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  • 特許-油吸収体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】油吸収体
(51)【国際特許分類】
   E02B 15/10 20060101AFI20220826BHJP
【FI】
E02B15/10 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018002157
(22)【出願日】2018-01-10
(65)【公開番号】P2019120094
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000100469
【氏名又は名称】みのる産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】藤井 一徳
(72)【発明者】
【氏名】芳形 茉美
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-000728(JP,A)
【文献】実開昭52-045753(JP,U)
【文献】特開平09-038643(JP,A)
【文献】特開2002-017159(JP,A)
【文献】特開2001-245542(JP,A)
【文献】特開平10-094702(JP,A)
【文献】特開2006-150165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥環境下で撥水性を有する天然有機性資材と、熱融着性ポリエステル繊維と、を混合して加熱することにより固化し、乾燥させてなる油吸収体であって、
前記天然有機性資材は、ピートモスであり、
前記熱融着性ポリエステル繊維は、
繊維形成重合体である第1成分と、
前記第1成分よりも20℃以上融点または軟化点が低い熱可塑性重合体である第2成分と、
を含み、
前記熱融着性ポリエステル繊維における前記第2成分の比率は、80%以上であり、
含水率が0%以上かつ10%以下となるまで乾燥させることにより、前記油吸収体の使用時において撥水性を発揮する、油吸収体。
【請求項2】
請求項1に記載の油吸収体であって、
前記油吸収体は、凹凸の無い板状であり、
前記天然有機性資材と前記熱融着性ポリエステル繊維とが均一に混合され、
前記油吸収体の体積に対する前記天然有機性資材の合計含有量が85体積%以上かつ99.5体積%以下であり、前記熱融着性ポリエステル繊維の合計含有量が0.5体積%以上かつ15体積%以下である、油吸収体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の油吸収体であって、
柔軟性を有するマット状である油吸収体。
【請求項4】
請求項3に記載の油吸収体であって、
前記油吸収体の厚みは1cm以上かつ8cm以下である、油吸収体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油吸収体に関する。より詳細には、外部環境の油を吸い取るための油吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部環境に流出または漏れ出した油を吸い取り回収するための油吸収体が知られている。この種の油吸収体は、例えば特許文献1に開示されている。この特許文献1に記載の油吸収マット(油吸収体)は、ピート紙に接着芯を貼って作成される。より具体的には、特許文献1に記載の油吸収マットは、以下のようにして製造される。即ち、ピートモスとパルプやポリエステル等の繊維が水の中に入れられ、攪拌される。そしてこれを型の中に入れて乾燥させたピート紙に、洋服等に使用されている接着芯が貼られることにより、油吸収マットが作成される。特許文献1では、この油吸収マットを用いることにより、海上や水上に流出した油を迅速にかつ安全に回収できる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-226844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の油吸収マットでは、ピートモスと繊維との混合物は、それ自体では十分な強度を有しないため、上述のように、接着芯を貼って補強することが必要である。別の言い方をすれば、接着芯がなければ、油吸収マットがばらけてしまう。このように、特許文献1に記載の油吸収マットでは、当該油吸収マットの形状を保持するための芯材としての接着芯を用いているため、様々な形状に自由に成形することは困難であった。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その潜在的な目的は、容易に様々な形状に成形することができ、簡素な組成であり、取り扱い性に優れる油吸収体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
本願の第1の観点においては、乾燥環境下で撥水性を有する天然有機性資材と、熱融着性ポリエステル繊維と、を混合して加熱することにより固化し、乾燥させてなる油吸収体であって、前記天然有機性資材は、ピートモスであり、前記熱融着性ポリエステル繊維は、繊維形成重合体である第1成分と、前記第1成分よりも20℃以上融点または軟化点が低い熱可塑性重合体である第2成分と、を含み、前記熱融着性ポリエステル繊維における前記第2成分の比率は、80%以上であり、含水率が0%以上かつ10%以下となるまで乾燥させることにより、前記油吸収体の使用時において撥水性を発揮する、油吸収体が提供される
願の第2の観点では、第1の観点に係る油吸収体において、前記油吸収体は、凹凸の無い板状であり、前記天然有機性資材と前記熱融着性ポリエステル繊維とが均一に混合され、前記油吸収体の体積に対する前記天然有機性資材の合計含有量が85体積%以上かつ99.5体積%以下であり、前記熱融着性ポリエステル繊維の合計含有量が0.5体積%以上かつ15体積%以下である。
【0008】
本願の第3の観点では、第1の観点または第2の観点に係る油吸収体において、当該油吸収体は柔軟性を有するマット状である。
【0009】
本願の第4の観点では、第3の観点に係る油吸収体において、当該油吸収体の厚みは1cm以上かつ8cm以下である。
【発明の効果】
【0015】
本願の第1の観点~第4の観点によれば、容易に様々な形状に成形することができ、簡素な組成であり、取り扱い性に優れる油吸収体が提供される。
【0016】
特に、本願の第1の観点によれば、例えば油と水が混在するような環境下において、油のみを選択的に油吸収体に吸収させることができる。また、焼却しても有害物が発生しない材料により油吸収体を構成しているため、油を吸収させた後の油吸収体の処理方法の選択肢が増える。さらに言えば、この油吸収体は、乾燥させているため軽量で、安全性も高く、劣化もし難い。また、油吸収体の形状を保持するための芯材のような部材が不要であり、油吸収体を容易に様々な形状に成形することができる。
【0017】
特に、本願の第3の観点によれば、油吸収体がマット状に纏まって構成されるため、取り扱い性がよい。例えば、水面に浮遊する油を吸収させた後の油吸収体の回収を容易に行うことができる。また、油を吸収させるために必要な分だけハサミ等で切って適切な大きさにして用いることができる。また、油が漏れる虞のある配管の接続部等に油吸収体を巻き付けて使用することも可能となる。
【0018】
特に、本願の第4の観点によれば、製造時の乾燥工程において乾燥させることが容易な、取り扱い性に優れた油吸収体を実現することができる。
【0020】
また本願の観点によれば、焼却等しても有害物が発生しない安全な材料により油吸収体を構成することができ、油を吸収させた後の廃棄等の処理時の取り扱いが容易となる。
【0021】
また本願の観点によれば、油吸収体を安価に製造することができる。また、油をとりわけ効率よく吸収させることができる。
【0022】
また本願の観点によれば、 熱融着性ポリエステル繊維の含有量を少なく抑えつつ、油吸収体がばらけてしまわない程度の十分な強度を確保できる。
【0023】
また本願の観点によれば、天然有機性資材が油を吸う性質を十分に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係る油吸収体の斜視図である。
図2】油吸収体の製造工程を示すフロー図である。
図3】第2実施形態に係る油吸収体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
<1.第1実施形態>
初めに、本発明の第1実施形態に係る油吸収体10について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る油吸収体10の外形を示す斜視図である。油吸収体10は、外部環境に流出または漏れ出した油を吸い取り回収するためのものである。
【0027】
油吸収体10は、何らかの事故や不法投棄等によりタンカー、石油備蓄タンク、工場等から流出し、海面や湖面等の水面に浮遊している油を吸い取り、回収するために用いられる。油を吸収させた後の油吸収体10は、焼却等されることにより、廃棄処理される。
【0028】
油吸収体10が吸収する油の種類は、特に限定されるものではない。エンジンオイル、潤滑油などを含む様々な種類の油を、油吸収体10に吸収させることが可能である。
【0029】
油吸収体10は、天然有機性資材と、熱融着性ポリエステル繊維と、を混合して加熱することにより固化し、乾燥させることで製造される。油吸収体10の製造工程については、後に詳述する。
【0030】
すなわち、油吸収体10は、天然有機性資材と、熱融着性ポリエステル繊維とを、組成物として含んでいる。これらの組成物のうち、天然有機性資材は、外部環境の油を吸い取る親油性の物質として配合される。また、これらの組成物のうち、熱融着性ポリエステル繊維は、天然有機性資材の微粒子同士を結び付け、油吸収体10の強度を維持するための物質として配合される。別の言い方をすれば、熱融着性ポリエステル繊維は、油吸収体10がばらけたり崩れたりしてしまうのを防止するために、つなぎ材として当該油吸収体10に混入される。
【0031】
本実施形態の油吸収体10に含まれる天然有機性資材としては、公知の様々な物質を採用することができるが、極力、油になじみやすく、かつ、水との親和性が低い物質とすることが望ましい。具体的には、油吸収体10に包含される天然有機性資材は、ピートモス、ココヤシ繊維、腐葉土、バーク堆肥、樹皮、および羊毛のうちの少なくともいずれかを含むものとすることができる。より好ましくは、油吸収体10に包含される天然有機性資材は、ピートモスを少なくとも一部に含む。具体的には、この天然有機性資材は、ミズゴケ等の苔類が腐敗した泥炭とすることできる。油吸収体10は、上記のような天然有機性資材を組成物として包含することにより、油と水とが混在するような環境下において、油のみを選択的に吸い取ることができる。
【0032】
本実施形態の油吸収体10に含まれる熱融着性ポリエステル繊維は、融点または軟化点が相対的に高い繊維形成性重合体(第1成分)と、当該第1成分の繊維形成重合体よりも20℃以上融点または軟化点が低い熱可塑性重合体(第2成分)と、を含んでなる。本実施形態の油吸収体10の熱融着性ポリエステル繊維に、第1成分として含まれる繊維形成性重合体としては、公知の様々な物質を採用することができるが、具体例を挙げると、ポリエチレンテレフタレート、あるいはポリブチレンテレフタレートとすることが可能である。また、本実施形態の油吸収体10の熱融着性ポリエステル繊維に、第2成分として含まれる熱可塑性重合体としては、公知の様々な物質を採用することができるが、例えば変性ポリエステル(共重合ポリエステルなど)とすることが可能である。油吸収体10は、上記のような熱融着性ポリエステル繊維を組成物として包含することにより、当該油吸収体10の形状を保持することができる。
【0033】
油吸収体10においては、油吸収体10の乾燥時の体積に対する上記天然有機性資材の合計含有量が85体積%以上かつ99.5体積%以下となり、かつ、上記熱融着性ポリエステル繊維の合計含有量が0.5体積%以上かつ15体積%以下となるように、これらの組成物が配合される。より好ましくは、油吸収体10の乾燥時の体積に対する上記天然有機性資材の合計含有量が95体積%となり、かつ、上記熱融着性ポリエステル繊維の合計含有量が5体積%となるように、配合される。この配合比率によれば、一般的に高価となりがちな熱融着性ポリエステル繊維の含有量を少なく抑えつつ、油吸収体10が崩壊してしまわない程度の十分な強度を確保することができる。
【0034】
以下では、油吸収体10の製造工程について、図2を参照しつつ順を追って説明する。図2は、本実施形態の油吸収体10の製造フローを示している。
【0035】
初めに、上述した天然有機性資材と、熱融着性ポリエステルとが、均一となるように混合される(ステップS1)。
【0036】
続いて、ステップS1で組成物が混合された混合物が、金型などの成形型に充填される(ステップS2)。本実施形態では、内部空間がマット状の成形型に充填される。本実施形態の成形型の内部空間は、1cm以上かつ8cm以下の厚みを有する板状である。
【0037】
続いて、ステップS2で成形型に充填された混合物が、加熱処理されることにより、上記熱融着性ポリエステル繊維が溶融される(ステップS3)。この加熱処理の方法およびこれに用いられる装置は、特に限定されない。例えば、オートクレーブに代表される加熱乾燥装置、電子レンジなどの高周波誘電加熱装置、加熱手段を備えた成形型、水蒸気加熱装置などを用いてもよい。
【0038】
続いて、ステップS3で加熱した混合物の温度を、降下させることにより、上記熱融着性ポリエステル繊維の繊維同士、および当該繊維と上記天然有機性資材の微粒子とを、接着する(ステップS4)。この際、上記第2成分の熱可塑性重合体の融点または軟化点以下の温度にまで冷やされることにより、円滑に接着が行われる。これにより、上記混合物が固化される。
【0039】
続いて、ステップS4で固化された上記混合物が、成形型から取り出される(ステップS5)。
【0040】
最後に、ステップS4で成形型から取り出された上記混合物が、当該混合物における含水率が0%以上かつ10%以下、より好ましくは0%以上かつ3%以下となるまで、乾燥される(ステップS6)。この乾燥処理の方法およびこれに用いられる装置は、特に限定されない。例えば、ファンからの熱風を表面に当てることによって乾燥させるものとしてもよい。含水率が上記の範囲となるまで乾燥されることにより、油吸収体10が仕上げられる。
【0041】
以上のような製造工程により製造された油吸収体10は、例えば事故等に起因して海面に浮遊している油を吸収し回収するために、海面に浮かべて用いることができる。
【0042】
海面に浮かべられた油吸収体10には、天然有機性資材の微粒子が含まれる。具体的には、天然有機性資材がピートモスの場合、当該ピートモスの微粒子は多孔質になっている。このピートモスは、製造工程(ステップS6)で乾燥されているため、撥水性を有する状態とされている。このピートモスの多孔質の孔は、外部環境(周囲)に存在する油を吸収する。油は当該孔の中に入ってしまうため、油吸収体10に過剰に油を吸収させなければ、一旦吸収された油が再び外部環境に放出されることはない。これにより、油吸収体10に海水を吸わせることなく、油のみを選択的に吸収させて、海面に浮遊している油を効率よく回収することができる。
【0043】
海面に浮かべて油を吸い取らせた後の油吸収体10は、上述のようにマット状に纏まっているため、例えばロープ等を取り付けて引っ張って船上等に引き寄せることにより、容易に回収することができる。このように、本実施形態の油吸収体10は、取り扱い性に優れる。ただし、油吸収体10を回収する方法は、これに限定されるものではなく、例えばこれに代えて、棒等を使って船の方へと案内するものとしてもよい。
【0044】
また、油吸収体10の組成物はいずれも、焼却しても有害物が発生しないので、油を吸収させた後の油吸収体10を、様々な方法で処分することが可能となる。具体的には、油吸収体10を、焼却炉等により焼却して、廃棄処分することが可能となる。このように、油吸収体10は、有害物が発生する虞の少ない素材により構成されるため、安全性が高く、また劣化もし難い。
【0045】
さらに言えば、本実施形態の油吸収体10は、市場で容易に入手可能な、ピートモス等の天然有機性資材を主成分として構成される。そのため、油吸収体10を低コストで製造することができ、しかも良好な油の吸収性能を発揮させるこが可能である。
【0046】
しかも、本実施形態の油吸収体10は、製造工程(ステップS6)で乾燥されているため、水分の含有量が少なく、軽量であり、取り扱いが簡単である。また、油吸収体10に含まれる、ピートモス等の天然有機性資材は、乾燥状態とされているため、撥水性を発揮し、海面に浮かべられても海水をほとんど吸わない。よって、長時間にわたって、海底に沈むことなく、海面に浮かんだ状態に保つことができ、継続して油を吸わせることができる。
【0047】
また、本実施形態の油吸収体10は、適宜の厚みに成形されているため、柔軟性を有する。そのため、上述のように海面等に平面状に浮かべて用いることの他、意図的に撓ませて用いることも可能である。具体的には、工場等の、油が漏れる虞のある配管の接続部等に、油吸収体10を周方向に巻き付けて用いることも可能である。その場合にも、配管の外側に漏れ出した油が、油吸収体10の天然有機性資材に好適に吸い取られる。
【0048】
より具体的には、本実施形態の油吸収体10の厚みは、1cm以上かつ8cm以下とされている。これにより、製造工程(ステップS6)で乾燥される際にも、多大な時間を要することはなく、迅速に乾燥させて油吸収体10を仕上げることができる。このように、適宜な厚みとすることで、取り扱い性に優れた油吸収体10が実現できている。
【0049】
また、本実施形態の油吸収体10は、熱融着性ポリエステル繊維により、溶融接着されることで固化されているため、強度が過剰には高くない。よって、外部環境に存在する油の量等に応じて、必要な分だけハサミ等で切って切片にして用いることもできる。図1中に、油吸収体10の一部をハサミ等で切って切片にした様子を、破線で示している。このように、油吸収体10は、様々な形状にして用いることができ、流動的な使用が可能である。
【0050】
その一方で、本実施形態の油吸収体10は、溶融性ポリエステル繊維によって溶融接着されることで、形状を一定に保持できる程度の強度は確保されている。これにより、油吸収体10の形状を維持するために、芯材のような部材を設ける必要がなく、油吸収体10を自在に様々な形状に成形することができる。
【0051】
また、本実施形態の油吸収体10では、含有される水分が、上述のように低い比率とされている。これにより、油吸収体10の使用時において、天然有機性資材は撥水性を有する状態であり、そのため油を吸う性質(親油性)を十分に発揮させることができる。
【0052】
<2.第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る油吸収体20について、図3を参照して説明する。図3は、本実施形態に係る油吸収体20の外形を示している。
【0053】
第2実施形態に係る油吸収体20の組成は、第1実施形態に係る油吸収体10の組成と同様である。ただし、第2実施形態に係る油吸収体20は、ブロック状に成形されている点で、第1実施形態に係る油吸収体10とは異なっている。この油吸収体20は、上述の板状の成形型に代えて、ブロック状の複数の成形型を用いて成形することにより、第1実施形態で示したのと同様の製造工程で製造される。
【0054】
ただし、油吸収体20を成形する方法は、上述の方法に限定されるものではなく、例えばこれに代えて、第1実施形態の油吸収体10のようにマット状に成形した後、切断して複数のブロック状にするものとしてもよい。
【0055】
このような油吸収体20を用いて、海面に浮遊している油を回収する場合、ブロック状の複数の油吸収体20を海面に浮かべることにより、広い表面積で油吸収体20を油に接触させることができる。これにより、効率よく油を吸い取らせることができる。
【0056】
なお、油を吸い取らせた後の油吸収体20を回収する方法は、限定されるものではないが、例えば網等で掬い取ることとしてもよい。
【0057】
<3.変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0058】
上記の実施形態では、油吸収体10,20を、水面に浮遊する油を回収するために用いる例等を示した。しかしながら、油吸収体の用途は、上述した例に限られるものではなく、他の用途にも用いることができる。具体例を挙げると、工場や家庭の換気扇の下方に、油吸収体を配置して、換気扇から滴下する油を吸収させるものとしてもよい。
【0059】
上記の第2実施形態では、油吸収体20は複数のブロック状であるものとし、図2にその形状の例を示した。しかしながら、油吸収体の形状は、図示したもの等に限定されるものではなく、例えばこれに代えて、キューブ状またはボール状としてもよい。
【0060】
上記の第1実施形態においては、油吸収体10の熱融着性ポリエステル繊維をなす第1成分と第2成分の比率について、特に触れなかった。しかしながら、第2成分がなす比率を、80%以上とすることが、特に好ましい。このような比率とした場合、加熱工程(ステップS3)において、熱融着性ポリエステル繊維が十分に溶融する。
【0061】
上記の第1実施形態においては、油吸収体10の熱融着性ポリエステル繊維に含まれる第2成分である熱可塑性重合体の、融点または軟化点について、具体的には触れなかった、しかしながら、第2成分の融点または軟化点は、130℃以下とすることが、特に好ましい。第2成分の融点または軟化点をこのような数値範囲とした場合、上記の天然有機性資材と熱融着性ポリエステル繊維との混合物を過剰に昇温したり冷却したりすることなく、円滑に溶融接着を行うことが可能となる。
【0062】
上記の第1実施形態においては、油吸収体10の厚みは1cm以上かつ8cm以下とされており、これにより乾燥工程(ステップS6)を容易に行えるものとした。しかしながら、これに代えて、例えば3cmの厚みの油吸収体10を複数枚、それぞれ上述の製造工程により製造し、その後この複数枚の油吸収体10を厚み方向に重ねて、8cmよりも分厚い油吸収体としてもよい。このような方法によれば、乾燥工程に多大な時間が取られないようにしつつ、厚みの比較的大きい油吸収体を製造することができる。
【0063】
また、油吸収体の詳細な構成や形状、詳細な組成等については、本願で示した具体例と、相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素や各組成を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 油吸収体(第1実施形態)
20 油吸収体(第2実施形態)

図1
図2
図3