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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】時間温度インジケータラベル
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/02 20060101AFI20220826BHJP
   G01K 11/12 20210101ALI20220826BHJP
   G01K 3/04 20060101ALI20220826BHJP
   G04F 13/00 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
G09F3/02 U
G01K11/12 A
G01K3/04
G04F13/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019501671
(86)(22)【出願日】2017-07-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 GB2017052033
(87)【国際公開番号】W WO2018011565
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-07-09
(31)【優先権主張番号】1612003.2
(32)【優先日】2016-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】510083784
【氏名又は名称】イントレイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ウィンタースジル,ステフェン
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,アンディ
(72)【発明者】
【氏名】ピーコック,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】アクバル,サラ
(72)【発明者】
【氏名】マラネシ,ブルネッラ
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08166906(US,B2)
【文献】特開2005-046367(JP,A)
【文献】特表2010-540923(JP,A)
【文献】特表2013-518245(JP,A)
【文献】米国特許第04737463(US,A)
【文献】特表昭63-502772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 3/02 - 3/03
G04F 3/00 - 1/08
13/00 - 13/06
G01K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開始剤リザーバ及びターゲットリザーバを備えており、
開始剤リザーバは、光開始pH調整系を含んでおり、ターゲットリザーバは、pH応答性指示薬を備えており、
アキュムレータリザーバを更に備えており、開始剤リザーバからアキュムレータリザーバへ、そしてターゲットリザーバへと直列に配置されており、
アキュムレータとターゲットリザーバは、刺激応答性ヒドロゲルポリマー製プラグによって隔てられている、時間-温度統合(TTi)インジケータラベル。
【請求項2】
pH調整系が酸発生系を含む、請求項1に記載のラベル。
【請求項3】
開始剤リザーバとターゲットリザーバが、同じ物理的リザーバの別々の部分であること、又は、開始剤リザーバとターゲットリザーバが、物理的に別々の異なるリザーバであることを更に特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のラベル。
【請求項4】
酸発生系が光開始酸発生系を含むことを更に特徴とする、請求項2に記載のラベル。
【請求項5】
光開始酸発生系が光酸発生剤(PAG)を備えること、及び、任意選択的にPAGが、オニウム塩、アリールケトスルフィナート、o-ニトロベンジルエステル、ナフトキノンジアジド、又はオキシイミノスルホン酸を含むことを更に特徴とする、請求項4に記載のラベル。
【請求項6】
開始剤リザーバがヒドロゲルポリマーで少なくとも部分的に充填されていることを更に特徴とする、請求項1乃至5の何れかに記載のラベル。
【請求項7】
開始剤リザーバが、PAGと、溶媒と、任意選択的に光増感剤とを備えている、請求項1乃至6の何れかに記載のラベル。
【請求項8】
開始剤リザーバの少なくとも一部が、光に曝され得るように配置されていることを更に特徴とする、請求項1乃至7の何れかに記載のラベル。
【請求項9】
開始剤リザーバとアキュムレータリザーバが、第1の刺激応答性ヒドロゲルポリマー製プラグによって隔てられており、アキュムレータリザーバ及びターゲットリザーバが第2の刺激応答性ヒドロゲルポリマー製プラグによって隔てられており、
任意選択的に、第1の刺激応答性ヒドロゲルポリマー製プラグと第2の刺激応答性ヒドロゲルポリマー製プラグは、異なるヒドロゲルポリマーを含んでおり、或いは、第1の刺激応答性ヒドロゲルポリマー製プラグ及び第2の刺激応答性ヒドロゲルポリマー製プラグが、両方とも同じ刺激に対して応答すること、又は、第1の刺激応答性ヒドロゲルポリマー製プラグ及び第2の刺激応答性ヒドロゲルポリマー製プラグが、両方とも同じ刺激に対して応答することを更に特徴としており、
任意選択的に、第1の刺激応答性ヒドロゲルポリマー製プラグ及び第2の刺激応答性ヒドロゲルポリマー製プラグは、同じ刺激の異なるレベルに応答し、
任意選択的に、刺激応答性ヒドロゲルポリマー製プラグがpH応答性ヒドロゲルポリマーを含む、請求項1乃至8の何れかに記載のラベル。
【請求項10】
アキュムレータリザーバが、更なるヒドロゲルポリマー及び/又は高粘度媒体で(少なくとも部分的に)充填されていることを更に特徴とする、請求項1乃至9の何れかに記載のラベル。
【請求項11】
ターゲットリザーバが1又は複数のpH反応性インクを更に含んでおり、1又は複数のpH反応性インクが酸応答性指示薬の役割を果たすことを更に特徴とする、請求項1乃至10の何れかに記載のラベル。
【請求項12】
pH反応性インクが、ターゲットリザーバ内に含まれるポリマーマトリックス中に混入されている、及び、任意選択的にポリマーマトリックスが紫外線硬化ポリマーマトリックスを含む、請求項11に記載のラベル。
【請求項13】
刺激応答性ヒドロゲルポリマーは、ポリ(ビニルアルコール)/ポリ(アクリル酸)[PVA/PAA]、ポリ(メタクリル酸)[PMAA]、及び2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート/N-ビニルピロリドン[DNAEMA/NVP]からなる群から選択されることを更に特徴とする、請求項1乃至12の何れかに記載のラベル。
【請求項14】
光開始酸発生系は光増感剤を備えており、
任意選択的に増感剤がペリレンであり、
任意選択的にペリレンが0.5重量%乃至5重量%、好ましくは1重量%の量で含まれる、請求項4又は請求項5に記載のラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時間温度統合(time and temperature integrating)(TTi)インジケータラベルに、限定ではないが特に、食品と、医薬品や化粧品のようなその他の腐りやすい製品とに使用するのに適した時間インジケータデバイスに関する。その表示は、信号機シーケンスの形態を取るのが好ましく、全てが正常であることを示す「緑色状態」で始まり、黄色/注意状態、そして、最後に、使用状態ではない赤色に移行するのが好ましい。信号機システムの使用は、万人に認識可能な色信号であるので、好ましい。TTiインジケータラベルは、光開始するのが好ましい。
【0002】
本発明は、食品への使用に関して説明されるが、本発明が、寿命が制限されている医薬品、化粧品やその他の任意の製品のような他の分野にも用途を見出せることは認識され、且つ容易に理解されるであろう。
【背景技術】
【0003】
現在、食品(及びその他の腐りやすい製品)の新しさの適当なレベルの指標としては、消費者に提示される様々な終了日(target date)がある。現在の通例では、 「販売期限(Sell By)」日、「賞味期限(Best Before)」日、「使用期限(Use By)」日、及び/又は「開封後使用期限(Once opened, use within)」日のうちの1又は複数が提示される。
【0004】
「販売期限」日は、小売業者がもはや製品を売ってはならない日付であって、小売業者にとって製品の想定棚持ち期間を示す指標であるが、その日付後において、その製品は何時まで安全であるのか、或いは、何時までに消費するのが望ましいのかについて、有効な情報を消費者に提供しない。
【0005】
「賞味期限」日は、その日付を過ぎると製品のパフォーマンスが最高品質にならない可能性がある日付である。これは、消費者に「最高製品の寿命」の表示をもたらすが、製品の実際の新しさや、安全性又は有効性を示すものではない。更に、この日付は一般に、一次包装が未開封の状態にあって、製品が適切に保管されていた場合にのみ信頼できる尺度となる。
【0006】
「使用期限」日は、商品が消費されることが、想定上、もはや安全でなくなる日付である(商品は依然として安全であるかも知れないが、小売業者/製造業者はもはやそれを保証しない)。ここでも、日付は、製品の一次包装の完全性と適切な保管条件に依存している。
【0007】
「開封後、XX日以内に使用する」旨の日付は、一次包装を破いた後の製品の急速な劣化を反映することを試みている。「開封後、XX日以内に使用する」旨の日付を使用することは、先行技術を進歩させている一方で、その有効性は、製品が最初に開封された時を消費者が思い出すことに完全に依存している。これは、開放寿命(open life)が短い場合(例えば、オレンジジュースの場合は3日間)に更に明白になる。しかしながら、ある種の製品は数週間又は数ヶ月の開放寿命を有していることから、その時点で消費者の記憶は信頼できない基準となって、人々は、「自衛(self preservation)」に、即ち、製品の匂い又は外観に頼る傾向がある。これは、製品の性能が悪くなったり、腐敗した食品を食べた結果として胃のむかつきや他の病気を被る消費者にとって、そして、製品に対する不満のために将来の顧客を失う可能性がある製造業者にとっても不満足なことである。この日付はまた、開封後に適切な条件で製品が保存されていることにも依存する。
【0008】
更に、浪費は、世界的な問題になりつつあり、米国及びEUの政府機関が追われており、動的でインテリジェントな包装の進歩は、世界的な浪費に積極的に影響を及ぼして、これを減らす主な推進力と考えられている。消費者及び小売業者の観点からすると、包装に「販売期限」、「賞味期限」、「使用期限」、及び「開封後、XX日以内に使用」を使用することで、腐りやすい製品が不必要に廃棄されたり、もはや消費には適していない場合に消費される可能性がある。これらの日付は、製品が保管されている状態を考慮に入れていないからである。 腐りやすい製品を不適切に保管すると、製品の寿命が短くなる可能性がある。つまり、包装に記載されている期限よりも早く製品は使用できなくなるが、「使用期限」には反映されない。
【0009】
製造業者及び小売業者と消費者の両方の観点から、そのような腐りやすい製品の容器への簡単且つ安価で信頼できるインジケータに対する必要性が、消費者の健康をよりよく保護し、消費習慣又は管理を改善し、無駄を減らし、更には、製造業者の製品に対する消費者の認識を向上させるために明らかに存在している。この目的を達成するための多数の手段が過去に試みられており、そして当該技術分野において知られているが、それらの全てには欠点がある。
【0010】
初期のデバイスの幾つかでは、デバイスの製造又は利用時にタイミング機構が起動するが、他のデバイスでは、ユーザー開始が採用されている。これらのシステムは、どちらも固有の問題を抱えており、ある種のデバイスは「使用期限」インジケータとして受け入れられているが、製造時に開始することから、これは、一次包装が破られた後、酸素、局所的に持ち込まれたバクテリア、大気中に存在するその他のものに製品を曝すことによる製品劣化速度の加速を考慮に入れることができない。同様に、使用者が起動させるデバイスは、製品を開けた際にデバイスを起動することを消費者が覚えていることに依存している。これは簡単に忘れられてしまい、対処を意図している問題に影響を及ぼさない可能性がある。
【0011】
上記製品の前述の欠点に対処するために、幾つかの試みがなされている。例えば、リザーバは、腐りやすい製品を保持している容器のクロージャ/蓋を開けるという行為によって破られる。多部品の蓋は、反応性化合物を含むリザーバを穿刺するように設計された様々な可動部品と共に使用される。これらの装置は、タンパーエビデンス(tamper evidence)分野における既知の技術から大いに取り入れており、同じ主な欠点を抱えている。これは、多部品の蓋/クロージャは、製造及び組み立てが困難であって、主流となる商業的受容を得るには費用がかかりすぎることである。
【0012】
これらの問題を克服するための様々な試みが過去になされており、それらの中で最も関連性のあるものを以下で説明する。
【0013】
米国特許第8,104,949B2号(ROBINSON et al.)は、第1及び第2の液体を夫々収容する第1及び第2の相互接続されたリザーバを含む時間温度インジケータラベルを提供しており、それら液体の混合を防ぐために、第1の液体と第2の液体の間に第1の障壁が設けられている。第1の障壁は、導管を介して、第3の液体を収容する第3のリザーバに接続されており、第3の液体は、第1の所定時間にわたって導管を通過し、接触すると第1の障壁を除去して、第1及び第2の液体の混合を促進し、第2のリザーバ内で、混合前の第2の液体とは色が異なる第1の液体混合物を生成し、それによって第1の所定時間の経過時の表示を提供する。
【0014】
ROBINSON et alの好ましい実施形態では、上述の障壁は脂質プラグであって、これはその後、第3の液体に存在する酵素によって分解される。これに関する問題は、反応性ラベル成分を輸送するために細い毛細管を使用するという固有の問題に関連している。毛細血管の大きさが制限されていることから、流体の大量輸送は不可能であって、それ故に、酵素のしずくを絶え間なく脂質プラグに供給することだけが可能である。これは、プラグを分解できる速度が厳しく制限されていることを意味しており、そのようなラベルが有効であり得る期間に付随的な制限を課している。更に、脂質プラグは、酵素が送達される側に沿ってゆっくりと且つ優先的に分解される可能性が高い。これは、プラグの部分的な破壊を容易にもたらして、障壁を通る漏れが遅くなることに繋がり、それによって、より望ましい急速な移行ではなく、ゆっくりと徐々に色が変化することになる。
【0015】
この進歩は、上述の問題の幾つかを克服する一方で、概略的に記載された仕様でのラベルの構築は、技術的にも物理的にも非常に困難であり、そのようなラベルの製造速度を低下させて、固有のコスト上の影響をもたらす。設計と構造の複雑さと、そのような手法から生じ得るラベル失敗の割合とは、そのような解決策を部分的で信頼できないものにする。製造の複雑さは、関連する米国特許第8,936,693B2号(MANES et al.)に図で詳細に記載されている。(タイミング調整に使用される)毛細管要素の打ち抜き及び積層は、均一性と、完全性と、薄膜消失による媒体損失の傾向とに関して格別な困難をもたらす。
【0016】
ROBINSON et al特許のようなラベルの製造における更なる困難は、材料取扱いの問題であって、これは、多くの層が非常に薄い膜(10乃至20ミクロン程度)であるような多層ラベルへの液体成分の適用と、その後のシーリング(sealing)とから生じる。この問題は、EP1,228,366B1及びEP2,697.617B1の両方でKEEP-IT TECHNOLOGIESによって(意図したものではないが)不完全に対処されており、どちらも液体成分の移動を妨げるためにヒドロゲルポリマーマトリックスを使用している。しかしながら、これは、この場合でのこれらの特許からの唯一の教示であり、この教示を超えた本発明の目的とは若干異なっている。
【0017】
本発明の目的は、上述した従来技術の時間インジケータデバイスに関連する問題及び/又は欠点のうちの1又は複数を防ぐ又は軽減することである。
【0018】
「酸発生剤」及び/又は「酸発生」という用語は、本明細書では、所定の刺激に曝されると、化学反応によって酸を生成する、又は、酸を放出するシステムの何れかを指すために使用される。「光開始酸発生剤」又は「PAG」とも呼ばれる「光酸発生剤」という用語は、本明細書では、光に曝されると化学反応によって酸を生成する又は酸を放出する系を指すために使用される。好ましくは、光酸発生剤は、可視光に曝されると活性化するが、UV光又はIR光などの非可視光によって活性化する光酸発生剤も使用されてよいことは理解されるであろう。
【0019】
ヒドロゲルポリマーなる用語は、親水性であって、水性媒体の吸収速度が非常に高く、水性媒体がヒドロゲルン中に捕捉される一群の化学物質を指す。ヒドロゲルの一般的な用途には、おむつの裏地、女性用の生理用品、乾燥パウチ、火傷用包帯などの医療用途、光学コンタクトレンズ、水耕栽培システムで使用される一部の材料がある。典型的には、ヒドロゲルによって水性媒体が一旦吸収されたならば、ヒドロゲルポリマーマトリックス中に閉じ込められたままとなって、外部媒体と相互作用することを妨げられる。
【0020】
刺激応答性ヒドロゲルポリマーという用語は、上で定義したようなヒドロゲルポリマーの一部を指す。光、pH、磁性、電気、イオン強度、温度、及び酵素作用に反応する刺激応答性ヒドロゲルポリマーが知られている。その応答は一般に、脱膨潤する(de-swell)ことであり、つまり、それは、関連する刺激に曝されると、ヒドロゲルは疎水性になり、収縮し、以前にその中に含まれていた水性媒体の一部又は全てを放出する。このようにして、ヒドロゲルポリマーを使用して、刺激されると、弁として作用できるプラグを設けることができる。
【発明の概要】
【0021】
本発明の第1の態様では、開始剤リザーバ及びターゲットリザーバを備える時間温度インジケータラベルが提供され、開始剤リザーバは、pH調整系を含んでおり、ターゲットリザーバは、pH応答性指示薬を備えている。
【0022】
時間温度インジケータラベルは、光開始時間-温度インジケータラベルであるのが好ましい。光開始によって、これは、ラベルのタイミング機構が光に曝されることによって起動されることを示すことは理解されるであろう。
【0023】
ある実施形態では、pH調整系は、光開始pH調整系である。このようにして、pH調整系が光に曝されると、ラベルのタイミング機構が起動する。
【0024】
これにより、本発明の第1の態様に基づく発明は、食料品、医薬品、化粧品などの特定の腐りやすい品物がどれ程に安全であるかについて、明確で信頼できる視覚的表示を消費者に提供する。光開始pH調整系の使用は、腐りやすい品物が最初に開けられた時を消費者が思い出す必要性を取り除く。品物の開口で光開始pH調整系を自動的に光に曝すことによって、腐りやすい品物が最初に開けられると、ラベルは自動的に起動してもよい。 従来の時間温度インジケータラベルは、タイミング機構を開始させるためにラベルの一部を物理的に破損させていた。驚くべきことに、時間温度インジケータラベルは、光開始できることが分かった。光開始は、タイミング機構の起動をより信頼できるものにするという利点を有しており、ラベルを製造する及び/又は容器に貼付することをより複雑にしない。更に、僅かな圧力を加えることによって障壁を破って成分を混合させることによって起動する先行技術のラベルは、製造、輸送、又は一般的な取扱い中に、不注意で起動しやすい。対照的に、本発明のラベルは、圧力で開始するのではなく光で開始するので、ラベルのタイミング機構が、僅かな衝撃によって誤って起動する危険はない。
【0025】
ある実施形態では、ラベルは、それが取り付けられている品物又は包装が初めて開かれたときに自動的に起動する。光不透過層の除去によって、ラベルが起動してもよく、当該光不透過層は、光開始pH調整系の少なくとも一部を露出させるために除去される。別の実施形態では、腐りやすい品物が消費者によって購入される前に、ラベルが起動してよい。例えば、ラベルは、腐りやすい品物が包装されている場合にその品物に貼られてもよい。その後、ラベルは、製品が購入される前にタイミング機構が開始するように、可視光源又はUV光源などの光源に曝されてよい。これは、包装が未開封のままであっても寿命が限られている製品には有用であろう。
【0026】
好ましくは、pH調整系は、可視光、UV光及び/又はIR光によって活性化される。pH調整系は、約100nm乃至約1000nmの波長を有する光に曝されることによって活性化されてよい。pH調整系は、約200nm乃至約900nm、好ましくは約400乃至700nmの波長を有する光に曝されることによって活性化されるのが好ましい。光開始pH調整系は、約400nm乃至約450nmの波長を有する光に曝されることによって活性化されてよい。pH調整系は、自然光及び/又は人工光を含み得る周囲光に曝されることで活性化されることが好ましい。
【0027】
pH調整系は、好ましくは酸発生系である。酸発生系は、光開始酸発生系を含むのが好ましい。他の実施形態では、pH調整系は、アルカリ/塩基発生系であってよい。
【0028】
開始剤リザーバ及びターゲットリザーバは、物理的に別個のリザーバであってよく、又は、同じリザーバの異なる部分であってもよい。ラベルは、開始剤リザーバ、アキュムレータリザーバ、及びターゲットリザーバを備えてよい。これらリザーバは、別個のリザーバであってよく、又は、同じリザーバの異なる部分であってよい。リザーバは、1又は複数の取り外し可能な障壁によって隔てられてよい。1又は複数の取り外し可能な障壁は、1つのリザーバを、開始剤リザーバ、アキュムレータリザーバ、及び/又はターゲットリザーバに分けてもよい。
【0029】
好ましくは、光開始酸発生系は実質的に不可逆的であり、即ち、反応速度論的には、光に曝すことで起動する順反応よりも逆反応が非常に遅い。光開始酸発生系が可逆的であるならば、つまり、光に曝すことを停止すると、ラベルが冷蔵庫や食器棚のような暗い場所に戻されると、又は、ラベルが夜間に取り残されると、光開始酸発生系がその初期組成に戻るならば、酸発生反応が反転してpHが上昇して、ラベルのタイミング機構を効果的にリセットするであろう。
【0030】
光開始酸発生系は、カチオン性であるのが好ましい。最初の露出後、酸生成反応は、暗所でも継続して酸を発生し続けることが好ましい。
【0031】
好ましくは、酸発生系は、ハロゲン化銀塩、最も好ましくは塩化銀を含むことが好ましい。
【0032】
好ましい実施形態では、酸発生系は、光開始酸発生剤(PAG)を含んでいる。任意の適切なPAGが使用されてよい。PAGは、オニウム塩であってよい。オニウム塩は、一般式ArMF (aq)を有しており、光子を吸収すると分解して、ArOH及びHMF を生じる。Arは、トリフェニルスルホニウムなどのアリールオニウム塩のカチオンであってよく、アニオンMは、アンチモン(Sb)又はリン(P)などの任意の適切な原子であってよい。プロトンを供与した後に安定な共役塩基アニオンを有する任意のPAG、例えばBF 部分を含むPAGを使用できることは理解されるであろう。
【0033】
適切なPAGの例には、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(triarylsulfonium hexafluorophosphate)(TAS)、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(diphenyliodonium hexafluorophosphate)(DPI)、又はトリフェニルスルホニウムトリフレート(triphenylsulfonium triflate)(TPS-oTf)などのトリアリールスルホニウム塩と、Irgacure PAG 290(スルホニウムテトラキス[ペンタフルオロフェニル]ボレート)(sulfonium tetrakis[pentafluorophenyl] borate)と、Speedcure 938(ビス-(4-t-ブチルフェニル)-ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート)(Bis-(4-t-butylphenyl)-Iodonium hexafluorophosphate)と、Irgacure PAG 103(ベンゼンアセトニトリル、2-メチル-α-[2-[[(プロピルスルホニル)オキシ]イミノ]-3(2H)-チエニリデン])(Benzeneacetonitrile, 2-methyl-α-[2-[[(propylsulfonyl)oxy]imino]-3(2H)-thienylidene]))と、Irgacure 121(ベンゼンアセトニトリル、2-メチル-α-[2-[[[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ]イミノ]-3(2H)-チエニリデン])(Benzeneacetonitrile, 2-methyl-α-[2-[[[(4-methylphenyl)sulfonyl]oxy]imino]-3(2H)-thienylidene])と、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(di-phenyl iodonium heaxfluorophosphate)とが含まれる。
【0034】
トリアリールスルホニウム塩は、50%w/wのプロピレンカーボネート溶液中における以下に示す2つの塩の混合物として容易に入手できる。
【化1】
【0035】
PAGは、非イオン性光開始酸発生剤を含んでよい。非イオン性PAGは、結合の光開始開裂に依拠して酸を生成してよい。例えば、アリールケトスルフィナート(arylketosulphinates)及びo-ニトロベンジルエステルは、光開始開裂を受けてスルフィン酸又はスルホン酸を生成できる。紫外線に曝されると、リールケトスルフィナートはベータ位置で開裂し、エステル、エーテルなどの中性ドナーから容易に水素を引き抜くアリールスルフィンラジカルを放出して、スルフィン酸を生成する。o-ニトロベンジルエステルの反応機構は類似しており、p-トルエンスルホン酸を生成する。ナフトキノンジアジド及びその誘導体は、窒素の光誘起脱離とそれに続く水との反応によって、インデン-3-カルボン酸を生成できる。
【0036】
PAGは、オキシイミノスルホネート化合物を含んでよく、オキシイミノスルホネート化合物は、一般に溶媒であって、適切なプロトン供与体の存在下でスルホン酸を生成する。
このようなPAGの例には、BASFが販売している、Irgacure 103(ベンゼンアセトニトリル、2-メチル-α-[2-[[(プロピルスルホニル)オキシ]イミノ]-3(2H)-チエニリデン])及びIrgacure 121(ベンゼンアセトニトリル、2-メチル-α-[2-[[[(4-メチルフェニル)スルホニル]オキシ]イミノ]-3(2H)-チエニリデン])が挙げられる。
【0037】
pH調整系は、アキュムレータリザーバの実質的に全長に沿って、関連するアキュムレータリザーバのpHを下げるのに十分なPAGを含むことが好ましい。pH調整系は、ターゲットリザーバのpHをも十分に下げて色の変化をもたらすのに十分なPAGを含むことが好ましい。2回の色の変化が望まれる実施形態では、第1の開始剤リザーバは、ターゲットリザーバにおいて第1のpH低下及び色変化を引き起こすのに十分な量のPAGを含んでよく、第2の開始剤リザーバは、ターゲットリザーバにおける更なるpH低下及び色変化を引き起こすのに十分な量のPAGを含んでよい。添加されるPAGの正確な量は、アキュムレータリザーバのサイズやターゲットリザーバのサイズなどの幾つかの要因に応じて異なるが、十分な量は、所望のpH低下及び関連する色の変化を生じるのに必要な量であって、この量は機械的に決定できる。
【0038】
pH調整系は、光増感剤を含んでよい。光増感剤は、光化学プロセスにおいて他の分子に化学変化を生じさせる分子である。光増感剤は一般に、UV又は可視領域の光を吸収し、それを他の分子に送ることによって作用する。任意の適切な光増感剤が使用されてよい。ある実施形態では、ペリレンが光増感剤として使用されてよい。ペリレンは、その吸収及び発光特性の結果としてPAGの光分解反応を敏感にする。ペリレンは、トリアリールスルホニウム塩などのPAGがより強く吸収する波長に、入射光の周波数をシフトさせることができる。pH調整系には、1又は複数種の光増感剤があってもよい。
【0039】
光増感剤は、光増感剤がPAGによってより容易に吸収される周波数に光の周波数をシフトさせることを可能にする適切な濃度で含められてよい。ペリレンの場合、約0.1重量%乃至約5重量%の量で加えられてよい。ペリレンは、約1重量%の量で加えられるのが好ましい。光増感剤の量は、関連する溶媒に溶解した重量パーセントとして示される。
【0040】
開始剤リザーバは、(少なくとも部分的に)ヒドロゲルポリマー又は他の高粘度媒体で満たされているのが好ましい。
【0041】
酸発生系は、ヒドロゲルポリマーによって形成されたマトリックス中又は高粘度媒体中の何れかに含まれることが好ましい。
【0042】
ある実施形態では、開始剤リザーバは、ヒドロゲルポリマー又は他の高粘度媒体を含まない。開始剤リザーバは、PAGと、溶媒と、任意選択的に光増感剤とを含んでよい。
【0043】
ある実施形態では、ラベルはまた、アキュムレータリザーバを備えている。開始剤リザーバ、アキュムレータリザーバ、及びターゲットリザーバは直列に配置されるのが好ましい。リザーバは、開始剤リザーバ、アキュムレータリザーバ、ターゲットリザーバの順に配置されてよい。
【0044】
リザーバは、刺激応答性(stimuli-responsive)ヒドロゲルポリマー製プラグによって隔てられてよい。
【0045】
アキュムレータリザーバは高粘度媒体を含んでよい。
【0046】
高粘度媒体は、アキュムレータリザーバに沿った水素イオンの通過を制御するために、所望の物理的及び/又は化学的特性を付与する任意の適切な媒体を含んでよい。
【0047】
高粘度媒体の粘度が温度に応じて変化する速度は、ラベルが付された腐りやすい品物の腐敗が温度に応じて変化する速度に関係していることが好ましい。このようにして、本発明のラベルは、腐りやすい品物が製造業者の指示に従って保管されているか否かに拘わらず、正しく動作して、適切な時間表示を提供する。 故に、例えば、一旦開けられた品物は、冷蔵されて約5℃で保管されることを意図されているが、消費者が誤って品物を周囲温度で、例えば食器棚に保管する場合に、本発明のラベルが、誤りを考慮して、それにも拘わらず正しく機能できることが重要である。物品を高温で保管すると、物品の腐敗速度が上がると仮定すると、色の変化が起こるまでの時間も、消費者に正しい情報を提供するために適切な量だけ短くならなければならない。これは、アキュムレータリザーバ内に含まれる高粘度媒体を適切に選択することで、達成されて、それらの粘度が温度に応じて変化する速度は、 腐りやすい品物が温度に応じて変化する速度に関連し、又はより好ましくは実質的に一致して、高粘度媒体を通る水素イオンの拡散速度が上昇温度で増加して、腐りやすい品物が腐敗する増加速度を反映するか、又は好ましくは実質的に一致する。
【0048】
酸発生系は、pH感受性ヒドロゲルポリマーに混入した酸発生剤を含んでよく、酸発生剤とpH感受性ヒドロゲルポリマーとの組合せは、速効性感光性ヒドロゲルポリマーとなって、光に曝されるとヒドロゲルポリマーが脱膨潤して、酸の放出又は他の酸性材料の通過をもたらす。
【0049】
別の実施形態では、酸発生系は、PAGと、溶媒と、任意選択的に光増感剤とを備えている。酸発生系は、刺激応答性ヒドロゲルポリマー製プラグに隣接して配置されており、光に曝されると、刺激応答性ヒドロゲルポリマーは脱膨潤して、酸の放出、又は他の酸性物質の通過をもたらす。ある実施形態では、刺激応答性ヒドロゲルポリマー製プラグはpH感受性であって、pHが所定のレベルまで低下すると脱膨潤する。
【0050】
別の実施形態では、開始剤リザーバは酸性溶液を含む。開始剤リザーバ内の酸性溶液は、刺激応答性ヒドロゲルポリマー製プラグに隣接して配置されており、光に曝されると刺激応答性ヒドロゲル製プラグが脱膨潤して、酸性溶液の放出をもたらし、又は他の酸性材料の通過を可能にする。刺激応答性ヒドロゲルポリマー製プラグは、光に対して応答性を有することが好ましい。
【0051】
開始剤リザーバの少なくとも一部は、光に曝されるように配置されるのが好ましく、より好ましくは、この露光は、除去可能な光不透過性のラベル上層を除去することによって達成される。
【0052】
ターゲットリザーバは、ラベルの外側から見える少なくとも一部を備えており、それによって、ラベルが使用されている製品の現在の使用可能性に関して使用者に視覚的表示を提供する。
【0053】
好ましくは、時間温度インジケータラベルは、開始剤リザーバ、アキュムレータリザーバ及びターゲットリザーバを備えており、それらリザーバは、刺激応答性ヒドロゲルポリマー製プラグによって物理的に隔てられている。
【0054】
好ましくは、刺激応答性ヒドロゲル製プラグは、pH応答性ヒドロゲル製プラグである。
【0055】
好ましくは、第1のヒドロゲルプラグ(開始剤リザーバとアキュムレータリザーバを隔てる)は第の1ヒドロゲルを含んでおり、第2のヒドロゲルプラグ(アキュムレータリザーバとターゲットリザーバを隔てる)は、同じヒドロゲルを含んでいる。
【0056】
任意選択的に、好ましくは、第の1ヒドロゲルプラグ(開始剤リザーバとアキュムレータリザーバを隔てる)は第1のヒドロゲルを含んでおり、第2のヒドロゲルプラグ(アキュムレータリザーバとターゲットリザーバを隔てる)は、第2の異なるヒドロゲルを含んでいる。
【0057】
第1及び第2のヒドロゲルは、レベルが異なる同じ刺激に反応するのが好ましい。
【0058】
第1及び第2のヒドロゲルが応答するpHレベルは、異なっているのが好ましい。
【0059】
任意選択的に、第1及び第2のヒドロゲルは、全く異なる2つの刺激に反応してよい。
【0060】
アキュムレータリザーバは、当該リザーバを通る水素イオンの拡散を遅らせるために、更なるヒドロゲルポリマー又は高粘度媒体で満たされていることが好ましい。
【0061】
前述の例におけるアキュムレータリザーバの使用は、ターゲットリザーバの近くに水素イオンを徐々に蓄積させることを、アキュムレータリザーバ内のpHが反応性プラグの急速な脱膨潤と崩壊を引き起こす時間まで、2つが互いに接触することを許すことなく可能にし、このようにして、ターゲットリザーバにおける急速なpH変化と、ひいては、ターゲットリザーバ内での色の変化を可能にする。
【0062】
本発明の一実施形態では、ラベルが起動すると、酸発生系は、開始剤リザーバ内でpHを低下させる酸を発生し、開始剤リザーバのpHが低下すると、第1のヒドロゲルプラグが脱膨潤し、それによって、開始剤リザーバとアキュムレータリザーバとの間に流体接続がもたらされる。第1のヒドロゲルプラグが脱膨潤すると、水素イオンが開始剤リザーバからアキュムレータリザーバへと拡散し始め、その拡散速度は、2つのリザーバの相対pHと、リザーバの物理的サイズと、入口ゲートのサイズ(断面積)と、ゲル、ヒドロゲル又は高粘度媒体の粘度(それ自体は温度に依存する)とに依存する。時間の経過と共に、アキュムレータリザーバのpHは、アキュムレータリザーバ内の低下したpHが第2のヒドロゲルプラグを脱膨潤させるレベルまで低下し、それによって、アキュムレータリザーバとターゲットリザーバとの間に流体接続をもたらし、低pHを大量且つ近位にもたらして、急速な変色反応を開始させる。第2のヒドロゲルプラグが脱膨潤すると、水素イオンは、アキュムレータリザーバからターゲットリザーバへと急速に拡散し始め、そこで、酸応答性指示薬と相互作用して急速な色変化がもたらされる。
【0063】
本発明の第2の実施形態は、ラベルが2つの開始剤リザーバを備えている点で第1の実施形態と異なっており、各々は、別々のアキュムレータタンクに接続されている。各々の接続は、個別の刺激応答性ヒドロゲル製プラグによって遮断されており、各アキュムレータリザーバは、更に2つの別々の刺激応答性ヒドロゲル製プラグを介してターゲットリザーバに接続されている。このラベルの動作は、第1の実施形態で説明したラベルと非常に似ている。ラベルが起動すると、各アキュムレータリザーバ内の酸発生系は酸を発生し、開始剤リザーバ内のpHを低下させる。開始剤リザーバのpHが低下すると、第1のヒドロゲルプラグが脱膨潤し、それによって、開始剤リザーバとアキュムレータリザーバとの間に流体接続がもたらされる。第1のヒドロゲルプラグが脱膨潤すると、水素イオンは、開始剤リザーバからアキュムレータリザーバへと拡散し始める。時間が経過すると、アキュムレータリザーバのpHは、アキュムレータリザーバ内の低下したpHが第2のヒドロゲルプラグを脱膨潤させるレベルまで低下し、それによって、アキュムレータリザーバとターゲットリザーバとの間に流体接続がもたらされる。第2のヒドロゲルプラグが脱膨潤すると、水素イオンは、アキュムレータリザーバからターゲットリザーバへ拡散し始め、そこで、酸応答性指示薬と相互作用して色変化がもたらされる。
【0064】
第1及び第2のアキュムレータリザーバが、ターゲットリザーバからそれらを隔てているプラグの脱膨潤を、異なる時点で引き起こして、第1のアキュムレータリザーバの内容物が第2のアキュムレータリザーバの内容物より早くターゲットリザーバに拡散して、2回の異なる色の変化がもたらされるように、ラベルが構成されていることが好ましい。
【0065】
上記の時間差は、異なるプラグに対して異なるヒドロゲルポリマー材料を提供することと、個々のアキュムレータリザーバの可変なパラメータとによって達成できる。
【0066】
上記の時間差は、異なる開始剤リザーバで異なるレベルの酸性レベルを発生させることによって達成できる。
【0067】
上述の時間差は、異なるアキュムレータリザーバ内に異なるヒドロゲルポリマー又は高粘度媒体を与えることによって達成できる。
【0068】
時間差は、ラベルの構成部分の物理的パラメータを用いて達成されてよく、当該パラメータには、種々のリザーバの相対サイズ、種々のリザーバ間の接続「通路」のサイズ、又は接続通路の幾何学的形状などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
上記の時間差は、上記の要因を組み合わせて達成されるのが好ましい。
【0070】
ラベルは、層状構造であるのが好ましく、より好ましくは、基層、中間層及び上層を備えており、更に好ましくは、剥離可能なストリップが更に設けられて、不注意による開始剤リザーバへの光の進入を防止する。
【0071】
ベース層及び上層は、一体で、切れ目のないポリマーフィルムであるのが好ましい。
【0072】
リザーバは、中間層の一部を打ち抜き及び除去することによって形成されるのが好ましい。
【0073】
任意選択的に、リザーバは、3D印刷機構で、基層上に材料を堆積して形成される。
【0074】
任意選択的に、リザーバは、基層上にUV硬化性材料をスクリーン印刷して形成される。
【0075】
ターゲットリザーバは、酸応答性指示薬の色の変化を増強するように構成された1又は複数種のpH反応性インクを含んでいるのが好ましい。或いは、酸応答性指示薬が、1又は複数種のpH反応性インクを含んでいてよい。
【0076】
pH反応性材料は、ターゲットリザーバ内に含まれるポリマーマトリックス中に閉じ込められているのが好ましい。
【0077】
ポリマーマトリックスは、水性(非再溶解(non re-solublising)インク)又はUV硬化ポリマーインクを含んでいるのが好ましい。
【0078】
好刺激応答性ヒドロゲルポリマーは、ポリ(ビニルアルコール)/ポリ(アクリル酸)[PVA/PAA]、ポリ(メタクリル酸)[PMAA]、及び2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート/N-ビニルピロリドン[DNAEMA/NVP]からなる群から選択されるのが好ましい。
【0079】
本発明の第2の態様によれば、ヒドロゲルバルブによって隔てられた第1及び第2のリザーバを備える時間-温度インジケータラベルが提供される。ヒドロゲルバルブが起動すると、そのバルブは、第1のリザーバから第2のリザーバへの酸の通過を可能にする。
【0080】
本発明の第2の態様に基づく発明は、本発明の第1の態様に関連して上述した特徴の何れかを組み込んでいてよい。同様に、本発明の第1の態様に基づく発明は、本発明の第2の態様に関連して説明した特徴の何れかを組み込んでいてよい。
【0081】
ある実施形態では、ヒドロゲルバルブは、光、熱、酵素作用、磁気、電気に曝されることに加えて、pH、イオン強度、温度などの変化によって起動してもよい。ある実施形態では、ヒドロゲルバルブはpHの変化によって起動する。他の実施形態では、ヒドロゲルバルブは、光に曝すことで起動する。起動すると、これは、バルブは、そのバルブを開く物理的変化を受けることを意味することは理解される。物理的変化は、ヒドロゲルバルブの収縮又は脱膨潤であってよい。
【0082】
本発明の第2の態様による一実施形態では、光に曝すことで起動するヒドロゲルバルブ又はプラグを有することで、開始剤リザーバ内のPAGの必要がなくなる。従って、ある実施形態では、開始剤リザーバは、酸源(acid source)を含んでいてよい。酸源は、光開始剤を必要としないのが好ましい。酸源は任意の適切な酸を含んでいてよい。例えば、酸源は、弱酸又は強酸を含んでいてよい。酸源は、エタン酸又はアスコルビン酸などの天然の食用酸を含んでいてよい。酸源は、塩酸などの鉱酸であってよい。
【0083】
本発明の第2の態様による発明は、本発明の第1の態様による発明と同様に機能する。それらの違いは、本発明の第1の態様によるラベルは、開始剤リザーバが光に曝されることによって起動し、それによって開始剤リザーバ内に酸が生成されて、プラグが脱膨潤するのに対して、本発明の第2の態様によるラベルは、光に曝されたヒドロゲルプラグによって起動し、これによって、開始剤リザーバ内に含まれる酸が次のリザーバに入ることが可能になることである。何れの態様においても、第1のヒドロゲルプラグが脱膨潤して水素イオンが次のリザーバへと通ることが可能になると、第1及び第2の態様によるラベルは、同じように機能する。このように、本発明の第1又は第2の態様の何れかに関して記載した特徴の何れかが、本発明の第1又は第2の態様の他方に組み込まれてよく、そのようなすべての可能な組み合わせが明確に検討されて開示されていることは理解されるであろう。
【0084】
pH反応性ヒドロゲルでは、高分子電解質のペンダント酸性基又は塩基性基は、イオン化を受ける。その酸性基又は塩基性基は、ポリマー主鎖に結合しているので、その基のイオン化はヒドロゲルポリマーの膨潤をもたらし、これは非電解質ポリマーヒドロゲルを用いて達成されるものよりも遙かに大きい。高分子電解質ヒドロゲルの膨潤は、主としてポリマー鎖に存在する電荷間の静電反発力によるものであり、従って膨潤の程度は、静電反発力を減少させる条件、例えばpHによって影響される。このように、ヒドロゲルバルブ付近の領域におけるpHの変化は、ヒドロゲルポリマーのイオン化を変化させて、ヒドロゲルバルブの脱膨潤をもたらす。ヒドロゲルに対するプロトンの付加又は除去は、ポリマー構造における電荷分布を変化させて、ポリマー中の静電力を変化させ、ひいては、ポリマーの形状を変化させる。
【0085】
例示的なpH反応性ヒドロゲルとしては、ポリエチレンジアクリレート(PEGDA)架橋剤を用いたカルボキシエチルアクリレート(BCEA)のポリマーが挙げられる。他の例示的なヒドロゲルには、架橋剤としてN、N’-メチレンビスアクリルアミド(MBA)を使用するアクリル酸のポリマーが挙げられる。アクリル酸の代わりにアクリル酸ナトリウムを使用して、類似のヒドロゲルが使用されてよい。
【0086】
ヒドロゲルポリマーの膨潤又は脱膨潤の度合いは、Q値として示すことができる。1を超えるQ値はヒドロゲルの膨潤を示し、1未満のQ値はヒドロゲルの脱膨潤又は収縮を示す。所与のヒドロゲルのQ値を測定することは、機械的に実施できる。ヒドロゲルの体積は、pHが変化する前に測定され、その後、pHが変化したら再度測定される。この場合、より低いpHにおけるヒドロゲルの体積とより高いpHにおけるヒドロゲルの体積との比がQ値となる。
【0087】
本発明の第1及び第2の態様は、より低いpHレベルでのヒドロゲルプラグの収縮又は非膨潤に依拠しており、ヒドロゲルのQ値は、低下したpHレベルで1未満である。
【0088】
本発明の第2の態様によるヒドロゲルバルブは、光反応性ヒドロゲルを含んでよい。光反応性ヒドロゲルは、光に曝されると、膨潤又は脱膨潤することによってその形状を変える。光反応性ヒドロゲルの例には、アゾベンゼン及びスピロピランが挙げられる。
【0089】
アゾベンゼン基は、UVを照射すると、トランス型からシス型への異性化を受ける。シス型のパラ炭素原子間距離は、トランス型のパラ炭素原子間距離よりはるかに小さい。故に、主鎖にアゾベンゼン基を含むポリマーは、UV光に曝されると収縮する。
【0090】
スピロピランはフォトクロミック基であって、C-Oスピロ結合にて複素環開裂を受けて、可視領域で強く吸収する、平面的で高度に共役した発色団、即ちメロシアニン異性体を形成する。開環形態は、熱的又は光化学的プロセスの何れかによって、初期の閉環形態に戻り得る。スピロピラン誘導体は、混入及び架橋されて、ポリマーマトリックス中の側鎖又は主鎖の一部として導入されてよい。酸性環境では、異性化平衡は右側に動かされて、メロシアニン異性体が優位を占める。可視光に曝されると、平衡は左にシフトして、スピロピラン異性体が優勢になる。
【0091】
スピロピランとメロシアニンの間の平衡は、以下の通りである。
【化2】
【0092】
N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)は、低温で高度に膨潤して、大きな体積変化を示すことから、刺激応答性ヒドロゲルの基材として使用されてきた。光応答性ヒドロゲルは、スピロベンゾピラン発色団(SP)を用いて、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)ゲル(p(NIPAAm))を官能化することによって形成できる。SPを用いてp(NIPAAm)ゲルを官能化すると、ハイブリッド材料が生じ、光応答性スピロピラン分子は、UV照射下で荷電メロシアニンへと開いて、白色光照射下で非荷電スピロピラン異性体に戻ることができる。
【0093】
2重量%のN、N’-メチレンビスアクリルアミドと、5重量%のアクリル酸と、91重量%のN-イソプロピルアクリルアミドと、1重量%のIrgacure 819(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド)と、1重量%のスピロピランとから形成されるポリマーは、メロシアニン異性体形態のスピロピラン基を有する。白色光に曝されると、スピロピラン形態が優先して、ヒドロゲルは収縮するであろう。
【0094】
収縮の度合いは、使用されるスピロピランに依存する。スピロピランは、以下の一般式を有する。
【化3】
【0095】
使用される異なる3つのスピロピランは、以下の構造を有する。
【化4】
【0096】
スピロピラン1、2、又は3を含むヒドロゲルは夫々、白色光に曝されると、元のサイズの65%、58%、及び54%まで収縮した。照明が取り除かれると、メロシアニン形態が優勢になり始めるにつれて、ヒドロゲルは再膨潤し始める。スピロピラン1を含むヒドロゲルは、ほぼ完全に再膨潤し、スピロピラン2又は3を用いると、これらは、初期サイズの約75%まで再膨潤する。
【0097】
ヒドロゲルバルブは、光応答性イオノゲルを含んでよい。イオノゲルは、ヒドロゲルマトリックス中にイオン性液体を含むことから、標準的なヒドロゲルとは異なる。
【0098】
3つのモノマー単位:ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)-p(NIPAAm)、N、N-メチレン-ビス(アクリルアミド)-MBAAm、プロトン化形態の1’、3’、3’-トリメチル-6-ヒドロキシスピロ(2H-1-ベンゾピラン-2,2’-インドリン(MC-H)(100:5:1の比率)を含むイオノゲルは、イオン性液体を含めるための適切なヒドロゲル基として作用することが分かっており、当該イオノゲルは、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンDMPA(インドリンと同じモル比で、光開始剤として作用する)も含む場合、光開始収縮/脱水を示す。
【0099】
種々のイオン液体を添加した上記配合のポリマーゲルを含むイオノゲルの光開始収縮は、Benito-Lopez et al.Lab Chip, 2010, 10, 195-201に記載されている。
【0100】
使用したイオン液体は、トリヘキシルテトラデシル-ホスホニウム ジシアノアミド[P6,6,6,14][dca]、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)-アミド[P6,6,6,14][NTf2]、トリヘキシルテトラデシル-ホスホニウム ドデシルベンゼンスルホネート[P6,6,6,14][dbsa]、トリイソブチル(メチル)-ホスホニウム トシレート[P1,4,4,4][tos]であった。
【0101】
イオノゲルに含まれるILを変えると、白色光に曝した時の収縮速度及び収縮量に劇的な影響を与えることが分かった。具体的に、上記のイオノゲルから構成されたマイクロバルブの開放速度を以下の表1に示す。各ケースでは、365nmのUV光源に曝すことで、イオノゲルをその場で重合させた。ヒドロゲルからマイクロバルブを製造することができ、ヒドロゲルマイクロバルブが開く速度は、イオン性液体の添加によって制御できることが理解される。
【0102】
【表1】
【0103】
水酸化物イオンの光活性源の代わりに酸発生剤を使うならば、酸を使用することによって上記の例で得られるようにして、塩基を使用して同様の効果が達成されることは、教育を受けた読者にとって明らかなはずである。この可能性/結果は、本発明者らによって想定されており、故に、本明細書に組み込まれる。
【0104】
本発明の第1及び第2の態様における本発明の様々な特徴は、水素イオンがアキュムレータリザーバを通過する速度を制御するように変更されてよい。それらの特徴には、アキュムレータリザーバ内の高粘度媒体の粘度、アキュムレータリザーバの寸法、及びアキュムレータリザーバの形状が含まれるが、これらに限定されない。更に、ヒドロゲルプラグが脱膨潤する所定のpHもまた、ラベルのタイミング機構を制御するために変更されてよい。ヒドロゲルプラグを使用して、脱膨潤させ、ターゲットリザーバへの水素イオンの急速な流入を可能にするためのバルブとして作用させることで、色の変化が急速にもたらされるので、消費者は、使用適合性を主観的に評価する必要がない。単一のラベルに複数の色変化を含めることができるので、明確で迅速な色の変化を持たないか、又は単一の色変化に頼った従来技術のラベルと比較して、消費者に更なる情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
本発明の実施形態は、例示として添付の概略図を参照しつつ説明される。
【0106】
図1図1は、本発明の第1及び第2の態様によるラベルの概略を示す平面図である。
図2図2は、本発明の第1の態様によるラベルの概略を示す断面図である。
図3図3は、本発明の第1及び第2の態様によるラベルの基層の概略を示す平面図である。
図4図4は、本発明の第1の態様によるラベルの概略を示す平面図である。
図5図5は、本発明の第1の態様によるラベルの概略を示す平面図であって、ラベルが最初に起動したときから第1の色変化を経て、最後に第2の色変化をするまでの間において、動作中のタイミング機構を示す。
図6図6は、本発明の第1の態様によるラベルの概略を示す平面図であって、ラベルが最初に起動したときから第1の色変化を経て、最後に第2の色変化をするまでの間において、動作中のタイミング機構を示す。
図7図7は、本発明の第1の態様によるラベルの概略を示す平面図であって、ラベルが最初に起動したときから第1の色変化を経て、最後に第2の色変化をするまでの間において、動作中のタイミング機構を示す。
図8図8は、本発明の第1の態様によるラベルの概略を示す平面図であって、ラベルが最初に起動したときから第1の色変化を経て、最後に第2の色変化をするまでの間において、動作中のタイミング機構を示す。
図9図9は、本発明の第1の態様によるラベルの概略を示す平面図であって、ラベルが最初に起動したときから第1の色変化を経て、最後に第2の色変化をするまでの間において、動作中のタイミング機構を示す。
図10a図10aは、タイミング機構の進行を示す、本発明の第1の態様による例示的なラベルの写真である。
図10b図10bは、タイミング機構の進行を示す、本発明の第1の態様による例示的なラベルの写真である。
図10c図10cは、タイミング機構の進行を示す、本発明の第1の態様による例示的なラベルの写真である。
図10d図10dは、タイミング機構の進行を示す、本発明の第1の態様による例示的なラベルの写真である。
図11図11は、本発明の第1の態様によるラベルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0107】
図1は、本発明の第1及び第2の態様による時間温度統合(TTi)インジケータラベル1の概略図を示す。ラベル1は、透明な起動ウィンドウ2と透明な観察ウィンドウ3とを含む。透明起動ウィンドウ2は、光開始pH調整系及び/又はpH若しくは感光性ヒドロゲル製プラグの少なくとも一部の上に重なっている。透明観察ウィンドウ3は、使用者がラベル1内に含まれるpH応答性指示薬の色を見ることを可能にする。起動ウィンドウ2及び観察ウィンドウ3は、任意の適切な形状及びサイズであってよいことは理解されるであろう。1つの起動ウィンドウしかないことを含めて、任意の数の起動ウィンドウ2があってよいことも理解されるであろう。同様に、観察ウィンドウ3も幾つあってもよい。起動ウィンドウ2と観察ウィンドウ3は重なっていてよく、或いは、同じウィンドウであってもよい。
【0108】
図1を参照すると、ラベル1は平面図で示されており、上層4はブランクで示されている。上層4の少なくとも一部は、タイミング機構を、つまりpH調整系及び/又はpH若しくは感光性ヒドロゲル製プラグを起動させるために透明であることが好ましい。しかしながら、上層4は部分的に不透明であってよく、及び/又は上層4の表面には、装飾及び/又は情報が印刷されてよいことは理解されるであろう。光開始ヒドロゲルバルブ及び/又は光開始pH調整系の上の上層4の領域は、完全に透明でなくてよいが、ヒドロゲルバルブ及び/又はpH調整系を駆動させる十分な光を通過させて、使用者がpH応答性インジケータの色を見ることができる程度に十分に透明にされる。
【0109】
図2は、ラベル1の構造の断面図である(正確な縮尺ではない)。ラベル1は剥離ライナー5を備えている。剥離ライナー5は、グラシンなどのカレンダー加工紙、又はポリオレフィンフィルムなどのポリマーフィルムであってよい。剥離ライナー5は、ポリエチレンテレフタレート又は他の適切なポリマーを含んでいてよい。剥離ライナー5は、シリコーンで被覆されていてよい。剥離ライナー5がカレンダー加工紙を含む場合、それは約30乃至約80ミクロンの厚さであるのが好ましく、剥離ライナーがポリマーフィルムを含む場合、それは約10乃至20ミクロンの厚さであるのが好ましい。しかしながら、特定の層の厚さについて言及する場合、当業者は任意の適切な厚さが用いられてよいことを認識するであろうことは理解されるだろう。剥離ライナー5は、ラベル貼付け機械を介してラベルが搬送及び供給されることを可能にし、ラベルを貼り付ける前に取り除かれる。剥離ライナー5は、接着層6を覆っている。接着剤6は、好ましくは感圧接着剤である。接着層6は、ラベル1を包装に貼られることを可能にする。接着層6は、基層7に付けられている。
【0110】
基層7は、ポリマーフィルムであることが好ましい。pH応答性指示薬の色が消費者にはっきりと見えるように、基層7は白色であることが好ましいが、消費者がpH応答性指示薬の色を容易に確認できる任意の色が使用されてよい。基層7は連続したフィルムであるのが好ましい。基層7はポリプロピレンを含んでよい。基層は、約50乃至約120ミクロンの厚さであってよい。基層は連続したフィルムであるのが好ましい。pH感受性変色インク9が基層7上に印刷される。pH感受性変色インク9は、pHの変化に応答して変色し、ラベル1が貼られている製品の状態を消費者に視覚的に示す。
【0111】
ラベル1はまた、本体層8を備えている。本体層8は、好ましくは基層7上に積層されており、ラベル1のリザーバを画定するのに役立つ。本体層8は、必要に応じて、ヒドロゲルと、PAGと、高粘度媒体と、及び/又は、緩衝液で充填される空洞とを作り出す切り欠きを含んでいる。本体層8は打ち抜き加工されていてよい。本体層8は自己接着性であってよい。本体層8はポリプロピレンを含んでいてよい。本体層は約50乃至約120ミクロンの厚さであってよい。
【0112】
緩衝液は、観察キャビティ/ターゲットリザーバ10内に配置されてよい。緩衝液は無色であることが好ましく、ラベル1が起動するまでpH感受性変色インク9を一定のpHに維持する働きをする。緩衝液はpHの変化に強く抵抗しないことが好ましい。
【0113】
光開始pH調整系及び/又はpH若しくは温度感受性ヒドロゲル製プラグは、起動キャビティ/開始剤リザーバ11内、又は開始剤リザーバ11とアキュムレータリザーバ16との間に夫々配置される。基層7及び本体層8は、打ち抜きが必要とされないように、3D印刷技術又は触覚印刷プロセスを使用して印刷されてよいことは理解されよう。基層7及び本体層8を形成するために、3Dデジタル印刷及び大容量回転スクリーン堆積(high volume rotary screen deposition)が使用されてもよい。このように、基層7と本体層8とは一体であってよい。
【0114】
ラベル1は上層4を備えている。上層4はポリマーフィルムであるのが好ましい。上層4はポリプロピレン又は他の適切なポリマーを含んでいてよい。上層4は約50乃至約75ミクロンの厚さであってよい。上層4は連続した(uninterrupted)フィルムであるのが好ましく、これは、それが切込み、穿孔、窪み等を含まないことを意味する。上層4は本体層8の上面に積層されるのが好ましい。上層4には、パターン又は情報13が印刷されてよい。上層4は、上層4の透明領域の少なくとも一部が観察キャビティ/ターゲットリザーバ10及び起動キャビティ/開始剤リザーバ11の少なくとも一部を覆うようにして、透明であることが好ましい。ラベル1は、任意選択的に剥離層(peel-off)12を含む。剥離層12は、実質的に光不透過性であることが好ましい。剥離層12は、好ましくはフィルム状材料であって、ポリプロピレン又は他の適切なポリマーを含んでよい。剥離層12は金属膜であってもよい。剥離層12は、金属化透明ポリマーフィルムであってよく、使用者が覗き窓/ターゲットリザーバを見ることを可能にする非金属化領域を含んでよい。剥離層12は約50から約75ミクロンの厚さであってよい。剥離層12は連続していることが好ましい。剥離層12は、本質的に光不透過性の材料を含んでよく、又は1又は複数層の光不透過性のインクで印刷されていてよい。剥離層12は上層4の表面に積層されてよい。ラベル1を起動することを可能にするために、剥離層12を上層4から容易に取り外すことができる。
【0115】
図3は、本体層8の打ち抜き領域の平面図である。打ち抜き領域は連続的なキャビティを形成する。任意の適切な形状が使用されてよく、本発明は、図示された特定の構成によって限定されないことは理解されるであろう。観察キャビティ/ターゲットリザーバ10及び起動キャビティ/開始剤リザーバ11は、平面図に示されている。観察キャビティ/ターゲットリザーバ10及び起動キャビティ/開始剤リザーバ11は、任意の適切な形状であってよい。起動キャビティ11は第1の/開始剤リザーバを画定し、観察キャビティ10は第2の/ターゲットリザーバを画定する。組み立てられたラベル1内にヒドロゲルプラグ又はバルブ14a、14b、15a、15bが配置されている領域も示されている。ヒドロゲルプラグ又はバルブ14a、14b、15a、15bは、ラベル1内で充填され得る5つの別々のリザーバ又はキャビティを作り出す。本実施形態では、ヒドロゲルプラグ14a、14b、15a、15bは、2つの開始剤リザーバ11a、11bと、2つのアキュムレータリザーバ16a、16bと、単一のターゲットリザーバ10とを作り出す。他の実施形態は、そのようなリザーバを異なる数で有してよいことは理解されるであろう。アキュムレータリザーバ16a及び16bは、図4において、より詳細に説明される。本発明の第1の態様によれば、開始剤リザーバ11は、pH調整系を備えており、これは、PAGと、溶媒と、任意選択的に光増感剤とを含んでいてよい。別の実施形態では、開始剤リザーバ11は酸性溶液を含んでよく、当該酸性溶液は、開始剤リザーバ11をアキュムレータリザーバ11から隔てている光感知パルブが光に曝されると、アキュムレータリザーバ16に入ることができる。
【0116】
図4は、開始剤リザーバ11b内に光開始酸発生系を含むラベル1を示す。開始剤リザーバ11b内の光開始酸発生系に隣接して、第1のヒドロゲルプラグ又はバルブ14bがある。第1のヒドロゲルプラグ又はバルブ14bはpH感受性であって、起動前において、開始剤リザーバ11b内の酸発生系とアキュムレータリザーバ16b内の高粘度媒体との間のセパレーターとして働く。開始剤リザーバ11b内のPAGシステムが駆動すると、第1のヒドロゲルプラグ又はバルブ14bは、脱膨潤するか又は他の方法で壊れて、水素イオンをアキュムレータリザーバ16b内に拡散させる。アキュムレータリザーバ16b内には、アキュムレータリザーバ16bを通る水素イオンの拡散速度を調節する高粘度媒体が収容されている。拡散速度は、高粘度媒体の化学組成、粘度、及び/又は温度によって制御される。粘度は、約20乃至約7500センチポアズ(20℃)の範囲内であるのが好ましい。アキュムレータリザーバ16b内の高粘度媒体の粘度は、アキュムレータリザーバ16a内の高粘度媒体の粘度よりも高いことが好ましい。アキュムレータリザーバ16b内の高粘度媒体のpHは、ラベル1の起動前では、約5.5乃至約7.0であることが好ましい。ラベル1はまた、第2のヒドロゲルプラグ又はバルブ15bを備えている。第2のヒドロゲルプラグ又はバルブ15bは、アキュムレータリザーバ16bをターゲットリザーバ10から隔てている。アキュムレータリザーバ16b内のpHが所定のレベルまで低下すると、第2のヒドロゲルプラグ又はバルブ15bは脱膨潤するか、又は他の方法で壊れて、それによって水素イオンがターゲットリザーバ10内を通ってpHを下げる。pHが下がると、目に見える色が変化する。ラベル1の反対側も同様の構造を有しており、同様な特徴には同じ番号が与えられているが、異なる文字が付けられている。ラベル1の反対側も同様に作動するが、アキュムレータリザーバ16a内の高粘度媒体はアキュムレータリザーバ16b内のものとは異なっており、その結果、リザーバに沿った水素イオンの拡散速度が異なる。ヒドロゲルプラグ15a及び15bは異なる時間に脱膨潤するように誘導されるので、これによって、異なる時間に2回の色の変化がもたらされる。
【0117】
図5乃至図9は、光に曝された後にラベル1は如何に機能するかを示している。開始剤リザーバ11a、11b内のPAGを光に曝すと、PAGが水素イオンを発生させ、ヒドロゲルプラグ14a、14b付近でpHを低下させる。開始剤リザーバ11a、11b内のPAGは、同じであっても異なっていてもよい。PAGは、同じ濃度又は異なる濃度で含まれていてもよい。図5では、開始剤リザーバ11a、11b内のPAGは、光に曝されることよって活性化されており、酸性種の発生によって引き起こされるpHの低下は、ヒドロゲルプラグ14a、14bを壊している。ヒドロゲルプラグ14a、14bが破壊すると、それらがバルブとして作用して、PAGによって生成された水素イオンが個々のアキュムレータリザーバ16a、16bを通ることを可能にする。PAGは、pHを約0乃至約2.0に下げてよい。ヒドロゲルプラグ14a、14bは、所定のpHにて約40%脱膨潤してよい。
【0118】
図6は、アキュムレータリザーバ16a、16bの各々を通る水素イオンの拡散を示す。水素イオンは、アキュムレータリザーバ16bと比べて、アキュムレータリザーバ16aに沿って更に拡散している。これは、これらリザーバに使用されている高粘度媒体が異なっていることに起因している。
【0119】
図7は、水素イオンが、アキュムレータリザーバ16aに沿って拡散してヒドロゲルプラグ15aに到達した模様を示す。ヒドロゲルプラグ15aは、約4.5のような所定のpHで脱膨潤するように構成されており、アキュムレータリザーバ16a内のイオンの濃度は、ヒドロゲルプラグ15a付近の媒体のpHが所定のpHまで低下するまで増加し続ける。
【0120】
図8に示すように、ヒドロゲルプラグ15a付近のpHが所定のレベルまで低下すると、ヒドロゲルプラグ15aは脱膨潤して、水素イオンはターゲットリザーバ10内を素早く通ることができる。ターゲットリザーバ10内のpHは、水素イオンの流入のために局所的に低下して、これによって、pH感受性色変化インクの色変化がもたらされる。ターゲットリザーバ10内のpHの低下は、例えば約2.5などのより低いpHで脱膨潤するように構成されている第2のヒドロゲルプラグ15bを起動させるのには十分ではない。
【0121】
図9は、更に時間が経過して、アキュムレータリザーバ16b内の水素イオンがヒドロゲルプラグ15bに向かって拡散してそれを脱膨潤させた場合を示す。ヒドロゲルプラグ15bは、ヒドロゲルプラグ15aを脱膨潤させるのに必要なpHより低いpHで脱膨潤するように構成されているので、ヒドロゲルプラグ15bが脱膨潤すると、ターゲットリザーバ10に入る水素イオンの濃度はより高くなり、ターゲットリザーバ10内のpHを更に低下させる。このpHの更なる低下は、pH感受性色変化インク中に第2の色変化を引き起こす。2回目の色の変化は、製品が使用に適していないことを示すために、黄色から赤色に変わってよい。
【0122】
図10a乃至図10dは、例示的なラベル1の色変化の進行を示す。図10aは起動前のラベル1を示しており、残りの図は、ヒドロゲルプラグ15a及び15bが脱膨潤してターゲットリザーバ内のpHを低下させる際の色変化の進行を示す。図10bは、色変化の先端が、中央窓の下部から生じている模様を示し、図10cは、色変化が、中央窓のほぼ頂部まで延びた模様を示している。図10dは、色変化が完了した模様を示す。
【0123】
図11は、本発明の第1の態様によるラベルの機能の概略を示す。ラベル1は、開始剤リザーバ11としても知られる、pH調整系を含む第1のリザーバを備えている。図示の実施形態では、pH調整系は光酸発生剤17を備えている。PAG17は、開始剤リザーバ11とは別個のものとして描かれているが、これは例示のためであって、PAG17は、開始剤リザーバ11内に分散されてよく、別個の層である必要はないことは理解されるであろう。ラベル1は、開始剤リザーバ11を、アキュムレータリザーバと呼ばれることもある第2のリザーバ16から隔てる第1のヒドロゲルプラグ14を更に備えている。更に、ラベルは、アキュムレータリザーバ16を第3のリザーバ10(ターゲットリザーバ10と呼ばれることもある)から隔てる第2のヒドロゲルプラグ15を更に備えている。幾つかの実施形態は、別個のアキュムレータリザーバ16を備えていないことは理解できるであろう。ターゲットリザーバ10は、pHの変化に応答して色を変えるpH応答性指示薬を備えている。
【0124】
ラベル1はまた、光を実質的に遮断して、光酸発生剤17を活性化させない光不透過層又はバリア12を含んでよい。光不透過層12は、ラベルの取り外し可能な特徴であって、これは、使用者によって又はラベルが包装に貼られる際に除去されてよいことは理解されるであろう。
【0125】
使用時には、光不透過層又はバリア12が除去されて、PAG17が光に曝される。光に曝されると、PAG17は、開始剤リザーバ11内に水素イオンを生成する。水素イオンの濃度が増加すると、pHは、例えば約6.0から約4.5に低下する。開始剤リザーバ11内のpHが所定のレベルまで低下すると、第1のヒドロゲルプラグ14は脱膨潤して、開始剤リザーバ11からの水素イオンを第2のリザーバ16に通す。開始剤リザーバ11内の水素イオンの濃度は、第2のリザーバ16と比べて増加しているため、水素イオンは濃度勾配を進んで第2のリザーバ16に入る。このように、アキュムレータリザーバ16の組成を変えることによって、アキュムレータリザーバ16を通る水素イオンの拡散速度を制御することができる。水素イオンは、第2のヒドロゲルプラグ15に到達するまでアキュムレータリザーバ16を通ることができる。第2のプラグ15を通る水素イオンの拡散速度は非常に遅いか、又は好ましくは実質的にゼロであって、これによって、第2のプラグ15付近の領域内の水素イオンの濃度を増加させ、それによってpHが下げる。pHが所定のレベル、例えば約4.5に低下すると、第2のプラグ15は脱膨潤してアキュムレータリザーバ16からの水素イオンをターゲットリザーバ10に通す。ターゲットリザーバ10への水素イオンの流入は、ターゲットリザーバ10内のpHを低下させる。ターゲットリザーバ10内のpH応答性指示薬は、pHの低下に応答して色を変える。ターゲットリザーバ10の色は使用者に見え、ターゲットリザーバ10内の色の変化は、ラベル1が第1の所定の期間活性化したことの視覚的表示を提供する。色は、緑色からオレンジ色又は黄色に変化するのが好ましい。水素イオンの濃度をターゲットリザーバ10の近く増大させて、第2のヒドロゲルプラグ15を所定のpHで壊すと、ターゲットリザーバ10への水素イオンの急速な流入及び色の急速な変化がもたらされる。アキュムレータリザーバ16とターゲットリザーバ10との間にプラグ又は障壁がない場合には、ターゲットリザーバ10のpHの変化はより緩やかになり、水素イオンがアキュムレータリザーバ16を通って拡散するにつれてゆっくり低下するであろう。これは、ターゲットリザーバ10の色が徐々に変化することになって、使用者に示される時間経過があまり明確に定まっていないことになるであろう。このように、ヒドロゲルプラグの逐次的破壊は水素イオンの集積を可能にするのでヒドロゲルプラグが脱膨潤すると、プラグの一方から他方への水素イオンの大きな濃度勾配がああって、そのため、次のリザーバへの水素イオンの急速な拡散があることは理解されるであろう水素イオンの拡散速度は、アキュムレータリザーバ16の組成によって制御できる。アキュムレータリザーバ1は、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボポール、及び/又はsurfynol465のうちの1又は複数を水中に含む組成物のような高粘度媒体を含んでよい。
【0126】
ラベル1は、1又は複数の開始剤リザーバ及び/又は1又は複数のアキュムレータリザーバを備えてよい。複数のアキュムレータリザーバがある場合には、アキュムレータリザーバのうちの1つの特性を変更することで、リザーバに沿った拡散速度をより遅くすることができる。これは、例えば、アキュムレータリザーバの長さを長くする、アキュムレータリザーバの断面積を変える、アキュムレータリザーバにチョークを設ける、又はアキュムレータリザーバ内に含まれる1又は複数の材料を変えるなどのような適切な任意の方法で達成することができる。2つのアキュムレータリザーバを設けることで、ターゲットリザーバへの水素イオンの2箇所での流入とpHの2つの別々の急速低下とが可能になる。これは、リザーバ内で色が複数回変化することを可能にする。2回目の色の変化は、オレンジ色又は黄色から赤であってよい。2回目の色の変化は、ラベルが適用されている商品が消費に適していないことを示してよい。従って、最初の色変化が起こるための期間は、水素イオンが第1のアキュムレータリザーバを通過できる速度に依存し、2回目の色変化のための期間は、水素イオンが第2のアキュムレータタンクを通過する速度に依存する。他の実施形態では、水素イオンは同じ速度で2つのアキュムレータリザーバを通過してよく、一方のリザーバは他方よりも長くてよい。
【実施例
【0127】
<光開始酸発生剤>
光開始pH調整系の例は、製造及び試験されている。試験の結果は、光に曝されると、光イオン発生剤が水素イオンを発生させ、それによって系のpHを変えるのに適していることを実証している。
【0128】
<実施例1>
<トリアリールスルホニウム塩>
【化5】
50%w/wのプロピレンカーボネート溶液に光を照射して酸を発生させた。溶液は1重量%のペリレンを含んでいた。次に、この溶液を、カルボキシメチルセルロースとカルボポールの混合物を含む水性高粘度媒体(HVMT)と接触させた。HVMTのpHを経時的に測定して、PAG溶液からHVMTを通る水素イオンの移動を追跡した。
【0129】
最初の実験では、3:1PAG:HVMT(w%/w%)を使用した。溶液を24時間光に曝した。HVMTのpHは最初は5.9であって、PAG溶液と接触して1時間後、pHは4.0に低下した。24時間経つと、pHは2.3に低下し、pHは、6日後に最終的に1.8まで低下した。
【0130】
第2の実験では、6:1のPAG:HVMT(w%/w%)を使用した。溶液を144時間光に曝した。HVMTのpHは最初は5.3であって、PAG溶液と接触して24時間後に2.1に低下した。pHは、2日後に最終的に1.8まで低下した。
【0131】
<実施例2>
1重量%Irgacure PAG 290のベンジルアルコール溶液を調製した。溶液は、ベンジルアルコールに対して1重量%のペリレンを含んでいた。初期pHは4.5であり、活性化後24時間で1.4に低下した。この溶液に24時間後に35重量%の水を加えると、水のpHは4.4であると測定された。
【0132】
<実施例3>
1重量%Speedcure938のエタノール溶液を調製した。溶液は1重量%のペリレンを含んでいた。初期pHは5.5であると測定され、活性化後24時間に1に低下した。24時間後、 この溶液に35重量%の水を添加し、その水のpHを測定したところ2.6であった。
【0133】
Speedcure938の20重量%エタノール溶液を調製した。溶液は1重量%のペリレンを含んでいた。初期pHは5と測定され、活性化後24時間で0.15に低下した。24時間後、この溶液に35重量%の水を添加し、その水のpHを測定すると1.6であった。
【0134】
<実施例4>
実施例1と同様の方法で、1%w/wのペリレンを含む10%w/wジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートのベンジルアルコール溶液を調製した。溶液を光に曝して活性化し、次いでカルボキシメチルセルロースとカルボポールの混合物を含む水性高粘度媒体(HVMT)と接触させた。HVMTのpHを経時的に測定し、 PAG溶液からHVMTを通る水素イオンの移動を追跡した。
【0135】
【表2】
【0136】
<実施例5>
1%w/wペリレンを含む1%w/wIrgacure103のエタノール溶液を調製した。溶液の初期pHは6.5であって、光に曝した後、24時間で0.6に低下した。24時間後、この溶液に35重量%の水を添加し、その水のpHを測定したところ2.6であった。
【0137】
1%w/wペリレンを含む1%w/wIrgacure103のベンジルアルコール溶液を調製した。溶液の初期pHは6.2であり、光に曝した後、24時間で0.3に低下した。24時間後にこの溶液に50重量%の水を加えたところ、その水のpHは3.4であると測定された。
【0138】
ペリレンを含まない10%w/wIrgacure103のエタノール溶液を調製した。溶液のpHは、光に曝した後4時間後に2.5であり、光に曝した後24時間で0に低下した。24時間後にこの溶液に75重量%の水を加えたところ、水のpHは3.6であると測定された。
【0139】
この例から、光増感剤の使用は必須の要件ではなく、光増感剤を必要としない適切なPAGが使用できることは明らかである。
【0140】
<実施例6>
【0141】
1%w/wペリレンを含む1%w/wIrgacure121のベンジルアルコール溶液を調製した。溶液の初期pHは4.0であり、光に曝した後24時間で0.1に低下した。24時間後に、この溶液に50重量%の水を加えたところ、水のpHは3.6であると測定された。
【0142】
各実施例から明らかなように、PAGを光に曝すことによってpHを大きく低下させることが可能であり、そして、発生した水素イオンはヒドロゲルを通って拡散し、ヒドロゲルのpHを低下させることができる。従って、光開始酸発生剤を使用して、時間-温度統合インジケータラベルのタイミング機構を開始することが可能である。PAGと共に光増感剤を使用できるが、光増感剤を使用せずにPAGから水素イオンを発生させることは可能である。
【0143】
<pH反応性ヒドロゲル>
pHの低下に応答してヒドロゲルが脱膨潤する能力を実証するために、幾つかの例示的なヒドロゲルを調べた。
【0144】
<実施例7>
実験した最初のヒドロゲルは、ポリエチレンジアクリレート(PEGDA)架橋剤を用いたカルボキシエチルアクリレートのポリマーを含んでいた。Q値は、水の吸着による相対的膨潤(1より大きい数)又は水の除去による収縮(1より小さい数)を表す。
【0145】
【表3】
【0146】
1.100wt%(99%mol BCEA及び1%mol PEGDA);
2.70wt%(99%mol BCEA及び1%mol PEGDA)及び30wt%水;
3.50wt%(99%mol BCEA及び1%mol PEGDA)及び50wt%水;
4.100wt%(95%mol BCEA及び5%mol PEGDA);
5.90wt%(95%mol BCEA及び5%mol PEGDA)及び10wt%水;
6.70wt%(95%mol BCEA及び5%mol PEGDA)及び30wt%水。
【0147】
理解できるように、既に含まれている水で形成された、つまり存在している水で重合されたヒドロゲルは、追加された水を吸収する傾向に乏しかった。各サンプルはより低いpHに曝されると収縮したことに留意すべきである。そのように、そのようなヒドロゲル組成物から作られたプラグは、pHの低下に曝されるとバルブとして働くことができることが分かる。
【0148】
<実施例8>
架橋剤としてアクリル酸とN、N’-メチレンビスアクリルアミドとのポリマーを含む第2の種類のヒドロゲルが検討された。アクリル酸ナトリウム(SA)を含む類似のヒドロゲルを形成することができる。
【0149】
【表4】
【0150】
<実施例9>
架橋剤として1wt%のPEGDAを使用した、アクリル酸ナトリウム30wt%と2-(2-エトキシエトキシ-エチルアクリレート(EOEOEA)70wt%との共重合によって形成されたヒドロゲルは、pH6.75で8.0より大きいQ値をもたらす。pH6.3にて、Speedcure938の1%エタノール溶液でのQ値は、1.83であり、50wt%トリアリールスルホニウム塩プロピレンカーボネート溶液のQ値は1.40であった。
【0151】
PEGDAの量が5wt%に増加した場合、同じモノマー混合物は、pH6.75で2.6のQ値と、50wt%トリアリールスルホニウム塩プロピレンカーボネート溶液中で1.25のQ値を有するヒドロゲルを生じた。
【0152】
HVMTに塩化ナトリウムを添加することによってもQ値の同様の抑制を得ることができ、ヒドロゲルの膨潤度を8超から約1.5に減少させることができる。ヒドロゲルは、水(ph5.5)から、PAG溶液(10重量%Igracure103ベンジルアルコール溶液)で酸性化された酸性水溶液への体積遷移を示す。このように、PAGによって生成された酸がヒドロゲルの収縮を導くことは明らかである。
【0153】
本発明は、光に曝されることよって始動される信頼性のある時間-温度統合(TTi)インジケータラベルを提供する。光開始タイミング機構の使用は、従来技術の活性化手段の欠点を回避する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10a
図10b
図10c
図10d
図11