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特許7129794変化要因予測装置及び変化要因予測プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】変化要因予測装置及び変化要因予測プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/90 20060101AFI20220826BHJP
   G01C 11/06 20060101ALN20220826BHJP
【FI】
G01S13/90 127
G01S13/90 191
G01C11/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018042690
(22)【出願日】2018-03-09
(65)【公開番号】P2019158439
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100102716
【弁理士】
【氏名又は名称】在原 元司
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【弁理士】
【氏名又は名称】竹居 信利
(72)【発明者】
【氏名】小俣 雅志
(72)【発明者】
【氏名】阿部 直樹
(72)【発明者】
【氏名】森田 保成
(72)【発明者】
【氏名】舩木 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】寳楽 裕
(72)【発明者】
【氏名】三五 大輔
【審査官】九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-209780(JP,A)
【文献】特開2008-046107(JP,A)
【文献】特開2006-284234(JP,A)
【文献】特開2013-084072(JP,A)
【文献】特開2013-196151(JP,A)
【文献】特開2006-266858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
G01S 13/00 -13/95
G01C 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ装置により得られた、地表の所望範囲である観測対象領域のレーダ画像データである観測データに含まれる、地表からの反射波の位相の情報から、前記観測対象領域に状態の変化を生じさせる原因となった現象の発生時点より前の2時期間及び前後の各1時期間の干渉値を求め、前記観測対象領域内で、前記干渉値の差分が予め定めた閾値以上の領域を状態が変化した変化領域として抽出する変化領域抽出手段と、
前記変化領域の特徴情報としての傾斜量、地形種及び地形場の少なくとも一つを、傾斜量の場合は前記観測対象領域の数値標高モデルを使用して演算し、地形種及び地形場の場合は地形図情報から読み出して取得する特徴情報取得手段と、
前記変化領域の特徴情報に基づき、前記変化領域に生じた変化の種類を識別するための因子である変化要因を、前記特徴情報と前記変化要因とを関連付けたテーブルに基づき予測する変化要因予測手段と、
を備える変化要因予測装置。
【請求項2】
変化要因の予測対象領域を前記観測対象領域内に設定する予測対象領域設定手段をさらに備え、
前記変化要因予測手段は、前記予測対象領域の範囲内で状態が変化した変化領域の変化要因を予測する、請求項1に記載の変化要因予測装置。
【請求項3】
前記変化領域抽出手段は、
前記観測対象領域について、前記状態の変化を生じさせる原因となった現象の発生時点より前の2時期及び後の1時期において取得した観測データに基づき、前記現象の発生時点より前の2時期間及び前後の各1時期間の干渉値を演算する干渉値演算手段と、
前記現象の発生時点より前の2時期間と前後の各1時期間との干渉値の差分を演算する差分演算手段と、
前記差分が予め定めた閾値以上の領域を変化領域として抽出する抽出手段と、
を備える、請求項1または請求項2に記載の変化要因予測装置。
【請求項4】
コンピュータを、
レーダ装置により得られた、地表の所望範囲である観測対象領域のレーダ画像データである観測データに含まれる、地表からの反射波の位相の情報から、前記観測対象領域に状態の変化を生じさせる原因となった現象の発生時点より前の2時期間及び前後の各1時期間の干渉値を求め、前記観測対象領域内で、前記干渉値の差分が予め定めた閾値以上の領域を状態が変化した変化領域として抽出する変化領域抽出手段、
前記変化領域の特徴情報としての傾斜量、地形種及び地形場の少なくとも一つを、傾斜量の場合は前記観測対象領域の数値標高モデルを使用して演算し、地形種及び地形場の場合は地形図情報から読み出して取得する特徴情報取得手段、
前記変化領域の特徴情報に基づき、前記変化領域に生じた変化の種類を識別するための因子である変化要因を、前記特徴情報と前記変化要因とを関連付けたテーブルに基づき予測する変化要因予測手段、
として機能させる変化要因予測プログラム。
【請求項5】
コンピュータを、さらに
変化要因の予測対象領域を前記観測対象領域内に設定する予測対象領域設定手段として機能させ、
前記変化要因予測手段は、前記予測対象領域の範囲内で状態が変化した変化領域の変化要因を予測する、請求項4に記載の変化要因予測プログラム。
【請求項6】
前記変化領域抽出手段は、コンピュータを、
前記観測対象領域について、前記状態の変化を生じさせる原因となった現象の発生時点より前の2時期及び後の1時期において取得した観測データに基づき、前記現象の発生時点より前の2時期間及び前後の各1時期間の干渉値を演算する干渉値演算手段、
前記現象の発生時点より前の2時期間と前後の各1時期間との干渉値の差分を演算する差分演算手段、
前記差分が予め定めた閾値以上の領域を変化領域として抽出する抽出手段、
として機能させて実現する、請求項4または請求項5に記載の変化要因予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変化要因予測装置及び変化要因予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
土砂災害等の災害が発生した場合、災害発生前後の計測データに基づいて、災害により状態の変化が生じた変化領域を解析する技術が提案されている。例えば、下記特許文献1には、災害前・後のDSMデータから、災害面積値と災害体積値を算出し、災害規模を推定している。
【0003】
また、下記特許文献2には、複数のコヒーレンスマップから特徴量を算出し、算出した特徴量と変化定義パラメータとを基に変化定義毎の特徴量を抽出している。
【0004】
しかし、上記の方法では、災害の範囲や発生箇所を把握することは可能だが、どのような要因で変化したか不明であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-33157号公報
【文献】特開2010-175381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、変化領域に状態の変化を生じさせた要因を予測する変化要因予測装置及び変化要因予測プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態は、変化要因予測装置であって、観測データに基づき観測対象領域内で状態が変化した変化領域を抽出する変化領域抽出手段と、前記変化領域の特徴情報を取得する特徴情報取得手段と、前記特徴情報に基づき、前記変化領域に生じた変化の種類を識別するための因子である変化要因を予測する変化要因予測手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記特徴情報は、前記変化領域の傾斜量、地形種及び地形場の少なくとも一つを含むのが好適である。
【0009】
上記変化要因予測装置は、変化要因の予測対象領域を前記観測対象領域内に設定する予測対象領域設定手段をさらに備え、前記変化要因予測手段は、前記予測対象領域の範囲内で状態が変化した変化領域の変化要因を予測してもよい。
【0010】
また、上記変化領域抽出手段は、前記観測対象領域について、前記状態の変化を生じさせる原因となった現象の発生時点より前の2時期及び後の1時期において取得した観測データに基づき、前記現象の発生時点より前の2時期間及び前後の各1時期間の干渉値を演算する干渉値演算手段と、前記現象の発生時点より前の2時期間と前後の各1時期間との干渉値の差分を演算する差分演算手段と、前記差分が予め定めた閾値以上の領域を変化領域として抽出する抽出手段と、を備えるのが好適である。
【0011】
また、上記特徴情報取得手段は、数値標高モデルを使用して前記変化領域の傾斜量を演算し、地形図情報に基づいて前記変化領域の地形種及び地形場の情報を取得するのが好適である。
【0012】
本発明の他の実施形態は、変化要因予測プログラムであって、コンピュータを、観測データに基づき観測対象領域内で状態が変化した変化領域を抽出する変化領域抽出手段、前記変化領域の特徴情報を取得する特徴情報取得手段、前記特徴情報に基づき、前記変化領域に生じた変化の種類を識別するための因子である変化要因を予測する変化要因予測手段、として機能させることを特徴とする。
【0013】
また、上記変化要因予測プログラムは、コンピュータを、さらに変化要因の予測対象領域を前記観測対象領域内に設定する予測対象領域設定手段として機能させ、前記変化要因予測手段は、前記予測対象領域の範囲内で状態が変化した変化領域の変化要因を予測してもよい。
【0014】
また、上記変化領域抽出手段は、コンピュータを、前記観測対象領域について、前記状態の変化を生じさせる原因となった現象の発生時点より前の2時期及び後の1時期において取得した観測データに基づき、前記現象の発生時点より前の2時期間及び前後の各1時期間の干渉値を演算する干渉値演算手段、前記現象の発生時点より前の2時期間と前後の各1時期間との干渉値の差分を演算する差分演算手段、前記差分が予め定めた閾値以上の領域を変化領域として抽出する抽出手段、として機能させて実現するのが好適である。
【0015】
また、上記特徴情報取得手段は、コンピュータを、数値標高モデルを使用して前記変化領域の傾斜量を演算し、地形図情報に基づいて前記変化領域の地形種及び地形場の情報を取得するのが好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、変化領域に状態の変化を生じさせた要因を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態にかかる変化要因予測装置を使用した、観測対象領域の変化要因抽出システムの構成例を示す図である。
図2】実施形態にかかる変化要因予測装置の例の機能ブロック図である。
図3】実施形態にかかる変化領域抽出部の例の機能ブロック図である。
図4】実施形態にかかる変化領域抽出部による変化領域の抽出方法の説明図である。
図5】実施形態にかかる変化領域抽出部が抽出した変化領域の例を示す図である。
図6】実施形態にかかる変化要因予測部が変化要因の予測に使用するテーブルの例を示す図である。
図7】実施形態にかかる変化要因予測装置の動作例のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0019】
図1には、実施形態にかかる変化要因予測装置を使用した、観測対象領域の変化要因抽出システムの構成例が示される。ここで、変化要因とは、地震、台風その他の災害により、あるいは工事その他の人為的な行為により地表面に状態の変化が生じた場合に、当該変化の種類を識別するための因子である。このような変化要因(因子)としては、例えば地表面が陥没した場合の崩壊、崩壊により土砂が堆積した場合の崩壊堆積物、地すべりにより崖が生じた場合の地すべり滑落崖、地すべりにより斜面下部に土砂が堆積した場合の地すべり土塊、土石流が堆積した土石流堆、渓流の岸が侵食される渓岸侵食、流木等が挙げられるが、これらには限定されない。
【0020】
図1において、変化要因抽出システムは、人工衛星101に搭載された合成開口レーダ(SAR)等のレーダ装置により得られた、地表の所望範囲である観測対象領域のレーダ画像データを観測データとして取得し、このレーダ画像データを本実施形態の変化要因予測装置102に送信する。変化要因予測装置102では、アンテナ103を介して受信したレーダ画像データを処理して観測対象領域の地表の状態を解析し、観測対象領域内で地表面に状態の変化が生じた領域(変化領域)について変化要因を予測する。この場合のレーダ画像データは、異なる時刻にレーダ装置により取得されたレーダ画像データであって、地表面に状態の変化を生じさせる原因となった現象である上記災害あるいは人為的行為の発生時点より前2時期及び後1時期とするのが好適であるが、これらには限定されない。また、変化要因予測装置102は、例えばコンピュータ上で所定のプログラムを動作させることにより実現することができる。
【0021】
なお、上記人工衛星101の数は1基に限らず、同一の撮影仕様である複数の人工衛星であってもよい。また、上記レーダ装置は、人工衛星101の他、航空機に搭載してもよい。
【0022】
図2には、実施形態にかかる変化要因予測装置の例の機能ブロック図が示される。図2において、変化要因予測装置102は、観測データ取得部10、予測対象領域設定部12、変化領域抽出部14、特徴情報取得部16、変化要因予測部18、表示制御部20、通信部22、記憶部24及びCPU26を含んで構成されている。上記変化要因予測装置は、CPU26、ROM、RAM、不揮発性メモリ、I/O、通信インターフェース等を備え、装置全体の制御及び各種演算を行うコンピュータとして構成されており、上記各機能は、例えばCPU26とCPU26の処理動作を制御するプログラムとにより実現される。
【0023】
観測データ取得部10は、人工衛星101等から送信され、アンテナ103により受信された、上記観測対象領域における地表のレーダ画像データを観測データとして取得し、記憶部24に記憶する。この場合のアンテナ103は、本実施形態の通信部22の一部を構成する。また、上記観測データとしてのレーダ画像データは、上述したように、異なる時点、例えば地震等の災害あるいは人為的行為の発生時点より前2時期及び後1時期に取得されたレーダ画像データである。このレーダ画像データには、地表からの反射波の位相の情報が含まれており、異なる時点のデータにより、後述する干渉値(コヒーレンスともいう)を演算できる。
【0024】
なお、上記観測対象領域は、変化を抽出するための領域を設定するものであり、抽出した変化領域から後述する予測対象領域を特定するための領域設定である。上記観測対象領域の指定は、例えば、キーボード、マウス等の適宜な入力手段から使用者が入力した観測対象領域を指定するための指定情報に基づき、観測データ取得部10が指定した領域であり、その位置情報と共に記憶部24に記憶させる。なお上記観測対象領域の指定は、行政界の形状や河川等の地形形状としてもよい。観測データ取得部10は、位置情報を含む観測対象領域の情報を記憶部24から読み出し、観測対象領域の位置情報に基づいて観測対象領域について得られたレーダ画像データを観測データとして取得する。
【0025】
予測対象領域設定部12は、変化要因予測装置が上記観測対象領域内で変化要因を予測する対象となる領域である予測対象領域を設定する。予測対象領域は、例えば、キーボード、マウス等の適宜な入力手段から使用者が入力した予測対象領域を設定するための設定情報に基づいて、上記観測対象領域内に設定する。なお、上記観測対象領域内に予測対象領域を複数設定してもよく、また予測対象領域は、行政界の形状や河川等の地形形状としてもよい。予測対象領域設定部12が設定した予測対象領域の情報には予測対象領域の位置情報も含まれ、記憶部24に記憶する。
【0026】
変化領域抽出部14は、観測データ取得部10が取得した観測データを記憶部24から読み出し、この観測データに基づいて地表面に状態の変化が生じた変化領域を抽出する。この場合の変化領域は、上記観測対象領域内で抽出するが、上記予測対象領域内で抽出してもよい。変化領域の抽出方法は後述する。変化領域抽出部14が抽出した変化領域の情報は、メッシュ単位もしくは各メッシュ内の代表点であり、その位置情報と共に記憶部24に記憶する。
【0027】
特徴情報取得部16は、上記変化領域抽出部14が抽出した観測対象領域内の変化領域の情報を記憶部24から読み出し、読み出した変化領域の位置情報に基づき当該変化領域の特徴情報を取得して記憶部24に記憶する。ここで、特徴情報とは、観測対象領域の傾斜量、地形種及び地形場の少なくとも一つを含む情報である。傾斜量は観測対象領域に設定した正方形領域及びこれに隣接する8近傍の正方形領域の標高から従来公知の方法で算出することができる。この場合、傾斜量を算出する中心の正方形領域及びこれを囲む8近傍の正方形領域の大きさ(面積)は、傾斜量の算出精度等を考慮して適宜決定することができる。また、標高の値は、特徴情報取得部16が観測対象領域の情報を記憶部24から読み出し、この予測対象領域を含む地域の数値標高モデル(DEM:Digital Elevation Model)から取得することができる。数値標高モデルは、予め記憶部24に記憶しておき、特徴情報取得部16が読み出して使用する構成とすることができる。また、地形種とは、特定の成因で形成された特定の形態的特徴をもつと地形学的に認定された部分のことをいい、山地斜面、河谷、沖積錐、谷底低地、沖積平野等が含まれる。また、地形場とは、任意の場所の地形過程を制約する、その場所およびその周囲の既存地形の形態的特徴ならびにその既存地形に対するその場所の相対的位置の総称のことをいい、0次谷、谷頭部、河谷出口、山地斜面近傍等が含まれる。地形種及び地形場は、上記観測対象領域が含まれる地形図情報から得ることができる。地形図情報は、予め記憶部24に記憶しておき、特徴情報取得部16が読み出して使用する構成とすることができる。
【0028】
なお、特徴情報取得部16は、上記予測対象領域設定部12が観測対象領域内に設定した予測対象領域の情報を記憶部24から読み出し、予測対象領域の位置情報に基づいて予測対象領域内に抽出された変化領域の特徴情報を取得する構成としてもよい。この場合も、取得した予測対象領域内に抽出された変化領域の特徴情報は、記憶部24に記憶する。
【0029】
なお、特徴情報には、構成地質を含ませてもよい。構成地質には、新第三紀堆積岩類、珪長質深成岩(花崗岩)等が含まれる。これらの構成地質の情報は、上記地形図情報あるいは独自調査により得ることができ、予め記憶部24に記憶しておき、特徴情報取得部16が読み出して使用する構成とすることができる。
【0030】
変化要因予測部18は、上記特徴情報取得部16が取得した観測対象領域内の変化領域毎の特徴情報を記憶部24から読み出し、この特徴情報に基づき、観測対象領域内の変化領域に生じた変化の種類を識別するための因子である変化要因を、変化領域毎に予測する。変化要因予測部18が予測した変化要因は、記憶部24に記憶させる。変化要因を予測する際には、上記特徴情報と変化要因とを関連付けたテーブルを作成しておき、変化要因予測部18が変化領域毎に記憶部24から特徴情報を読み出し、この特徴情報に関連付いた変化要因を上記テーブルから決定する構成とすることができる。上記テーブルも記憶部24に記憶させておき、変化要因予測部18が読み出して使用する。
【0031】
なお、上記予測対象領域内の変化領域の特徴情報が記憶部24に記憶されている場合には、変化要因予測部18がこの予測対象領域内の変化領域の特徴情報を記憶部24から読み出し、これに基づいて予測対象領域内の変化領域について変化要因を予測する構成としてもよい。
【0032】
表示制御部20は、変化領域抽出部14が抽出した変化領域、変化要因予測部18が予測した変化要因等を記憶部24から読み出し、液晶表示装置その他の適宜な表示装置を制御して表示する。また、変化要因の予測に使用する上記テーブルを表示してもよい。
【0033】
通信部22は、適宜なインターフェースにより構成され、無線または有線の通信回線を介してCPU26が外部のサーバ等とデータをやり取りするために使用する。また、上述したように、アンテナ103を介してレーダ装置が搭載された人工衛星101とも通信する。
【0034】
記憶部24は、ハードディスク装置、ソリッドステートドライブ(SSD)等の不揮発性メモリで構成され、上記各種情報等、及びCPU26の動作プログラム等の、地表変状可視化装置が行う各処理に必要な情報を記憶させる。なお、記憶部24としては、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)、光磁気ディスク(MO)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープ、電気的消去および書き換え可能な読出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュ・メモリ等を使用してもよい。また、記憶部24には、主としてCPU26の作業領域として機能するランダムアクセスメモリ(RAM)、及びBIOS等の制御プログラムその他のCPU26が使用するデータが格納される読み出し専用メモリ(ROM)を含めるのが好適である。
【0035】
図3には、変化領域抽出部14の例の機能ブロック図が示される。また、図4には、変化領域抽出部14による変化領域の抽出方法の説明図が示される。
【0036】
図3において、変化領域抽出部14は、干渉値演算部28、差分演算部30及び抽出部32を含んで構成されている。
【0037】
干渉値演算部28は、上記観測対象領域に変化を生じさせる原因となった災害あるいは人為的行為等の現象の発生時点より前の2時期及び後の1時期において取得した観測データに基づき、上記現象の発生時点より前の2時期間及び前後の各1時期間の干渉値を演算する。ここで、干渉値の演算は、上記観測対象領域内に予め定めた面積で設定された単位領域毎に行われる。なお、単位領域の大きさは、現在使用されているSARの場合、例えば3m×5mとすることができるが、この大きさに限定されるものではない。
【0038】
図4では、上記現象の発生時点より前の2時期の観測データが観測データ1及び観測データ2で示されている。観測データ1が、時間的に観測データ2より前に取得されたデータである。また、上記現象の発生時点より後の1時期の観測データが観測データ3で示されている。
【0039】
ここで、干渉値は、以下の式により演算できる。
【数1】
【0040】
ここで、γは干渉値であり、A,Bはそれぞれ干渉値を計算する観測データ(レーダ画像データ)のピクセル値を表す複素数である(A及びBは、それぞれ共役複素数を表す)。干渉値(コヒーレンス)γが高いとき、レーダ画像データ間の位相のばらつき(分散)は小さくなる。これは物理的に、二つのレーダ画像データ間で地表面の変化(状態の差)が小さいことを示す。逆に干渉値γが低いとき、二つのレーダ画像データ間で地表面の変化が大きいことを示す。地表面の変化が大きいときには、取得時刻が異なるレーダ画像データ間で互いに干渉できなくなるからである。
【0041】
図4では、上記現象の発生時点より前の2時期の干渉値が干渉値1で示され、前後の各1時期間の干渉値が干渉値2で示されている。
【0042】
差分演算部30は、上記干渉値演算部28が演算した、上記現象の発生時点より前の2時期と前後の各1時期間との干渉値(干渉値1と干渉値2)の差分を演算する。図4では、上記干渉値の差分が差分干渉値で示されている。
【0043】
抽出部32は、上記差分干渉値の絶対値が予め定めた閾値以上の領域を変化領域として抽出する。閾値は、上記現象の種類、上記現象が発生した地域の特性等を勘案して適宜決定することができる。
【0044】
また、上記観測対象領域内で差分演算部30が演算した差分干渉値の頻度分布(一定範囲の差分干渉値を有する上記単位領域の数の、上記一定範囲毎の分布)を作成し、差分干渉値の絶対値が異常値と判定される値、例えば平均値からのずれが2σにあたる差分干渉値を閾値としてもよい。
【0045】
以上に述べた変化領域の抽出方法では、上記現象の発生時点より前の2時期及び後の1時期において取得した観測データを使用しているが、これには限定されず、上記現象により地表面の状態が変化した変化領域を抽出できる観測データの組合せであればいずれも使用できる。
【0046】
図5には、変化領域抽出部14が抽出した変化領域の例が示される。図5において、変化領域Cが、観測対象領域Aを表す地形図上に黒色の領域として表示されている。特徴情報取得部16は、変化領域C毎に特徴情報として傾斜量、地形種及び地形場等を取得する。変化要因予測部18は、上記各変化領域Cについて取得された特徴情報に基づいて変化要因を予測する。
【0047】
なお、上述したように、予測対象領域設定部12が観測対象領域A内に予測対象領域B(図5において破線で囲まれた領域)を設定している場合には、変化要因予測部18が予測対象領域B内の変化領域Cについて変化要因を予測する構成としてもよい。
【0048】
図6には、変化要因予測部18が変化要因の予測に使用するテーブルの例が示される。図6に示されたテーブルの例では、特徴情報としての傾斜量、地形種、地形場、構成地質の内容毎に変化要因が関連付けられている。変化要因予測部18は、各変化領域について、特徴情報取得部16が取得した上記特徴情報の内容に基づき、テーブルにおいて関連付けられた変化要因を読み出して予測結果として出力する。なお、図6の例では、各特徴情報について、変化要因として考えられる可能性を百分率(%)で表している。また、変化要因は、土砂等が除去される場合である「除去」と、土砂等が付加される場合である「付加」に分けて表されている。
【0049】
図7には、実施形態にかかる変化要因予測装置の動作例のフローが示される。図7において、観測データ取得部10は、観測対象領域における地表のレーダ画像データを観測データとして取得し、記憶部24に記憶する(S1)。
【0050】
変化領域抽出部14は、観測データ取得部10が取得した観測データを記憶部24から読み出し、この観測データに基づいて地表面に状態の変化が生じた変化領域を抽出して記憶部24に記憶する(S2)。
【0051】
また、予測対象領域設定部12は、観測対象領域内に予測対象領域を設定する(S3)。なお、S3の処理は省略してもよい。
【0052】
次に、特徴情報取得部16は、記憶部24から読み出した変化領域について、傾斜量、地形種及び地形場の少なくとも一つを含む特徴情報を取得する(S4)。この場合、S3において予測対象領域が設定されているときは、予測対象領域内の変化領域について特徴情報を取得する構成としてもよい。なお、S3とS4の順序を逆にして、観測対象領域内について特徴情報を取得してから予測対象領域を設定してもよい。取得した特徴情報は、記憶部24に記憶する。
【0053】
変化要因予測部18は、上記特徴情報取得部16が取得した特徴情報を記憶部24から読み出し、この特徴情報と変化要因とを関連付けたテーブルに基づいて変化領域に生じた変化を識別するための因子である変化要因を予測する(S5)。
【0054】
上述した、図7の各ステップを実行するためのプログラムは、記録媒体に格納することも可能であり、また、そのプログラムを通信手段によって提供しても良い。その場合、例えば、上記説明したプログラムについて、「プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」の発明または「データ信号」の発明として捉えても良い。
【符号の説明】
【0055】
10 観測データ取得部、12 予測対象領域設定部、14 変化領域抽出部、16 特徴情報取得部、18 変化要因予測部、20 表示制御部、22 通信部、24 記憶部、26 CPU、28 干渉値演算部、30 差分演算部、32 抽出部、101 人工衛星、102 変化要因予測装置、103 アンテナ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7