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特許7129711エッチング液、補給液および銅配線の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】エッチング液、補給液および銅配線の形成方法
(51)【国際特許分類】
   C23F 1/18 20060101AFI20220826BHJP
   H05K 3/06 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
C23F1/18
H05K3/06 N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020009907
(22)【出願日】2020-01-24
(65)【公開番号】P2021116449
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2021-02-09
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114488
【氏名又は名称】メック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜口 仁美
(72)【発明者】
【氏名】仁頃 丈二郎
【合議体】
【審判長】平塚 政宏
【審判官】佐藤 陽一
【審判官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-193602(JP,A)
【文献】特開2014-224303(JP,A)
【文献】特開2009-221596(JP,A)
【文献】特開2013-104104(JP,A)
【文献】特開2009-079284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅のエッチング液であって、
前記エッチング液は、酸と、酸化性金属イオンと、5員環を有する複素芳香族化合物(A)と、5~7員環を有する脂肪族複素環式化合物(B)と、分子内に第三級または第四級窒素を含むカチオン性ポリマーと、グリコールエーテル類および/またはグリコール類を含み、
前記5員環を有する複素芳香族化合物(A)は、環を構成するヘテロ原子として窒素原子を1つ以上有する複素芳香族化合物であり、
前記5~7員環を有する脂肪族複素環式化合物(B)は、環を構成するヘテロ原子として窒素原子を1つ以上有し、かつアミノ基含有置換基で置換された脂肪族複素環式化合物であり、
前記グリコールエーテル類および/またはグリコール類の濃度は0.1~5g/Lであることを特徴とするエッチング液。
【請求項2】
前記酸が、塩酸であることを特徴とする請求項1に記載のエッチング液。
【請求項3】
前記酸化性金属イオンが、第二銅イオンであることを特徴とする請求項1または2に記載のエッチング液。
【請求項4】
前記5員環を有する複素芳香族化合物(A)が、イミダゾール化合物、ピラゾール化合物、トリアゾール化合物、およびテトラゾール化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のエッチング液。
【請求項5】
前記5~7員環を有する脂肪族複素環式化合物(B)が、ピロリジン化合物、ピペリジン化合物、ピペラジン化合物、ホモピペラジン化合物、およびヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のエッチング液。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のエッチング液を連続または繰り返し使用する際に、前記エッチング液に添加する補給液であって、
前記補給液は、5員環を有する複素芳香族化合物(A)と、5~7員環を有する脂肪族複素環式化合物(B)と、分子内に第三級または第四級窒素を含むカチオン性ポリマーを含む水溶液であり、
前記5員環を有する複素芳香族化合物(A)は、環を構成するヘテロ原子として窒素原子を1つ以上有する複素芳香族化合物であり、
前記5~7員環を有する脂肪族複素環式化合物(B)は、環を構成するヘテロ原子として窒素原子を1つ以上有し、かつアミノ基含有置換基で置換された脂肪族複素環式化合物であることを特徴とする補給液。
【請求項7】
銅層のエッチングレジストで被覆されていない部分をエッチングする銅配線の形成方法であって、
請求項1~5のいずれかに記載のエッチング液を用いてエッチングすることを特徴とする銅配線の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅のエッチング液とその補給液、および銅配線の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造において、フォトエッチング法で銅配線パターンを形成する場合、エッチング液として塩化鉄系エッチング液、塩化銅系エッチング液、アルカリ性エッチング液などが用いられている。これらのエッチング液を使用すると、サイドエッチングとよばれるエッチングレジスト下の銅が配線パターンの側面から溶解する場合があった。即ち、エッチングレジストでカバーされることによって、本来エッチングで除去されないことが望まれる部分(すなわち、銅配線部分)が、エッチング液により除去されて、当該銅配線の底部から頂部になるに従い幅が細くなる現象が生じていた。特に銅配線パターンが微細な場合、このようなサイドエッチングはできる限り少なくしなければならない。このサイドエッチングを抑制するために、5員環を有する複素芳香族化合物であるアゾール化合物が配合されたエッチング液が提案されている(特許文献1~4)。また、サイドエッチングを抑制するために、5~7員環を有する脂肪族複素環式化合物が配合されたエッチング液も提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-330572号公報
【文献】特開2009-221596号公報
【文献】特開2013-104104号公報
【文献】特開2018-193602号公報
【文献】特開2014-224303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、市場では、サイドエッチングの抑制効果を持ちつつ、銅配線のファインパターンの形成に優れたエッチング液が求められている。上記のような特許文献で開示されたエッチング液では、一定のサイドエッチングの抑制効果が期待されるが、これらの中でも高性能と判断される特許文献4で開示されたエッチング液では、ライン/スペース=13μm/7μmの20μmのピッチパターン領域(ファイン部)と、ライン/スペース=22μm/18μmの40μmのピッチパターン領域(ラフ部)とが混在したピッチパターンでのファインパターンの形成が達成できていることが具体的に開示されているが、これよりも微細な(狭い)ピッチパターン領域でのファインパターンの形成は達成できていなかった。
【0005】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、ファイン部とラフ部が混在した微細なピッチパターン領域に対するファインパターンの形成に優れるエッチング液とその補給液、および銅配線の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、銅のエッチング液であって、前記エッチング液は、酸と、酸化性金属イオンと、5員環を有する複素芳香族化合物(A)と、5~7員環を有する脂肪族複素環式化合物(B)と、分子内に第三級または第四級窒素を含むカチオン性ポリマーを含み、前記5員環を有する複素芳香族化合物(A)は、環を構成するヘテロ原子として窒素原子を1つ以上有する複素芳香族化合物であり、前記5~7員環を有する脂肪族複素環式化合物(B)は、環を構成するヘテロ原子として窒素原子を1つ以上有する脂肪族複素環式化合物であるエッチング液に関する。
【0007】
本発明は、前記エッチング液を連続または繰り返し使用する際に、前記エッチング液に添加する補給液であって、前記補給液は、5員環を有する複素芳香族化合物(A)と、5~7員環を有する脂肪族複素環式化合物(B)と、分子内に第三級または第四級窒素を含むカチオン性ポリマーを含む水溶液であり、前記5員環を有する複素芳香族化合物(A)は、環を構成するヘテロ原子として窒素原子を1つ以上有する複素芳香族化合物であり、前記5~7員環を有する脂肪族複素環式化合物(B)は、環を構成するヘテロ原子として窒素原子を1つ以上有する脂肪族複素環式化合物である補給液に関する。
【0008】
本発明は、銅層のエッチングレジストで被覆されていない部分をエッチングする銅配線の形成方法であって、前記エッチング液を用いてエッチングする銅配線の形成方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエッチング液は、酸と、酸化性金属イオンと、5員環を有する複素芳香族化合物(A)と、5~7員環を有する脂肪族複素環式化合物(B)と、分子内に第三級または第四級窒素を含むカチオン性ポリマーを含み、前記5員環を有する複素芳香族化合物(A)は、環を構成するヘテロ原子として窒素原子を1つ以上有する複素芳香族化合物であり、前記5~7員環を有する脂肪族複素環式化合物(B)は、環を構成するヘテロ原子として窒素原子を1つ以上有する脂肪族複素環式化合物である。本発明のエッチング液は、ファイン部とラフ部が混在した微細なピッチパターン領域に対して、均一な被膜形成を行うことで、サイドエッチングの抑制に加え、直線性に優れたファインパターンを形成できる。よって、本発明のエッチング液は、レジストを設けた銅表面の銅配線パターンを形成する用途として有用である。
【0010】
また、本発明のエッチング液は、ファイン部とラフ部が混在した微細なピッチパターン領域に対して、ファインパターンの形成が優れることに加え、ラフパターンの形成も良好となるが、本発明のエッチング液が、グリコールエーテル類および/またはグリコール類を含む場合、ラフパターンの形成にとくに優れる。通常、ファイン部とラフ部では、エッチング液の流速が異なるため、皮膜形成と深さ方向のエッチングに差異が生じ易い傾向にある。例えば、流速の速いラフ部では、皮膜がボトムまで形成されにくくなるので、ラフパターンのボトム部でのくびれ(逆台形形状)が発生しやすい。このようなボトム部のくびれが生じた場合、基板上部からボトム幅が観察できないため製品管理し難いことや、実装時などにトップ部に圧力がかかった際、トップ部の角がかけるなどして、実装の不具合や異物発生となるリスクがある。本発明のエッチング液は、ファイン部とラフ部のエッチング性に差がない(ファインパターンとラフパターンの形状が略同一の形状となる)ことから、上記の問題を回避でき得るため、有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<銅のエッチング液>
本発明の銅のエッチング液は、酸と、酸化性金属イオンと、5員環を有する複素芳香族化合物(A)と、5~7員環を有する脂肪族複素環式化合物(B)と、分子内に第三級または第四級窒素を含むカチオン性ポリマーを含み、前記5員環を有する複素芳香族化合物(A)は、環を構成するヘテロ原子として窒素原子を1つ以上有する複素芳香族化合物であり、前記5~7員環を有する脂肪族複素環式化合物(B)は、環を構成するヘテロ原子として窒素原子を1つ以上有する脂肪族複素環式化合物である。なお、本発明の銅のエッチング液における「銅」は、銅からなるものであってもよく、銅合金からなるものであってもよい。
【0012】
<酸>
本発明の酸は、無機酸および有機酸から適宜選択可能である。前記無機酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸などが挙げられる。前記有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、安息香酸、グリコール酸などが挙げられる。前記酸の中では、エッチング速度の安定性および銅の溶解安定性の観点から、塩酸が好ましい。前記酸は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
前記酸の濃度は、7~180g/Lであることが好ましく、18~110g/Lであることがより好ましい。酸の濃度が7g/L以上の場合は、エッチング速度が速くなるため、銅を速やかにエッチングすることができる。また、酸の濃度が180g/L以下の場合は、銅の溶解安定性が維持されるとともに、作業環境の悪化を抑制できる。
【0014】
<酸化性金属イオン>
本発明の酸化性金属イオンは、金属銅を酸化できる金属イオンであればよく、例えば、第二銅イオン、第二鉄イオンなどが挙げられる。サイドエッチングを抑制する観点、およびエッチング速度の安定性の観点から、酸化性金属イオンとして第二銅イオンを用いることが好ましい。前記酸化性金属イオンは、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
前記酸化性金属イオンは、酸化性金属イオン源を配合することによって、エッチング液中に含有させることができる。例えば、酸化性金属イオン源として第二銅イオン源を用いる場合、その具体例としては、塩化銅、硫酸銅、臭化銅、有機酸の銅塩、水酸化銅などが挙げられる。例えば、酸化性金属イオン源として第二鉄イオン源を用いる場合、その具体例としては、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、有機酸の鉄塩などが挙げられる。
【0016】
前記酸化性金属イオンの濃度は、10~300g/Lであることが好ましく、10~250g/Lであることがより好ましく、15~220g/Lであることがさらに好ましく、20~200g/Lであることがよりさらに好ましい。酸化性金属イオンの濃度が10g/L以上の場合は、エッチング速度が速くなるため、銅を速やかにエッチングすることができる。また、酸化性金属イオンの濃度が300g/L以下の場合は、銅の溶解安定性が維持される。
【0017】
<5員環を有する複素芳香族化合物(A)>
本発明の5員環を有する複素芳香族化合物(A)は、環を構成するヘテロ原子として窒素原子を1つ以上有する複素芳香族化合物である。前記5員環を有する複素芳香族化合物(A)は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
前記5員環を有する複素芳香族化合物(A)は、構造安定性および酸性液に対する溶解性の観点から、環を構成するヘテロ原子として窒素のみを有するものが好ましい。このような5員環を有する複素芳香族化合物(A)としては、例えば、イミダゾール骨格を有するイミダゾール化合物、ピラゾール骨格を有するピラゾール化合物、トリアゾール骨格を有するトリアゾール化合物、テトラゾール骨格を有するテトラゾール化合物などのアゾール化合物が挙げられる。
【0019】
前記イミダゾール化合物としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールなどのイミダゾール類、ベンゾイミダゾール、2-メチルベンゾイミダゾール、2-ウンデシルベンゾイミダゾール、2-フェニルベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾールなどのベンゾイミダゾール類などが挙げられる。これらの中でも、ベンゾイミダゾールが好ましい。
【0020】
前記ピラゾール化合物としては、例えば、ピラゾール、3-メチルピラゾール、1-エチルピラゾール、3-アミノピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3-アミノ-1-メチルピラゾール、4-クロロピラゾール1,3,5-トリメチルピラゾールなどが挙げられる。
【0021】
前記トリアゾール化合物としては、例えば、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、5-フェニル-1,2,4-トリアゾール、5-アミノ-1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1-メチル-ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾールなどが挙げられる。これらの中でも、ベンゾトリアゾールが好ましい。
【0022】
前記テトラゾール化合物としては、例えば、1H-テトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、5-メチル-1H-テトラゾール、5-フェニル-1H-テトラゾール、5-メルカプト-1H-テトラゾール、1-フェニル-5-メルカプト-1H-テトラゾール、1-シクロヘキシル-5-メルカプト-1H-テトラゾール、5,5’-ビ-1H-テトラゾール、およびこれらのアンモニウム塩またはNa塩、Zn塩、Ca塩、K塩などの金属塩などが挙げられる。
【0023】
前記アゾール化合物の中でも、アンダーカットの抑制効果が高い観点から、テトラゾール化合物が好ましく、1H-テトラゾール、5-メチル-1H-テトラゾール、5-フェニル-1H-テトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、5,5’-ビ-1H-テトラゾール、およびこれらのアンモニウム塩または金属塩などがより好ましく、1H-テトラゾール、5-メチル-1H-テトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、およびこれらのアンモニウム塩または金属塩がさらに好ましい。これらのテトラゾール化合物は、導体パターンのトップ部から側面に薄く均一に保護皮膜を形成できると推定される。
【0024】
前記5員環を有する複素芳香族化合物(A)の濃度は、0.1~50g/Lであることが好ましく、0.1~15g/Lであることがより好ましく、0.2~10g/Lであることがさらに好ましい。前記5員環を有する複素芳香族化合物(A)の濃度が0.1g/L以上であれば、サイドエッチング(とくにトップ幅の減少)を確実に抑制できる。一方、前記5員環を有する複素芳香族化合物(A)の濃度が50g/L以下の場合は、エッチング速度の低下を防ぐことができ、かつエッチングされるべき部分を確実にエッチングできるため、ショート(絶縁不良)の発生を防ぐことができる。
【0025】
<5~7員環を有する脂肪族複素環式化合物(B)>
本発明の5~7員環を有する脂肪族複素環式化合物(B)は、環を構成するヘテロ原子として窒素を1つ以上有する脂肪族複素環式化合物である。前記5~7員環を有する脂肪族複素環式化合物(B)は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
前記5~7員環を有する脂肪族複素環式化合物(B)は、銅配線の直線性を低下させることなくサイドエッチングを抑制するために、環を構成するヘテロ原子として窒素のみを有するものが好ましい。また、前記5~7員環を有する脂肪族複素環式化合物(B)は、エッチング液中の安定性の観点から、環を構成する窒素の数が3以下の脂肪族複素環式化合物が好ましい。
【0027】
前記脂肪族複素環式化合物の具体例としては、例えば、ピロリジン骨格を有するピロリジン化合物、ピペリジン骨格を有するピペリジン化合物、ピペラジン骨格を有するピペラジン化合物、ホモピペラジン骨格を有するホモピペラジン化合物、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン骨格を有するヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン化合物等が例示できる。前記列挙した化合物は、脂肪族複素環が、アミノ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基、ニトロ基、ニトロソ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、アルコキシ基、ハロゲン基、アゾ基、シアノ基、イミノ基、ホスフィノ基、チオール基、スルホ基等の置換基で置換されていてもよい。
【0028】
前記ピロリジン化合物は、ピロリジン骨格を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、下記式(I)に示すピロリジン化合物が例示できる。
【化1】
(一般式(I)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素、アミノ基含有置換基、又はアミノ基含有置換基を除く炭素数1~10の炭化水素誘導基を示す。これら置換基は互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【0029】
前記アミノ基とは、-NH、-NHR、及び-NRR’の何れかを示し、前記R、R’はそれぞれ独立に炭素数1~10の炭化水素誘導基を示し、RとR’は互いに結合して飽和環構造を形成していてもよい。前記アミノ基含有置換基とは、アミノ基からなる置換基、及び炭素数1~10の炭化水素誘導基にて一部の水素がアミノ基に置き換わった置換基の何れかを示す。サイドエッチングを効果的に抑制し、かつ銅配線の直線性をより向上させる観点から、アミノ基からなる置換基、又は炭素、水素及び窒素からなるアミノ基含有置換基が好ましい。以下のアミノ基、及びアミノ基含有置換基も同様である。
【0030】
前記炭化水素誘導基とは、炭化水素基にて一部の炭素又は水素が他の原子又は置換基に置き換わっていてもよいものを示す。炭化水素誘導基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アリール基、アセチル基、フェニル基、ヒドロキシエトキシメチル基、ヒドロキシエトキシエチル基、ヒドロキシエトキシプロピル基等が例示でき、サイドエッチングを効果的に抑制し、かつ銅配線の直線性をより向上させる観点から、炭素及び水素からなる炭化水素誘導基が好ましい。以下の炭化水素誘導基も同様である。
【0031】
前記ピロリジン化合物の具体例としては、例えば、ピロリジン、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン、インドリン、1-イソピロピル-3-ヒドロキシピロリジン、1,2-シクロヘキサンジカルボキシイミド、1-ブチルピロリジン、1-エチルピロリジン、2-(2-ヒドロキシエチル)-1-メチルピロリジン、2-メチルピロリジン、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン、1-(3-アミノプロピル)ピロリジン、1-(2-アミノエチル)ピロリジン、3-アミノピロリジン、2-アミノメチル-1-エチルピロリジン、2-(2-アミノエチル)-1-メチルピロリジン、3-(ジメチルアミノ)ピロリジン、3-(メチルアミノ)ピロリジン、1-(2-ピロリジニルメチル)ピロリジン、3-(ジエチルアミノ)ピロリジン、1,1’-ジメチル-3-アミノピロリジン、3-(エチルアミノ)ピロリジン、1-メチル-2-(1-ピペリジノメチル)ピロリジン、4-(1-ピロリジニル)ピペリジン、3-(N-アセチル-N-メチルアミノ)ピロリジン、3-(N-アセチル-N-エチルアミノ)ピロリジン、2-ピロリジンカルボキサミド、3-ピロリジンカルボキサミド、3-アセトアミドピロリジン、1-エチル-2-ピロリジンカルボキサミド、3-アミノ-1-(tert-ブトキシカルボニル)ピロリジン、3-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)ピロリジン、1-アミノ-2-(メトキシメチル)ピロリジン、1-ベンジル-3-アミノピロリジン、1-ベンジル-3-(ジメチルアミノ)ピロリジン、1-ベンジル-3-(メチルアミノ)ピロリジン、1-ベンジル-3-(エチルアミノ)ピロリジン、3,4-ジアミノ-1-ベンジルピロリジン、1-ベンジル-3-アセトアミドピロリジン、(1s,6s)-2,8-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン等が挙げられる。
【0032】
前記ピペリジン化合物は、ピペリジン骨格を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、下記式(II)に示すピペリジン化合物が例示できる。
【化2】
(一般式(II)中、R~R11は、それぞれ独立に水素、アミノ基含有置換基、又はアミノ基含有置換基を除く炭素数1~10の炭化水素誘導基を示す。これら置換基は互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【0033】
前記ピペリジン化合物の具体例としては、例えば、ピペリジン、1-メチルピペリジン、2-メチルピペリジン、3-メチルピペリジン、4-メチルピペリジン、4-メチルピペリジン、3,5-ジメチルピペリジン、2-エチルピペリジン、4-ピペリジンカルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロキノリン、デカヒドロイソキノリン、2,6-ジメチルピペリジン、2-ピペリジンメタノール、3-ピペリジンメタノール、4-ピペリジンメタノール、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-アミノピペリジン、1-アミノピペリジン、3-アミノピペリジン、4-(アミノメチル)ピペリジン、4-アミノ-1-メチルピペリジン、2-(アミノメチル)ピペリジン、3-(アミノメチル)ピペリジン、4-ピペリジンカルボキサミド、2-ピペリジンカルボキサミド、1-(2-アミノエチル)ピペリジン、4-アセトアミドピペリジン、3-アセトアミドピペリジン、4-アミノ-1-イソプロピルピペリジン、1-(3-アミノプロピル)-2-メチルピペリジン、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、2,2’-ビピペリジン、4,4’-ビピペリジン、4-ピペリジノピペリジン、4-アミノ-1-ピペリジンカルボン酸エチル、4-アミノ-1-ベンジルピペリジン、4-(2-アミノエチル)-1-ベンジルピペリジン、4-アセトアミド-1-ベンシルピペリジン等が挙げられる。
【0034】
前記ピペラジン化合物は、ピペラジン骨格を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、下記式(III)に示すピペラジン化合物が例示できる。
【化3】
(一般式(III)中、R12~R17は、それぞれ独立に水素、アミノ基含有置換基、又はアミノ基含有置換基を除く炭素数1~10の炭化水素誘導基を示す。これら置換基は互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【0035】
前記ピペラジン化合物の具体例としては、例えば、ピペラジン、1-メチルピペラジン、2-メチルピペラジン、1-アリルピペラジン、1-イソブチルピペラジン、1-ヒドロキシエトキシエチルピペラジン、1-フェニルピペラジン、1-アミノピペラジン、1-アミノエチルピペラジン、N-(2-アミノエチルピペラジン)、1-アミノ-4-メチルピペラジン、1-エチルピペラジン、1-ピペラジンエタノール、1-ピペラジンカルボン酸エチル、1-ホルミルピペラジン、1-プロピルピペラジン、1-アセチルピペラジン、1-イソプロピルピペラジン、1-シクロペンチルピペラジン、1-シクロヘキシルピペラジン、1-(2-メトキシエチル)ピペラジン、1-ピペロニルピペラジン、1-(ジフェニルメチル)ピペラジン、2-ピペラジノン、1,4-ジメチルピペラジン、1-メチル-3-フェニルピペラジン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、1-(2-ジメチルアミノエチル)-4-メチルピペラジン、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、2,6-ジメチルピペラジン、1,4-ジホルミルピペラジン、1-(4-アミノフェニル)-4-メチルピペラジン、1,4-ジアセチル-2,5-ピペラジンジオン、1-メチル-4-(1,4’-ビピペリジン-4-イル)ピペラジン、1-(4-アミノフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)ピペラジン、1,4-ジメチルピペラジン-2-オン、1,4-ジエチルピペラジン-2-オン、1,4-ジメチルピペラジン-2,3-ジオン、2-ピペラジンカルボン酸、トリエチレンジアミン等が挙げられる。
【0036】
前記ホモピペラジン化合物は、ホモピペラジン骨格を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、下記式(IV)に示すホモピペラジン化合物が例示できる。
【化4】
(一般式(IV)中、R18~R24は、それぞれ独立に水素、アミノ基含有置換基、又はアミノ基含有置換基を除く炭素数1~10の炭化水素誘導基を示す。これら置換基は互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【0037】
前記ホモピペラジン化合物の具体例としては、例えば、ホモピペラジン、1-メチルホモピペラジン、1-ホルミルホモピペラジン、1,4-ジメチルホモピペラジン、4-メチル-1-ホモピペラジンジチオカルボン酸、1-アセチルホモピペラジン、1-ブチリルホモピペラジン等が挙げられる。
【0038】
前記ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン化合物は、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン骨格を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、下記式(V)に示すヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン化合物が例示できる。
【化5】
(一般式(V)中、R25~R30は、それぞれ独立に水素、アミノ基含有置換基、又はアミノ基含有置換基を除く炭素数1~10の炭化水素誘導基を示す。これら置換基は互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【0039】
前記ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン化合物の具体例としては、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリアジン、ヘキサヒドロ-2,4,6-トリメチル-1,3,5-トリアジン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリス(3-ジメチルアミノプロピル)-1,3,5-トリアジン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリプロピル-1,3,5-トリアジン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリエチル-1,3,5-トリアジン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリイソプロピル-1,3,5-トリアジン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリベンジル-1,3,5-トリアジン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)-1,3,5-トリアジン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリニトロ-1,3,5-トリアジン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリニトロソ-1,3,5-トリアジン、ヘキサヒドロ-2,4,6-トリメチル-1,3,5-トリニトロ-1,3,5-トリアジン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアクリロイル-1,3,5-トリアジン、ヘキサメチレンテトラミン等が挙げられる。
【0040】
前記5~7員環を有する脂肪族複素環式化合物(B)の濃度は、ファイン部とラフ部が混在した微細なピッチパターン領域に対するファインパターンの形成を向上させる観点から、0.01~10g/Lであることが好ましく、0.02~5g/Lであることがより好ましく、0.05~3g/Lであることがさらに好ましい。
【0041】
<第三級または第四級窒素を含むカチオン性ポリマー>
本発明の第三級または第四級窒素を含むカチオン性ポリマーは、公知のものが使用でき、例えば、ジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合体などのジシアンジアミド・ポリアルキレンポリアミン重縮合体、ジシアンジアミド・ホルムアルデヒド重縮合体、ジシアンジアミド・トリエチレンテトラミン重縮合体などのジシアンアミド系カチオン性ポリマー;ポリアリルアミン、アリルアミン・ジメチルアリルアミン共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重縮合体、ジアリルアミン酢酸塩・二酸化硫黄共重合体、ジアリルメチルエチルアンモニウムエチルサルフェイト・二酸化硫黄共重合体、ポリアリルアミンアミド硫酸塩、アリルアミン酢酸塩・ジアリルアミン酢酸塩共重合体、メチルジアリルアミンアミド硫酸塩重合体、ジアリルアミンアミド硫酸塩・マレイン酸共重合体などのポリアリルアミン系カチオン性ポリマー;ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合体などの脂肪族モノアミンとエピハロヒドリン化合物との重縮合体などが挙げられる。これらの中でも、直線性に優れた銅配線を形成できる観点から、前記第三級または第四級窒素を含むカチオン性ポリマーは、ジシアンジアミド・ジエチレントリアミン重縮合体などのジシアンジアミド・ポリアルキレンポリアミン重縮合体、ジシアンジアミド・ホルムアルデヒド重縮合体、シアンジアミド・トリエチレンテトラミン重縮合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重縮合体が好ましい。前記第三級または第四級窒素を含むカチオン性ポリマーは、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
前記第三級または第四級窒素を含むカチオン性ポリマーの濃度は、ファイン部とラフ部が混在した微細なピッチパターン領域に対するファインパターンの形成を向上させる観点から、0.001~10g/Lであることが好ましく、0.005~5g/Lであることがより好ましく、0.01~2g/Lであることがさらに好ましい。
【0043】
<グリコールエーテル類および/またはグリコール類>
本発明のエッチング液には、ファイン部とラフ部が混在した微細なピッチパターン領域に対して、ファインパターンの形成に優れ、ラフパターンの形成にも優れる観点から、グリコールエーテル類および/またはグリコール類を含むことが好ましい。前記グリコールエーテル類および/またはグリコール類は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
前記グリコールエーテル類としては、公知のものが使用でき、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
【0045】
前記グリコール類としては、公知のものが使用でき、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルプロピレングリコール、ジメチルジグリコール、メチルエチルジグリコール、メチルジプロピレングリコール、メチルプロピレントリグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。これらの中でも、ジエチレングリコール、メチルプロピレングリコール、メチルジプロピレングリコール、メチルエチルジグリコールが好ましい。
【0046】
前記グリコールエーテル類および/またはグリコール類の濃度は、ファイン部とラフ部が混在した微細なピッチパターン領域に対するファインパターンとラフパターンの形成を向上させる観点から、0.01~30g/Lであることが好ましく、0.1~10g/Lであることがより好ましく、0.1~5g/Lであることがさらに好ましい。
【0047】
本発明のエッチング液には、上述した成分以外にも、本発明の効果を妨げない程度に他の成分を添加してもよい。前記他の成分としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチルペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどの脂肪族非環式化合物;カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤などの成分安定剤を添加してもよい。なお、前記他の成分を添加する場合、その濃度は通常、0.001~5g/L程度である。
【0048】
前記エッチング液は、前記の各成分を水に溶解させることにより、容易に調製することができる。前記水としては、イオン性物質および不純物を除去した水が好ましく、例えば、イオン交換水、純水、超純水などが好ましい。
【0049】
前記エッチング液は、各成分を使用時に所定の濃度になるように配合してもよく、濃縮液を調製しておき使用直前に希釈して使用してもよい。前記エッチング液の使用方法は、特に限定されないが、サイドエッチングを効果的に抑制するには、後述するようにスプレーを用いてエッチングすることが好ましい。また、使用時のエッチング液の温度は、特に制限はないが、生産性を高く維持した上で、サイドエッチングを効果的に抑制するには20~55℃で使用することが好ましい。
【0050】
本発明の補給液は、本発明のエッチング液を連続または繰り返し使用する際に、前記エッチング液に添加する補給液であって、前記5員環を有する複素芳香族化合物(A)と、前記5~7員環を有する脂肪族複素環式化合物(B)と、前記分子内に第三級または第四級窒素を含むカチオン性ポリマーを含む水溶液である。前記補給液中の各成分は、上述した本発明のエッチング液に配合できる成分と同様である。前記補給液を添加することにより、前記エッチング液の各成分比が適正に保たれるため、上述した本発明のエッチング液の効果を安定して維持できる。
【0051】
また、本発明の補給液には、塩酸などの酸が含まれていてもよい。また、前記補給液には、塩化第二銅などの酸化性金属イオンが含まれていてもよい。また、前記補給液には、前記成分以外に、エッチング液に添加する他の成分が配合されていてもよい。尚、これらの前記補給液に含まれていてもよい成分は、前記補給液に含ませずに、本発明のエッチング液を連続または繰り返し使用する際に、本発明のエッチング液に直接添加することもできる。
【0052】
本発明の銅配線の形成方法は、銅層のエッチングレジストで被覆されていない部分をエッチングする銅配線の形成方法において、上述した本発明のエッチング液を用いてエッチングすることを特徴とする。これにより、上述したように、ファイン部とラフ部が混在した微細なピッチパターン領域に対して、優れた銅配線のファインパターンが形成できる。また、本発明の銅配線の形成方法を採用した銅配線形成工程において、本発明のエッチング液を連続または繰り返し使用する場合は、上述した本発明の補給液を添加しながらエッチングすることが好ましい。前記エッチング液の各成分比が適正に保たれるため、上述した本発明のエッチング液の効果を安定して維持できるからである。
【0053】
本発明の銅配線の形成方法では、前記銅層のエッチングレジストで被覆されていない部分に、前記エッチング液をスプレーにより噴霧することが好ましい。サイドエッチングを効果的に抑制できるからである。スプレーする際、ノズルは特に限定されず、扇形ノズル、充円錐ノズル、2流体ノズルなどが使用できる。
【0054】
スプレーでエッチングする場合、スプレー圧は、0.04MPa以上が好ましく、0.08MPa以上がより好ましい。スプレー圧が0.04MPa以上であれば、保護皮膜を適切な厚みで銅配線の側面に形成できる。これにより、サイドエッチングを効果的に防止できる。なお、前記スプレー圧は、エッチングレジストの破損防止の観点から0.40MPa以下が好ましい。
【実施例
【0055】
次に、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0056】
表1~2に示す組成の各エッチング液を調製し、後述する条件でエッチングを行い、後述する評価方法により各項目について評価した。なお、表1~2に示す組成の各エッチング液において、残部はイオン交換水である。また、表1~2に示す塩酸の濃度は、塩化水素としての濃度である。
【0057】
(使用した試験基板)
銅層の厚みが8μmの銅/ポリイミド積層板(東レフィルム加工製、商品名「PI-38N-CCS-08EO」)を用意し、この銅層上にフォトリソグラフィー法(レジスト剤(東京応化製「PMER-P-RZ30」))によってエッチングレジストパターンを形成した。エッチングレジストパターンは、厚み約4μm、ライン/スペース=11μm/7μmの18μmピッチパターン領域(ファイン部)と、ライン/スペース=16μm/9μmの25μmピッチパターン領域(ラフ部)とが、混在したレジストパターンを作製した。
【0058】
(エッチング条件)
エッチングは、扇形ノズル(いけうち社製、商品名「ISVV9020」)を使用して、スプレー圧0.20MPa、処理温度35℃の条件で行った。処理時間については、18μmピッチにおいて、銅配線のボトム幅が8~15μmになる時間とした。エッチング後、水洗、乾燥を行って、以下に示す評価を行った。
【0059】
(ファインパターンの評価)
エッチング処理した各試験基板を、塩酸(塩化水素濃度:7重量%)を用いて、扇形ノズル(いけうち社製、商品名:ISVV9020)でスプレー圧0.15MPa、処理時間40秒で保護皮膜を除去し、アセトンに20秒間(もしくは、3重量%水酸化ナトリウム水溶液60秒間)浸漬し、エッチングレジストを除去した。そして、各試験基板の一部を切断し、これを冷間埋め込み樹脂に埋め込み、配線の断面を観察できるように研磨加工をおこない、断面観察用のサンプルを作製した。配線の断面観察は、光学顕微鏡を用いて、画像撮影をし、配線のトップ幅およびボトム幅の計測をおこなった。この時、計測は、n=2以上おこない、トップ幅およびボトム幅は、この平均値とした。尚、表中のB-Tは、銅配線のボトム幅-トップ幅の値である。表中のファイン部の欄は、ライン/スペース=11μm/7μmの18μmピッチパターン領域のB-Tの値が0≦B-T≦2μmの場合を○、それ以外の場合を×とした。ファイン部の直線性はボトム幅を50点測長し、それらの標準偏差を割り出し、0.50以下の場合を〇(直線性の合格基準)、それ以外の場合を×と判断した。また、ラフ部の欄は、ライン/スペース=19μm/9μmの25μmのピッチパターン領域のB-Tの値が0以上であれば、ラフパターンのボトム部でのくびれが発生し難い観点から好ましい。さらに、ファイン部のB-Tからラフ部のB-Tを引いた数値を疎密差と定義し、この数値が0に近いほど、ファイン部とラフ部のエッチング性に差ないと判断できるため、好ましい。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】