(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】まつ毛のカール方法
(51)【国際特許分類】
A45D 2/48 20060101AFI20220826BHJP
【FI】
A45D2/48
(21)【出願番号】P 2019226018
(22)【出願日】2019-12-14
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】519447721
【氏名又は名称】一般社団法人湊式増毛技術協会
(74)【代理人】
【識別番号】100158023
【氏名又は名称】牛田 竜太
(72)【発明者】
【氏名】湊 英次
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特許第6161845(JP,B1)
【文献】特開2015-048566(JP,A)
【文献】特開2002-058523(JP,A)
【文献】特開2009-189734(JP,A)
【文献】特開2016-027220(JP,A)
【文献】特開2021-037070(JP,A)
【文献】特開2020-031799(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0145173(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0170526(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0023062(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0312782(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 2/00- 2/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端面を備えた第1断熱部材を有する第1断熱テープを、前記第1断熱部材が上まぶたに位置するとともに前記第1端面がまつ毛に位置するように貼付する行程と、
第2端面を備えた第2断熱部材を有する第2断熱テープを、前記第1端面と前記第2端面との間からまつ毛が露出するとともに前記第2断熱部材が下まぶたに位置するように貼付する行程と、
前記第1断熱部材と前記第2断熱部材との間から露出する前記まつ毛をまつ毛アイロンでカールさせる行程と、
前記第1断熱テープを貼付する行程の前に、前記前記上まぶたに、一端を目の直近に貼付け他端を眉毛方向に引っ張り上げるようにして前記上まぶたに貼付することにより、前記上まぶたを眉毛の方向に引き上げるように吊りテープを貼付する行程と、からなることを特徴とするまつ毛のカール方法。
【請求項2】
前記第1断熱テープの端面と前記第1端面とが一致し、
前記第2断熱テープの端面と前記第2端面とが一致し、
前記第1断熱部材及び前記第2断熱部材の長手方向の長さは、前記まつ毛の幅方向の長さよりも長いことを特徴とする請求項1に記載のまつ毛のカール方法。
【請求項3】
顔の半分を覆うとともに目が露出したフェイスマスクを装着する行程と、
前記まつ毛に人工毛を結び付ける行程と、
前記
第1断熱テープに係止部材を貼付し、前記係止部材と前記フェイスマスクとで前記人工毛を挟持することによって前記人工毛を係止する行程と、
前記人工毛及び前記まつ毛を前記まつ毛アイロンでカールさせる行程と、
前記人工毛をカットする行程と、をさらに有することを特徴とする請求項
1または2に記載のまつ毛のカール方法。
【請求項4】
前記まつ毛アイロンは、使用者が把持する把持部と、前記把持部から突出し発熱するロッド部を有し、
前記ロッド部は、断面がU字形状をなしておりその両端に複数の凹部が形成されていることを特徴とする請求項
1から3のいずれか1項に記載のまつ毛のカール方法。
【請求項5】
前記まつ毛アイロンでカールさせる行程において、前記ロッド部に前記まつ毛アイロンとは別体の円柱部材を嵌め込むとともに前記ロッド部と前記円柱部材とで前記まつ毛を挟持することによりまつ毛をカールすることを特徴とする
請求項4に記載のまつ毛のカール方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はまつ毛のカール方法に関し、特にまつ毛アイロンを用いたまつ毛のカール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
まつ毛をカールさせるためには、市販のまつ毛カーラーによってまつ毛を上向きにさせる方法があるが、まつ毛をまつ毛カーラーで挟みこむことによって湾曲させるため、まつ毛が上向きにカールした状態を長時間維持することが難しい。そこで、まつ毛に熱を加えることによって、まつ毛がカールした状態をより長く維持することができる方法がある。
【0003】
例えば、まつ毛アイロンでまつ毛をカールさせた状態で熱を加えることによるまつ毛カールの方法が知られている(特許文献1)。まつ毛アイロンでは、温度が90~130℃の範囲で調整されたヒータ部によってまつ毛をカールさせる。まつ毛アイロンには受け部が設けられていて、半円筒形状の受け部とヒータ部とでまつ毛を挟んだ状態でまつ毛に熱を加えることができる。
【0004】
他に、ユーザが自ら使用することによりまつ毛を整毛するまつ毛用整毛装置が知られている(特許文献2)。まつ毛用整毛装置では、発熱する多角形の加熱部によって加熱されるコームを有している。コームでまつ毛を整えることにより、まつ毛の状態を維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6161845号
【文献】特許第5879560号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のまつ毛アイロンでは、まつ毛カールの施術時に目の近傍に100℃以上に加熱されたヒータ部が位置することとなるため、露出した上まぶた、または露出した下まぶたにヒータ部が接触する危険性があった。頭部の髪の毛に熱によってパーマをかける場合は、熱と頭皮との間に距離があるため頭皮に直接熱が伝わりにくい。しかし、まつ毛は髪の毛と比べて非常に短いため、まつ毛アイロンでカールさせるためにはまぶたの近傍でまつ毛カールの施術を行うこととなる。特に、まつ毛のカールはまつ毛の生え際である根元からカールさせることによってよりボリューム感を出すことができるため、まつ毛の生え際をまつ毛アイロンで挟むこととなる。そうすると、さらにまぶたとまつ毛アイロンとの距離が近くなり、まつ毛アイロンとまぶたとの接触のリスクが高くなっていた。また、まぶたの皮膚は非常に薄いため熱等に敏感であり、直接的な接触が無い場合であってもヒータ部の輻射熱によってまぶたに熱さを感じることがあった。
【0007】
また、まつ毛整毛装置では、加熱部の温度が十分ではなくまつ毛をカールさせた状態で長時間維持することが難しかった。さらに、基本的に自己でまつ毛をカールさせることを前提とした装置であるため、あまりに高い温度まで設定可能とするとやけど等のリスクがあった。
【0008】
そこで、本発明は、安全にまつ毛に熱を加えてカールした状態を長時間維持することができるまつ毛カールの施術方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために第1の発明は、第1端面を備えた第1断熱部材を有する第1断熱テープを、前記第1断熱部材が上まぶたに位置するとともに前記第1端面がまつ毛に位置するように貼付する行程と、第2端面を備えた第2断熱部材を有する第2断熱テープを、前記第1端面と前記第2端面との間からまつ毛が露出するとともに前記第2断熱部材が下まぶたに位置するように貼付する行程と、前記第1断熱部材と前記第2断熱部材との間から露出する前記まつ毛をまつ毛アイロンでカールさせる行程と、前記第1断熱テープを貼付する行程の前に、前記前記上まぶたに、一端を目の直近に貼付け他端を眉毛方向に引っ張り上げるようにして前記上まぶたに貼付することにより、前記上まぶたを眉毛の方向に引き上げるように吊りテープを貼付する行程と、からなることを特徴とするまつ毛のカール方法を提供している。
【0010】
なお、第1断熱テープと第1断熱部材とは、一体で構成されていてもよく、別体で構成されてもよい。一体で構成される場合とは、断熱性を有するテープを用いることをいう。第2断熱テープと第2断熱部材とは、一体で構成されてもよく、別体で構成されていてもよい。
【0011】
第2の発明では、第1の発明に記載されたまつ毛のカール方法であって、前記第1断熱テープの端面と前記第1端面とが一致し、前記第2断熱テープの端面と前記第2端面とが一致し、前記第1断熱部材及び前記第2断熱部材の長手方向の長さは、前記まつ毛の幅方向の長さよりも長いことを特徴としている。
【0013】
第3の発明では、第1の発明又は第2の発明に記載されたまつ毛のカール方法であって、顔の半分を覆うとともに目が露出したフェイスマスクを装着する行程と、前記まつ毛に人工毛を結び付ける行程と、前記第1断熱テープに係止部材を貼付し、前記係止部材と前記フェイスマスクとで前記人工毛を挟持することによって前記人工毛を係止する行程と、前記人工毛及び前記まつ毛を前記まつ毛アイロンでカールさせる行程と、前記人工毛をカットする行程と、をさらに有することを特徴としている。
【0014】
第4の発明では、第1の発明から第3の発明に記載されたまつ毛のカール方法であって、前記まつ毛アイロンは、使用者が把持する把持部と、前記把持部から突出し発熱するロッド部を有し、前記ロッド部は、断面がU字形状をなしておりその両端に複数の凹部が形成されていることを特徴としている。
【0015】
第5の発明では、第4の発明に記載されたまつ毛のカール方法であって、前記カール行程において、前記ロッド部に前記まつ毛アイロンとは別体の円柱部材を嵌め込むとともに前記ロッド部と前記円柱部材とで前記まつ毛を挟持することによりまつ毛をカールすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によると、上まぶたの位置に第1断熱部材が位置するとともに下まぶたの位置に第2断熱部材が位置しているため、まつ毛アイロンの輻射熱が上まぶた及び下まぶたに伝わることを抑制できる。また、施術時に誤ってまつ毛アイロンを接触させたとしても、第1断熱部材と第2断熱部材とがそれぞれ上まぶた及び下まぶたを保護しているため、まつ毛アイロンとまぶたとが直接的に接触するという事態を防止することができる。
【0017】
さらに第1端面と第2端面との間からまつ毛が露出しているため、まつ毛をまつ毛アイロンで挟持し易い。通常では目を閉じるとまつ毛は下を向くため、まつ毛を挟持するためには、まぶたとまつ毛アイロンとをより近づける必要がある。しかし、第1断熱テープ及び第2断熱テープで挟み込むようにまつ毛のみを露出させることによって、第1端面と第2端面とが壁のような役割を果たしてまつ毛が自然と起立するため、まつ毛をまつ毛アイロンで挟持し易くなる。また、上まぶたの位置に第1断熱部材が位置するとともに下まぶたの位置に第2断熱部材が位置しているため、まぶた以外の位置で第1断熱テープ及び第2断熱テープを貼付することとなる。これにより、皮膚が薄くて敏感なまぶたに第1断熱テープ及び第2断熱テープの接着成分が付着することを回避できる。
【0018】
第2の発明によると、第1断熱テープの端面と第1端面とが一致し第2断熱テープの端面と第2端面とが一致しているため、第1断熱テープと第2断熱テープとの間にまつ毛を露出させ易くなる。換言すると、第1断熱テープと第2断熱テープとを僅かに隙間を空けて貼付するだけで、当該隙間からまつ毛を露出させることができる。これにより、まつ毛のカール施術の作業負担を軽減することができる。また、第1断熱部材及び第2断熱部材の長手方向の長さはまつ毛の幅方向の長さよりも長いため、第1断熱部材及び第2断熱部材で上まぶた及び下まぶたを完全にカバーすることができる。また、第1端面と第2端面とでまつ毛を全幅において挟むこととなり、まつ毛全体が自然と上方を向くためまつ毛アイロンで挟持し易くなる。
【0019】
また、上まぶたを眉毛の方向に引き上げるように吊りテープを貼付するため、まつ毛が自然と上(眉毛側)に向くこととなりまつ毛をまつ毛アイロンで挟持し易くなる。これにより、まつ毛の生え際からまつ毛アイロンを当てることが可能となるため、まつ毛カール施術によってまつ毛のボリューム感を出すことができる。
【0020】
第3の発明によると、接着剤を用いることなく人工毛をまつ毛に結び付けているため、接着剤による肌荒れや炎症、目のかゆみ、充血などを起こすことなくまつ毛を増毛させることができる。また、顔の半分を覆うフェイスマスクを装着しているため、増毛やカールの施術時において目の周囲を保護することができる。さらに、フェイスマスクの係止部材に人工毛を係止させているため、まつ毛に結び付けた人工毛が周囲に散乱することなく保持される。これにより、増毛の施術を効率的に行うことができるとともに、誤って人工毛を引っ張ってしまうことを抑制できる。また、人工毛とまつ毛とをまとめてまつ毛アイロンでカールするため、ボリューム感のあるまつ毛とすることができる。さらに、人工毛をカットする長さを調整することで、まつ毛の長さを任意に調整することができる。
【0021】
第4の発明によると、まつ毛アイロンのロッド部は複数の凹部が形成されているため、凹部でまつ毛を案内することにより円滑にまつ毛カールの施術を行うことができる。また、断面が略U字形状をなしているため、ロッド部に沿ってまつ毛をカールさせることができる。
【0022】
第5の発明によると、ロッド部のU字形状に円柱部材を嵌め込みまつ毛を挟持するため、まつ毛及び人工毛に熱を加えてカールさせることができる。また、ロッド部と円柱部材とが別体であるため、まつ毛を挟持するまつ毛カーラーと比較して作業性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1の実施の形態によるまつ毛のカール方法のフロー図。
【
図2】本発明の第1の実施の形態によるまつ毛のカール方法であって上まぶたに吊りテープを貼付したときの図。
【
図3】本発明の第1の実施の形態によるまつ毛のカール方法であって第1保護テープ及び第2保護テープを貼付したときの図。
【
図4】本発明の第1の実施の形態によるまつ毛の増毛施術を説明する斜視図。
【
図5】本発明の第1の実施の形態によるまつ毛の増毛方法を説明する図。
【
図6】本発明の第1の実施の形態によるまつ毛のカール方法であって係止部材で人工毛を係止した状態を表す図。
【
図7】本発明の第1の実施の形態によるまつ毛のカール方法であって第1断熱テープ及び第2断熱テープを貼付したときの図。
【
図8】本発明の第1の実施の形態によるまつ毛のカール方法であって
図7(a)は第1断熱テープの平面図、
図7(b)は第1断熱テープの正面図。
【
図9】本発明の第1の実施の形態によるまつ毛のカール方法であってまつ毛アイロンでのカール施術の図。
【
図10】本発明の第1の実施の形態によるまつ毛アイロン表す斜視図。
【
図11】本発明の第1の実施の形態によるまつ毛のカール方法を説明するための図であって、
図10(a)はまつ毛アイロンと円柱部材とでまつ毛を挟持する前の状態を表す図、
図10(b)はまつ毛をまつ毛アイロンと円柱部材とでまつ毛を挟持した時の図、
図10(c)はまつ毛アイロンと円柱部材とをまつ毛から離したときの図。
【
図12】本発明の第1の実施の形態によるまつ毛のカール方法であって人工毛をカットする図。
【
図13】本発明の第2の実施の形態によるまつ毛のカール方法のフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第1の実施の形態によるまつ毛のカール方法を
図1乃至
図12に基づき説明する。図中に示すように上下左右方向を定義する。本実施の形態によるまつ毛のカール方法は、
図1に示すフローに従って、まつ毛に人工毛を結び付けた状態でまつ毛アイロンによってまつ毛及び人工毛をカールさせる。
【0025】
図2に示すように、施術者10は被施術者1に顔2の上半分を覆うフェイスマスク3を装着する(S1)。フェイスマスク3は、両端に図示せぬループが設けられていて、当該ループを両耳に引掛けることにより顔2に固定される。フェイスマスク3は被施術者1の目4が露出する楕円形の露出孔3aが形成されている。フェイスマスク3によって、被施術者1の目4の周囲を保護することができる。
【0026】
施術者10は、これからまつ毛の増毛及びカールの施術を行う目4の上まぶた4Aに吊りテープ5を貼付する(S2)。吊りテープ5を貼付するときは、吊りテープ5の一端を目4の直近に貼付け、他端を眉毛方向(矢印Aの方向)に引っ張り上げるようにして上まぶた4Aに貼付する。これにより、
図2に示すように、目4のまつ毛41が起立した状態となる。本実施の形態では、吊りテープ5として、テープ部がポリエステル・レーヨン不織布であって粘着剤がシリコン系接着剤のシリコンテープを用いているが、これに限定されず、他の医療用テープを用いてもよい。
【0027】
図3に示すように、まつ毛41に後述の人工毛42(
図4)を結びつける際、目4の周囲を保護するために保護テープ6を貼付する(S3)。保護テープ6は、上まぶた4A及び露出孔3aの上半分を覆うように貼付される第1保護テープ61と、下まぶた4B及び露出孔3aの下半分を覆うように貼付される第2保護テープ62とから構成される。このとき、第1保護テープ61と第2保護テープ62との間にまつ毛41が露出している。換言すると、第1保護テープ61と第2保護テープ62とは、上下方向に僅かに間隔を空けて上まぶた4A及び下まぶた4Bに貼付される。本実施の形態では、第1保護テープ61及び第2保護テープ62として、テープ部がポリエステル・レーヨン不織布であって粘着剤がシリコン系接着剤のシリコンテープを用いているが、これに限定されず、他の医療用テープを用いてもよい。
【0028】
図4に示すように、施術者10は、自在ピンセット11を用いてまつ毛41に人工毛42を結びつける(S4)。自在ピンセット11は、自在継手12によってピンセット13を所望の位置で固定することができる。ピンセット13は、内側に押圧することによって先端が開く逆ピンセットであり、施術者10はこれを用いて人工毛42をまつ毛41に結び付ける。このとき、第1保護テープ61に、人工毛42を一時的に固定する係止部材63が貼付される。係止部材63は、貼付部64と、挟持部65と、から構成される。貼付部64が第1保護テープ61に固定され、挟持部65の自重によって第1保護テープ61との間に人工毛42が挟持される。
【0029】
図5に基づいて、まつ毛41を増毛させるまつ毛の増毛方法について詳細に説明する。人工毛42は、ループ部42Aと、ループ部42Aから延出する一端部42Bと、一端部42Bの逆に位置する他端部42Cと、を有している。
図5(a)に示すように、人工毛42のループ部42Aをピンセット13の先端に通す。
図5(b)に示すように、矢印のようにピンセット13を両サイドから押圧して先端を開く。
図5(c)に示すように、ピンセット13でまつ毛41のうちのまつ毛増毛の対象となる対象まつ毛41Aの先端部分を挟む。同時に、人工毛42の一端部42B及び他端部42Cを引っ張ってループ部42Aを、対象まつ毛41Aに隣接するまつ毛41を挟みこまない程度に収縮させる。ピンセット13は自在継手12によって保持されているため、容易にピンセット13の位置の微調整ができるとともに、位置を決めた時の遊びがない。ここでいう遊びとは、ピンセット13を位置決めして手を離すと僅かにピンセット13の位置が移動することをいう。従って、対象まつ毛41Aをピンセット13で挟持した状態で手を離しても、ピンセット13の位置は変わらない。これにより、増毛中に対象まつ毛41Aがピンセット13によって引っ張られることがない。
【0030】
図5(d)に示すように、ループ部42Aをピンセット13から離れるように矢印の方向にスライドさせて、ループ部42Aを対象まつ毛41Aに通す。このときループ部42Aを収縮させているため、周囲のまつ毛をループ部42Aに巻き込むことなく、対象まつ毛41Aのみをループ部42Aに通すことができる。
図5(e)に示すように、一端部42Bと他端部42Cとを矢印の方向に引っ張ってループ部42Aを収縮させ、人工毛42を対象まつ毛41Aに結び付ける。このとき、一端部42Bと他端部42Cとを、まつ毛41の幅方向と略平行な方向に引っ張る。これにより、人工毛42がまつ毛41の幅方向に延びるように結び付けられるため、まつ毛41のボリューム感がより大きくなる。人工毛42は、対象まつ毛41Aの根元近傍に結び付けることが望ましい。これにより、人工毛42の長さをまつ毛41と揃えた場合でも、人工毛42を長くすることができるため、まつ毛41のボリューム感が増す。
【0031】
図5(f)に示すように、ピンセット13を押圧して先端を開き、対象まつ毛41Aからピンセット13を離間させる。
図6に示すように、対象まつ毛41Aに結び付けられた後の人工毛42は、第1保護テープ61に貼付された係止部材63に一時的に挟持される。詳細には、人工毛42は、挟持部65の自重によって、挟持部65と第1保護テープ61との間に狭持される。この
図5(a)から
図5(f)の作業を複数のまつ毛に対して行う(
図6)。まつ毛41全体のボリュームや長さ、質感等を考慮して、すべてのまつ毛41に対して人工毛42を結び付けてもよく、間隔を空けて人工毛42をまつ毛41に結び付けてもよい。まつ毛41の増毛が完了したら係止部材63を第1保護テープ61から剥す。
【0032】
図7に示すように、後述のまつ毛アイロン8の熱から上まぶた4A及び下まぶた4Bを保護するための断熱テープ7を貼付する(S5)。断熱テープ7は、第1断熱テープ71と、第1断熱テープ71と略同一形状の第2断熱テープ72と、から構成される。
図7に示すように、第1断熱テープ71は、第1保護テープ61の上から上まぶた4Aを覆うように貼付される。なお、第1保護テープ61を剥して第1断熱テープ71を上まぶた4Aに直接貼付してもよい。第2断熱テープ72は、第2保護テープ62の上から下まぶた4Bを覆うように貼付される。なお、第2保護テープ62を剥して第2断熱テープ72を下まぶた4Bに直接貼付してもよい。
【0033】
第1断熱テープ71は、シリコンからなる第1断熱部材71Aをシール面に貼り付けることにより構成される。第1断熱部材71Aは、略矩形であって約1mmの厚みを有し、第1端面71Bを備えている。
図8(a)に点線で示すように、第1断熱部材71Aは、第1端面71Bが第1断熱テープ71の端面と一致するように配置される。第1断熱部材71Aは、左右方向の幅が上まぶた4A及び下まぶた4Bよりも僅かに長い。第1断熱部材71Aの上下方向の長さは第1断熱テープ71の約半分程度であるが、これに限定されず、第1断熱テープ71の上下方向の幅と略同一であってもよい。これにより、第1断熱部材71Aがより広い範囲を占めることとなり、まつ毛アイロン8の熱から広範囲を保護することができる。
図8(b)に示すように、
図8(a)の矢印方向である平面視において、第1端面71Bが外部に露出している。本実施の形態では、第1断熱テープ71として、テープ部がポリエステル・レーヨン不織布であって粘着剤がシリコン系接着剤のシリコンテープを用いているが、これに限定されず他の医療用テープを用いても良い。第1断熱部材71Aの素材や形状はこれに限定されず、熱の伝達を遮るものであればよい。例えば、シリコンスポンジ、発泡ポリスチレン、ウレタンフォーム、フェノールフォーム、コルク、セルロース等を用いることができる。
【0034】
第2断熱テープ72は、シリコンからなる第2断熱部材72Aをシール面に貼り付けることにより構成される。第2断熱部材72Aは、略矩形であって約1mmの厚みを有し、第2端面72Bを備えている。第2断熱部材72Aは、第2端面72Bが第2断熱テープ72の端面と一致するように配置される。平面視において第2端面72Bが外部に露出している。第2断熱部材72Aは、左右方向の幅が上まぶた4A及び下まぶた4Bよりも僅かに長い。第2断熱部材72Aの上下方向の長さは第2断熱テープ72の約半分程度であるが、これに限定されず、第2断熱テープ72の上下方向の幅と略同一であってもよい。これにより、第2断熱部材72Aがより広い範囲を占めることとなり、まつ毛アイロン8の熱から広範囲を保護することができる。本実施の形態では、第2断熱テープ72として、テープ部がポリエステル・レーヨン不織布であって粘着剤がシリコン系接着剤のシリコンテープを用いているが、これに限定されず、他の医療用テープを用いてもよい。第2断熱部材72Aの素材や形状はこれに限定されず、熱の伝達を遮るものであればよい。例えば、シリコンスポンジ、発泡ポリスチレン、ウレタンフォーム、フェノールフォーム、コルク、セルロース等を用いることができる。
【0035】
図7に示すように、断熱テープ7を目4に貼付したとき、第1断熱テープ71と第2断熱テープ72との間にまつ毛41及びまつ毛41に結び付けた人工毛42が露出する。このとき、第1端面71Bと第2端面72Bとが上下方向に間隔を空けて、人工毛42を挟んだ状態で対向する。なお、
図7では説明のために第1断熱テープ71と第2断熱テープ72との間に隙間が空いているが、実際は第1断熱テープ71と第2断熱テープ72との隙間は僅かとなる。第1端面71B及び第2端面72Bはいずれも1mm程度の厚みを有しているため、第1断熱部材71A及び第2断熱部材72Aが壁のような役割を果たしてまつ毛41及び人工毛42を起立させる。
【0036】
次に、まつ毛アイロン8を用いてまつ毛41及び人工毛42をカールさせる(S6)。まつ毛アイロン8を用いたカール方法について、
図9から
図11を参照して説明する。
【0037】
図10に示すように、まつ毛アイロン8は、ロッド部81と、施術者10が把持する把持部82と、図示せぬ温度調整部と、から構成される。ロッド部81は、把持部82から長手方向に延出し、温度調整部によって温度調整可能であって60~150℃の範囲で任意の温度を設定することができる。ロッド部81は、断面が略U字形状をなしていて、U字状の先端部分に長手方向全幅に亘って凹部81Aが形成されている。凹部81Aは、櫛のような役割を果たし、溝でまつ毛41及び人工毛42を整える。
【0038】
ロッド部81の長手方向の長さは、目4の左右方向の幅よりも長く構成される。これにより、1回の施術でまつ毛41及び人工毛42の全幅をカバーすることができる。まつ毛アイロン8は、別体の略円柱形状である円柱部材83をロッド部81のU字に勘合させることによりまつ毛41をカールさせる。
【0039】
まつ毛カールの施術では、施術者10が温度調整部を操作してロッド部81を所望の温度に設定する。ロッド部81の設定温度は、人工毛42を結び付けた本数、人工毛42の材質、まつ毛41の太さ等に基づき、調節する。ロッド部81が設定温度に到達すると、図示せぬ温度ランプが消灯し、施術者10はロッド部81が設定温度に到達したことを認識する。
【0040】
図9に示すように、施術者10が一方の手でまつ毛アイロン8を把持し、他方の手で円柱部材83を把持する。まつ毛41及び人工毛42の根本付近にロッド部81が目4と平行になるように配置し、まつ毛41及び人工毛42に対してロッド部81の反対側に円柱部材83を配置する。
【0041】
図11(a)に示すようにまつ毛41に対してロッド部81の反対側に円柱部材83を配置した後、矢印の方向に両者を近づけ、
図11(b)に示すようにまつ毛41をロッド部81と円柱部材83とで挟持する。挟持する時間は数秒程度で、
図11(c)に示すように、矢印の方向にロッド部81と円柱部材83とを離間させる。そうすると、まつ毛41がロッド部81のU字及び円柱部材83の表面に沿って湾曲する。このとき、ロッド部81の熱もまつ毛41に同時に伝達されるため、まつ毛41がカールした状態をより長く保持することができる。
【0042】
まつ毛アイロン8を使用する際は、凹部81Aでまつ毛41及び人工毛42を整えながら上記のカール施術を行う。最後に、
図12に示すように、人工毛42を適切な長さにカットして終了する。このとき、人工毛42をまつ毛41よりも長めにカットすることにより、まつ毛41のボリューム感をより増やすことができる。
【0043】
このような構成によると、上まぶた4Aの位置に第1断熱部材71Aが位置するとともに下まぶた4Bの位置に第2断熱部材72Aが位置しているため、まつ毛アイロン8の輻射熱が上まぶた4A及び下まぶた4Bに伝わることを抑制できる。また、施術時に誤ってまつ毛アイロン8を接触させたとしても、第1断熱部材71Aと第2断熱部材72Aとがそれぞれ上まぶた4A及び下まぶた4Bを保護しているため、まつ毛アイロン8とまぶたとが直接的に接触するという事態を防止することができる。
【0044】
さらに第1端面71Bと第2端面72Bとの間からまつ毛41が露出しているため、まつ毛41をまつ毛アイロン8で挟持し易い。通常では目4を閉じるとまつ毛41は下を向くため、まつ毛41を挟持するためにはより目4とまつ毛アイロン8とを近づける必要がある。しかし、第1断熱テープ71及び第2断熱テープ72で挟み込むようにまつ毛41のみを露出させることによって、まつ毛41が自然と上方を向くためまつ毛アイロン8で挟持し易くなる。
【0045】
また、上まぶた4Aの位置に第1断熱部材71Aが位置するとともに下まぶた4Bの位置に第2断熱部材72Aが位置しているため、まぶた以外の位置で第1断熱テープ71及び第2断熱テープ72を貼付することとなる。これにより、皮膚が薄くて敏感なまぶたに接着成分が付着することを回避できる。
【0046】
このような構成によると、第1断熱テープ71の端面と第1端面71Bとが一致し第2断熱テープ72の端面と第2端面72Bとが一致しているため、第1断熱テープ71と第2断熱テープ72との間にまつ毛41を露出させ易くなる。換言すると、第1断熱テープ71と第2断熱テープ72とを僅かに隙間を空けて貼付するだけで、当該隙間からまつ毛41を露出させることができる。これにより、まつ毛41のカール施術の作業負担を軽減することができる。
【0047】
また、第1断熱部材71A及び第2断熱部材72Aの長手方向の長さはまつ毛41の幅方向の長さよりも長いため、第1断熱部材71A及び第2断熱部材72Aで上まぶた4A及び下まぶた4Bを完全にカバーすることができる。また、第1端面71Bと第2端面72Bとでまつ毛41を全幅において挟持することとなり、まつ毛41全体が自然と上方を向くためまつ毛アイロン8で挟持し易くなる。
【0048】
このような構成によると、上まぶた4を眉毛の方向に引き上げるように吊りテープ5を貼付するため、まつ毛41が自然と上(眉毛側)に向くこととなりまつ毛41をまつ毛アイロン8で挟持し易くなる。これにより、まつ毛41の生え際からまつ毛アイロン8を当てることが可能となるため、まつ毛カール施術によってまつ毛41のボリューム感を出すことができる。
【0049】
このような構成によると、接着剤を用いることなく人工毛42をまつ毛41に結び付けているため、接着剤による肌荒れや炎症、目のかゆみ、充血などを起こすことなくまつ毛41を増毛させることができる。また、顔の半分を覆うフェイスマスク3を装着しているため、増毛やカールの施術時において目4の周囲を保護することができる。
【0050】
さらに、フェイスマスク3の係止部材63に人工毛42を係止させているため、まつ毛41に結び付けた人工毛42が周囲に散乱することなく保持される。これにより、増毛の施術を効率的に行うことができるとともに、誤って人工毛42を引っ張ってしまうことを抑制できる。また、人工毛42とまつ毛41とをまとめてまつ毛アイロン8でカールするため、ボリューム感のあるまつ毛41とすることができる。さらに、人工毛42をカットする長さを調整することで、まつ毛41の長さを任意に調整することができる。
【0051】
このような構成によると、まつ毛アイロン8のロッド部81は複数の凹部81Aが形成されているため、凹部81Aでまつ毛を案内することにより円滑にまつ毛カールの施術を行うことができる。また、断面が略U字形状をなしているため、ロッド部81に沿ってまつ毛をカールさせることができる。
【0052】
このような構成によると、ロッド部81のU字形状に円柱部材83を嵌め込みまつ毛41及び人工毛42を挟持するため、まつ毛41及び人工毛42に熱を加えてカールさせることができる。また、ロッド部81と円柱部材83とが別体であるため、まつ毛41を挟持するまつ毛カーラーと比較して作業性が良い。
【0053】
次に、本発明の第2の実施の形態について、
図13に基づいて説明する。第1の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付し説明を省略する。
【0054】
図13に示すように、第2の実施の形態のまつ毛のカール方法では、第1の実施の形態で行った目4に保護テープ6を貼付する行程(S6)、まつ毛の増毛行程(S7)、及び人工毛42のカット行程(S8)を省略している。このような構成であっても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。なお、吊りテープ5を貼付する行程(S2)を省略してもよい。
【0055】
このような構成によると、第1の実施の形態のまつ毛のカール方法に比べて、簡易的にまつ毛のカール施術を行うことができる。
【0056】
本発明によるまつ毛のカール方法は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0057】
上述の実施の形態では、まつ毛アイロンとしてロッド部81と円柱部材83とが別体のものを用いたが、これに限定されずロッド部と円柱部材とが一体となったものを用いてもよい。
【0058】
上述の実施の形態では、フェイスマスク3を顔2に着用したが、フェイスマスク3を着用することなくまつ毛のカール施術を行ってもよい。
【0059】
上述の実施の形態では、第1断熱テープ71に第1断熱部材71Aが別体で設けられていたが、これに限定されず、第1断熱テープと第1断熱部材とが一体であってもよい。換言すると、第1断熱テープは、断熱性を有するシリコンテープを用いてもよい。また、第2断熱テープに第2断熱部材72Aが別体で設けられていたが、これに限定されず、第2断熱テープと第2断熱部材とが一体であってもよい。換言すると、第2断熱テープは、断熱性を有するシリコンテープを用いてもよい。
【0060】
上述の実施の形態では、第1断熱部材71A及び第2断熱部材72Aは略矩形であったが、これに限定されない。例えば、第1端面及び第2端面は直線状であって、他の部分は上まぶた4A及び下まぶた4Bの形状に沿うように楕円形であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 被施術者
2 顔
3 フェイスマスク
4 目
4A 上まぶた
4B 下まぶた
5 吊りテープ
6 保護テープ
7 断熱テープ
8 まつ毛アイロン
41 まつ毛
42 人工毛
61 第1保護テープ
62 第2保護テープ
71 第1断熱テープ
71A 第1断熱部材
71B 第1端面
72 第2断熱テープ
72A 第2断熱部材
72B 第2端面
81 ロッド部
81A 凹部
82 把持部
83 円柱部材