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特許7129706CO2使用可能な応答性吸着材の再生及び再使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】CO2使用可能な応答性吸着材の再生及び再使用
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/28 20060101AFI20220826BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20220826BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20220826BHJP
   C08F 120/34 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
C02F1/28 B
C02F1/28 A
C02F1/28 Q
B01J20/26 E
B01J20/26 G
B01J20/26 J
B01J20/34 F
C08F120/34
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019511475
(86)(22)【出願日】2017-08-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 SG2017050418
(87)【国際公開番号】W WO2018038683
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-08-24
(31)【優先権主張番号】10201607126P
(32)【優先日】2016-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】504161939
【氏名又は名称】ナンヤン・テクノロジカル・ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】シャオ・フー
(72)【発明者】
【氏名】ユー・バイ
(72)【発明者】
【氏名】イェン・ナン・リアン
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第85100138(CN,A)
【文献】特開昭61-254289(JP,A)
【文献】国際公開第2014/175833(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/063305(WO,A1)
【文献】特開2004-089904(JP,A)
【文献】KUNIN R. ET AL,REGENERATION OF CARBOXYLIC CATION EXCHANGE RESINS WITH CARBON DIOXIDE,Ind, Eng. Chem. Prod. Res.,1963年,Vol.2,1-3
【文献】SILVA D. L. ET AL,DESORPTION OF HEAVY METALS FROM ION EXCHANGE RESIN WIHT WATER AND CARBON DIOXIDE,Braz. J. Chem. Eng,2006年,Vol.23,No.2,213-218
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/28
1/42
B01J 20/00 - 20/28
20/30 - 20/34
39/00 - 49/90
B01D 15/00 - 15/42
C08C 19/00 - 19/44
C08F 6/00 - 246/00
301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つの汚染物質を含む廃水を、該少なくとも1つの汚染物質と錯形成することが可能な形にあるCO応答性の官能基を含むポリマー吸着材と接触させて、第1の混合物を形成する工程、
(b)該第1の混合物を分離し、該少なくとも1つの汚染物質及び該ポリマー吸着材が実質的に存在しない第1の部分、及び該吸着材のCO応答性の官能基と錯形成している該少なくとも1つの汚染物質を含む第2の部分、を提供する工程、
(c)該工程(b)の第2の部分にCOをバブリングして該少なくとも1つの汚染物質を放出させて、錯形成していない状態にある該少なくとも1つの汚染物質、及びそのCO応答性の官能基がCO飽和形態にあるポリマー吸着材、を含む第2の混合物を形成する工程、
(d)該第2の混合物を分離し、水中、該少なくとも1つの汚染物質を含む予備濃縮溶液部分、及び該CO応答性の官能基がCO飽和形態にあるポリマー吸着材部分を提供する工程を含む、廃水から汚染物質を除く方法であって、
該ポリマー吸着材のpKが、7.5から9.0であり、
該工程(a)のpHが、5.0から6.0であり、
該工程(b)及び(d)の分離が、限外ろ過工程を含み、
該少なくとも1つの汚染物質が、重金属イオンであり、
該ポリマー吸着材が、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)であり、
a)ポリマー吸着材が、50,000から200,000ドルトンの分子量を有する星型PDMAEMA構造の形で与えられるか、又は
b)ポリマー吸着材が、5,000から20,000ドルトンの分子量を有する線状PDMAEMA構造の形で与えられる、方法。
【請求項2】
前記方法が、前記工程(d)のポリマー吸着材部分を不活性ガス又は空気と接触させて、前記ポリマー吸着材のCO応答性官能基を、CO飽和形態から、CO応答性の官能基が前記少なくとも1つの汚染物質と錯形成することが可能な形にまで、再生する工程であって、
(i)この工程が独立した工程として行われて、前記少なくとも1つの汚染物質と錯形成することが可能な形のCO応答性の官能基を含む再生したポリマー吸着材が、工程(a)にリサイクルされるか、又は
(ii)この工程が工程(a)と同時に行われて、工程(a)におけるポリマー吸着材が、はじめにCO応答性の官能基がCO飽和状態にある形で与えられ、CO応答性の官能基が、該接触工程の間、前記少なくとも1つの汚染物質と錯形成する可能な形に変換される、
工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1の工程(a)、(b)、(c)、(d)又は請求項2の工程が、0℃から45℃の温度範囲で行われる、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマー吸着材が、50,000から200,000ドルトンの分子量を有する星型PDMAEMA構造の形で与えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマー吸着材が、90,000から150,000ドルトンの分子量を有する星型PDMAEMA構造の形で与えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマー吸着材が、8,000から15,000ドルトンの分子量を有する線状PDMAEMA構造の形で与えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマー吸着材が、ナノ基板材料に取り付けられたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ナノ基板材料が、シルセスキオキサンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマー吸着材が、ミクロ又はマクロ基板材料に取り付けられたものである、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマー吸着材のpKが、8.0から8.9である、請求項1~9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマー吸着材のpKが、8.75である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1の工程(b)又は(d)の分離が、1つ以上の、ろ過工程、沈殿工程、磁気分離工程又は遠心分離工程を含む、請求項1~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
請求項1の工程(a)、(b)、(c)、(d)又は請求項2の工程が、10℃から40℃の温度範囲で行われる、請求項1~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
請求項1の工程(a)、(b)、(c)、(d)又は請求項2の工程が、20℃から35℃の温度範囲で行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1の工程(a)のpHが、pH5.5である、請求項1~14のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO応答性の吸着材を使用して、例えば、重金属イオンといった汚染物質を除く、水を精製するための、COにより引き起こされるスイッチャブルな吸脱着プロセス、特にCOを使用した吸着材の回復又は再生に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書における、先に刊行された文書のリスト又は議論は、必ずしもその文書が技術水準の一部、又は共通の一般認識であるとの承認として受け取られるべきではない。
【0003】
この数十年の間に、成長が著しい、バッテリー、エレクトロニクス、鉱業及び多くの他の工業は、農耕土、湖、川に、及び地下水においてさえも、銅、鉛、及びカドミウムを含む広範な重金属汚染という結果をもたらしてきた。こうした毒性の金属元素は、生体内に蓄積することが可能で、細胞異常、遺伝病、及び酵素欠乏を、非常に低度の曝露でさえも引き起こす。それゆえ、重金属を除き再生する、簡便かつ効率的な技術は、環境保護及び経済的利益の両方に非常に価値がある。
【0004】
廃水から重金属イオンを除く従来の方法は、化学的沈殿、イオン交換、吸着、電気化学的処理、及び薄膜ろ過を含む。これらの方法が数十年の間、広く使用されてきたが、種々の吸着材(イオン交換樹脂を含む)を再生すること及び金属を効果的かつ効率的に回収することには大きな課題がある。吸着材の再生及び重金属の回収は、近年、より多くの注目を集め始めている。しかしながら、酸処理がなお支配的な方法であり、酸処理は、しばしば塩酸又は硝酸といった濃酸の使用を含む。そうした濃酸の使用は、二次汚染を引き起こしかね、費用効果が高くない。それゆえ、より環境にやさしく、持続可能な、重金属イオンを除く、新たな方法を発見することは、非常に価値あるものである。
【0005】
COは経済的で、無害で、除くのが容易であり、溶媒、粒子、界面活性剤、ポリマー及びヒドロゲルといった異なる種類の材料の、極性、親水性、相転移、ゲル化及び架橋を含む、種々の特性を切り替えるのに使用され得る。
【0006】
COスイッチャブル法は、正浸透、重合、及びゲル化制御、COの捕捉及び検出アプリケーションに広く使用されている。近年、COは、極性スイッチャブル溶媒中でキレート化されたカドミウム及びウラン錯体を分離するマイクロ抽出に使用されている。
【0007】
ポリエチレンイミン(PEI)は、トコフェロールの混合物から特定のトコフェロールを抽出する吸収剤として使用されてきた。しかしながら、トコフェロールの錯解離は困難であり、COのバブリングに加え、鉱酸の使用又は熱の添加のいずれか一方が必要とされることが証明されている。このことは大スケールでの工業的用途に関し、PEIを実用困難なものとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この本文で明らかにされているのは、CO応答性材料による、重金属イオンといった汚染物質を除く、COスイッチャブルな吸脱着プロセスである。理想的に、この本文で明らかにされているCO応答性材料は、錯解離又は再生工程に導入される熱又は酸を必要とすることなく、錯形成し、放出され、再生され得る。
【0009】
本発明の第1の態様において、以下の工程を含む、廃水から汚染物質を除く方法が提供される:
(a)少なくとも1つの汚染物質を含む廃水を、該少なくとも1つの汚染物質と錯形成することが可能な形にあるCO応答性の官能基を含むポリマー吸着材と接触させ、第1の混合物を形成する工程、
(b)該第1の混合物を分離し、該少なくとも1つの汚染物質及び該ポリマー吸着材実質的に存在しない第1の部分、及び吸着材のCO応答性の官能基と錯形成している該少なくとも1つの汚染物質を含む第2の部分、を提供する工程、
(c)該工程(b)の第2の部分にCOをバブリングして該少なくとも1つの汚染物質を放出させ、錯形成していない状態にある該少なくとも1つの汚染物質、及びそのCO応答性の官能基がCO 飽和形態にあるポリマー吸着材、を含む第2の混合物を形成する工程、及び
(d)該第2の混合物を分離し、水中、該少なくとも1つの汚染物質を含む予備濃縮溶液部分、及び該CO応答性の官能基がCO 飽和形態にあるポリマー吸着材部分、を提供する工程。
但し、該ポリマー吸着材のpKが、7.5から9.0である。
【0010】
本発明の実施形態において、前記方法は、前記工程(d)のポリマー吸着材部分を不活性ガス又は空気と接触させ、前記ポリマー吸着材のCO応答性の官能基を、CO 飽和形態から、CO応答性の官能基が前記少なくとも1つの汚染物質と錯形成することが可能な形にまで、再生する工程であって、
(i)この工程が独立した工程として行われて、前記少なくとも1つの汚染物質と錯形成することが可能な形CO応答性の官能基を含む再生したポリマー吸着材が、工程(a)にリサイクルされる、又は
(ii)この工程が工程(a)と同時に行われて、工程(a)におけるポリマー吸着材が、はじめにCO応答性の官能基がCO 飽和状態にある形で与えられ、CO応答性の官能基が、前記接触工程の間、前記少なくとも1つの汚染物質と錯形成することが可能な形に変換される、
工程をさらに含み得る。
【0011】
本発明のさらにさらなる実施形態において、
(i)本方法の各工程は、0℃から45℃の温度範囲で行われ得る、
(ii)前記ポリマー吸着材は、アミノ、カルボン酸、アミジニル、グアニジニル、ピリジニル、ヒドロキシル、及びエーテル基から成る群の1つ以上から選択される、CO応答性の官能基を含み得る(ただし、エーテル基が存在する場合、アミノ、カルボン酸、アミジニル、グアニジニル、ピリジニル、及びヒドロキシルから選択される、少なくとも1つの他の官能基もまた存在し、要すれば該官能基はアミノを含み、さらにカルボン酸、アミジニル、グアニジニル、ピリジニル、ヒドロキシル及びエーテル基から選択される1つ以上の官能基を含み得る)、
(iii)前記ポリマー吸着材は、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)(PDMAEMA)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、それらの同族体、及びそれらのコポリマーから成る群の1つ以上から選択され得る、例えば、該ポリマー吸着材は、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)であり得る、
(iv)前記ポリマー吸着材は、分岐ポリマー構造、星型ポリマー構造、樹状ポリマー構造の形といった高鎖密度の形で与えられ得る(例えば、該ポリマー吸着材が、50,000から200,000ドルトン、要すればその中でも、分子量が124,000ドルトンといった、90,000から150,000ドルトンである分子量を有する星型PDMAEMA構造の形、又は5,000から20,000ドルトン、要すればその中でも、分子量がおよそ11,000ドルトンといった、8,000から15,000ドルトンである分子量を有する線状PDMAEMA構造の形、で与えられる場合である)、
(v)前記ポリマー吸着材は、要すればナノ基板材料が分子ケージである又はナノ粒子である、要すればナノ基板材料がシルセスキオキサンである、ナノ基板材料に取り付けられた複数の線状又は分岐ポリマー鎖の形で与えられてよく、該シルセスキオキサンに取り付けられた複数の線状又は分岐ポリマー鎖は、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)、ポリアクリル酸、及びポリメタクリル酸から成る群の1つ以上から選択されるポリマー鎖であり、要すれば該シルセスキオキサンは、多面体オリゴマーシルセスキオキサンであり、該シルセスキオキサンに取り付けられた複数の線状又は分岐ポリマー鎖は、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)ポリマー鎖である、
(vi)前記ポリマー吸着材は、要すれば、ミクロ又はマクロ基板材料が、例えば、ゲル、粒子、薄膜、メッシュ及び繊維といった、孔質又は非孔質構造から成る群の1つ以上から選択される、ミクロ又はマクロ基板材料に取り付けられている、
(vii)前記ポリマー吸着材のpKは、8.75を上回るといった、8.0から8.9であり得る、
(viii)分離工程(b)及び/又は(d)は、1つ以上の、ろ過工程、沈殿工程、磁気分離工程又は遠心分離工程、要すれば分離工程(b)及び(d)は、ろ過工程(例えば、限外ろ過工程)を含む、を含み得る、
(ix)本方法の各工程は、20℃から35℃といった、10℃から40℃の温度範囲で行われ得る、
(x)前記少なくとも1つの汚染物質は、重金属イオン、有機分子、染料、溶媒、及び殺虫剤から成る群の1つ以上から選択され得る、
(xi)工程(a)のpHは、pH5.5といった、5.0から6.0であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、汚染物質の吸着及びそれに続く吸着材の再生の一般図を表す。
図2図2は、N又はCOパージ下での限外ろ過の一般図を示す。:(a)Nパージ下での吸着プロセスであり、金属イオンの濃度は、ろ過前後で[M]及び[M]N2である、及び(b)COパージ下での脱着プロセスであり、金属イオンの濃度は、ろ過前後で[M]及び[M]CO2である。
図3図3(a)は、イオン性の背景を伴わない、pH5.5での星型PDMAEMAのCu2+、Cd2+、Zn2+,Pb2+、Cr3+及びNi2+の吸着容量Qを示す。挿入図は、mmol/gスケールでのQ値を示す、及び(b)は、COパージ下でのCu2+、Cd2+、Zn2+,Pb2+、Cr3+及びNi2+の金属回収パーセンテージを示す。
図4図4は、ARGET-ATRP法を介した、a)星型及びb)線状PDMAEMAの調製の図である。
図5図5は、ポリマー-金属キレーション及びポリマー-COプロトン化間の競合図を示す。
図6図6(a)は、pH5.5での典型的な吸着容量滴定(四角及び三角)及び計算した最大吸着容量Q(円)を示す。滴定の間、10mMのCu(NO溶液を継続して、10mLの0.268mg/mLのPDMAEMA溶液に、Nバブリング下及びCu-ISE及びpH電極でのモニター下、注入した、(b)は、異なるpH値での、星型及び線状PDMAEAの最大吸着容量を示す。
図7図7は、a)線状PDMAEMA及びb)星型PDMAEMAによる、Cu2+の25℃でのpH依存吸着等温線を示す。
図8図8は、異なるpH値での、計算したPDMAEMAのプロトン化のパーセンテージを示す。
図9図9は、COにより引き起こされる、速い及び可逆的な、Cu2+の吸脱着プロセスを示す。
図10図10は、(a)COスイッチャブルな吸脱着プロセスによる、廃水からの汚染物質の吸着、分離、予備濃縮を表す図、及び(b)CO補助LRP法による重金属の除去について、水溶性のCO応答性ポリマーを使用した、例となる図、を示す。
図11図11は、100mLの0.09mMのCu(NO及び3mg/mLの星型PDMAEMAを含む溶液のN及びCOパージ下での異なる保持プロフィルを示す。
【0013】
驚くべきことにポリマーCO応答性材料は、重金属イオンの分離、回収、及び予備濃縮に使用され得ること、及び強酸ではなく、単純なガスパージ(例えば、CO及び空気パージ)を使用して、CO応答性材料を再生することが可能であることが発見された。このCOにより引き起こされる吸脱着プロセスは、特に重金属イオンを含む廃水の処理及び精製に有益である。この方法は、その簡便さ、経済的やさしさから非常に魅力的で、図1に示されている。100は金属基板、110はCO応答性の基、120は汚染物質、130はプロトン又はカルバマートである。この本文で『重金属』という用語が使用される際には、廃水中における重金属の存在を指し、廃水から重金属を除く議論は、それに従い解釈され得る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、廃水から汚染物質を除く方法に関するもので、以下の工程を含む。
(a)少なくとも1つの汚染物質を含む廃水を、該少なくとも1つの汚染物質と錯形成することが可能な形にあるCO応答性の官能基を含むポリマー吸着材と接触させ、第1の混合物を形成する工程、
(b)該第1の混合物を分離し、該少なくとも1つの汚染物質及び該ポリマー吸着材実質的に存在しない第1の部分、及び該吸着材のCO応答性の官能基と錯形成している該少なくとも1つの汚染物質を含む第2の部分、を提供する工程、
(c)該工程(b)の第2の部分にCOをバブリングして該少なくとも1つの汚染物質を放出させ、錯形成していない状態にある該少なくとも1つの汚染物質、及びそのCO応答性の官能基がCO 飽和形態にあるポリマー吸着材、を含む第2の混合物を形成する工程、及び
(d)該第2の混合物を分離し、水中、該少なくとも1つの汚染物質を含む予備濃縮溶液部分、及び該CO応答性の官能基がCO 飽和形態にあるポリマー吸着材部分、を提供する工程。
但し、該ポリマー吸着材のpKbが、7.5から9.0である。
【0015】
この本文で使用されるポリマー吸着材は、それ自身再生し、除染プロセス由来の副成物及び廃棄物を軽減させることがわかるであろう。そういうものとして、本方法は、前記工程(d)のポリマー吸着材を不活性ガス又空気と接触させ、前記ポリマー吸着材のCO2応答性の部分を、CO 飽和形態から、CO応答性の官能基が前記少なくとも1つの汚染物質と錯形成することが可能な形にまで、再生させる工程であって、
(i)この工程が独立した工程として行われ、前記少なくとも1つの汚染物質と錯形成することが可能な形CO応答性の官能基を含む再生したポリマー吸着材が、工程(a)にリサイクルされる、又は
(ii)この工程が工程(a)として同時に行われて、工程(a)におけるポリマー吸着材が、はじめにCO応答性の官能基がCO 飽和状態にある形で与えられ、CO応答性の官能基が、接触工程の間、前記少なくとも1つの汚染物質と錯形成することが可能な形に変換される、
工程をさらに含み得る。
【0016】
上で明らかにした方法は、0℃から45℃の温度範囲(例えば、20℃から35℃といった、10℃~40℃)といった、工業的に有益な温度範囲での使用に、特に好適であり得る。
【0017】
上で述べたように、この方法に使用されるCO応答性材料は、CO応答性の官能基を含むポリマー吸着材の形のポリマー複合材料である(又は少なくとも含む)。この本文で述べられ得る、好適なCO応答性材料は、アミノ、カルボキシル、アミジン、ピリジン、グアニジン、ピリジニル、ヒドロキシル、エーテル、又は他の窒素及び酸素が豊富な基を含むが、それらに限定されない。これらの官能基のうちのあるもの(例えば、アミノ)は、単独で作用し得るが、他のものは、この本文で述べられる他の官能基(例えば、エーテル官能基、酸素原子が、C1-3アルキル基といった、2つのアルキル基と結合している)の1つ以上と併用して使用されることが必要であり得ることがわかるであろう。本発明のある実施形態において、アミノ官能基は、この本文で述べられる他の官能基の1つ以上と併用して使用され得る。理論と結びつけられることを望むことなしに、アミノ官能基の存在は、他の官能基のCO応答特性を強化し得るものとされる。
【0018】
前記CO応答性材料と錯形成し得る任意の好適な汚染物質は、この本文で述べられる方法を受け得る。この本文で述べられ得る汚染物質は、重金属イオン、有機分子、染料、溶媒、殺虫剤及びそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。
【0019】
この本文で述べられ得るCO応答性の官能基を含む適切なポリマー吸着材は、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)(PDMAEMA)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、それらの同族体、及びそれらのコポリマーを含むが、それらに限定されない。この本文で述べられ得るCO応答性の官能基を含む具体的なポリマー吸着材は、ジ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)(PDMAEMA)である。PDMAEMAの適切な形は、5,000から20,000ドルトンの分子量(例えば、およそ11,000ドルトンといった、8,000から15,000ドルトン)を有する線状PDMAEMA構造であり得る。
【0020】
下記実施例で議論するように、ある実施形態において、高鎖密度の形のポリマー吸着材を提供することが有利であり得る。好適な高鎖密度の形は、分岐ポリマー構造、星型ポリマー構造、及び樹状ポリマー構造を含むが、それらに限定されない。例えば、ポリマー吸着材が、PDMAEMAである場合には、PDMAEMAは、50,000から200,000ドルトンの分子量(例えば、およそ124,000といった、90,000から150,000ドルトン)を有する星型構造の形で与えられ得る。
【0021】
ポリマー吸着材は、それ自体、分離を促進するのに役立ち得る適切な基板材料に(例えば、取り外しが容易なセラミック又はゼオライト材料といった孔質基板上に)取り付けられ得ること、又は分離を促進する一助となり得るポリマーマトリクス内に添加材料(例えば、磁気材料)を含み得ることがわかるであろう。
【0022】
さらに又は代わりに、ポリマー吸着材は、ナノ基板材料上に取り付けられた複数の線状又は分岐ポリマー鎖であり得る。例えば、ナノ基板材料は、分子ケージ又はナノ粒子であり得る。この本文で述べられ得る具体的なナノ基材は、シルセスキオキサンであり、複数の線状又は分岐ポリマーのアンカーとして使用される。この本文で述べられ得る、ある実施形態において、シルセスキオキサンに取り付けられた複数の線状又は分岐ポリマー鎖は、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)、ポリアクリル酸、及びポリメタクリル酸、それらのコポリマー、及びそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されないポリマー鎖であり得る。この本文で述べられ得る、発明の具体的な実施形態において、シルセスキオキサンは、多面体オリゴマーシルセスキオキサンであり得、シルセスキオキサンに取り付けられた複数の線状又は分岐ポリマー鎖は、この本文でPDMAEMAと称され得る、ある実施形態及び実施例において星型ポリマー構造を有する、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)であり得る。それゆえ、本発明のある実施形態において、線状又は分岐PDMAEMA単位を有する多面体オリゴマーシルセスキオキサンが与えられ、得られるポリマー吸着材は、50,000から200,000ドルトン(例えば、およそ124,000ドルトンといった、90,000から150,000ドルトン)の分子量を有する。
【0023】
さらにさらなる代替において、ポリマー吸着材は、ミクロ又はマクロの基板材料に取り付けられ得る。好適なミクロ又はマクロ材料は、例えば、粒子、薄膜、メッシュ及び繊維といった多孔質又は非孔質構造を含むが、それらに限定されない群の1つ以上から選択され得る。
【0024】
この本文で使用する際、『ナノ基板材料』という用語は、100nm未満(例えば、1nmから99.99nm)の粒子径を有する微粒子状物質に関する。この本文で使用する際、『ミクロ基板材料』という用語は、100nmから2,500nm未満(例えば、100nmから2,499.99nm)の粒子径を有する微粒子状物質に関する。この本文で使用される際、『マクロ基板材料』という用語は、2,500nmから10,000nmの粒子径を有する微粒子状物質、又は薄膜、メッシュ、繊維の形にある基板材料に関する。ナノ及びミクロ基板材料は、薄膜、メッシュ、ゲル、及び繊維といった、より大きな基板材料に組み込まれ得ることがわかるであろう。
【0025】
図1を見ると、基板材料100、すなわち、ポリマー吸着材のポリマー骨格は、汚染物120(例えば、重金属イオン)と錯形成し得るCO応答性の官能基110を含む。生じた錯体は、汚染物除去の媒介として機能し、濃縮された形で、容易に純水から分離することができ、バルクの廃水を精製する。COが、濃縮されたそうした錯体の溶液に放出されると、金属(例えば、金属イオン)及び/又は他の汚染物の放出が生じることとなり、一方吸着材におけるCO応答性の官能基はプロトン化され、又はそうでなければCO130により官能基化されている(例えば、カルバマート基の形成)。吸着材から放出された金属イオン及び/又は他の汚染物を分離することが可能で、濃縮された形で金属イオン及び/又は他の汚染物質の回収ということとなる。わかるとおり、分離されたポリマー吸着材は、リサイクルされ得る。
【0026】
分離されたポリマー吸着材は、CO応答性材料が、COに曝された形で与えられた際には、それらはCO 飽和形態にある。すなわち、CO応答性の官能基は、プロトン化されているか、又はそうでなければ、何らかの点で、COにより官能基化されている(例えば、カルバマートの形成)。この官能基化を戻し、CO応答性の官能基を汚染物質と錯形成することが可能な形に戻すために、ポリマー吸着材は、単純にそれを不活性ガス(例えば、N)、又は空気(78%より多くの不活性ガスを含む)でパージしてCOを追い出し、再使用のためにCO応答性の官能基を再生することで、処理され得る。この再生プロセスは、非常に容易に達成され得る一方、ポリマー吸着材は、水のような、何らかの液体媒体中にある。ポリマー吸着材を分離するのに使用される分離法に応じ、ポリマー吸着材は、濃縮された水溶液中に、又は乾燥した又は半乾燥した形で与えられ得る。後者の場合、液体媒体(例えば、水)が、再生プロセスの促進を助けるのに添加され得る。この再生プロセスは、廃熱を含む低度の加熱により加速され得る。吸着、COにより引き起こされる脱着、及び不活性ガスにより引き起こされる再生プロセスは、内部条件及び外部パラメータのいずれにも影響され得る。内部要素は、汚染物質のタイプ、官能基のタイプ及びそれらの局所的な化学的環境(例えば、ポリマー鎖構造又は表面のグラフト状態)を含む。外部パラメータは、温度、気体圧力、及び流速、汚染物質濃度、及び背景のイオン強度を含む。
【0027】
本方法の適切な官能基化に関する1つの重要な要素は、ポリマー吸着材の、汚染物質及びCOと錯形成し及び放出する能力である。この点において、7.5から9.0の範囲のpKを有するポリマー吸着材が、特に好適であるとされる。理論により結びつけられることを望むことなしに、この性質(及び適切なCO応答性の官能基)を有するポリマー吸着材は、例えば、0℃から45℃といった(例えば、20℃から35℃といった、10℃~40℃)工業的に有用な温度範囲内で、汚染物質及びCOと錯形成及び錯解離することが可能であるとされる。わかるとおり、外気温度で本方法を作動させるその能力により、本方法を、汚染物質及び/又はCOの錯形成又は錯解離に影響を与えるために上昇温度(例えば、45℃より上)まで水を加熱するということを必要とせず、工業的に低コストで使用することが可能となる。さらに、本方法は、錯解離に影響を与える、さらなる汚染物質(例えば、鉱酸)を必要とせず、単に空気それ自体といったような、かなりの割合の不活性ガスを含むガスの使用を必要とする。本発明のポリマー吸着材が有し得る具体的なpK値は、およそ8.75のpK値といった、8.0から8.9のpK値を含む。
【0028】
本発明のある実施形態において、本方法の第1の工程のpHを制御することは、有益であり得る。言い換えれば、上記で議論したように、工程(a)のpHを、pH5.5といった、pH5.0からpH6.0の範囲に維持するよう、制御又はモニターすることが有益であり得る。理論により結び付けられることを望むことなしに、この範囲にpHを維持することが、汚染物質(複数有り)を吸着ポリマー材のCO応答性の官能基と錯形成するのを助け得るものとされる。
【0029】
水を精製するための、CO応答性材料によるCOスイッチャブルな吸脱着を利用した一般的方法1000を図1aに表す。廃水1010は、接触工程1020でポリマー吸着材と接触し、該材料は、水溶性ポリマー、ヒドロゲルビーズ、表面が官能基された粒子、繊維、薄膜、又はCO応答性の基及び構造を含む他の基材の形であり得る。この本文で前に述べたポリマー吸着材の任意の好適な形が使用され得ることがわかる。ポリマー吸着材が前に使用された際には、接触工程は、またパージ1030において、ポリマー吸着材のCO応答性の基が、前記汚染物質と錯形成が可能な形で再生するよう、かなりの量の不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン又は空気)を含むガスの導入を含み得る。汚染物質は、重金属イオン、有機染料、殺虫剤、タンパク質などであり得る。パージ1030及び接触工程1020が、十分な時間行われた際には、処理した水1050は、吸着ポリマー材から分離され得る。吸着された汚染物質を純水から分離する分離法1040は、その形態、モルフォロジー、及び吸着ポリマー材の性質に応じ、ろ過、遠心分離、沈殿、磁気集積、又は他の方法であり得る。吸着ポリマー材は、COの導入により、予備濃縮された汚染物質を放出する錯解離工程1060を受ける。得られた混合物は、それから分離され(1070)、予備濃縮された汚染物質1080、及びCO応答性の官能基を汚染物質と錯形成可能な状態に戻すことを可能とさせる不活性ガスパージ工程1030を伴う、工程1020での使用のためにリサイクルされ得るCO が飽和した官能基を有するポリマー吸着材を与え得る。
【0030】
分離方法1100として、PDMAEMAの使用して薄膜ろ過でCu2+を除く方法を図10bに、本方法の適用及び実行可能性の一例として示す。すでに述べたように、Cu2+を含む廃水1100は、工程1120でPDMAEMAと接触している。これは、PDMAEMAが前に使用された際には、窒素又は空気でのパージ1130をまた伴い得る。適当な接触時間に続き、限外ろ過膜を使用して、分離工程1140が行われる。この限外ろ過プロセスは、ポリマーを、適切な分子量のカットオフを有するように選択された限外ろ過膜1145に保持することが可能である一方、処理した水ろ過物を個別に集めることが可能なため、使用した。残った残余分に、パージ工程1160でのCO処理を受けさせると、CO 飽和状態にあるポリマーと遊離の金属イオンとの混合物を与えた。この混合物を再度、ポリマーが残余分として保持されるよう、限外ろ過工程1170を受けさせ、一方、遊離の金属イオンは、予備濃縮混合物1180として、限外ろ過膜1175(また適切な分子量カットオフを有するよう選択されている)を通過することが可能で、これは液相のポリマーに基づく保持(LPR)として知られている。その後、ポリマーは、パージ工程1130を含むことが今や必須の本方法において、再度リサイクルされ及び使用され得る。
【0031】
前記方法において、金属イオンがポリマーに配位した際には、それらは限外ろ過薄膜(1145)に保持され得るが、COが溶液にパージされた際には、それらは脱離し、ろ過される。前記方法は、同一の装置を使用して行われ、それゆえ限外ろ過膜1145及び1175は同一であり得ることがわかるであろう。しかしながら、本方法は、連続/バッチフロー装置中で行われ得るもので、その場合において、薄膜1145及び1175は異なり得る。従来のLPRと比較して、前記金属イオンの吸脱着は、CO及び不活性ガスのパージにより簡便に制御され得る。
【0032】
この本文における実施形態において、『含む(comprising)』という語は、前記の特徴を要求するが、他の特徴の存在を限定するものではないものとして解釈され得る。代わって、『含む(comprising)』という語は、またリスト化された構成要素/特徴のみが存在していることが意図されている状況と関連し得る(例えば、『含む(comprising)』という語は、『成る(consists of)』又は『実質的に成る(consists essentially of)』という表現で置換され得る)。より広い及びより狭いいずれもの解釈が、本発明のすべての態様及び実施形態に適用され得ることが明確に検討されている。言い換えれば、『含む(comprising)』という語及びそれらの同義語は、『成る(consisting of)』という表現、又は『実質的に成る(consists essentially of)』という表現、又はそれらの同義語で置換され得る。その逆もまた同様である。
【0033】
実施例
線状及び星型ポリ(メタクリル酸2-ジメチルアミノエチル)の調製
星型及び線状PDMAEMAポリマーは、いくつかの経路を経て調製することができ、本実施例においては、電子輸送型原子移動ラジカル重合(ARGET-ATRP)により再生される活性因子を使用して調製される。多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)に基づく8腕の星型ポリマーを、過去の報告(Bai, Y.ら、Colloid and Polymer Science, 2011. 290(6):p.507-515)に従い、調製した。下記の実施例で使用する際、『星型PDMAEMAポリマー』との言及は、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)に基づく8腕の星型ポリマーを意味する。
【0034】
典型的な重合の手順として、線状の開始剤である2-ブロモイソブチル酸エチル又は8腕POSS開始剤、DMAEMA、CuBr、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチル-トリエチレンテトラミン(HMTETA)及び2-エチルヘキサン酸錫(II)(Sn 2-Eh)を、密閉したフラスコ中、適切な量の2-プロパノールに、[開始剤におけるBr基]:[DMAEMA]:[CuBr]:[HMTETA]:[Sn 2-Eh]=[1]:[100]:[0.05]:[0.25]:[5]のモル比で溶解させ、6~8時間、50℃で撹拌する。重合の後、溶媒を除き、混合物をアセトンに再溶解させ、基本的なアルミナカラムに通し、脱イオン(DI)水に対するSpectra/Por(登録商標)8kDaチューブでの透析が続く。沈殿物を除くため、遠心分離を行い、溶液を凍結乾燥してポリマーを得た。ポリマーを0.1MのNaNO溶液に溶解させ、他の実験へ向け、所望のpHに調節した。
【0035】
この本文で、銅イオンの吸脱着を示すために使用される星型(POSS-PDMAEMA)及び線状PDMAEMAは、ARGET-ATRP重合(図4)で調製される。これは、制御されたリビング重合では、優れた分子量及び構造制御を与えることが可能なためである。従来のATRPと比較して、ARGET-ATRP重合は、ポリマーの純度を低下させる問題を引き起こし、後の実験の銅イオン濃度測定の障害となる、金属触媒及び有機配位子をはるかに使用しない。ポリマーの数平均分子量は、H NMR積分法により決定される限り、星型PDMAEMAに関しては、およそ124,000ドルトン、線状PDMAEMAに関しては、11,000であった。
【0036】
Cu2+濃度及びpHの測定
Cu2+の濃度を、Metrohm Titrand 905滴定システムを備えたThermo Scientific Orion 銅イオン選択性電極 9629BNWP(Cu-ISE)を25℃で使用し、決定した。Cu-ISE電極は、イオン強度を安定させ一定で正確な捕捉となるイオン性の背景として、10-2、10-3、10-4、10-5及び10-6M及び0.1Mの濃度の新しく調製したCu(NO標準溶液で校正した。
【0037】
pHの値は、Metrohm Titrand 905滴定システムを備えたMetrohm 6.0262.100電極で測定した。電極は測定の前に校正した。
【0038】
実施例1
エレクトロニクス、塗料、配線、印刷工業由来の廃水源において広く見つかる、最も一般的な重金属汚染化学種のうちの1つとして、銅をCO補助吸脱着を示すために選択した。ポリマー-金属錯形成機構に基づき、Cd2+、Pb2+、Pb4+、Cr3+、Co2+、Ni2+、Zn2+といった、多くの他の多価キレート可能な重金属が、またこの方法に対し適用可能である(下記実施例3に示す)。
【0039】
CO補助Cu2+除去、及び吸着材の再生プロセスについて述べる。線状及び星型PDMAEMAを個別に0.1MのNaNO溶液に溶解させ、pHをおよそ5.5に調節した。ここで、廃水に関する置換として使用されるCu2+溶液は、Cu(NO・6HOを0.1MのNaNO溶液に溶解することで調製した。0.1MのNaNOは、溶液を安定化させ、実験のCu2+濃度の正確な測定を提供するイオン背景として使用し、実際の適用の間には必要ない。PDMAEMA及びCu(NOをともに混合し、真空吸引の助けも借りて、限外ろ過膜を通じてろ過する間、Nでバブリングし、セル中の銅に対するポリマーの比率に基づき、Cu2+イオンが除かれた精製されたろ過物を得た。最初の体積のおよそ20%である、残った残余分、をCOでバブリングし、再度限外ろ過膜(NMWL=5kDa)を通じてろ過して、ろ過物として予備濃縮されたCu2+イオン溶液、及び繰り返しの前記方法において、Cu(NO溶液と混合させる別のサイクルで再使用され得る、残余分のPDMAEMA溶液を得た。この実施例において、PDMAEMAは、Cu2+を予備濃縮し、除くのに使用される吸着剤であり、本方法は、ポリマー吸着材の再生及び再使用を引き起こすCO及びNの制御の下、限外ろ過により補助される。それゆえ、これは簡便で、速く、経済的に優しい、廃水処理及び/又は重金属抽出のための適切な分離技術に関連するアプローチである。
【0040】
実施例2
吸着容量を決定する典型的な手順として、1mmol/LのCu(NO溶液を継続的に10mLの0.268mg/mLのPDMAEMA溶液に注入した。注入に先立ち、該溶液は所望のpH値に調節した。Cu-ISE及びpH電極によりCu2+濃度及びpHを継続的に測定した。本プロセスの間、Nガスを継続的に溶液にバブリングし、pHを安定化させ、大気COの影響を回避した。吸着容量(Q)は、次式に従い、計算される:
【0041】
【数1】
【0042】
[式中、Cは全銅濃度、Cは測定された遊離のCu2+濃度、Vは溶液体積、及びmは吸着材ポリマーの質量である。]
【0043】
吸着等温線を計画量のCu(NO溶液を、25℃、Nパージ下、固定量のポリマー溶液に加えることで決定した。それゆえ、異なるポリマー/Cuの比を達成することが可能で、添加の間、対応するCu2+濃度はCu-ISEにより測定した。
【0044】
PDMAEMAによるCu2+の吸着能QをCu-ISEでモニターして調節されたpHでPDMAEMA溶液にCu(NO溶液を加えることで測定した。Cu-ISEは錯形成していない、加水分解していない、又は沈殿したCu/銅イオンではない、遊離のCu2+のみを検出するため、測定された濃度と計算されたCu2+の全濃度との差が、吸着された量と見なされる。最大吸着容量は、図6aに示すように、継続的にCu(NOを添加して異なる値が一定であるときにわかる。同一の方法を使用し、異なるpHでの星型及び線状PDMAEMAの吸着容量を特定し、図6bに示す。pH5.5での吸着容量は、pH5.0及びpH6.0よりもはるかに高い。これは低すぎるpH値では、ポリマーのアミノペンダント基のプロトン化が増加することとなり、それにより錯形成が阻害され、及び高いpH値では銅の加水分解が促進されることとなるためである。この実施例で使用した星型PDMAEMAは、pH5.5で145.1mg/gの吸着容量を示した。
【0045】
星型ポリマーは、同様の腕の長さの線状ポリマーよりもはるかに高い吸着容量を示す。これは、Cu2+イオンが、弱いキレ-ターと平面及び四面体の4配位錯体をしばしば形成するのに対し、星型ポリマーのポリマー腕は、2つ以上の腕が、同一のCu2+イオンとキレートし得るほど、ともに十分に近接しており、多重の分子内配位結合を形成することを可能にしているためである。この実施例に使用される銅イオンが、モデル系として与えられ、同様のキレーションが他の重金属イオンに関しても期待され得ることがわかるであろう。線状ポリマーに関しては、分子間及び分子内鎖配位が、鎖の剛直性及び静電反発により妨げられる。星型及び線状ポリマー間のこの能力の差は、鎖密度及び分子間鎖相互作用に関する分子構造が重要であることを示唆している。それゆえ、密度的にグラフト化した表面又は高鎖密度を有する超枝分かれ分子は、また高い吸着容量を示す。
【0046】
実施例3
次の実施例において、Cu2+に加えていくつかの他の金属イオンを試験した。金属イオンは、Cd2+、Zn2+、Pb2+、Cr3+及びNi2+であり、NaNOのイオン背景を伴わない限外ろ過法で評価し、実際上の廃水の処理条件をシミュレートした。
【0047】
本方法において、すべての金属塩は、アニオン性配位結合の形成を忌避する硝酸塩である。典型的な手順として、金属硝酸塩及び星型PDMAEMA(POSS-PDMAEMA)を、各々、0.04mmol/L及び27.3mg/Lの濃度でDI水に溶解させ、2つの同一の溶液を形成した。各溶液のpHを5.5に調節した。[金属]:[DMAEMA単位]のモル比がおよそ2.5:1である、ポリマーを上回る過剰量の金属により、平衡で最大の吸着容量が達成されることを確実なものとする。ろ過の前に、同一の溶液のうち、1つをNでパージ、他方をCOでパージし、各々、吸着又は脱着平衡に到達させた。ろ過は、またガスパージ下、真空吸引の助けも借りて行った。
【0048】
限外ろ過の図をろ過前後の金属濃度の表示とともに図2に示す。金属濃度は、マイクロ波プラズマ原子放出分光法(MP-AES)により測定し、以下の式による吸着容量及び金属回収パーセンテージを計算するのに使用する。
【0049】
【数2】
【0050】
【数3】
【0051】
[式中、[M]、[M]N2、[M]CO2は、各々、ろ過前、N下でのろ過後、及びCO下でのろ過後の金属濃度である。V及びmPDMAEMAは、溶液体積及び溶液中の星型PDMAEMAの質量である。]
計算した吸着容量Q図3bに示し、挿入図は単位をmmol/gスケールに標準化している。
【0052】
従来の吸着材と比較して、星型PDMAEMAは、はるかに高い又は非常に競合的なQを示す。各金属の回収パーセンテージを図3bに示すが、100%を超える値は、ガスパージ及び真空吸引間の水の蒸発に起因する実験誤差のためである。6つの金属種が、COパージ下、ろ過前後でほぼ同一の濃度を示し、COがPDMAEMAからすべての試験金属種を十分に脱着させる能力を示す。結論として、高いQ及び異なる金属イオンを十分に回収することにより、CO使用可能な再生の原理は、多くの汚染種へも普遍的に適用可能なほど有望なものであることが証明される。
【0053】
実施例4
図7に示すように、吸着に関するポリマーの銅に対する比率の効果を異なるpHで評価した。銅に対するポリマーの異なる質量比は、固定量のポリマー溶液にCu(NO溶液を加えることで達成され、吸着のパーセンテージは、添加した銅及び測定された遊離のCu2+の銅の量の差とみなされる。星型PDMAEMA(図7b)が線状ポリマー(図7a)よりもCu2+に対しより強い親和性を示し、pHがまた5.5>5.0>6.0である傾向を示し、吸着に対し最良に作用するpHはおよそ5.5であることを示すように、吸着能試験で見られたのと同一の傾向がここで観察される。
【0054】
PDMAEMAは、水溶液中でCOによりプロトン化され得るアミノペンダント基を有する。すべてのDMAEMA単位が、化学的に等価な環境にあると仮定すると、PDMAEMAの塩基解離定数は、次の平衡に基づき、計算され得る:
【0055】
【数4】
【0056】
[式中、Pは繰り返しの単位DMAEMA、[P]はDMAEMA繰り返し単位の全濃度、[P-H]はプロトン化されたDMAEMA繰り返し単位の濃度、[P]はプロトン化されていないDMAEMA繰り返し単位の濃度である。]
【0057】
平衡式に基づき、[P-H]が[OH]と等しいと仮定すると、DMAEMAの塩基解離定数kは、4.94mg/mLの星型PDMAEMA溶液のpHが8.87であると測定されたように、1.78×10-9と計算され得る。結果として、pHとPDMAEMAのプロトン化のパーセンテージとの関係は、次式で計算され、表され得る:
【0058】
【数5】
【0059】
前記式に基づき、異なるpHでのDMAEMA繰り返し単位のプロトン化のパーセンテージは、図8にプロットされ得る。DMAEMA繰り返し単位は、7.0より高いpHでは、プロトン化されておらず、pH3.5を下回るところでは、ほぼ十分にプロトン化されている。ポリマーのおよそ95%が、1atmでCOがパージされた水溶液のpH値とおよそ同等のpHであるpH4.0でプロトン化されていることは注意すべきである。pHに基づくプロトン化の評価は、COは水溶液中でPDMAEMAをプロトン化し、金属イオンの解離を引き起こすことが可能であることを示唆している。COの圧力が、例えば、工業用プラント内のように、1atmより増加している場合には、pHは3.0近くにまではるかに低下させられ得る。そうした場合には、より高程度のプロトン化、より速いプロトン化及び金属回収速度が期待され得る。
【0060】
実施例5
PDMAEMAによる、COにより切り替えられる、Cu2+の吸脱着を示すために、10.0mLのpH5.5に調節された3.52mg/mLの星型PDMAEMA溶液を10mLの1mMCu(NO溶液と、磁器撹拌器を備えたビーカー中で混合する。N及びCOを交互に25℃で針を通じて溶液中にバブリングし、金属イオンの吸着及び脱着を切り替える。Cu2+の濃度及びpHは、Cu-ISE及びpH電極で測定する。
【0061】
COにより引き起こされるCu2+吸脱着プロセスを、図9に示すように、Cu-ISE及びpH電極でのモニター下、星型PDMAEMA及びCu(NOを含む混合溶液にN及びCOを交互にバブリングすることで示した。初めに、Nをバブリングして吸着平衡に到達させ、溶液から大気COを除く。COを溶液にバブリングすると、pH値は速やかに低下し、数秒の間に遊離のCu2+のパーセンテージが、100%近くにまで上昇する。これは、DMAEMA単位がプロトン化し、ポリマー-金属錯体から解離するそのプロセスが非常に速いプロセスであること、及び、ほぼすべてのキレート化されたCu2+イオンが遊離のイオンとして放出されていることを示唆している。Cu2+の再吸着は、Nを溶液に再度数分間パージし、溶解したCOを除いた際に達せられ、遊離のCu2+イオンのパーセンテージは、初めの平衡溶液におけるそれと同一程度にまで減少する。COによるプロトン化及びNによる脱プロトン化のプロセスは、前にドロー溶質(draw solutes)として、PDMAEMAについて報告されているが(例えば、Cai,Y.ら、Chemical Communications, 2013. 49(75):p.8377-8379を参照されたい。)、この材料が、水処理において、重金属又は汚染物質を除く、再生可能な吸着材として使用され得る、という報告はない。単一相プロセスを支持し、吸着がおよそ2分以内に達成され、吸脱着サイクルが他の吸着材よりもはるかに速いおよそ4分以内に完結する。図9に示すように、吸脱着サイクルは幾度も繰り返すことが可能で、測定したCu2+濃度の値のちょっとした揺れは、より濃縮された溶液へと繋がる、長時間の溶媒を通じてのガスバブリングのために起こる、溶媒の揮発のためである。このデモンストレーションにおいて、COは、数分内に吸脱着サイクルを切り替えるその能力を示し、それはしばしば数十分又は数時間さえかかるか、さらなる二相分離工程を必要とする、酸又は強いキレート剤による、標準的なヒドロゲル又は官能基化された膜及び他の二相分離系からの従来の金属イオンの回収よりもはるかに速く、より簡便で、環境に優しい。
【0062】
実施例6
液相の、ポリマーに基づく保持による、CO補助によるCu2+の分離を示すために、90mLの0.1mMCu(NO溶液を、10mLの30.0mg/mLの星型PDMAEMAと混合し、pHを5.5に調節する。混合溶液を、針を通じてのN又はCOいずれかのバブリングの下、5kDaの名目上の分子量限界(NMWL)を有するミリポア製ポリエーテルスルホン限外ろ過膜を通じ、ろ過する。ろ過溶液の体積を測定して、ろ過物のセル溶液に対する体積比である、ろ過因子Zを決定し、ろ過物中のCu2+の濃度を、硝酸によりおよそpH1~2に調節し、すべてのCu2+が、水酸化又は吸着されていないことを確実にした後、Cu-ISEにより測定する。残余分の体積及びCu2+の濃度を、ろか物中の体積及びCu2+の量から計算する。
【0063】
CO補助LPRを、図11に示すように、保持プロフィルを得るN又はCOバブリングのいずれかの下、5kDaの限外ろ過膜を通じて、同一の濃度を有する2つの同一の100mLのCu(NO星型PDMAEMAとの混合溶液をろ過することで、示した。Nを溶液にパージすると、多くの金属イオンがポリマーに吸着され、膜に保持される。一方、COパージの下では、Cu2+イオンは遊離しており、膜を通じてろ過され得る。N/COガスバブリングにより達せられる異なる保持により、CO補助LPR法により、廃水からCu2+を除去し及び予備濃縮する能力が証明される。この実施例において、CO及びNは、大気圧下、針を通じて、直接溶液中にバブリングされ、一方、はるかに低いpH及び速い吸着/脱離速度が、より高圧でより速いパージ速度を有する工業用プラントにおいて、予期され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10a)】
図10b)】
図11