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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】自動車内装用トレイ
(51)【国際特許分類】
   B60R 5/04 20060101AFI20220825BHJP
【FI】
B60R5/04 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021537624
(86)(22)【出願日】2020-07-03
(86)【国際出願番号】 JP2020026246
(87)【国際公開番号】W WO2021024663
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2019144485
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390005430
【氏名又は名称】株式会社ホンダアクセス
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】山岸 卓正
(72)【発明者】
【氏名】鯉沼 康裕
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-240634(JP,A)
【文献】特開平9-156423(JP,A)
【文献】実開平5-58506(JP,U)
【文献】国際公開第2014/102866(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0057305(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0077748(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡層と、前記発泡層に積層された非発泡層と、を備える多層シートを含み、
底壁部と、
前記底壁部の外周縁から前記底壁部の厚さ方向に延びる周壁部であって、
その上縁部が、前記底壁部の中央部から見て外側又は内側に折り曲げられて補強部を構成している周壁部と、
前記補強部に設けられ、前記周壁部の屈折を許容する屈折許容部と、を備え、
前記非発泡層が、前記底壁部における前記周壁部が延びる側の表面及び前記周壁部の内側表面を構成する、自動車内装用トレイ。
【請求項2】
前記補強部及び前記屈折許容部はそれぞれ、前記周壁部において前記底壁部の中央部を挟んで対向する位置に一対以上設けられている請求項1に記載の自動車内装用トレイ。
【請求項3】
前記屈折許容部は、前記厚さ方向に延び、かつ、前記底壁部の中央部から見て前記周壁部の内側に向かって凹んだ凹条部であり、前記凹条部は前記底壁部の中央部から見て前記周壁部の外側に向かって突出した一対の凸条部に挟まれている、請求項1又は2に記載の自動車内装用トレイ。
【請求項4】
前記屈折許容部は、前記厚さ方向に延び、かつ、前記底壁部の中央部から見て前記周壁部の外側に向かって突出する凸条部であり、前記凸条部は前記底壁部の中央部から見て前記周壁部の内側に向かって凹んだ一対の凹条部に挟まれている、請求項1又は2に記載の自動車内装用トレイ。
【請求項5】
前記周壁部において、前記補強部及び前記屈折許容部以外の部分を連結部と定義したときに、
前記厚さ方向に直交する断面において、
前記連結部と前記凹条部との境界における前記連結部からの延長線と前記凹条部とがなす鋭角は、前記延長線と前記凸条部とがなす鋭角よりも小さい、請求項4に記載の自動車内装用トレイ。
【請求項6】
前記底壁部は、前記厚さ方向に直交する第1方向の長さよりも、前記厚さ方向及び前記第1方向にそれぞれ直交する第2方向の長さが長く、
前記屈折許容部は、前記周壁部における前記第2方向の中央部に配置されている請求項1から5のいずれか一項に記載の自動車内装用トレイ。
【請求項7】
前記周壁部が前記凸条部及び前記一対の凹条部を有しない平滑な外側表面を有すると仮定した場合のその外側表面を基準面としたときに、前記一対の凹条部の凹みの底部同士の間の前記基準面における距離αに対する、各凹条部の両側の凹みの起点のうち、前記凸条部とは反対側に位置する起点から前記凹みの底部までの前記基準面における距離βの比率(β/α)が、0.8以上1.2以下である、請求項4に記載の自動車内装用トレイ。
【請求項8】
前記非発泡層の表面には、シボ加工が施されている請求項1から7のいずれか一項に記載の自動車内装用トレイ。
【請求項9】
前記非発泡層は、オレフィン系エラストマーを含む請求項1から8のいずれか一項に記載の自動車内装用トレイ。
【請求項10】
前記一対の補強部は、前記底壁部の中央部上の空間を通して対向している請求項2に記載の自動車内装用トレイ。
【請求項11】
ラゲッジトレイである請求項1から10のいずれか一項に記載の自動車内装用トレイ。
【請求項12】
フロアトレイである請求項1から10のいずれか一項に記載の自動車内装用トレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車内装用トレイに関する。
本願は、2019年8月6日に日本に出願された特願2019-144485号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車において、空間を上下に仕切ったり、フロア上に小物を置いたりするため等に自動車内装用トレイが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
自動車内装用トレイは、底壁部と、底壁部の外周縁から底壁部の厚さ方向に延びる周壁部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-052874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車内装用トレイが、発泡層と、発泡層に積層された非発泡層と、を備える場合がある。例えば、自動車内装用トレイが所定の方向に長い等の場合に、自動車内装用トレイを所定の軸周りに曲げて、自動車内装用トレイにおける所定の方向の長さを短くして用いる場合がある。この場合、自動車内装用トレイにしわが生じ、自動車内装用トレイの意匠性が低下する虞がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、発泡層を有する自動車内装用トレイを曲げたときに生じるしわを目立たなくした自動車内装用トレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の自動車内装用トレイは、発泡層と、前記発泡層に積層された非発泡層と、を備える多層シートを含み、底壁部と、前記底壁部の外周縁から前記底壁部の厚さ方向に延びる周壁部であって、その上縁部が、前記底壁部の中央部から見て外側又は内側に折り曲げられて補強部を構成している周壁部と、前記補強部に設けられ、前記周壁部の屈折を許容する屈折許容部と、を備え、前記非発泡層が、前記底壁部における前記周壁部が延びる側の表面及び前記周壁部の内側表面を構成することを特徴としている。
一般的に、発泡層及び非発泡層を備える多層シートで形成された自動車内装用トレイは、曲げたときにしわが生じやすい。この発明によれば、屈折許容部は周方向と交差する方向に屈折を許容するため、多層シートで形成された自動車内装用トレイを曲げたときの変形が補強部よりも屈折許容部に集中する。このため、自動車内装用トレイを曲げたときに生じるしわが、補強部よりも屈折許容部に集中し、しわが広範囲にわたって形成された場合に比べて、自動車内装用トレイを曲げたときに生じるしわを目立たなくすることができる。ここで、「周方向」とは、底壁部の中央部から見て、平面視でフランジが形成されている方向を意味する。
【0007】
また、上記の自動車内装用トレイにおいて、前記補強部及び前記屈折許容部はそれぞれ、前記周壁部において前記底壁部の中央部を挟んで対向する位置に一対以上設けられていてもよい。
この発明によれば、自動車内装用トレイを、底壁部の中央部を挟み一対以上の屈折許容部を通る位置でさらに容易に曲げることができる。
【0008】
また、上記の自動車内装用トレイにおいて、前記屈折許容部は、前記厚さ方向に延び、かつ、底壁部の中央部から見て前記周壁部の内側に向かって凹んだ凹条部であり、前記凹条部は底壁部の中央部から見て前記周壁部の外側に向かって突出した一対の凸条部に挟まれていてもよい。
この発明によれば、自動車内装用トレイの底壁部の中央部から見て周壁部の外側に向かって突出した一対の凸条部に挟まれた凹条部により屈折許容部を形成する。そして、周壁部における厚さ方向の任意の位置にしわが生じても、このしわを屈折許容部に形成して目立たなくすることができる。
【0009】
また、上記の自動車内装用トレイにおいて、前記屈折許容部は、前記厚さ方向に延び、かつ、底壁部の中央部から見て前記周壁部の外側に向かって突出する凸条部であり、前記凸条部は底壁部の中央部から見て前記周壁部の内側に向かって凹んだ一対の凹条部に挟まれていてもよい。
この発明によれば、自動車内装用トレイの底壁部の中央部から見て周壁部の内側に向かって凹んだ一対の凹条部に挟まれた凸条部により屈折許容部を形成する。そして、周壁部における厚さ方向の任意の位置にしわが生じても、このしわを屈折許容部に形成して目立たなくすることができる。
【0010】
また、上記の自動車内装用トレイでは、前記周壁部において、前記補強部及び前記屈折許容部以外の部分を連結部と定義したときに、前記厚さ方向に直交する断面において、前記連結部と前記凹条部との境界における前記連結部からの延長線と前記凹条部とがなす鋭角は、前記延長線と前記凸条部とがなす鋭角よりも小さくてもよい。
一般的に、一対の部材間のなす鋭角が大きい方が、一対の部材の一方が外力を受けたときに、この外力により他方を移動させようとする力が大きくなる。このため、一対の部材間のなす角度が変化しやすい。この発明によれば、連結部が外力を受けたときに、補強部よりも屈折許容部をより屈折しやすくすることができる。
【0011】
また、上記の自動車内装用トレイにおいて、前記底壁部は、前記厚さ方向に直交する第1方向の長さよりも、前記厚さ方向及び前記第1方向にそれぞれ直交する第2方向の長さが長く、前記屈折許容部は、前記周壁部における前記第2方向の中央部に配置されていてもよい。
この発明によれば、底壁部が第2方向に長い自動車内装用トレイを、例えば第1方向に平行な軸線周りに曲げたときに、自動車内装用トレイが第2方向の中央部に対してほぼ対称に曲がる。従って、自動車内装用トレイの第2方向の長さが短くなるように自動車内装用トレイを効果的に変形させることができる。
【0012】
また、上記の自動車内装用トレイにおいて、前記周壁部が前記凸条部及び前記一対の凹条部を有しない平滑な外側表面を有すると仮定した場合のその外側表面を基準面としたときに、前記一対の凹条部の凹みの底部同士の間の前記基準面における距離αに対する、各凹条部の両側の凹みの起点のうち、前記凸条部とは反対側に位置する起点から前記凹みの底部までの前記基準面における距離βの比率(β/α)が、0.8以上1.2以下でもよい。
この発明によれば、連結部が外力を受けたときに、補強部よりも屈折許容部をより屈折しやすくすることができる。
【0013】
また、上記の自動車内装用トレイにおいて、前記非発泡層の表面には、シボ加工が施されていてもよい。
この発明によれば、非発泡層の表面に傷等が形成された場合に、この傷等を目立たなくすることができる。
【0014】
また、上記の自動車内装用トレイにおいて、前記非発泡層は、オレフィン系エラストマーを含んでもよい。
この発明によれば、非発泡層の表面を滑りにくくすることができる。
【0015】
また、上記の自動車内装用トレイにおいて、前記一対の補強部は、前記底壁部の中央部上の空間を通して対向していてもよい。
この発明によれば、自動車内装用トレイの底壁部の中央部上の空間に補強部が配置されないため、この空間を広く使うことができる。
【0016】
また、上記の自動車内装用トレイは、ラゲッジトレイであってもよい。
また、上記の自動車内装用トレイは、フロアトレイであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の自動車内装用トレイによれば、発泡層を有する自動車内装用トレイを曲げたときに生じるしわを目立たなくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るラゲッジトレイを備える自動車の要部の縦断面図である。
図2図1中のA部拡大図である。
図3】同ラゲッジトレイの斜視図である。
図4図3中の切断線A1-A1の断面図である。
図5】同ラゲッジトレイを曲げたときの図4に対応する位置における断面図である。
図6】本発明の一実施形態の変形例におけるラゲッジトレイの要部の断面図である。
図7図4に対応する位置における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る自動車内装用トレイの一実施形態を、自動車内装用トレイがラゲッジトレイである場合を例にとって、図1から図7を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態のラゲッジトレイ1は、自動車100において、自動車100の進行方向の後部で用いられる。自動車100は、自動車100の後部に配置された支持プレート101と、支持プレート101に着脱可能に装着されるラゲッジトレイ1と、を備えている。
支持プレート101は、環状に形成され、水平面に沿うように配置されている。ラゲッジトレイ1は、支持プレート101に支持される。ラゲッジトレイ1は、支持プレート101の開口に対して上下方向に連なる空間を上下方向に仕切る。
【0020】
図2に示すように、自動車内装用トレイ1は、発泡層11と、発泡層11の第1面に積層された第1非発泡層(非発泡層)12と、発泡層11の第1面とは反対の第2面に積層された第2非発泡層13と、を備える多層シート10で形成されてなる。自動車内装用トレイ1は、3層構造の多層シート10で形成されてなる。
【0021】
<発泡層>
発泡層11は、樹脂組成物が発泡されてなる。樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂と発泡剤とを含有する。
【0022】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体や、オレフィン系モノマーを主成分とし、オレフィン系モノマーとこれに重合可能なビニルモノマーとの共重合体等が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。なかでも、ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂が好ましく、ポリプロピレン系樹脂がより好ましい。
【0023】
ポリオレフィン系樹脂のメルトマスフローレート(MFR)は、5.0g/10min以下が好ましく、0.1g/10min以上5.0g/10min以下がより好ましく、0.5g/10min以上4.0g/10min以下がさらに好ましい。MFRが上記下限値以上であると、発泡層11の独立気泡率を50%以上にしやすい。MFRが上記上限値以下であると、発泡層11の強度をより高めやすい。
MFRは、熱可塑性樹脂の溶融時の流動性を表す数値である。MFRは、シリンダ内で溶融した樹脂を、一定の温度と荷重条件のもとで、ピストンによって、シリンダ底部に設置された規定口径のダイから、10分間あたりに押し出される樹脂量で表される。
本明細書において、MFRは、ダイの口径2.095mm、230℃、0.23MPaにおける数値である。
【0024】
ポリオレフィン系樹脂の融点は、150℃以上170℃以下が好ましく、155℃以上165℃以下がより好ましい。ポリオレフィン系樹脂の融点が上記下限値以上であると、発泡層11の強度をより高めやすい。ポリオレフィン系樹脂の融点が上記上限値以下であると、発泡層11の熱成形性をより向上しやすい。
ポリオレフィン系樹脂の融点は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載の方法により測定される。
【0025】
ポリオレフィン系樹脂の含有量は、発泡層11を構成する樹脂100質量%に対し、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%がさらに好ましい。
ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。
【0026】
発泡剤としては、例えば、重曹(炭酸水素ナトリウム)-クエン酸系発泡剤、炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)、重炭酸アンモニウム(炭酸水素アンモニウム)、亜硝酸アンモニウム、カルシウムアジド、ナトリウムアジド、水素化ホウ素ナトリウム等の無機系分解性発泡剤;アゾジカルボンアミド、アゾビスホルムアミド、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノベンゼン等のアゾ化合物;N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロソテレフタルアミド等のニトロソ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’-オキシビスベンゼスルホニルセミカルバジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、トリヒドラジノトリアジン、バリウムアゾジカルボキシレート等が挙げられる。気体の発泡剤としては、空気、窒素、炭酸ガス、プロパン、ネオペンタン、メチルエーテル、ジクロロフルオロメタン、n-ブタン、イソブタン等が挙げられる。なお、ここで気体とは、常温(15℃~25℃)で気体であることを意味する。一方、揮発性の発泡剤としては、エーテル、石油エーテル、アセトン、ペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。
上記発泡剤のうち、n-ブタン、窒素が特に好ましい。
【0027】
樹脂組成物中の発泡剤の含有量は、発泡剤の種類や、比重等を勘案して適宜決定され、例えば、樹脂100質量部に対して0.5~20質量部が好ましく、0.8~5.5質量部がより好ましい。「~」は、範囲の両端を含む意味である。例えば、「0.5~20質量部」は、「0.5質量部以上20質量部以下」を意味する。
発泡層11中の発泡剤の含有量(いわゆる残存ガス量)は、発泡層11の総質量に対し、0.3~3.6質量%が好ましく、0.5~3.3質量%がより好ましい。
【0028】
発泡層11の独立気泡率は、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。上限値は特に限定されず、例えば、99%以下が好ましい。すなわち、発泡層11の独立気泡率は、50~99%が好ましく、60~99%がより好ましく、70~99%がさらに好ましい。発泡層11の独立気泡率が上記数値範囲内であると、耐衝撃性に優れ、かつ、熱成形性をより向上しやすい。
発泡層11の独立気泡率は、JIS K7138:2006「硬質発泡プラスチック-連続気泡率及び独立気泡率の求め方」に記載の方法により測定される。
【0029】
発泡層11の厚さは、0.5~6.0mmが好ましく、1.0~5.0mmがより好ましい。発泡層11の厚さが上記下限値以上であると、発泡層11が形状保持性に優れる。発泡層11の厚さが上記上限値以下であると、発泡層11の成形性をより向上できる。
本明細書において、厚さは、測定対象物の幅方向(TD(Transverse Direction)方向)に等間隔の20箇所をマイクロゲージによって測定し、その算術平均値により求められた値である。
【0030】
発泡層11の坪量は、250~700g/mが好ましく、400~600g/mがより好ましい。発泡層11の坪量が上記数値範囲内であると、発泡層11が取扱い性に優れる。
なお坪量は、以下の方法で測定することができる。
発泡層11の幅方向の両端20mmを除き、幅方向に等間隔に、10cm×10cmの切片10個を切り出し、各切片の質量(g)を0.001g単位まで測定する。各切片の質量(g)の平均値を1m当たりの質量に換算した値を、発泡層11の坪量(g/m)とする。第1非発泡層12、第2非発泡層13等の坪量についても、同様である。
発泡層11の見掛け密度は、90~350kg/mが好ましく、100~300kg/mがより好ましい。発泡層11の見掛け密度が上記数値範囲内であると、発泡層11が取扱い性に優れる。
発泡層11の見掛け密度は、発泡層11から任意の大きさに切り出した試料の質量を見掛けの体積で除することにより求められる。
【0031】
<第1非発泡層>
第1非発泡層12は、ラゲッジトレイ1の内面(内側表面)を形成する。第1非発泡層12は、非架橋型のオレフィン系エラストマーを含むことが好ましい。非架橋型のオレフィン系エラストマーを含むことで、第1非発泡層12の表面(発泡層11とは反対側の表面)を滑りにくくすることができる。
なお、本明細書において、「非発泡」とは、原料樹脂を発泡させていない状態を表し、発泡倍数が、1.0倍である場合をいう。発泡倍数は、非発泡時の樹脂密度を見掛け密度で除することにより求められる。
また、本明細書において、「非架橋」とは、ゲル分率が3.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下であることを意味する。ゲル分率は、以下のようにして求められる。
原料樹脂の質量W1を測定する。次に、沸騰キシレン80mL中に原料樹脂を入れて3時間還流し、加熱する。次に、キシレン中の残渣を200メッシュの金網を用いてろ過し、金網上に残った残渣を新規キシレンにて共洗いした後、1日自然乾燥させる。その後、120℃で2時間、乾燥機にて乾燥させて、金網上に残った残渣の乾燥後の質量W2を測定する。続いて、下記式(1)に基づいて原料樹脂のゲル分率を算出する。
ゲル分率(質量%)=100×W2/W1・・・(1)
【0032】
非架橋型のオレフィン系エラストマーとしては、プロピレンの単独重合体や、プロピレンと、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよび4-メチル-1-ペンテンからなる群から選ばれるα-オレフィンの1種以上との共重合体等が好ましい。
第1非発泡層12の表面には、シボ加工(不図示)が施されていることが好ましい。シボ加工が施されていると、第1非発泡層12の表面に傷等が形成された場合に、この傷等を目立たなくすることができる。
本明細書において、「シボ加工」とは、表面に細かい凹凸の模様を付けて、質感を表現することをいう。
【0033】
第1非発泡層12の最大静止摩擦係数は、2.0以上が好ましく、2.5以上がより好ましく、3.0以上がさらに好ましい。上限値は特に限定されず、例えば、4.5以下が好ましい。すなわち、第1非発泡層12の最大静止摩擦係数は、2.0~4.5が好ましく、2.5~4.5がより好ましく、3.0~4.5がさらに好ましい。第1非発泡層12の最大静止摩擦係数が上記数値範囲内であると、ラゲッジトレイ1を滑りにくくすることができる。
第1非発泡層12の最大静止摩擦係数は、JIS K7125:1999「プラスチック‐フィルム及びシート‐摩擦係数試験方法」に記載の方法に準じて求められる。
【0034】
第1非発泡層12の坪量(a)は、100~400g/mが好ましく、130~300g/mがより好ましい。第1非発泡層12の坪量(a)が上記数値範囲内であると、第1非発泡層12が取扱い性に優れる。
第1非発泡層12の厚さは、求められる強度等に応じて適宜決定され、例えば、0.1~0.3mmが好ましく、0.12~0.2mmがより好ましい。上記下限値以上であれば、第1非発泡層12が十分な強度を得られやすい。上記上限値以下であれば、第1非発泡層12の成形加工が容易である。
【0035】
第1非発泡層12のデュロA硬度は、70以下が好ましく、30~50がより好ましい。デュロA硬度が上記数値範囲内であると、第1非発泡層12がグリップ性に優れる。第1非発泡層12のデュロA硬度は、JIS K6253-3:2012「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム‐硬さの求め方‐第3部:デュロメータ硬さ」に記載の方法に準じて求められる。
本明細書において、「デュロA硬度」は、JIS K6253-3:2012に記載のタイプAデュロメータで測定される硬さを意味する。
第1非発泡層12の破断点伸び率は900%以上が好ましく、1000~1500%がより好ましい。破断点伸び率が上記数値範囲内であると、第1非発泡層12が成形追従性に優れる。第1非発泡層12の破断点伸び率は、JIS K6251:2017「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム‐引張特性の求め方」に記載の方法に準じて求められる切断時伸びEb(%)を意味する。
【0036】
<第2非発泡層>
第2非発泡層13は、ラゲッジトレイ1の外面を形成する。第2非発泡層13としては、前記<第1非発泡層12>と同様のものを使用できるが、目的に応じて適宜調整し、<第1非発泡層12>とは異なるものを使用してもよい。
【0037】
多層シート10の厚さは、用途等を勘案して適宜決定され、例えば、0.5~6.5mmが好ましく、1.5~5.5mmがより好ましい。多層シート10の厚さが上記下限値以上であれば、多層シート10が十分な強度を得られやすい。上記上限値以下であれば、多層シート10の成形加工が容易である。
多層シート10の坪量は、700~1500g/mが好ましく、750~1300g/mがより好ましい。多層シート10の坪量が上記数値範囲内であると、多層シート10が取扱い性に優れる。
【0038】
図1及び図3に示すように、ラゲッジトレイ1は、底壁部20と、周壁部30と、補強部40と、屈折許容部50と、を備えている。
底壁部20は、平板状に形成されている。底壁部20は、底本体21と、中央片22と、第1端部片23と、第2端部片24と、を備えている。
底本体21、中央片22、第1端部片23、及び第2端部片24はそれぞれ平板状に形成され、互いの厚さ方向Zが平行となるように配置されている。
底本体21は、厚さ方向Zに見た平面視で、厚さ方向Zに直交する第1方向Xの長さよりも、厚さ方向Z及び第1方向Xにそれぞれ直交する第2方向Yの長さが長い矩形状を呈している。底本体21の第1方向Xにおける第1向きの外縁は、この第1向きに向かって凸となるように湾曲している。
【0039】
中央片22、第1端部片23、及び第2端部片24は、平面視でそれぞれ矩形状を呈している。中央片22、第1端部片23、及び第2端部片24は、底本体21の第1方向Xにおける第1向きとは反対の第2向きの外縁に接合されている。中央片22、第1端部片23、及び第2端部片24は、底本体21よりも第1方向Xの第2向き側となる位置に配置されている。
中央片22は、底本体21の外縁における第2方向Yの中心に接合されている。第1端部片23は、底本体21の外縁における第2方向Yの第1端部に接合されている。第2端部片24は、底本体21の外縁における第2方向Yの第1端部とは反対の第2端部に接合されている。
第1端部片23、中央片22、及び第2端部片24は、第2方向Yにこの順で互いに間隔を空けて配置されている。
底壁部20は、第1方向Xの長さよりも第2方向Yの長さが長い。
【0040】
周壁部30は、底壁部20の外周縁から厚さ方向Zの第1向きに向かって延びている。周壁部30は、壁本体31と、フランジ32と、折返し部33と、を備えている。
壁本体31は、底壁部20の外周縁から厚さ方向Zの第1向きに向かうに従い漸次、底壁部20の中央部(底壁部20を厚さ方向Zに見た平面視における中央部)から離間するように傾斜している。壁本体31は、底壁部20の外周縁の全周にわたって形成されている。
フランジ32は、壁本体31が延びる先端の端縁から底壁部20に沿ってラゲッジトレイ1の外側に向かって延びている。フランジ32は、壁本体31の端縁の全周にわたって形成されている。
折返し部33は、フランジ32が延びる先端の端縁から厚さ方向Zの第1向きとは反対の第2向きに向かって延びている。折返し部33は、フランジ32の外縁部から延び、厚さ方向Zの第2向きに向かうに従い漸次、底壁部20の中央部から離間するように傾斜している。折返し部33が延びる先端の端縁は、厚さ方向Zにおいて、壁本体31における厚さ方向Zの中間部に達している。
【0041】
補強部40は、周壁部30における上縁部を周方向に沿って外側又は内側に折り曲げて形成されている。補強部40は、周壁部30における周方向の一部である。ここで、「周方向」とは、底壁部20の中央部から見て、平面視でフランジ32が形成されている方向を意味する。補強部40は、底壁部20の中央部から見て、ラゲッジトレイ1の外側に折り曲げられていてもよく、ラゲッジトレイ1の内側に折り曲げられていてもよい。
ここで言う周壁部30における上縁部とは、厚さ方向Zにおいて、周壁部30における底壁部20とは反対側の端から、周壁部30の全長さに対する20%の長さの範囲のことを意味する。補強部40は、周壁部30における上縁部を、周方向の第1の側に向かうに従いラゲッジトレイ1の内側等に折り曲げて形成されている。
補強部40は、底壁部20の中央部を挟んで周壁部30に一対設けられている。すなわち、一対の補強部40は、第1補強部41Aと、第2補強部41Bと、を備えている。
第1補強部41Aは、中央片22の第1方向Xの第2向きの外縁の第2方向Yの中心に対応する周壁部30に形成されている。第2補強部41Bは、底本体21の第1方向Xの第1向きの外縁の第2方向Yの中心に対応する周壁部30に形成されている。
【0042】
屈折許容部50は、補強部40に設けられている。屈折許容部50は、周方向と交差する方向に屈折(周方向と交差する第1方向Xに沿って折れ曲がるように変形すること)を許容する。
屈折許容部50は、底壁部20の中央部を挟んで周壁部30に一対設けられている。すなわち、一対の屈折許容部50は、第1補強部41Aに設けられた第1屈折許容部51Aと、第2補強部41Bに設けられた第2屈折許容部51Bと、を備えている。
【0043】
本実施形態では、第1補強部41Aの構成と第2補強部41Bの構成とは、互いに同一である。このため、第1補強部41Aの構成を、数字に英大文字「A」を付加することで示す。第2補強部41Bのうち第1補強部41Aに対応する構成を、第1補強部41Aと同一の数字に英大文字「B」を付加することで示す。これにより、重複する説明を省略する。例えば、第1補強部41Aの第1補強片42Aと第2補強部41Bの第1補強片42Bとは、互いに同一の構成である。
第1屈折許容部51A、第2屈折許容部51B等についても、同様である。
【0044】
図3に示すように、補強部41A,41B及び屈折許容部51A,51Bは、周壁部30における第2方向Yの中央部に配置されている。図4に示すように、第1屈折許容部51Aは、第1補強部41Aにおける周方向の中央部に配置されている。なお、図4は、厚さ方向Zに直交する断面図である。
第1屈折許容部51Aは、壁本体31及び折返し部33において、厚さ方向Zに直交する断面形状が、V字状に形成されている(図4には、壁本体31における断面形状を示す)。第1屈折許容部51Aは、フランジ32において、周方向及び厚さ方向Zにそれぞれ沿う断面形状が、V字状に形成されている。
第1屈折許容部51Aは、第2非発泡層13に対する第1非発泡層12側に向かって開くように配置されている。すなわち、第1屈折許容部51Aは、壁本体31において、ラゲッジトレイ1の内側に向かって開くように配置されている。第1屈折許容部51Aは、フランジ32において、底壁部20から離間するに従って開くように配置されている。第1屈折許容部51Aは、折返し部33において、ラゲッジトレイ1の外側に向かって開くように配置されている。
【0045】
第1屈折許容部51Aは、第1許容片52Aと、第1許容片53Aと、を備えている。
第1許容片52A,53Aは、壁本体31からフランジ32を介して折返し部33まで連なっている。
図4に示すように、第1許容片52Aは、例えば壁本体31において、周方向の第1の側に向かうに従い漸次、ラゲッジトレイ1の内側に向かうように傾斜している。第1許容片53Aは、例えば壁本体31において、周方向の第1の側とは反対の第2の側に向かうに従い漸次、ラゲッジトレイ1の内側に向かうように傾斜している。
壁本体31において、第1許容片52Aにおけるラゲッジトレイ1の外側の端と、第1許容片53Aにおけるラゲッジトレイ1の外側の端とが、互い接合されている。
【0046】
第1補強部41Aは、第1屈折許容部51Aに対して周方向の第1の側に連なる第1補強片42Aと、第1屈折許容部51Aに対して周方向の第2の側に連なる第1補強片43Aと、を備えている。
第1補強片42A,43Aは、壁本体31からフランジ32を介して折返し部33まで連なっている。第1補強片42Aは、例えば壁本体31において、周方向の第1の側に向かうに従い漸次、ラゲッジトレイ1の外側に向かうように傾斜している。第1補強片42Aは、第1許容片52Aの周方向の第1の側の端に連なっている。第1補強片43Aは、例えば壁本体31において、周方向の第2の側に向かうに従い漸次、ラゲッジトレイ1の外側に向かうように傾斜している。第1補強片43Aは、第1許容片53Aの周方向の第2の側の端に連なっている。
壁本体31における第1補強片42A,43Aは、周壁部30における上縁部を、周方向に向かうに従い、第1方向Xに沿って折り曲げて形成されている。
【0047】
なお、第1補強片42A及び第1許容片52Aで、第1凹条部(凹条部)62Aを構成する。第1補強片43A及び第1許容片53Aで、第1凹条部(凹条部)63Aを構成する。第1凹条部62A,63Aは、例えば壁本体31において、厚さ方向Zに延びて、ラゲッジトレイ1の内側に向かってそれぞれ凹むように形成されている。すなわち、第1凹条部62A,63Aはラゲッジトレイ1の外側に向かってそれぞれ開口している。第1屈折許容部51Aは、第1凹条部62A,63Aに挟まれた、ラゲッジトレイ1の外側に向かって突出した凸条部から形成されている。第1屈折許容部51Aは、ラゲッジトレイ1の外側に向かって突出している。本実施形態では、第1補強部41A、第1屈折許容部51A、及び第1凹条部62A,63Aは、周壁部30における上縁部だけでなく、周壁部30における厚さ方向Zの全長にわたって形成されている。
【0048】
周壁部30において、第1補強部41Aの第1補強片42Aを間に挟んで、第1屈折許容部51Aとは周方向の反対側(周方向の第1の側)に第1連結部(連結部)35Aが配置されている。第1連結部35Aは、第1補強片42Aの周方向の第1の側の端に連なるように配置されている。同様に、周壁部30において、第1補強部41Aの第1補強片43Aを間に挟んで、第1屈折許容部51Aとは周方向の反対側(周方向の第2の側)に第1連結部(連結部)36Aが配置されている。第1連結部36Aは、第1補強片43Aの周方向の第2の側の端に連なるように配置されている。なお、本明細書において、「連結部」とは、周壁部30における補強部40及び屈折許容部50以外の部分をいう。
【0049】
図4に示す断面において、第1連結部35Aと第1凹条部62Aとの境界における第1連結部35Aからの延長線L1と第1補強部41Aの第1補強片42A(第1凹条部62A)とがなす鋭角θ1は、延長線L1と第1屈折許容部51Aの第1許容片52A(第1屈折許容部51Aを形成する凸条部)とがなす鋭角θ2よりも小さい。第1補強片42Aの長手方向の端部が湾曲している場合には、鋭角θ1は、延長線L1と第1補強片42Aの長手方向の中央部の接線とがなす鋭角のことを意味する。鋭角θ2等についても同様である。延長線L1と第1許容片52Aとが交差しない場合は、鋭角θ2は、延長線L1と第1許容片52Aの延長線とがなす鋭角のことを意味する。
同様に、第1連結部36Aと第1凹条部63Aとの境界における第1連結部36Aからの延長線L2と第1補強部41Aの第1補強片43A(第1凹条部63A)とがなす鋭角θ3は、延長線L2と第1屈折許容部51Aの第1許容片53A(第1屈折許容部51Aを形成する凸条部)とがなす鋭角θ4よりも小さい。
【0050】
鋭角θ2と鋭角θ1との差(θ2-θ1)は、例えば、0°超60°以下が好ましく、5°以上45°以下がより好ましく、10°以上35°以下がさらに好ましい。(θ2-θ1)が上記数値範囲内であると、第一連結部35Aが外力を受けたときに、第一補強部41Aよりも第一屈折許容部51Aをより屈折しやすくすることができる。
鋭角θ4と鋭角θ3との差(θ4-θ3)は、例えば、0°超60°以下が好ましく、5°以上45°以下がより好ましく、10°以上35°以下がさらに好ましい。(θ4-θ3)が上記数値範囲内であると、第一連結部36Aが外力を受けたときに、第一補強部41Aよりも第一屈折許容部51Aをより屈折しやすくすることができる。
【0051】
図7に、図4に対応する位置における断面図を示す。図7に示すように、周壁部30が、第1屈折許容部51Aを形成する凸条部及び一対の凹条部62A、63Aを有しない平滑な外側表面を有すると仮定した場合のその外側表面を基準面Rとする。一対の凹条部62A、63Aの凹みの底部をそれぞれ62P、63Pとする。凹みの底部62Pは、第1凹条部62Aの頂点に位置する。凹みの底部63Pは、第1凹条部63Aの頂点に位置する。凹みの底部62P、63P同士の間の基準面Rにおける距離をαとする。
凹条部62Aは、凹みの起点を2箇所有する。凹条部62Aの両側の凹みの起点のうち、凸条部に位置する凹みの起点を51Pとし、凸条部とは反対側に位置する凹みの起点を42Pとする。凹みの起点51Pは、凸条部の頂点に位置する。凹みの起点42Pは、連結部35Aと第1補強片42Aとの境界に位置する。すなわち、凹みの起点42Pは、連結部35Aと凹条部62Aとの境界に位置する。凹みの起点42Pから凹みの底部62Pまでの基準面Rにおける距離をβ(β1)とする。
凹条部63Aは、凹みの起点を2箇所有する。凹条部63Aの両側の凹みの起点のうち、凸条部に位置する凹みの起点を51Pとし、凸条部とは反対側に位置する凹みの起点を43Pとする。凹みの起点43Pは、連結部36Aと第1補強片43Aとの境界に位置する。凹みの起点43Pから凹みの底部63Pまでの基準面Rにおける距離をβ(β2)とする。
このとき、距離αに対する距離βの比率(以下、「β/α比」ともいう。)は、0.8以上1.2以下が好ましく、0.9以上1.1以下がより好ましく、1.0が特に好ましい。β/α比が上記数値範囲内であると、第一連結部35Aが外力を受けたときに、第一補強部41Aよりも第一屈折許容部51Aをより屈折しやすくすることができる。同様に、β/α比が上記数値範囲内であると、第一連結部36Aが外力を受けたときに、第一補強部41Aよりも第一屈折許容部51Aをより屈折しやすくすることができる。
【0052】
第一屈折許容部51Aをより屈折しやすくする観点から、距離β1と距離β2とは、同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。距離β1と距離β2とが異なる場合、β/α比におけるβは、距離β1と距離β2との相加平均((β1+β2)/2)で代用できる。
【0053】
第1凹条部62Aの凹みの底部62Pと、基準面Rとの距離をγ(γ1)とする。第一凹条部63Aの凹みの底部63Pと、基準面Rとの距離をγ(γ2)とする。第一屈折許容部51Aをより屈折しやすくする観点から、距離γ1と距離γ2とは、同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。距離γ1と距離γ2とが異なる場合、γは、距離γ1と距離γ2との相加平均((γ1+γ2)/2)で代用できる。
β/α比は、距離α、距離β、距離γ、及びこれらの組合せにより調節できる。
【0054】
図3に示すように、補強部41A,41Bは、底壁部20の中央部上の空間を通して対向している。すなわち、第1補強部41Aと第2補強部41Bとは、底壁部20の中央部上の空間に配置されたリブ等を介して互いに接続されていない。
【0055】
ラゲッジトレイ1は、例えば真空成形により、平板状の多層シート10を用いて一体に形成されている。この場合、一般的に、底壁部20に対して傾斜した面ほど厚さが薄くなる。具体的には、図4において二点鎖線で示すように、第1連結部35A,36Aよりも第1補強片42A,43Aが薄く、第1補強片42A,43Aよりも第1許容片52A,53Aが薄い。
【0056】
図1に示すように、自動車100におけるラゲッジトレイ1では、支持プレート101により折返し部33が全周にわたって折返し部33の下方から支持されている。
以上のように構成されたラゲッジトレイ1を自動車100に取付けるには、ラゲッジトレイ1が第2方向Yに長いため、ラゲッジトレイ1を第1方向Xに平行な軸線周りに曲げた状態で自動車100内に搬入する場合がある。この場合、ラゲッジトレイ1を下方に向かって凸となるように曲げるため、図5に示すように第1連結部35A,36A間に第2方向Yに圧縮力Fが作用する。なお、図5では、圧縮力Fが作用する前の第1補強片42A,43A及び第1許容片52A,53Aの形状を二点鎖線で示している。
【0057】
第1連結部35A,36A間に第2方向Yに圧縮力Fが作用すると、一般的に鋭角θ1~θ4が大きいほど、圧縮力Fにより第1補強片42A,43A、第1許容片52A,53Aを移動させようとする分力が大きくなる。さらに、第1補強片42A,43A、第1許容片52A,53Aの厚さが薄いほど、第1補強片42A,43A及び第1許容片52A,53Aが変形しやすくなる。このため、圧縮力Fが作用すると、第1補強片42A,43Aよりも第1許容片52A,53Aが、第1方向Xに沿って折れ曲がりやすい。
【0058】
以上説明したように、一般的に、発泡層及び非発泡層を備える多層シートで形成されたラゲッジトレイは、曲げたときにしわが生じやすい。本実施形態のラゲッジトレイ1によれば、屈折許容部51A,51Bは周方向と交差する方向に屈折を許容するため、多層シート10で形成されたラゲッジトレイ1を曲げたときの変形が補強部40よりも屈折許容部50に集中する。このため、ラゲッジトレイ1を曲げたときに生じるしわが、補強部40よりも屈折許容部50に集中し、しわが広範囲にわたって形成された場合に比べて、ラゲッジトレイ1を曲げたときに生じるしわを目立たなくすることができる。
【0059】
補強部40及び屈折許容部50は、底壁部20の中央部を挟んで周壁部30にそれぞれ一対設けられている。これにより、ラゲッジトレイ1を、底壁部20の中央部を挟み一対の屈折許容部50を通る位置でさらに容易に曲げることができる。
屈折許容部50は、厚さ方向Zに延びて、ラゲッジトレイ1の内側に向かって凹むように形成した一対の凹条部62A,63Aに挟まれた凸条部から形成される。従って、周壁部30における厚さ方向Zの任意の位置にしわが生じても、このしわを屈折許容部50に形成して目立たなくすることができる。ラゲッジトレイ1の内側に向かって形成した凹条部62A,63Aが、自動車100の支持プレート101に干渉し難くすることができる。
【0060】
一般的に、一対の部材間のなす鋭角が大きい方が、一対の部材の一方が外力を受けたときに、この外力により他方を移動させようとする力が大きくなる。このため、一対の部材間のなす角度が変化しやすい。第1連結部35Aと第1凹条部62Aとの境界における第1連結部35Aからの延長線L1と第1補強片42A(第1凹条部62A)とがなす鋭角θ1が、延長線L1と第1屈折許容部51Aの第1許容片52A(第1屈折許容部51Aを形成する凸条部)とがなす鋭角θ2よりも小さいことで、第1連結部35A,35Bが圧縮力Fを受けたときに、第1補強片42Aよりも第1許容片52Aをより屈折しやすくすることができる。
屈折許容部50は、周壁部30における第2方向Yの中央部に配置されている。底壁部20が第2方向Yに長いラゲッジトレイ1を、例えば第1方向Xに平行な軸線周りに曲げたときに、ラゲッジトレイ1が第2方向Yの中央部に対してほぼ対称に曲がる。従って、ラゲッジトレイ1の第2方向Yの長さが短くなるようにラゲッジトレイ1を効果的に変形させることができる。
【0061】
第1非発泡層12の表面には、シボ加工が施されている。従って、第1非発泡層12の表面に傷等が形成された場合に、この傷等を目立たなくすることができる。
第1非発泡層12はオレフィン系エラストマーを含むため、第1非発泡層12の表面を滑りにくくすることができる。
第1補強部41Aと第2補強部41Bとは、互いに離間している。これにより、ラゲッジトレイ1の内側の空間を広く使うことができる。
【0062】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。
例えば、前記実施形態では、屈折許容部は、厚さ方向Zに延びて、ラゲッジトレイの外側に向かって突出した一対の凸条部に挟まれた凹条部から形成されてもよい。この場合、凹条部はラゲッジトレイの内側に向かってそれぞれ開口している。
この変形例のように構成することで、周壁部における厚さ方向の任意の位置にしわが生じても、このしわを屈折許容部に形成して目立たなくすることができる。
【0063】
図6に示すラゲッジトレイ1Aのように、複数の第1補強部(補強部)71A及び第1屈折許容部(屈折許容部)72Aが周方向に交互に配置されてもよい。この変形例のラゲッジトレイ1Aでは、複数の第1補強部71A及び第1屈折許容部72Aが全体として正弦波状(蛇腹状)に形成されている。
【0064】
第1補強部41A及び第1屈折許容部51Aは、周壁部30における上縁部のみに形成されてもよい。
補強部及び屈折許容部がラゲッジトレイに設けられる数は2つに限定されず、それぞれ1つでもよいし、3つ以上でもよい。すなわち、補強部及び屈折許容部は、それぞれ、周壁部において底壁部の中央部を挟んで対向する位置に一対以上設けられていてもよく、対で設けられていなくてもよい。
ラゲッジトレイは、第2方向Yの長さよりも第1方向Xの長さが長くてもよいし、第1方向Xの長さ及び第2方向Yの長さが互いに同等でもよい。これに対応して、底壁部20の形状は特に限定されない。
周壁部30は、フランジ32及び折返し部33を備えなくてもよい。
多層シート10は、第2非発泡層13を備えなくてもよい。自動車内装用トレイは、自動車100において、フロア上に靴等の小物を置いたりするためのフロアトレイ(シューズトレイ)等であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1,1A ラゲッジトレイ(自動車内装用トレイ)
10 多層シート
11 発泡層
12 第1非発泡層(非発泡層)
20 底壁部
30 周壁部
35A,36A 第1連結部(連結部)
40 補強部
41A,71A 第1補強部(補強部)
41B 第2補強部(補強部)
42A,43A 第1補強片
42P,43P,51P 凹みの起点
50 屈折許容部
51A,72A 第1屈折許容部(屈折許容部)
51B 第2屈折許容部(屈折許容部)
62A,63A 第1凹条部(凹条部)
62P,63P 凹みの底部
L1,L2 延長線
R 基準面
X 第1方向
Y 第2方向
Z 厚さ方向
θ1,θ2,θ3,θ4 鋭角
α,β(β1),β(β2),γ(γ1),γ(γ2) 距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7