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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】産業用ロボットの補正値算出方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/68 20060101AFI20220826BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20220826BHJP
   B25J 9/10 20060101ALI20220826BHJP
   B65G 49/06 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
H01L21/68 F
H01L21/68 A
B25J9/10 A
B65G49/06 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018026281
(22)【出願日】2018-02-16
(65)【公開番号】P2019145585
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 隆之
(72)【発明者】
【氏名】長棟 研人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 一樹
【審査官】三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-139854(JP,A)
【文献】特開2014-233773(JP,A)
【文献】特開2010-214533(JP,A)
【文献】特開2015-032617(JP,A)
【文献】特開2014-128855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H01L 21/68
B25J 9/10
B65G 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用ロボットの動作を補正するための補正値を算出する産業用ロボットの補正値算出方法であって、
前記産業用ロボットは、本体部と、前記本体部に基端側が回動可能に連結される第1アーム部と、前記第1アーム部の先端側に基端側が回動可能に連結される第2アーム部と、前記第2アーム部の先端側に基端側が回動可能に連結され、搬送対象物が搭載されるハンドフォークを有するハンドと、を有し、前記ハンドフォークは、複数のチャンバーとの間で前記搬送対象物の受渡しが行われ
前記第1アーム部、前記第2アーム部、および前記ハンドのうち、回動可能に連結された2つの部材の一方を一方部材とし、他方を他方部材としたとき、前記一方部材に対する前記他方部材の基準位置に停止するように前記他方部材を移動させた際の停止位置におけるエンコーダの値と、前記他方部材を前記停止位置から前記基準位置に前記他方部材が位置決め治具によって位置決めされる位置まで移動させたときの前記エンコーダの値とに基づいて、前記他方部材の前記基準位置に対応する前記エンコーダの基準値を特定する基準位置特定工程と、
前記基準位置特定工程として、前記2つの部材が前記第1アーム部および前記第2アーム部である第1基準位置特定工程と、前記2つの部材が前記第2アーム部および前記ハンドである第2基準位置特定工程と、を行い、
前記基準値を反映した条件で、前記第1アーム部、前記第2アーム部、および前記ハンドをモータ駆動して前記産業用ロボットを仮の基準姿勢にするロボット動作工程と、
前記ロボット動作工程後に、前記産業用ロボットを動作させて前記複数のチャンバーのうちの何れかのチャンバー内における前記搬送対象物の受渡し位置に、検知用パネルを搭載した前記ハンドフォークを移動させ、前記受渡し位置における前記検知用パネルの基準位置と前記検知用パネルの停止位置とのずれ量に基づいて前記第1アーム部をモータ駆動する際の補正値を算出する補正値算出工程と、
を有することを特徴とする産業用ロボットの補正値算出方法。
【請求項2】
前記補正値算出工程では、カメラによる前記検知用パネルの撮像結果に基づいて前記ずれ量を検出することを特徴とする請求項1に記載の産業用ロボットの補正値算出方法。
【請求項3】
前記複数のチャンバーには、外部から前記搬送対象物の搬入が行われるローダー用チャンバー、および外部への前記搬送対象物の搬出が行われるアンローダー用チャンバーが含まれ、
前記補正値算出工程の際、前記ローダー用チャンバー内における前記搬送対象物の受渡し位置、または前記アンローダー用チャンバー内における前記搬送対象物の受渡し位置に前記ハンドフォークを移動させることを特徴とする請求項1または2に記載の産業用ロボットの補正値算出方法。
【請求項4】
前記複数のチャンバーには、前記搬送対象物に対する処理が行われるプロセスチャンバーが含まれ、
前記補正値算出工程の際、前記プロセスチャンバー内における前記搬送対象物の受渡し位置に前記ハンドフォークを移動させることを特徴とする請求項1または2に記載の産業用ロボットの補正値算出方法。
【請求項5】
前記複数のチャンバーには、外部から前記搬送対象物の搬入が行われるローダー用チャンバー、外部への前記搬送対象物の搬出が行われるアンローダー用チャンバー、および前記搬送対象物に対する処理が行われるプロセスチャンバーが含まれ、
前記補正値算出工程として、前記ローダー用チャンバー内における前記搬送対象物の受渡し位置、または前記アンローダー用チャンバー内における前記搬送対象物の受渡し位置に前記ハンドフォークを移動させる第1補正値算出工程と、前記プロセスチャンバー内における前記搬送対象物の受渡し位置に前記ハンドフォークを移動させる第2補正値算出工程と、を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の産業用ロボットの補正値算出
方法。
【請求項6】
前記複数のチャンバーには、前記ハンドフォークが直線移動して内側に進入する際の移動軌跡の延長線上に前記本体部に対して前記第1アーム部が回動する際の第1回動中心が位置する第1チャンバーと、前記ハンドフォークが直線移動して内側に進入する際の移動軌跡の延長線上から前記第1回動中心が側方にずれている第2チャンバーと、が含まれ、
前記補正値算出工程として、前記第1チャンバー内における前記搬送対象物の受渡し位置に前記ハンドフォークを移動させる第1補正値算出工程と、前記第2チャンバー内における前記搬送対象物の受渡し位置に前記ハンドフォークを移動させる第2補正値算出工程と、を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の産業用ロボットの補正値算出方法。
【請求項7】
前記ハンドフォークが直線移動して前記第2チャンバーの内側に進入する際、前記第1アーム部に対して前記第2アーム部が回動する際の第2回動中心が、前記第1回動中心、および前記第2アーム部に対して前記ハンドが回動する際の第3回動中心より前記ハンドの進行方向の側に位置する過程を通過し、
前記複数のチャンバーには、さらに、前記ハンドフォークが直線移動して内側に進入する際の移動軌跡の延長線上から前記第1回動中心が側方にずれ、かつ、前記ハンドフォークが直線移動して内側に進入する際、前記第3回動中心が常に前記第2回動中心より前記ハンドの進行方向の側に位置する第3チャンバーが含まれ、
前記補正値算出工程として、前記第3チャンバー内における前記搬送対象物の受渡し位置に前記ハンドフォークを移動させる第3補正値算出工程と、を行うことを特徴とする請求項6に記載の産業用ロボットの補正値算出方法。
【請求項8】
前記基準位置特定工程後、前記補正値算出工程の前に、前記第2アーム部に対する基準位置に前記ハンドを停止させた状態で、位置決め治具によって、前記ハンドにハンドフォークを位置決めするハンドフォーク位置決め工程を行うことを特徴とする請求項1からまでの何れか一項に記載の産業用ロボットの補正値算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットの動作を補正するための補正値を算出する産業用ロボットの補正値算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス基板を搬送する産業用ロボットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の産業用ロボットは、有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)ディスプレイの製造システムに組み込まれて使用される水平多関節ロボットであり、ガラス基板が搭載されるハンドと、ハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、アームの基端側が回動可能に連結される本体部とを備えている。
【0003】
アームは、基端側が本体部に回動可能に連結される第1アーム部と、第1アーム部の先端側に基端側が回動可能に連結される第2アーム部とを備えている。ハンドは、第2アーム部の先端側に回動可能に連結されるハンド基部と、ハンド基部に固定されるとともにガラス基板が搭載されるハンドフォークとを備えている。また、特許文献1に記載の産業用ロボットは、本体部に対して第1アーム部を回動させるためのモータと、第1アーム部に対して第2アーム部を回動させるためのモータと、第2アーム部に対してハンド基部を回動させるためのモータとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-139854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の産業用ロボットが有機ELディスプレイ等の製造システムに設置されると、産業用ロボットの動作プログラムを作成するために、一般に、産業用ロボットの教示作業が行われている。また、たとえば、製造システムに設置される産業用ロボットが交換されたり、産業用ロボットのモータが交換されたりすると、交換前の産業用ロボットの教示作業で教示された教示位置の座標に対して、交換後の産業用ロボットのロボット座標系がずれる。そのため、産業用ロボットが交換されたり、産業用ロボットのモータが交換されたりした場合にも、一般に、産業用ロボットの教示作業が再度行われている。
【0006】
一方で、交換前の産業用ロボットの教示作業で教示された教示位置の座標に対する交換後の産業用ロボットのロボット座標系のずれを補正すれば、煩雑な教示作業を再度行う必要がなくなる。そのため、本願発明者は、交換前の産業用ロボットの教示作業で教示された教示位置の座標に対する交換後の産業用ロボットのロボット座標系のずれを補正するための補正値を算出して、ずれを補正することを検討している。ずれを補正するための補正値を算出する際には、補正値を容易に算出できることが好ましい。
【0007】
そこで、本発明の課題は、交換前の産業用ロボットの教示作業で教示された教示位置の座標に対する交換後の産業用ロボットのロボット座標系のずれを補正するための補正値を比較的容易に算出することが可能な産業用ロボットの補正値算出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は、産業用ロボットの動作を補正するための補正値を算出する産業用ロボットの補正値算出方法であって、前記産業用ロボットは、本体部と、前記本体部に基端側が回動可能に連結される第1アーム部と、前記第1アーム部の先端側に基端側が回動可能に連結される第2アーム部と、前記第2アーム部の先端側に基端側が回動可能に連結され、搬送対象物が搭載されるハンドフォークを有するハンドと、を有し、前記ハンドフォークは、複数のチャンバーとの間で前記搬送対象物の受渡しが行われ、前記第1アーム部、前記第2アーム部、および前記ハンドのうち、回動可能に連結された2つの部材の一方を一方部材とし、他方を他方部材としたとき、前記一方部材に対する前記他方部材の基準位置に停止するように前記他方部材を移動させた際の停止位置におけるエンコーダの値と、前記他方部材を前記停止位置から前記基準位置に前記他方部材が位置決め治具によって位置決めされる位置まで移動させたときの前記エンコーダの値とに基づいて、前記他方部材の前記基準位置に対応する前記エンコーダの基準値を特定する基準位置特定工程と、前記基準位置特定工程として、前記2つの部材が前記第1アーム部および前記第2アーム部である第1基準位置特定工程と、前記2つの部材が前記第2アーム部および前記ハンドである第2基準位置特定工程と、を行い、前記基準値を反映した条件で、前記第1アーム部、前記第2アーム部、および前記ハンドをモータ駆動して前記産業用ロボットを仮の基準姿勢にするロボット動作工程と、前記ロボット動作工程後に、前記産業用ロボットを動作させて前記複数のチャンバーのうちの何れかのチャンバー内における前記搬送対象物の受渡し位置に、検知用パネルを搭載した前記ハンドフォークを移動させ、前記受渡し位置における前記検知用パネルの基準位置と前記検知用パネルの停止位置とのずれ量に基づいて前記第1アーム部をモータ駆動する際の補正値を算出する補正値算出工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の産業用ロボットの補正値算出方法では、基準位置特定工程において、第1アーム部、第2アーム部、およびハンドについては、一方部材に回動可能に連結された他方部材を基準位置まで移動させた際の停止位置におけるエンコーダの値と、停止位置から他方部材を基準位置まで移動させたエンコーダの値とに基づいて、他方部材の基準位置に対応するエンコーダの基準値を特定した後、ロボット動作工程では、基準値を反映した条件で、産業用ロボットを仮の基準姿勢とし、補正値算出工程では、産業用ロボットを動作させてチャンバー内における搬送対象物の受渡し位置に、検知用パネルを搭載したハンドフォークを移動させる。次に、受渡し位置における検知用パネルの基準位置と検知用パネルの停止位置とのずれ量に基づいて第1アーム部をモータ駆動する際の補正値を算出する。従って、複雑で手間のかかる教示作業を実際に行わなくても、交換前の産業用ロボットの教示作業で教示された教示位置の座標に対する交換後の産業用ロボットのロボット座標系のずれを補正するための補正値を比較的容易に算出することができる。
【0010】
本発明において、前記補正値算出工程では、カメラによる前記検知用パネルの撮像結果に基づいて前記ずれ量を検出する態様を採用することができる。
【0011】
本発明において、前記複数のチャンバーには、外部から前記搬送対象物の搬入が行われるローダー用チャンバー、および外部への前記搬送対象物の搬出が行われるアンローダー用チャンバーが含まれ、前記補正値算出工程の際、前記ローダー用チャンバー内における前記搬送対象物の受渡し位置、または前記アンローダー用チャンバー内における前記搬送対象物の受渡し位置に前記ハンドフォークを移動させる態様を採用することができる。
【0012】
本発明において、前記複数のチャンバーには、前記搬送対象物に対する処理が行われるプロセスチャンバーが含まれ、前記補正値算出工程の際、前記プロセスチャンバー内における前記搬送対象物の受渡し位置に前記ハンドフォークを移動させる態様を採用することができる。
【0013】
本発明において、前記複数のチャンバーには、外部から前記搬送対象物の搬入が行われるローダー用チャンバー、外部への前記搬送対象物の搬出が行われるアンローダー用チャンバー、および前記搬送対象物に対する処理が行われるプロセスチャンバーが含まれ、前記補正値算出工程として、前記ローダー用チャンバー内における前記搬送対象物の受渡
し位置、または前記アンローダー用チャンバー内における前記搬送対象物の受渡し位置に前記ハンドフォークを移動させる第1補正値算出工程と、前記プロセスチャンバー内における前記搬送対象物の受渡し位置に前記ハンドフォークを移動させる第2補正値算出工程と、を行う態様を採用することができる。
【0014】
本発明において、前記複数のチャンバーには、前記ハンドフォークが直線移動して内側に進入する際の移動軌跡の延長線上に前記本体部に対して前記第1アーム部が回動する際の第1回動中心が位置する第1チャンバーと、前記ハンドフォークが直線移動して内側に進入する際の移動軌跡の延長線上から前記第1回動中心が側方にずれている第2チャンバーと、が含まれ、前記補正値算出工程として、前記第1チャンバー内における前記搬送対象物の受渡し位置に前記ハンドフォークを移動させる第1補正値算出工程と、前記第2チャンバー内における前記搬送対象物の受渡し位置に前記ハンドフォークを移動させる第2補正値算出工程と、を行う態様を採用することができる。
【0015】
本発明において、前記ハンドフォークが直線移動して前記第2チャンバーの内側に進入する際、前記第1アーム部に対して前記第2アーム部が回動する際の第2回動中心が、前記第1回動中心、および前記第2アーム部に対して前記ハンドが回動する際の第3回動中心より前記ハンドの進行方向の側に位置する過程を通過し、前記複数のチャンバーには、さらに、前記ハンドフォークが直線移動して内側に進入する際の移動軌跡の延長線上から前記第1回動中心が側方にずれ、かつ、前記ハンドフォークが直線移動して内側に進入する際、前記第3回動中心が常に前記第2回動中心より前記ハンドの進行方向の側に位置する第3チャンバーが含まれ、前記補正値算出工程として、前記第3チャンバー内における前記搬送対象物の受渡し位置に前記ハンドフォークを移動させる第3補正値算出工程と、を行う態様を採用することができる。
【0016】
本発明において、前記基準位置特定工程後、前記補正値算出工程の前に、前記第2アーム部に対する基準位置に前記ハンドを停止させた状態で、位置決め治具によって、前記ハンドにハンドフォークを位置決めするハンドフォーク位置決め工程を行う
態様を採用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の産業用ロボットの補正値算出方法では、基準位置特定工程において、第1アーム部、第2アーム部、およびハンドについては、一方部材に回動可能に連結された他方部材を基準位置まで移動させた際の停止位置におけるエンコーダの値と、停止位置から他方部材を基準位置まで移動させたエンコーダの値とに基づいて、他方部材の基準位置に対応するエンコーダの基準値を特定した後、ロボット動作工程では、基準値を反映した条件で、産業用ロボットを仮の基準姿勢とし、補正値算出工程では、産業用ロボットを動作させてチャンバー内における搬送対象物の受渡し位置に、検知用パネルを搭載したハンドフォークを移動させる。次に、受渡し位置における検知用パネルの基準位置と検知用パネルの停止位置とのずれ量に基づいて第1アーム部をモータ駆動する際の補正値を算出する。従って、複雑で手間のかかる教示作業を実際に行わなくても、交換前の産業用ロボットの教示作業で教示された教示位置の座標に対する交換後の産業用ロボットのロボット座標系のずれを補正するための補正値を比較的容易に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態にかかる産業用ロボットの補正値算出方法によって補正値が算出される産業用ロボットの図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
図2図1に示す産業用ロボットが有機ELディスプレイの製造システムに組み込まれた状態を示す平面図である。
図3図1に示す産業用ロボットの構成を説明するためのブロック図である。
図4図2に示すチャンバーに対して基板を搬出および搬入する際の産業用ロボットの動きを示す説明図である。
図5図2に示すプロセスチャンバーに対して基板を搬入する際の産業用ロボットの動きを示す説明図である。
図6図2に示すプロセスチャンバーに対して基板を搬入する際の産業用ロボットの動きを示す説明図である。
図7図2に示すプロセスチャンバーに対して基板を搬入する際の産業用ロボットの動きを示す説明図である。
図8図2に示すプロセスチャンバーに対して基板を搬入する際の産業用ロボットの動きを示す説明図である。
図9図1に示す産業用ロボットに第1位置決め治具、第2位置決め治具および第3位置決め治具が取り付けられた状態の図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
図10】(A)は、図9(B)のE部の拡大図であり、(B)は、(A)のF-F方向から第1位置決め治具等を示す図であり、(C)は、(A)のG部の拡大図である。
図11】(A)は、図9(B)のH部の拡大図であり、(B)は、(A)のJ-J方向から第2位置決め治具等を示す図であり、(C)は、(A)のK部の拡大図である。
図12】(A)は、図9(A)のL部の拡大図であり、(B)は、図9(B)のM部の拡大図であり、(C)は、(B)のN-N方向から第3位置決め治具等を示す図であり、(D)は、(B)のP部の拡大図である。
図13図1に示す第1アーム部の補正値を算出する補正値算出工程で用いる検知用パネルをハンドフォークに搭載した状態の説明図である。
図14図1に示す第1アーム部の補正値を算出する補正値算出工程でのロボットの動作を説明するための図である。
図15図1に示す第1アーム部の補正値を算出する補正値算出工程でのカメラの視野等を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
(産業用ロボットの構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる産業用ロボットの補正値算出方法によって補正値が算出される産業用ロボット1の図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。図2は、図1に示す産業用ロボット1が有機ELディスプレイの製造システム3に組み込まれた状態を示す平面図である。図3は、図1に示す産業用ロボット1の構成を説明するためのブロック図である。なお、図1(B)、および図2では、ハンドフォーク18、19に設けた支持部の図示を省略してある。
【0021】
図1に示す産業用ロボット1(以下、「ロボット1」とする。)は、搬送対象物である有機ELディスプレイ用のガラス基板2(以下、「基板2」とする。)を搬送するためのロボットである。このロボット1は、図2に示すように、有機ELディスプレイの製造システム3に組み込まれて使用される水平多関節ロボットである。製造システム3は、中心に配置されるトランスファーチャンバー4(以下、「チャンバー4」とする。)と、チャンバー4を囲むように配置される複数のチャンバー5~7とを備えている。
【0022】
チャンバー5は、基板2に対して所定の処理を行うためのプロセスチャンバーである。本形態において、チャンバー5は複数設けられている。本形態において、チャンバー5
として2つのプロセスチャンバー51、52と、トランスファーチャンバー4に対してプロセスチャンバー51、52とは反対側に設けられた2つのプロセスチャンバー53、54が設けられている。また、チャンバー6は、たとえば、製造システム3に供給される基板2が収容される供給用のチャンバー(ローダー用チャンバー)であり、チャンバー7は、たとえば、製造システム3から排出される基板2が収容される排出用のチャンバー(アンローダー用チャンバー)である。チャンバー4~7の内部は、真空になっている。チャンバー4の内部には、ロボット1の一部が配置されている。ロボット1を構成する後述のハンドフォーク18、19がチャンバー5~7の中に入り込むことで、ロボット1は、複数のチャンバー5~7の間で基板2を搬送する。
【0023】
図1に示すように、ロボット1は、基板2が搭載されるハンド8と、ハンド8が先端側に回動可能に連結されるアーム9と、アーム9の基端側が回動可能に連結される本体部10とを備えている。ハンド8およびアーム9は、本体部10の上側に配置されている。本体部10は、アーム9を昇降させる昇降機構と、昇降機構が収容されるケース体13とを備えている。ケース体13は、略有底円筒状に形成されている。ケース体13の上端には、円板状に形成されたフランジ14が固定されている。
【0024】
上述のように、ロボット1の一部は、チャンバー4の内部に配置されている。具体的には、ロボット1の、フランジ14の下端面よりも上側の部分がチャンバー4の内部に配置されている。すなわち、ロボット1の、フランジ14の下端面よりも上側の部分は、真空領域VRの中に配置されており、ハンド8およびアーム9は、真空チャンバー内(真空中)に配置されている。一方、ロボット1の、フランジ14の下端面よりも下側の部分は、大気領域ARの中(大気中)に配置されている。
【0025】
アーム9は、互いに回動可能に連結される第1アーム部15と第2アーム部16とを備えている。本形態のアーム9は、第1アーム部15と第2アーム部16との2個のアーム部によって構成されている。第1アーム部15の基端側は、本体部10に回動可能に連結されている。第1アーム部15の先端側には、第2アーム部16の基端側が回動可能に連結されている。第2アーム部16の先端側には、ハンド8が回動可能に連結されている。また、第1アーム部15には、第1アーム部15の延在方向と反対側にカウンタウエイト28が設けられている。
【0026】
第2アーム部16は、第1アーム部15よりも上側に配置されている。また、ハンド8は、第2アーム部16よりも上側に配置されている。本体部10に対する第1アーム部15の回動中心(第1回動中心C1)と第1アーム部15に対する第2アーム部16の回動中心(第2回動中心C2)との距離は、第1アーム部15に対する第2アーム部16の回動中心(第2回動中心C2)と第2アーム部16に対するハンド8の回動中心(第3回動中心C3)との距離と等しくなっている。
【0027】
ハンド8は、第2アーム部16の先端側に回動可能に連結されるハンド基部17と、基板2が搭載されるハンドフォーク18、19とを備えている。本形態のハンド8は、2本のハンドフォーク18と、2本のハンドフォーク19とを備えている。ハンドフォーク18、19は、直線状に形成されている。ハンドフォーク18とハンドフォーク19とは同形状に形成されている。2本のハンドフォーク18は、互いに所定の間隔をあけた状態で平行に配置されている。ハンドフォーク18は、ハンド基部17から水平方向の一方向へ伸びている。2本のハンドフォーク19は、互いに所定の間隔をあけた状態で平行に配置されている。ハンドフォーク19は、ハンド基部17からハンドフォーク18と逆方向に伸びている。
【0028】
ハンドフォーク18、19は、ハンド基部17に固定されている。具体的には、ハン
ドフォーク18、19は、固定用のネジによってハンド基部17に固定されている。ハンドフォーク18、19には、固定用のネジが挿通される挿通穴が形成されている。この挿通穴は、ハンドフォーク18、19の長手方向に直交する方向を長手方向とする長穴であり、ハンドフォーク18、19の長手方向に直交する方向において、ハンド基部17に対するハンドフォーク18、19の固定位置を調整することが可能となっている。
【0029】
本形態では、1枚の基板2が2本のハンドフォーク18に搭載される。また、1枚の基板2が2本のハンドフォーク19に搭載される。ハンドフォーク18の上面には、搭載される基板2を位置決めするための位置決め部材が取り付けられている。ハンドフォーク19の上面にも、搭載される基板2を位置決めするための位置決め部材が取り付けられている。
【0030】
本形態において、2本のハンドフォーク18には、互いに離間する方向に突出した複数本の第1支持部181と、複数の第1支持部181のうち、両端に位置する2本の第1支持部181の各々から互いに反対方向に突出した複数の第2支持部182とが設けられている。複数の第1支持部181の各々の先端部、および複数の第2支持部182の各々の先端部には、基板2を位置決めするための位置決め部材183、184が設けられている。なお、ハンドフォーク19も同様な構造を有しているが、第1支持部および第2支持部等の図示を省略してある。
【0031】
また、ロボット1は、本体部10に対して第1アーム部15を回動させるためのモータ21と、第1アーム部15に対して第2アーム部16を回動させるためのモータ22と、第2アーム部16に対してハンド基部17を回動させるためのモータ23と、モータ21の回転量を検知するためのエンコーダ24と、モータ22の回転量を検知するためのエンコーダ25と、モータ23の回転量を検知するためのエンコーダ26とを備えている(図3参照)。
【0032】
エンコーダ24は、モータ21に取り付けられている。エンコーダ25は、モータ22に取り付けられ、エンコーダ26は、モータ23に取り付けられている。モータ21およびエンコーダ24は、たとえば、本体部10の内部に配置されている。また、モータ22、23およびエンコーダ25、26は、たとえば、第1アーム部15の内部に配置されている。モータ21~23は、ロボット1の制御部27に電気的に接続されている。エンコーダ24~26も、制御部27に電気的に接続されている。本形態のモータ21は第1モータであり、モータ22は第2モータであり、モータ23は第3モータである。また、エンコーダ24は第1エンコーダであり、エンコーダ25は第2エンコーダであり、エンコーダ26は第3エンコーダである。
【0033】
さらに、ロボット1は、本体部10に対する第1アーム部15の回動方向における第1アーム部15の原点位置を検知するための原点センサ31と、第1アーム部15に対する第2アーム部16の回動方向における第2アーム部16の原点位置を検知するための原点センサ32と、第2アーム部16に対するハンド基部17の回動方向におけるハンド基部17の原点位置を検知するための原点センサ33とを備えている。本形態の原点センサ31は第1原点センサであり、原点センサ32は第2原点センサであり、原点センサ33は第3原点センサである。
【0034】
原点センサ31~33は、たとえば、近接センサである。あるいは、原点センサ31~33は、たとえば、発光素子と受光素子とを有する光学式のセンサである。原点センサ31~33は、制御部27に電気的に接続されている。本体部10と第1アーム部15との連結部である関節部において、原点センサ31は、本体部10および第1アーム部15のいずれか一方に固定され、本体部10および第1アーム部15のいずれか他方には、第
1アーム部15が原点位置にあるときに原点センサ31に検知される検知部材が固定されている。
【0035】
同様に、第1アーム部15と第2アーム部16との連結部である関節部において、原点センサ32は、第1アーム部15および第2アーム部16のいずれか一方に固定され、第1アーム部15および第2アーム部16のいずれか他方には、第2アーム部16が原点位置にあるときに原点センサ32に検知される検知部材が固定されている。また、第2アーム部16とハンド基部17との連結部である関節部において、原点センサ33は、第2アーム部16およびハンド基部17のいずれか一方に固定され、第2アーム部16およびハンド基部17のいずれか他方には、ハンド基部17が原点位置にあるときに原点センサ33に検知される検知部材が固定されている。
【0036】
(産業用ロボットの概略動作)
図4は、図2に示すチャンバー5およびチャンバー6に対して基板2を搬出および搬入する際の産業用ロボット1の動きを示す説明図である。図5は、図2に示すプロセスチャンバー51へ基板2を搬入する際の産業用ロボット1の動きを示す説明図である。図6は、図1に示すプロセスチャンバー5へ基板2を搬入する際の産業用ロボット1の動きを示す説明図である。図7は、図1に示すプロセスチャンバー53へ基板2を搬入する際の産業用ロボット1の動きを示す説明図である。図8は、図1に示すプロセスチャンバー54へ基板2を搬入する際の産業用ロボット1の動き示す説明図である。なお、図4図8では、ハンドフォーク18、19に設けた支持部の図示を省略してある。
【0037】
ロボット1は、モータ21、22、23を駆動させて、チャンバー5、6、7間で基板2を搬送する。たとえば、図4に示すように、ロボット1は、チャンバー6から基板2を搬出一方、チャンバー7へ基板2を搬入する。より具体的には、ロボット1は、図4(A)に示すように、ハンドフォーク18が左右方向と平行になっている状態で、アーム9を伸ばしてチャンバー6内で基板2を受け取る。また、図4(B)に示すように、第1アーム部15と第2アーム部16とが上下方向で重なるまでアーム9を縮めてチャンバー6から基板2を搬出する。また、ロボット1は、ハンド8を180°回動させてから、アーム9を伸ばして、図5(C)に示すように、チャンバー7へ基板2を搬入する。チャンバー6から基板2を搬出する際、およびチャンバー7へ基板2を搬入する際、上下方向から見ると、第2アーム部16に対するハンド8の第3回動中心C3は、第1回動中心C1を通過する左右方向に平行な仮想線上を直線的に移動する。すなわち、チャンバー6から基板2を搬出する際、およびチャンバー7へ基板2を搬入する際、上下方向から見ると、ハンド8は、右方向へ直線的に移動する。このように、チャンバー6、7はいずれも、ハンド8がチャンバー6、7内に向けて直線的に移動する際に、ハンド8の移動軌跡の延長線上に第1回動中心C1が位置する第1チャンバーである。
【0038】
図5に示すように、ロボット1は、基板2をプロセスチャンバー51へ搬入する。このときには、ロボット1は、まず、図5(A)に示すように、アーム9を縮めた状態から、モータ21、22、23を駆動させて、図5(B)に示すように、ハンドフォーク18が前後方向と平行になるとともに基板2がハンド8の後端側に配置されるように、かつ、左右方向において、第3回動中心C3と左右方向におけるプロセスチャンバー51の中心とが略一致するように、ハンド8、第1アーム部15および第2アーム部16を回動させる。その後、ロボット1は、アーム9を伸ばして、図5(C)に示すように、プロセスチャンバー51へ基板2を搬入する。このときには、上下方向から見ると、第3回動中心C3は、左右方向におけるプロセスチャンバー51の中心を通過する前後方向に平行な仮想線上を直線的に移動する。
【0039】
図6に示すように、ロボット1は、基板2をプロセスチャンバー52へ搬入する。こ
のときには、ロボット1は、まず、図6(A)に示すように、アーム9を縮めた状態から、モータ21、22、23を駆動させて、図6(B)に示すように、ハンドフォーク18が前後方向と平行になるとともに基板2がハンド8の後端側に配置されるように、かつ、左右方向において、第3回動中心C3と左右方向におけるプロセスチャンバー52の中心とが略一致するように、ハンド8、第1アーム部15および第2アーム部16を回動させる。その後、ロボット1は、アーム9を伸ばして、図6(C)に示すように、プロセスチャンバー52へ基板2を搬入する。このときには、上下方向から見ると、第3回動中心C3は、左右方向におけるプロセスチャンバー52の中心を通過する前後方向に平行な仮想線上を直線的に移動する。
【0040】
本形態において、プロセスチャンバー51、52はいずれも、ハンド8がチャンバー51、52内に向けて直線的に移動する際に、ハンド8の移動軌跡の延長線から側方にずれた位置に第1回動中心C1が位置し、かつ、図6(B)に示すように、第2回動中心C2が第1回動中心C1および第3回動中心C3よりハンド8の進行方向の側(プロセスチャンバー51側またはプロセスチャンバー52側)に位置する過程を通過する第2チャンバーである。
【0041】
図7に示すように、ロボット1は、基板2をプロセスチャンバー53へ搬入する。このときには、ロボット1は、まず、図7(A)に示すように、アーム9を縮めた状態から、モータ21、22、23を駆動させて、図7(B)に示すように、ハンドフォーク18が前後方向と平行になるとともに基板2がハンド8の前端側に配置されるように、かつ、左右方向において、第3回動中心C3と左右方向におけるプロセスチャンバー53の中心とが略一致するように、ハンド8、第1アーム部15および第2アーム部16を回動させる。その後、ロボット1は、アーム9を伸ばして、図7(C)に示すように、プロセスチャンバー53へ基板2を搬入する。このときには、上下方向から見ると、第3回動中心C3は、左右方向におけるプロセスチャンバー53の中心を通過する前後方向に平行な仮想線上を直線的に移動する。
【0042】
図8に示すように、ロボット1は、基板2をプロセスチャンバー54へ搬入する。このときには、ロボット1は、まず、図8(A)に示すように、アーム9を縮めた状態から、モータ21、22、23を駆動させて、図8(B)に示すように、ハンドフォーク18が前後方向と平行になるとともに基板2がハンド8の前端側に配置されるように、かつ、左右方向において、第3回動中心C3と左右方向におけるプロセスチャンバー54の中心とが略一致するように、ハンド8、第1アーム部15および第2アーム部16を回動させる。その後、ロボット1は、アーム9を伸ばして、図8(C)に示すように、チャンバー54へ基板2を搬入する。このときには、上下方向から見ると、第3回動中心C3は、左右方向におけるプロセスチャンバー54の中心を通過する前後方向に平行な仮想線上を直線的に移動する。
【0043】
本形態において、プロセスチャンバー53、54はいずれも、ハンド8がチャンバー51、52内に向けて直線的に移動する際に、ハンド8の移動軌跡の延長線から側方にずれた位置に第1回動中心C1が位置し、かつ、第2回動中心C2が第1回動中心C1および第3回動中心C3より前方に位置する過程を通過せず、第3回動中心C3が常に第2回動中心C2よりハンド8の進行方向の側(プロセスチャンバー53側またはプロセスチャンバー54側)に位置する第3チャンバーである。
【0044】
なお、ハンドフォーク19によって基板2を搬送する場合も同様な動作が行われる。また、チャンバー5から基板2を搬出する際、上記の説明とは逆の動作が行われる。
【0045】
(産業用ロボットの補正値の算出方法)
図9は、図1に示すロボット1に位置決め治具36~38が取り付けられた状態の図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。図10(A)は、図9(B)のE部の拡大図であり、図10(B)は、図10(A)のF-F方向から位置決め治具36等を示す図であり、図10(C)は、図10(A)のG部の拡大図である。図11(A)は、図9(B)のH部の拡大図であり、図11(B)は、図11(A)のJ-J方向から位置決め治具37等を示す図であり、図11(C)は、図11(A)のK部の拡大図である。図12(A)は、図9(A)のL部の拡大図であり、図12(B)は、図9(B)のM部の拡大図であり、図12(C)は、図12(B)のN-N方向から位置決め治具38等を示す図であり、図12(D)は、図12(B)のP部の拡大図である。
【0046】
ロボット1が製造システム3に設置されると、ロボット1の動作プログラムを作成するために、ロボット1の教示作業が行われる。また、たとえば、製造システム3に設置されるロボット1が交換されると、交換前のロボット1の教示作業で教示された教示位置の座標に対して交換後のロボット1のロボット座標系がずれるため、ロボット1の教示作業を再度行う必要が生じる。
【0047】
一方で、交換前のロボット1の教示作業で教示された教示位置の座標に対する交換後のロボット1のロボット座標系のずれを補正すれば、煩雑な教示作業を再度行う必要がなくなる。本形態では、ロボット1を交換した後に煩雑な教示作業を再度行わなくても良いように、製造システム3に設置されるロボット1が交換されると、交換前のロボット1の教示作業で教示された教示位置の座標に対する交換後のロボット1のロボット座標系のずれを補正するための補正値を算出する。すなわち、第1アーム部15、第2アーム部16、およびハンド8のうち、回動可能に連結された2つの部材の一方を一方部材とし、他方を他方部材としたとき、一方部材に対する他方部材の基準位置に停止するように他方部材を移動させた際の停止位置におけるエンコーダの値と、他方部材を停止位置から基準位置に他方部材が位置決め治具によって位置決めされる位置まで移動させたときのエンコーダの値とに基づいて、他方部材の基準位置に対応する前記エンコーダの基準値を特定する基準位置特定工程を行い、その後、交換後のロボット1の動作を補正するための補正値を算出する。以下、この補正値の算出方法を説明する。
【0048】
以下の説明では、第1アーム部15に対する第2アーム部16の回動方向における第2アーム部16の所定の基準位置を第1基準位置とし、第2アーム部16に対するハンド基部17の回動方向におけるハンド基部17の所定の基準位置を第2基準位置とし、ハンド基部17に対するハンドフォーク18の長手方向に直交する方向におけるハンドフォーク18の所定の基準位置を第3基準位置とし、本体部10に対する第1アーム部15の回動方向における第1アーム部15の所定の基準位置を第4基準位置とする。
【0049】
本形態では、第2アーム部16が第1基準位置にあるときには、図9に示すように、第1アーム部15と第2アーム部16とが上下方向で重なっている。具体的には、第2アーム部16が第1基準位置にあるときには、上下方向から見たときに第1アーム部15の長手方向と第2アーム部16の長手方向とが一致するように、第1アーム部15と第2アーム部16とが上下方向で重なっている。また、本形態では、第1アーム部15に対する第2アーム部16の回動方向における第2アーム部16の原点位置と第1基準位置とが一致している。
【0050】
また、ハンド基部17が第2基準位置にあるときには、図9に示すように、第2アーム部16とハンドフォーク18とが上下方向で重なっている。具体的には、ハンド基部17が第2基準位置にあるときには、上下方向から見たときに第2アーム部16の長手方向とハンドフォーク18の長手方向とが一致するように、第2アーム部16とハンドフォーク18とが上下方向で重なっている。また、本形態では、第2アーム部16に対するハン
ド基部17の回動方向におけるハンド基部17の原点位置からハンド基部17が90°回動した位置が第2基準位置となっている。
【0051】
なお、第4基準位置は、本体部10に対する第1アーム部15の回動方向における第1アーム部15の原点位置と一致していても良いし、本体部10に対する第1アーム部15の回動方向における第1アーム部15の原点位置から第1アーム部15が所定角度回動した位置が第4基準位置となっていても良い。
【0052】
また、本形態では、第1基準位置に第2アーム部16を位置決めするための位置決め治具36と、第2基準位置にハンド基部17を位置決めするための位置決め治具37と、第3基準位置にハンドフォーク18を位置決めするための位置決め治具38とが使用される。本形態の位置決め治具36は第1位置決め治具であり、位置決め治具37は第2位置決め治具であり、位置決め治具38は第3位置決め治具である。なお、位置決め治具38は、ハンドフォーク19の長手方向に直交する方向におけるハンド基部17に対するハンドフォーク19の所定の基準位置にハンドフォーク19を位置決めする際にも使用される。
【0053】
図10に示すように、位置決め治具36は、第1アーム部15に固定される固定部材41と、ピン42とを備えている。固定部材41は、第1アーム部15の基端の側面に固定されている。固定部材41には、ピン42が挿入される貫通穴41aが形成されている。また、第2アーム部16の先端の側面には、ピン42が挿入される挿入穴16aが形成されている。固定部材41の貫通穴41aに挿入されたピン42が挿入穴16aに挿入されると、第2アーム部16が第1基準位置に厳密に位置決めされる。本形態の固定部材41は第1固定部材であり、ピン42は第1ピンであり、挿入穴16aは第1挿入穴であり、貫通穴41aは第1貫通穴である。
【0054】
図11に示すように、位置決め治具37は、第1アーム部15に固定される固定部材43、44と、ピン45とを備えている。固定部材43は、第1アーム部15の基端の側面に固定されている。固定部材44は、固定部材43の側面に固定されている。固定部材43には、固定部材41との干渉を防止するための溝部が形成されている。固定部材44の底面には、固定部材43に対する固定部材44の上下方向の位置を調整するためのネジ46の先端面が接触している。ネジ46は、固定部材43の下端面に固定されるネジ保持部材47に螺合している。
【0055】
固定部材44には、ピン45が挿入される貫通穴44aが形成されている。また、ハンド基部17の側面には、ピン45が挿入される挿入穴17aが形成されている。固定部材44の貫通穴44aに挿入されたピン45が挿入穴17aに挿入されると、ハンド基部17が第2基準位置に厳密に位置決めされる。本形態の固定部材43、44は第2固定部材であり、ピン45は第2ピンであり、挿入穴17aは第2挿入穴であり、貫通穴44aは第2貫通穴である。
【0056】
図12に示すように、位置決め治具38は、2本のハンドフォーク18に固定される固定部材48、49と、ピン50とを備えている。固定部材48は、2本のハンドフォーク18の上面に固定されている。固定部材49は、固定部材48の下面に固定されている。固定部材49には、ピン50が挿入される貫通穴49aが形成されている。また、第2アーム部16の基端の側面には、ピン50が挿入される挿入穴16bが形成されている。固定部材49の貫通穴49aに挿入されたピン50が挿入穴16bに挿入されると、2本のハンドフォーク18が第3基準位置に厳密に位置決めされる。本形態の固定部材48、49は第3固定部材であり、ピン50は第3ピンであり、挿入穴16bは第3挿入穴であり、貫通穴49aは第3貫通穴である。
【0057】
たとえば、製造システム3に設置されるロボット1が交換されると、まず、原点センサ32の検知結果に基づいて第2アーム部16を第1基準位置(原点位置)に回動させる。すなわち、第1基準位置で第2アーム部16が停止するように原点センサ32の検知結果に基づいて第2アーム部16を回動させて停止させる。
【0058】
また、原点センサ33の検知結果とエンコーダ26の検知結果とに基づいてハンド基部17を第2基準位置(原点位置から90°回動した位置)に回動させる。たとえば、原点センサ33の検知結果に基づいてハンド基部17を原点位置に回動させた後、エンコーダ26の検知結果に基づいてハンド基部17を原点位置から第2基準位置に回動させる。すなわち、第2基準位置でハンド基部17が停止するように原点センサ33の検知結果とエンコーダ26の検知結果に基づいてハンド基部17を回動させて停止させる。
【0059】
その後、固定部材41、43、44を第1アーム部15に固定し、固定部材48、49を2本のハンドフォーク18に固定する。なお、原点センサ32の検知結果に基づいて第1基準位置に回動した第2アーム部16は、厳密には、第1基準位置から若干ずれている。同様に、原点センサ33の検知結果とエンコーダ26の検知結果とに基づいて第2基準位置に回動したハンド基部17は、厳密には、第2基準位置から若干ずれている。
【0060】
その後、固定部材41の貫通穴41aに挿入されたピン42が挿入穴16aに嵌る位置まで第1アーム部15に対して第2アーム部16を回動させて挿入穴16aにピン42を挿入し、第1基準位置に第2アーム部16を厳密に位置決めする。また、そのときのモータ22の回動量をエンコーダ25で検知し、制御部27は、エンコーダ25での検知結果を用いて第2アーム部16の第1基準位置を特定する。
【0061】
すなわち、第1基準位置で第2アーム部16が停止するように原点センサ32の検知結果に基づいて第2アーム部16を停止させたときの第2アーム部16の停止位置である第1停止位置から、位置決め治具36によって第1基準位置に第2アーム部16が位置決めされる位置まで第2アーム部16を回動させたときのエンコーダ25の検知結果と、第1停止位置に第2アーム部16が停止しているときのエンコーダ25の値とに基づいて第1基準位置を特定する(第1基準位置特定工程)。
【0062】
その後、第1基準位置特定工程で特定された第1基準位置に第2アーム部16が配置されている状態で、固定部材44の貫通穴44aに挿入されたピン45が挿入穴17aに嵌る位置まで第2アーム部16に対してハンド基部17を回動させて挿入穴17aにピン45を挿入し、第2基準位置にハンド基部17を厳密に位置決めする。また、そのときのモータ23の回動量をエンコーダ26で検知し、制御部27は、エンコーダ26での検知結果を用いてハンド基部17の第2基準位置を特定する。
【0063】
すなわち、第1基準位置特定工程で特定された第1基準位置に第2アーム部16が配置されている状態で、第2基準位置でハンド基部17が停止するように原点センサ33の検知結果とエンコーダ26の検知結果に基づいてハンド基部17を停止させたときのハンド基部17の停止位置である第2停止位置から、位置決め治具37によってハンド基部17が位置決めされる位置までハンド基部17を回動させたときのエンコーダ26の検知結果と、第2停止位置にハンド基部17が停止しているときのエンコーダ26の値とに基づいて第2基準位置を特定する(第2基準位置特定工程)。
【0064】
その後、第1基準位置特定工程で特定された第1基準位置に第2アーム部16が配置され、かつ、第2基準位置特定工程で特定された第2基準位置にハンド基部17が配置されている状態で、固定部材49の貫通穴49aに挿入されたピン50が挿入穴16bに嵌
る位置まで、ハンドフォーク18の長手方向に直交する方向へハンド基部17に対して2本のハンドフォーク18を移動させて挿入穴16bにピン50を挿入し、第3基準位置に2本のハンドフォーク18を位置決めする。
【0065】
すなわち、第1基準位置特定工程で特定された第1基準位置に第2アーム部16が配置され、かつ、第2基準位置特定工程で特定された第2基準位置にハンド基部17が配置されている状態で、位置決め治具38によって2本のハンドフォーク18を位置決めする(ハンドフォーク位置決め工程)。位置決めされたハンドフォーク18は、ネジによってハンド基部17に固定される。
【0066】
その後、少なくとも位置決め治具37、38を取り外すとともに、第2アーム部16に対してハンド基部17を180°回動させる。この状態で、固定部材48、49を2本のハンドフォーク19に固定する。また、固定部材49の貫通穴49aに挿入されたピン50が挿入穴16bに嵌る位置まで、ハンドフォーク19の長手方向に直交する方向へハンド基部17に対して2本のハンドフォーク19を移動させて挿入穴16bにピン50を挿入し、所定の基準位置に2本のハンドフォーク19を位置決めする。位置決めされたハンドフォーク19は、ネジによってハンド基部17に固定される。
【0067】
(チャンバー6(第1チャンバー)での第1補正値算出工程)
図13は、図1に示す第1アーム部15の補正値を算出する補正値算出工程で用いる検知用パネル40をハンドフォーク18に搭載した状態の説明図であり、(A)は平面図、(B)は断面図である。図14は、図1に示す第1アーム部15の補正値を算出する補正値算出工程でのロボット1の動作を説明するための図である。図15は、図1に示す第1アーム部15の補正値を算出する補正値算出工程でのカメラの視野等を示す説明図である。
【0068】
本形態では、ロボット1に用いた第1アーム部15の補正値を算出する補正値算出工程の説明図である。本形態では、第1基準位置特定工程および第2基準位置特定工程の後、補正値算出工程を行う際には、図13に示すように、2本のハンドフォーク18に検知用パネル40を搭載する(パネル搭載工程)。
【0069】
検知用パネル40は、補正値を算出する際に使用される遮光性のパネルである。本形態において、搬送対象物は、四角形の基板2であることから、検知用パネル40は、基板2をハンドフォーク18に搭載した際に対角に位置する2つの角2a、2bを結ぶように延在する板状部材である。より具体的には、検知用パネル40は、ハンドフォーク18に沿って直線的に延在する第1部分81と、第1部分81から、ハンドフォーク18に基板2を搭載した際の角2aに相当する位置まで斜めに延在した第2部分82と、第1部分81から、ハンドフォーク18に基板2を搭載した際の角2bに相当する位置まで斜めに延在した第3部分83とを備えている。
【0070】
また、検知用パネル40は、ハンドフォーク18の上面に位置決めされた状態で、2本のハンドフォーク18に搭載されている。具体的には、補正値算出工程を行う際、ハンドフォーク18では、基板2を下方から受けるための複数の凸状の受け部185の各々に位置決め部材29がネジ等により固定される。位置決め部材29には、検知用パネル40の位置決め穴84に嵌る位置決め突起290が形成されており、検知用パネル40は、位置決め突起290によって位置決めされる。
【0071】
この状態で、検知用パネル40の第2部分82および第3部分83の端部に形成された矩形の第1被検出部821および第2被検出部831は、基板2をハンドフォーク18に搭載した際の基板2の角2a、2bのエッジに重なる。
【0072】
次に、第4基準位置で第1アーム部15が停止するように原点センサ31の検知結果に基づいて、または原点センサ31の検知結果とエンコーダ24の検知結果に基づいて、第1アーム部15を停止させたときの第1アーム部15の停止位置である第3停止位置を基準にしてモータ21を駆動制御し、第1基準位置特定工程で特定された第1基準位置を基準にしてモータ22を駆動制御するとともに、第2基準位置特定工程で特定された第2基準位置を基準にしてモータ23を駆動制御して、ロボット1を仮の基準姿勢にする(ロボット動作工程)。
【0073】
すなわち、第3停止位置を基準にしてモータ21を駆動制御し、第1基準位置特定工程で特定された第1基準位置を基準にしてモータ22を駆動制御するとともに、第2基準位置特定工程で特定された第2基準位置を基準にしてモータ23を駆動制御して、ロボット1を仮のホームポジションまで動作させる。本形態では、たとえば、第1アーム部15が第3停止位置に停止し、第2アーム部16が第1基準位置に停止し、ハンド基部17が第2基準位置から90°回動した位置に停止している状態がロボット1の仮のホームポジション(仮の基準姿勢)となっている。かかるホームポジションは、図4(B)に示す状態である。
【0074】
なお、本体部10に対する第1アーム部15の回動方向における第1アーム部15の原点位置と第4基準位置とが一致している場合には、ロボット動作工程において、第4基準位置で第1アーム部15が停止するように原点センサ31の検知結果に基づいて第1アーム部15を回動させて停止させる。また、本体部10に対する第1アーム部15の回動方向における第1アーム部15の原点位置から第1アーム部15が所定角度回動した位置が第4基準位置となっている場合には、ロボット動作工程において、第4基準位置で第1アーム部15が停止するように、原点センサ31の検知結果とエンコーダ24の検知結果に基づいて第1アーム部15を回動させて停止させる。また、第3停止位置は、厳密には、第4基準位置から若干ずれている。また、ロボット動作工程の前までに、位置決め治具36、38は取り外されている。
【0075】
その後、ロボット1を動作させて基板2の受渡し位置にハンドフォーク18を移動させる(ハンド移動工程)。たとえば、図14(A)に示すように、チャンバー6の中の基板2の受渡し位置にハンドフォーク18を移動させる。具体的には、図4(B)に示す状態から、図4に矢印6aで示す動作を行い、図4(A)に示すように、アーム9を伸ばして、チャンバー6の中の基板2の受渡し位置にハンドフォーク18を移動させる。
【0076】
ここで、チャンバー6には、図15に示すように、第5基準位置を示す基準マークが付された参照部材と、カメラとが配置されている。本形態では、検知用パネル40の2つの被検出部(第1被検出部821および第2被検出部831)の位置を基準マークと対比する。このため、チャンバー6には、第1基準マーク860が付された遮光性の第1部材86と、第2基準マーク870が付された遮光性の第2部材87と、第1基準マーク860および第1被検出部821が視野88a内に入る第1カメラ88と、第2基準マーク870および第2被検出部831が視野89a内に入る第2カメラ89とが設けられている。
【0077】
本形態において、第1部材86および第2部材87は遮光性の板状部材であり、チャンバー6の内壁等に固定されている。また、第1基準マーク860および第2基準マーク870は各々、第1部材86および第2部材87を貫通する穴である。本形態において、第1部材86および第2部材87は、第1基準マーク860および第2基準マーク870が形成された部分は薄板になっている。
【0078】
第1基準マーク860および第2基準マーク870は、2つで第5基準位置を示している。具体的には、ハンドフォーク18に検知用パネル40が搭載された交換前のロボット1を動作させて、チャンバー6での基板2の受渡し位置にハンドフォーク18を移動させて停止させたときに、第1カメラ88での撮像結果において第1基準マーク860と第1被検出部821との位置関係、および第2カメラ89の撮像結果において第2基準マーク870と第2被検出部831との位置関係を、本体部10に対する第1アーム部15の回動方向における第5基準位置としてある。ここで、第1カメラ88の撮像結果において、第1基準マーク860と第1被検出部821とが所定の位置関係からずれている場合のずれ量、および第2カメラ89の撮像結果において第2基準マーク870と第2被検出部831とが所定の位置関係からずれている場合のずれ量に対応する第1アーム部15の回動方向および回動角度は、エンコーダ24での検出値に対応させた値として制御部27に記憶されている。
【0079】
従って、補正値算出工程では、第1カメラ88の撮像結果において第1基準マーク860と第1被検出部821とが所定の位置関係となり、第2カメラ89の撮像結果において第2基準マーク870と第2被検出部831とが所定の位置関係となるまで、本体部10に対して第1アーム部15を回動させなくても、ずれ量に対応するエンコーダ24での検出値に基づいて制御部27が補正値を算出することができる。
【0080】
すなわち、図14(A)に示すように、チャンバー6の中の基板2の受渡し位置にハンドフォーク18を移動させたときに、第1カメラ88の撮像結果において第1基準マーク860と第1被検出部821とが所定の位置関係からずれ、かつ、第2カメラ89の撮像結果において第2基準マーク870と第2被検出部831とが所定の位置関係からずれていたとする。この場合、補正値算出工程において、図14(B)に示すように、第1基準マーク860と第1被検出部821とが所定の位置関係となり、第2基準マーク870と第2被検出部831とが所定の位置関係になるまで、モータ21を駆動させて第1アーム部15を本体部10に対し回動させた際のエンコーダ24の値を補正値として算出することができる。
【0081】
その後、補正値算出工程で算出された補正値を反映させてモータ21を駆動制御し、第1基準位置特定工程で特定された第1基準位置を基準にしてモータ22を駆動制御するとともに、第2基準位置特定工程で特定された第2基準位置を基準にしてモータ23を駆動制御して、ロボット1を仮のホームポジションに戻す。具体的には、図4(A)に示す状態から、図4に矢印6bで示す動作を行い、図4(B)に示すように、仮のホームポジションに戻す。
【0082】
そして、再度、ロボット1を動作させて基板2の受渡し位置にハンドフォーク18を移動させる。そして、再度、第1カメラ88の撮像結果、および第2カメラ89の撮像結果に基づいて、第1基準マーク860と第1被検出部821との位置関係、および第2基準マーク870と第2被検出部831との位置関係に基づいて新たな補正値を算出した後、新たな補正値(今回の補正値)を反映させて、前回と同様、モータ21、22、23を駆動制御し、ロボット1を仮のホームポジションに戻す。従って、補正値は順次、更新されることになる。
【0083】
かかる動作を繰り返し行い、最新の補正値、あるいはずれ量(第1基準マーク860と第1被検出部821とのずれ量、および第2基準マーク870と第2被検出部831とのずれ量)が、予め設定されている閾値以下になった時点で、補正値を確定し、確定した補正値を反映させてモータ21を駆動制御し、第1基準位置特定工程で特定された第1基準位置を基準にしてモータ22を駆動制御するとともに、第2基準位置特定工程で特定された第2基準位置を基準にしてモータ23を駆動制御して、ロボット1を戻した位置を正
規のホームポジションとする。
【0084】
上記の動作を繰り返し行う際に、いずれの工程でも、仮のホームポジションから、チャンバー6の中の基板2の受渡し位置にハンドフォーク18を移動させる往路、およびチャンバー6の中の基板2の受渡し位置にハンドフォーク18が位置する状態から仮のホームポジションに戻る復路において、ロボット1は、第1アーム部15、第2アーム部16、およびハンド8に対して、図4に示す動作と同一の回動動作を行わせる。従って、補正値算出工程を行う際、モータや、モータの回転を減速してアーム等に伝達する減速機構のバックラッシュの影響が補正値に及びにくい。
【0085】
なお、本形態では、第1カメラ88の撮像結果において第1基準マーク860と第1被検出部821とが所定の位置関係からずれ、かつ、第2カメラ89の撮像結果において第2基準マーク870と第2被検出部831とが所定の位置関係からずれている場合、第1アーム部15を本体部10に対して回動させずに、ずれ量に対応するエンコーダ24の値を補正値として算出した。但し、第1カメラ88の撮像結果、および第2カメラ89の撮像結果からずれの方向を検出した後、図14(B)に示すように、第1アーム部15を本体部10に対してずれを解消するように回動させ、その際のエンコーダ24の検出量に基づいて補正値を算出してもよい。いずれの場合も、上記の補正値算出工程は、チャンバー7で行ってもよい。
【0086】
(プロセスチャンバー51(第2チャンバー)での第2補正値算出工程)
本形態では、チャンバー6での補正値算出工程を行った後、同様な補正値算出工程をプロセスチャンバー51でも行う。従って、プロセスチャンバー51にも、チャンバー6と同様、第1基準マーク860が付された第1部材86と、第2基準マーク870が付された第2部材87と、第1基準マーク860および第1被検出部821が視野内に入る第1カメラ88と、第2基準マーク870および第2被検出部831が視野内に入る第2カメラ89とが設けられている。
【0087】
従って、チャンバー6での補正値算出工程と略同様、図5(A)に示すように、ロボット1がホームポジションに位置する状態から、図5(B)に示す状態を経由させて、プロセスチャンバー51の中の基板2の受渡し位置にハンドフォーク18を移動させ、チャンバー51での補正値を算出する。
【0088】
その後、補正値算出工程で算出されたプロセスチャンバー51での補正値を反映させてモータ21を駆動制御し、第1基準位置特定工程で特定された第1基準位置を基準にしてモータ22を駆動制御するとともに、第2基準位置特定工程で特定された第2基準位置を基準にしてモータ23を駆動制御して、ロボット1を図5(B)に示す状態を経由させて、図5(A)に示す仮のホームポジションに戻す。
【0089】
そして、再度、ロボット1を動作させてプロセスチャンバー51での基板2の受渡し位置にハンドフォーク18を移動させ、新たな補正値を算出した後、新たな補正値(今回の補正値)を反映させて、ロボット1を仮のホームポジションに戻す。かかる動作を繰り返し行い、最新の補正値等が予め設定されている閾値以下になった時点で、補正値を確定する。
【0090】
上記の動作を繰り返し行う際に、いずれの工程でも、仮のホームポジションから、プロセスチャンバー51の中の基板2の受渡し位置にハンドフォーク18を移動させる往路、およびプロセスチャンバー51の中の基板2の受渡し位置にハンドフォーク18が位置する状態から仮のホームポジションに戻る復路において、ロボット1は、第1アーム部15、第2アーム部16、およびハンド8に対して、図5に示す動作と同一の回動動作を行
わせる。従って、補正値算出工程を行う際、モータや、モータの回転を減速してアーム等に伝達する減速機構のバックラッシュの影響が補正値に及びにくい。
【0091】
(プロセスチャンバー53(第3チャンバー)での第3補正値算出工程)
本形態では、チャンバー6での補正値算出工程、およびプロセスチャンバー51での補正値算出工程を行った後、同様な補正値算出工程をプロセスチャンバー53でも行う。従って、プロセスチャンバー53にも、チャンバー6と同様、第1基準マーク860が付された第1部材86と、第2基準マーク870が付された第2部材87と、第1基準マーク860および第1被検出部821が視野内に入る第1カメラ88と、第2基準マーク870および第2被検出部831が視野内に入る第2カメラ89とが設けられている。
【0092】
従って、チャンバー6での補正値算出工程と略同様、図7(A)に示すように、ロボット1がホームポジションに位置する状態から、図7(B)に示す状態を経由させて、プロセスチャンバー53の中の基板2の受渡し位置にハンドフォーク18を移動させ、チャンバー51での補正値を算出する。
【0093】
その後、補正値算出工程で算出されたプロセスチャンバー53での補正値を反映させてモータ21を駆動制御し、第1基準位置特定工程で特定された第1基準位置を基準にしてモータ22を駆動制御するとともに、第2基準位置特定工程で特定された第2基準位置を基準にしてモータ23を駆動制御して、ロボット1を図7(B)に示す状態を経由させて、図7(A)に示す仮のホームポジションに戻す。
【0094】
そして、再度、ロボット1を動作させてプロセスチャンバー53での基板2の受渡し位置にハンドフォーク18を移動させ、新たな補正値を算出した後、新たな補正値(今回の補正値)を反映させて、ロボット1を仮のホームポジションに戻す。かかる動作を繰り返し行い、最新の補正値等が予め設定されている閾値以下になった時点で、補正値を確定する。
【0095】
上記の動作を繰り返し行う際に、いずれの工程でも、仮のホームポジションから、プロセスチャンバー53の中の基板2の受渡し位置にハンドフォーク18を移動させる往路、およびプロセスチャンバー53の中の基板2の受渡し位置にハンドフォーク18が位置する状態から仮のホームポジションに戻る復路において、ロボット1は、第1アーム部15、第2アーム部16、およびハンド8に対して、図7に示す動作と同一の回動動作を行わせる。従って、補正値算出工程を行う際、モータや、モータの回転を減速してアーム等に伝達する減速機構のバックラッシュの影響が補正値に及びにくい。
【0096】
(ハンドフォーク19の調整)
なお、本形態では、ハンドフォーク18での補正値算出工程の後、ハンド基部17を180°回動させるとともに2本のハンドフォーク19に検知用パネル40を載せ換えてから、チャンバー6の中の基板2の受渡し位置にハンドフォーク19を移動させる。このとき、第1カメラ88の撮像結果において第1基準マーク860と第1被検出部821とが所定の位置関係からずれ、かつ、第2カメラ89の撮像結果において第2基準マーク870と第2被検出部831とが所定の位置関係からずれている場合には、第1基準マーク860と第1被検出部821とが所定の位置関係となり、第2基準マーク870と第2被検出部831とが所定の位置関係となるように、位置決め治具38を用いて、ハンドフォーク19の長手方向に直交する方向におけるハンド基部17へのハンドフォーク19の固定位置を調整する。
【0097】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、第1基準位置特定工程において位置決め治具36
を用いて、第1アーム部15に対する第2アーム部16の回動方向における第2アーム部16の基準位置である第1基準位置を特定し、第2基準位置特定工程において位置決め治具37を用いて、第2アーム部16に対するハンド基部17の回動方向におけるハンド基部17の基準位置である第2基準位置を特定し、ハンドフォーク位置決め工程において位置決め治具38によって、ハンド基部17に対するハンドフォーク18の長手方向に直交する方向におけるハンドフォーク18の基準位置である第3基準位置にハンドフォーク18を位置決めしている。
【0098】
また、本形態では、その後のロボット動作工程において、第1基準位置特定工程で特定された第1基準位置を基準にしてモータ22を駆動制御するとともに、第2基準位置特定工程で特定された第2基準位置を基準にしてモータ23を駆動制御して、ロボット1を仮の基準姿勢にしてから、ハンド移動工程において、ハンドフォーク18をチャンバー6、プロセスチャンバー51、およびプロセスチャンバー53に移動させて補正値算出工程を行い、モータ21を制御するための補正値を算出している。すなわち、本形態では、第2アーム部16、ハンド基部17およびハンドフォーク18を所定の基準位置に合わせた状態で、ハンドフォーク18をチャンバー6、プロセスチャンバー51、およびプロセスチャンバー53に移動させて補正値算出工程を行い、第1アーム部15を駆動するモータ21を制御するための補正値を算出している。
【0099】
また、本形態では、ハンドフォーク18に検知用パネル40が搭載された交換前のロボット1を動作させて、チャンバー6、プロセスチャンバー51、およびプロセスチャンバー53にハンドフォーク18を移動させたときに、本体部10に対する第1アーム部15の回動方向において、検知用パネル40の第1被検出部821および第2被検出部831に対応する位置が第5基準位置となっている。そのため、本形態では、補正値算出工程において、モータ21を制御するための補正値を算出することで、交換前のロボット1の教示作業で教示された教示位置の座標に対する交換後のロボット1のロボット座標系のずれを補正するための補正値を算出することが可能になる。
【0100】
すなわち、本形態では、第5基準位置と検知用パネル40の第1被検出部821および第2被検出部831との、本体部10に対する第1アーム部15の回動方向におけるずれ量に基づいて補正値を算出することで、交換前のロボット1の教示作業で教示された教示位置の座標に対する交換後のロボット1のロボット座標系のずれを補正するための補正値を算出することが可能になる。したがって、本形態では、交換前のロボット1の教示作業で教示された教示位置の座標に対する交換後のロボット1のロボット座標系のずれを補正するための補正値を比較的容易に算出することが可能になる。
【0101】
また、本形態では、チャンバー6、プロセスチャンバー51、およびプロセスチャンバー53の各々で補正値算出工程を行うため、補正値の精度を高めることができる。
【0102】
また、本形態では、補正値算出工程において、遮光性の検知用パネル40、および遮光性の部材(第1部材86および第2部材87)に形成された穴からなる基準マーク(第1基準マーク860および第2基準マーク870)を用いるため、カメラ(第1カメラ88および第2カメラ89)での撮像に適している。また、カメラ(第1カメラ88および第2カメラ89)による撮像結果を利用すれば、本体部10に対して第1アーム部15を回動させなくても、第5基準位置に対する検知用パネル40のずれ量を求めることが可能になる。また、カメラ(第1カメラ88および第2カメラ89)による撮像結果を利用すれば、本体部10に対して第1アーム部15を回動させなくても、本体部10に対して第1アーム部15を回動させたときのエンコーダ24の動作量を得ることができ、かかる動作量を補正値として算出することができる。
【0103】
また、補正値算出工程において、チャンバー6、プロセスチャンバー51、およびプロセスチャンバー53にハンドフォーク18を移動させる動作と、チャンバー6、プロセスチャンバー51、およびプロセスチャンバー53から仮のホームポジションに戻る動作とを繰り返し行う際、ロボット1は、第1アーム部15、第2アーム部16、およびハンド8に対して、図4に示す動作と同一の回動動作を行わせる。従って、補正値算出工程を行う際、モータや、モータの回転を減速してアーム等に伝達する減速機構のバックラッシュの影響が補正値に及びにくい。
【0104】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。例えば、上記実施形態では、補正値算出工程において検知用パネル40の位置をカメラで観察したが、センサ等を用いてもよい。その場合、検知用パネル40として、基板2と形状およびサイズが等しい基板を用いてもよい。
【0105】
上述した形態において、第1アーム部15に対する第2アーム部16の回動方向における第2アーム部16の原点位置から第2アーム部16が所定角度回動した位置が第1基準位置となっていても良い。この場合には、製造システム3に設置されるロボット1が交換されると、第1基準位置で第2アーム部16が停止するように原点センサ32の検知結果とエンコーダ25の検知結果とに基づいて第2アーム部16を回動させて停止させる。
【0106】
また、上述した形態において、第2アーム部16に対するハンド基部17の回動方向におけるハンド基部17の原点位置と第2基準位置とが一致していても良い。この場合には、製造システム3に設置されるロボット1が交換されると、第2基準位置でハンド基部17が停止するように原点センサ33の検知結果に基づいてハンド基部17を回動させて停止させる。また、上述した形態において、ロボット動作工程の後にパネル搭載工程が行われても良い。
【0107】
上述した形態では、製造システム3に設置されたロボット1に対して、第1基準位置特定工程と第2基準位置特定工程とハンドフォーク位置決め工程とを行っているが、製造システム3に設置される前のロボット1に対して、第1基準位置特定工程と第2基準位置特定工程とハンドフォーク位置決め工程とを行っても良い。たとえば、ロボット1の組立工場において、ロボット1に対して、第1基準位置特定工程と第2基準位置特定工程とハンドフォーク位置決め工程とを行っても良い。
【0108】
また、組立工場から製造システム3までロボット1を搬送する際、長さの長いハンドフォーク18、19が搬送の支障とならないように、ハンドフォーク18、19を取り外した状態で、組立工場から製造システム3までロボット1を搬送する場合には、組立工場において、ロボット1に対して、第1基準位置特定工程と第2基準位置特定工程とを行い、製造システム3に設置された後のロボット1に対してハンドフォーク位置決め工程を行っても良い。
【0109】
上述した形態において、固定部材41は、第2アーム部16に固定されていても良い。この場合には、第1アーム部15の基端の側面に、ピン42が挿入される第1挿入穴としての挿入穴が形成されている。また、上述した形態において、固定部材44は、ハンド基部17に固定されていても良い。この場合には、第1アーム部15の基端の側面に、ピン45が挿入される第2挿入穴としての挿入穴が形成されている。さらに、上述した形態において、固定部材48、49は、第2アーム部16に固定されていても良い。この場合には、2本のハンドフォーク18に、ピン50が挿入される第3挿入穴としての挿入穴が形成されている。
【0110】
上述した形態において、ハンド8は、ハンドフォーク19を備えていなくても良い。また、上述した形態では、ロボット1によって搬送される搬送対象物は有機ELディスプレイ用の基板2であるが、ロボット1によって搬送される搬送対象物は、液晶ディスプレイ用のガラス基板であっても良いし、半導体ウエハ等であっても良い。また、上述した形態において、ロボット1は、大気圧となっている空間の中に配置されていても良い。
【符号の説明】
【0111】
1・・ロボット(産業用ロボット)、2・・基板(搬送対象物)、5、6、7・・チャンバー、8・・ハンド、9・・アーム、10・・本体部、15・・第1アーム部、16・・第2アーム部、17・・ハンド基部、18・・ハンドフォーク、21・・モータ(第1モータ)、22・・モータ(第2モータ)、23・・モータ(第3モータ)、24・・エンコーダ(第1エンコーダ)、25・・エンコーダ(第2エンコーダ)、26・・エンコーダ(第3エンコーダ)、31・・原点センサ(第1原点センサ)、32・・原点センサ(第2原点センサ)、33・・原点センサ(第3原点センサ)、36・・位置決め治具(第1位置決め治具)、37・・位置決め治具(第2位置決め治具)、38・・位置決め治具(第3位置決め治具)、80・・検知用パネル、86・・第1部材、87・・第1部材、88・・第1カメラ、89・・第2カメラ、860・・第1基準マーク、870・・第2基準マーク、C1・・第1回動中心、C2・・第2回動中心、C3・・第3回動中心
図1
図2
図3
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図10
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図15