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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】自動車用空調装置のコンプレッサ
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20220825BHJP
【FI】
F04B39/00 101U
F04B39/00 101V
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021508866
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2020008418
(87)【国際公開番号】W WO2020195547
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2019057458
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 保徳
(72)【発明者】
【氏名】萩田 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】藥師寺 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】岡部 良次
(72)【発明者】
【氏名】佐保 日出夫
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-202377(JP,A)
【文献】特開2012-122700(JP,A)
【文献】特開平10-159726(JP,A)
【文献】特開平10-159727(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0274569(US,A1)
【文献】特開平04-362377(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1565348(CN,A)
【文献】特開2020-007975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサ本体と、
前記コンプレッサ本体の外面から突出するフランジ部に接続された配管と、
前記配管の周囲に設けられ、前記フランジ部に締結される連結用ブロックと、
前記コンプレッサ本体の周囲に配置された音響カバーと、
を備え、
前記音響カバーは、前記配管を挿通すると共に前記配管と間接的に密接する挿通孔を有し、内面が前記コンプレッサ本体の外面に沿った形状であり、
前記挿通孔は、前記フランジ部と、前記連結用ブロックと、前記コンプレッサ本体の外面とに当接することを特徴とする自動車用空調装置のコンプレッサ。
【請求項2】
前記音響カバーは、多孔質発泡材であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用空調装置のコンプレッサ。
【請求項3】
前記音響カバーは、短手方向に沿った壁部に形成された少なくとも一つの分割部を有することを特徴とする請求項2に記載の自動車用空調装置のコンプレッサ。
【請求項4】
前記音響カバーは、前記分割部で分割された半部同士が、前記分割部の位置で互いに重なり合うオーバーラップ部を有することを特徴とする請求項3に記載の自動車用空調装置のコンプレッサ。
【請求項5】
前記オーバーラップ部は、前記半部同士を嵌合させる嵌合部であることを特徴とする請求項4に記載の自動車用空調装置のコンプレッサ。
【請求項6】
前記音響カバーは、前記オーバーラップ部の位置に、外面から突出する突出部を有することを特徴とする請求項4に記載の自動車用空調装置のコンプレッサ。
【請求項7】
前記音響カバーは、前記オーバーラップ部の位置にインサートされた樹脂材を有することを特徴とする請求項4に記載の自動車用空調装置のコンプレッサ。
【請求項8】
前記コンプレッサ本体は、前記外面から突出する凸部を有し、
前記音響カバーは、前記オーバーラップ部が前記凸部に当接することを特徴とする請求項4に記載の自動車用空調装置のコンプレッサ。
【請求項9】
前記オーバーラップ部は、前記半部同士を係止させる係止部であり、
前記係止部は、前記半部の一方側に設けられる第1の係止部と、前記半部の他方側に設けられると共に前記第1の係止部に係止する第2の係止部と、を有し、前記第1の係止部と前記第2の係止部とが対向する面である係止面が複数形成され、
前記複数の係止面は、
前記第1の係止部と前記第2の係止部とが近づく方向に相対的に移動するときに当接する第1の係止面と、
前記第1の係止部と前記第2の係止部とが離れる方向に相対的に移動するときに当接する第2の係止面と、を少なくとも含む請求項4に記載の自動車用空調装置のコンプレッサ。
【請求項10】
前記音響カバーは、複数のハニカムセルを有するハニカムサンドイッチパネルであり、複数の前記ハニカムセルに対応して内面に形成された複数の開口を有することを特徴とする請求項1に記載の自動車用空調装置のコンプレッサ。
【請求項11】
前記音響カバーは、短手方向に沿った壁部に形成された少なくとも一つの分割部を有することを特徴とする請求項10に記載の自動車用空調装置のコンプレッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用空調装置のコンプレッサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車に搭載される空調装置のコンプレッサ(圧縮機)から発生する騒音を低減するための技術が知られている。例えば、特許文献1には、例えば電気自動車の冷房装置に用いられる電動コンプレッサの周囲を遮音カバーで覆う電動コンプレッサ用防音装置が開示されている。この遮音カバーは、電動コンプレッサから延びる冷媒の吐出管を挿通する挿通孔を有しており、吐出管の周りにゴム等の弾性材料からなる緩衝材を配置することで、遮音カバーにより吐出管を介して電動コンプレッサのケースを支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-61234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動車用空調装置のコンプレッサは、音響カバーの軽量化および小型化が求められる。そのため、通常の空調装置とは異なり、ゴム等の重く吸音性能が高いカバーを用いることは好ましくない。しかしながら、音響カバーは、一般的に重い材料を用いる方が防音性能を高めることができるため、単に音響カバーを軽量化するだけでは、所望の防音性能を得ることができない可能性がある。特に、音響カバーとコンプレッサから延びる配管との間に隙間が存在すると、隙間から音が漏れてしまう可能性がある。特許文献1に記載された音響カバー(遮音カバー)では、コンプレッサのケースの振動を抑制しながら支持するために、吐出管の周りに緩衝材を配置しているが、音響カバーと吐出管との間の隙間については明記されていない。また、仮に緩衝材が音響カバーと吐出管との隙間からの音漏れを抑制するとしても、構造が複雑になってしまう。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、音響カバーの小型化および軽量化を図りつつ、より簡易な構造の音響カバーを用いて、自動車用空調装置のコンプレッサの騒音を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、コンプレッサ本体と、前記コンプレッサ本体に接続された配管と、前記コンプレッサ本体の周囲に配置された音響カバーと、を備え、前記音響カバーは、前記配管を挿通すると共に前記配管と密接する挿通孔を有し、内面が前記コンプレッサ本体の外面に沿った形状であることを特徴とする。
【0007】
この構成により、音響カバーの内面をコンプレッサ本体の外面に沿った形状とするため、音響カバーとコンプレッサ本体との間にできる限り隙間が形成されないようにすることができる。その結果、音響カバーに不必要な部分が形成されることを抑制し、音響カバーの小型化および軽量化を図ることができる。また、音響カバーに形成され、コンプレッサに接続された配管を挿通する挿通孔が配管と密接するため、音響カバーと配管との隙間から音漏れが発生することを抑制することができる。したがって、本発明によれば、音響カバーの小型化および軽量化を図りつつ、より簡易な構造の音響カバーを用いて、自動車用空調装置のコンプレッサの騒音を低減することが可能となる。
【0008】
また、前記音響カバーは、多孔質発泡材であることが好ましい。この構成により、音響カバーの軽量化を図りつつ、多孔質発泡材によってコンプレッサ本体から発せられる騒音を吸音することができる。
【0009】
また、前記音響カバーは、短手方向に沿った壁部に形成された少なくとも一つの分割部を有することが好ましい。この構成により、音響カバーを発泡成形により形成する場合に、金型からの抜き勾配が設けられる面を音響カバーの短手方向側とすることができる。その結果、抜き勾配が設けられる面の長さを短くし、コンプレッサと音響カバーとの間に、余分な空間が形成されることを抑制することができる。そのため、音響カバーの小型化および軽量化を図ることができる。
【0010】
また、前記音響カバーは、前記分割部で分割された半部同士が、前記分割部の位置で互いに重なり合うオーバーラップ部を有することが好ましい。この構成により、分割部において、半部同士をより密着させることができるため、分割部から音漏れが発生することを抑制することができる。
【0011】
また、前記オーバーラップ部は、前記半部同士を嵌合させる嵌合部であることが好ましい。この構成により、半部同士を安定的に接続させることができ、かつ、半部同士をより密着させて分割部から音漏れが発生することを抑制することができる。
【0012】
また、前記音響カバーは、前記オーバーラップ部の位置に、外面から突出する突出部を有することが好ましい。この構成により、オーバーラップ部の近傍の剛性を高めることができ、音響カバーをコンプレッサ本体に組み付ける際の変形を抑制することができるため、組み付け性を向上させることが可能となる。
【0013】
また、前記音響カバーは、前記オーバーラップ部の位置にインサートされた樹脂材を有することが好ましい。この構成により、オーバーラップ部の近傍の剛性を高めることができ、音響カバーをコンプレッサ本体に組み付ける際の変形を抑制することができるため、組み付け性を向上させることが可能となる。
【0014】
また、前記コンプレッサ本体は、前記外面から突出する凸部を有し、前記音響カバーは、前記オーバーラップ部が前記凸部に当接することが好ましい。この構成により、音響カバーをコンプレッサ本体に組み付ける際に、コンプレッサ本体の凸部にオーバーラップ部が押し付けられることで、オーバーラップ部の変形が抑制される。その結果、組み付け性を向上させることができる。
【0015】
また、前記オーバーラップ部は、前記半部同士を係止させる係止部であり、前記係止部同士が対向する面には、複数の係止面が形成され、前記複数の係止面は、前記係止部同士が近づく方向に相対的に移動するときに当接する第1の係止面と、前記係止部同士が離れる方向に相対的に移動するときに当接する第2の係止面と、を少なくとも含むことが好ましい。この構成により、例えば、振動することにより、係止部同士が離れたり、近づいたりする場合であっても、第1の係止面及び第2の係止面により、係止部同士の隙間が形成されることを抑制することができる。
【0016】
また、音響カバーは、複数のハニカムセルを有するハニカムサンドイッチパネルであり、複数の前記ハニカムセルに対応して内面に形成された複数の開口を有することが好ましい。この構成により、音響カバーの軽量化を図りつつ、複数のハニカムセルによってコンプレッサ本体から発せられる騒音を吸音することができる。また、ハニカムサンドイッチが複数の開口を有することで、開口径を調整すれば、複数の周波数の騒音を吸音することが可能となる。
【0017】
また、前記音響カバーは、短手方向に沿った壁部に形成された少なくとも一つの分割部を有することが好ましい。この構成により、音響カバーを発泡成形により形成する場合に、金型からの抜き勾配が設けられる面を音響カバーの短手方向側とすることができる。その結果、抜き勾配が設けられる面の長さを短くし、コンプレッサと音響カバーとの間に、余分な空間が形成されることを抑制することができる。そのため、音響カバーをより小型化および軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、第一実施形態にかかるコンプレッサを示す断面図である。
図2図2は、コンプレッサ本体への配管の接続部近傍の構造の一例を示す拡大断面図である。
図3図3は、第一実施形態の変形例にかかる音響カバーを示す拡大断面図である。
図4図4は、第二実施形態にかかるコンプレッサを示す断面図である。
図5図5は、第二実施形態にかかるコンプレッサに音響カバーを取り付ける様子を示す断面図である。
図6図6は、比較例としてのコンプレッサを示す断面図である。
図7図7は、分割部近傍の構造の一例を示した拡大断面図である。
図8図8は、分割部近傍の構造の一例を示した拡大断面図である。
図9図9は、分割部近傍の構造の一例を示した拡大断面図である。
図10図10は、分割部近傍の構造の一例を示した拡大断面図である。
図11図11は、分割部近傍の構造の一例を示した拡大断面図である。
図12図12は、分割部近傍の構造の一例を示した拡大断面図である。
図13図13は、分割部近傍の構造の一例を示した拡大断面図である。
図14図14は、分割部近傍の構造の一例を示した拡大断面図である。
図15図15は、第二実施形態の変形例にかかる音響カバーを示す説明図である。
図16図16は、第三実施形態にかかる音響カバーを示す上面図である。
図17図17は、図1のA-A線に沿った断面図である。
図18図18は、第三実施形態における音響カバーの挿通孔近傍を示す拡大断面図である。
図19図19は、第三実施形態における分割部近傍の構造の一例を示した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明にかかる自動車用空調装置のコンプレッサの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0020】
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態にかかるコンプレッサを示す断面図である。実施形態にかかるコンプレッサ100は、図示しない自動車に搭載される空調装置に用いられる自動車用空調装置のコンプレッサ(圧縮機)である。コンプレッサ100は、コンプレッサ本体10と、複数の配管20と、音響カバー30とを備えている。なお、図1は、コンプレッサ本体10の長手方向に沿った断面を示している。コンプレッサ本体10の長手方向は、音響カバー30の長手方向であり、コンプレッサ本体10の短手方向は、音響カバー30の短手方向である。以下の説明では、コンプレッサ本体10および音響カバー30の長手方向を単に「長手方向L1」と称し、コンプレッサ本体10および音響カバー30の短手方向を単に「短手方向L2」と称する。
【0021】
コンプレッサ本体10は、電動コンプレッサであり、ハウジング内に電動モータ、固定スクロールおよび可動スクロールといった圧縮機構(いずれも図示省略)を収容する。コンプレッサ本体10は、ハウジング内に吸い込んだ低圧の冷媒ガスを圧縮機構により圧縮し、高温高圧のガスとして外部に流出する。コンプレッサ本体10は、自動車のエンジンルーム内に配設され、図示しない車体取付部において、例えば締結具としてのボルトにより自動車の車体に締結されて固定される。
【0022】
複数の配管20は、コンプレッサ本体10の外面10Aに接続されている。配管20は、例えば冷媒ガスを吸入する吸入管、冷媒ガスを吐出する吐出管等である。なお、図1においては、例示として配管20を一つのみ記載している。図2は、コンプレッサ本体への配管の接続部近傍の構造の一例を示す拡大断面図である。図示するように、コンプレッサ本体10は、配管20が接続される接続部11において、配管20の内部と連通する接続孔12が形成されている。そして、接続孔12の周囲には、外面10Aから突出するフランジ部13が形成されている。配管20は、その先端がフランジ部13の段部に嵌合される。また、配管20の周囲には、連結用ブロック25が固定されており、連結用ブロック25は、ボルト26によってフランジ部13に締結される。それにより、配管20がコンプレッサ本体10に取り付けられる。
【0023】
音響カバー30は、コンプレッサ本体10の周囲に配置される。第一実施形態において、音響カバー30は、多孔質発泡材により形成される。音響カバー30は、図示しない金型内を用いた発泡成形によって形成される。音響カバー30は、多孔質発泡材に含まれる複数の空洞部において、コンプレッサ本体10から発せられる騒音の音エネルギーを熱エネルギーへと変換することで、騒音を低減して外部へと騒音が漏れることを抑制する。
【0024】
音響カバー30は、コンプレッサ本体10の図示しない車体取付部と、後述する配管20の接続部とを除き、コンプレッサ本体10の外面10Aを覆う。以下、コンプレッサ本体10の外面10Aは、コンプレッサ本体10の図示しない車体取付部および配管20の接続部を除く部分の外面を指すものとして説明する。なお、音響カバー30は、図示しない本体取付部において、コンプレッサ本体10に例えばボルトによって締結されて固定される。
【0025】
音響カバー30は、図1に示すように、コンプレッサ本体10の外面10Aの形状に沿った内面30Aを有している。言い換えると、音響カバー30は、その内面30Aが、外面10Aを覆う大きさで、コンプレッサ本体10の外面10Aと同一形状に形成される。その結果、音響カバー30の内面30Aとコンプレッサ本体10の外面10Aとの間に形成される隙間S1をできる限り小さくすることが可能となる。なお、隙間S1が形成されないように、音響カバー30の内面30Aとコンプレッサ本体10の外面10Aとが、当接するものであってもよい。また、音響カバー30の外面30Bは、内面30Aと同様にコンプレッサ本体10の外面10Aに沿った形状となっている。外面30Bは、音響カバー30が取り付けられたコンプレッサ本体10の重量を軽減することができ、かつ、コンプレッサ本体10の周囲に配置される部材との干渉を避けることができるように設計されればよい。
【0026】
また、音響カバー30は、図1に示すように、コンプレッサ本体10に接続される配管20を挿通する挿通孔31を有する。挿通孔31は、配管20と同様に図示省略するが、配管20に対応する位置すべてに形成される。音響カバー30は、図2に示すように、挿通孔31の周囲に、挿通孔31に向かうにつれて音響カバー30の内側(コンプレッサ本体10側)に延びる環状傾斜部32を有する。挿通孔31の内周面31Aは、環状傾斜部32の内周面である。そして、環状傾斜部32は、挿通孔31の内周面31Aが接続部11に設けられたフランジ部13と連結用ブロック25とに嵌合される。すなわち、挿通孔31の内周面31Aは、フランジ部13と連結用ブロック25とを介して配管20に間接的に密接する。これにより、挿通孔31と配管20との間に隙間が形成されないようにすることができる。また、環状傾斜部32は、図2に示すように、終端部における内面30Aがコンプレッサ本体10の外面10Aに当接する。それにより、音響カバー30を配管20の周囲(接続部11の周囲)に安定的に取り付けることができる。
【0027】
図3は、第一実施形態の変形例にかかる音響カバーを示す拡大断面図である。変形例にかかる音響カバー40は、音響カバー30の環状傾斜部32に代えて、円筒状部42を有している。音響カバー40の他の構成は、音響カバー30と同一であるため、同一の構成については説明を省略し、同一の符号を付す。音響カバー40の円筒状部42は、挿通孔31の周囲において、音響カバー40の内側(コンプレッサ本体10側)および音響カバー40の外側(コンプレッサ本体10とは反対側)に向けて、円筒状に突出する。挿通孔31の内周面31Aは、円筒状部42の内周面である。そして、図2に示す例と同様に、挿通孔31の内周面31Aが接続部11に設けられたフランジ部13と連結用ブロック25とに嵌合される。すなわち、挿通孔31の内周面31Aは、フランジ部13と連結用ブロック25とを介して配管20に間接的に密接する。これにより、挿通孔31と配管20との間に隙間が形成されないようにすることができる。また、円筒状部42は、図3に示すように、その内面30Aがコンプレッサ本体10の外面10Aに当接する。それにより、音響カバー30を配管20の周囲(接続部11の周囲)に安定的に取り付けることができる。
【0028】
以上説明したように、第一実施形態にかかるコンプレッサ100は、コンプレッサ本体10と、コンプレッサ本体10に接続された配管20と、コンプレッサ本体10の周囲に配置された音響カバー30と、を備え、音響カバー30は、配管20を挿通すると共に配管20と密接する挿通孔31を有し、内面30Aがコンプレッサ本体10の外面10Aに沿った形状である。
【0029】
この構成により、音響カバー30の内面30Aをコンプレッサ本体10の外面10Aに沿った形状とするため、音響カバー30とコンプレッサ本体10との間にできる限り隙間S1が形成されないようにすることができる。その結果、音響カバー30に不必要な部分が形成されることを抑制し、音響カバー30の小型化および軽量化を図ることができる。また、音響カバー30に形成され、コンプレッサ本体10に接続された配管20を挿通する挿通孔31が配管20と密接するため、図2に実線矢印で示すように、音響カバー30と配管20との隙間から音漏れが発生することを抑制することができる。したがって、第一実施形態によれば、音響カバー30の小型化および軽量化を図りつつ、より簡易な構造の音響カバー30を用いて、自動車用空調装置のコンプレッサ100の騒音を低減することが可能となる。
【0030】
なお、本実施形態では、図2および図3に示すように、配管20が接続部11においてフランジ部13と連結用ブロック25とによりコンプレッサ本体10に固定され、音響カバー30の挿通孔31は、フランジ部13と連結用ブロック25とを介して配管20に間接的に密着するものとした。ただし、配管20のコンプレッサ本体10への固定方法は、これに限られるものではなく、音響カバー30の挿通孔31は、配管20に直接的に密着するものであってもよい。
【0031】
また、音響カバー30は、多孔質発泡材である。この構成により、音響カバー30の軽量化を図りつつ、多孔質発泡材によってコンプレッサ本体10から発せられる騒音を吸音することができる。
【0032】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態にかかるコンプレッサ200について説明する。図4は、第二実施形態にかかるコンプレッサを示す断面図であり、図5は、第二実施形態にかかるコンプレッサに音響カバーを取り付ける様子を示す断面図であり、図6は、比較例としてのコンプレッサを示す断面図である。
【0033】
第二実施形態にかかるコンプレッサ200は、コンプレッサ100の音響カバー30に代えて、音響カバー50を備える。また、比較例としてのコンプレッサ300は、コンプレッサ100の音響カバー30に代えて、音響カバー60を備える。コンプレッサ200、300の他の構成は、コンプレッサ100と同一であるため、同一の構成については説明を省略し、同一の符号を付す。なお、図4から図6は、図1と同様に、長手方向L1に沿った断面を示している。また、図4から図6では、配管20の記載を省略するが、第一実施形態と同様に、音響カバー50、60は、配管20を挿通する挿通孔が配管20に直接的または間接的に密着するものである。
【0034】
音響カバー50は、図4および図5に示すように、分割部50A、50Bで2つの半部51、52に分割されている。半部51、52は、図5に示すように、互いに対向しながらコンプレッサ本体10の周囲に配置され、分割部50A、50Bの近傍において例えばボルトにより互いに締結される。分割部50A、50Bは、図示するように、音響カバー30の短手方向L2に沿った壁部に設けられている。言い換えると、分割部50A、50Bは、長手方向L1に沿った方向に延びる。なお、「長手方向L1に沿って延びる」とは、長手方向L1に対して傾斜するものであってもよい。また、本実施形態では、分割部50A、50Bは、短手方向L2において並んだ位置に形成されるが、分割部50A、50Bは、短手方向L2において離れた位置に形成されてもよい。
【0035】
音響カバー50の半部51は、図4に示すように、分割部50Aに向かうにつれて、音響カバー50の外側(コンプレッサ本体10とは反対側)に向けて延びる傾斜部511を有する。また、半部51は、分割部50Bに向かうにつれて、音響カバー50の外側(コンプレッサ本体10とは反対側)に向けて延びる傾斜部512を有する。同様に、音響カバー50の半部52は、図4に示すように、分割部50Aに向かうにつれて、音響カバー50の外側(コンプレッサ本体10とは反対側)に向けて延びる傾斜部521を有する。また、半部52は、分割部50Bに向かうにつれて、音響カバー50の外側(コンプレッサ本体10とは反対側)に向けて延びる傾斜部522を有する。
【0036】
半部51、52に設けられる傾斜部511、512、521、522は、音響カバー30を発泡成形する際に、図示しない金型から半部51、52を抜き取るための抜き勾配θの角度で形成される。つまり、傾斜部511、512、521、522は、短手方向L2に対して、抜き勾配θの角度で傾斜しながら延びる。なお、傾斜部511、512、521、522の抜き勾配θは、半部51、52を金型から抜き取ることができ、かつ、後述する隙間S2ができる限り小さくなる値に定められればよく、傾斜部511、512、521、522ごとに異なる値であってよい。半部51、52を分割する分割部50A、50Bが音響カバー30の短手方向L2に沿った壁部に設けられることから、傾斜部511、512、521、522も音響カバー30の短手方向L2に沿った壁部に設けられることになる。
【0037】
ここで、比較例のコンプレッサ300が備える音響カバー60は、図6に示すように、半部51、52を分割する分割部50A、50Bが、音響カバー60の長手方向L1に沿った壁部に設けられている。つまり、音響カバー60は、傾斜部511、512、521、522が長手方向L1に沿った壁部に形成される。音響カバー60の他の構成は、音響カバー50と同様であるため、同一の構成については説明を省略し、同一の符号を付す。
【0038】
図4および図6に示すように、音響カバー60に比べて、傾斜部511、512、521、522が短手方向L2に沿った壁部に設けられる音響カバー50の方が、傾斜部511、512、521、522の長さが短くなる。それにより、第二実施形態にかかるコンプレッサ200における音響カバー50とコンプレッサ本体10との間の隙間S2は、比較例のコンプレッサ300における音響カバー0とコンプレッサ本体10との間の隙間S3に比べて小さくなる。したがって、コンプレッサ本体10と音響カバー50との間に、余分な空間が形成されることを抑制することができ、比較例の音響カバー60に比べて、音響カバー50の小型化および軽量化を図ることが可能となる。
【0039】
次に、分割部50A、50Bの構造について、図7から図11を参照しながら説明する。図7から図11は、分割部近傍の構造の一例を示した拡大断面図である。図7に示す例では、半部51、52は、分割部50A、50Bの位置で、長手方向L1に沿った方向に並んで互いに重なり合うオーバーラップ部53を有している。この構成により、分割部50A、50Bにおいて、半部51、52同士をより密着させることができるため、分割部50A、50Bから音漏れが発生することを抑制することができる。
【0040】
図8に示す例では、上記オーバーラップ部53が、半部51、52同士を嵌合させる嵌合部54となっている。この構成により、半部51、52同士を安定的に接続させることができ、かつ、半部51、52同士をより密着させ分割部50A、50Bから音漏れが発生することを抑制することができる。
【0041】
図9に示す例では、半部51、52は、オーバーラップ部53の位置に、外面から突出する突出部55を有している。この構成により、オーバーラップ部53の近傍の剛性を高めることができ、音響カバー50をコンプレッサ本体10に組み付ける際の変形を抑制することができるため、組み付け性を向上させることが可能となる。
【0042】
図10に示す例では、半部51、52は、オーバーラップ部53の位置にインサートされた樹脂材56を有する。この構成により、オーバーラップ部53の近傍の剛性を高めることができ、音響カバー50をコンプレッサ本体10に組み付ける際の変形を抑制することができるため、組み付け性を向上させることが可能となる。
【0043】
図11に示す例では、半部51、52は、オーバーラップ部53が、コンプレッサ本体10に形成された凸部15に当接する位置に設けられている。凸部15は、コンプレッサ本体10の外面10Aから突出する部分である。この構成により、音響カバー50をコンプレッサ本体10に組み付ける際に、図11に示す状態からコンプレッサ本体10の凸部15にオーバーラップ部53が押し付けられることで、オーバーラップ部53の変形が抑制される。その結果、音響カバー50の組み付け性を向上させることができる。
【0044】
図12に示す例では、上記オーバーラップ部53が、半部51、52同士を係止させる係止部となっている。係止部は、一方側(上方側)の半部51に設けられる第1の係止部57と、他方側(下方側)の半部52に設けられる第2の係止部58と、を有している。第1の係止部57と第2の係止部58とは、長手方向L1に沿った方向に並んで互いに重なり合う。第1の係止部57は、第2の係止部58に対して音響カバー50の外側に位置している。換言すれば、第2の係止部58は、第1の係止部57に対して音響カバー50の内側に位置している。第2の係止部58は、第1の係止部57に係止する。第1の係止部57及び第2の係止部58には、第1の係止部57と第2の係止部58とが対向する面に複数の係止面60が形成されている。
【0045】
複数の係止面60は、第1の係止面60aと、第2の係止面60bとを含んでいる。第1の係止面60aは、第1の係止部57と第2の係止部58とが近づく方向に相対的に移動するときに当接する係止面60となっている。第1の係止面60aは、長手方向L1の両側に位置して形成される。第1の係止面60aは、長手方向L1に沿った面となっている。音響カバー50の内側の第1の係止面60aは、短手方向L2において、半部51側(上方側)に位置して形成され、音響カバー50の外側の第1の係止面60aは、短手方向L2において、半部52側(下方側)に位置して形成されている。
【0046】
第2の係止面60bは、第1の係止部57と第2の係止部58とが離れる方向に相対的に移動するときに当接する係止面60となっている。第2の係止面60bは、長手方向L1において、両側の第1の係止面60aの間に位置して形成されている。第2の係止面60bは、第1の係止部57と第2の係止部58とが対向する方向に沿った面となっている。第2の係止面60bの両側は、両側の第1の係止面60aのそれぞれに接続されている。第2の係止面60bは、第1の係止部57から第2の係止部58に向かって、長手方向L1の内側に傾斜している。
【0047】
第1の係止部57と第2の係止部58とが対向する面は、両側の第1の係止面60aと第2の係止面60bとが連続する連続面となっており、断面Z字状となる面となっている。なお、第1の係止部57と第2の係止部58とが対向する面は、第1の係止面60aと第2の係止面60bとが不連続となる不連続面であってもよい。つまり、第1の係止面60aと第2の係止面60bとの接続部分が屈曲していてもよい。
【0048】
図12に示す例では、第1の係止部57と第2の係止部58とが近づく方向に相対的に移動すると、長手方向L1の両側の第1の係止面60aが当接することで、半部51、52同士の隙間が閉塞される。一方で、第1の係止部57と第2の係止部58とが離れる方向に相対的に移動すると、長手方向L1の中央の第2の係止面60bが当接することで、半部51、52同士の隙間が閉塞される。この構成により、半部51、52同士が振動する場合であっても、半部51、52同士の隙間の形成を抑制し、分割部50A、50Bから音漏れが発生することを抑制することができる。
【0049】
図13に示す例では、図12に示す例の第1の係止部57及び第2の係止部58の形状が異なっている。つまり、図13では、第1の係止部57と第2の係止部58とが対向する面に形成される複数の係止面63が、図12と異なっている。
【0050】
複数の係止面63は、第1の係止面63aと、第2の係止面63bとを含んでいる。第1の係止面63aは、図12と同様に、第1の係止部57と第2の係止部58とが近づく方向に相対的に移動するときに当接する係止面63となっている。第1の係止面63aは、長手方向L1の両側に位置して形成される。第1の係止面63aは、長手方向L1に沿った面となっている。音響カバー50の内側の第1の係止面63aは、短手方向L2において、半部51側(上方側)に位置して形成され、音響カバー50の外側の第1の係止面63aは、短手方向L2において、半部52側(下方側)に位置して形成されている。
【0051】
第2の係止面63bは、図12と同様に、第1の係止部57と第2の係止部58とが離れる方向に相対的に移動するときに当接する係止面63となっている。第2の係止面63bは、長手方向L1において、両側の第1の係止面63aの間に位置して形成されている。第2の係止面63bは、長手方向L1に沿った面となっている。そして、第2の係止面63bは、第1の係止部57と第2の係止部58とが対向する方向において、両側の第1の係止面63aの間に位置して形成されている。このため、第2の係止面63bは、両側の第1の係止面63aと平行な面となっている。第2の係止面63bの両側は、接続面を介して両側の第1の係止面63aのそれぞれに接続されている。
【0052】
第1の係止部57と第2の係止部58とが対向する面は、両側の第1の係止面63aと第2の係止面63bと接続面とが不連続となる不連続面となっており、断面矩形状となる面となっている。
【0053】
図13に示す例では、第1の係止部57と第2の係止部58とが近づく方向に相対的に移動すると、長手方向L1の両側の第1の係止面63aが当接することで、半部51、52同士の隙間が閉塞される。一方で、第1の係止部57と第2の係止部58とが離れる方向に相対的に移動すると、長手方向L1の中央の第2の係止面63bが当接することで、半部51、52同士の隙間が閉塞される。この構成により、半部51、52同士が振動する場合であっても、半部51、52同士の隙間の形成を抑制し、分割部50A、50Bから音漏れが発生することを抑制することができる。
【0054】
図14に示す例では、図12に示す例の第1の係止部57及び第2の係止部58の形状が異なっている。つまり、図14では、第1の係止部57と第2の係止部58とが対向する面に形成される複数の係止面65が、図12と異なっている。
【0055】
複数の係止面65は、第1の係止面65aと、第2の係止面65bとを含んでいる。第1の係止面65aは、図12の第1の係止面60aと同様であるため、説明を省略する。
【0056】
第2の係止面65bは、図12と同様に、第1の係止部57と第2の係止部58とが離れる方向に相対的に移動するときに当接する係止面65となっている。第2の係止面65bは、第1の係止部57側に形成された第1の係止面65aに連続する面となっている。連続する第2の係止面65bと第1の係止面65aの一部とは、断面半円形状となる連続面となっている。第2の係止面65bは、接続面を介して第2の係止部58側に形成された第1の係止面65aに接続されている。
【0057】
第1の係止部57と第2の係止部58とが対向する面は、第1の係止部57側の第1の係止面65aと第2の係止面65bとが断面半円形状に連続する連続面となっており、接続面と第2の係止部58側の第1の係止面65aとが不連続となる断面L字状の不連続面となっている。
【0058】
図14に示す例では、第1の係止部57と第2の係止部58とが近づく方向に相対的に移動すると、長手方向L1の両側の第1の係止面65aが当接することで、半部51、52同士の隙間が閉塞される。一方で、第1の係止部57と第2の係止部58とが離れる方向に相対的に移動すると、断面半円形状の第2の係止面65bが当接することで、半部51、52同士の隙間が閉塞される。この構成により、半部51、52同士が振動する場合であっても、半部51、52同士の隙間の形成を抑制し、分割部50A、50Bから音漏れが発生することを抑制することができる。
【0059】
図15は、第二実施形態の変形例にかかる音響カバーを示す説明図である。図示するように、第二実施形態の変形例にかかる音響カバー70は、半部51、52が完全に分割されていない。音響カバー70は、一方側の短手方向L2に沿った壁部に分割部50Aを有するが、他方側の短手方向L2に沿った壁部には、分割部50Bに代えて、切り込み部50Cおよび接合部50Dを有している。切り込み部50Cは、他方側の短手方向L2に沿った壁部において、内面30A側に設けられている。半部51、52は、切り込み部50Cの側方の接合部50Dにおいて互いに接続されている。
【0060】
音響カバー70は、切り込み部50Cの側方に位置する接合部50Dを基点として、半部51、52が分割部50A側で開口するように変形させることができる。そのため、図15に示すように、半部51、52が分割部50A側で開口した状態で、例えば半部52をコンプレッサ本体10の周囲に配置し、その後、分割部50Aが閉口するように、半部51をコンプレッサ本体10の周囲に配置すれば、音響カバー70をコンプレッサ本体10に取り付けることができる。音響カバー70においても、傾斜部511、512、521、522が短手方向L2に沿った壁部に設けられる。そのため、図4に示す音響カバー50と同様に、音響カバー70とコンプレッサ本体10との間の隙間S2を、比較例のコンプレッサ300における音響カバー0とコンプレッサ本体10との間の隙間S3に比べて小さくすることができる。したがって、コンプレッサ本体10と音響カバー70との間に、余分な空間が形成されることを抑制することができ、比較例の音響カバー60に比べて、音響カバー70の小型化および軽量化を図ることが可能となる。
【0061】
[第三実施形態]
次に、第三実施形態にかかるコンプレッサが備える音響カバー80について説明する。第三実施形態にかかるコンプレッサは、音響カバー30、40、50、70に代えて音響カバー80を備えることを除き、第一実施形態および第二実施形態と同様の構成を有するため、音響カバー80以外の図示および説明を省略する。第一実施形態および第二実施形態では、音響カバー30、40、50、70は、多孔質発泡材で形成されるものとした。第三実施形態では、音響カバー80は、ハニカムサンドイッチパネルにより形成される。図16は、第三実施形態にかかる音響カバーを示す上面図であり、図17は、図16のA-A線に沿った断面図である。
【0062】
音響カバー80は、図17に示すように、表面シート材81と、背面シート材82と、複数のハニカム壁83とを有している。表面シート材81、背面シート材82およびハニカム壁83は、図示しないプレス型を用いて、例えばプラスチック材をプレス成型することにより、形成することができる。表面シート材81および背面シート材82は、互いに対向して配置される。表面シート材81は、音響カバー80の内面80Aを形成する。また、背面シート材82は、音響カバー80の外面80Bを形成する。複数のハニカム壁83は、表面シート材81と背面シート材82との間を延びる。複数のハニカム壁83は、図16に示すように、表面シート材81と背面シート材82との間に断面六角形の隔壁を形成する。
【0063】
それにより、表面シート材81、各ハニカム壁83および背面シート材82は、六角柱状の空間である複数のハニカムセル85を画成する。そして、表面シート材81には、各ハニカムセル85の中央に対応した位置に、開口85Aが形成されている。開口85Aは、表面シート材81を貫通する貫通孔である。この構成により、コンプレッサ本体10から発せられる音の空気振動が開口85Aを介してハニカムセル85内に進行し、空気振動が所定の共鳴周波数f(次式(1)参照)で共鳴することで、圧力変動が減衰され、騒音が吸収される。
【0064】
各ハニカムセル85に設けられる開口85Aは、ヘルムホルツ方程式による次式(1)にしたがって、その開口半径aが定められる。式(1)中の“f”は、共鳴周波数であり、“c”は、音速であり、“V”は、ハニカムセルの容積であり、“t”は、表面シート材81の厚みである。したがって、減衰させるべき所望の共鳴周波数fの値が定まれば、式(1)から開口半径aを求めることができる。なお、所望の共鳴周波数fの値は、例えばコンプレッサ本体10に設けられるスクロールで発生する騒音の周波数に基づいて定めることができる。言い換えると、複数の開口85Aについて、開口半径aをそれぞれ調整すれば、複数の周波数の騒音を吸音することが可能となる。
【0065】
f = c/2π・SQRT(πa/V(t+0.6a)) …(1)
【0066】
第三実施形態においても、音響カバー80は、第一実施形態および第二実施形態と同様に、配管20を挿通する挿通孔31は、配管20に直接的または間接的に密着する。図18は、第三実施形態における音響カバーの挿通孔近傍を示す拡大断面図である。音響カバー80は、ハニカムサンドイッチパネルであるため、多孔質発泡材である場合に比べて、挿通孔31が形成される端部に面が形成されない。そのため、第三実施形態では、図18に示すように、挿通孔31が形成される端部に当接面を形成する当接部材91を配置する。すなわち、当接部材91が挿通孔31の内周面31Aを形成する。当接部材91は、例えば制振シートである。これにより、第一実施形態および第二実施形態と同様に、配管20を挿通する挿通孔31を配管20に間接的に密着させることができる。
【0067】
また、第三実施形態においても、音響カバー80を分割部50A、50B(図4参照)で2つの半部51、52(図4参照)に分割し、傾斜部511、512、521、522(図4参照)を短手方向L2に沿った壁部に設ければ、第二実施形態と同様に、コンプレッサ本体10と音響カバー80との間に、余分な空間が形成されることを抑制することができる。それにより、比較例の音響カバー60に比べて、音響カバー80の小型化および軽量化を図ることが可能となる。なお、第三実施形態では、音響カバー80はプレス成型により製造されるため、傾斜部511、512、521、522は、プレス型からの抜き勾配θを有するように形成される。
【0068】
ただし、音響カバー80は、ハニカムサンドイッチパネルであるため、分割部50A、50Bにおいて、図7から図14に示すようなオーバーラップ部53を設けることは難しい。そこで、音響カバー80は、分割部50A、50Bにおいて、以下に説明する構造で接続される。図19は、第三実施形態における分割部近傍の構造の一例を示した拡大断面図である。図示するように、音響カバー80は、分割部50A、50Bにおいて、半部51の表面シート材81および背面シート材82と、半部5の表面シート材81および背面シート材82との間に配置された当接部材92を有している。当接部材92は、例えば制振シートである。これにより、分割部50A、50Bにおいて、半部51、52同士をより密着させることができるため、分割部50A、50Bから音漏れが発生することを抑制することができる。

【0069】
第一実施形態および第二実施形態では、音響カバー30、40、50、70を多孔質発泡材で形成するものとし、第三実施形態では、音響カバー80を複数のハニカムセル85を有するハニカムサンドイッチパネルで形成するものとした。ただし、音響カバーの一部を多孔質発泡材、他の一部をハニカムサンドイッチパネルで形成するものとしてもよい。それにより、コンプレッサ本体10から発せられる騒音の種類に応じて、音響カバーの構造を適切に選択すれば、複数の騒音をより適切に吸音することが可能となる。例えば、コンプレッサ本体10のスクロール近傍にハニカムサンドイッチパネルを配置し、その他の部には多孔質発泡材を配置といった構成を採用してもよい。それにより、スクロールで発生する流体音(主として低周波数)については、ハニカムサンドイッチパネルによって所望の共鳴周波数fを調節することで良好に吸音し、その他の摺動音や電動モータ起因の音(主として高周波)については、多孔質発泡材で吸音することが可能となる。
【符号の説明】
【0070】
10 コンプレッサ本体
10A 外面
11 接続部
12 接続孔
13 フランジ部
15 凸部
20 配管
25 連結用ブロック
26 ボルト
30,40,50,60,70,80 音響カバー
30A,80A 内面
30B,80B 外面
31 挿通孔
31A 内周面
32 環状傾斜部
42 円筒状部
50A,50B 分割部
50C 切り込み部
50D 接合部
51,52 半部
53 オーバーラップ部
54 嵌合部
55 突出部
56 樹脂材
57 第1の係止部
58 第2の係止部
60,63,65 係止面
81 表面シート材
82 背面シート材
83 ハニカム壁
85 ハニカムセル
85A 開口
91,92 当接部材
100,200,300 コンプレッサ
511,512,521,522 傾斜部
S1,S2,S3 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19