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  • 特許-タービン式流量計 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】タービン式流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/12 20060101AFI20220826BHJP
   G01F 1/115 20060101ALI20220826BHJP
   G01F 1/34 20060101ALI20220826BHJP
   G01F 1/00 20220101ALI20220826BHJP
   G01F 15/075 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
G01F1/12
G01F1/115
G01F1/34 Z
G01F1/00 S
G01F15/075
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018048118
(22)【出願日】2018-03-15
(65)【公開番号】P2019158747
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000110099
【氏名又は名称】トキコシステムソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】田村 至
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一隆
(72)【発明者】
【氏名】村上 雄大
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-248499(JP,A)
【文献】特開2007-71558(JP,A)
【文献】特開2008-224645(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0088312(KR,A)
【文献】特開平3-107726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00- 9/02
G01F15/00-15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が通過する主流路内に回転自在に設けられ、流体の通過に伴って回転するタービンロータと、
前記タービンロータの回転数を検出する回転数検出部の検出結果に基づいて流体の流量を演算すると共に、当該演算された流体の流量積算値を導出する流量積算値導出部を備えたタービン式流量計であって、
前記主流路における流体の通流方向で前記タービンロータの上流側部位と下流側部位とを接続するバイパス流路と、
当該バイパス流路における流体の通流状態を検出する通流状態検出部と、
前記流量積算値導出部にて導出された流量積算値を、前記通流状態検出部による検出結果に基づいて補正する積算値補正部とを備えるタービン式流量計。
【請求項2】
前記通流状態検出部は、前記バイパス流路における流体の流量を検出する流量計、又は前記バイパス流路における流体の流速を検出する流速計であり、
前記積算値補正部は、
前記流量計にて計測される流量又は前記流速計にて計測される流速が、前記タービンロータにて計測可能な前記主流路での流体の下限流量に対応して決定される判定閾値を上回った場合、前記流量積算値導出部が前記回転数検出部の検出結果に基づいて演算された流体の流量を前記流量積算値として積算する積算工程に切り替え、
前記流量計にて計測される流量又は前記流速計にて計測される流速が、前記判定閾値を下回った場合、前記流量積算値導出部が前記回転数検出部の検出結果に基づいて演算された流体の流量を前記流量積算値として積算しない非積算工程に切り替える請求項1に記載のタービン式流量計。
【請求項3】
前記通流状態検出部は、前記バイパス流路における流体の流量を検出する流量計、又は前記バイパス流路における流体の流速を検出する流速計であり、
前記流量計及び前記流速計は、前記バイパス流路において前記上流側部位から前記下流側部位へ向けて流体が通流する順方向通流状態と、前記バイパス流路において前記下流側部位から前記上流側部位へ向けて流体が通流する逆方向通流状態とを各別に検出可能に構成され、
前記積算値補正部は、
前記流量計にて計測される流量又は前記流速計にて計測される流速が、前記順方向通流状態である場合、前記流量積算値導出部が前記回転数検出部の検出結果に基づいて演算された流体の流量を前記流量積算値として積算し、
前記流量計にて計測される流量又は前記流速計にて計測される流速が、前記逆方向通流状態である場合、前記回転数検出部の検出結果に基づいて演算された流体の流量を前記流量積算値として積算しない請求項1に記載のタービン式流量計。
【請求項4】
前記タービンロータにて計測可能な前記主流路での流体の下限流量以下で前記主流路を通流しているときに、前記バイパス流路を通流する流体の流量又は流速を前記判定閾値とする請求項2に記載のタービン式流量計。
【請求項5】
前記通流状態検出部は、前記バイパス流路における上流側の圧力から下流側の圧力を減算した値を検出する差圧計であり、
前記積算値補正部は、
前記差圧計にて計測される差圧が正値である場合、前記流量積算値導出部が前記回転数検出部の検出結果に基づいて演算された流体の流量を前記流量積算値として積算し、
前記差圧計にて計測される差圧が負値である場合、前記流量積算値導出部が、前記流量積算値導出部が前記回転数検出部の検出結果に基づいて演算された流体の流量を前記流量積算値として積算しない請求項1に記載のタービン式流量計。
【請求項6】
前記バイパス流路の流路径は、前記主流路の流路径に対して小径に構成されている請求項1~5の何れか一項に記載のタービン式流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体が通過する流路内に回転自在に設けられ、流体の通過に伴って回転するタービンロータと、前記タービンロータの回転数を検出する回転数検出部の検出結果に基づいて流体の流量を演算すると共に、当該演算された流体の流量積算値を導出する流量積算値導出部を備えたタービン式流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、都市ガス等の流体の流量を測定するためのガス流量計として、流体の流路内に配設されたタービンロータの回転により、流体の流量を測定するタービン式流量計が知られている(特許文献1を参照)。当該タービンロータは、流体の通流方向に対して所定角度で配設された複数の羽根により構成され、流体がタービンロータを通過する際のタービンロータの回転数から流体の流量を測定するものである。当該従来のタービン式流量計では、大型化が容易であることから、特に大流量域での流体の流量計測に適しており、特に、定常流においては、タービンロータの回転数と流体の流量とが概ね比例関係となるため、タービンロータの回転数から流量換算する簡便な方法で、実用上十分な精度で、流体の流量を計測できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-158222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、急激な流量変化を伴う非定常な流れが発生した場合、即ち、流量の急激な増加や急激な減少が発生した場合、タービンロータの慣性等により、回転数がすぐに実流量に対応せず、これにより、特に、計測値が実流量を上回る過計量が発生することがある。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、タービンロータの回転が計測対象の流体の実流量に追従できないことによる過計量を抑制できるタービン式流量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためのタービン式流量計は、
流体が通過する主流路内に回転自在に設けられ、流体の通過に伴って回転するタービンロータと、
前記タービンロータの回転数を検出する回転数検出部の検出結果に基づいて流体の流量を演算すると共に、当該演算された流体の流量積算値を導出する流量積算値導出部を備えたタービン式流量計であって、その特徴構成は、
前記主流路における流体の通流方向で前記タービンロータの上流側部位と下流側部位とを接続するバイパス流路と、
当該バイパス流路における流体の通流状態を検出する通流状態検出部と、
前記流量積算値導出部にて導出された流量積算値を、前記通流状態検出部による検出結果に基づいて補正する積算値補正部とを備える点にある。
【0007】
上記特徴構成によれば、主流路とは別に、主流路における流体の通流方向でタービンロータの上流側部位と下流側部位とを接続するバイパス流路と、当該バイパス流路における流体の通流状態を検出する通流状態検出部とを備えるから、例えば、当該バイパス流路を主流量よりも十分に流路径の小さい流路とし、且つ大流量域の計測には適していないが小流量域では流量の変化に対する応答速度の速い流量計等を通流状態検出部として備えることで、流量の急激な変化を当該通流状態検出部で検出できる。
そして、流量積算値導出部が、当該通流状態検出部による検出結果に応じて、流体の流量積算値を補正することで、例えば、主流路を通流する流体の実流量が急激に変動する場合等で、タービンロータの回転数と実流量とが定常時の比例関係から乖離するタイミングの流量を、流量積算値から除外する等の補正を行うことで、流量積算値をより実体に則した値とすることができる。
結果、タービンロータの回転が計測対象の流体の実流量に追従できないことによる過計量を抑制できるタービン式流量計を実現できる。
【0008】
タービン式流量計の更なる特徴構成は、
前記通流状態検出部は、前記バイパス流路における流体の流量を検出する流量計、又は前記バイパス流路における流体の流速を検出する流速計であり、
前記積算値補正部は、
前記流量計にて計測される流量又は前記流速計にて計測される流速が、前記タービンロータにて計測可能な前記主流路での流体の下限流量に対応して決定される判定閾値を上回った場合、前記流量積算値導出部が前記回転数検出部の検出結果に基づいて演算された流体の流量を前記流量積算値として積算する積算工程に切り替え、
前記流量計にて計測される流量又は前記流速計にて計測される流速が、前記判定閾値を下回った場合、前記流量積算値導出部が前記回転数検出部の検出結果に基づいて演算された流体の流量を前記流量積算値として積算しない非積算工程に切り替える点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、特に、流量計にて計測される流量又は流速計にて計測される流速が、タービンロータにて計測可能な主流路での流体の下限流量に対応して決定される判定閾値を下回る場合であって、タービンロータの回転数から演算される流量が主流路の実流量から乖離する場合に、タービンロータの回転数から演算される流量を、流量積算値として積算することを禁止できるから、流量積算値をより実体に則した流量値とすることができる。
【0010】
タービン式流量計の更なる特徴構成は、
前記通流状態検出部は、前記バイパス流路における流体の流量を検出する流量計、又は前記バイパス流路における流体の流速を検出する流速計であり、
前記流量計及び前記流速計は、前記バイパス流路において前記上流側部位から前記下流側部位へ向けて流体が通流する順方向通流状態と、前記バイパス流路において前記下流側部位から前記上流側部位へ向けて流体が通流する逆方向通流状態とを各別に検出可能に構成され、
前記積算値補正部は、
前記流量計にて計測される流量又は前記流速計にて計測される流速が、前記順方向通流状態である場合、前記流量積算値導出部が前記回転数検出部の検出結果に基づいて演算された流体の流量を前記流量積算値として積算し、
前記流量計にて計測される流量又は前記流速計にて計測される流速が、前記逆方向通流状態である場合、前記回転数検出部の検出結果に基づいて演算された流体の流量を前記流量積算値として積算しない点にある。
【0011】
本発明の発明者らは、種々の試験に基づく検討の結果、特に、主流路のタービンロータの下流側で主流路が閉弁されたことに伴い、主流路での流体の流量が大きく減少する場合、バイパス流路において下流側部位から上流側部位へ向けて逆流が生じるという知見を得た。
上記特徴構成によれば、当該逆流が生じていることを好適に検出できると共に、逆流が生じている場合であって、主流路での流体の流量が大きく減少する場合には、そのときの流量を流量積算値に積算することを禁止するから、流量積算値をより実体に則した値にすることができる。
【0012】
また、上述した判定閾値は、主流路の管径や平均流量等によって変動する場合があるが、上記特徴構成によれば、このように値が変動して設定が比較的困難な判定閾値を設定しなくても、流量積算値の補正を行うことができるから、例えば、タービンロータの設置箇所等によらず、一定の効果を得ることができるタービン式流量計を実現できる。
このような流量計としては、バイパス流路内に設けた熱線とその上流側と下流側との双方に設けられる一対の熱電対とから成る質量流量計、バイパス流路内の2点の差圧から流量を計測する差圧式流量計、超音波式流量計等を好適に用いることができる。
【0013】
また、これまで説明してきたタービン式流量計としては、前記タービンロータにて計測可能な前記主流路での流体の下限流量以下の流量が前記主流路を通流しているときに、前記バイパス流路を通流する流体の流量又は流速を前記判定閾値とすることが好ましい。
【0014】
タービン式流量計の更なる特徴構成は、
前記通流状態検出部は、前記バイパス流路における上流側の圧力から下流側の圧力を減算した値を検出する差圧計であり、
前記積算値補正部は、
前記差圧計にて計測される差圧が正値である場合、前記流量積算値導出部が前記回転数検出部の検出結果に基づいて演算された流体の流量を前記流量積算値として積算し、
前記差圧計にて計測される差圧が負値である場合、前記流量積算値導出部が、前記流量積算値導出部が前記回転数検出部の検出結果に基づいて演算された流体の流量を前記流量積算値として積算しない点にある。
【0015】
上記特徴構成によっても、バイパス流路に逆流が生じていることを好適に検出することができると共に、当該逆流が生じていることを好適に検出できると共に、逆流が生じている場合には、そのときの流量を流量積算値に積算することを禁止するから、流量積算値をより実体に則した値にすることができる。
また、上述した判定閾値は、主流路の管径や平均流量等によって変動する場合があるが、上記特徴構成によれば、このように値が変動して設定が比較的困難な判定閾値を設定しなくても、流量積算値の補正を行うことができるから、例えば、タービンロータの設置箇所等によらず、一定の効果を得ることができるタービン式流量計を実現できる。
【0016】
タービン式流量計の更なる特徴構成は、
前記バイパス流路の流路径は、前記主流路の流路径に対して小径に構成されている点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、バイパス流路に設けられる通流状態検出部として、計測流量域は小さいけれども流量の急激な変動への応答速度が速い流量計等を好適に適用することができ、流量積算値の補正を、より一層適切に行うことができる。
例えば、バイパス流路の流路直径は、主流路の流路直径の1%以上10%以下程度とすることができ、絶対値としては、4mm以上10mm以下程度のものを好適に用いることができる
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のタービン式流量計の概略構成図
図2】流体の実流量と流量計による計測流量の経時変化を示すグラフ図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係るタービン式流量計100は、タービンロータの回転が計測対象の流体の実流量に追従できないことによる過計量を抑制できるものに関する。
以下、図1、2に基づき、実施形態に係るタービン式流量計100について説明する。
【0020】
タービン式流量計100は、図1に示すように、流体(例えば、都市ガス13A)が通流する主流路17内に回転自在に設けられ流体の通過に伴って回転するタービンロータ14と、当該タービンロータ14の回転数を検出するピックアップ装置16(回転数検出部の一例)の検出結果に基づいて流体の流量を演算する流量演算部C1と、当該流量演算部C1にて演算された流体の流量積算値を導出する積算部C2と、主流路17における流体の通流方向(図1で矢印Xの矢示方向)でタービンロータ14の上流側部位と下流側部位とを接続するバイパス流路20と、バイパス流路20における流体の流量(通流状態の一例)を検出する質量流量計21(通流状態検出部、流量計の一例)と、積算部C2にて導出された流量積算値を、質量流量計21による検出結果に基づいて補正する積算値補正部C3とを備えている。なお、積算部C2により導出される流量積算値は、タービン式流量計100の使用開始から現在までの流量積算値であるが、これに代えて、例えば、直近1ヵ月間などのように所定期間における流量積算値としても良い。
【0021】
尚、上述した流量演算部C1、積算部C2、及び積算値補正部C3は、制御装置Cの機能部位として設けられている。また、制御装置Cには、積算値補正部C3による補正のための閾値等を記憶する記憶部Mが設けられている。制御装置Cは、これらの機能を適切に発揮するべく、各種CPUやメモリ等のハードウェアとソフトウエアとが協働する形で備えられている。
流量演算部C1及び積算部C2が、流量積算値導出部として機能する。
【0022】
タービン式流量計100は、図1に示すように、都市ガス13A等の流体が通流するガス配管(図示せず)に連通接続される主流路17を内部に有する流量計本体11を有する。当該流量計本体11の主流路17の内部には、流体の通流を許容しつつタービンロータ14の固定軸13を支持する支持体12a、12bが設けられ、当該固定軸13に対してタービンロータ14が回転自在に設けられている。
固定軸13を回転軸とするタービンロータ14には、複数の羽根19が固定軸13から放射状に延びる状態で、軸方向視で対称に設けられている。流体の通流方向において、複数の羽根19が設けられる位置にはピックアップ装置16が設けられており、当該ピックアップ装置16は、タービンロータ14の回転により羽根19が近接する毎にタービンロータ14の回転数に応じたパルス信号を出力する。ピックアップ装置16が出力するパルス信号は、制御装置Cの流量演算部C1へ送信される。
【0023】
バイパス流路20の流路直径は、主流路17の流路直径に対して小径に構成されている。具体的には、バイパス流路20の流路直径は、主流路17の流路直径の1%以上10%以下程度とすることができ、絶対値としては、4mm以上10mm以下程度のものを好適に用いることができる。バイパス流路20の流路直径をこのように設定することにより、バイパス流路20を通流する流体の流量を、主流路17を通流する流体の流量に対して略比例関係を持たせた状態とすることができる。更には、バイパス流路20を通流する流体の流量を比較的小流量とでき、流量変化への応答速度の速い計器を、通流状態検出部として備えることができる。
当該実施形態では、通流状態検出部として質量流量計21を備えており、当該質量流量計21は、バイパス流路20への流体の通流方向において、両端に熱電対21b、21cを設けると共に、その間に熱線ヒータ21aを備えており、熱線ヒータ21aを作動させている状態で、熱電対21b、21cによる温度差を計測することにより、バイパス流路20を通流する流体の質量流量を計測する。当該質量流量計21にて計測された流量に対応する信号は、制御装置Cの積算値補正部C3へ送信される。
【0024】
さて、主流路17を通流する流体の流量が急激に変化した場合、タービンロータ14は慣性等により、流体の急激な変化に追従できず、流体の流量とタービンロータ14の回転数とが比例関係でなくなる場合がある。この場合、制御装置Cの流量演算部C1にて演算される流量は、実流量と乖離することになる。
例えば、図2の上方のグラフ図に示すように、主流路17を通流する流体の実流量(図2の上方のグラフ図で破線)が、急激に減少した直後(図2でt1からt3までの期間)では、タービンロータ14の回転数に基づいて流量演算部C1にて演算される流量(図2で上方のグラフ図で実線)が、実流量よりも多くなる、所謂、過計量(図2でKで示す斜線部分の流量が過計量)の状態となる。
一方で、バイパス流路20に設けられる質量流量計21の出力は、図2の下方のグラフ図に一点鎖線で示すように、実流量の変動に応答速度が速い状態で追従している。
そこで、当該実施形態に係るタービン式流量計100にあっては、当該過計量を抑制するべく、以下のように構成されている。
【0025】
制御装置Cには流量演算部C1にて演算され積算部C2にて積算された流量積算値を補正する積算値補正部C3が設けられている。
当該積算値補正部C3は、質量流量計21にて計測される流量が、タービンロータ14にて計測可能な主流路17での流体の下限流量に対応して決定される判定閾値を上回った場合、流量演算部C1が演算した値を積算部C2にて流量積算値として積算する積算工程に切り替え、質量流量計21にて計測される流量が、上記判定閾値未満の場合、流量演算部C1が演算した値を積算部C2にて流量積算値として積算しない非積算工程に切り替える。
そして、判定閾値は、当該下限流量が主流路17を通流しているときに、バイパス流路20を通流する流体の流量を、好適に採用することができる。
【0026】
尚、当該実施形態にあっては、上記判定閾値は、ハンチングを防止するべく、ヒステリシスを有する状態で設定されており、以下、図2の下方のグラフ図も参照して、説明を追加する。尚、図2の下方のグラフ図は、実流量が、図2の上方のグラフ図の破線に示すものである場合に、質量流量計21の出力を一点鎖線で示すものである。
図2に示すように、上述したタービンロータ14の下限流量が主流路17を通流しているときに、バイパス流路20を通流する流体の流量(図2で、下限流量の相当値βで示す流量)に対し、所定のヒステリシス幅だけ減算した値を減少時判定閾値(図2でα1)として設定し、所定のヒステリシス幅だけ加算した値を増加時判定閾値(図2でα2)として設定する。
当該減少時判定閾値及び増加時判定閾値を用いる場合、積算値補正部C3は、質量流量計21にて計測される流量が、増加時判定閾値を上回った場合、流量演算部C1が演算した値を積算部C2にて流量積算値として積算する積算工程に切り替え、質量流量計21にて計測される流量が、減少時判定閾値を下回った場合、流量演算部C1が演算した値を積算部C2にて流量積算値として積算しない非積算工程に切り替える。
図2にあっては、t2からt4までが非積算工程を実行する積算値補正期間に相当する。
尚、これまで説明してきた判定閾値は、記憶部Mに予め記憶されているものであり、積算値補正部C3は、必要に応じてこれら判定閾値を記憶部Mから呼び出す形で、積算値の補正を実行する。
【0027】
当該実施形態に係るタービン式流量計100において、制御装置Cでは、ピックアップ装置16にて計測されるタービンロータ14の回転数に基づいて流量演算部C1が流体の流量を演算し、当該演算された流量を積算部C2が積算して流量積算値を導出する。ただし、当該積算については、積算値補正部C3が、上述したように、非積算工程における積算を禁止する形態で、補正された流量積算値が記憶部Mに記憶される。
表示部Sは、当該記憶部Mに記憶された流量積算値を表示する。
【0028】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、通流状態検出部としての流量計として、質量流量計を採用した。
流量計としては、バイパス流路20内の2点の差圧から流量を計測する差圧式流量計、バイパス流路20内に設けた障害物にて流体の流れが乱されることにより発生するカルマン渦の計測により流量を計測する渦式流量計、超音波式流量計等を好適に用いることができる。
【0029】
(2)本発明の発明者らは、種々の試験に基づく検討の結果、特に、主流路17のタービンロータ14の下流側で主流路17が閉弁される等の事象に伴い、主流路17での流体の流量が大きく減少する場合、バイパス流路20において下流側部位から上流側部位へ向けて逆流が生じるという知見を得た。
そこで、上記実施形態にあっては、積算値補正部C3は、以下のように構成しても構わない。
【0030】
まず、流量計として、バイパス流路20において上流側部位から下流側部位へ向けて流体が通流する順方向通流状態と、バイパス流路20において下流側部位から上流側部位へ向けて流体が通流する逆方向通流状態とを各別に検出可能なものを採用する。
そして、積算値補正部C3は、流量計にて計測される流量が順方向通流状態である場合、流量演算部C1にて演算された流体の流量を積算部C2にて流量積算値として積算し、流量計にて計測される流量が逆方向通流状態である場合、流量演算部C1にて演算された流体の流量を積算部C2にて流量積算値として積算しない形態で、流量積算値を補正する。
これにより、閾値を別途設定することなく、タービン式流量計100による過計量を防止できる。
当該別実施形態(2)における流量計としては、質量流量計、差圧式流量計、超音波式流量計等を好適に用いることができる。
【0031】
(3)上記実施形態、及び別実施形態(2)において、流量計は、バイパス流路20の流速(通流状態の一例)を計測する流速計であっても、その効果を良好に発揮することができる。
尚、具体的な制御内容については、流量が流速に変更する点を除き、実質的に同一であるので、ここではその詳細な内容を割愛する。
【0032】
(4)上記実施形態において、通流状態検出部は、バイパス流路20における上流側の圧力から下流側の圧力を減算した値(通流状態の一例)を検出する差圧計であっても構わない。
この場合、積算値補正部C3は、差圧計にて計測される差圧が正値である場合、流量演算部C1にて演算された流体の流量を積算部C2にて流量積算値として積算し、差圧計にて計測される差圧が負値である場合、流量演算部C1にて演算された流体の流量を積算部C2にて流量積算値として積算形態で、流量積算値を補正する。
当該構成によれば、閾値を別途設定することなく、タービン式流量計100による過計量を防止できる。
【0033】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のタービン式流量計は、タービンロータの回転が計測対象の流体の実流量に追従できないことによる過計量を抑制できるタービン式流量計として、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0035】
14 :タービンロータ
16 :ピックアップ装置
17 :主流路
20 :バイパス流路
21 :流量計
C1 :流量演算部
C2 :積算部
C3 :積算値補正部
S :表示部
M :記憶部
100 :タービン式流量計
図1
図2