(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】画像処理装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20220826BHJP
【FI】
A61B6/03 360T
A61B6/03 360A
(21)【出願番号】P 2016229215
(22)【出願日】2016-11-25
【審査請求日】2019-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】515290343
【氏名又は名称】医療法人社団皓有会
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【氏名又は名称】吉田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【氏名又は名称】西村 隆一
(72)【発明者】
【氏名】小山 和泉
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-140140(JP,A)
【文献】特開2007-018478(JP,A)
【文献】国際公開第2016/185566(WO,A1)
【文献】特開2006-010732(JP,A)
【文献】特開2012-075747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
臓器をX線CT撮影して得られる複数枚の2次元画像を構成する画像データを処理する画像処理装置であって、
前記複数枚の2次元画像は、それぞれ、前記複数枚の2次元画像上の1ピクセルに対応して分割された複数の領域からなり、
前記画像データは、前記複数枚の2次元画像に順次付された識別番号と、前記複数枚の2次元画像上の前記複数の領域のそれぞれの座標情報および白から黒までの濃淡情報と、を含み、
前記識別番号と前記座標情報と前記濃淡情報との対応関係と、前記臓器の形状データと、を記憶する記憶部と、
前記記憶部によって記憶された前記識別番号と前記座標情報と前記濃淡情報と、前記臓器の形状データと、の比較結果に基づいて
、前記領域の属性情報を決定する属性決定部と、
前記属性決定部によって決定された前記属性情報を、前記領域に関連付ける属性付加部と
、を備え、
前記属性付加部は、
前記2次元画像の解像度を所定解像度に変更し、前記属性決定部によって決定された前記属性情報を、
前記所定解像度に応じて明部および暗部が所定の規則に従って配列される2次元コード記号に変換
し、前記領域を、変換された2次元コード記号に置き換えた属性情報付き2次元画像を生成するとともに、前記明部の濃淡が白より濃く、かつ、前記暗部の濃淡が黒より淡く、かつ、前記2次元コード記号を構成するすべての前記明部および前記暗部の濃淡の平均値が前記領域の全体の濃淡と一致するように、前記明部および前記暗部の濃淡を調整することを特徴とする画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CT画像などの医用画像を処理する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ユーザの入力に応じて3次元画像内における所定の位置(座標値)を指定し、その座標値を含む領域を示す指示領域として、指示領域を覆い隠す遮蔽領域の表示を薄くする画像処理を行うことで、3次元画像の全体像と一部の内部構造とを同時に把握できるようにした画像処理装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1記載の装置では、ユーザがモニタ上の3次元画像を見ながら所定の位置を指定すると、ユーザが観測したいと考えられる領域が推定され、その領域が全体像から露出して表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の装置では、ユーザが3次元画像上で指示領域を観測するため、例えば、X線CT(Computerized Tomography)装置によって撮影された2次元画像群の各2次元画像から、各部位あるいは各点が何の臓器に属すのかといった、臓器の属性情報を得ることはできない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、臓器をX線CT撮影して得られる複数枚の2次元画像を構成する画像データを処理する画像処理装置であって、複数枚の2次元画像は、それぞれ、複数枚の2次元画像上の1ピクセルに対応して分割された複数の領域からなり、画像データは、複数枚の2次元画像に順次付された識別番号と、複数枚の2次元画像上の複数の領域のそれぞれの座標情報および白から黒までの濃淡情報と、を含み、識別番号と座標情報と濃淡情報との対応関係と、臓器の形状データと、を記憶する記憶部と、記憶部によって記憶された識別番号と座標情報と濃淡情報と、臓器の形状データと、の比較結果に基づいて、領域の属性情報を決定する属性決定部と、属性決定部によって決定された属性情報を、領域に関連付ける属性付加部と、を備える。属性付加部は、2次元画像の解像度を所定解像度に変更し、属性決定部によって決定された属性情報を、所定解像度に応じて明部および暗部が所定の規則に従って配列される2次元コード記号に変換し、領域を、変換された2次元コード記号に置き換えた属性情報付き2次元画像を生成するとともに、明部の濃淡が白より濃く、かつ、暗部の濃淡が黒より淡く、かつ、2次元コード記号を構成するすべての明部および暗部の濃淡の平均値が領域の全体の濃淡と一致するように、明部および暗部の濃淡を調整する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、画像データに基づいて得られる臓器の属性情報を、画像データに付加するように構成したので、2次元画像を、臓器の属性情報を有する2次元画像に変換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る画像処理装置の全体構成を示す概略図。
【
図2】
図1の画像処理装置の制御構成を示すブロック図。
【
図3】
図2の属性決定部と属性付加部とによる属性情報の決定と付加の説明図。
【
図4A】属性情報を付加する前の画像データの説明図。
【
図4B】属性情報を付加した後の画像データの説明図。
【
図5】
図2の属性付加部による属性情報の符号化の説明図。
【
図6】濃淡情報と
図1の表示部の明るさとの関係を示す図。
【
図7】属性情報を付加する前後のピクセルの説明図。
【
図8】
図2に示す処理部で実行される処理の一例を示すフローチャート。
【
図9】
図2の処理部の変形例の制御構成を示すブロック図。
【
図10】
図9に示す処理部の変形例で実行される処理の一例を示すフローチャート。
【
図11】
図4Bの属性情報を付加した後の画像データの変形例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1~
図10を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る画像処理装置(以下、装置という)10の概略構成を示す図である。装置10は、CPU(処理部)12a、ROM,RAM(メモリ)12b、その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成されるコンピュータ12を有する。装置10には、X線CT装置20が接続される。
【0009】
図2は、装置10の制御構成を示すブロック図である。装置10には、X線CT装置20から、X線CT撮影して得られた一連のCTスライス画像(画像データ)22が入力される。装置10は、画像データ22に基づき所定の処理を実行し、CTスライス画像22の各領域Pが何の臓器に属すかといった臓器の属性情報を決定して画像データ(CTスライス画像)22に付加し、属性情報が付加された属性情報付きCTスライス画像24をコンピュータ12の表示部12cに出力する。装置10は、コンピュータ12の機能的構成として、記憶部13と、属性決定部14と、属性付加部16とを有する。
【0010】
記憶部13は、X線CT装置20から入力された画像データ22を記憶する。記憶部13は、例えば、コンピュータ12のメモリ12bによって構成される。記憶部13は、必ずしもコンピュータ12の一部である必要はなく、例えば、外付けのハードディスクやフラッシュメモリなどでもよいし、ネットワーク上の別のコンピュータのメモリなどでもよい。
【0011】
図3は、属性決定部14と属性付加部16とによる属性情報の決定と付加の説明図である。属性決定部14と属性付加部16とは、例えば、コンピュータ12の処理部12aによって構成される。属性決定部14は、
図3左上側に示すような、X線CT装置20から入力されて記憶部13によって記憶された画像データ22を読み込み、
図3右側に示すような3次元画像として認識する。なお、
図3には簡略化して示すが、CTスライス画像22,24および3次元画像は、グレースケールによる濃淡表示画像である。属性決定部14は、認識した3次元画像と、記憶部13に予め格納された臓器の形状パターン情報とに基づいて、パターン解析により、3次元画像あるいはCTスライス画像22の各領域Pが何の臓器に属するかを決定する。すなわち、属性決定部14は、パターン解析により、3次元画像あるいはCTスライス画像22の各領域Pが何の臓器に属するかといった臓器の情報(属性情報)ATRを決定する。
【0012】
パターン解析に関する技術として、3次元濃淡画像から線図形を抽出する手順を自動生成する3次元画像処理エキスパートシステム3D-IMPRESSが知られている。このシステムでは、3次元画像とそこから抽出したい図形(サンプル図形)の組を与えると、その図形を抽出するための3次元画像処理手順を自動生成する。詳細な説明は当業者にとって周知であるため省略する。
【0013】
図4A,4Bは、それぞれ属性情報ATRを付加する前後の画像データ22,24の説明図である。属性情報ATRを付加する前の画像データ22(
図3左上側)には、
図4Aに示すように、一連のCTスライス画像22に順次付された識別番号NUMと、各CTスライス画像22の各領域Pの座標情報(x,y)と、濃淡情報CNTとが含まれる。領域Pは、例えば、各CTスライス画像22における1ピクセル、あるいは、3次元画像における1ボクセルに対応する。例えば、512×512ピクセルの各CTスライス画像22は、座標情報(1,1)~(512,512)のピクセル(領域P)で構成される。また、例えば、全体のスライス枚数が30枚の3次元CT画像は、(1,1,1)~(512,512,30)のボクセル(領域P)で構成される。領域Pは、必ずしも1ピクセルあるいは1ボクセルに対応させる必要はなく、例えば、2×2ピクセルあるいは2×2×2ボクセルに対応させてもよい。
【0014】
濃淡情報CNTは、各領域Pの濃淡に対応し、例えば、256諧調のグレースケールで表される。画像データ22は、これらの値の集合であり、例えば、CSVデータなどのテキストデータとして、記憶部13によって記憶され、属性決定部14、属性付加部16によって処理される。
【0015】
属性付加部16は、
図4Bに示すように、属性決定部14によって決定された属性情報ATRを、領域Pに関連付ける。例えば、
図3に示す領域Pについて考える。領域Pの含まれる2次元画像の識別番号NUMを20、領域Pの座標情報(x,y)を(100,200)、濃淡情報CNTを128とする。属性決定部14によって、領域Pを含む画像データ22のパターン解析がなされ、領域Pは、例えば、肝臓(liver)に属するという属性情報ATRが決定される。属性付加部16は、
図4Bに示すように、領域Pに対応する識別番号、座標情報に、属性情報ATRとして、臓器名称の“liver”を関連付ける。換言すれば、属性付加部16は、画像データ22に、属性情報ATRを付加する。
【0016】
図5は、属性付加部16による属性情報ATRの符号化の説明図である。
図5は、属性情報ATRを付加した後の属性情報付きCTスライス画像24(
図3左下側)の領域P付近の拡大図である。属性付加部16は、
図4A,4Bに示すように、テキストデータとして属性情報ATRの関連付けを行なった後、各領域Pに対応する属性情報ATRを含むデータを符号化し、CTスライス画像22の各領域Pに対応するピクセルと置き換える。符号化を行うデータ範囲は、属性情報ATRのみでもよいが、識別番号や座標情報を含めてもよい。
【0017】
具体的には、属性付加部16は、属性情報ATRを含むデータを、例えば、DataMatrix(登録商標)やQRコード(登録商標)などの2次元コード記号(2次元画像)に変換する。次いで、属性付加部16は、CTスライス画像22の各領域Pを、2次元コード記号に置き換えて、属性情報付きCTスライス画像24(
図3左下側)を生成する。換言すれば、属性付加部16は、CTスライス画像22を、臓器の属性情報ATRを有する属性情報付きCTスライス画像24に変換することができる。なお、例えば、16×16の2次元コードに変換する場合は、元の画像データ22の解像度を16×16倍に変更しておく。すなわち、領域Pを、元の画像データ22の1ピクセルから、属性情報付きCTスライス画像24の16×16ピクセル(以下、セルと呼ぶ)に分割する。この際、識別番号NUM、座標情報(x,y)、濃淡情報CNTはそのまま維持される。
【0018】
属性付加部16は、属性情報ATRを含むデータを符号化する際、通常の符号化処理に加えて、元の領域Pの濃淡情報CNTを維持するための処理、換言すれば、表示部12cにおける元の領域Pの明るさBRTを維持するための処理を行う。
【0019】
図6は、濃淡情報CNTと表示部12cの明るさBRTとの関係を示す図、
図7は、属性情報ATRを付加する前後の領域Pの説明図である。なお、
図7では、一例として、1ピクセル(PB,PA)を2×2セル(LC,DC)に分割している。グレースケールの濃淡情報CNTと、表示部12cの明るさBRTとの関係は、ガンマ値γ(例えば、γ=2.2)を用いて次式(i)で表される。
BRT=CNT^γ ・・・(i)
【0020】
属性付加部16は、属性情報ATR付加前の領域PBの明るさBRTと、属性情報ATR付加後の領域PA(2次元コード記号)全体の明るさBRTの平均値とが同じになるように、2次元コード記号における明部LCおよび暗部DCの濃淡情報CNTを調整する。すなわち、属性情報ATR付加前の領域PBの明るさBRTと、属性情報ATR付加後の領域PA、すなわち、2次元コード記号の各セル(明部LC×2セル、暗部DC×2セル)の明るさBRTの平均値とが同じになるようにする。例えば、属性情報ATR付加前の領域PBの濃淡情報CNTが128であれば、式(i)に基づいて、例えば、明部LCの濃淡情報CNTは150、暗部DCの濃淡情報CNTは100のように調整する。
【0021】
CTスライス画像22(2次元画像)における元の領域Pを、2次元コード記号に置き換える、あるいは、CTスライス画像22を、臓器の属性情報ATRを有する属性情報付きCTスライス画像24に変換することで、2次元画像である属性情報付きCTスライス画像24から臓器の属性情報ATRを得ることができる。しかしながら、属性情報ATR付加前後のCTスライス画像22,24に見え方の違いが生じた場合には、その画像を診断に用いたユーザ(医師など)が誤診をするおそれがある。元の画像の最小単位であるピクセルに対応する領域Pの濃淡情報CNTを維持することで、属性情報ATRを付加する前後のCTスライス画像22,24に、見え方の違いが生じることを防ぐことができる。すなわち、ユーザがCTスライス画像22,24を拡大するときの倍率は診断の内容によって異なるが、実際の診断に用いられるような倍率の範囲内では、ユーザが1ピクセルに相当する大きさの2次元コード記号を視認することは難しいため、ユーザに違和感を与えることがない。
【0022】
また、領域Pの濃淡情報CNTを維持したとしても、明部LCおよび暗部DCの濃淡情報CNTとして白(CNT=255)や黒(CNT=0)を用いた場合は、それを見たユーザが違和感を覚える可能性がある。このため、明部LCおよび暗部DCの濃淡情報CNTは、100~180程度とすることが望ましい。なお、画像処理装置10は、元の画像データをコピーしたデータを処理するため、元の画像データを損なうことがない。従って、ユーザは、必要に応じて元の画像データを使用して、あるいは、元の画像データと処理後の画像データとを使用して診断を行うこともできる。
【0023】
なお、ユーザが属性情報付きCTスライス画像24から臓器の属性情報ATRを得るための具体的な手順としては、属性情報ATRを得たい領域Pを拡大表示して各種コード用のリーダで読み取るようにしてもよいが、同様の復号機能を備えた専用のソフトウェアを使用するようにしてもよい。
【0024】
図8は、画像処理装置10の処理部12aで実行される処理の一例を示すフローチャートである。まず、ステップS1で、X線CT装置20から入力されて記憶部13によって記憶された画像データ22を読み込む。次いで、ステップS2,S3で、属性決定部14での処理により、パターン解析による各臓器の属性情報ATRの決定を行う。
【0025】
次いで、ステップS4~S7で、属性付加部16での処理により、属性決定部14によって決定された属性情報ATRの画像データ22への関連付け、2次元データコード記号の生成、明部LCおよび暗部DCの濃淡情報CNTの調整、および、濃淡情報CNTが調整された2次元コード記号による領域Pの置換を行い、属性情報付きCTスライス画像24を生成する。次いで、ステップS8で、属性情報付きCTスライス画像24を表示部12cに出力する。
【0026】
図9は、画像処理装置10の処理部12aの変形例の制御構成を示すブロック図、
図10は、画像処理装置10の処理部12aの変形例で実行される処理の一例を示すフローチャートである。
図9に示すように、装置10は、コンピュータ12の機能的構成として、上記した記憶部13、属性決定部14、属性付加部16に加えて、識別番号NUMと座標情報(x,y)と属性情報ATRとに基づいて超音波撮影のシミュレーション画像を生成する超音波画像生成部18を有するようにしてもよい。
【0027】
この場合、属性情報ATRには、各臓器の名称に加えて、各臓器に対する超音波の透過率や反射率などの物理的特性を含める。そして、
図10に示すように、ステップS10で、超音波画像生成部18での処理により、ユーザの入力に応じて超音波撮影をシミュレーションする視点を設定し、ステップS11で、属性情報付き画像データ24(例えば、CSVデータ)に基づいて、超音波画像を生成し、表示部12cに出力する。視点は、例えば、超音波測定装置のプローブを被験者に当てる位置および角度に相当する。
【0028】
なお、超音波画像を生成する目的に限れば、物理的特性は、少なくとも、超音波の透過率や反射率が変化する臓器と臓器の境界に当たる領域Pに付加すればよく、すべての領域Pに対して付加する必要はない。具体的には、パターン解析によって抽出された線図形が通過する領域Pのみに、物理的特性を含む属性情報ATRを付加すればよい。
【0029】
CT画像などの2次元画像を処理して、診断用の3次元画像を再構成するソフトウェアとして、OsiriXが知られている。このソフトウェアでは、2次元CT画像に基づいて内視鏡画像を生成することができるが、2次元CT画像に基づいて超音波画像を生成することはできない。超音波の透過率や反射率は、体内の場所ごとに異なるため、これらの物理的特性を考慮しなければ超音波画像を算出することはできない。本願の画像処理装置10は、2次元画像データ群に、各座標における超音波の透過率や反射率などの物理的特性を含む属性情報ATRを付加するため、それに基づいて超音波画像を算出して生成することができる。
【0030】
超音波画像に何の臓器が映っているかを的確に判断するには、ユーザの習熟が必要となるが、習熟には多くの画像を撮影、判断する経験が不可欠である。しかしながら、実際の患者などを被験者として撮影を行う場合には、被験者の身体的な負担を考慮しなければならないため、無制限に撮影を行うことは難しい。この点、属性情報付き画像データ24に基づく超音波撮影画像のシミュレーションであれば、そのような制限がないため、様々な臓器について、様々な視点からの、シミュレーション画像を生成することができる。
【0031】
本発明の実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)画像処理装置(装置)10は、臓器をX線CT撮影して得られる複数枚の2次元画像(一連のCTスライス画像)22を構成する画像データ22を処理する画像処理装置であって、画像データ22は、複数枚の2次元画像に順次付された識別番号NUMと複数枚の2次元画像(CTスライス画像)22上の領域Pの座標情報(x,y)と濃淡情報CNTとを含み、識別番号NUMと座標情報(x,y)と濃淡情報CNTとの対応関係を記憶する記憶部13と、記憶部13によって記憶された識別番号NUMと座標情報(x,y)と濃淡情報CNTと、予め定められた臓器の形状データとの比較結果に基づいて領域Pの属性情報ATRを決定する属性決定部14と、属性決定部によって決定された属性情報ATRを、領域Pに関連付ける属性付加部16と、を備える(
図2)。
【0032】
すなわち、画像データ22に基づいて得られる臓器の属性情報ATRを、画像データ22に付加するように構成したので、2次元CTスライス画像から、各部位あるいは各点が何の臓器に属すのかといった臓器の属性情報ATRを得ることができる。
【0033】
(2)領域Pは、複数枚の2次元画像(CTスライス画像)22上の1ピクセルに対応する。このため、元の画像の最小単位であるピクセルに対応する領域Pの濃淡情報CNTを維持することで、属性情報ATRを付加する前後のCTスライス画像22,24に、見え方の違いが生じることを防ぐことができる。
【0034】
(3)属性付加部16は、属性決定部14によって決定された属性情報を、明部LCおよび暗部DCが所定の規則に従って配列されてなる2次元コード記号(一例として、QRコード(登録商標))に変換するとともに、領域の全体の濃淡に応じて、明部LCおよび暗部DCの濃淡を調整する。従って、属性情報ATR付加前後で2次元画像の濃淡情報CNTを維持することができ、属性情報ATRを付加する前後の2次元画像に見え方の違いが生じることを防ぐことができる。
【0035】
(4)属性付加部16は、2次元コード記号を構成するすべての明部LCおよび暗部DCの濃淡の平均値が、領域P全体の濃淡と一致するように、明部LCおよび暗部DCの濃淡を調整するため、属性情報ATRを付加する前後の2次元画像に見え方の違いが生じることを、より確実に防ぐことができる。
【0036】
-変形例-
本発明は、上記実施形態に限らず、種々の形態に変形することができる。
図11は、
図4Bの属性情報ATRを付加した後の画像データ24の変形例を示す説明図である。属性情報ATR、識別番号、座標情報など、より多くの情報を2次元コード記号に変換する場合、2次元コード記号のサイズ、すなわち、2次元コード記号のセル数が増大し、属性情報付きCTスライス画像24の解像度およびデータ容量が増大する。
図11に示すように、変形例では、属性付加部16は、
図4Bに示す属性情報ATRの関連付けを行なったテキストデータに対して、各領域Pに対応する連番SRをさらに付加する。属性付加部16によって属性情報ATRおよび連番SRが付加されたテキストデータは、データベースDBとして記憶部13によって記憶される。
【0037】
さらに、変形例では、属性付加部16が符号化を行うデータ範囲を連番SRのみとし、連番SRを利用して属性情報ATRを含むデータベースDBを参照するように構成する。変形例では、属性付加部16が符号化を行うデータ範囲を連番SRのみとすることで、2次元コード記号のサイズを小さくすることができ、属性情報付きCTスライス画像24のデータ容量を低減することができる。
【0038】
上記実施形態では、
図7に示すように、濃淡情報CNT(階調)の異なる明部LCおよび暗部DCからなる2次元コード記号を例示したが、2次元コード記号を構成するセルは、明部LCおよび暗部DCの2階調に限らない。2次元コード記号を構成するセルとして3つ以上の異なる濃淡情報CNTのセルを使用する、多階調の2次元コードを用いてもよい。多階調の2次元コードを用いる場合は、同じ数のセルで表現できる情報量が階調数に応じて整数倍されるため、必要セル数を低減して属性情報付きCTスライス画像24の解像度およびデータ容量を低減することができる。
【0039】
上記実施形態では、装置10にX線CT装置20が接続されるようにしたが、X線CT装置20によって撮影される2次元画像データ郡を入力することができれば、X線CT装置20は直接接続されなくてもよい。一連のCTスライス画像をスキャンして、2次元画像データ郡を生成するようにしてもよい。
【0040】
上記実施形態では、属性情報ATR付加後の2次元画像あるいは超音波画像を、コンピュータ12の表示部12cに出力して表示するようにしたが、画像データとして別の表示機器に出力または送信するようにしてもよい。
【0041】
本発明の装置10は、上記で説明した用途以外にも、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置によって撮影された画像の歪みの補正に使用することができる。具体的には、同一の被験者に対して、MRI撮影とCT撮影とを行い、CTスライス画像を装置10によって処理して得られた座標情報と臓器の属性情報ATRとに基づいて、MRI画像における歪みの補正を行うことができる。
【0042】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態および変形例の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。すなわち、本発明の技術的思想の範囲内で考えられる他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。また、上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 画像処理装置(装置)、12 コンピュータ、12a 処理部、12b メモリ、12c 表示部、13 記憶部、14 属性決定部、16 属性付加部、18 超音波画像生成部、20 X線CT装置、22 CTスライス画像(画像データ)、24 属性情報付きCTスライス画像(画像データ)