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特許7129568踵の高い履物の底構造物およびこれを備えた踵の高い履物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】踵の高い履物の底構造物およびこれを備えた踵の高い履物
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/41 20060101AFI20220825BHJP
   A43B 13/16 20060101ALI20220825BHJP
【FI】
A43B13/41
A43B13/16
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021530937
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 KR2019015367
(87)【国際公開番号】W WO2020111587
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-28
(31)【優先権主張番号】10-2018-0150456
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0138492
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520154645
【氏名又は名称】キム,イル ス
【氏名又は名称原語表記】KIM,Il Soo
【住所又は居所原語表記】103-202,86,Seongbok 2-ro,Suji-gu,Yongin-si,Gyeonggi-do 16850,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】キム,イル ス
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105310178(CN,A)
【文献】特開平09-187306(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0193683(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0007455(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/00~13/42
A43B 7/00~ 7/38
A43B 17/00~17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面を支持するフロント部、
前記フロント部から延長されて中足指節関節の後方部に位置し地面とは反対側の方向に曲がるベンディング部、そして
前記ベンディング部から延長されるリア部
を含み、
前記ベンディング部は、歩行周期中における踵離地(heel off)と足趾離地(toe off)の区間にて地面反対方向に凹状に曲がり、前記歩行周期中の遊脚期にて、地面の側の方向への曲がりが制限される、踵の高い履物の底構造物。
【請求項2】
前記ベンディング部は、地面とは反対側の方向に凹状曲面を成すベンディング曲面部からなる、請求項1に記載の踵の高い履物の底構造物。
【請求項3】
前記ベンディング曲面部は、足の縦軸に沿って引かれるベンディング部縦軸中心線の曲率に比べて、足の横軸と平行であり前記ベンディング部縦軸中心線と交差する線に沿って引かれるベンディング部横軸中心線の曲率が、より大きく形成される、請求項2に記載の踵の高い履物の底構造物。
【請求項4】
前記ベンディング部は、歩行周期中における踵離地(heel off)と足趾離地(toe off)の区間にて曲がって、前記リア部が足の内反と前記足の内転の方向における足の動きに対応する、請求項1に記載の踵の高い履物の底構造物。
【請求項5】
前記ベンディング部横軸中心線は、内側部(medial side portion)の曲率よりも、外側部(lateral side portion)の曲率が、より大きく形成される、請求項3に記載の踵の高い履物の底構造物。
【請求項6】
前記ベンディング部は、内側部(medial side portion)の厚さよりも、外側部(lateral side portion)の厚さが、より厚く形成される、請求項1に記載の踵の高い履物の底構造物。
【請求項7】
前記ンディング部は、内側部(medial side portion)と外側部(lateral side portion)との曲がりの程度を異なるようにする、少なくとも一つ以上のベンディング調節ホール部またはベンディング調節凹部を備えた、請求項1に記載の踵の高い履物の底構造物。
【請求項8】
底構造物を備えた踵の高い履物において、
前記底構造物は、
地面に支持されるフロント部、
前記フロント部から延長されて中足指節関節の後方部に位置し、地面とは反対の側の方向に曲がるベンディング部、そして
前記ベンディング部から延長されるリア部
を含み、
前記ベンディング部は、歩行周期中における踵離地(heel off)と足趾離地(toe off)の時期にて、地面とは反対側の方向に凹状に曲がり、前記歩行周期中の遊脚期にて地面の側の方向への曲がりが制限される、踵の高い履物。
【請求項9】
前記ベンディング部は、地面とは反対の側の方向に凹状曲面を成すベンディング曲面部からなる、請求項に記載の踵の高い履物。
【請求項10】
前記ベンディング曲面部は、足の縦軸に沿って引かれるベンディング部縦軸中心線の曲率に比べて、足の横軸と平行であり前記ベンディング部縦軸中心線と交差する線に沿って引かれるベンディング部横軸中心線の曲率が、より大きく形成される、請求項に記載の踵の高い履物。
【請求項11】
前記ンディング部は、歩行周期中における踵離地(heel off)と足趾離地(toe off)の区間にて曲がって、前記リア部が、足の内反と前記足の内転の方向への足の動きに対応する、請求項に記載の踵の高い履物。
【請求項12】
前記ベンディング部横軸中心線は、内側部(medial side portion)の曲率より外側部(lateral side portion)の曲率が、より大きく形成される、請求項10に記載の踵の高い履物。
【請求項13】
前記ベンディング部は、内側部(medial side portion)の厚さよりも、外側部(lateral side portion)の厚さが、より厚く形成される、請求項に記載の踵の高い履物。
【請求項14】
前記ベンディング部は、内側部(medial side portion)と外側部(lateral side portion)との曲がりの程度を異なるようにする、少なくとも一つ以上のベンディング調節ホール部またはベンディング調節凹部を備えた、請求項に記載の踵の高い履物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者が踵の高い履物を着用して歩行する際、人間の歩行の動きと類似の歩行メカニズムを有する、踵(かかと)の高い履物の底構造物およびこれを備えた踵の高い履物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人間の歩行周期中の立脚中期(midstance)以後、踵離地(heel off; take-off of heel)と足趾(足指)離地(toe off; take-off of toe)の時期に、中足指節関節(metatarsophalangeal joints)にて、足の甲の側への屈曲(伸展、extension)が発生し、同時に足の踵(heel of foot)の内反(inversion)と内転(adduction)の動きが発生する。
【0003】
従来の踵の高い履物を履いた歩行者は、起立(standing)や歩行中に、人体の体重が地面に負荷される際、踵が高いことから後足部(rearfoot)の安定性が低下して、足首捻挫(ankle sprain)を経験する。したがって、従来の踵の高い履物の底構造物(sole structure)は、履物が地面と接触して地面に支持される部分である、前面部分の後方境界から後足部末端まで、金属シャンク(metal shank)が挿入された非常に固い材質が使用される。
【0004】
また、従来の、踵の高い履物を履いた状態の足は、足底筋膜(plantar fascia)がぴんと引っ張られた状態であるので、足指を底側に屈曲させる受動的動き(passive movement)が発生する。したがって、従来の踵の高い履物を履いた状態の足は、踵の高い履物の地面に支持される部分である前面部分も、地面の側へと曲がろうとする力が作用する。したがって、踵の高い履物の前面部分は、人体の体重が地面に負荷されない遊脚期(swing phase)に、履物の形状を維持するために堅固に製作される。特に、踵の高い履物の地面に支持される前面部分の底に、プラットフォーム(platform)が取り付けられる場合には、前足部(forefoot)と後足部(rearfoot)の動きが全く許容されない。
【0005】
また、立脚中期(midstance)以後の踵離地(heel off)と足趾離地(toe off)の時期に、中足指節関節(metatarsophalangeal joints)から足の甲の側へと伸展(extension)が発生する。しかし、従来のハイヒールの底構造物は、柔軟でないのでこれに対応できず、足の踵が履物から抜け出て、正常な歩行が難しくなるという問題点がある。
【0006】
図24は、従来の踵の高い履物を履いた状態で、足の骨格と履物の主要構造物を示した側断面図であり、図25は、従来の踵の高い履物を製作することに使用される木型(last、「ラスト」とも言う)と一般的な底構造物を示した図である。
【0007】
一般的な踵の高い履物は、以下のような過程を通じて製作される。
【0008】
まず、踵の高い履物は、一般的な底構造物S(sole structure)と木型L(last)が結合された状態にて甲革Uを覆いかぶせた後に、一般的な底構造物Sに甲革Uを固く結合させる過程を通じて製作される。そして、踵の高い履物は、一般的な底構造物Sに、踵HとアウトソールOを結合して製作される。一般的な底構造物Sは、起立(standing)や歩行の安定性(stability)のために、地面を支持する部分(図24のA部分)の後方境界BLから後足部末端まで(図25にてドット(dot)で示されたB部分)に、金属シャンクMS(metal shank)が挿入されている。即ち、一般的な底構造物Sは、地面を支持する部分の後方境界BL部分から後足部まで連結される、非常に固い金属シャンクMS(metal shank)が結合される。
【0009】
一方、足における体重が負荷される部位は、足の踵、第1中足骨頭(1st heads of metatarsal bones)、そして第5中足骨頭(5th heads of metatarsal bones)である。前述の三地点は、互いにアーチ形態に連結されていて、効率的な体重負荷と歩行を可能にする。
【0010】
踵の高い履物にて中足骨頭MTBH(heads of metatarsal bones)は、その後方部が人為的に上がっている。したがって、従来の底構造物S中における地面に支持されずに空中に浮かんでいる部分Bは、非常に堅固な材質が使用される。また、踵の高い履物の踵Hは、従来の底構造物Sの後方に結合されて、履物の形状を維持する。
【0011】
図26は、従来の踵の高い履物を履いた状態における、中足指節関節の伸展(extension of metatarsophalangeal joints)の状態を説明するための図である。
【0012】
一般に、踵の高い履物を履けば、中足指節関節MTPは、履物の形状に起因して、常に伸展された状態を維持するようになることから、足底筋膜PF(plantar fascia)がぴんと引っ張られるようになる(図26で仮想線の矢印で表示する)。このように足底筋膜PFが引っ張られれば、中足指節関節MTP(metatarsophalangeal joint)を屈曲(flexion)させる受動的動き(passive movement)が発生して、足指が足裏側に曲がろうとする力が発生する(図26で実線の矢印で表示する)。したがって、踵の高い履物における地面を支持する部分は、履物の形状を維持するために、ある程度堅固に製作される。
【0013】
図27の(a)~(c)は、従来の、踵の高い履物の問題点を説明するための図である。図27の(a)は踵の高い履物を履いた状態における起立(standing)や歩行中の立脚中期(midstance)を示した図であり、図27の(b)は歩行中における踵離地(heel off)の時期を示した図であり、図27の(c)は、歩行中における足趾離地(toe off)時期を示した図である。
【0014】
従来の底構造物Sは、地面を支持する部分が、ある程度柔軟に製作されても踵離地(heel off)の時期には底構造物Sが曲がらない。踵離地(heel off)の時期には、中足骨頭MTBHを通じて体重が地面に負荷されるので、足の踵が地面から離れても、中足骨頭MTBHを含む足の前面部は地面と接触しているようになる。したがって、従来の底構造物Sは、地面を支持する部分が、ある程度柔軟でも、踵離地(heel off)時期には、底構造物Sが曲がらなくなって、足の踵が履物から抜け出るようになる。
【0015】
足趾離地(toe off)の時期には、中足骨頭MTBHが地面から離れることで足指のみに体重が負荷される。したがって、従来の底構造物Sで、地面を支持する部分が、ある程度柔軟に製作される場合、中足指節関節(metatarsophalangeal joint)の下方の部位で、ある程度曲がれるようになる。しかし、この場合にも、足の動きをついて行く程度に十分に曲がらなくなって、図27の(c)に示したように足の踵は、履物からさらに抜け出るようになる。
【0016】
したがって、従来の底構造物Sが適用された踵の高い履物は、歩行による足の動きについて行けず、足を支持(support)することができなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明は前記問題点を解決するために提案されたものであって、本発明の目的は、遊脚期(swing phase)には中足指節関節(metatarsophalangeal joint)の屈曲(flexion)を制限して履物の形状を維持し、地面に体重が負荷される立脚期(stance phase)や起立(standing)の時には体重を支持して歩行の安定性を向上させる、踵の高い履物の底構造物およびこれを備えた踵の高い履物を提供することにある。
【0018】
本発明の他の目的は、歩行中の踵離地(heel off)および足趾離地(toe-off)時期に中足指節関節(metatarsophalangeal joint)の伸展(extension)が可能なようにして足の動きに最適化される踵の高い履物の底構造物およびこれを備えた踵の高い履物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記のような本発明の目的を達成するために、本発明は、地面を支持するフロント部、前記フロント部から延長されて中足指節関節の後方部に位置し地面とは反対側に曲がるベンディング部、そして前記ベンディング部から延長されるリア部を含む、踵の高い履物の底構造物を提供する。
【0020】
前記ベンディング部は、地面とは反対の側に凹状曲面を成すベンディング曲面部からなるのが好ましい。
【0021】
前記ベンディング曲面部は、足の縦軸に沿って引かれるベンディング部縦軸中心線の曲率に比べて、足の横軸と平行であり前記ベンディング部の縦軸中心線と交差する線に沿って引かれる、ベンディング部の横軸中心線の曲率が、さらに大きく形成されるのが好ましい。
【0022】
前記ベンディング部は、前記歩行周期中における踵離地(heel off)と足趾離地(toe off)の区間で、地面とは反対の側へと凹状に曲がり、前記歩行周期中の遊脚期で地面方向に曲がりが制限されるのが好ましい。
【0023】
前記ベンディング部は、歩行周期中における踵離地(heel off)と足趾離地(toe off)の区間で曲がって、前記リア部が、足の内反と前記足の内転を行う方向へと足の動きに対応するのが好ましい。
【0024】
前記ベンディング部横軸中心線は、内側部(medial side portion)の曲率より外側部(lateral side portion)の曲率がさらに大きく形成されるのが好ましい。
【0025】
前記ベンディング部は、内側部(medial side portion)の厚さよりも、外側部(lateral side portion)の厚さが、より厚く形成されるのが好ましい。
【0026】
前記ベンディング部は、内側部(medial side portion)と外側部(lateral side portion)との曲がりの程度を異なるようにする、少なくとも一つ以上のベンディング調節ホール部またはベンディング調節凹部もしくは溝部を備えることができる。
【0027】
また、本発明は、底構造物を備えた踵の高い履物において、前記底構造物は、地面に支持されるフロント部、前記フロント部から延長されて中足指節関節の後方部に位置し地面とは反対の側へと曲がるベンディング部、そして前記ベンディング部から延長されるリア部を含む、踵の高い履物を提供する。
【発明の効果】
【0028】
このような本発明は、中足指節関節の後方またはフロント部の地面支持境界線を基準にして、後方側の底構造物に地面とは反対の方向にのみ曲がる一方向ベンディング部、または地面とは反対の方向に凹状に形成されるベンディング曲面部を形成することで、遊脚期には中足指節関節の屈曲(flexion)を制限し、立脚期(stance phase)や起立(standing)の時には足の安定性を維持することから、踵の高い履物を履いて歩行する際に、歩行の安定性を向上させる効果がある。
【0029】
また、本発明は、歩行中における踵離地(heel off)および足趾離地(toe-off)の時期に、中足指節関節の後方またはフロント部の地面支持境界線の後方の底構造物に形成されたベンディング部によって、底構造物の動きが中足指節関節(metatarsophalangeal joint)の伸展(extension)動きと足の踵の内転および内反の動きに一致することによって、安定性があって楽な歩行ができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施形態に使用される用語を説明するために足の骨格を示した図である。
図2】本発明の実施形態に使用される用語を説明するために踵の高い履物を履いた状態で足の骨格と踵の高い履物を示した側面図である。
図3】足の動きのうちの内反(inversion)と外反(eversion)を説明するための図である。
図4】足の動きのうちの内転(adduction)と外転(abduction)を説明するための図である。
図5】足の動きのうちの足裏側への屈曲(底屈)(plantar flexion)と足の甲の側への屈曲(背屈)(dorsiflexion)を説明するための図である。
図6】一般的な人間の歩行周期(gait cycle)を説明するために5段階に分類した立脚期(stance)を示した図である。
図7】素足歩行中の踵離地(heel off)状態を説明するための図である。
図8】素足歩行中の足趾(足指)離地(toe off)状態を説明するための図である。
図9a】(a)~(c)は柔軟性のある板構造物における曲がり(bending)の方向性を説明した図である。
図9b】(d)~(f)は柔軟性のある板構造物における曲がり(bending)の方向性を説明した図である。
図10】本発明の第1実施形態を説明するための、踵の高い履物を示した図である。
図11図10の踵の高い履物における主要部を分解して示した図である。
図12】本発明の第1実施形態の底構造物を示した斜視図である。
図13図12の側面図である。
図14図12のXIV-XIV部を切断して見た断面図である。
図15図12のXV-XV部を切断して見た断面図である。
図16】本発明の第1実施形態が適用された、踵の高い履物を着用した状態にて、ベンディング部が作用する過程を説明する図である。
図17】本発明の第1実施形態が適用された踵の高い履物を履いた場合、足を後方から見て足の踵の動きに対応する底構造物の動きを、従来と比較して説明するための図である。
図18】本発明の第2実施形態の底構造物を示した斜視図である。
図19図18のXIX-XIX部を切断して見た図である。
図20図18のXX-XX部を切断して見た図である。
図21】本発明の第2実施形態の補助部材Sbを取り付けられた図である。
図22】本発明の第3実施形態を説明するための底構造物を示した図である。
図23】本発明の第4実施形態を説明するための底構造物を示した図である。
図24】従来の踵の高い履物を履いた状態での足骨格と履物の主要構造物を示した側断面図である。
図25】従来の踵の高い履物製作に使用される木型と底構造物を示した図である。
図26】従来の踵の高い履物を履いた状態にて中足指節関節の伸展(extension of metatarsophalangeal joints)の状態を説明するための図である。
図27】従来の踵の高い履物で問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施形態について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳細に説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態に実現でき、ここで説明する実施形態に限定されない。図面で本発明を明確に説明するために説明上不必要な部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素については同一な参照符号を付与することにする。
【0032】
図1は本発明の実施形態の説明のために足の骨格構造を示した平面図であり、図2は踵の高い履物を履いた状態で足の骨格を側面から示した図である。
【0033】
本発明の実施形態の説明で使用される用語は次のように決めることにする。
【0034】
前方A(anterior or distal)は足指の側への方向を意味し、後方P(posterior or proximal)は足指とは反対の側への方向、即ち、足の踵の側への方向を意味する。内側M(medial)は体の中心へと向かう方向を意味し、外側L(lateral)は体の中心の側とは反対の方向を意味する。上方S(superior or dorsal)は足の甲の側への方向を意味し、下方I(inferior or plantar)は足の甲とは反対の側への方向、即ち、地面へと向かう方向を意味する。
【0035】
そして、足の縦軸LAは足の長さ方向を意味する。横軸TAは、縦軸LAと交差しながら、第1中足指節関節MTP1(1st metatarsophalangeal joint)と、第5中足指節関節MTP5(5th metatarsophalangeal joint)とを連結した線を意味する。
【0036】
中足指節関節MTP(metatarsophalangeal joint)は、中足骨MTB(metatarsal bones)と、基節骨PP(proximal phalanx)との間の関節を意味する。
【0037】
前足部FF(forefoot)は、足根中足関節TMT(tarsometatarsal joint)を基準にして前方の部分を意味する。中足部MF(midfoot)は、足根中足関節TMT(tarsometatarsal joint)と、横足根関節TT(transverse tarsal joint)との間を意味する。後足部RF(rearfoot)は、横足根関節TT(transverse tarsal joint)の後方の部分を意味する。
【0038】
中足骨頭MTBH(heads of metatarsal bones)は、中足骨MTB(metatarsal bone)の頭部を意味する。中足骨頭MTBHのうちの第1中足骨頭MTBH1(1st heads of metatarsal bones)と、第5中足骨頭MTBH5(5th heads of metatarsal bones)と、足の踵とは、起立や歩行の際に地面へ体重が負荷される部位である。
【0039】
図3は、本発明の実施形態を説明するために足の踵の動きのうちの、内反(inversion)と外反(eversion)の動きを示した図である。足の踵の動きのうちの内反(inversion)は、身体の中心(mid line)を基準にして足の踵が内側に回転する動き(Twisting movement of the foot inward)を意味する(図3の(a)における左側への方向の仮想線矢印)。足の踵の動きのうちの外反(eversion)は、身体の中心(mid line)を基準にして、足の踵が外側に回転する動き(Twisting movement of the foot outward)を意味する(図3の(c)における右側への方向の仮想線矢印)。図3にて、符号AHは、足の踵の軸(axis of heel)である。
【0040】
図4は、本発明の実施形態を説明するために足の動きのうちの内転(adduction)と外転(abduction)の動きを示した図である。足の動きのうちの内転(adduction)は、人体の中心を基準にして、足が内側へと近くなる動きを意味する(図4における右側への方向に表示された仮想線矢印)。足の動きのうちの外転(Abduction)は、人体の中心を基準にして足が外側へと遠くなる動きを意味する(図4における左側への方向に表示された仮想線矢印)。内反と外反は回転運動である反面、内転と外転は直線運動である。
【0041】
図5は、本発明の実施形態を説明するために足の中足指節関節MTPで発生する動きを示した図である。中足指節関節MTPの伸展(extension)は、足指が上側に曲がる動きを意味する(図5にて上方へと表示された仮想線矢印)。踵の高い履物を履けば、履物の形状に起因して、中足指節関節MTPは常に伸展された状態を維持するようになる。中足指節関節MTPの屈曲(flexion)は、足指が下方に曲がる動きを意味する(図5にて下方に表示された仮想線矢印)。
【0042】
素足を基準にして、人間の歩行周期による足の動きを、図6を通じて説明する。
【0043】
図6の(a)~(e)は、人間の歩行周期を説明するための図である。
【0044】
人間の歩行周期は、片足(図面に斜線で表示した部分)を基準にして立脚期(stance phase)と遊脚期(swing phase)に区分される。
【0045】
立脚期(stance phase)は、歩行中に足の一部分が地面に触れている状態である。このような立脚期(stance phase)は、踵接地(heel strike)、荷重反応期(loading response)、立脚中期(midstance)、踵離地(heel off)、および足趾離地(toe off)の5段階に区分することができる。
【0046】
踵接地(heel strike)は、足の踵が地面に接触される瞬間を意味する。荷重反応期(loading response)は、踵接地(heel strike)の後に、足裏の全体が地面に接触する段階である。
【0047】
踵接地(heel strike)と荷重反応期(loading response)は、地面からの衝撃を吸収し体重を分散させる過程である(図6の(a)と(b)に示す)。立脚中期(midstance)は、脚が地面に垂直に置かれている状態にて、足に体重が最大にのせられる段階である(図6の(c)に示す)。踵離地(heel off)は、足の踵が地面から離れる段階である(図6の(d)に示す)。足趾離地(toe off)は、つま先が地面から離れる(the toes leave the ground)段階である(図6の(e)に示す)。
【0048】
一方、遊脚期(swing phase)は、足全体が地面と離れている状態を意味する。遊脚期の間にはトウクリアランス(toe clearance)が充分でなければならない。即ち、つま先が地面に引きずられたり(toe drag)、引っ掛かったりしなければこそ、倒れて怪我をする危険性が減って安定した歩行が行われる。歩行は、立脚期と遊脚期(swing phase)が反復的に循環しながら行われる。
【0049】
図7の(a)は素足歩行中の踵離地(heel off)状態の側面であり、図7の(b)は素足歩行中の踵離地(heel off)状態を後方(足の踵側)からみた図である。
【0050】
立脚中期(midstance)以後には、足の踵が地面から離れるので、地面と接触する前面部足(front foot)を基準にして、足の踵の動きが発生する。踵離地(heel off)段階では、中足骨頭MTBHから足指の指先まで地面と接触して体重が地面に負荷される。
【0051】
素足の踵離地(heel off)の状態では、足の踵が地面から離れるに伴い中足指節関節MTP(metatarsophalangeal joints)の伸展(extension、図7の(a)における仮想線矢印の方向の動き)が起こる。そして、これと同時に足の踵が内側に回転する動きである内反(inversion、図7の(b)における仮想線曲線矢印(i)の方向の動き)と、内側に近くなる動きである内転(adduction、図7の(b)における仮想線直線矢印(a)の方向の動き)が発生する。
【0052】
図8の(a)は、素足歩行中の足趾離地(toe off)状態の側面であり、図8の(b)は素足歩行中の足趾離地(toe off)状態を後方(足の踵側)から見た図である。
【0053】
足趾離地(toe off)段階では、中足骨頭MTBHが地面から離れるに伴い足指を通じてのみ体重が地面に負荷される。
【0054】
図8に示したように、足趾離地(toe off)時期には、中足指節関節MTP(metatarsophalangeal joint)がさらに伸展されるに伴い、足の踵の内反(inversion)と内転(adduction)の動きが最大となる。
【0055】
図9aと図9bの(a)~(f)は、柔軟性のある板構造物における曲がり(bending)の方向性を説明した図である。
【0056】
図9aの(a)に示したように、湾曲のない柔軟な平板構造物(flat plate)は、曲がりに対する方向性がなくて、縦軸面LP(Longitudinal plane)と横軸面TP(Transverse plane)に沿って、上方と下方に全て容易に曲がる。
【0057】
図9aの(b)は、一つの軸に沿って湾曲を与えたとき(zero gaussian curvature)、これと交差する軸に沿って曲がり(bending)が制限されるのを説明するための図である。図9aの(b)に示したように、横軸面TPに沿って上方に凹状に湾曲を与えたとき、これと交差する縦軸面LPでの曲がり(bending)は制限され、特に下方へと向かった曲がりが、最も多く制限される。
【0058】
図9aの(c)と図9bの(d)は、互いに交差する2つの軸に沿って湾曲を与えた時における、曲がり(bending)の方向性を説明した図である。
【0059】
図9aの(c)に示したように、横軸面TPに沿った湾曲の方向(上方に凹)と、縦軸面LPに沿った湾曲の方向(下方に凹)が反対である場合(negative gaussian curvature)には、縦軸面と横軸面に対する上方および下方への曲がり(bending)が全て制限される。反面、図9bの(d)に示したように、2つの軸に対する湾曲の方向が同一である場合(positive gaussian curvature)、例えば縦軸面LPと横軸面TPに沿って上方に全て凹であれば、縦軸面LPと横軸面TPの全てで、下方への曲がり(bending)が制限される。
【0060】
図9bの(e)は、傾斜が急な湾曲形状であるほど、湾曲軸と交差する軸にて湾曲方向の反対の方向に曲がるのはさらに制限されるのを説明するための図である。図9bの(e)に示したように、横軸面TPに沿って上方への凹状湾曲が急であるほど、即ち、曲率が大きいほど、これと交差する縦軸面LPにて下方へと向かった曲がり(bending)はさらに制限される。
【0061】
図9bの(f)は、図9bの(e)と同様に横軸面TPの曲率を縦軸面LPの曲率より大きくし、横軸面TPの曲率について、内側部の曲率(rM)より外側部の曲率(rL)をより大きくして、横軸面TPで切断して見た図である。外側部の湾曲が内側部より急なので、縦軸面LPで下方に向かった曲がりは、外側部が内側部よりさらに制限される。
【0062】
曲線の曲率は、曲線上にある点(point)での曲率で表現される。したがって、2次元上の平面曲線(plane curve)の曲率(curvature)大きさは、それぞれの平面曲線における最大曲率値を有する点の曲率値でもって比較することができる。または、曲線上の全ての点で曲率値を求めて、それに対する平均でも比較することができる。
【0063】
図10は、本発明の第1実施形態を説明するために踵の高い履物を示した図であり、図11は、図10の踵の高い履物を分解して主要部を示した図である。
【0064】
本発明の第1実施形態の踵の高い履物は、足固定部1、インソール3(insole)、底構造物5(sole structure)、アウトソール7(outsole)そして踵9(heel)を含む。
【0065】
足固定部1は、足を覆う部分であって、履物の形状を成し皮革などから製作される。そして、インソール3は、足裏に直接接触される部分である。底構造物5は、歩行者の荷重を支持すると同時に履物の形態を維持することができる。そして、インソール3は、底構造物5の上方に結合できる。アウトソール7は、底構造物5の下方に結合されて前方側が地面に直接接触する。踵9は、底構造物5に結合されて足の踵荷重を支持する役割を果たす。
【0066】
本発明の実施形態の底構造物5は、踵の高い履物にて、体重を支持し履物のフレームの役割を果たす靴底(sole)であって、中底(midsole)あるいは中敷(inner sole)などの用語で使用されうる。
【0067】
図12は、本発明の第1実施形態の底構造物5を示した斜視図であり、図13は、図12の側面図である。図12にて、仮想の線で表示した縦軸線5aと横軸線5bは、底構造物5の湾曲度(曲率)を表現するために底構造物5に格子線(grid line)を投影(projection)したものである。図12に示された縦軸線5aは、地面に向かって垂直方向に底構造物5に投影された線であり、足の縦軸LAと平行な線である。図12に示された横軸線5bは、直線AB(図13にて示す)に対して直角方向に底構造物5に投影された線であり、足の横軸TAと平行な線である。図13に示された直線ABは、底構造物5の後方末端地点PAと、地面を支持するフロント部11の後方端地点PBを連結した線であって足の縦軸と平行な直線である。このような縦軸線5aと横軸線5bは格子線(grid line)を成しこれを投影(projection)したものである。
【0068】
本発明の第1実施形態の底構造物5は、図12図13に示したように、フロント部11、ベンディング部13、そしてリア部15を含む。
【0069】
フロント部11は、荷重反応期(loading response)に、踵の高い履物の前方側が地面に支持される部分である。
【0070】
本発明の第1実施形態では、フロント部11が地面を支持する部分のうちの一部分のみをカバーする大きさで形成される例を図示して説明する。本発明の第1実施形態の底構造物5は、フロント部11が地面を支持する部分のうちの一部分のみカバーする大きさで形成されるとき、図11に示したように、別途の補助部材Sb1、Sb2がフロント部11に取り付けられうる。
【0071】
フロント部11は、ベンディング部13に延長される後方部分が平面図で見る時、前方に向かって凹状のラウンド形態の境界を有する地面支持境界線BLを含むことができる。
【0072】
このようなフロント部11の地面支持境界線BLは、フロント部11が地面に堅固に支持されるようにして立脚期に歩行の安定性を向上させる。また、フロント部11は、地面支持境界線BLの形状によって曲がり(bending)が制限されて履物形状を維持することができる。
【0073】
バンディング部13は、地面と反対方向にのみ曲がる一方向ベンディング部または地面反対方向に凹状曲面を成すベンディング曲面部からなり得る。
【0074】
ベンディング部13は、フロント部11の地面支持境界線BLから延長されて、中足指節関節MTPの後方部に位置するのが好ましい。言い換えれば、ベンディング部13は、フロント部11の地面支持境界線BLを基準にして、足の踵側に位置するのが好ましい。即ち、ベンディング部13は、フロント部11の地面支持境界線BLと、中足部MFと前足部FFとが成す境界線(図13図15で点線で表わす)との間に配置することができる。
【0075】
ベンディング部13は、ベンディング曲面部から形成されて、地面の側へと向かう方向への曲がりが制限され、地面とは反対側の方向に柔軟に曲がり得る。即ち、ベンディング部13は、地面と反対側の方向に向かって一方向に曲がり得る。
【0076】
ベンディング部13は、地面の反対の方向に凹状曲面を成すベンディング曲面部からなることが好ましい。したがって、ベンディング部13で、ベンディング部縦軸中心線13acと平行な縦軸線13a(図12で長さ方向に表示された仮想の線)と、ベンディング部横軸中心線13bcと平行な横軸線13b(図12で幅方向に表示された仮想の線)は、地面とは反対の方向に凹状に成される曲率を有する。本発明の第1実施形態の説明で、ベンディング部縦軸中心線13acは、ベンディング部13にて足の縦軸LAを通過する中心線であり、ベンディング部横軸中心線13bcは、足の横軸TAと平行でありながらベンディング部13の中間部分を幅方向に通過する中心線である。
【0077】
ベンディング部横軸中心線13bcの曲率r2は、ベンディング部縦軸中心線13acの曲率r1よりも大きく形成されるのが好ましい。曲率とは、一点が一定の速度で曲線に沿って移動する際に発生する接線の傾きの変化を意味するので、平面曲線(plane curve)の曲率は、曲線上にある点(point)での曲率で表現される。従って、本発明の説明で「ベンディング部横軸中心線13bcの曲率r2がベンディング部縦軸中心線13acの曲率r1より大きい」というのは、ベンディング部横軸中心線13bcにて最大曲率値を有する点の曲率値が、ベンディング部縦軸中心線13acにて最大曲率値を有する点の曲率値よりも大きいことを意味する。または、バンディング部横軸中心線13bcの曲率値の平均(average)が、ベンディング部縦軸中心線13acの曲率値の平均(average)よりも大きいことを意味する。また、このような曲率値の大きさを比較することにおいて、ベンディング部13の境界部、特にフロント部11との境界部や両側終端での曲率値は除外されるのが当然である。
【0078】
このように、バンディング部縦軸中心線13acの曲率r1よりベンディング部横軸中心線13bcの曲率r2がさらに大きく形成されれば、図9bの(e)で説明したように、縦軸にて下方に向かった曲がり(bending)はさらに制限される。ベンディング部13は立脚中期(midstance)以後、踵離地(heel off)および足趾離地(toe off)時期に、地面反対方向へと凹状に曲がり、地面方向への曲がりが制限される。言い換えれば、ベンディング部13は中足指節関節MTP(metatarsophalangeal joint)の伸展(extension)の動きと同じ方向に曲がり、中足指節関節MTP(metatarsophalangeal joint)の屈曲(flexion)の動きと同じ方向に曲がるのが制限される。
【0079】
このようなベンディング部13は、歩行中の立脚中期(midstance)以後、踵離地(heel off)と足趾離地(toe off)時期に、中足指節関節MTP(metatarsophalangeal joint)の伸展(extension)の動きと同じ方向に曲がる柔軟性(flexibility)を有する。したがって、素足の歩行と同様に、踵の高い履物を履いた状態でも、歩行者は踵離地(heel off)と足趾離地(toe off)の時期に自然な歩行が可能である。
【0080】
また、ベンディング部13は、歩行中の踵離地(heel off)と足趾離地(toe off)時期に、素足の動きと同じ方向に曲がるに伴いリア部15も上方に動くので、足の踵が、足固定部1から抜け出ることを防止する役割を果たす。
【0081】
着用者が踵の高い履物を履けば、足底筋膜PF(plantar fascia)がぴんと引っ張られて、中足指節関節MTP(metatarsophalangeal joint)を屈曲(flexion)させる力が発生するようになる(図26で示す)。特に、遊脚期(swing phase)の間には履物の底が地面から離れているので、中足指節関節MTP(metatarsophalangeal joint)の屈曲(flexion)によって、履物の前方端が地面の側へと曲がり得る。
【0082】
本発明のベンディング部13は、遊脚期(swing phase)の間に、地面の側の方向における曲がりが制限されるので、中足指節関節MTP(metatarsophalangeal joint)が屈曲(flexion)される動きも制限するようになる。したがって、遊脚期の間にトウクリアランス(toe clearance)が十分に提供されるので、履物の先端部が地面に引きずられることや引っ掛かることがなく安定した歩行が行われる。
【0083】
一方、ベンディング部13の内側と外側の縁部分は、フロント部11と地面支持境界線BLの両側へと、さらに延長される支持補強部13e、13fを形成することができる。このようなベンディング部13の支持補強部13e、13fは、ラウンド(丸い)形態の地面支持境界線BLにおける両側面から上方へと延長されるので、地面とは反対の方向に凹状に曲がるのを許容するが、地面の側への方向に曲がるのをさらに制限することができる。
【0084】
従って、本発明の底構造物5は、足の動きのうち、踵離地(heel off)および足趾離地(toe off)の時期にあっては、中足指節関節MTP(metatarsophalangeal joint)の伸展(extension)の動きをさらに容易に許容する。また、本発明の底構造物5は、遊脚期(swing phase)にあっては、中足指節関節MTP(metatarsophalangeal joint)の屈曲(flexion)の動きをさらに制限することができる。したがって、踵の高い履物を履いた歩行者は、より安定性を有する歩行が可能である。
【0085】
このような本発明は、底構造物5が簡単な構造から形成されて、生産費用および製造費用を減らすことができる。即ち、本発明の底構造物5は、立脚中期(midstance)以後、踵離地(heel off)と足趾離地(toe off)の時期に、中足指節関節MTP(metatarsophalangeal joint)の伸展(extension)の動きを最大限確保することができる。これと同時に、本発明の底構造物5は、遊脚期にて、中足指節関節MTP(metatarsophalangeal joint)の屈曲(flexion)の動きを制限する構造を有しながらも簡単な構造から形成されて、踵の高い履物に容易に適用することができ製造費用を減らすことができる。
【0086】
図14は、第1実施形態でベンディング部13の横断面を前面から眺めた図であって、ベンディング部横軸中心線13bcの曲率r2を、外側部分13cの曲率r3と、内側部分13dの曲率r4とに分割して示した。図15は、第1実施形態で底構造物5の縦軸に沿って切断して見た図である。
【0087】
本発明の第1実施形態で、ベンディング部13は外側部分13cの曲率r3が内側部分13dの曲率r4に比べてさらに大きく形成されるのが好ましい。このようなベンディング部13は、内側部分13dが外側部分13cよりさらに柔軟であるのを意味する。
【0088】
立脚中期(midstance)以後には履物の踵9が地面と離れるようになるので、底構造物5のフロント部11のみが地面と接触して体重が負荷されるようになる。したがって、踵離地(heel off)と足趾離地(toe off)時期にはフロント部11が地面に固定された状態で底構造物5の残り後方部位で動きが発生する。即ち、ベンディング部13における内側部分13dと外側部分13cの柔軟性の差によってリア部15の動きの方向が決定される。
【0089】
従って、本発明の底構造物5は、歩行周期のうちの踵離地(heel off)と足趾離地(toe off)区間でベンディング部13から後方に延長されたリア部15がフロント部11を基準にして上方に上がる(図15で仮想線矢印方向)と同時に内側M方向に回転(twisting movement、図14で仮想線曲線矢印)および移動(図14で仮想線直線矢印)するようになる。したがって、歩行周期中の踵離地(heel off)と足趾離地(toe off)区間でリア部15は足の踵の内反(inversion)と内転(adduction)方向と同一の方向に動くようになる。即ち、このようにベンディング部13が外側部分13cの曲率r3が内側部分13dの曲率r4に比べてさらに大きい構造は歩行者が踵の高い履物を履いた場合にも足の踵の動きと同じ方向に底構造物5のリア部15が動き得る。従って、本発明の底構造物5が適用された踵の高い履物を履いた歩行者はさらに安定性のある歩行が可能である。
【0090】
リア部15は、ベンディング部13から後方に延長されて足の踵部分を支持することができる部分である。図15で示したように、リア部15は縦軸に沿って地面方向に凹状曲面を成し、横軸に沿って地面反対方向に凹状曲面に成されることが好ましい。このような本発明のリア部15は横軸と縦軸で湾曲方向を別にして全ての方向で曲がり(bending)が制限される。また、リア部16は、その厚さを増やすか堅固な材質のシャンク(shank)を挿入あるいは取付けて曲がり(bending)を制限することもできる。
【0091】
このようなフロント部11、ベンディング部13、そしてリア部15は踵の高い履物を履いた状態の歩行で底構造物5が足裏の3次元動きに対応して曲がるので、安定した歩行が可能である。また、本発明の底構造物は同一な材質の合成樹脂材から加工できて製造費用を減らすことができる。
【0092】
図16は、本発明の第1実施形態を説明するために踵の高い履物を着用した状態で歩行する時にベンディング部13が作用する過程を説明するための図である。
【0093】
図16の(a)は、歩行周期中の踵接地(heel strike)状態を示した図である。図16(a)は、中足指節関節MTP(metatarsophalangeal joint)の後方または地面を支持するフロント部11の後方にあるベンディング部13が地面方向に曲がらない状態を示す。もちろん、ベンディング部13は遊脚期(swing phase)でも地面方向に曲がらない。即ち、本発明の底構造物5はベンディング部縦軸中心線13acの曲率r1よりベンディング部横軸中心線13bcの曲率r2がさらに大きく成されるので踵接地(heel strike)および遊脚期(swing phase)に地面方向に曲がらない。また、本発明の底構造物5はベンディング部13の支持補強部13e、13fによって踵接地(heel strike)および遊脚期(swing phase)にベンディング部13とフロント部11が地面方向に曲がることがさらに制限される。言い換えれば、本発明の底構造物5が適用された踵の高い履物を履いて歩行する際、足底筋膜が引っ張られながら足指が地面方向に屈曲(flexion)される力が発生するが、ベンディング部13の作用でベンディング部13とフロント部11が地面の側の方向に曲がることを防止する。
【0094】
従って、本発明の第1実施形態の底構造物5は遊脚期(swing phase)および踵接地(heel strike)の時期に、中足指節関節(metatarsophalangeal joint)の伸展(extension)の状態を維持するようにして安定性のある歩行を可能にする。
【0095】
そして、ベンディング部13は踵接地(heel strike)の直後の荷重反応期(loading response)にフロント部11が地面を支持するようになり、この際にも曲がりが制限される。
【0096】
図16の(b)は、歩行周期中の立脚中期(midstance)状態を示した図である。図16の(b)は、フロント部11が地面を支持している状態である。ベンディング部13は、立脚中期(midstance)に遊脚期(swing phase)および踵接地(heel strike)の時期と同様に曲がらない。
【0097】
図16の(c)は、歩行周期中の踵離地(heel off)状態を示した図である。図16の(c)は、中足指節関節MTP(metatarsophalangeal joint)の後方または地面を支持するフロント部11の後方にあるベンディング部13が、地面とは反対の方向に曲がる状態を示す。踵離地(heel off)の時期には、足の踵が地面から離れるが、中足骨頭MTBHを通じて地面に体重が継続して負荷される。したがって、地面支持境界線BLの前方に位置するフロント部11は、地面と接触しているようになって曲がらず、地面支持境界線BLの後方に位置するベンディング部13が曲がるようになる。
【0098】
本発明のベンディング部13は、縦軸と横軸に対する湾曲方向が同一であるので、踵離地(heel off)の時期に、上方へと凹状の曲面を形成しながら曲がる。また、ベンディング部13は、踵離地(heel off)の時期に、ベンディング部縦軸中心線13acの曲率r1よりもベンディング部横軸中心線13bcの曲率r2が、より大きい構造によって、横軸と交差する縦軸に沿って地面の側への方向の曲がり(bending)は、さらに制限される。
【0099】
また、リア部15がベンディング部横軸中心線13bcで外側部分13cの曲率r3が内側部分13dの曲率r4に比べてさらに大きい構造によって足の踵の内反(inversion)と内転(adduction)の動きに対応して動く。従って、本発明の第1実施形態の底構造物5は素足での歩行と同様に中足指節関節MTP(metatarsophalangeal joint)の伸展(extension)の動きと同じ方向に曲がり、同時に足の内反(inversion)と内転(adduction)動きと同じ方向に曲がる。したがって、本発明の第1実施形態であると、踵の高い履物を着用して歩行しても、安定性がある歩行が行われる。
【0100】
また、このような本発明の第1実施形態の底構造物5は、ベンディング部13が地面とは反対の方向に容易に曲がるに伴い、リア部15が素足の歩行と同じ方向に足の踵が移動して、足の踵から履物が離脱するのを防止することができる。
【0101】
図17は、従来の踵の高い履物と、本発明の第1実施形態の踵の高い履物を履いた場合、足の後方から見て、足の踵の動きに対応する底構造物5の動きを比較して説明する図である。
【0102】
図17の(a)は、従来の踵の高い履物を履いた状態で、踵離地(heel off)時期に、足の踵の内反(inversion)と内転(adduction)の動きが発生する際、履物の底構造物と、足の踵とが互いに離れる状態を示す。踵離地(heel off)の時期には、踵9が地面から離れるので、地面Gを基準にして足の踵と底構造物のリア部15とが互いに別々に動く。従来の底構造物は、柔軟性が不足であり曲がっても上方にのみ曲がるので、足の踵の動きと底構造物の動きとは一致しなくなる。即ち、図17の(a)で示したように、足の踵の軸AHは靴の踵9の軸AHSと一致しなくなる。
【0103】
反面、図17の(b)は、本発明の第1実施形態の踵の高い履物を履いた状態で、踵離地(heel off)の時期に、底構造物5のリア部15が足の踵の動きと同一の方向に動く状態を示す。本発明の第1実施形態のリア部15は、前述の第1実施形態のベンディング部13の作用で上方に動くことが容易であり、同時に、足の踵の内反(図17の(b)における仮想線曲線の矢印(i))と、内転(図17の(b)における仮想線直線の矢印(a))の動きに対応して、内側方向に回転および移動する。したがって、足の踵の軸AHと、靴の踵9の軸AHSとは互いに一致するようになって、歩行の安定性を向上させることができる。
【0104】
図18は、本発明の第2実施形態を説明するために示した図である。図19は、図18の底構造物5のベンディング部13を横軸中心線に沿って切断して見た断面図である。図20は、図18の底構造物5を縦軸中心線に沿って切断して見た断面図である。図21は、第2実施形態で補助部材Sbを取付けた図である。本発明の第2実施形態は第1実施形態と比較して異なる点のみを説明し、同一の部分はその説明で代替することにする。
【0105】
本発明の第2実施形態の底構造物5は、ベンディング部13の一方向柔軟性をさらに強化し、内側部13h(medial side portion)と外側部13i(lateral side portion)との曲がりの程度を異なるようにするために、ベンディング部13に少なくとも一つ以上のベンディング調節凹部13gを備えることができる。
【0106】
本発明の第2実施形態では、一つのベンディング調節凹部13gを備える例を図示して説明する。
【0107】
本発明の第2実施形態の底構造物5は、ベンディング部13の中心部にベンディング調節凹部13gを備えて厚さを減らすことによってベンディング部13の一方向柔軟性をさらに強化することができる。言い換えれば、ベンディング部13は、縁の厚さT2、T3より中心部の厚さT1をより薄く構成することができる。また、ベンディング部13は内側縁の厚さT2を外側縁の厚さT3より薄くして、踵離地(heel off)および足趾離地(toe off)の時期に、足の踵の内反(inversion)と内転(adduction)動きに、さらに円滑に対応するようにすることができる。前述の本発明の第1実施形態では、フロント部11とベンディング部13との境界部BLがラウンド(湾曲)形態の線からなった例を説明したが、本発明の第2実施形態のフロント部11とベンディング部13の境界部は、フロント部11とベンディング部13がなめらかな曲面でもって連結されるのでありうる。
【0108】
そして、図20に示したように、フロント部11は、前方側に行くほどその厚さを次第に薄く構成することができる。このような場合、図21に示したように、フロント部11の下側に補助部材Sbを取り付けても、フロント部11と補助部材Sbとの境界部で発生する段差を最少化することができる。したがって、別途の補助部材を省略して、踵の高い履物の製造工程を減らすことができる。また、補助部材Sbは従来の底構造物にて地面を支持する部分に使用される材質を使用することができ、歩行者の足の大きさや形状に合わせて、多様なデザインでもって実現することができる。
【0109】
図22は、本発明の第3実施形態を説明するための底構造物5を示した図である。本発明の第3実施形態は第1実施形態の底構造物5と比較して異なる点のみを説明し、同一の部分はその説明で代替する。
【0110】
本発明の第3実施形態では、フロント部11が、足指の側への方向、即ち、前方に延長されれば、支持部分の全体をカバーすることができる。即ち、このような本発明の第3実施形態では、第1実施形態と比較してみるとき、フロント部11と補助部材Sbを一体に構成したものである。即ち、このような本発明の第3実施形態は、補助部材Sbを省略し一つの工程で底構造物5を製作して部品の数を減らすことができる。
【0111】
図23は本発明の第4実施形態を説明するために示した図であって、底構造物5を示している。本発明の第4実施形態は前述の実施形態と比較して異なる点のみを説明し同一の部分はその説明で代替することにする。
【0112】
本発明の第4実施形態の底構造物5は、ベンディング部13の一方向柔軟性をさらに強化し、内側部(medial side portion)と外側部(lateral side portion)との曲がりの程度を異なるようにするために、ベンディング部13に少なくとも一つ以上のベンディング調節ホール部13j、13kを備えうる。
【0113】
本発明の第4実施形態のベンディング調節ホール部13j、13kおよび第2実施形態のベンディング調節凹部13gを備える場合のように、ベンディング調節ホール部13j、13kまたはベンディング調節凹部13gの境界の部位で、非常に大きい曲率値が発生しうる。したがって、ベンディング部横軸中心線13bcとベンディング部縦軸中心線13acの曲率の大きさを比較することにおいて、このような境界部位での曲率値は除外されるのが当然である。
【0114】
本発明の第4実施形態はベンディング部13にベンディング調節ホール部13j、13kを形成してベンディング部13の一方向曲がりをさらに容易にすることができる。
【0115】
また、本発明の第4実施形態では、内側部(medial side portion)に形成されるベンディング調節ホール部13jの大きさを、外側部(lateral side portion)に形成されるベンディング調節ホール部13kの大きさより大きくすることもできる。このような本発明の第4実施形態では、踵離地(heel off)および足趾離地(toe off)の時期に、リア部15が、足の踵の内反(inversion)と内転(adduction)の動きに対応して動くようにすることができる。また、ベンディング調節ホール部13j、13kは、より小さい大きさの孔を多数形成することで形成することもでき、孔の大きさや間隔およびその数を異にして形成することで、曲がりの程度を異なるようにすることができる。このような本発明の第5実施形態も、本発明の目的を達成するために、多様に構成することができることを示す。
【0116】
以上を通じて本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるのではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明および添付した図面の範囲内で、多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属するのは当然のことである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27