(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】フィルタープレスのろ布洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B01D 25/12 20060101AFI20220826BHJP
B08B 3/04 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
B01D25/12 D
B01D25/12 U
B08B3/04 Z
(21)【出願番号】P 2019093342
(22)【出願日】2019-05-17
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000197746
【氏名又は名称】株式会社石垣
(72)【発明者】
【氏名】柳井 敦
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-155708(JP,A)
【文献】特開2016-112571(JP,A)
【文献】実開昭53-116078(JP,U)
【文献】特開2012-239931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 23/00-35/04,35/08-37/08
B08B 3/00-3/14
C02F 11/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のろ板(19)間に形成されるろ過室(22)に配置されたろ布(21)を洗浄するフィルタープレス(1)のろ布洗浄方法において、
複数のろ板(19)を閉板してろ板(19、19)間にろ過室(22)を形成する工程(S1)と、
ろ板(19)に開口した原液供給孔(24)からろ過室(22)へ洗浄液と衝撃体(8)を供給する工程(S2)と、
洗浄液をろ過室(22)上部から供給しつつ下部より排出すると共にエアーをろ過室(22)下部から供給しつつ上部より排出し、衝撃体(8)を遊動させてろ布(21)表面に衝撃を与えるようにろ過室(22)を攪拌する工程(S3)と、
ろ板(19)を開板してろ過室(22)から洗浄液と衝撃体(8)を排出する工程(S4)と、
洗浄液と衝撃体(8)を分離して衝撃体(8)を回収する工程(S5)と、を備える
ことを特徴とするフィルタープレスのろ布洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ板間に形成されたろ過室に配置されたろ布を洗浄するフィルタープレスのろ布洗浄方法において、洗浄水をろ過室に供給し、ろ過室内のろ布を攪拌洗浄するフィルタープレスのろ布洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルタープレスのろ布洗浄方法としては、脱水ケーキを排出するためにろ板を開板した後、開板状態を維持してろ布のろ過面に洗浄水を噴射し、ろ布に付着した脱水ケーキを剥離する洗浄方法が行われている。
その他、特許文献1のように、脱水ケーキを排出した後、ろ板を閉板し、ろ布が配置されたろ過室に洗浄液を充填すると共に圧縮空気を噴射することで、ろ布から脱水ケーキを剥離させる洗浄方法が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のフィルタープレスのように、ろ板を開板した状態でろ布に洗浄水を噴射させる洗浄方法では、洗浄水を噴射させるための洗浄装置が必要で、ろ布全面を洗浄するにはろ布や洗浄装置を移動させる必要があり、装置が複雑かつ高価となっていた。
また、特許文献1のように、ろ過室内に洗浄水を充満した後、圧縮空気のみでろ布を洗浄するには洗浄力が不足しており、ろ布に目詰まりした汚泥を剥離することができなかった。さらに特許文献1では、ろ過面の裏から圧縮空気を噴射するため、ろ過面側に対する洗浄力が低い問題や、ろ過室の上部から圧縮空気を噴射するため、ろ過室下部では圧縮空気の洗浄力が低いという問題もあった。
本発明は、ろ過室内のろ布の全面を高い洗浄力で洗浄することができるフィルタープレスのろ布洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
複数のろ板間に形成されるろ過室に配置されたろ布を洗浄するフィルタープレスのろ布洗浄方法において、複数のろ板を閉板してろ板間にろ過室を形成する工程と、ろ板に開口した原液供給孔からろ過室へ洗浄液と衝撃体を供給する工程と、洗浄液をろ過室上部から供給しつつ下部より排出すると共にエアーをろ過室下部から供給しつつ上部より排出し、衝撃体を遊動させてろ布表面に衝撃を与えるようにろ過室を攪拌する工程と、ろ板を開板してろ過室から洗浄液と衝撃体を排出する工程と、洗浄液と衝撃体を分離して衝撃体を回収する工程と、を備えることで、高いろ布洗浄能力を得ることができるとともに、ろ過室内で流水及びエアーによる攪拌が可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、フィルタープレスのろ布洗浄時に、ろ過室に洗浄液と共に衝撃体を供給し、エアーを噴射することで衝撃体が遊動し、ろ布に衝撃体を衝突させることで高い洗浄力が得られる。このろ布洗浄によって、ろ布の目詰まりを解消し、ろ過性能の低下を防止できると共にろ布の寿命を延ばすことができる。
また、複雑な洗浄装置が不要となり、機器のコスト、メンテナンス費を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係るフィルタープレスの概略構成図である。
【
図3】同じく、フィルタープレスのろ板の正面図である。
【
図4】同じく、フィルタープレスのろ板の背面図である。
【
図5】同じく、フィルタープレスの脱水運転中のろ過室の断面図である。
【
図6】同じく、衝撃体を供給しているろ過室の断面図である。
【
図7】同じく、フィルタープレスのろ布洗浄中のろ過室の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明に係るフィルタープレスの概略構成図である。
本発明は、ろ過室に洗浄液を供給してろ布を洗浄するフィルタープレスであって、洗浄液と共にろ過室で遊動する衝撃体を供給し、衝撃体をろ布に衝突させて洗浄するフィルタープレスのろ布洗浄方法である。
【0011】
フィルタープレス1は原液貯留槽2を原液供給管3で接続し、原液供給管3に備えた給泥ポンプ4により原液貯留槽2の汚泥をフィルタープレス1に供給する。
洗浄液を貯留する洗浄液貯留槽5と原液供給管3を洗浄液供給管6で接続し、洗浄液供給管6には洗浄液ポンプ7を設ける。
衝撃体8を貯留する衝撃体タンク9と洗浄液供給管6を衝撃体供給管10で接続し、衝撃体供給管10には開閉弁11を設ける。
衝撃体供給管10は洗浄液ポンプ7の前段で洗浄液供給管6と接続し、開閉弁11が開いたときには洗浄液と衝撃体8をフィルタープレス1に供給する。
【0012】
フィルタープレス1には排水管12と給気管13、排気管14を接続する。排水管12はフィルタープレス1でろ過したろ液を排出する。ろ布洗浄時は洗浄液を排水管12から洗浄液貯留槽5に返送して再利用する。給気管13はブロワー15を接続してフィルタープレス1にエアーを供給し、排気管14はブロワー15で供給されたエアーを機外に排出する。
フィルタープレス1下方には、ろ布洗浄後にフィルタープレス1から排出される洗浄液と衝撃体8を貯留する回収槽16を設け、回収槽16から衝撃体8を回収して衝撃体タンク9へ返送する。
【0013】
図2は、本発明に係るフィルタープレスの側面図である。
本発明のフィルタープレス1は、左右に配置したフレーム17と、フレーム17、17間に支架された一対のガイドレール18、18と、ガイドレール18上で移動自在に並列した複数のろ板19と、ろ板19の開閉を行う開閉装置20と、を有する。
ろ板19の両面にはろ布21を張設する。複数のろ板19が閉板すると、内部にろ布21を張設したろ過室22が形成され、ろ過室22のろ布21、21間に原液を供給して脱水する。
また、ろ過室22上部には原液及び洗浄液と衝撃体8を供給するための原液供給管3と、ろ過室22からエアーを排出する排気管14を接続する。さらに、ろ過室22下部にはろ液と洗浄液を排出する排水管12、ろ過室22にエアーを供給する給気管13を接続する。
【0014】
図3は、本発明に係るフィルタープレスのろ板の正面図である。
ろ板19の中央部には凹面状のろ過床23を形成しており、ろ過床23にろ布21を張設する。
ろ過床23上部には、原液供給管3と連通する原液供給孔24と、ろ布21洗浄で用いたエアーを排出する排気孔25を開口し、排気孔25はろ板19の一方側面(
図3右)に設けた連通口26aに貫通させる。
ろ過床23下部にはろ液と洗浄液の通水孔27を開口し、通水孔27はろ板19の他方側面(
図3左)に設けた連通口26bに貫通させる。
【0015】
図4は、本発明に係るフィルタープレスのろ板の背面図である。
ろ板19正面と同様に、中央部にはろ過床23を形成し、ろ過床23にろ布21を張設する。ろ過床23上部には原液供給孔24が開口する。
ろ過床23下部には、ろ布21洗浄に用いるエアーを供給するための給気孔28を開口し、給気孔28はろ板19の一方側面(
図4左)に設けた連通口26cに貫通させる。
【0016】
図3、
図4に示すように、ろ板19の上部には原液供給孔24が開口する。原液供給孔24は原液供給管3と接続し、閉板時には複数のろ板19の原液供給孔24が連通して原液をろ過室22に供給する通路となる。
また、複数のろ板19はそれぞれ連通口26a、26b、26cを備え、閉板時にはろ板19の連通口26a、26b、26cがそれぞれ連通する。
ろ布
21洗浄中は、原液供給孔24から洗浄液を供給し、通水孔27から洗浄液が排水されると共に、給気孔28からエアーが供給され、排気孔
25からエアーが排出される。
なお、通水孔27と給気孔28、連通口26b、26cは、フィルタープレス1の脱水運転時には、ろ布21を透過したろ液を排出する管として利用される。
【0017】
図5は、本発明に係るフィルタープレスの脱水運転中のろ過室の断面図である。
フィルタープレス1の脱水運転は、複数のろ板19を閉板して行う。複数のろ板19が閉板することによって、ろ板19、19間でろ過室22を形成する。ろ過室22には一対のろ布21、21を張設する。
脱水運転時には、図示しないバルブで連通口26b、26cを開き、連通口26aを閉じることで、原液供給孔24から一対のろ布21、21間に汚泥が供給され、ろ布21を透過したろ液が通水孔27、給気孔28から連通口26b、26cを通って排出される。水分が排出されることでろ過室22には固形分が残り、脱水ケーキが生成される。
【0018】
図6は、本発明に係る衝撃体を供給しているろ過室の断面図である。
連通口26a、26b、26cを閉止し、原液供給孔24から洗浄液と衝撃体8をろ過室22に供給する。
【0019】
図7は、本発明に係るフィルタープレスのろ布洗浄中のろ過室の断面図である。
本発明のフィルタープレス1は、脱水ケーキを排出した後、ろ過室22に洗浄液と衝撃体8(ボール、球体など)を充填してろ布21を洗浄する。洗浄液貯留槽5から洗浄液供給管6を通って洗浄液をろ過室22に供給するとともに、給気孔28からエアーを噴射することで、洗浄水の流水とエアーによる攪拌で衝撃体8がろ布21と衝突し、ろ布21に付着した脱水ケーキを剥離する。供給された洗浄水は通水孔27から排出され、エアーは排気孔25から排出される。
【0020】
ここで衝撃体8について詳述すると、衝撃体8は、球形、円筒形、箱形など、洗浄液と共に衝撃体供給管10からろ過室22に流入することができる形状且つ大きさであれば形を限定しない。
衝撃体8の比重は0.8~1.3とすることで、ろ過室22に供給された際には洗浄液中を遊動してろ布21に衝撃を与えることができる。
衝撃体8の材質は、ポリアミド、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ABSなどのプラスチック、NBR、EPM、EPDM、ポリウレタン、シリコンなどのゴム、その他前記比重の範囲で自由に選択できる。衝撃体8に空隙を設けて比重を調整してもよい。
なお、衝撃体8を洗浄液と共に搬送する洗浄液ポンプ7は公知のポンプを利用できるが、ポンプの損傷を考慮すると容積形の回転ポンプが好ましい。
【実施例】
【0021】
本発明のフィルタープレス1は、並列して閉板したろ板19内のろ過室22で原液を脱水後、ろ板19を開板し、ろ過室22から脱水ケーキを排出する。脱水ケーキは自重やろ布21の振動などにより、ろ布21から剥離する。ろ布21には、自重や振動で剥離しきれなかった脱水ケーキ、又は目詰まりした汚泥が付着しているため、ろ布21の洗浄を行う。
【0022】
ろ布21の洗浄は、初めに複数のろ板19を閉板してろ板19間にろ過室22を形成する工程S1を備える。連通口26a、26b、26cには図示しないバルブをそれぞれ備え、すべて閉止する。衝撃体供給管10の開閉弁11も閉止する。
開板により脱水ケーキが排出されているため、空のろ過室22が形成される。
【0023】
ろ過室22が形成されると、ろ過室22へ洗浄液と衝撃体8を供給する工程S2に移る。
開閉弁11を開くと共に洗浄液ポンプ7を起動し、洗浄液及び衝撃体8をろ過室22に供給する。洗浄液及び衝撃体8がろ過室22に充填されると洗浄液ポンプ7を停止する。
【0024】
洗浄液と衝撃体8がろ過室22に充填されると、ろ過室22を攪拌する工程S3を開始する。
開閉弁11を閉じ、連通口26bのバルブを開いた状態で洗浄液ポンプ7を起動する。洗浄液ポンプ7で供給された洗浄液は、原液供給孔24からろ過室22に供給される。洗浄液をろ過室22に供給すると共に、通水孔27から洗浄液を排出することで、ろ過室22内で洗浄液の水流が発生する。ろ過室22に供給された洗浄液は、衝撃体8を攪拌することでろ布21に衝撃を与え、脱水ケーキ及び目詰まりした汚泥を剥離する。排出された洗浄液は洗浄液貯留槽5に返送される。洗浄液ポンプ7による撹拌を所定時間行った後、洗浄液ポンプ7を停止する。
【0025】
次に、ブロワー15起動のため、連通口26a、26cのバルブを開き、連通口26bのバルブを閉じる。ブロワー15を起動することで、ブロワー15から送られたエアーは給気孔28からろ過室22に供給され、バブリングを行う。ろ過室22内ではエアーによってろ布21が洗浄されると共に、エアーが衝撃体8を攪拌することで洗浄効果がさらに高まる。
ろ過室22に供給されたエアーは排気孔25から外部に排出される。ブロワー15による撹拌を所定時間行った後、ブロワー15を停止する。
【0026】
次に、連通口26bのバルブを開き、洗浄液ポンプ7とブロワー15を同時に起動してろ過室22を攪拌する。
洗浄液ポンプ7でろ過室22に洗浄水を供給し、ブロワー15でろ過室22にエアーを供給することで、ろ過室22では衝撃体8が大きく遊動する。水流とバブリングによる洗浄でろ布21が効果的に洗浄される。
所定時間ろ布21の洗浄を行った後、洗浄液ポンプ7とブロワー15を停止して洗浄を終了する。
【0027】
なお、洗浄液ポンプ7による攪拌とブロワー15による攪拌、洗浄液ポンプ7とブロワー15を同時に起動する攪拌は、ろ布21の目詰まりの度合いに応じて何れかひとつを選択して行ってもよく、複数選択した場合は行う順序を適宜変更してもよい。
【0028】
ろ過室22の攪拌終了後、ろ過室22から洗浄液と衝撃体8を排出する工程S4に移る。
連通口26a、26b、26cのバルブを閉じ、ろ板19を開板してろ過室22内に残留した洗浄液、衝撃体8及びろ布21から剥離した汚泥を排出する。
【0029】
最後に、排出された洗浄液と衝撃体8を分離して衝撃体8を回収する工程S5を行う。
排出された洗浄液、衝撃体8及び汚泥は、フィルタープレス1下方に配置された回収槽16で回収され、それぞれ分離する。
衝撃体8は、比重が洗浄液よりも軽いものであれば、回収槽16内で浮遊した衝撃体8を回収し、衝撃体タンク9に返送する。比重が洗浄液よりも重いものであれば、メッシュ等により分離し、衝撃体8を衝撃体タンク9に返送する。
洗浄液と汚泥は沈降分離により分離し、回収槽16で沈降した汚泥は原液貯留槽2に返送し、上澄み液を洗浄液貯留槽5に返送する。
【0030】
ろ過室22から洗浄液、衝撃体8及び汚泥を排出した後、ろ板19を閉板して再びろ過室22を形成し、原液貯留槽2から汚泥を供給して脱水を行う。
【符号の説明】
【0031】
1 フィルタープレス
8 衝撃体
19 ろ板
21 ろ布
22 ろ過室