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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-24
(45)【発行日】2022-09-01
(54)【発明の名称】成形金型およびシール部品
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/37 20060101AFI20220825BHJP
   B29C 33/10 20060101ALI20220825BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20220825BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20220825BHJP
   B29C 45/27 20060101ALI20220825BHJP
   B29C 45/34 20060101ALI20220825BHJP
   H01M 8/0286 20160101ALI20220825BHJP
【FI】
B29C45/37
B29C33/10
B29C33/42
B29C45/14
B29C45/27
B29C45/34
H01M8/0286
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021570651
(86)(22)【出願日】2020-10-27
(86)【国際出願番号】 JP2020040250
(87)【国際公開番号】W WO2021145047
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2020004890
(32)【優先日】2020-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217102
【弁理士】
【氏名又は名称】冨永 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189289
【弁理士】
【氏名又は名称】北尾 拓洋
(72)【発明者】
【氏名】村崎 瞬
(72)【発明者】
【氏名】吉田 文平
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/113558(WO,A1)
【文献】特開2010-003508(JP,A)
【文献】特開昭60-087044(JP,A)
【文献】特開2000-185116(JP,A)
【文献】特開2011-098480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
H01M 8/00- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の基材の表面に、弾性材料からなり前記基材の前記表面に沿って延びる無端形状のガスケットを成形する成形金型において、
前記基材の前記表面に対向する前記成形金型の対向面上に形成され、前記ガスケットの前記無端形状に対応した型形状を有するキャビティ部と、
前記成形金型内で前記キャビティ部に向かって延びる、硬化することで前記弾性材料となる流動性の成形用材料を前記キャビティ部に導入するためのゲートと、
前記ゲートから前記成形用材料を受け入れて前記キャビティ部に送り込む第1中間部であって、前記キャビティ部側に向かって開口した前記ゲートの開口部と前記キャビティ部とを接続し前記基材の前記表面に沿った断面が前記ゲートの前記開口部の開口面積以上の断面積を有する第1中間部と、
前記成形金型内で前記キャビティ部から離れる方向に延びる、前記キャビティ部内における前記ガスケットの成形に不要な不要ガスを前記キャビティ部から排出するためのベントと、
前記キャビティ部から前記不要ガスを受け入れて前記ベントに送り出す第2中間部であって、前記キャビティ部側に向かって開口した前記ベントの開口部と前記キャビティ部とを接続し前記基材の前記表面に沿った断面が前記ベントの前記開口部の開口面積以上の断面積を有する第2中間部と、を備えた成形金型。
【請求項2】
前記成形金型は分割タイプの成形金型であって、
前記基材の前記表面とは反対側の前記基材の面に接した状態で前記基材を載せる第1分割型と、
前記第1分割型との間で前記基材を挟み込んで前記基材を固定する第2分割型であって、前記基材を挟み込む側の面として前記キャビティ部が形成された前記対向面を有するとともに、内部に前記ゲート、前記第1中間部、前記ベント、および前記第2中間部が形成され、さらに前記対向面とは反対側の面において前記基材に沿った方向に延び前記ゲートに接続するランナーが形成された第2分割型と、
前記第2分割型の前記反対側の面に積層される第3分割型であって、該第3分割型を貫通し前記第2分割型の前記ランナーに接続するスプールが形成された第3分割型と、を備えている請求項1に記載の成形金型。
【請求項3】
前記成形金型は、前記基材に前記ガスケットが一体成形されてなる燃料電池用のシール部品を製造するための成形金型である請求項1又は2に記載の成形金型。
【請求項4】
板状の基材と、
前記基材の表面に成形された、弾性材料からなり前記基材の前記表面に沿って延びる無端形状のガスケットと、を備え、
前記ガスケットは、硬化することで前記弾性材料となる流動性の成形用材料が、ゲートおよびベントを有する成形金型に注入されることによって成形されたものであって、該成形時における前記ゲートの開口部との接続位置および前記成形時における前記ベントの開口部との接続位置のそれぞれにおいて、前記基材の前記表面から離れる方向に突出した台座を有するシール部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の基材の表面に、弾性材料からなり基材の表面に沿って延びる無端形状のガスケットを成形する成形金型、および、板状の基材と、基材表面に成形された、弾性材料からなり基材表面に沿って延びる無端形状のガスケットとを備えたシール部品に関する。
【背景技術】
【0002】
板状の基材の表面に、弾性材料からなり基材の表面に沿って延びる無端形状のガスケットを成形する成形金型が従来から知られている(たとえば特許文献1参照)。こうした成形金型は、たとえば、ガスケットによって基材上の流体の漏れ出しを防ぐシール部品の製造に用いることができる。こうしたシール部品の典型例としては、燃料電池において膜/電極集合体(以下、MEAと呼ぶ)の両側に積層されるセパレータ用のシール部品がよく知られている。燃料電池のセパレータでは、外部に漏れないようにMEAに燃料電池用の流体(水素を含む燃料ガスや酸素を含む酸化剤ガス等)を供給する必要があり、無端形状のガスケットは、こうした燃料電池用の流体を、ガスケットで囲まれた空間内に封止(シール)する役割を果たす。
【0003】
図4は、燃料電池のセパレータ用のシール部品1’の模式図であり、図5は、図4に示すシール部品1’の模式的な断面図である。
【0004】
図4に示すようにシール部品1’では、板状の基材2の表面に、弾性材料からなり基材2の表面に沿って延びる無端形状のガスケット3が通気孔2bの周りに形成されている。図5には、図4のAA’線に沿ったシール部品1’の模式的な断面が示されており、基材2の表面から突出した4個の突出部としてガスケット3が表されている。図5に示すように、ガスケット3は、基材2の表面に接着したベース部3aと、ベース部3aから山の形状に隆起したシールリップ部3bとを有している。ここで、図4のAA’線上には、後述するように、ガスケット3の成形時にガスケット3の成形用材料が流出入する箇所が存在する。以下では、基材2の表面にガスケット3を成形することで、図4および図5に示すような燃料電池のセパレータ用のシール部品1’を製造する従来の成形金型について説明する。
【0005】
図6は、基材2の表面2aにガスケット3を成形する従来の成形金型10’の模式的な断面図である。
【0006】
図6には、基材2の表面2aにガスケット3を成形する従来の成形金型10’における、シール部品1’の図5の断面形状を実現する部分の断面が示されている。図6に示すように、従来の成形金型10’は、キャビティ部4、ゲート5’、およびベント6’を備えている。キャビティ部4は、基材2の表面2aに対向する成形金型10’の対向面12a’上に形成され、図4および図5のガスケット3の無端形状に対応した型形状を有する部位である。ゲート5’は、成形金型10’内でキャビティ部4に向かって延びる孔であり、硬化することで上述の弾性材料となる流動性の成形用材料をキャビティ部4に導入するための孔である。また、ベント6’は、成形金型10’内でキャビティ部4から離れる方向に延びる孔であって、キャビティ部4内におけるガスケットの成形に不要な不要ガスをキャビティ部4から排出するための孔である。また、すべてのキャビティ部4を満たした後の余剰の成形用材料もキャビティ部4からベント6’ に排出される。
【0007】
従来の成形金型10’では、成形金型10’内に成形用材料が注入されてキャビティ部4が成形用材料で満たされた後、成形用材料が硬化することで、基材2の表面2aに、弾性材料からなるガスケット3(図4および図5参照)が形成される。ただし、ゲート5’やベント6’に溜まっていた成形用材料も同様に硬化しており、ゲート5’における成形用材料の開口部5a’の付近やベント6’ における成形用材料の開口部6a’ の付近でガスケット3とつながっている。基材2を成形金型10’から取り外す際にガスケット3と他の部分とが切り離され、これにより、基材2の表面2aにガスケット3が形成されたシール部品1’が完成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2010/113558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ガスケット3と他の部分とが切り離される際に、本来であればガスケット3に属する箇所でこのような切り離しが行われてしまい、基材2の表面2aが露出する欠け(エグレ)が発生することがある。
【0010】
図7は、ガスケット3に生じたエグレE’を示す図である。
【0011】
図7には、ゲート5’の開口部5a’付近においてベース部3aにエグレE’が生じ基材2の表面2aが露出している様子が示されている。このように基材2の表面2aが露出している状態では絶縁性の低下が懸念される。以上では、ゲート5’付近のガスケット3に生じたエグレE’を例にとって説明したが、同様のエグレは、ベント6’付近のガスケット3についても生じ得る。
【0012】
上記の事情を鑑み、本発明では、エグレによる絶縁性の低下を抑える成形金型、および、エグレによる絶縁性の低下が抑えられたシール部品を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の課題を解決するため、本発明は、以下の成形金型およびシール部品を提供する。
【0014】
[1] 板状の基材の表面に、弾性材料からなり前記基材の前記表面に沿って延びる無端形状のガスケットを成形する成形金型において、前記基材の前記表面に対向する前記成形金型の対向面上に形成され、前記ガスケットの前記無端形状に対応した型形状を有するキャビティ部と、前記成形金型内で前記キャビティ部に向かって延びる、硬化することで前記弾性材料となる流動性の成形用材料を前記キャビティ部に導入するためのゲートと、前記ゲートから前記成形用材料を受け入れて前記キャビティ部に送り込む第1中間部であって、前記キャビティ部側に向かって開口した前記ゲートの開口部と前記キャビティ部とを接続し前記基材の前記表面に沿った断面が前記ゲートの前記開口部の開口面積以上の断面積を有する第1中間部と、前記成形金型内で前記キャビティ部から離れる方向に延びる、前記キャビティ部内における前記ガスケットの成形に不要な不要ガスを前記キャビティ部から排出するためのベントと、前記キャビティ部から前記不要ガスを受け入れて前記ベントに送り出す第2中間部であって、前記キャビティ部側に向かって開口した前記ベントの開口部と前記キャビティ部とを接続し前記基材の前記表面に沿った断面が前記ベントの前記開口部の開口面積以上の断面積を有する第2中間部と、を備えた成形金型。
【0015】
ここで、「無端形状」とは、一次元的に連続的に延びつつ周回して戻ってくる形状であって周回して戻ってくるために端部が存在しない形状を指している。また、「キャビティ部」、「ゲート」、「ベント」、「第1中間部」、および「第2中間部」は、いずれも特定の空間を形成する成形金型の一部の形状を指しており、実体がない空間そのものを指す語ではない。また、上記の「弾性材料」にはゴム材料が含まれることに加え、弾性を有する樹脂材料も含まれる。
【0016】
[2] 前記成形金型は分割タイプの成形金型であって、前記基材の前記表面とは反対側の前記基材の面に接した状態で前記基材を載せる第1分割型と、前記第1分割型との間で前記基材を挟み込んで前記基材を固定する第2分割型であって、前記基材を挟み込む側の面として前記キャビティ部が形成された前記対向面を有するとともに、内部に前記ゲート、前記第1中間部、前記ベント、および前記第2中間部が形成され、さらに前記対向面とは反対側の面において前記基材に沿った方向に延び前記ゲートに接続するランナーが形成された第2分割型と、前記第2分割型の前記反対側の面に積層される第3分割型であって、該第3分割型を貫通し前記第2分割型の前記ランナーに接続するスプールが形成された第3分割型と、を備えている[1]に記載の成形金型。
【0017】
[3] 前記成形金型は、前記基材に前記ガスケットが一体成形されてなる燃料電池用のシール部品を製造するための成形金型である[1]又は[2]に記載の成形金型。
【0018】
[4] 板状の基材と、前記基材の表面に成形された、弾性材料からなり前記基材の前記表面に沿って延びる無端形状のガスケットと、を備え、前記ガスケットは、硬化することで前記弾性材料となる流動性の成形用材料が、ゲートおよびベントを有する成形金型に注入されることによって成形されたものであって、該成形時における前記ゲートへの近接位置および前記成形時における前記ベントへの近接位置のそれぞれにおいて、前記基材の前記表面から離れる方向に突出した台座を有するシール部品。
【発明の効果】
【0019】
本発明の成形金型では、ゲートやベントがキャビティ部に直接開口するのではなく、ゲートとキャビティ部との間およびベントとキャビティ部との間に備えられた第1中間部および第2中間部に開口する。このような第1中間部および第2中間部が介在するため、中間部で硬化した成形用材料にエグレが発生することはあり得ても基材の表面が露出するようなエグレは生じにくくなっている。同様に、本発明のシール部品では、台座が存在することで基材の表面が露出するようなエグレは生じにくくなっている。この結果、本発明では、エグレによる絶縁性の低下が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】板状の基材の表面に、弾性材料からなり基材の表面に沿って延びる無端形状のガスケットを成形する本発明の一実施形態の成形金型の模式的な断面図である。
図2図1の断面図における第1中間部の周辺の拡大図である。
図3図1のゲート付近におけるシール部品の断面を表した模式的な断面図である。
図4】燃料電池のセパレータ用のシール部品の模式図である。
図5図4に示すシール部品の模式的な断面図である。
図6】基材の表面にガスケットを成形する従来の成形金型の模式的な断面図である。
図7】ガスケットに生じたエグレを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0022】
以下では、本実施形態の成形金型が、図4および図5に示すシール部品1’と同じタイプのシール部品(ただし、後述するように、図7とは異なりエグレE’を避けるための台座(図3の台座3c参照)がさらに備えられている)を製造するための成形金型である場合を例にとって説明を行う。この本実施形態の成形金型によって製造されるシール部品1(図3参照)が本発明のシール部品の一実施形態に相当する。
【0023】
図1は、板状の基材2の表面2aに、弾性材料からなり基材2の表面2aに沿って延びる無端形状のガスケット3を成形する本発明の一実施形態の成形金型10の模式的な断面図である。
【0024】
図1では、上述の図6と同様、製造対象のシール部品(なお後述の図3のシール部品1参照)の断面形状を実現する部分の成形金型10の断面が示されている。図1では、上述の図6および図7で説明した従来の成形金型10’の構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付しており、以下においてもこの同一の符号を用いて説明を行う。成形金型10は、キャビティ部4、ゲート5、第1中間部41、ベント6、および第2中間部42を備えている。
【0025】
キャビティ部4は、上述したように、基材2の表面2aに対向する成形金型10の対向面12a上に形成され、図4および図5のガスケット3の無端形状に対応した型形状を有する部位である。
【0026】
ゲート5は、成形金型10内でキャビティ部4に向かって延びる孔であり、硬化することで上述の弾性材料となる流動性の成形用材料をキャビティ部4に導入するための孔である。図1に示すように、ゲート5は、キャビティ部4に向かうにつれて先細りとなる形状を有しており、その先細り形状の先端は、キャビティ部4側に向かって開口し、成形用材料がゲート5から流出する開口部5a(後述の図2参照)となっている。
【0027】
第1中間部41は、ゲート5とキャビティ部4の間の中間の空間を形成するものであり、開口部5aを介してゲート5から成形用材料を受け入れてキャビティ部4に送り込む役割を果たす。
【0028】
図2は、図1の断面図における第1中間部41の周辺の拡大図である。
【0029】
第1中間部41は、キャビティ部4側に向かって開口したゲート5の開口部5aとキャビティ部4とを接続しており、基材2の表面2aに沿った第1中間部41の断面はゲート5の開口部5aの開口面積以上の断面積を有している。このような構成の第1中間部41の技術的効果については後で詳しく説明する。図2では、このような構成の一具体例として、ゲート5の開口部5aの周囲に基材2の表面2aに沿って広がる第1底部41aと、第1底部41aの周縁からキャビティ部4に向かって延び第1底部41aの周縁とキャビティ部4とを接続する筒状の第1側面部41bとを有している第1中間部41が示されている。
【0030】
以下では、このような具体例に基づき説明を行うが、本発明の第1中間部は、第1底部41aを有さず、ゲート5の開口部5aからキャビティ部4に向かって延びゲート5の開口部5aとキャビティ部4とをそのまま接続する筒状の第1側面部によって形成された第1中間部であってもよい。この場合、第1中間部の断面はゲート5の開口部5aの開口面積と同じ断面積を有することとなる。なお、以上の説明における「筒状」は、断面が円形の円筒の形状に限らず、断面が楕円状やレーストラック状等の滑らかな曲線の外郭を有する形状や、断面が多角形の角筒の形状を含んでいる。また、本発明の第1中間部は、第1底部41aを有さず、ゲート5の開口部5aからキャビティ部4に向かって広がりゲート5の開口部5aとキャビティ部4とをそのまま接続するテーパー状の側面部によって形成された第1中間部であってもよい。この場合、第1中間部の断面はゲート5の開口部5aの開口面積よりも大きい断面積を有することとなる。
【0031】
図1に戻って構成要素の説明を続ける。
【0032】
ベント6は、成形金型10内でキャビティ部4から離れる方向に延びる孔であって、キャビティ部4内におけるガスケット3の成形に不要な不要ガスをキャビティ部4から排出するため不要ガスの流路となる孔である。ここで、不要ガスとは、成形時においてキャビティ部4への成形用材料の流入によって押し出されたキャビティ部4内の空気や、成形用材料から発生した揮発性ガス等である。また、ガスケット3の成形に使われなかった余剰の成形用材料もキャビティ部4からベント6を通って排出され、排出された余剰の成形用材料は、成形金型10内に設けられた余剰材料溜まり6bに蓄えられる。図1に示すように、ベント6も、ゲート5と同様に、キャビティ部4に向かうにつれて先細りとなる形状を有しており、その先細り形状の先端は、キャビティ部4側に向かって開口し、成形用材料がベント6に流入する開口部6aとなっている。
【0033】
第2中間部42は、キャビティ部4とベント6の間の中間の空間を形成するものであり、キャビティ部4から成形用材料を受け入れて開口部6aを介して成形用材料をベント6に送り込む役割を果たす。第2中間部42の構成は、図2に示す第1中間部41の構成と同じである。すなわち、第2中間部42は、キャビティ部4側に向かって開口したベント6の開口部6aとキャビティ部4とを接続しており、基材2の表面2aに沿った第2中間部42の断面はベント6の開口部6aの開口面積以上の断面積を有している。このような構成の第2中間部42の技術的効果については後で詳しく説明する。以下では、このような構成の第2中間部42の一具体例として、第2中間部42が、図2に示す第1中間部41の構成と同様に、ベント6の開口部6aの周囲に基材2の表面2aに沿って広がる第2底部と、第2底部の周縁からキャビティ部4に向かって延び第2底部の周縁とキャビティ部4とを接続する筒状の第2側面部とを有しているものとして説明を行う。このため、第2中間部42の構成については図2を参照することとし、ここではその図示は省略する。
【0034】
ただし、本発明の第2中間部は、第2底部を有さず、ベント6の開口部6aからキャビティ部4に向かって延びベント6の開口部6aとキャビティ部4とをそのまま接続する筒状の第2側面部によって形成された第2中間部であってもよい。この場合、第2中間部の断面はベント6の開口部6aの開口面積と同じ断面積を有することとなる。また、本発明の第2中間部は、第2底部を有さず、ベント6の開口部6aからキャビティ部4に向かって広がりベント6の開口部6aとキャビティ部4とをそのまま接続するテーパー状の側面部によって形成された第2中間部であってもよい。この場合、第2中間部の断面はベント6の開口部6aの開口面積よりも大きい断面積を有することとなる。
【0035】
以下では、成形金型10における成形の流れについて簡単に説明しつつ、第1中間部41および第2中間部42によって生じる技術的効果について詳しく説明する。
【0036】
成形時には、第1中間部41を介してゲート5からキャビティ部4に成形用材料が流入する。流入した成形用材料は、基材2の表面2aに沿って延びるキャビティ部4を流路としてキャビティ部4に沿って流れながら(キャビティ部4に対応した図4および図5のガスケット3の形状を参照)、すべてのキャビティ部4を満たしていく。このとき、成形用材料の流入前にキャビティ部4に存在していた空気や、成形用材料から発生した揮発性ガス等の不要ガスは、図1の断面図では第1中間部41とは図の水平方向について反対側に位置する第2中間部42を介してキャビティ部4からベント6に排出される。また、すべてのキャビティ部4を満たした後の余剰の成形用材料も第2中間部42を介してキャビティ部4からベント6に排出される。そして、成形用材料が硬化し(典型的には経時的に架橋硬化し)、この成形用材料の硬化により基材2の表面2aには弾性材料からなるガスケット3(図4および図5参照)が形成される。この段階では、ゲート5、ベント6、第1中間部41、および第2中間部42に溜まっていた成形用材料も同様に硬化してガスケット3とつながった状態となっている。基材2を成形金型10’から取り外す際にガスケット3と他の部分とが切り離され、これにより、基材2の表面2aにガスケット3が形成されたシール部品1が完成する。
【0037】
ガスケット3と他の部分とが切り離される際には、本来であればガスケット3に属する箇所でこのような切り離しが行われてしまい、基材2の表面2aが露出する欠け(エグレ)が発生することがある。このように基材2の表面2aが露出している状態では絶縁性の低下が懸念される。しかしながら、本実施形態の成形金型10では、以下に説明するようにエグレによる絶縁性の低下を抑える工夫が凝らされている。
【0038】
図3は、図1のゲート5付近におけるシール部品1の断面を表した模式的な断面図である。
【0039】
図3には、ゲート5の開口部5aの外側の、図2の第1中間部41内で硬化した成形用材料において切り離しが行われたため、この部分でエグレEが生じている様子が示されている。このようにゲート5とキャビティ部4との間に第1中間部41が介在するため(図2参照)、図7の状態と異なり、エグレEは基材2の表面2aにまで及んでおらず、エグレによる絶縁性の低下が抑えられている。以上では、ゲート5付近に生じたエグレEを例にとって第1中間部41の技術的効果について説明したが、ベント6付近に生じたエグレに対しては、第2中間部42が同様の技術的効果を発揮する。
【0040】
このように、本実施形態では、第1中間部41および第2中間部42の存在により、エグレによる絶縁性の低下を抑える成形金型が実現している。
【0041】
ここで、板状の基材2と、基材2の表面2aに成形された、弾性材料からなり基材2の表面2aに沿って延びる無端形状のガスケット3とを備えた図3のシール部品1が本発明のシール部品の一実施形態に相当する。上述したように、ガスケット3は、硬化することで弾性材料となる流動性の成形用材料が、ゲート5およびベント6を有する成形金型10に注入されることによって成形されたものである。ガスケット3は、図3および図4で上述したベース部3aやシールリップ部3bに加え、成形時においてゲート5に近接していた位置(すなわちゲート5の開口部5aに最も近い位置)、および、成形時においてベント6に近接していた位置(すなわちベント6の開口部6aに最も近い位置)のそれぞれにおいて、基材2の表面2aから離れる方向に突出した台座3cを有している。このような台座3cが存在することで基材2の表面2aが露出するようなエグレは生じにくくなっており、エグレによる絶縁性の低下が抑えられる。
【0042】
図1に戻って、成形金型10の構成についてさらに詳しく説明する。
【0043】
本発明の成形金型は、図1に示す成形金型10のような分割タイプの成形金型であることが好ましい。分割タイプの成形金型10では、第1分割型11、第2分割型12、および第3分割型13の3つの分割型が備えられており、これら3つの分割型の集合体が1つの成形金型10として機能する。以下、個々の分割型について説明する。
【0044】
第1分割型11は、基材2の表面2aとは反対側の基材2の面に接した状態で基材2を載せる分割型である。
【0045】
第2分割型12は、第1分割型11との間で基材2を挟み込んで基材2を固定する分割型であり、基材2を挟み込む側の面として図1のキャビティ部4が形成された対向面12aを有している。第2分割型12の内部には、図1の説明で上述した、ゲート5、第1中間部41、ベント6、および第2中間部42が形成されている。さらに、対向面12aとは反対側の第2分割型12の面において基材2に沿った方向に延びゲート5に接続するランナー7が形成されている。
【0046】
第3分割型13は、対向面12aとは反対側の第2分割型12の面上に積層される分割型である。第3分割型13には、第3分割型13を貫通し第2分割型12のランナー7に接続するスプール8が形成されている。
【0047】
このような分割タイプの成形金型10では、まず、上述した態様で第1分割型11と第2分割型12との間で基材2が挟み込んで固定され、第2分割型12の面上に積層された第3分割型13のスプール8に成形用材料が注入される。スプール8に注入された成形用材料は、第2分割型12の上部のランナー7を流れてゲート5に到達する。そして、ゲート5および第1中間部41を通ってキャビティ部4内に流入し、基材2の表面2aに沿って延びるキャビティ部4を流路としてキャビティ部4に沿って流れながら、すべてのキャビティ部4を満たしていく。なお、すべてのキャビティ部4を満たした後の余剰の成形用材料は、第2中間部42を介してキャビティ部4からベント6に排出され、余剰材料溜まり6bに蓄えられる。成形用材料の硬化後、表面2aにガスケット3が形成された基材2が第1分割型11と第2分割型12との間から取り外され、これにより、シール部品1が完成する。
【0048】
このように分割タイプの成形金型10を用いることで、基材2の表面2aへのガスケット3の成形を効率よく行うことができる。
【0049】
以上が本実施形態の説明である。
【0050】
以上では、燃料電池のセパレータ用のシール部品1を製造する場合を例にとって説明したが、本発明の成形金型は、基材の表面に沿って延びる無端形状のガスケットが形成されているタイプの任意のシール部品に対して用いることができる。このため、燃料電池のセパレータ用のシール部品以外のシール部品の製造に用いられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、エグレによる絶縁性の低下を抑えるのに有用である。
【符号の説明】
【0052】
1:シール部品、
1’:シール部品、
2:基材、
2a:表面、
2b:通気孔、
3:ガスケット、
3a:ベース部、
3b:シールリップ部、
4:キャビティ部、
5:ゲート、
5’:ゲート、
5a:開口部、
5a’:開口部、
6:ベント、
6’:ベント、
6a:開口部、
6a’:開口部、
6b:余剰材料溜まり、
7:ランナー、
8:スプール、
10:成形金型、
10’:成形金型、
11:第1分割型、
12:第2分割型、
13:第3分割型、
41:第1中間部、
41a:第1底部、
41b:第1側面部、
42:第2中間部、
E:エグレ、
E’:エグレ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7