利用可能である。
【0073】
図13において、通路連結部材51は、フランジ453を有する。フランジ453は、直径D453を有する。直径D453は、直径D53より大きい(D53<D453)。フランジ453は、広い面積により、シール性を高める。直径D453は、センタボア56の直径よりも、アッパプレート43の直径に近い。直径D453は、センタボア56の直径よりも、凝集体42の直径に近い。フランジ453は、径方向の隙間にフランジ453はアッパプレート43と干渉することにより、中心軸AX6と中心軸AX7との相対的な傾斜を抑制する。
【0074】
第5実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、フランジ53、453とアッパプレート43とが接触している。これに加えて、この実施形態では、軸方向ADの隙間にシール要素が付加されている。シール要素は、物理的な接触によりシール機能を提供する。この実施形態の形状は、この明細書に開示される他の実施形態においても利用可能である。
【0075】
図14において、フランジ53は、環状のシール部材561を備える。シール部材561は、シール要素を提供する。シール部材561は、複数のキー突起54より径方向外側に位置している。シール部材561は、フランジ53から突出する突起である。シール部材561は、連続する樹脂材料によって、フランジ53と一体的に形成されている。シール部材561は、フランジ53とは別体の部材によって提供されてもよい。シール部材561は、例えば、別体のOリング、リップシール部材などによって提供することができる。シール部材561は、アッパプレート43との接触によって、弾性的に変形している。さらに、シール部材561は、アッパプレート43との接触によって、塑性的にも変形している。
【0076】
図15において、変形前の部材562が図示されている。部材562は、アッパプレート43との接触により変形し、シール機能を発揮する。
【0077】
図16は、シール部材561とアッパプレート43との接触線563を示す。シール部材561は、接触線563に沿って水分離器7と接触している。これにより、エレメント6と水分離器7との間において高いシール性が提供される。シール部材561は、軸方向シール部材を提供する。しかも、シール部材561は、接触型の軸方向シール部材を提供している。
【0078】
第6実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、環状溝258、358により、径方向RDの隙間にシール要素が付加されている。これに代えて、この実施形態では、軸方向ADの隙間にシール要素が付加されている。シール要素は、圧力損失要素によって提供されている。この実施形態の形状は、この明細書に開示される他の実施形態においても利用可能である。
【0079】
図17において、アッパプレート43は、圧力損失要素としての環状溝664を有する。アッパプレート43は、複数の環状溝664を有する。環状溝664は、矩形の断面形状を提供する。環状溝664は、流路面積の変化を与えることにより、圧力損失を発生させる。環状溝664は、エレメント6と水分離器7との間におけるシール性を高める。圧力損失要素としての環状溝は、フランジ53に設けられてもよい。
【0080】
第7実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、環状溝664により、軸方向ADの隙間にシール要素が付加されている。これに代えて、この実施形態では、互いに噛み合う溝と突起により、圧力損失要素が提供されている。この実施形態の形状は、この明細書に開示される他の実施形態においても利用可能である。
【0081】
図18において、アッパプレート43は環状溝765を有する。フランジ53は、環状突起766を有する。一組の環状溝765と環状突起766とは、互いに噛み合う。環状溝765と、環状突起766との間には、微小な隙間が形成されている。環状溝765と環状突起766とは、流路面積の変化を与えることにより、圧力損失を発生させる。環状溝765と環状突起766とは、エレメント6と水分離器7との間におけるシール性を高める。圧力損失要素としての環状溝は、フランジ53に設けられてもよい。この実施形態に代えて、アッパプレート43が環状突起766を有し、フランジ53が環状溝765を有していてもよい。また、複数の環状溝765と複数の環状突起766とにより複数の組を形成してもよい。
【0082】
第8実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、フランジ53、453により、軸方向ADの隙間にシール要素が付加されている。これに代えて、この実施形態では、弾力的な接触を提供する傘状のフランジによりシール要素が提供されている。この実施形態の形状は、この明細書に開示される他の実施形態においても利用可能である。
【0083】
図19において、通路連結部材51は、フランジ53に代えて、傘型フランジ867を備える。傘型フランジ867は、弾力的にアッパプレート43に接触する。
【0084】
第9実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態では、径方向RDの隙間にシール要素が付加されている。シール要素は、物理的な接触によりシール機能を提供する。この実施形態の形状は、この明細書に開示される他の実施形態においても利用可能である。
【0085】
図20において、エンドパイプ55とセンタボア56との間には、シール部材968が配置されている。シール部材968は、エンドパイプ55に支持されている。シール部材968は、エンドパイプ55とセンタボア56とに弾力的に接触する。シール部材968は、径方向シール部材を提供する。しかも、シール部材968は、接触型の径方向シール部材を提供している。
【0086】
第10実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、センタボア56は、軸方向ADに沿って直管状である。これに加えて、この実施形態では、センタボア56は、その上部に、拡大部を備える。この実施形態の形状は、この明細書に開示される他の実施形態においても利用可能である。
【0087】
図21において、センタボア56は、直管部A69を有する。直管部A69は、軸方向ADに沿って真っ直ぐである。さらに、センタボア56は、拡大部A71を有する。拡大部A71は、軸方向ADの外側に向けて徐々に大きくなる径をもつ。拡大部A71は、直線的に拡大するテーパ面によって提供されている。拡大部A71は、曲面でもよい。この結果、センタボア56は、直管部A69において直径D1を有する。センタボア56は、アッパプレート43において直径D2を有する。直径D2は、直径D1より大きい(D1<D2)。センタボア56は、エンドパイプ55の挿入を容易にする。
【0088】
第11実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、複数のリブ16は、仮想の内曲面を区画している。これに代えて、仮想の外曲面を利用してもよい。この実施形態の形状は、この明細書に開示される他の実施形態においても利用可能である。
【0089】
図22において、ボディ15は、複数のリブB16を有する。複数のリブB16は、複数の位置決め面B17を有する。複数のリブB16は、それらの外側に、仮想の曲面を区画している。仮想の曲面は、外曲面でもある。複数の位置決め面B17は、仮想の曲面の一部を提供している。曲面は、半径R17を有している。仮想の曲面は、中心軸AXを対称軸とする軸対称の曲面である。仮想の曲面は、水分離器7に向けて凸状の曲面である。複数のリブB16は、複数の保持片B18を備える。複数の保持片B18は、水分離器7を第2ケース4に保持している。水分離器7は、ロアプレート44の径方向内側に縁部B46を有する。縁部B46は、複数の位置決め面B17に接触可能である。
【0090】
この実施形態でも、複数のリブB16は、水分離器7を可動範囲に位置付けている。水分離器7は、可動範囲の中において移動可能である。位置決め面B17は、軸方向ADにおける水分離器7の可動範囲の下端を規定している。保持片B18は、軸方向ADにおける水分離器7の可動範囲の上端を規定している。位置決め面B17は、径方向RDにおける水分離器7の可動範囲の端部を規定している。さらに、仮想の外曲面は、調芯機能を提供する。この実施形態でも、水分離器7は、軸方向AD、および/または径方向RDへ移動可能である。よって、誤差を許容することができる。
【0091】
第12実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、仮想の内曲面または仮想の外曲面によって調芯機能が提供される。これに代えて、調芯機能を持たない構成も可能である。この実施形態の形状は、この明細書に開示される他の実施形態においても利用可能である。
【0092】
図23において、複数のリブ16は、仮想の円柱面を区画する複数の位置決め面C17を有する。複数のリブ16は、曲面を区画しない。この実施形態でも、複数のリブ16は、可動範囲を区画している。位置決め面C17の底面は、軸方向ADにおける水分離器7の可動範囲の下端を規定している。保持片18は、軸方向ADにおける水分離器7の可動範囲の上端を規定している。位置決め面C17の側面は、径方向RDにおける水分離器7の可動範囲の端部を規定している。よって、水分離器7は、軸方向AD、および/または、径方向RDに移動可能である。ただし、曲面に起因する調芯機能は得られない。この実施形態でも、可動距離MV6と、可動距離MV7とが提供されている。
【0093】
第13実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。フィルタ装置1は、多様な形状によって提供可能である。多様な形状は、例えば、エレメント6の交換に際して、利用者に対して、正当な製造者による正規品を選択し、使用することを奨励する。正規品は、円滑な交換作業を可能とし、正常な性能を提供できるのに対し、非正規品は、困難な交換作業を要求し、性能の低下を生じる可能性があるからである。このような観点から、フィルタ装置1は、先行する実施形態、および、後続の実施形態における多様な形状によって提供されることが望ましい場合がある。この明細書は、ひとつの観点では、エレメント6の多様な形状を提案する。この明細書は、他の観点では、水分離器7の多様な形状を提案する。多様な形状に起因して、市場において、正規品のエレメント6、および、正規品の水分離器7が選択され、使用されることが期待される。
【0094】
図24において、この実施形態では、エレメント6と水分離器7とは、それらの間において流体の通路を形成する通路連結部材51、52を備える。通路連結部材51、52は、エレメント6と水分離器7とを分離可能に連結する。保持部材16は、ケース2に対して水分離器7を可動範囲において移動可能としながら、ケース2に対して水分離器7を保持する。
【0095】
エレメント6はセンタボア56を備え、水分離器7はエンドパイプ55を備えている。エレメント6および水分離器7は、キー突起54、および、キー溝57を備えている。エンドパイプ55は、センタボア56に挿入されることにより、エレメント6と水分離器7とを径方向RDに関して噛み合わせている。キー突起54は、キー溝57に挿入されることにより、エレメント6と水分離器7とを周方向CDに関して噛み合わせている。エレメント6と水分離器7とは、軸方向ADに接触することにより、エレメント6により水分離器7を押さえている。
【0096】
第14実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。
図25において、この実施形態では、エレメント6はエンドパイプ55を備え、水分離器7はセンタボア56を備えている。弾性部材E68は、エレメント6と水分離器7との間に配置されている。弾性部材E68は、軸方向ADに関して圧縮された圧縮コイルバネである。弾性部材E68は、金属バネ、樹脂バネ、板バネ、ゴムなど多様な弾性材料によって提供することができる。弾性部材E68は、エレメント6、または水分離器7に連結されている。この実施形態では、エレメント6と水分離器7とは、軸方向ADにおいて、弾性部材E68を介して、間接的に接触している。弾性部材E68は、エレメント6から水分離器7への安定した押し付け力を可能としている。この実施形態でも、エレメント6により、弾性部材E68を介して、水分離器7を押さえている。
【0097】
第15実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。
図26において、この実施形態では、エレメント6と水分離器7とは、ネジ機構F68によって連結されている。ネジ機構F68は、雄ネジ面と、雌ネジ面とによって提供されている。ネジ機構F68は、締め込まれることにより、エレメント6と水分離器7とを周方向CDに関して噛み合わせている。ネジ機構F68は、結合部材を提供している。この結果、エンドパイプ55が、センタボア56に挿入される過程において、および、ネジ機構F68が締め込まれる過程において、水分離器7は正規の位置に向けて調節される。
【0098】
第16実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。
図27において、この実施形態では、エレメント6と水分離器7とは、スナップフィット機構G68によって連結されている。スナップフィット機構G68は、凹部と、凸部との、弾性変形を伴う嵌め合いによって提供されている。スナップフィット機構G68は、凹部または凸部を弾性変形させることにより、分離状態から連結状態への嵌め合い操作と、連結状態から分離状態への解放操作とが可能である。スナップフィット機構G68は、連結状態において、エレメント6と水分離器7とを周方向CDに関して噛み合わせている。スナップフィット機構G68は、結合部材を提供している。この結果、エンドパイプ55が、センタボア56に挿入される過程において、および、スナップフィット機構G68が嵌め合い操作される過程において、水分離器7は正規の位置に向けて調節される。
【0099】
第17実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。
図28において、この実施形態では、エレメント6と水分離器7とは、シール部材H68による摩擦力によって連結されている。シール部材H68は、エンドパイプ55の円筒面と、センタボア56の円筒面とに接触するシールリップを備えるリップシール部材である。シール部材H68は、円筒面に強く押し付けられている。シール部材H68は、摩擦力によって、エレメント6と水分離器7とを周方向CDに関して連結している。シール部材H68は、結合部材を提供している。この結果、エンドパイプ55が、センタボア56に挿入される過程において、および、シール部材H68が押し付けられる過程において、水分離器7は正規の位置に向けて調節される。
【0100】
第18実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。
図29において、この実施形態では、エレメント6と水分離器7とは、圧入片I68による摩擦力によって連結されている。圧入片I68は、エンドパイプ55の外周円筒面に一体成形されている。圧入片I68は、センタボア56の円筒面に接触することにより、摩擦力を生じる。圧入片I68は、円筒面に強く押し付けられている。圧入片I68は、摩擦力によって、エレメント6と水分離器7とを周方向CDに関して連結している。圧入片I68は、結合部材を提供している。この結果、エンドパイプ55が、センタボア56に挿入される過程において、および、圧入片I68が押し付けられる過程において、水分離器7は正規の位置に向けて調節される。
【0101】
第19実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。
図30において、この実施形態では、エレメント6と水分離器7とは、一対の磁性片J68a、J68bによる磁気的吸引力によって連結されている。磁性片J68a、J68bは、エレメント6と、水分離器7との間に設けられている。磁性片J68a、J68bは、永久磁石と永久磁石、または、永久磁石と鉄などの強磁性部材によって提供することができる。磁性片J68a、J68bは、周方向CDにおける所定位置だけで、エレメント6と水分離器7とを磁気的に結合するように配置されている。磁性片J68a、J68bは、エレメント6と水分離器7とを周方向CDに関して連結している。磁性片J68a、J68bは、結合部材を提供している。この結果、エンドパイプ55が、センタボア56に挿入される過程において、および、磁性片J68a、J68bは、磁気的に吸い付け合う過程において、水分離器7は正規の位置に向けて調節される。
【0102】
第20実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、保持片18、B18が、水分離器7を第2ケース4に保持している。これに代えて、この実施形態では、保持片K18が採用されている。
図31において、保持片K18は、ロアプレート44の外縁を係止している。この結果、保持片K18は、水分離器7をケース2(第2ケース4)に保持している。
【0103】
第21実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、保持部材16、B16が、水分離器7を第2ケース4に保持している。これに代えて、この実施形態では、保持部材L16が採用されている。
図32において、保持部材L16は、ネジ機構L47によって提供されている。ネジ機構L47は、水分離器7をケース2に保持している。ネジ機構L47は、比較的大きい遊びを有している。この遊びは、ケース2に対して水分離器7を可動範囲において移動可能としている。ネジ機構L47は、ケース2に設けられた雄ネジ部材と、水分離器7に設けられた雌ネジ部材とを含む。
【0104】
第22実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、ネジ機構L47は、ケース2に設けられた雄ネジ部材と、水分離器7に設けられた雌ネジ部材とを含む。これに代えて、この実施形態では、
図33に図示されるように、保持部材L16は、ケース2に設けられた雌ネジ部材と、水分離器7に設けられた雄ネジ部材とを含む。
【0105】
第23実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、保持部材16、B16、L16が、水分離器7を第2ケース4に保持している。これに代えて、この実施形態では、ユニバーサルジョイントM16が採用されている。
図34において、ユニバーサルジョイントM16は、水分離器7をケース4に保持している。ユニバーサルジョイントM16は、ケース4に設けられたボールN17と、水分離器7に設けられたカバーN46とを含む。カバーN46は、ボールN17を包み込む壁部を提供している。ボールN17の外面における曲面と、カバーN46の内面における曲面とは、位置決め面を提供している。ボールN17は、保持片18を兼ねている。ユニバーサルジョイントM16は、保持部材を提供している。
【0106】
第24実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、ユニバーサルジョイントM16は、ケース4に設けられたボールN17と、水分離器7に設けられたカバーN46とを含む。これに代えて、この実施形態では、
図35に図示されるように、ユニバーサルジョイントM16は、水分離器7に設けられたボールo17と、ケース4に設けられたカバーo46とを含む。カバーo46は、ボールo17を包み込む壁部を提供している。ボールo17の外面における曲面と、カバーo46の内面における曲面とは、位置決め面を提供している。
【0107】
第25実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、水分離器7は、ケース4に対して回転可能に保持されている。これに代えて、水分離器7は、周方向CDにおける所定位置において、ケース4と噛み合ってもよい。
図36に図示されるように、水分離器7は、ケース4の中に保持されている。ケース4は、複数のリブ16を有している。3つのリブ16は、例えば、90度-90度-180度の角度間隔で設けられている。水分離器7は、縁部46に、複数の溝P48を有する。3つの溝P48は、例えば、90度-90度-180度の角度間隔で設けられている。複数のリブ16と、複数の溝P48とは、互いに対応する角度間隔で設けられている。この結果、複数のリブ16と、複数の溝P48とは、周方向CDにおける所定位置のみにおいて噛み合う。この結果、ケース4に適合する水分離器7が、複数のリブ16と、複数の溝P48とによって特定される。この実施形態によると、複数のリブ16に適合する正規品の水分離器7が選択され、使用されることが期待される。
【0108】
第26実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、3つのリブ16と、3つの溝P48とは、90度-90度-180度の角度間隔で設けられている。これに代えて、複数のリブ16と、複数の溝とは、多様な位置に配置することができる。
図37において、3つのリブ16は、例えば、45度-180度-135度の角度間隔で設けられている。3つの溝Q48は、例えば、45度-180度-135度の角度間隔で設けられている。すべての間隔は、等しくない。この実施形態でも、複数のリブ16に適合する正規品の水分離器7が選択され、使用されることが期待される。
【0109】
第27実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、第1ケース3の内面にエレメント6のセンタブロック23が当接している。これに代えて、第1ケース3とエレメント6とは、少なくとも径方向RDに関して互いに噛み合っていてもよい。
【0110】
図38において、第1ケース3は、エレメント6との対向部分に、嵌合部R14を有する。嵌合部R14は、凹状の嵌合室を区画している。嵌合部R14は、環状の筒状壁によって提供されている。嵌合部R14は、凸状のセンタブロック23を受け入れ可能である。
【0111】
図39において、嵌合部R14が区画する嵌合室は、中心軸AXに直交する断面において円形である。センタブロック23は、中心軸AXに直交する断面において円形である。嵌合部R14とセンタブロック23とは、径方向RDに関して互いに噛み合っている。なお、嵌合部R14は、ケース3の内面に凸状に形成されてもよい。この場合、センタブロック23は、凹状に形成することができる。この実施形態によると、ケース3とエレメント6との噛み合いによって、嵌合部R14に適合する正規品のエレメント6が選択され、使用されることが期待される。
【0112】
第28実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、嵌合部R14の形状と、センタブロック23の形状とは、円形である。これに代えて、第1ケース3とエレメント6とは、周方向CDに関して互いに噛み合っていてもよい。
【0113】
図40において、嵌合部R14とセンタブロック23とは、周方向CDに関して互いに噛み合う噛合部S14、S23を有している。噛合部S14は、嵌合部R14の内面から径方向に広がる凹部によって提供されている。噛合部S23は、センタブロック23から径方向外側に延びだす凸部によって提供されている。噛合部S14、S23は、実線で示されるように1組、または、破線で示されるように複数組設けられてもよい。噛合部S14、S23は、周方向CDにおける1箇所、または、複数箇所において噛み合いを提供する。噛合部S14、S23の数、または、複数の噛合部S14、S23の間の相対的な位置関係は、多様に設定することができる。これにより、第1ケース3とエレメント6との正規の組合せを、多数設定することができる。この結果、嵌合部R14とセンタブロック23とは、周方向CDにおける規定の角度位置のみにおいて互いに噛み合う。よって、この実施形態でも、正規品のエレメント6が選択され、使用されることが期待される。
【0114】
第29実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、嵌合部R14の形状と、センタブロック23の形状とは、円形である。これに代えて、この実施形態では、
図41に図示されるように、多角形の嵌合部T14と、多角形のセンタブロックT23とが採用されている。嵌合部T14と、センタブロックT23とは、六角形である。センタブロックT23は、嵌合部T14の中において回転不能に噛み合っている。なお、先行する実施形態と同様の噛合部を設けてもよい。この実施形態でも、先行する実施形態と同様の作用効果が期待される。
【0115】
第30実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態において、センタパイプ25の先端は、水分離器7の中に支持されている。これに代えて、センタパイプ25の先端は、第2ケース4に連結されていてもよい。
【0116】
図42において、第2ケース4は、ドレンボルトU71を有する。ドレンボルトU71は、第2ケース4のドレン穴を開閉するためのボルトである。ドレンボルトU71は、中心軸AX上に配置されている。ドレンボルトU71は、第2ケース4内に向けて延び出している。ドレンボルトU71は、水分離器7の内部に到達している。ドレンボルトU71は、センタパイプ25の先端と連結されている。ドレンボルトU71とセンタパイプ25とは、ネジ機構U72によって連結されている。ドレンボルトU71とセンタパイプ25とは、水分離器7の内部において、連結されている。この実施形態によると、ドレンボルトU71がエレメント6を固定するから、フィルタ装置1における締結強度の向上が図られる。
【0117】
第31実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態において、センタパイプ25の先端は、水分離器7の中に位置づけられている。これに代えて、センタパイプ25の先端は、水分離器7を貫通してもよい。
図43において、センタパイプ25は、水分離器7を貫通している。ドレンボルトV71とセンタパイプ25とは、水分離器7の外側、言い換えると、下側においてネジ機構V72によって連結されている。
【0118】
第32実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、機械的な形状によって、正規品のエレメント6、および/または、正規品の水分離器7の使用が促されている。これに代えて、電気的な制御装置が利用されてもよい。
【0119】
図44において、フィルタシステム100は、フィルタ装置1と、制御システムW80とを備える。フィルタ装置1は、第1実施形態と同様に、通路連結部51、52と、保持部材16とを備えている。フィルタ装置1は、他の実施形態と同じ構成を備えていてもよい。この実施形態では、第2ケース4、エレメント6、および、水分離器7は、正規品であることを示す電気回路W81を備えている。電気回路W81は、正規品のエレメント6と、正規品の水分離器7とが、正規品の第2ケース4に組み付けられることによって電気的な信号を出力する。図示の例では、信号は、電気回路W81の電気的な導通によって与えられる。電気回路W81は、検出回路とも呼ばれる。制御システムW80は、上記信号によって、正規品のエレメント6の使用を検出する。制御システムW80は、上記信号によって、正規品の水分離器7の使用を検出する。さらに、制御システムW80は、上記信号に応答して、車両の起動、内燃機関の起動、ウォーニングランプの消灯など、フィルタ装置1を搭載したシステムの正常な利用を許容する。
【0120】
フィルタ装置1は、電気回路W81のための一対の端子W82、W83を備える。電気回路W81は、第2ケース4に固定された一対の電極W84を含む。電気回路W81は、水分離器7に固定された一対の電極W85と、水分離器7に固定された一対の電極W86とを備える。一対の電極W85と一対の電極W86との間は、一対の導電部材によって接続されている。一対の電極W85と、一対の電極W86とは、水分離器7に埋設された埋設回路W49の一部である。よって、水分離器7は、水分離器7の存在、または、非存在を第2ケース4の外部に対して知らせるための部材(埋設回路W49)を備えている。言い換えると、水分離器7は、水分離器7の存在、または、非存在を第2ケース4の外部から検出するための部材(埋設回路W49)を備えている。一対の電極W85は、一対の電極W84と電気的に導通可能な位置に固定されている。さらに、電気回路W81は、エレメント6に固定された電極W87を含む。電極87は、一対の電極W86を短絡するようにエレメント6に固定されている。電極W87は、エレメント6に埋設された埋設回路の一部である。よって、エレメント6は、エレメント6の存在、または、非存在を第2ケース4の外部に対して知らせるための部材(電極W87)を備えている。言い換えると、エレメント6は、エレメント6の存在、または、非存在を第2ケース4の外部から検出するための部材(電極W87)を備えている。制御システムW80は、電気回路W81に接続された制御回路W88(ECU)と、警告装置W89(WRN)とを備える。
【0121】
制御回路W88は、電気回路W81が導通状態である場合に警告装置W89を駆動し(活性化し)、電気回路W81が非導通状態である場合に警告装置W89を非駆動とする(非活性化する)。制御回路W88は、電気回路W81が導通状態である場合にシステムの利用を許可し、電気回路W81が非導通状態である場合にシステムの利用を禁止してもよい。制御回路W88は、ハードウェアだけから構成されたシーケンス回路によって提供することができる。これに代えて、制御回路W88は、プロセッサと、ソフトウェアを記憶したメモリとを備えるマイクロコンピュータ回路によって提供することができる。制御回路W88のアルゴリズムは、電気回路W81の信号に応答する処理によって提供することができる。
【0122】
図45は、制御回路W88における制御処理W90を示す。制御回路W88は、ステップW91において、電気回路W81の電気的な状態を監視する。ステップW91では、電気回路W81の導通状態(ON)、または、電気回路W81の非導通状態(OFF)が入力される。制御回路W88は、ステップW92において、電気回路W81が導通状態(ON)であるか否かを判定する。ステップW92における判定が肯定的である場合、処理は、ステップW93へ進む。制御回路W88は、ステップW93において、警告装置W89を非駆動とする。ステップW92における判定が否定的である場合、処理は、ステップW94へ進む。制御回路W88は、ステップW94において、警告装置W89を駆動する。
【0123】
この実施形態によると、水分離器7を第2ケース4に残して、固体除去用のエレメント6を交換可能なフィルタ装置、および、フィルタ装置の製造方法を提供することができる。さらに、この実施形態によると、正規品の使用を第2ケース4の外部から知ることができる。この実施形態でも、正規品のエレメント6、および、正規品の水分離器7が選択され、使用されることが期待される。
【0124】
他の実施形態
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0125】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【0126】
上記実施形態では、調芯機能は、曲面である位置決め面17、B17によって提供されている。これに代えて、位置決め面は、斜面でもよい。よって、位置決め面17、B17は、ケース2の中心軸AX4を回転軸とする斜面または曲面である。これらの場合においても、位置決め面は、水分離器7との接触によって、水分離器7の中心軸AX7を、第2ケース4の中心軸AX4へ向けて案内する。さらに、エレメント6を介して水分離器7が押されることにより、位置決め面は、水分離器7を付勢する。
【0127】
上記実施形態では、通路連結機構50は、エレメント6に属する通路連結部材51と、水分離器7に属する通路連結部材52とによって提供されている。これに代えて、通路連結機構50は、多様な構成によって提供可能である。通路連結機構50は、例えば、エレメント6に属する通路連結部材52と、水分離器7に属する通路連結部材51とによって提供されてもよい。また、通路連結部材51は、エンドパイプ55と、キー溝57とを有していてもよい。この場合、通路連結部材52は、センタボア56と、キー突起54とを有する。よって、通路連結部材51、52は、エレメント6および水分離器7のいずれか一方に設けられたエンドパイプ55、および、他方に設けられたセンタボア56と、エレメント6および水分離器7のいずれか一方に設けられたキー突起54、および、他方に設けられたキー溝57とを備える場合がある。これらの場合も、エンドパイプ55は、センタボア56に挿入されることにより、エレメント6と水分離器7とを径方向RDに関して噛み合わせている。キー突起54は、キー溝57に挿入されることにより、エレメント6と水分離器7とを周方向CDに関して噛み合わせている。さらに、エレメント6と水分離器7とは、軸方向ADに接触することにより、エレメント6により水分離器7を押さえている。
【0128】
上記実施形態では、水分離器7は、水を凝集させることによって分離し、沈降させる凝集体42を備える。これに代えて、水分離器7は、水をはじくことにより分離し、沈降させる撥水体を備えていてもよい。撥水体として、例えば、撥水膜、撥水処理された不織布などを利用することができる。