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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】女性用の携帯型便器
(51)【国際特許分類】
   A47K 11/06 20060101AFI20220826BHJP
【FI】
A47K11/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022049103
(22)【出願日】2022-03-24
【審査請求日】2022-04-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522119042
【氏名又は名称】鄭 倩萍
(74)【代理人】
【識別番号】100189360
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 昭典
(72)【発明者】
【氏名】鄭 倩萍
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-238819(JP,A)
【文献】特開平11-089750(JP,A)
【文献】特開2013-034729(JP,A)
【文献】特開平09-206240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 11/04-11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面と、前記底面の短手方向の端と繋がっている一対の傾斜面と、前記傾斜面の前記底面と繋がっている側とは反対側の端と繋がっている一対の側面と、前記底面と前記傾斜面と前記側面の長手方向の端とそれぞれ繋がっている一対の第二側面と、を有し、上方に開口を有する箱状に形成されている携帯型便器であって、
前記底面、前記斜面及び前記側面の一部により構成される中央部と、
前記中央部の長手方向の他端側と繋がる前記底面、前記斜面及び前記側面の一部により構成される第一調節部と、
前記第一調節部の他端側と繋がり、前記一対の第二側面のうち一方の第二側面により構成される第一壁部と、
前記中央部の長手方向の一端側と繋がり、前記一対の第二側面のうち他方の第二側面により構成される第二壁部と、有し、
前記第一調節部が長手方向へ伸縮可能に形成されていることを特徴とする携帯型便器。
【請求項2】
前記中央部と前記第二壁部の間に、前記底面と前記斜面と前記側面の一部により構成される第二調節部を有し、
前記第二調節部が長手方向へ伸縮可能に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の携帯型便器。
【請求項3】
前記底面、前記斜面及び前記側面は、前記第一調節部と前記第二調節部の一方又は双方を構成している一部が、蛇腹状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の携帯型便器。
【請求項4】
水分散性を有する紙シートが折り畳まれて形成されていることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の携帯型便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型便器に関し、さらに詳細には、女性用の携帯型便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トイレに行くことができない状況で尿意を催した場合に備えて、携帯型便器が利用されている。
【0003】
携帯型の便器は、男性用のものと、女性用のものがそれぞれ利用されているが、女性用のものは大型で携帯することが困難なものが多く、不使用時に携帯しやすくするための工夫が考えられている。
例えば特許文献1には、使用時に女性の陰部にフィットするライン形状で形成され陰部を覆う尿受口と、尿受口と接続され、小便を溜める袋とを備えた女性用の携帯型便器が開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の女性用の携帯型便器によれば、尿受口が不使用時には偏平状になり使用時には両サイドの先端部を押さえることで開口するように形成され、袋が不使用時に薄く折りたたむことができるように形成されているので、不使用に、より容易に携帯することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3191500号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、トイレ設備に設けられている便器が和式便器の場合は、利用するときに膝を曲げ、腰を落として姿勢を低くする必要があり、使用者が加齢や足を怪我していることなどにより膝を曲げることが困難な場合や、妊娠中や肥満などで腹部が張り出している体型によりしゃがむことが困難な場合などは、トイレ設備を利用できる状況でも携帯型の便器が必要となる。
【0007】
しかし、特許文献1の女性用の携帯型便器は、使用する際に、尿受口が開口した状態を維持できるように片手で持つことになるが、上述したような、膝を曲げることが困難な場合には、排尿するときに体勢を維持することに意識が集中してしまい尿受口を開口させた状態を維持できるように持っているのが困難な場合があり、腹部が張り出している体型の場合には、尿受口が確りと開口しているか目視することが難しく開口させた状態を維持できるように持っているのが困難な場合がある。
また、特許文献1の女性用の携帯型便器は、使用する際に、尿受口を女性の陰部にフィットさせる必要があるので体勢の調整が必要となるが、膝を曲げることが困難な場合には、体勢の調整が困難な場合があり、腹部が張り出している体型の場合には、尿受口が使用する女性の陰部にフィットしているのか確認するのが困難な場合がある。
さらに、特許文献1の女性用の携帯型便器は、使用した後に便器に流すことを想定していないので、使用した後も携帯する必要がある。
【0008】
一方、トイレ設備の便器が洋式便器であっても、トイレ設備の衛生的な要因だけでなく、そのトイレ設備が男女共用であるなどの設備的な要因で、そのトイレ内の洋式便器の使用を躊躇する場合もある。今後、トイレ設備の男女共用が進んでいる中で、そのような場合はさらに増えると考えられる。
【0009】
そのため、トイレ設備内、そのトイレ設備に個室トイレが設けられている場合はその個室トイレ内で便器の代わりに使用でき、トイレ設備内の便器が水洗便器の場合には、使用後にその水洗便器に流すことができる携帯型便器が望まれている。
【0010】
従って本発明が解決しようとする課題は、さらに使用し易く、トイレ設備内、そのトイレ設備に個室トイレが設けられている場合はその個室トイレ内で便器の代わりに使用でき、使用後に便器に流すことができる女性用の携帯型便器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の携帯型便器は、底面と、底面の短手方向の端と繋がっている一対の傾斜面と、傾斜面の底面と繋がっている側とは反対側の端と繋がっている一対の側面と、底面と傾斜面と側面の長手方向の端とそれぞれ繋がっている一対の第二側面と、を有し、上方に開口を有する箱状に形成されている携帯型便器であって、底面、斜面及び側面の一部により構成される中央部と、中央部の長手方向の他端側と繋がる底面、斜面及び側面の一部により構成される第一調節部と、第一調節部の他端側と繋がり、一対の第二側面のうち一方の第二側面により構成される第一壁部と、中央部の長手方向の一端側と繋がり、一対の第二側面のうち他方の第二側面により構成される第二壁部と、有し、第一調節部が長手方向へ伸縮可能に形成されていることを特徴とする
【0012】
中央部と第二壁部の間に、底面と斜面と側面の一部を構成する第二調節部を有し、その第二調節部が長手方向へ伸縮可能に形成されていることが好ましい。
【0013】
底面、前記斜面及び前記側面は、第一調節部と第二調節部の一方又は双方を構成している一部が、蛇腹状に形成されていることが好ましい。
【0014】
本発明の携帯型便器は、水分散性を有する紙シートが折り畳まれて形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、トイレの個室内で便器の代わりに使用でき、使用後に便器に流すことができる女性用の携帯型便器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る女性用の携帯型便器の一実施形態を示す斜視図。
図2図1の女性用の携帯型便器の展開図。
図3図1の女性用の携帯型便器の第一壁部及び第二壁部を形成させる過程を説明するための説明図。
図4】(a)は、図1の女性用の携帯型便器の折り畳んだ状態を示す説明図、(b)は使用方法を説明するための説明図。
図5】使用方法を説明するための説明図。
図6】本発明に係る女性用の携帯型便器の他の一実施形態を示す斜視図。
図7図6の女性用の携帯型便器の展開図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第一実施形態〕
以下、本発明の第一実施形態にかかる携帯型便器100を、図面を参照しながら説明する。
なお、図面中の破線は山折り線を示し、一点鎖線は谷折り線を示すが、これらを区別せずに、単に折り線ということがある。
また、二点鎖線は谷折り線を示す。
【0018】
携帯型便器100は、図2に示すシート部材100Sが折り曲げてられて、図1に示すように、箱の中に排尿できるように形成されている。
具体的には、携帯型便器100は、図1に示すように、長手方向Xに沿って、中央部10と、中央部10よりも一端側X1に第二調節部50と、第二調節部50よりも一端側X1に第二壁部90と、中央部10よりも他端側X2に第一調節部30と、第一調節部30よりも他端側X2に第一壁部70と、を有する。
そして、シート部材100Sが図2に示す山折り線と谷折り線に従って折り曲げられることにより、中央部10、第一調節部30、及び第二調節部50は、蛇腹状に形成された底面1と、底面1の短手方向Yの両端と繋がり、蛇腹状に形成された一対の傾斜面2,2と、一対の傾斜面2,2のそれぞれの底面1と繋がっている辺と対向する辺で繋がり、蛇腹状に形成された一対の第一側面3,3と、を有する。
また、シート部材100Sが図2に示す山折り線と谷折り線に従って折り曲げられることにより、第二調節部50と第二壁部90は、底面1、傾斜面2,2、及び側面3,3と繋がっている一対の第二側面5,5を有する。
【0019】
以上のように形成された携帯型便器100は、底面1、傾斜面2、及び側面3が蛇腹状に形成されていることにより、排尿するまでは、図4(a)に示すように、第一壁部70と第二壁部90を近接させた携帯しやすい形状に折り畳むことができ、排尿するときは、図4(b)に示すように、第一壁部70と第二壁部90が離れるように第一調節部30と第二調節部50を長手方向Xに伸ばすことで、図5に示すように、尿の量が多い場合でも安心して排尿することができる。
以下に、携帯型便器100について、図2に示すシート部材100Sに基づき、詳細に説明する。
【0020】
〈シート部材100S〉
シート部材100Sは、図2に示すように、中央部10を形成するための中央部形成領域10Sと、第一調節部30を形成するための第一調節部形成領域30Sと、第二調節部50を形成するための第二調節部形成領域50Sと、第一壁部70を形成するための第一壁部形成領域70Sと、第二壁部90を形成するための第二壁部形成領域90Sと、を有する。
【0021】
シート部材100Sの表面は、図2に示すように、山折り線と谷折り線を、シート部材100Sを長手方向Xに二等分する中心線C1に対して線対称に有しており、シート部材100Sを短手方向Yに二等分する中心線C2に対しても線対称に有している。
【0022】
中央部形成領域10S、第一調節部形成領域30S、及び第二調節部形成領域50Sは、図2に示すように、携帯便器1を構成する底面1と斜面2と側面3の一部を夫々有する。そして、各々の底面1と斜面2が二点鎖線で示す斜面形成用折り線αを介して繋がっており、各々の斜面2と側面3が二点鎖線で示す側面形成用折り線βを介して繋がっている。
まず、斜面形成用折り線αと側面形成用折り線βについて説明し、その後に、上述した各領域について説明する。
なお、シート部材100Sの主面のうち、尿を収容する空間を形成する方の主面を表面とし、他方の主面を裏面とする。
【0023】
斜面形成用折り線αは、図2に示すように、短手方向Yに沿って設けられた、底面1の折り線と傾斜面2の折り線が繋がっている連結点を、長手方向Xの一端側X1から他端側X2に渡って、繋ぐように形成されている。
斜面形成用折り線αは、中央部形成領域10Sを除いて、ジグザグに形成されている。
【0024】
側面形成用折り線βは、図2に示すように、短手方向Yに沿って形成された、傾斜面2の折り線と側面3の折り線が繋がっている連結点を、長手方向Xの一端側X1から他端側X2に渡って、繋ぐように形成されている。
側面形成用折り線βは、斜面形成用折り線αとは異なり、全てジグザグに形成されている。
【0025】
以上のように形成される斜面形成用折り線αと側面形成用折り線βは、図2に示すように、中心線C2に対しても線対称に2つ形成されている。
【0026】
以下に、上述した各領域について詳細に説明する。
【0027】
[中央部形成領域10S]
中央部形成領域10Sは、中央部10を形成させるための領域である。
中央部形成領域10Sは、図2に示すように、シート部材100Sを長手方向Xに二等分する中心線C1に対して線対称に設けられている。
そこで、中央部形成領域10Sについて、中央部形成領域10Sの中心線C1よりも長手方向Xの他端側X2の部分を例に挙げて、中央部形成領域10Sについて説明する。
【0028】
中央部形成領域10Sには、図2に示すように、短手方向Yに沿って、第一折り線Aと、第一折り線Aよりも他端側X2に、第二折り線Bと、第二折り線Bよりも他端側X2に、第三折り線Cと、を有する。
第一折り線A、第二折り線B、及び第三折り線Cは、山折り線と谷折り線により形成されている。
以下に、第一折り線A、第二折り線B、及び第三折り線Cについて説明する。
【0029】
第一折り線Aは、図2に示すよう、短手方向Yに沿って形成された山折り線と谷折り線が、交互に繋がることにより形成されている。
具体的には、第一折り線Aは、短手方向Yに沿って、一端側Y1と他端側Y2の両方の側面3の縁から、側面3に山折り線、谷折り線の順に設けられ、斜面2に山折り線、谷折り線の順に設けられ、底面1に山折り線が設けられていることにより、形成されている。
【0030】
さらに、第一折り線Aは、図2に示すように、側面3の山折り線と谷折り線の連結点から、その連結点から近接する短手方向Yの縁に向けて所定の角度で分岐して、後述するように第二折り線Bを構成する側面3の谷折り線と山折り線の連結点からその連結点に近接する第一折り線Aの端に伸びる山折り線に、繋がる谷折り線が形成されている。この谷折り線により、側面3に、シート部材100Sを折り畳んだ時に側面3と表面同士で接触する側面3bが形成される。
側面3bは、後述する側面3aが側面3と裏面同士で接触するように折られた後に、側面3と表面同士で接触するように谷折り線で折られる。
側面3bが形成されていることにより、後述する側面3aが側面3と裏面同士で接触するように折られたときに形成される角が、使用時の肌に食い込むのを防ぐことができ、安心して使用することができる。
【0031】
第一折り線Aは、斜面2には、山折り線と谷折り線の連結点から、後述するように第二折り線Bを構成する傾斜面2の谷折り線と底面1と斜面2の境に設けられた斜面形成用折り線αとの連結点に、繋がる山折り線を有する。この山折り線により、傾斜面2に、シート部材100Sを折り畳んだ時に底面1と表面同士で接触する傾斜面2aが形成される。
【0032】
第二折り線Bも、図2に示すよう、短手方向Yに交互に繋がった山折り線と谷折り線により形成されている。
具体的には、第二折り線Bは、短手方向Yに沿って、一端側Y1と他端側Y2の両方の側面3の縁から、側面3に谷折り線、山折り線の順に設けられ、斜面2に谷折り線が設けられていることにより、形成されている。
【0033】
第二折り線Bは、図2に示すように、第一折り線Aが短手方向Yの両縁を繋ぐように形成されているのとは異なり、短手方向Yの中程まで形成されて、底面1と斜面2の境に設けられた斜面形成用折り線αと繋がっている。
【0034】
さらに、第二折り線Bは、図2に示すように、側面3の谷折り線と山折り線の連結点から、その連結点から近接する短手方向Yの縁に向けて所定の角度で分岐して、近接する第一折り線Aの端に繋がる山折り線が設けられている。この山折り線により、側面3に、シート部材100Sを折り畳んだ時に側面3と裏面同士で接触する側面3aが形成される。
側面3aが形成されていることにより、携帯型便器100を使用するときに、シート部材100Sの短手方向Yの縁が使用者の肌に接触することを防ぐことができ、縁で指や内腿などを切ったりするのを防ぐことができる。
【0035】
以上のように形成される第二折り線Bは、中心線C2に対しても線対称に2つ設けられている。
【0036】
第三折り線Cも、図2に示すように、短手方向Yに沿って形成された山折り線と谷折り線が、交互に繋がることにより形成されている。
具体的には、第三折り線Cは、短手方向Yに沿って、両方の側面3の縁から、側面3に山折り線、谷折り線の順に設けられ、斜面2に山折り線が設けられ、底面1に谷折り線が設けられていることにより、形成されている。
【0037】
さらに、第三折り線Cは、図2に示すように、側面3の山折り線と谷折り線の連結点から、その連結点から近接する短手方向Yの縁に向けて所定の角度で分岐して、上述した第二折り線Bを構成する側面3の谷折り線と山折り線の連結点からその連結点に近接する第一折り線Aの端に伸びる山折り線に、繋がる谷折り線が形成されている。この谷折り線により、第一折り線Aと同様に、側面3に、シート部材100Sを折り畳んだ時に側面3と表面同士で接触する側面3bが形成される。
【0038】
以上のように構成される第三折り線Cは、中央部形成領域10Sと隣接する第一調節部形成領域30Sと共有されている。つまり、中央部形成領域10Sと第一調節部形成領域30Sは、第三折り線Cにより繋がっている。
【0039】
以上のように構成される中央部形成領域10Sは、図2に示すように、長手方向Xの一端側X1から他端側X2に渡って、山折りと谷折りと交互に略平行に有することになるので、それらの折り線に従ってシート部材100を折ることにより、中央部10の底面1、傾斜面2、及び側面3が蛇腹状に形成される。
そして、斜面形成用折り線αと側面形成用折り線βに従って折ることにより、図1に示すように、短手方向Yの断面形状を上方に開口している略コの字状にすることができる。
【0040】
上記のようにして形成された中央部10は、外から見ると、底面1に、第一調節部30と第二調節部50の底面よりも大きな凹みがあり、斜面2に、第一調節部30と第二調節部50の底面よりも大きな凹みがある。そのため、使用者は、図4(b)に示すように、中央部10の底面1と斜面2の凹みに指を入れた状態で携帯型便器100を把持することができる。
【0041】
[第一調節部形成領域30S、及び第二調節部形成領域50S]
第一調節部形成領域30Sと第二調節部形成領域50Sは、図2に示すように、山折り線と谷折り線が複数設けられている。これらの山折り線と谷折り線は、シート部材100Sを長手方向Xに二等分する中心線C1に対して線対称に設けられている。
そこで、第一調節部形成領域30Sを例に挙げて、第一調節部形成領域30Sと第二調節部形成領域50Sについて説明する。
【0042】
第一調節部形成領域30Sには、図2に示すように、短手方向Yに沿って、第三折り線Cと、この第三折り線Cよりも他端側X2に第四折り線Dと、この第四折り線Dよりも他端側X2に第三折り線Cと、この第三折り線Cよりも他端側X2に第四折り線Dと、この第四折り線Dよりも他端側X2に第五折り線Eと、を有する。
上述したように第三折り線Cは、山折り線と谷折り線により形成されており、第四折り線Dと第五折り線Eも第三折り線Cと同様に山折り線と谷折り線により形成されている。
以下に、第四折り線Dと第五折り線Eについて説明する。
【0043】
第四折り線Dは、図2に示すよう、短手方向Yに沿って形成された山折り線と谷折り線が、交互に繋がることにより形成されている。
具体的には、第四折り線Dは、短手方向Yに沿って、一端側Y1と他端側Y2の両方の側面3の縁から、側面3に谷折り線、山折り線の順に設けられ、斜面2に谷折り線が設けられ、底面1に山折り線が設けられていることにより、形成されている。
【0044】
さらに、第四折り線Dは、図2に示すように、第一折り線Aと同様に、側面3の谷折り線と山折り線の連結点から、その連結点から近接する短手方向Yの縁に向けて所定の角度で分岐して、近接する第一折り線Aの端に繋がる山折り線が設けられている。この山折り線により、側面3に、シート部材100Sを折り畳んだ時に側面3と裏面同士で接触する側面3aが形成される。
側面3aが形成されていることにより、シート部材100Sの短手方向Yの縁が使用者の肌に接触することを防ぐことができ、使用する時に縁で指や内腿などを切ったりするのを防ぐことができる。
【0045】
第五折り線Eは、図2に示すよう、短手方向Yに沿って形成された山折り線と谷折り線が、交互に繋がることにより形成されている。
具体的には、第三折り線Cは、短手方向Yに沿って、両方の側面3の縁から、側面3に谷折り線が設けられ、斜面2に山折り線が設けられ、底面1に谷折り線が設けられていることにより、形成されている。
以上のように構成される第五折り線Eは、第一調節部形成領域30Sと隣接する第一壁部形成領域70Sと共有されている。つまり、第一調節部形成領域30Sと第一壁部形成領域70Sは、第五折り線Eにより繋がっている。
【0046】
以上のように構成される第一調節部形成領域30Sは、図2に示すように、長手方向Xの一端側X1から他端側X2に渡って、山折りと谷折りと交互に略平行に有することになるので、それらの折り線に従ってシート部材100を折ることにより、中央部の底面1、傾斜面2、及び側面3が蛇腹状に形成される。
そして、斜面形成用折り線αと側面形成用折り線βに従って折ることにより、図1に示すように、短手方向Yの断面形状を略コの字状にすることができる。
【0047】
上記のようにして形成された第一調節部30と第二調節部50は、傾斜面2と側面3が蛇腹状に形成されていることにより、尿の量に応じて長手方向Xに伸ばして、携帯型便器100の尿を収容するための空間の大きさを調節することができる。これにより、尿の量が多いときにも安心して使用することができる。
また、第一調節部30と第二調節部50は、傾斜面2と側面3が蛇腹状に形成されていることにより、携帯型便器100の開口を短手方向Yに拡げることができる。
これにより、女性は排尿時に両足の間の間隔を広くする必要がある場合があり、その場合に、携帯型便器100の開口を短手方向Yに拡げることで、排尿時の尿の飛び散りがあったときに、尿が携帯型便器100の開口から外れて足に付着するのを防ぐことができる。
【0048】
[第一壁部形成領域70S、及び第二壁部形成領域90S]
第一壁部形成領域70Sと及び第二壁部形成領域90Sは、図2に示すように、山折り線と谷折り線が複数設けられている。これらの山折り線と谷折り線は、シート部材100Sを長手方向Xに二等分する中心線C1に対して線対称に設けられている。
そこで、第一壁部形成領域70Sを例に挙げて、第一壁部形成領域70Sと及び第二壁部形成領域90Sについて説明する。
【0049】
第一壁部形成領域70Sは、図2に示すように、傾斜面2の一部と、側面3の一部と、第二側面5と、を有する。
第一壁部形成領域70Sは、斜面形成用折り線αと繋がっている第二側面形成用折り線γ1と、側面形成用折り線βと繋がっている第二側面形成用折り線γ2と、を有する。
また、第一壁部形成領域70Sは、第一調節部形成領域30Sと繋がっている第五折り線Eよりも他端側X2に第六折り線Fと、第六折り線Fよりも他端側X2に第七折り線Gと、を有する。
【0050】
第六折り線Fは、図2に示すように、短手方向Yに沿って、一端側Y1と他端側Y2の両方の側面3の縁から、側面3に山折り線が設けられ、斜面2に谷折り線が設けられていることにより形成され、第一壁部形成領域70Sの短手方向Yの中程まで形成されて、第二側面形成用折り線γ1と繋がっている。
以上のように形成される第六折り線Fは、中心線C2に対しても線対称に2つ設けられている。
【0051】
第七折り線Gは、図2に示すように、短手方向Yに沿って、一端側Y1と他端側Y2の両方の側面3の縁から、側面3に山折り線が設けられていることにより形成され、第二側面形成用折り線γ2と繋がっている。
以上のように形成される第六折り線Fは、中心線C2に対しても線対称に2つ設けられている。
【0052】
第二側面5は、図2に示すように、第二側面形成用折り線γ1と第六折り線Fの連結点から、第六折り線Fと略直交に山折り線が設けられており、この山折りを介して第二側面5aと繋がっている。
第二側面5aは、第二側面形成用折り線γ1を介して第二側面5bと繋がっている。
第二側面5bは、谷折り線a1を介して第二側面5cと繋がっている。
第二側面5cは、山折り線a2を介して第二側面5dと繋がっている。
第二側面5dは、谷折り線a3を介して第二側面5eと繋がっている。
第二側面5eは、谷折り線a1を介して第二側面5fと繋がっている。
第二側面5fは、第二側面形成用折り線γ2を介して第二側面5gと繋がっている。
【0053】
以上のように構成される第一壁部形成領域70Sは、第六折り線Fと第七折り線Gに従ってシート部材100を折ることにより、傾斜面2、及び側面3が蛇腹状に折り畳まれる。そして、第二側面形成用折り線γ1と第二側面形成用折り線γ2に従って折られることにより、第二側面5が形成される。
【0054】
さらに、第二側面5a~5gが折り畳まれることにより、第一壁部70が第一調節部30に係止される。
具体的には、図3(a)に示すように、一端に第五折れ線Eと他端に第六折り線Fを有する側面3の表面と第二側面5aの表面が当接するように折り畳む。
次に、図3(b)に示すように、山折り線a2と谷折り線a3に従って折り曲げてから、第二側面5cを谷折り線a1に従って折り曲げる。これにより、第二側面5cと第二側面5の表面同士を当接させ、第二側面5dと側面3の表面同士を当接させ、第二側面5eと側面3aの表面同士を当接させる。
この状態では、第二側面形成用折り線γ2により第二側面5fと第二側面5gが、表面同士が当接した状態になっており、その状態で、第二側面5gの裏面と側面3aの裏面が対向する。そして、第二側面5fに設けられた山折り線と第二側面5gに設けられた谷折れ線が重なって、図3(c)に示すように、その山折り線と谷折り線に従って折れば、第二側面5gの裏面と側面3の裏面が当接させることができる。
これにより、接着剤を使わずに、第一壁部70を第一調節部30に係止させることができる。
【0055】
以上のように構成されるシート部材100Sは、水洗便器から流し去るときに便器に詰らないような水分散性を有しているものであり、同時に、排尿したときにすぐに吸水して携帯型便器100の形状が維持できないというようなことがない耐水性を併せ持っているものである。
具体的に、シート部材100Sとしては、公知のものを使用することができ、水分散性に富んだ紙の片面又は両面に耐水性を付与するようにインクや樹脂の耐水剤を塗布したり、紙を抄紙する際に耐水剤を加えたりすることなどによって得た紙シートなどを好適に用いることができる。
このように、水分散性を有する紙シートを用いることで、トイレ内で携帯型便器100を使用した後は、その携帯型便器100をそのまま便器に流せるので、簡単に処分することができる。また、一回で使い捨てすることができるので、使用後に持ち歩く場合と比べて清潔・衛生面に優れている。
【0056】
なお、上述した紙シートに耐水性を付与することは、一般的に水分散性を妨げる方向に作用するので、上記したシート部材100Sの紙としての水分散性を妨げないように適度に防水を行うようにする。
また、上述した紙シートが複数枚だけ重ねられて、シート部材100Sが形成されていてもよい。その場合は、紙シート同士の間に接着剤を介在させて一体化させることが好ましい。
【0057】
〈携帯型便器100の使用方法〉
次に、本実施形態の携帯型便器100の使用方法について説明する。
以下に、個室トイレの中で、便器の代わりに携帯型便器100を使う場合を例に挙げて説明する。
【0058】
携帯型便器100は、使用するまでは、図4(a)に示すように、第一壁部70と第二壁部90を近接させた携帯しやすい形状に折り畳まれている。
【0059】
そして、個室トイレに入ったら、第一調節部30と第二調節部50を長手方向Xに伸ばして第一壁部70と第二壁部90が離れるようにする。これにより、図1及び図4(b)に示すように、箱の内部に尿を溜めるための空間が形成される。
第一壁部70と第二壁部90がどの程度離れるようにするかは、排尿する量によって調節できる。つまり、尿の量が多いと予想される場合は、図4(b)に示す状態にするときよりも、第一壁部70と第二壁部90がさらに離れるようにして、図5に示す状態にすることができる。
なお、第一壁部70と第二壁部90を離すのは、第一壁部70と第二壁部90を把持して行ってもよく、第一調節部30と第二調節部50を長手方向Xにある程度伸ばしてから、携帯型便器100の開口に拳を入れることで行ってもよい。
【0060】
そして、排尿するときは、図4(b)に示すように、使用者の股間に位置させる。
なお、本体部10の底面1に形成された凹みに中指と薬指を入れて、さらに、斜面2に形成された一対の凹みの一方に人差し指を、他方に小指を入れることにより、小さな手の使用者でも掴みやすく使用できる。
【0061】
排尿した後は、先に尿を捨ててから、携帯型便器100を便器に捨てる。
なお、携帯型便器100を尿が入った状態のまま便器に捨ててもよい。
尿が入ったままの状態で捨てる場合は、その収容された尿の重さにより、水洗便器に形成された水たまりの上で、第一壁部70と第二壁部90のどちらかを僅かに下へ傾けるだけで、携帯型便器100を長手方向の一端から便器内の水たまりに落とすことができる。また、長手方向の一端から便器内の水たまりに落とすことで、便器内に水を流したときに、携帯型便器100が流れやすくすることができる。
【0062】
〈携帯型便器100の奏する効果〉
次に、本実施形態の携帯型便器100の奏する効果について説明する。
本実施形態の女性用の携帯型便器100は、底面1と、底面1の短手方向Yの端と繋がっている一対の傾斜面2と、傾斜面2の底面1と繋がっている側とは反対側の端と繋がっている一対の側面3と、底面1と傾斜面2と側面3の長手方向Xの端とそれぞれ繋がっている一対の第二側面5と、を有し、上方に開口を有する箱状に形成されるものである。この箱状に1枚のシート状部材100Sから形成させることで、中央部10と第一調節部30の間などに繋ぎ目がないので、尿漏れの可能性を低くすることができる。
そして、第一調節部30と第二調節部50の底面1と斜面2と側面3が蛇腹状に形成されている。これにより、尿の量に応じて、箱の内部に尿を溜めるための空間の大きさを調節できる。
【0063】
〔第二実施形態〕
次に、第二実施形態について説明する。
第一実施形態と同様の構成要素には、第一実施形態と同じ符号を付し、説明を省略する。
本実施形態の携帯型便器200は、第一実施形態の携帯型便器100とは異なり、シート部材200Sが折り曲げられて、形成されている。
【0064】
シート部材200Sは、図2に示す第一実施形態のシート部材100Sと中央部形成領域10Sの折り線が異なる。
具体的には、シート部材200Sは、図7に示すように、中央部形成領域10Sに、第六折り線Fと、第一折り線Aよりも他端側X2に、第七折り線Gと、第七折り線Gよりも他端側X2に、第三折り線Cと、を有する。
【0065】
第六折り線Fは、図7に示すよう、短手方向Yに沿って形成された山折り線と谷折り線が、交互に繋がることにより形成されている。
具体的には、第六折り線Fは、短手方向Yに沿って、一端側Y1と他端側Y2の両方の側面3の縁から、側面3に山折り線、谷折り線の順に設けられ、斜面2に山折り線、谷折り線の順に設けられ、底面1に山折り線が設けられている。
そして、底面1の山折り線同士が谷折り線で繋がっている。つまり、底面1において、山折り線と谷折り線の連結点が2つ形成されている。
【0066】
第七折り線Gも、図7に示すよう、短手方向Yに沿って形成された山折り線と谷折り線が、交互に繋がることにより形成されている。
具体的には、短手方向Yに沿って、一端側Y1と他端側Y2の両方の側面3の縁から、側面3に谷折り線、山折り線の順に設けられ、斜面2に谷折り線が設けられ、底面1に山折り線が設けられていることにより、形成されている。
【0067】
さらに、第七折り線Gは、図7に示すように、斜面2の谷折り線と底面1の山折り線の連結点から、中心線C2に向けて所定の角度で分岐して、上述した第六折り線Fの底面1の山折り線と谷折り線の2つの連結点のうち、近接する方と繋がる谷折り線が形成されている。
【0068】
上記のように、中央部形成領域10Sに、第六折り線Fと第七折り線Gが設けられていることより、第一調節部30と第二調節部50を長手方向Xに伸ばして第一壁部70と第二壁部90が離れるようにした後に、中央部10の底面1を上から押すと、中央部10の底面1を短手方向Yの断面形状を略逆V字状から、図6に示すように、下方に開口している略コの字型にすることができる。これにより、断面形状を略逆V字状の状態のときよりも携帯型便器100の形状を崩れにくくすることができ、使用者の体型などに応じて様々な持ち方で持つことができる。また、開口が上方に向いた状態で、個室トイレ内の平らな所に置くことができる。
【0069】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0070】
例えば、本実施形態のシート部材100Sは、第一調節部形成領域30Sと第二調節部形成領域50Sが第三折れ線Cと第四折れ線Dが交互に2本ずつ設けられているが、本発明はこれに限定されない。
第三折れ線Cと第四折れ線Dが1本ずつ設けられていてもよい。つまり、第三折り線Cよりも他端側X2に第四折り線Dと、この第四折り線Dよりも他端側X2に第五折り線Eと、を有していてもよい。これにより、よりコンパクトに所持することができる。
また、第三折れ線Cと第四折れ線Dが交互に3本以上ずつ設けられていてもよい。これにより、箱の内部に形成される尿を溜めるための空間を大きくすることができる。
【0071】
また、本実施形態の携帯型便器100は、第一調節部30と第二調節部50を有しているが、本発明はこれに限定されない。第一調節部30のみ有していてもよい。
その場合には、シート部材は、中央部形成領域10Sと第二壁部形成領域90Sが第五折れ線Eを介して繋がっている。
【0072】
また、本実施形態の携帯型便器100は、側面3aと側面3bを有しているが、本発明はこれに限定されない。側面3aと側面3bがなくてもよい。
【0073】
また、第二側面5gの裏面と側面3の裏面のなどの間に接着剤を介在させてもよい。
【0074】
さらに、上述した第一実施形態と第二実施形態では、第一調節部30と第二調節部50を構成する底面1、斜面2及び側面3が蛇腹状に形成されて、長手方向Xに伸縮可能に形成されているが、本発明はこれに限定されない。他の折り畳みの構造により、長手方向Xに伸縮可能にすることができる。
【0075】
また、上述した第一実施形態では、シート部材100Sとして、水分散性を有する紙シートが用いられているが本発明はこれに限定されない。折り畳み可能な厚紙や樹脂シートを用いてもよい。その場合でも、折り畳んだ状態で携帯することができる。また、樹脂シートを用いた場合には、災害時など繰り返し使用する必要があるときにも好適に使用することができる。
【0076】
さらに、第一壁部や第二壁部などの携帯型便器の外面に任意の文字や絵や柄を印刷するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0077】
100 携帯型便器
100S シート部材
10 中央部
30 第一調節部
50 第二調節部
70 第一壁部
90 第二壁部
【要約】
【課題】トイレの個室内で便器の代わりに使用でき、使用後に便器に流すことができる携帯型便器を提供すること。
【解決手段】
本発明の携帯型便器は、底面1と、底面1の短手方向の端と繋がっている一対の傾斜面2と、傾斜面2と繋がっている一対の側面3と、底面1と傾斜面2と側面3の長手方向の端とそれぞれ繋がっている一対の第二側面5と、を有し、箱状に形成されるものであり、底面1、斜面2及び側面3の一部を構成する中央部10と、中央部10の長手方向の他端側と繋がる底面1、斜面2及び側面3の一部により構成される第一調節部と、第一調節部30の他端側と繋がり、一対の第二側面5のうち一方の第二側面5により構成される第一壁部70と、中央部10の長手方向の一端側と繋がり、一対の第二側面5のうち他方の第二側面5により構成される第二壁部90と、有し、第一調節部30が長手方向Xへ伸縮可能に形成されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7