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  • 特許-着火構造体 図1
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  • 特許-着火構造体 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】着火構造体
(51)【国際特許分類】
   C10L 11/06 20060101AFI20220826BHJP
   F23Q 13/00 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
C10L11/06
F23Q13/00 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021199887
(22)【出願日】2021-12-09
(62)【分割の表示】P 2020122513の分割
【原出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022022388
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2021-12-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520265734
【氏名又は名称】土橋 太一
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】特許業務法人バリュープラス
(72)【発明者】
【氏名】土橋 太一
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】実公昭26-009451(JP,Y1)
【文献】特表2005-532438(JP,A)
【文献】特開2019-137824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 5/00
F23Q 13/00
C10L 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木炭を立て掛けて着火する用途の着火構造体であって、木片、合成木材、又は合成紙の棒材でなる組立用棒材と、この組立用棒材の長手方向の両端のそれぞれから中央に向かった位置で高さ方向上面と下面にそれぞれ2箇所に形成されて、上下に互いに当接して交差する前記組立用棒材同士の横方向の位置を拘束する棒材拘束部とを備え、少なくとも2本の前記組立用棒材同士を水平方向に配置した層を上下に複数層組み上げて、前記組立用棒材同士の端部によって木炭を立て掛けるコーナー部と、このコーナー部を構成する該組立用棒材の端部同士の間によって木炭を立て掛ける中央部と、該複数層の該組立用棒材群によって挿入口とが形成された構成の着火構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木炭の着火に有用な着火構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1(特開2018-178068号公報)では、複数の木炭に容易に着火することを目的として、複数の木炭により、空気の吸入と燃焼ガスの排出を行う通気路を構成した木炭構造物を提案している。
【0003】
上記特許文献1は、「木炭は着火性が悪く」と同明細書(0003)でも記載されているように、例え空気の吸入と燃焼ガスの排出を行う通気路を複数の「木炭」で立体的に組み上げて構成したとしても、そもそもの木炭への着火が悪いのだから容易とまではならない。
【0004】
一方、木炭に着火させるためのいわゆる着火剤が存在する。この着火剤は、メタノールをゲル化したもの、メタアルデヒド等の固形の炭化水素を錠剤としたもの、木質のブロックに油脂やパラフィンを含浸させたものの三種が主に知られている。
【0005】
しかし、上記の着火剤のうち、メタノールを主成分としたものは揮発性が高いと共に毒性があり、一方、メタアルデヒドを主剤としたものも毒性があり、パラフィン含侵木材ブロックは突然の爆発の危険性はないものの、強い火力と煙が発生し、どれも安心、安全に使用するには難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-178068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする問題は、複数の木炭の着火には時間がかかり、また市販の化学品でなる着火剤を用いて着火するには安全面に疑問があるという点に鑑みてなされたものであり、木炭の着火に有用な物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、木炭を立て掛けて着火する用途の着火構造体であって、木片、合成木材、又は合成紙の棒材でなる組立用棒材と、この組立用棒材の長手方向の両端のそれぞれから中央に向かった位置で高さ方向上面と下面にそれぞれ2箇所に形成されて、上下に互いに当接して交差する前記組立用棒材同士の横方向の位置を拘束する棒材拘束部とを備え、少なくとも2本の前記組立用棒材同士を水平方向に配置した層を上下に複数層組み上げて、前記組立用棒材同士の端部によって木炭を立て掛けるコーナー部と、このコーナー部を構成する該組立用棒材の端部同士の間によって木炭を立て掛ける中央部と、該複数層の該組立用棒材群によって挿入口とが形成された構成とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明の着火構造体は、少なくとも2本の組立用棒材を配置した層を組み上げ、このとき、棒材拘束部により下に互いに当接して交差する組立用棒材同士の横方向の位置を拘束して、着火構造体を組み立てる。そして、例えば着火構造体の下部に位置する組立用棒材に着火する。本発明の着火構造体は組立用棒材が可燃性で、例えば木片を採用すれば、木炭に較べれば容易に着火可能である。
【0010】
すなわち、本発明の着火構造体は、下部に位置する組立用棒材に着火すると、互いの組立用部材同士から構造内部に空気が取り込まれて燃焼を助長する一方、構造内部は下方から上方への気流が生じていわゆる煙突効果を得ることができる。この煙突効果が生じることで、通常だとふいごやうちわで空気を供給しなければならないところ、こうした作業を伴うことなく木炭に着火ができる。また、本発明は、棒材拘束部を有することで、前記煙突効果が生じる着火構造体の全体形状が木炭に十分着火するまで崩れることなく長く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の着火構造体を示す図である。
図2】本発明の着火構造体を作成する組立キットの一例を示す図である。
図3】本発明の着火構造体の使用直前の筐体の状態を示す図である。
図4】本発明の着火構造体の組立後で点火前の状態を示す図である。
図5】本発明の着火構造体の組立後で木炭を立て掛けた状態を示す図である。
図6】(a)~(c)は各々、本発明の着火構造体における組立用棒材及び棒材拘束部の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、複数の木炭に、市販の化学品でなる着火剤を用いないで容易に着火すると共に、木炭を立て掛けて着火する用途の着火構造体であり、木片、合成木材、又は合成紙の棒材でなる組立用棒材と、この組立用棒材の長手方向の両端のそれぞれから中央に向かった位置で高さ方向上面と下面にそれぞれ2箇所に形成されて、上下に互いに当接して交差する前記組立用棒材同士の横方向の位置を拘束する棒材拘束部とを備え、少なくとも2本の前記組立用棒材同士を水平方向に配置した層を上下に複数層組み上げて、前記組立用棒材同士の端部によって木炭を立て掛けるコーナー部と、このコーナー部を構成する該組立用棒材の端部同士の間によって木炭を立て掛ける中央部と、該複数層の該組立用棒材群によって挿入口とが形成された構成とされている。
【0013】
ここで、可燃性の棒材とは、木炭より容易に点火できるという意味であり、例えば木片や合成紙を想定している。また、少なくとも2本の組立用棒材が配置された層が複数層組み上げるとは、例えば着火構造体の平面視で井桁状とされていることを意味している。また、棒材拘束部は、例えば組立用棒材が配置された各層で配置位置から移動しなければよく、例えば可燃性の米のりなどで接着してもよい。
【0014】
さらに、本発明は、上記構成において、棒材拘束部が組立用棒材に形成されていてもよい。棒材拘束部が組立用棒材に形成されるとは、例えば該棒材拘束部として凹部を形成することが想定される。こうすることで、点火後に木片に火が燃え移って行くときに全体が崩れてしまうことを防止でき、木炭が十分着火するまで煙突効果が維持できる。
【0015】
また、本発明の着火構造体は、上記構成に組み立てられるように複数の組立用棒材が収納可能とされ、構造体に組み立てた該組立用棒材の点火用に用いる可燃性の筐体を有する構成としてもよい。可燃性の筐体は、組立用棒材よりもさらに点火が容易な材質、例えばダンボールなど紙材が想定される。こうすることで、複数の組立用棒材をコンパクトに収納しておくことができ、使用時(木炭着火時)には筐体から取り出し、その後、筐体自身を点火用材料とすることができるから、その場にゴミが残留することがない。
【実施例
【0016】
以下、本発明の具体例について図1図6面を参照して説明する。図において、1は本発明の着火構造体である。着火構造体1は、本例の場合、可燃性の例えば紙製の筐体2と、この筐体2に収納される複数の可燃性の組立用棒材としての木片3、例えば木片3に形成された棒材拘束部としての凹部3aを備えてなる。
【0017】
筐体2は、例えば郵便により郵送可能なサイズで構成され、木片3を組み立てた後には図3に示すように展開して丸めて点火材として使用する。つまり、筐体2は、木炭着火前は木片3の収納、木炭着火時には点火材、として例えばバーベキュー後に持ち帰るゴミが発生することがなく、構成すべてを無駄なく利用することができる。
【0018】
木片3は、本例では、上記のとおり筐体2が郵送可能なサイズで構成されることから、該筐体2に収納できるサイズと本数が用いられる。木片3は、例えば端面の高さ22mm×幅18mmの角材を、例えば長手方向に180mmの長さで均等に切断して12本用意している。
【0019】
また、木片3は、市販の木製角材であれば材質は限定しないが、木炭よりは可燃性に富んだ例えばマツ、スギ、ヒノキなど針葉樹のものを採用する他、合成木材を採用してもよいほか、木材ではなく合成紙など可燃材(燃やして有害ではないもの)を採用してもよい。その他、木片3は、上記寸法に限定されず、適宜必要なサイズであってもよいが、基本的に家庭用バーベキュー等で用いて好適なサイズを採用することが望ましい。
【0020】
図1図5に示す木片3は、長手方向に、例えば、該木片3の長手方向両端のそれぞれから長手方向中央に向かって約50mmの位置で、高さ方向の上面と下面にそれぞれ2個所(1本の木片3につき合計4箇所)に、凹部3aが形成されている。凹部3aは、木片3の高さに対して約20%程度(約5mm)の深さとされ、凹部内の幅は木片3の幅より若干広くした、例えば20mmとされている。なお、棒材拘束部は、前記凹部3aは前記寸法条件に限らず、また、凹部3aのほかに後述する図6に示すような態様であっても構わないし、凹部3aのような嵌合構造を採らず、互いを米のり(燃やして有害でないもの)などで接合する場合も含むこととする。
【0021】
着火構造体1は、本例の場合、図1に示すように、設置面に、2本の木片3,3を該木片3,3の端部が同方向となるように長手方向平行に間隔を開けて同一平面上に並べた層が形成されている。これをA層と言うこととする。
【0022】
また、着火構造体1は、このA層の上部に、さらに他の2本の木片3,3の端部を、前記A層の2本の木片3,3の端部方向とは例えば90度回転させた他方向に向け、A層の2本の木片3,3の凹部3a,3aに嵌合させることで長手方向平行に間隔を開けて同一平面上に並べた層が形成されている。これをB層とする。
【0023】
そして、上記A層、B層を、上下方向の交互に重ねて本例の場合は全6層として図1及び図4,5のような状態(平面視で井桁状)となる。木炭Cは、A層、B層を構成する木片3同士の端部で形成されるコーナー部1aと、このコーナー部1を構成する木片3の端部同士の間に形成される中央部1bとに立て掛ける。
【0024】
本例では、例えば、木炭Cコーナー部1a、中央部1bに立て掛けた後に筐体2を展開して丸めて、この状態の筐体2の先端に点火し、点火した側から上下方向に交互に重ねたA層、B層の木片3群で形成される中央の挿入口1Aに挿入する。
【0025】
なお、例えば、筐体2を丸めて挿入口1Aに挿入し、その後、全6層のうち下層で木片6同士の隙間から該筐体2に点火してもよい。この場合、木炭Cは、点火した筐体2を挿入口1Aに挿入した後に、コーナー部1a、中央部1bに立て掛ければよい。
【0026】
筐体2に点火した火は、しばらくすると、下層の木片3に燃え移り、しだいに下層から挿入口1A内におけるいわゆる煙突効果により該筐体2が上方へ燃えつつ、この火が木片3に次々に燃え移り、木炭Cに燃え移って着火する。
【0027】
木炭Cが着火するプロセスとしては、着火構造体1において、筐体2から木片3に火が燃え移ると、下方の火によって生じる上昇気流により組み上げた木片3同士の隙間から構造外の新たな空気が流入し、一方、構造外から構造内へ流入した空気は中央部1b内において上方へ向かう気流が生じて火の勢いが助長される(煙突効果)。このとき、着火構造体1が木片3の偏った燃え方で容易に全体形状が崩れてしまうと前記煙突効果が低減することとなるが、本発明では棒材拘束部が形成されているので、全体形状が長く維持され、煙突効果が持続し、筐体2に点火した後は、うちわやふいごで空気を供給することなく木炭Cに着火することができる。
【0028】
なお、木片3に棒材拘束部を形成した構成としては、例えば図6(a)に示すように側面視で波型の凹部3aと凸部3bを緩やかに波型に連続させた形状、例えば図6(b)に示すように側面視で上側の凸部3bは上層の木片3の互いの対向面と反対面の位置決めを、下側の凸部3bは下層の木片3の互いの対向面の位置決めを行えるようにした形状、例えば図6(c)に示すように木片3自身が燃えやすく、また全体として通気効率を向上させるために孔3cを形成した形状、であってもよい。
【0029】
また、上記実施例でいうA層、B層の各層における木片3の数や配置は、各層において少なくとも挿入口1Aが形成され、かつ木炭Cを立て掛けるコーナー部1aや中央部1bが形成されるのであれば、特に限定しない。また、層の上下方向の数(上記実施例では6層)や、層の数に起因した木片3の数や配置も上記の条件を満たす限り限定しない。
【符号の説明】
【0030】
1 着火構造体
1A 挿入口
1a コーナー部
1b 中央部
2 筐体
3 木片(組立用棒材)
3a 凹部(棒材拘束部)
3b 凸部
3c 孔
C 木炭
図1
図2
図3
図4
図5
図6