(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】自動車用ブレーキ制御システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
B60T 10/02 20060101AFI20220826BHJP
F16D 57/00 20060101ALI20220826BHJP
B60T 1/08 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
B60T10/02
F16D57/00
B60T1/08
(21)【出願番号】P 2022076239
(22)【出願日】2022-05-02
【審査請求日】2022-05-02
(31)【優先権主張番号】202110686585.7
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508279166
【氏名又は名称】吉林大学
(74)【代理人】
【識別番号】100152180
【氏名又は名称】大久保 秀人
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 春宝
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼孔▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】▲銭▼旭
(72)【発明者】
【氏名】唐▲玉驍▼
(72)【発明者】
【氏名】金▲開雕▼
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭64-014560(JP,U)
【文献】特開平10-119741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 1/00-7/10
B60T 10/00-11/34
F16D 49/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローターとステーターによって油圧式リターダーを構成するブレーキ出力軸と、
ステーター内に設けられ、流量センサーが取り付けられたオイルの流入口と流出口を有する作動室と、
作動室の流入口に接続され、空気圧ρ
airによって作動室内にオイルを充填する、圧力センサーが設けられたオイルタンクと、
オイルタンクに接続され、ECUコントローラーからの空気圧制御信号によって、オイルタンク内に空気を充填する空気圧制御弁群と、
空気圧制御弁群に接続され、目標速度が予め決められた複数のブレーキギヤが設定されたブレーキギヤスイッチに接続されたECUコントローラーと、
ECUコントローラーに接続され、ECUコントローラーからのエアポンプ制御信号によって、オイルタンク内に空気を充填する、エアポンプモーターが取り付けられたエア貯留タンクと、
作動室の流出口に接続され、ECUコントローラーからの流量調整信号によって、開口面積dを調節して作動室の流出口から流出するオイルの流量Q
outを制御する調整式スロットルバルブと、
調整式スロットルバルブに接続され、オイルタンクまでのオイルの流路に取り付けられた、油温センサー及び熱交換器と、
から構成され、
ECUコントローラーは、
路面情報及び勾配情報からなる道路情報と、速度情報及び車両重量情報からなる車両情報と、を収集する情報収集モジュールと、
情報収集モジュールによって収集された情報、選択されているブレーキギヤのギヤ信号、圧力センサー及び油温センサーからのオイルの圧力情報及び油温情報、空気圧比例圧力制御弁からの油圧フィードバック信号、調整式スロットルバルブからの油温フィードバック信号、作動室におけるオイルの流入量
及び流出量の
1以上の情報をもとに、最適なブレーキモードを選択し、制動力、制動トルクT
r、作動室のオイル充填率q
0を算出するための演算処理を行う演算・制御モジュールと、
選択されたブレーキモードにしたがって各ブレーキモードにおける減速を制御する実行モジュールと、
を含み、
演算・制御モジュールは、
車速ν
aが、選択されているブレーキギ
ヤに設定されている目標速度ν
d以上の場合、
初期減速モード(mode1)を選択し、
当該初期減速モード(mode1)を選択後、
オイルの温度(T)が150℃以上の場合、
最大制動エネルギーモード(Mode2)を選択し、
オイルの温度(T)が150℃を下回るまで、当該最大制動エネルギーモード(Mode2)を選択し続け、
当該初期減速モード(mode1)または当該最大制動エネルギーモード(Mode2)を選択後、
オイルの温度(T)が150℃未満の場合、
フル減速モード(mode3)を選択し、
車速ν
aが、選択されているブレーキギヤに設定されている目標速度ν
d未満の場合、
定速モード(mode4)を選択し、
当該フル減速モード(mode3)または当該定速モード(mode4)を選択後、車速ν
a
が、選択されているブレーキギヤに設定されている目標速度ν
d
以上の場合、初期減速モード(mode1)を選択するため、ブレーキモードの選択を繰り返し、
実行モジュールは、演算・制御モジュールにおいて選択されたブレーキモードが、
初期減速モード(mode1)の場合、
空気圧制御信号を出力して、空気圧比例圧力制御弁を開き、オイルタンク内の空気圧P
airが上がることで、作動室内のオイル充填量が増え、迅速に制動トルクを発生させ、
最大制動エネルギーモード(Mode2)の場合、
流量調整信号を出力して、調整式スロットルバルブを開き、調整式スロットルバルブの開口面積dを最大値に維持するとともに、急速排出弁を開き、オイルタンク内の空気圧P
airが下がることで、作動室内のオイル充填量が減り、オイルの温度(T)を低下させながら、車速を減速させ、
フル減速モード(mode3)の場合、
空気圧制御信号と流量調整信号を同時に出力して、調整式スロットルバルブと急速排出弁を開いてオイルタンク内の空気圧P
airを下げつつ、空気圧比例圧力制御弁を開いてオイルタンク内の空気圧P
airを上げることで、作動室のオイル充填率をq
0=1に維持して、最大制動力を得て、
定速モード(mode4)の場合、
空気圧制御信号と流量調整信号を同時に出力して、調整式スロットルバルブを開いてオイルタンク内の空気圧P
airを下げつつ、空気圧比例圧力制御弁を開いてオイルタンク内の空気圧P
airを上げることで、作動室のオイル充填率q
0を、目標速度ν
dに対する目標オイル充填率q
dに近づけ、目標速度ν
dを維持する、
ように構成されていることで、
自動車の制動を制御することを特徴とする自動車用ブレーキ制御システム。
【請求項2】
ローターとステーターによって油圧式リターダーを構成するブレーキ出力軸と、
ステーター内に設けられ、流量センサーが取り付けられたオイルの流入口と流出口を有する作動室と、
作動室の流入口に接続され、空気圧ρ
airによって作動室内にオイルを充填する、圧力センサーが設けられたオイルタンクと、
オイルタンクに接続され、ECUコントローラーからの空気圧制御信号によって、オイルタンク内に空気を充填する急速排出弁、空気圧比例圧力制御弁、空圧式切替弁と、
急速排出弁、空気圧比例圧力制御弁、空圧式切替弁に接続され、目標速度が予め決められた複数のブレーキギヤが設定されたブレーキギヤスイッチに接続されたECUコントローラーと、
ECUコントローラーに接続され、ECUコントローラーからのエアポンプ制御信号によって、オイルタンク内に空気を充填する、エアポンプモーターが取り付けられたエア貯留タンクと、
作動室の流出口に接続され、ECUコントローラーからの流量調整信号によって、開口面積dを調節して作動室の流出口から流出するオイルの流量Q
outを制御する調整式スロットルバルブと、
調整式スロットルバルブに接続され、オイルタンクまでのオイルの流路に取り付けられた、油温センサー及び熱交換器と、
から構成され、
ECUコントローラーは、
路面情報及び勾配情報からなる道路情報と、速度情報及び車両重量情報からなる車両情報と、を収集する情報収集モジュールと、
情報収集モジュールによって収集された情報、選択されているブレーキギヤのギヤ信号、圧力センサー及び油温センサーからのオイルの圧力情報及び油温情報、空気圧比例圧力制御弁からの油圧フィードバック信号、調整式スロットルバルブからの油温フィードバック信号、作動室におけるオイルの流入量
及び流出量の
1以上の情報をもとに、最適なブレーキモードを選択し、制動力、制動トルクT
r、作動室のオイル充填率q
0を算出するための演算処理を行う演算・制御モジュールと、
選択されたブレーキモードにしたがって各ブレーキモードにおける減速を制御する実行モジュールと、
を含み、
演算・制御モジュールは、
車速ν
aが、選択されているブレーキギ
ヤに設定されている目標速度ν
d以上の場合、
初期減速モード(mode1)を選択し、
当該初期減速モード(mode1)を選択後、
オイルの温度(T)が150℃以上の場合、
最大制動エネルギーモード(Mode2)を選択し、
オイルの温度(T)が150℃を下回るまで、当該最大制動エネルギーモード(Mode2)を選択し続け、
当該初期減速モード(mode1)または当該最大制動エネルギーモード(Mode2)を選択後、
オイルの温度(T)が150℃未満の場合、
フル減速モード(mode3)を選択し、
車速ν
aが、選択されているブレーキギヤに設定されている目標速度ν
d未満の場合、
定速モード(mode4)を選択し、
当該フル減速モード(mode3)または当該定速モード(mode4)を選択後、車速ν
a
が、選択されているブレーキギヤに設定されている目標速度ν
d
以上の場合、初期減速モード(mode1)を選択するため、ブレーキモードの選択を繰り返し、
実行モジュールは、演算・制御モジュールにおいて選択されたブレーキモードが、
初期減速モード(mode1)の場合、
空気圧制御信号を出力して、空気圧比例圧力制御弁を開き、オイルタンク内の空気圧P
airが上がることで、作動室内のオイル充填量が増え、迅速に制動トルクを発生させ、
最大制動エネルギーモード(Mode2)の場合、
流量調整信号を出力して、調整式スロットルバルブを開き、調整式スロットルバルブの開口面積dを最大値に維持するとともに、急速排出弁を開き、オイルタンク内の空気圧P
airが下がることで、作動室内のオイル充填量が減り、オイルの温度(T)を低下させながら、車速を減速させ、
フル減速モード(mode3)の場合、
空気圧制御信号と流量調整信号を同時に出力して、調整式スロットルバルブと急速排出弁を開いてオイルタンク内の空気圧P
airを下げつつ、空気圧比例圧力制御弁を開いてオイルタンク内の空気圧P
airを上げることで、作動室のオイル充填率をq
0=1に維持して、最大制動力を得て、
定速モード(mode4)の場合、
空気圧制御信号と流量調整信号を同時に出力して、調整式スロットルバルブを開いてオイルタンク内の空気圧P
airを下げつつ、空気圧比例圧力制御弁を開いてオイルタンク内の空気圧P
airを上げることで、作動室のオイル充填率q
0を、目標速度ν
dに対する目標オイル充填率q
dに近づけ、目標速度ν
dを維持する、
ように構成されていることで、
自動車の制動を制御することを特徴とする自動車用ブレーキ制御システム。
【請求項3】
ローターとステーターによって油圧式リターダーを構成するブレーキ出力軸と、
ステーター内に設けられ、流量センサーが取り付けられたオイルの流入口と流出口を有する作動室と、
作動室の流入口に接続され、空気圧ρ
airによって作動室内にオイルを充填する、圧力センサーが設けられたオイルタンクと、
オイルタンクに接続され、ECUコントローラーからの空気圧制御信号によって、オイルタンク内に空気を充填する急速排出弁、空気圧比例圧力制御弁、空圧式切替弁と、
急速排出弁、空気圧比例圧力制御弁、空圧式切替弁に接続され、目標速度が予め決められた複数のブレーキギヤが設定されたブレーキギヤスイッチに接続されたECUコントローラーと、
ECUコントローラーに接続され、ECUコントローラーからのエアポンプ制御信号によって、オイルタンク内に空気を充填する、エアポンプモーターが取り付けられたエア貯留タンクと、
作動室の流出口に接続され、ECUコントローラーからの流量調整信号によって、開口面積dを調節して作動室の流出口から流出するオイルの流量Q
outを制御する調整式スロットルバルブと、
調整式スロットルバルブに接続され、オイルタンクまでのオイルの流路に取り付けられた、油温センサー及び熱交換器と、
から構成される自動車用ブレーキを制御する方法において、
路面情報及び勾配情報からなる道路情報と、速度情報及び車両重量情報からなる車両情報と、を収集する情報収集モジュールと、
情報収集モジュールによって収集された情報、選択されているブレーキギヤのギヤ信号、圧力センサー及び油温センサーからのオイルの圧力情報及び油温情報、空気圧比例圧力制御弁からの油圧フィードバック信号、調整式スロットルバルブからの油温フィードバック信号、作動室におけるオイルの流入量
及び流出量の
1以上の情報をもとに、最適なブレーキモードを選択し、制動力、制動トルクT
r、作動室のオイル充填率q
0を算出するための演算処理を行う演算・制御モジュールと、
選択されたブレーキモードにしたがって各ブレーキモードにおける減速を制御する実行モジュールと、
を含むECUコントローラーが、
演算・制御モジュールにおいて、
車速ν
aが、選択されているブレーキギ
ヤに設定されている目標速度ν
d以上の場合、
初期減速モード(mode1)を
選択し、
当該初期減速モード(mode1)を選択後、
オイルの温度(T)が150℃以上の場合、
最大制動エネルギーモード(Mode2)を
選択し、
オイルの温度(T)が150℃を下回るまで、当該最大制動エネルギーモード(Mode2)を選択し続け、
当該初期減速モード(mode1)または当該最大制動エネルギーモード(Mode2)を選択後、
オイルの温度(T)が150℃未満の場合、
フル減速モード(mode3)を
選択し、
車速ν
aが、選択されているブレーキギヤに設定されている目標速度ν
d未満の場合、
定速モード(mode4)を
選択し、
当該フル減速モード(mode3)または当該定速モード(mode4)を選択後、車速ν
a
が、選択されているブレーキギヤに設定されている目標速度ν
d
以上の場合、初期減速モード(mode1)を選択するため、ブレーキモードの選択を繰り返し、
それぞれ選択したときに、
実行モジュールは、演算・制御モジュールにおいて選択されたブレーキモードが、
初期減速モード(mode1)の場合、
空気圧制御信号を出力して、空気圧比例圧力制御弁を開き、オイルタンク内の空気圧P
airが上がることで、作動室内のオイル充填量が増え、迅速に制動トルクを発生させ、
最大制動エネルギーモード(Mode2)の場合、
流量調整信号を出力して、調整式スロットルバルブを開き、調整式スロットルバルブの開口面積dを最大値に維持するとともに、急速排出弁を開き、オイルタンク内の空気圧P
airが下がることで、作動室内のオイル充填量が減り、オイルの温度(T)を低下させながら、車速を減速させ、
フル減速モード(mode3)の場合、
空気圧制御信号と流量調整信号を同時に出力して、調整式スロットルバルブと急速排出弁を開いてオイルタンク内の空気圧P
airを下げつつ、空気圧比例圧力制御弁を開いてオイルタンク内の空気圧P
airを上げることで、作動室のオイル充填率をq
0=1に維持して、最大制動力を得て、
定速モード(mode4)の場合、
空気圧制御信号と流量調整信号を同時に出力して、調整式スロットルバルブを開いてオイルタンク内の空気圧P
airを下げつつ、空気圧比例圧力制御弁を開いてオイルタンク内の空気圧P
airを上げることで、作動室のオイル充填率q
0を、目標速度ν
dに対する目標オイル充填率q
dに近づけ、目標速度ν
dを維持する、
ことで自動車の制動を制御することを特徴とする自動車用ブレーキ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ブレーキ制御システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車は重要な輸送手段であり、長距離の移動や物資の輸送に幅広く利用されている。
公共交通の分野では、高速道路の多くが、山や丘、台地などに建設されていると言われているが、そのような建設場所では、長い下り坂があり、地域によっては数キロ、数十キロにわたって連続した下り坂がある。
このような下り坂を走行する際には、頻繁に、あるいは継続的に、ブレーキをかける必要があるが、商業的に使用される自動車であれば、その多くは重量物を積載するため、長距離にわたって、継続して車両の速度を減速させるための大きな制動力が必要になる。
【0003】
従来の摩擦によるブレーキは、ブレーキ時に発生する温度が高く、安全な減速の妨げになり、また、発生した排熱から、熱エネルギーを回収して再利用することはできない。
ブレーキシステムには、大きな制動トルク、速い制動応答性、連続または頻繁なブレーキ操作や長い下り坂でも発揮できる優れた安定性が求められる。
しかし、既存の油圧によるブレーキ制御システムは、通常、単純な制御方法しかもたないため、様々な条件下では、上記したブレーキシステムの要求を全て満たすことは困難である。
【0004】
ところで、特許文献1には、排気ブレーキやリターダブレーキ等の補助制動装置を備えた連結車両の補助制動装置の制御装置が開示されている。
この発明は、排気ブレーキやリターダブレーキの補助制動装置を備えたトラクタとトレーラの連結車両にあって、運転席に主操作スイッチとサービスブレーキとリターダブレーキの連動をオン・オフするスイッチと、トレーラブレーキと補助ブレーキの連動をオン・オフするスイッチを設けたもので、運転者は、これらのスイッチを予め設定することによって、車両の走行状態に応じて補助制動装置を最も有効に利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1にかかる発明は、車両の走行状態に応じて補助制動装置を最も有効に利用することができるものであるが、運転者が、予め設定した、主操作スイッチとサービスブレーキとリターダブレーキの連動をオン・オフするスイッチと、トレーラブレーキと補助ブレーキの連動をオン・オフするスイッチとによって実現するものであり、事前の設定に依存し、運転者の設定によっては、補助制動装置を十分に機能させることができない。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、ブレーキ効率が高い油圧リターダに、高速応答の機械的仕組みと電気的信号を統合した自動車用ブレーキ制御システムを適用し、運転者の設定に依存せず、最大制動トルクの持続時間と応答性を改善できる車両の自動車用ブレーキ制御システム及び制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来技術における問題点を解決するために、本発明は、以下の技術的な解決策を講じている。
なお、本発明の説明において、「内」、「下」、「上」など方位と位置関係を指示する用語は、図面に示される方位や位置関係に基づくものである。
また、方向または位置関係は、本発明を説明し、説明を簡略化するためのものであり、参照されるデバイスまたは要素が特定の方向を有し、特定の方向で構築または操作されなければならないことを示したり示唆したりするものではない。
さらに、「第1」、「第2」などの用語は、説明を区別するためにのみ使用され、相対的な重要性を示したり、暗示することを意味するものではない。
【0009】
本発明にかかる自動車用ブレーキ制御システムは、
ローターとステーターによって油圧式リターダーを構成するブレーキ出力軸と、
ステーター内に設けられ、流量センサーが取り付けられたオイルの流入口と流出口を有する作動室と、
作動室の流入口に接続され、空気圧ρairによって作動室内にオイルを充填する、圧力センサーが設けられたオイルタンクと、
オイルタンクに接続され、ECUコントローラーからの空気圧制御信号によって、オイルタンク内に空気を充填する空気圧制御弁群と、
空気圧制御弁群に接続され、目標速度が予め決められた複数のブレーキギヤが設定されたブレーキギヤスイッチに接続されたECUコントローラーと、
ECUコントローラーに接続され、ECUコントローラーからのエアポンプ制御信号によって、オイルタンク内に空気を充填する、エアポンプモーターが取り付けられたエア貯留タンクと、
作動室の流出口に接続され、ECUコントローラーからの流量調整信号によって、開口面積dを調節して作動室の流出口から流出するオイルの流量Qoutを制御する調整式スロットルバルブと、
調整式スロットルバルブに接続され、オイルタンクまでのオイルの流路に取り付けられた、油温センサー及び熱交換器と、
から構成され、
ECUコントローラーは、
路面情報及び勾配情報からなる道路情報と、速度情報及び車両重量情報からなる車両情報と、を収集する情報収集モジュールと、
情報収集モジュールによって収集された情報、選択されているブレーキギヤのギヤ信号、圧力センサー及び油温センサーからのオイルの圧力情報及び油温情報、空気圧比例圧力制御弁からの油圧フィードバック信号、調整式スロットルバルブからの油温フィードバック信号、作動室におけるオイルの流入量及び流出量の1以上の情報をもとに、最適なブレーキモードを選択し、制動力、制動トルクTr、作動室のオイル充填率q0を算出するための演算処理を行う演算・制御モジュールと、
選択されたブレーキモードにしたがって各ブレーキモードにおける減速を制御する実行モジュールと、
を含み、
演算・制御モジュールは、
車速νaが、選択されているブレーキギヤに設定されている目標速度νd以上の場合、
初期減速モード(mode1)を選択し、
当該初期減速モード(mode1)を選択後、
オイルの温度(T)が150℃以上の場合、
最大制動エネルギーモード(Mode2)を選択し、
オイルの温度(T)が150℃を下回るまで、当該最大制動エネルギーモード(Mode2)を選択し続け、
当該初期減速モード(mode1)または当該最大制動エネルギーモード(Mode2)を選択後、
オイルの温度(T)が150℃未満の場合、
フル減速モード(mode3)を選択し、
車速νaが、選択されているブレーキギヤに設定されている目標速度νd未満の場合、
定速モード(mode4)を選択し、
当該フル減速モード(mode3)または当該定速モード(mode4)を選択後、車速ν
a
が、選択されているブレーキギヤに設定されている目標速度ν
d
以上の場合、初期減速モード(mode1)を選択するため、ブレーキモードの選択を繰り返し、
実行モジュールは、演算・制御モジュールにおいて選択されたブレーキモードが、
初期減速モード(mode1)の場合、
空気圧制御信号を出力して、空気圧比例圧力制御弁を開き、オイルタンク内の空気圧Pairが上がることで、作動室内のオイル充填量が増え、迅速に制動トルクを発生させ、
最大制動エネルギーモード(Mode2)の場合、
流量調整信号を出力して、調整式スロットルバルブを開き、調整式スロットルバルブの開口面積dを最大値に維持するとともに、急速排出弁を開き、オイルタンク内の空気圧Pairが下がることで、作動室内のオイル充填量が減り、オイルの温度(T)を低下させながら、車速を減速させ、
フル減速モード(mode3)の場合、
空気圧制御信号と流量調整信号を同時に出力して、調整式スロットルバルブと急速排出弁を開いてオイルタンク内の空気圧Pairを下げつつ、空気圧比例圧力制御弁を開いてオイルタンク内の空気圧Pairを上げることで、作動室のオイル充填率をq0=1に維持して、最大制動力を得て、
定速モード(mode4)の場合、
空気圧制御信号と流量調整信号を同時に出力して、調整式スロットルバルブを開いてオイルタンク内の空気圧Pairを下げつつ、空気圧比例圧力制御弁を開いてオイルタンク内の空気圧Pairを上げることで、作動室のオイル充填率q0を、目標速度νdに対する目標オイル充填率qdに近づけ、目標速度νdを維持する、
ように構成されていることで、自動車の制動を制御することを特徴とする。
【0010】
本発明は、作動室の流入口に接続されているオイルタンクの空気圧ρair及び作動室の流出口に接続されている調整式スロットルバルブの開口面積dを調整することで、自動車用ブレーキ制御システムの最大制動力と応答時間を変化させ、ブレーキ時の条件により、常に最適なブレーキモードを選択することを実現し、自動車用ブレーキ制御システムの知能的利点を十分に発揮し、車両運行の安全性と経済性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】自動車用ブレーキ制御システムの構造を示す模式図
【
図2】自動車用ブレーキ制御システムの概要を示すブロック図
【
図3】ECUコントローラーの各モジュールの実行手順を示すフロー図
【
図5】自動車用ブレーキ制御システムを使用した車両の速度と制動トルクを分析した実施結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の具体的な実施形態を、添付の図面をもとに、以下に詳細に説明する。
以下の実施形態または添付図面は、本発明を説明するために使用されるが、本発明の範囲を限定するために使用されるものではない。
【0013】
本発明にかかる自動車用ブレーキ制御システムは、
図1に示すように、ブレーキ出力軸13と、ブレーキ出力軸13に接続されたECUコントローラー2を有する。
ブレーキ出力軸13は、ローター12と、ローター12に対応するステーター11を有する。ステーター11の内部には、オイルの流入口10と流出口15が設けられた作動室があり、流入口10と流出口15には、それぞれ流量センサーが取り付けられている。
【0014】
流入口10は、オイルタンク7に接続されている。
オイルタンク7は、空気圧制御弁群を経由してエア貯留タンク26に接続されている。
エア貯留タンク26には、オイルタンク7内のオイルを作動室に充填するためにオイルタンク7内に充填する空気を送り出すエアポンプモーター25が接続されている。
オイルタンク7には、圧力センサー8が設けられ、圧力センサー8と空気圧制御弁群は、ECUコントローラー2に接続されている。
流出口15は、調整式スロットルバルブ17、逆止弁18、熱交換器21を順に経由して、ECUコントローラー2に接続されている。
【0015】
逆止弁18と熱交換器21の間には、油温センサー20が設けられている。
調整式スロットルバルブ17と油温センサー20は、ECUコントローラー2に接続されている。
【0016】
ECUコントローラー2は、ブレーキギヤスイッチ1に接続されている。
ブレーキギヤスイッチ1は、5段階のブレーキギヤが予め設定されている。
ブレーキギヤスイッチ1のギヤ0は、目標速度が予め0km/hに設定されており、大型車を減速させるのに適している。
ブレーキギヤスイッチ1のギヤ1は、目標速度が予め15km/hに設定されており、長い坂道で、低速で大型車を減速させるのに適している。
ブレーキギヤスイッチ1のギヤ2は、目標速度が予め30km/hに設定されており、長い坂道で、中速で大型車を減速させるのに適している。
ブレーキギヤスイッチ1のギヤ3は、目標速度が予め45km/hに設定されており、短い坂道で、中速で大型車を減速させるのに適している。
ブレーキギヤスイッチ1のギヤ4は、目標速度が予め60km/hに設定されており、一定速度で大型車が走行するのに適している。
ブレーキギヤスイッチ1の5段階のブレーキギヤは、車両を操作する運転手が選択する。
各ギヤの目標速度、ギヤの段階数は、任意に設定できる。
【0017】
空気圧制御弁群は、空圧式切替弁3、空気圧比例圧力制御弁4、オイルタンク7内の空気を排出する急速排出弁5からなる。
急速排出弁5は、三方弁であり、急速排出弁5の第3ポートは、空気圧補充装置23に接続されている。
空気圧補充装置23とオイルタンク7の間には、一方向圧力弁が設けられている。
一方向圧力弁は、空気圧補充装置23側の空気圧がオイルタンク7内の空気圧より高くなると開く。
【0018】
ECUコントローラー2は、
図3に示すように、道路情報を収集する道路情報収集システム、車両情報を収集する車両情報収集システムを実行する情報収集モジュールを有する。
また、ECUコントローラー2は、
図3に示すように、演算・制御モジュール、実行モジュールを有する。
【0019】
ブレーキ出力軸13、ローター12、ステーター11は、油圧式リターダーを構成する。
油圧式リターダーの制動トルクが無くなると、車両を駆動する運動エネルギーを作動油の内部エネルギー(熱)に変換する。
この過程で、油圧式リターダーは、ヒーターと同じように、作動油を急速に加熱し、減速時に発生する運動エネルギーを吸収して、内部エネルギー(熱)に変え、減速とブレーキの目的を達成する。
ブレーキ制御方法は、
図2及び
図3に示すとおり、次のステップにより実施される。
【0020】
(ステップ1)
ECUコントローラー2は、情報収集モジュール、演算・制御モジュール、実行モジュールを有する。
ECUコントローラー2は、
図3に示すように、収集した道路の路面情報と勾配情報を、道路情報として、演算・制御モジュールに送信する。
ECUコントローラー2は、
図3に示すように、収集した車両の車速情報、車両重量情報を、車両情報として、演算・制御モジュールに送信する。
【0021】
(ステップ2)
ECUコントローラー2は、
図2に示すように、現在選択されているブレーキギヤのギヤ信号(5段階のブレーキギヤのうちの1つ)、道路情報、車両情報と合わせて、圧力センサー8及び油温センサー20からのオイルの圧力情報及び油温情報のほか、空気圧比例圧力制御弁4からの油圧フィードバック信号9及び調整式スロットルバルブ17からの油温フィードバック信号22をもとに、演算・制御モジュールにおいて、後記する各ブレーキモードにおける制動力(f=ma)、制動トルクT
r、作動室のオイル充填率q
0を算出するための演算処理(車両動力学演算、車両熱力学演算)を行う。
また、ECUコントローラー2は、作動室の流入口10と流出口15にそれぞれ設けられた流量センサーから、ステーター11内部の作動室に充填されるオイルの流入量と作動室から流出するオイルの流出量の情報をもとに、演算・制御モジュールにおいて、後記する各ブレーキモードにおける制動力(f=ma)、制動トルクT
r、作動室のオイル充填率q
0を算出するための演算処理(車両動力学演算、車両熱力学演算)を行う。
【0022】
(ステップ3)
ECUコントローラー2は、目標速度ν
dに対する車速ν
a、オイルの温度(T)をもとに、演算・制御モジュールにおいて、ECU制御により最適なブレーキモードを選択する。
ECU制御による最適なブレーキモードの選択は、
図4の手順で行われる。
【0023】
具体的には、速度情報として得られた車速νaが、現在選択されているブレーキギヤにおいて予め設定されているブレーキギヤスイッチ1の目標速度νdを超えている場合、減速制御段階として、Mode1からMode3の3種類のブレーキモードによって減速を制御する。
3種類のブレーキモードによる制動力(f=ma)、制動トルクTr、作動室のオイル充填率q0は、ECUコントローラー2の演算・制御モジュールにおいて、収集した各種の情報をもとに、以下の数式に基づく演算処理(車両動力学演算、車両熱力学演算)を行い、算出する。
【0024】
【0025】
Gχは、車両重量の走行方向の分力を表す。
FRは、転がり抵抗を表す。
FLχは、空気抵抗を表す。
Trは、液力緩速器のためのブレーキトルクの車輪端での等価ブレーキ力(制動トルク)を表す。
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
Gは、車の重量を表す。
θは、車両の走行勾配を表す。
fRは、ローリングアシスト係数を表す。
ναは、車両の走行速度(km/h)を表す。
CDは、耐風性係数を表す。
Aは、風上面積を表す。
ρairは、空気圧を表す。
【0031】
以上の計算式から、車両全体の制動力に関する演算処理は、次の式6のとおり表すことができる。
【0032】
【0033】
制動トルクTrは、式7のように表すことができる。
【0034】
【0035】
q0は、作動室のオイル充填率を表す。
λは、自動車用ブレーキ制御システムの油圧係数を表す。
ρoilは、オイルの媒体密度を表す。
gは、重力加速度を表す。
nrは、ブレーキ軸回転数を表す。
Dは、作動室の最大円弧半径を表す。
q0は、式8のように表すことができる。
【0036】
【0037】
Qin、Qoutは、それぞれ作動室の流入口10及び流出口15におけるオイルの流入量、流出量を表す。
Vcは、ステーター11の作動室の容積を表す。
【0038】
(ステップ4)
ECUコントローラー2は、ECU制御に基づいて選択されたブレーキモードにしたがい、
図3に示す実行モジュールにおけるブレーキ制御を行う。
具体的には、ECUコントローラー2は、作動室の流入口10に接続されているオイルタンク7の空気圧ρ
airを調節する空気圧比例圧力制御弁4を制御し、オイルタンク7の空気圧ρ
air(
図3の「流入口制御気圧」)を増減させることで、作動室の流入口10に流入するオイルの流量Q
inを調節する。
ECUコントローラー2は、作動室の流出口15に接続されている調整式スロットルバルブ17を制御し、調整式スロットルバルブ17の開口面積d(
図3の「流出口開口面積」)を増減させることで、作動室の流出口15から流出するオイルの流量Q
outを調節する。
これにより、作動室にオイルが充填され、車両の冷却システムの安全性を確保(オイルの温度を150℃以下)しながら、迅速に制動トルクT
rが出力される。
【0039】
ブレーキモードは、Mode1からMode4まで4種類あり、そのうち、減速を制御するModeは、
図4に示すように、次のMode1からMode3である。
【0040】
(Mode1)
コールドスタートからなどのオイルの温度が低い状態の初期減速モード(Mode1)では、ECUコントローラー2は、空気圧制御信号6を出力して、空気圧制御弁群を制御する。
つまり、ECUコントローラー2は、空気圧制御信号6を出力して、空気圧制御弁群である、空圧式切替弁3、空気圧比例圧力制御弁4、急速排出弁5のそれぞれの開度を調節する。
空気圧比例圧力制御弁4が開かれると、オイルタンク7に充填される空気量が増加してオイルタンク7内の空気圧Pairが上がり、ステーター11の作動室の流入口10に接続されているオイルタンク7の空気圧ρairが上がることで、作動室にオイルが充填され、迅速に制動トルクが発生する。
【0041】
制動トルクが発生する段階では、オイルの温度は低く、作動室のオイル充填率q0は低い。
そこで、ECUコントローラー2は、エアポンプ制御信号27を出力して、エア貯留タンク26を開き、空気圧補充装置23と共同してオイルタンク7内に空気が追加される。
オイルタンク7内の空気圧ρairが最大制御空気圧3.2barに到達すると、オイルタンク7内の空気圧を維持するため、作動室からのオイルの流出量を抑えるため、調整式スロットルバルブ17は最小に閉じる。
このときの自動車用ブレーキ制御システムの制動トルクTrと、作動室のオイル充填率q0は、以下の式で表すことができる。
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
(Mode2)
作動室のオイル充填率q
0が増加すると、ブレーキの制動力が連続的に増加して、熱交換率を超え、オイルの温度(T)が連続的に上昇することになる。
そして、オイルの温度(T)が150℃に近づくと、自動車用ブレーキ制御システムが出力する制動トルクT
rは最大になる。
しかし、車両の冷却システムを安全に作動させるためには、オイルの温度(T)が150℃以下になるように、減速を制御する必要がある。
そこで、
図4に示すように、オイルの温度(T)が150℃を超えているときは、最大制動エネルギーモード(Mode2)を実行する。
【0046】
液力緩速器の熱交換器21の熱交換率は、ブレーキの制動力を決定する要因であるため、熱交換器21の熱交換率を向上させるため、油温センサー20から送信されるオイルの検知温度(T)が150℃を超える場合、ECUコントローラー2は、流量調整信号19を出力し、dn+1=dn+2mmのステップで、作動室の流出口15に接続されている調整式スロットルバルブ17の開口面積d(d≦12mm)を徐々に増大させるように、調整式スロットルバルブ17を制御し、作動室からのオイル流出量を増やす。
【0047】
作動室の流出口15に接続されている調整式スロットルバルブ17の開口面積dが最大値の12mmに近づくと、作動室からのオイルの流出量が増えるが、熱交換器21の熱交換率を高めるため、ECUコントローラー2は、空気圧制御信号6を出力し、急速排出弁5を開き、オイルタンク7に送りこむ空気を排出して、ステーター11の作動室の流入口10に接続されているオイルタンク7の空気圧ρairを下げることで、作動室の流入口10に流入するオイルの流入量を速やかに減少させる。
それと同時に、ブレーキ出力軸13の回転数の低下に応じて、作動室の流入口10に流入するオイルの流入量を増加させるため、ECUコントローラー2は、空気圧比例圧力制御弁4からの油圧フィードバック信号9をもとに、作動室の流入口10に接続されているオイルタンク7の空気圧ρairを徐々に増加させる。
【0048】
そして、ECUコントローラー2は、調整式スロットルバルブ17からの油温フィードバック信号22をもとに油温センサー20が検知したオイルの温度(T)が150℃を下回るまで、調整式スロットルバルブ17を制御し、作動室の流出口15に接続されている調整式スロットルバルブ17の開口面積d(d≦12mm)を最大値に維持する。
【0049】
このように、ECUコントローラー2は、オイルの温度(T)をもとに、流量調整信号19を出力し、作動室の流出口15に接続されている調整式スロットルバルブ17の開口面積dが増大するように調整式スロットルバルブ17を制御して、作動室からのオイル流出量を増やすとともに、調整式スロットルバルブ17の開口面積dが最大値の12mmに近づくと、オイルタンク7の空気圧ρairを調整して、作動室へのオイル流入量を減少させることで、作動室内のオイル充填率q0を下げ、オイルの温度(T)も低下させながら、車速を減速させることができる。
【0050】
ブレーキの制動力と熱交換率の関係から、自動車用ブレーキ制御システムの制動トルクTrと作動室のオイル充填率q0は、以下の式で表すことができる。
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
(Mode3)
自動車用ブレーキ制御システムの最大制動力を得るためには、作動室のオイル充填率をq
0=1まで増加させる必要がある。
そこで、
図4に示すように、オイルの温度(T)が150℃未満であれば、フル減速モード(Mode3)を実行する。
ECUコントローラー2は、作動室のオイル充填率q
0=1を維持できるように、空気圧制御信号6と流量調整信号19を同時に出力する。
mode2と同様に、調整式スロットルバルブ17と急速排出弁5を開き、オイルタンク7内の空気圧P
airを下げつつ、mode1と同様に、空気圧比例圧力制御弁4を開いてオイルタンク7内の空気圧P
airを上げる。
これにより、作動室内のオイル充填率をq
0=1に維持して、最大制動力を得る。
自動車用ブレーキ制御システムの制動トルクT
rと、作動室のオイル充填率q
0は、以下の式で表すことができる。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
以上のmode1からmode3を経て、車両を減速させた結果、依然として、車速ν
aが、現在選択されているブレーキギヤにおいて予め設定されているブレーキギヤスイッチ1の目標速度ν
dを超える場合、
図4に示すように、さらに、減速制御段階として、Mode1からMode3からなる3種類のブレーキモードによって減速を制御する。
【0059】
(ステップ5)
減速の結果、車速ν
aが、選択されているブレーキギ
ヤに設定されている目標速度ν
d未満の場合、定速制御段階として、
図4に示す定速モード(Mode4)を実行する。
定速モード(Mode4)は、車両の情報を監視し続け、目標速度ν
dを維持する。
【0060】
(Mode4)
車速がνa<νdのとき、ECUコントローラー2は、制動トルクTrを調整するために、作動室のオイル充填率q0を連続的に増減させる。
ECUコントローラー2は、空気圧制御信号6と流量調整信号19を同時に出力する。
調整式スロットルバルブ17の開口面積dを制御し、オイルタンク7内の空気圧Pairを下げつつ、mode1と同様に、空気圧比例圧力制御弁4を開いて、オイルタンク7内の空気圧Pairを上げる。
これにより、作動室内のオイル充填率q0が目標オイル充填率qdに近づくようにする。
【0061】
ECUコントローラー2は、車速νaが、目標速度νd未満(νa<νd)であれば、定速モード(Mode4)を実行し続け、目標速度νdを超えると、Mode1の減速制御段階に移行するため、ブレーキモードの「再選択」を実行する。
作動室の流入口10に接続されているオイルタンク7の空気圧ρair及び作動室の流出口15に接続されている調整式スロットルバルブ17の開口面積dを制御して車速を調整するときの自動車用ブレーキ制御システムの制動トルクTrと、現在の作動室のオイル充填率q0は、以下の式で表すことができる。
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
qdは、目標速度νdに応じた目標オイル充填率を表す。
【0066】
【0067】
ωは、増減係数を表す。
ωは、車速νaが目標速度νdよりも大きいか等しい場合に1になり、車速νaが目標速度νdよりも小さい場合に-1になる。
これによって、目標オイル充填率qdを増やすか減らすかを決定する。
【0068】
図5は、自動車用ブレーキ制御システムを使用した走行車両の速度と制動トルクT
rを分析した試験結果を示すグラフである。
車両重量8tの車両で、傾斜20度の道路を、走行速度60km/h、目標速度30km/hの条件で自動車用ブレーキ制御システムを使用して減速したところ、最大制動トルク(T
r)3200Nm、最大制動熱量持続時間0.56s、応答時間0.6sの短縮を達成し、多くの指標で大幅な改善を実現できた。
【符号の説明】
【0069】
1 ブレーキギヤスイッチ
2 ECUコントローラー
3 空圧式切替弁
4 空気圧比例圧力制御弁
5 急速排出弁
6 空気圧制御信号
7 オイルタンク
8 圧力センサー
9 油圧フィードバック信号
10 流入口
11 ステーター
12 ローター
13 ブレーキ出力軸
14 ステーター取り付けブラケット
15 流出口
16 オイルパイプ
17 調整式スロットルバルブ
18 逆止弁
19 流量調整信号
20 油温センサー
21 熱交換器
22 油温フィードバック信号
23 空気圧補充装置
24 空気圧制御用配管
25 エアポンプモーター
26 エア貯留タンク
27 エアポンプ制御信号
【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、ブレーキ効率が高い油圧リターダに、高速応答の機械的仕組みと電気的信号を統合した自動車用ブレーキ制御システムを適用し、運転者の設定に依存せず、最大制動トルクの持続時間と応答性を改善できる車両の自動車用ブレーキ制御システム及び制御方法を提供する。
【解決手段】作動室の流入口に接続されているオイルタンクの空気圧ρ
air及び作動室の流出口に接続されている調整式スロットルバルブの開口面積dを調整することで、自動車用ブレーキ制御システムの最大制動力と応答時間を変化させ、ブレーキ時の条件により、常に最適なブレーキモードを選択することを実現し、車両運行の安全性と経済性を向上させることができる。
【選択図】
図1