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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】作業機用充電装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20220826BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220826BHJP
   A01D 34/78 20060101ALI20220826BHJP
   A01D 34/68 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
G05D1/02 Q
H02J7/00 P
H02J7/00 301B
A01D34/78 Z
A01D34/68 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018151835
(22)【出願日】2018-08-10
(65)【公開番号】P2020027428
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】592226729
【氏名又は名称】和同産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(72)【発明者】
【氏名】花房 実美
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 薫
(72)【発明者】
【氏名】藤原 正寛
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-165311(JP,A)
【文献】特開平2-148564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
H02J 7/00
A01D 34/78
A01D 34/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電ステーションと、自律走行する作業機に設けられる作業機側結合部材とからなる作業機用充電装置であって、
前記作業機は、前輪及び後輪が各々電動モータを備えている、全輪駆動車であり、
前記作業機側結合部材は、前記前輪の近傍に備えられると共に充電端子を備え、
前記充電ステーションは、前記作業機側結合部材に結合するステーション側結合部と、このステーション側結合部に設けられ前記充電端子へ給電する給電端子を備え、
前記ステーション側結合部と前記作業機側結合部材の一方に、前記作業機が前進したときに前記ステーション側結合部側に前記作業機側結合部材側が乗り上がって前記前輪が地面から浮き上がる作用を発揮する勾配部が設けられていることを特徴とする作業機用充電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人で草刈り作業等の作業を行う自律制御型作業機に供する充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芝刈りを含む草刈り作業は、有人草刈り機で実施されてきた。人件費の高騰もあり、作業の無人化が求められ、草刈機が自律的に走向しつつ草刈りを行う自律制御型草刈機が各種提案されてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の図1に、充電ステーション(62)(括弧付き数字は、特許文献1に記載された符号を示す。以下同様)が開示されている。また、作業車(10)は、前輪として従動輪(16L、16R)を備え、後輪として駆動輪(14L、14R)を備え、背面に充電端子(32)を備えている。従動輪(16L、16R)は、文字通り非駆動輪であって、且つ鉛直軸回りに自在に旋回する自在車輪である。
【0004】
特許文献1の図5に示されるように、充電ステーション(62)側の給電端子(76)に、作業車(10)側の充電端子(32)を接触させることで、充電バッテリへの充電が開始される。
【0005】
ただし、特許文献1には、充電端子(32)を給電端子(76)に位置決めする手順は開示されていない。
特許文献1の図1において、後輪が駆動輪(14L、14R)で且つ非操舵輪であるため、特許文献1の図5において、いわゆる、車庫入れと同様に、充電端子(32)が給電端子(76)に合致するまで、前進と後進を数回繰り返え必要がある。
無人運転であるものの、複数回前進と後進を繰り返すため、充電準備時間が長くなり、この充電準備時間が作業時間に悪影響を及ぼす。
【0006】
草刈り等の作業の迅速化と高能率化が求められる中か、充電準備時間を短縮して、作業時間を延ばすことができるシステムが望まれる。
【0007】
また、特許文献1は、前輪が非駆動輪で、後輪が駆動輪であるため、作業場に存在する瘤に乗り上げるなどして、前輪が地面に付いているが、後輪が地面から浮き上がることがある。この場合には、作業車(10)は、走行不能となる。管理者が直行して、瘤から作業車(10)を離脱させる必要があり、管理者の負担が大きくなる。対策として、草刈機等の作業機が全輪駆動車であることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2012-94123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、全輪駆動車であって、駆動輪の近傍に充電端子を備えているにも拘わらず、少ないトライで給電端子に充電端子を位置合わせることができる自律制御型作業機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、充電ステーションと、自律走行する作業機に設けられる作業機側結合部材とからなる作業機用充電装置であって、
前記作業機は、前輪及び後輪が各々電動モータを備えている、全輪駆動車であり、
前記作業機側結合部材は、前記前輪の近傍に備えられると共に充電端子を備え、
前記充電ステーションは、前記作業機側結合部材に結合するステーション側結合部と、このステーション側結合部に設けられ前記充電端子へ給電する給電端子を備え、
前記ステーション側結合部と前記作業機側結合部材の一方に、前記作業機が前進したときに前記ステーション側結合部側に前記作業機側結合部材側が乗り上がって前記前輪が地面から浮き上がる作用を発揮する勾配部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、勾配部を備え、この勾配部により、作業機側結合部材に近い方の前輪を地面から浮かすことができる
自律制御により、作業機側結合部材の入口にステーション側結合部の先端を嵌めることはできる。この状態から作業機を前進させて、作業機側結合部材にステーション側結合部を十分に嵌めることを試みる。
【0012】
仮に、前輪と後輪が共に地面に接しているとすると、前輪が作業機の左又は右への横移動を妨げる。作業機側結合部材の入口にステーション側結合部の先端が嵌っているにも拘わらず、後輪を前進回転させても、前輪が横移動しないため、作業機側結合部材にステーション側結合部が入っていかない。しかたなく、ステーション側結合部のセンターが作業機側結合部材のセンターにほぼ合致するまで、後輪と前進を繰り返す。すると、充電前の準備時間が長くなる。
【0013】
この点、本発明では、前輪が地面から浮いているため、後輪を前進回転させると、作業機側結合部材の奥までステーション側結合部が、容易に嵌まり、充電前の準備時間がごく短くなる。
本発明により、全輪駆動車であって、駆動輪の近傍に充電端子を備えているにも拘わらず、1回のトライ、又は少ないトライで給電端子に充電端子を位置合わせることができる自律制御型作業機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】自律制御型作業機の正面図である。
図2】自律制御型作業機の右側面図である。
図3】自律制御型作業機の底面図である。
図4】自律制御型作業機の平面視構成図である。
図5】本発明に係る作業機用充電装置の構成図である。
図6図5の6-6線矢視図である。
図7】自律制御型作業機の作用説明図である。
図8】作業機用充電装置の作用説明図である。
図9】作業機用充電装置の変更例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例
【0016】
図1に示すように、自律制御型作業機(以下、作業機という)10は、前輪11と、左後輪12Lと、右後輪12Rを備えている。また、作業機10は、カバー13の前面中央に横長矩形の開口部14を有している。この開口部14の奥に、作業機側結合部材(図4、符号36)が配置される。
図2に示すように、前輪11と、後輪車軸15との間に、カッターハウジング16を有する。
【0017】
図3に示すように、底面視で、機体18に、旋回する刈刃19と、この刈刃19より前に配置される前輪11と、刈刃19より後に配置される後輪12L、12Rとを備える作業機10において、この作業機10は、刈刃19より前輪11側に配置される左ワイヤセンサ21L及び右ワイヤセンサ21Rを備えている。
【0018】
左ワイヤセンサ21L及び右ワイヤセンサ21Rは、刈刃19の旋回円22より外であれば、任意の位置に配置することができる。旋回円22から前にαだけ離れた位置で、且つ旋回円22から左に(図では右へ)βだけ離れた位置に左ワイヤセンサ21Lを配置する。同様に、旋回円22から前にαだけ離れた位置で、且つ旋回円22から右にβだけ離れた位置に右ワイヤセンサ21Rを配置する。βはαと同じであっても異なっていても差し支えない。
【0019】
図4は、図3を反転した平面図である。
図4に示すように、刈刃19は刈刃モータ24で駆動される。この刈刃モータ24はバッテリ25から給電されると共にドライバ26を介して、制御部27で回転速度及び正転、停止、逆転が制御される。刈刃モータ24が過負荷状態になったときには逆転制御される。
【0020】
前輪11は前輪モータ28で駆動される。この前輪モータ28はバッテリ25から給電されると共にドライバ29を介して、制御部27で回転速度及び正転、停止、逆転が制御される。
前輪11は操舵輪であり、操舵モータ31で操舵される。この操舵モータ31は、バッテリ25から給電されると共にドライバ32を介して、制御部27で直進、左操舵、右操舵の制御がなされる。
【0021】
左後輪12Lは左後輪モータ33Lで駆動される。この左後輪モータ33Lはバッテリ25から給電されると共にドライバ34Lを介して、制御部27で回転速度及び正転、停止、逆転が制御される。
同様に、右後輪12Rは右後輪モータ33Rで駆動される。この右後輪モータ33Rはバッテリ25から給電されると共にドライバ34Rを介して、制御部27で回転速度及び正転、停止、逆転が制御される。
【0022】
ところで、従来の技術で説明した作業車は、全輪駆動車ではない。そのため、何らかの理由(例えば、刈刃を囲うカッターハウジングが瘤に乗り上げるなど)で、駆動輪である後輪が地面から浮き上がると、走行不能となる。この場合、管理者が作業車まで走っていって、瘤から作業車を離脱させる。これでは管理者の負担が大きくなる。
【0023】
対して、図4に示す本発明の作業機10は、全輪駆動車であるため、前輪11が地面に接していれば、後輪12L、12Rが浮いたとしても、自力での離脱が可能となり、走行が継続される。結果、管理者の負担が大幅に軽減される。
【0024】
また、本発明の作業機10では、前輪11は、左右2輪であってもよいが、実施例では、1輪とした。1輪であれば、前輪モータ28、ドライバ29、操舵モータ31及びドライバ32の数が半分になり、コストダウンが図れる。
【0025】
作図の都合で、カバー13の外に示したバッテリ25及び制御部27は、カバー13内に配置される。
カバー13の前部に、例えばV字形状の作業機側結合部材36が収納され、この作業機側結合部材36に充電端子37が設けられている。充電端子37を介して、外部からバッテリ25へ充電される。
【0026】
また、制御部27は、左ワイヤセンサ21Lと右ワイヤセンサ21Rから、エリアワイヤの検知信号を受ける。
【0027】
本発明に係る作業機用充電装置40の構成を、図5及び図6に基づいて説明する。
図5に示すように、作業機用充電装置40は、機体18に固定される作業機側結合部材36と地面(又は地上固定物)41に固定される充電ステーション42とからなる。
充電ステーション42は、作業機側結合部材36に結合する、例えばくさび状のステーション側結合部43を備えている。このステーション側結合部43は、先尖り形状を呈し、ハの字に形成される側面44に給電端子45を備えている。
【0028】
図6に示すように、機体18に固定される作業機側結合部材36は、天板38を備えている。この天板38の底面39は水平(ほぼ水平を含む)に延びる平坦面である。
対して、ステーション側結合部43は、上面が先端に向かって下り勾配とされた勾配部46を有している。
【0029】
以上の述べた作業機10の作用を、図7図8に基づいて説明する。
図7に示すように、作業機10は、全輪駆動車であって、矢印(1)のように直進し、矢印(2)のように左旋回し、矢印(3)のように右旋回し、矢印(4)のように後進する。
【0030】
平面視概念図である図8(a)に示すように、自律制御走行により、ステーション側結合部43の先端に、作業機側結合部材36を部分的に嵌めることはできる。
仮に、前輪11が、地面に接していると、この前輪11が車幅方向の移動を妨げるため、これ以上は、ステーション側結合部43を作業機側結合部材36に嵌めることができない。
【0031】
この点、本発明では、側面視概念図である図8(b)に示すように、後輪12L、12Rの駆動力で作業機10が前進し、この前進によりステーション側結合部43側の勾配部46に、作業機側結合部材36側の天板38が乗り上がる。勾配部46が作業機10から見ると上がり勾配であるため、前輪11が地面41から距離δだけ浮き上がる。
【0032】
図8(a)において、前輪11が地面の抵抗を受けないため、後輪12L、12Rで前進されると、作業機側結合部材36が車幅方向に簡単に移動し、結果、作業機側結合部材36にステーション側結合部43が十分に挿入される。
よって、作業機10が全輪駆動車であるにも拘わらず、ステーション側結合部43に作業機側結合部材36を十分に嵌めることができる自律制御型作業機が提供される。
【0033】
変更例を図9に示す。
図9に示すように、ステーション側結合部43の上面を、ほぼ水平に延びる平坦面として、作業機側結合部材36の天板38の底面39に勾配部46を設けてもよい。
よって、勾配部46は、ステーション側結合部43と作業機側結合部材36との何れに設けてもよい。
【0034】
尚、実施例では、作業機側結合部材36を前輪11の近傍に設けたが、作業機側結合部材36は後輪12L、12Rの近傍に設けてもよい。
作業機側結合部材36を後輪12L、12Rの近傍に設けた場合には、勾配部46の作用と前輪11の後進作用とで、後輪12L、12Rが地面から浮き上がる。
【0035】
また、実施例では、作業機側結合部材36はV字形状とし、ステーション側結合部43はくさび状にしたが、作業機側結合部材36をくさび状とし、ステーション側結合部43をV字形状としてもよい。
なお、V字形状は、U字形状やコ字形状でもよい。この場合、くさび状はU字形状やコ字形状に対応する形状に変更する。
よって、作業機側結合部材36の形状、構造は任意であり、ステーション側結合部43は作業機側結合部材36に対応する形状、構造であればよく、実施例に限定されるものではない。
【0036】
また、本発明は、自律制御型草刈機の他、ゴルフ場で芝を刈る自律制御型芝刈機、畠で農作業を行う自律制御型農作業機、農作物を運搬する自律制御型運搬機、除雪を行う自律制御型除雪機、路上の雪を取り除く自律制御型清掃機などの作業機に適用して差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の作業機は、起伏に富んだ地面での草刈りに好適である。
【符号の説明】
【0038】
10…自律制御型作業機(作業機)、11…前輪、12L…左後輪、12R…右後輪、18…機体、19…刈刃、28…電動モータ(前輪モータ)、33L…電動モータ(左後輪モータ)、33R…電動モータ(右後輪モータ)、36…作業機側結合部材、37…充電端子、40…作業機用充電装置、42…充電ステーション、43…ステーション側結合部、45…給電端子、46…勾配部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9