(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】液体吐出装置及び液体吐出方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/282 20170101AFI20220826BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20220826BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220826BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220826BHJP
【FI】
B29C64/282
B29C64/112
B33Y30/00
B33Y10/00
(21)【出願番号】P 2018104670
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2020-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】丸山 恭平
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-526495(JP,A)
【文献】特開2017-065103(JP,A)
【文献】特開2014-231161(JP,A)
【文献】特開2018-043408(JP,A)
【文献】特開2016-124243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線に応じて硬化する液体である紫外線硬化型液体を吐出する
ことで立体的な造形物を造形する液体吐出装置であって、
複数のノズルが並ぶノズル列から前記紫外線硬化型液体を吐出する吐出ヘッドと、
予め設定された主走査方向へ移動しつつ液体を吐出する主走査動作を前記吐出ヘッドに行わせる走査駆動部と、
紫外線を発生する紫外線発生部と、
前記紫外線発生部に紫外線を発生させる光源駆動部と
、
造形中の前記造形物を支持する台状部材であり、造形の進行に伴って前記吐出ヘッドとの間の距離が大きくなる造形台と
を備え、
前記吐出ヘッドが前記主走査動作を行う場合、前記紫外線発生部は、前記吐出ヘッドと共に前記主走査方向へ移動しつつ紫外線を照射し、
前記ノズル列における前記複数のノズルは、前記主走査方向と直交する方向である副走査方向における位置が互いに異なるように並び、
前記紫外線発生部は、紫外線を発生するLED素子であるUVLED素子を複数有し、
前記紫外線発生部における複数の前記UVLED素子は、前記紫外線発生部による紫外線の発光範囲が前記副走査方向において前記ノズル列の範囲と重なるように配設されており、
前記発光範囲において、前記副走査方向における端部での紫外線の照度が中央部での照度よりも大きくな
り、かつ、前記紫外線発生部により被照射位置に照射される紫外線の照度の分布において、前記副走査方向における端部に対応する位置での紫外線の照度が中央部に対応する位置での紫外線の照度と実質的に同一又はそれ以下になるように、前記光源駆動部は、前記複数の前記UVLED素子を駆動し、
前記紫外線発生部において、前記複数の前記UVLED素子は、
前記副走査方向と平行な列方向、及び前記主走査方向と並行な行方向へ、アレイ状に並んでおり、
前記列方向における位置を揃えて前記行方向へ並ぶ複数の前記UVLED素子をUVLED素子の行と定義した場合、前記光源駆動部は、前記列方向における端の前記行に含まれる前記UVLED素子の照度が、前記列方向における中央部の前記行に含まれる前記UVLED素子の照度よりも大きくなるように、前記複数の前記UVLED素子を駆動することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
紫外線に応じて硬化する液体である紫外線硬化型液体を吐出する
ことで立体的な造形物を造形する液体吐出装置であって、
複数のノズルが並ぶノズル列から前記紫外線硬化型液体を吐出する吐出ヘッドと、
予め設定された主走査方向へ移動しつつ液体を吐出する主走査動作を前記吐出ヘッドに行わせる走査駆動部と、
紫外線を発生する紫外線発生部と、
前記紫外線発生部に紫外線を発生させる光源駆動部と
、
造形中の前記造形物を支持する台状部材であり、造形の進行に伴って前記吐出ヘッドとの間の距離が大きくなる造形台と
を備え、
前記吐出ヘッドが前記主走査動作を行う場合、前記紫外線発生部は、前記吐出ヘッドと共に前記主走査方向へ移動しつつ紫外線を照射し、
前記ノズル列における前記複数のノズルは、前記主走査方向と直交する方向である副走査方向における位置が互いに異なるように並び、
前記紫外線発生部は、紫外線を発生するLED素子であるUVLED素子を複数有し、
前記紫外線発生部における複数の前記UVLED素子は、前記紫外線発生部による紫外線の発光範囲が前記副走査方向において前記ノズル列の範囲と重なるように配設されており、
前記発光範囲において、前記副走査方向における端部での紫外線の照度が中央部での照度よりも大きくな
り、かつ、前記紫外線発生部により被照射位置に照射される紫外線の照度の分布において、前記副走査方向における端部に対応する位置での紫外線の照度が中央部に対応する位置での紫外線の照度と実質的に同一又はそれ以下になるように、前記光源駆動部は、前記複数の前記UVLED素子を駆動し、
前記紫外線発生部において、前記複数の前記UVLED素子は、
前記副走査方向と平行な列方向、及び前記主走査方向と並行な行方向へ、アレイ状に並んでおり、
前記光源駆動部は、前記列方向における位置を揃えて前記行方向へ複数の前記UVLED素子が並ぶUVLED素子の行を単位にしてそれぞれの前記UVLED素子の照度を制御することで、前記副走査方向における端部での紫外線の照度が中央部での照度よりも大きくなるように、前記複数の前記UVLED素子を駆動することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
紫外線に応じて硬化する液体である紫外線硬化型液体を吐出することで立体的な造形物を造形する液体吐出装置であって、
複数のノズルが並ぶノズル列から前記造形物の造形に用いる前記紫外線硬化型液体を吐出する吐出ヘッドと、
予め設定された主走査方向へ移動しつつ液体を吐出する主走査動作を前記吐出ヘッドに行わせる走査駆動部と、
紫外線を発生する紫外線発生部と、
前記紫外線発生部に紫外線を発生させる光源駆動部と
、
造形中の前記造形物を支持する台状部材であり、造形の進行に伴って前記吐出ヘッドとの間の距離が大きくなる造形台と
を備え、
前記吐出ヘッドが前記主走査動作を行う場合、前記紫外線発生部は、前記吐出ヘッドと共に前記主走査方向へ移動しつつ紫外線を照射し、
前記ノズル列における前記複数のノズルは、前記主走査方向と直交する方向である副走査方向における位置が互いに異なるように並び、
前記紫外線発生部は、紫外線を発生するLED素子であるUVLED素子を複数有し、
前記紫外線発生部における複数の前記UVLED素子は、前記紫外線発生部による紫外線の発光範囲が前記副走査方向において前記ノズル列の範囲と重なるように配設されており、
前記発光範囲において、前記副走査方向における端部での紫外線の照度が中央部での照度よりも大きくな
り、かつ、前記紫外線発生部により被照射位置に照射される紫外線の照度の分布において、前記副走査方向における端部に対応する位置での紫外線の照度が中央部に対応する位置での紫外線の照度と実質的に同一又はそれ以下になるように、前記光源駆動部は、前記複数の前記UVLED素子を駆動し、
前記発光範囲は、前記紫外線硬化型液体が吐出される対象物である前記造形物上での範囲であり、前記副走査方向における前記発光範囲の端部は、前記造形物上での端部であることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
前記光源駆動部は、前記副走査方向における端部での紫外線の照度が中央部での照度よりも大きくなるように前記複数の前記UVLED素子を駆動することで、前記紫外線発生部によって被照射範囲に照射される紫外線の光量を均一化することを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記走査駆動部は、造形中の前記造形物に対して相対的に前記副走査方向へ移動する副走査動作を更に前記吐出ヘッドに行わせ、
前記液体吐出装置は、前記紫外線硬化型液体で形成される層を複数層重ねて形成することにより、前記造形物を造形し、それぞれの前記層を、同じ位置に対して複数回の前記主走査動作を行うマルチパス方式で形成し、
一つの前記層を形成する間に行う複数の前記主走査動作のうち、少なくとも一部の回の前記主走査動作の合間に行う前記副走査動作として、前記走査駆動部は、前記副走査方向への移動量を前記副走査方向における前記ノズル列の長さの1/30以下にする前記副走査動作を前記吐出ヘッドに行わせることを特徴とする請求項3又は4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記ノズル列の一端側の前記ノズルの前記副走査方向における位置を一端側ノズル位置とし、前記ノズル列の他端側の前記ノズルの前記副走査方向における位置を他端側ノズル位置とし、
前記紫外線発生部が有する複数の前記UVLED素子のうち、前記副走査方向における一方の側の最も端にある前記UVLED素子を一方側LEDとし、前記副走査方向における他方の側の最も端にある前記UVLED素子を他方側LEDとした場合、
前記一端側ノズル位置は、前記一方側LEDのいずれかの部分の前記副走査方向における位置と同じ位置になり、前記他端側ノズル位置は、前記他方側LEDのいずれかの部分の前記副走査方向における位置と同じ位置になることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記一方側LEDの発光中心の前記副走査方向における位置は、前記一端側ノズル位置に合わせられており、
前記他方側LEDの発光中心の前記副走査方向における位置は、前記他端側ノズル位置に合わせられていることを特徴とする請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
紫外線に応じて硬化する液体である紫外線硬化型液体を吐出する液体吐出装置であって、
複数のノズルが並ぶノズル列から前記紫外線硬化型液体を吐出する吐出ヘッドと、
予め設定された主走査方向へ移動しつつ液体を吐出する主走査動作を前記吐出ヘッドに行わせる走査駆動部と、
紫外線を発生する紫外線発生部と、
前記紫外線発生部に紫外線を発生させる光源駆動部と
を備え、
前記吐出ヘッドが前記主走査動作を行う場合、前記紫外線発生部は、前記吐出ヘッドと共に前記主走査方向へ移動しつつ紫外線を照射し、
前記ノズル列における前記複数のノズルは、前記主走査方向と直交する方向である副走査方向における位置が互いに異なるように並び、
前記紫外線発生部は、紫外線を発生するLED素子であるUVLED素子を複数有し、
前記紫外線発生部における複数の前記UVLED素子は、前記紫外線発生部による紫外線の発光範囲が前記副走査方向において前記ノズル列の範囲と重なるように配設されており、
前記発光範囲において、前記副走査方向における端部での紫外線の照度が中央部での照度よりも大きくなり、かつ、前記紫外線発生部により被照射位置に照射される紫外線の照度の分布において、前記副走査方向における端部に対応する位置での紫外線の照度が中央部に対応する位置での紫外線の照度と実質的に同一又はそれ以下になるように、前記光源駆動部は、前記複数の前記UVLED素子を駆動し、
前記紫外線発生部において、前記複数の前記UVLED素子は、
前記副走査方向と平行な列方向、及び前記主走査方向と並行な行方向へ、アレイ状に並んでおり、
前記列方向における位置を揃えて前記行方向へ並ぶ複数の前記UVLED素子をUVLED素子の行と定義した場合、前記光源駆動部は、前記列方向における端の前記行に含まれる前記UVLED素子の照度が、前記列方向における中央部の前記行に含まれる前記UVLED素子の照度よりも大きくなるように、前記複数の前記UVLED素子を駆動し、
前記副走査方向における単位長さあたりの前記UVLED素子の数をLED密度と定義した場合、
前記紫外線発生部において、前記複数の前記UVLED素子は、前記副走査方向における端部での前記LED密度が中央部での密度よりも大きくなるように配設されていることを特徴
とする液体吐出装置。
【請求項9】
紫外線に応じて硬化する液体である紫外線硬化型液体を吐出する液体吐出装置であって、
複数のノズルが並ぶノズル列から前記紫外線硬化型液体を吐出する吐出ヘッドと、
予め設定された主走査方向へ移動しつつ液体を吐出する主走査動作を前記吐出ヘッドに行わせる走査駆動部と、
紫外線を発生する紫外線発生部と、
前記紫外線発生部に紫外線を発生させる光源駆動部と
を備え、
前記吐出ヘッドが前記主走査動作を行う場合、前記紫外線発生部は、前記吐出ヘッドと共に前記主走査方向へ移動しつつ紫外線を照射し、
前記ノズル列における前記複数のノズルは、前記主走査方向と直交する方向である副走査方向における位置が互いに異なるように並び、
前記紫外線発生部は、紫外線を発生するLED素子であるUVLED素子を複数有し、
前記紫外線発生部における複数の前記UVLED素子は、前記紫外線発生部による紫外線の発光範囲が前記副走査方向において前記ノズル列の範囲と重なるように配設されており、
前記発光範囲において、前記副走査方向における端部での紫外線の照度が中央部での照度よりも大きくなり、かつ、前記紫外線発生部により被照射位置に照射される紫外線の照度の分布において、前記副走査方向における端部に対応する位置での紫外線の照度が中央部に対応する位置での紫外線の照度と実質的に同一又はそれ以下になるように、前記光源駆動部は、前記複数の前記UVLED素子を駆動し、
前記紫外線発生部において、前記複数の前記UVLED素子は、
前記副走査方向と平行な列方向、及び前記主走査方向と並行な行方向へ、アレイ状に並んでおり、
前記光源駆動部は、前記列方向における位置を揃えて前記行方向へ複数の前記UVLED素子が並ぶUVLED素子の行を単位にしてそれぞれの前記UVLED素子の照度を制御することで、前記副走査方向における端部での紫外線の照度が中央部での照度よりも大きくなるように、前記複数の前記UVLED素子を駆動し、
前記副走査方向における単位長さあたりの前記UVLED素子の数をLED密度と定義した場合、
前記紫外線発生部において、前記複数の前記UVLED素子は、前記副走査方向における端部での前記LED密度が中央部での密度よりも大きくなるように配設されていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項10】
紫外線に応じて硬化する液体である紫外線硬化型液体を吐出することで立体的な造形物を造形する液体吐出方法であって、
造形中の前記造形物を造形台によって支持しつつ、
複数のノズルが並ぶノズル列から前記造形物の造形に用いる前記紫外線硬化型液体を吐出する吐出ヘッドに、
予め設定された主走査方向へ移動しつつ液体を吐出する主走査動作を行わせ、
かつ、紫外線を発生する紫外線発生部に紫外線を発生させ、
前記造形台と前記吐出ヘッドとの間の距離を、造形の進行に伴って大きくし、
前記吐出ヘッドに前記主走査動作を行わせる場合、前記紫外線発生部に、前記吐出ヘッドと共に前記主走査方向へ移動しつつ紫外線を照射させ、
前記ノズル列における前記複数のノズルは、前記主走査方向と直交する方向である副走査方向における位置が互いに異なるように並び、
前記紫外線発生部は、紫外線を発生するLED素子であるUVLED素子を複数有し、
前記紫外線発生部における複数の前記UVLED素子は、前記紫外線発生部による紫外線の発光範囲が前記副走査方向において前記ノズル列の範囲と重なるように配設されており、
前記発光範囲において、前記副走査方向における端部での紫外線の照度が中央部での照度よりも大きくな
り、かつ、前記紫外線発生部により被照射位置に照射される紫外線の照度の分布において、前記副走査方向における端部に対応する位置での紫外線の照度が中央部に対応する位置での紫外線の照度と実質的に同一又はそれ以下になるように、前記複数の前記UVLED素子を駆動し、
前記発光範囲は、前記紫外線硬化型液体が吐出される対象物である前記造形物上での範囲であり、前記副走査方向における前記発光範囲の端部は、前記造形物上での端部であることを特徴とする液体吐出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置及び液体吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式で液体(インク)を吐出する装置が広く用いられている。このような装置としては、例えば、2次元の画像を印刷するインクジェットプリンタが普及している。また、従来、インクジェット方式で造形物の造形を行う造形装置(3Dプリンタ)等も知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、これらの装置において、インクジェット方式で吐出する液体としては、紫外線硬化型インクが広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紫外線硬化型インクを用いて印刷や造形を行う場合、通常、インクの着弾の直後に紫外線を照射して、インクを硬化させる。また、より具体的に、この場合、複数のノズルが並ぶノズル列を有するインクジェットヘッドに主走査動作を行わせることで、インクの吐出を行う。そして、主走査動作時において、紫外線を発生する紫外線発生部(紫外線光源)をインクジェットヘッドと共に移動させることで、着弾直後のインクに紫外線を照射する。また、この場合、紫外線発生部の光学設計(ランプ設計)において、ノズル列の範囲に対して、均一な照度分布で紫外線を照射するように設計を行うことが望ましい。この場合、照度分布とは、紫外線発生部の全体により得られる照度の分布のことである。また、照度分布については、例えば、紫外線発生部の全体により照射される紫外線の光量の分布に対応する分布等と考えることもできる。
【0005】
また、この点に関し、例えば様々なレンズ等を組み合わせて光学設計を行えば、所望の照度分布を得ることも可能である。しかし、この場合、紫外線発生部の大型化や、コストの上昇の問題が生じることになる。これに対し、本願の発明者は、紫外線発生部として、紫外線を発生するLED素子であるUVLED素子(UVLEDチップ)を平面上に複数個並べるように設計した構成を用いることを考えた。このように構成すれば、例えば、大型化やコストの大きな上昇等を防ぎつつ、比較的容易に、均一な照度分布を得ることができる。
【0006】
しかし、この場合も、単に複数のUVLED素子を並べるのみでは、所望の照度分布が得られない場合がある。そのため、複数のUVLED素子を用いて紫外線発生部を構成する場合において、より適切な方法で紫外線を発生することが望まれる。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる液体吐出装置及び液体吐出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の発明者は、複数のUVLED素子を並べた紫外線発生部を用いる構成に関して鋭意研究を行い、先ず、このような構成において生じる問題点等を見出した。より具体的に、UVLED素子を複数個並べた構成を用いて紫外線を照射する場合、複数のUVLED素子が並ぶ構成の全体としての照度に関し、並びの両端に対応する位置での紫外線の照度が、中央部に対応する位置と比べて低くなることが考えられる。これに対し、従来のインクジェットプリンタにおいて紫外線硬化型インクを用いる場合、ノズル列の範囲に均一な紫外線を照射するための構成として、ノズル列方向におけるノズル列の幅であるノズル長に対してマージンを持たせ、ノズル列の範囲に対してある程度以上大きな範囲へ紫外線を照射するように紫外線発生部を設計すること等が行われていた。
【0008】
しかし、この場合、本来必要のない範囲にまで紫外線を照射することで、新たな問題が発生する場合もある。より具体的に、この場合、ある回の主走査動作においてノズル列の端のノズルから吐出されたインクに対し、他の回の主走査動作でも紫外線が照射されることになる。また、その結果、ノズル列の中央部のノズルから吐出されたインクと、端のノズルから吐出されたインクとの間で、照射される紫外線の積算光量の差が大きくなり、硬化後の状態に差が出るおそれもある。また、この場合、例えばインクジェットプリンタで画像を印刷する構成では、印刷される画質に影響が生じるおそれがある。また、造形装置で造形物を造形する構成では、造形物の品質に影響が生じるおそれがある。また、インクジェット方式で造形物の造形を行う場合、例えば、多数のインクの層を重ねて形成することで、造形物を造形する。そして、この場合、それぞれのインクの層において生じる上記のような影響が積層するインクの層の分だけ重畳することで、より大きな影響が生じることも考えられる。これに対し、本願の発明者は、複数のUVLED素子を並べる範囲をノズル長に合わせることで、本来必要のない範囲への紫外線の照射を抑えることを考えた。
【0009】
ここで、複数のUVLED素子を並べた紫外線発生部を用いる場合において、紫外線の照射対象(ワーク)と紫外線発生部との間の距離であるランプギャップが小さい(低い)と、それぞれのUVLED素子による点光源としての影響が強くなり、均一な照度分布を得ることが難しくなる。また、その結果、インクの硬化の仕方が位置によって異なることで、色ムラ等が発生するおそれがある。そのため、ランプギャップについては、ある程度以上の距離にすることが必要になる。しかし、反対に、ランプギャップが大きい(高い)場合、照度分布において、ノズル列の端のノズルから吐出されたインクに対して照射される部分に対応する紫外線の照度(紫外線発生部の端の照度)の低下が大きくなることが考えられる。そして、この場合、印刷時や造形時に行う各回の主走査動作で形成される領域の境界付近(例えば、パス間の境界付近)において硬化ムラ等が発生して、バンディングの影響が大きくなるおそれがある。
【0010】
そこで、本願の発明者は、複数のUVLED素子を並べる範囲を単にノズル長に合わせるのではなく、更に、紫外線発生部の端部での紫外線の照度が中央部での照度よりも大きく(高く)なるように、複数のUVLED素子を駆動することを考えた。このように構成すれば、例えば、紫外線発生部の端の照度の低下を適切に抑えることができる。また、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、このような効果を得るために必要な特徴を見出し、本発明に至った。
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明は、紫外線に応じて硬化する液体である紫外線硬化型液体を吐出する液体吐出装置であって、複数のノズルが並ぶノズル列から前記紫外線硬化型液体を吐出する吐出ヘッドと、予め設定された主走査方向へ移動しつつ液体を吐出する主走査動作を前記吐出ヘッドに行わせる走査駆動部と、紫外線を発生する紫外線発生部と、前記紫外線発生部に紫外線を発生させる光源駆動部とを備え、前記吐出ヘッドが前記主走査動作を行う場合、前記紫外線発生部は、前記吐出ヘッドと共に前記主走査方向へ移動しつつ紫外線を照射し、前記ノズル列における前記複数のノズルは、前記主走査方向と直交する方向である副走査方向における位置が互いに異なるように並び、前記紫外線発生部は、紫外線を発生するLED素子であるUVLED素子を複数有し、前記紫外線発生部における複数の前記UVLED素子は、前記紫外線発生部による紫外線の発光範囲が副走査方向において前記ノズル列の範囲と重なるように配設されており、前記発光範囲において、前記副走査方向における端部での紫外線の照度が中央部での照度よりも大きくなるように、前記光源駆動部は、前記複数の前記UVLED素子を駆動することを特徴とする。
【0012】
このように構成すれば、例えば、紫外線発生部の端の照度の低下を適切に抑え、紫外線硬化型液体を均一かつ適切に硬化させることができる。また、これにより、例えば、紫外線硬化型液体を硬化させるための構成として複数のUVLED素子を有する紫外線発生部を用いる場合において、より適切な方法で紫外線を発生することができる。
【0013】
ここで、この構成において、紫外線発生部による紫外線の発光範囲については、例えば、液体吐出装置の動作時に紫外線硬化型液体が吐出される対象物上での発光範囲等と考えることができる。この場合、対象物とは、例えば、インクジェットプリンタにおける印刷対象のメディアや造形装置において造形される造形物等のことである。また、この構成において、液体吐出装置の動作時には、この対象物において紫外線発生部による紫外線の発光範囲に対応する被照射範囲に、紫外線が照射されることになる。そして、実用上、この被照射範囲の副走査方向における幅は、紫外線発生部による紫外線の発光範囲の副走査方向における幅と、実質的に同じになると考えることもできる。そのため、紫外線発生部における複数のUVLED素子については、例えば、この被照射範囲が副走査方向においてノズル列の範囲と重なるように配設されていると考えることもできる。また、この場合、光源駆動部の動作については、例えば、ノズル列の範囲と重なる被照射範囲に照射される紫外線の光量を均一化するために、上記のように複数のUVLED素子を駆動していると考えることができる。
【0014】
また、この構成において、紫外線硬化型液体としては、例えば、紫外線硬化型インク等を好適に用いることができる。また、吐出ヘッドとしては、例えばインクジェットヘッド等を好適に用いることができる。また、主走査動作時の吐出ヘッドの移動は、予め設定された基準位置に対する相対的な移動であってよい。また、紫外線の照度とは、例えば、1回の主走査動作を行う間の平均の照度である。また、副走査方向において、紫外線発生部による紫外線の発光範囲については、ノズル列の範囲と実質的に同じにすることが好ましい。副走査方向における発光範囲がノズル列の範囲と実質的に同じとは、例えば、発光の中心の副走査方向における位置が副走査方向におけるノズル列の範囲の外になるUVLED素子が存在しないことである。また、ノズル列において、複数のノズルは、例えば、副走査方向と平行なノズル列方向へ並ぶ。
【0015】
また、この構成において、ランプギャップについては、例えば10~30mmにすることが好ましい。ランプギャップは、より好ましくは、15~25mm程度(例えば、20mm程度)である。また、この構成において、光源駆動部は、例えば、副走査方向における端部での紫外線の照度が中央部での照度の1.5~2倍になるように、複数のUVLED素子を駆動する。この場合、副走査方向における端部での紫外線の照度とは、例えば、端部に配設されたUVLED素子により照射される紫外線の照度のことである。また、中央部での照度とは、例えば、中央部に配設されたUVLED素子により照射される紫外線の照度のことである。また、複数のUVLED素子のうちの一部(端部、中央部等)の照度とは、例えば、その一部と対向する位置に照射される紫外線の照度のことである。また、その一部と対向する位置に照射される紫外線とは、例えば、予め設定されたランプギャップ分だけ離れた位置に平面を置いた場合に、その平面においてその一部と対向する部分に照射される紫外線の照度のことである。このように構成すれば、例えば、紫外線発生部の端の照度の低下を適切に抑えることができる。副走査方向における端部での紫外線の照度については、中央部での照度の1.6~1.8倍程度にすることがより好ましい。
【0016】
また、この構成において、液体吐出装置は、例えば、立体的な造形物を造形する造形装置である。この場合、吐出ヘッドは、造形物の造形に用いる紫外線硬化型液体を吐出する。このように構成すれば、例えば、高品質な造形物を適切に造形することができる。また、この構成において、走査駆動部は、例えば、造形中の造形物に対して相対的に副走査方向へ移動する副走査動作を更に吐出ヘッドに行わせる。また、これにより、液体吐出装置は、紫外線硬化型液体で形成される層を複数層重ねて形成して、造形物を造形する。また、この場合、それぞれの層については、例えば、同じ位置に対して複数回の主走査動作を行うマルチパス方式で形成することが考えられる。
【0017】
また、この場合、マルチパス方式の具体的な動作としては、小ピッチ方式での動作を行うことが考えられる。この場合、小ピッチ方式での動作とは、例えば、副走査動作時における副走査方向への移動量である送り量を小さく設定した状態で、間に副走査動作を挟んでパス数分の主走査動作を行い、パス数分の主走査動作を行う毎に、より大きな送り量での副走査動作を行う動作のことである。この場合、パス数分の主走査動作の合間に行う小ピッチの副走査動作では、送り量(小ピッチの送り量)について、ノズル列におけるノズルの間隔(ノズルピッチ)の整数倍にすることが考えられる。また、この場合、小ピッチの送り量は、ノズルピッチ分(ノズルピッチの1倍)以上にすることが好ましい。また、より具体的に、小ピッチの送り量については、例えばノズルピッチの1~20倍程度、好ましくはノズルピッチの1~5倍程度にすることが考えられる。また、小ピッチの送り量については、ノズル列の長さと比べて十分に小さくすることが好ましい。そのため、小ピッチの送り量については、例えば、副走査方向におけるノズル列の長さの1/30以下程度にすることが考えられる。また、小ピッチの送り量は、副走査方向におけるノズル列の長さの1/50以下程度であってもよい。また、この場合、大きな送り量での副走査動作での送り量については、例えば、ノズル長に合わせた距離にすることが考えられる。また、この場合、小ピッチ方式での動作については、例えば、一つの層を形成する間に行う複数の主走査動作のうち、少なくとも一部の回の主走査動作の合間に行う副走査動作において、上記のような小ピッチに送り量を設定する動作等と考えることができる。また、小ピッチ方式の動作を行う場合、副走査方向における位置をあまり変化させずに複数回の主走査動作を行うため、例えば紫外線発生部の端の付近への紫外線の照射の仕方の影響が生じやすいとも考えられる。これに対し、上記のように構成した場合、ノズル列の範囲の外側へ照射される紫外線の光量を抑えつつ、ノズル列に対応する範囲へ均一な紫外線を照射することが可能になる。そのため、小ピッチ方式の動作を行う場合にも、このような影響により問題が発生することを適切に防ぐことができる。
【0018】
また、この構成において、複数のUVLED素子の好ましい配置については、例えば、ノズル列の一端側のノズルの副走査方向における位置を一端側ノズル位置とし、ノズル列の他端側のノズルの副走査方向における位置を他端側ノズル位置とし、紫外線発生部が有する複数のUVLED素子のうち、副走査方向における一方の側の最も端にあるUVLED素子を一方側LEDとし、副走査方向における他方の側の最も端にあるUVLED素子を他方側LEDとした場合に、これらの位置関係により考えることができる。より具体的に、この場合、例えば、一端側ノズル位置について、一方側LEDのいずれかの部分の副走査方向における位置と同じ位置にして、他端側ノズル位置について、他方側LEDのいずれかの部分の副走査方向における位置と同じ位置にすること等が考えられる。この場合、一方側LEDや他方側LEDのようなUVLED素子のいずれかの部分とは、例えば、UVLED素子の発光領域のいずれかの部分のことである。このように構成すれば、例えば、ノズル長に合わせた位置に複数のUVLED素子を適切に配設できる。また、更に具体的に、この場合、一方側LEDの発光中心の副走査方向における位置を一端側ノズル位置に合わせ、他方側LEDの発光中心の副走査方向における位置を他端側ノズル位置に合わせることが考えられる。このように構成すれば、例えば、ノズル長に合わせた位置に複数のUVLED素子をより適切に配設できる。
【0019】
また、この構成において、紫外線発生部の各位置の照度については、例えば、それぞれのUVLED素子の照度を制御することで調整することが考えられる。この場合、例えば、副走査方向における端部に配設されたUVLED素子の照度が、副走査方向における中央部に配設されたUVLED素子の照度よりも大きくなるように、それぞれのUVLED素子の照度を制御することが考えられる。また、この場合、UVLED素子の照度とは、例えば、そのUVLED素子と対向する位置に照射される紫外線の照度のことである。また、UVLED素子と対向する位置に照射される紫外線とは、例えば、予め設定されたランプギャップ分だけ離れた位置に平面を置いた場合に、その平面においてそのUVLED素子と対向する部分にそのUVLED素子により照射される紫外線の照度のことである。
【0020】
また、この場合、必ずしも1個単位でUVLED素子の照度を制御するのではなく、複数のUVLED素子をまとめた単位毎にUVLED素子の照度を制御してもよい。より具体的に、紫外線発生部において、複数のUVLED素子にいては、例えば、副走査方向と平行な列方向、及び主走査方向と並行な行方向へ、アレイ状に並べること等が考えられる。そして、この場合、例えば列方向における位置を揃えて行方向へ並ぶ複数のUVLED素子をUVLED素子の行と定義すると、行単位でUVLED素子の照度を制御すること等が考えられる。また、この場合、光源駆動部により、例えば、列方向における端の行に含まれるUVLED素子の照度が、列方向における中央部の行に含まれるUVLED素子の照度よりも大きくなるように、複数のUVLED素子を駆動すること等が考えられる。このように構成すれば、例えば、紫外線発生部の各位置の照度を適切に調整することができる。また、この場合、UVLED素子の密度については、均一になっていると考えることができる。この場合、例えば、それぞれのUVLED素子に供給する電流を調整することにより、それぞれのUVLED素子の照度を制御する。
【0021】
また、紫外線発生部の構成によっては、例えば、UVLED素子の密度を位置によって異ならせることで、副走査方向における位置によって照度を変化させてもよい。より具体的に、例えば、副走査方向における単位長さあたりのUVLED素子の数をLED密度と定義した場合、紫外線発生部において、複数のUVLED素子について、副走査方向における端部でのLED密度が中央部での密度よりも大きくなるように配設すること等が考えられる。このように構成した場合も、紫外線発生部の各位置の照度を適切に調整することができる。また、この場合、それぞれのUVLED素子へ供給する電流については、素子毎に異ならせるのではなく、予め設定された一定の電流に設定することが考えられる。
【0022】
また、本発明の構成として、上記と同様の特徴を有する液体吐出方法等を用いることも考えられる。この場合も、例えば、上記と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、例えば、紫外線硬化型液体を硬化させるための構成として複数のUVLED素子を有する紫外線発生部を用いる場合において、より適切な方法で紫外線を発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る造形装置10の一例を示す図である。
図1(a)は、造形装置10の要部の構成の一例を示す。
図1(b)は、造形装置10におけるヘッド部12の構成の一例を示す。
【
図2】紫外線発生部104の具体的な構成の一例を示す図である。
図2(a)は、紫外線発生部104の詳細な構成の一例を示す斜視図である。
図2(b)は、LEDアレイ202における複数のUVLED素子の配置の一例を示す図である。
【
図3】紫外線発生部104により照射される紫外線の照度分布について説明をする図である。
【
図4】複数のUVLED素子402の駆動の仕方について更に詳しく説明をする図である。
図4(a)は、提案手法の条件でLEDアレイ202における複数のUVLED素子402を駆動する方法の一例を示す。
図4(b)は、LEDアレイ202の構成の変形例を示す図である。
【
図5】インクの層の形成時に行うマルチパル方式の動作について説明をする図である。
図5(a)は、マルチパス方式の動作の一例を示す。
図5(b)は、小ピッチ方式でのマルチパス方式の動作の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る造形装置10の一例を示す。
図1(a)は、造形装置10の要部の構成の一例を示す。
図1(b)は、造形装置10におけるヘッド部12の構成の一例を示す。
【0026】
尚、以下に説明をする点を除き、造形装置10は、公知の造形装置と同一又は同様の特徴を有してよい。より具体的に、以下に説明をする点を除き、造形装置10は、インクジェットヘッドを用いて造形物50の材料となる液滴を吐出することで造形を行う公知の造形装置と同一又は同様の特徴を有してよい。また、造形装置10は、図示した構成以外にも、例えば、造形物50の造形等に必要な各種構成を更に備えてよい。また、本例において、造形装置10は、液体吐出装置の一例である。また、この場合、造形装置10の動作の少なくとも一部について、例えば、液体吐出方法に係る動作等と考えることもできる。また、本例において、造形装置10は、積層造形法により立体的な造形物50を造形する造形装置(3Dプリンタ)である。この場合、積層造形法とは、例えば、複数の層を重ねて造形物50を造形する方法である。造形物50とは、例えば、立体的な三次元構造物のことである。
【0027】
また、本例において、造形装置10は、ヘッド部12、造形台14、走査駆動部16、光源駆動部18、及び制御部20を備える。ヘッド部12は、造形物50の材料を吐出する部分である。また、本例において、造形物50の材料としては、インクを用いる。この場合、インクとは、例えば、機能性の液体のことである。また、本例において、インクについては、例えば、インクジェットヘッドから吐出する液体等と考えることもできる。この場合、インクジェットヘッドとは、例えば、インクジェット方式でインクの液滴を吐出する吐出ヘッドのことである。また、より具体的に、ヘッド部12は、造形物50の材料として、複数のインクジェットヘッドから、所定の条件に応じて硬化するインクを吐出する。そして、着弾後のインクを硬化させることにより、造形物50を構成する各層を重ねて形成する。また、本例では、インクとして、紫外線の照射により液体状態から硬化する紫外線硬化型インク(UVインク)を用いる。紫外線硬化型インクは、紫外線に応じて硬化する液体である紫外線硬化型液体の一例である。
【0028】
また、ヘッド部12は、造形物50の材料に加え、サポート層52の材料を更に吐出する。これにより、ヘッド部12は、造形物50の周囲に、必要に応じて、サポート層52を形成する。サポート層52とは、例えば、造形中の造形物50の外周を囲むことで造形物50を支持する積層構造物のことである。サポート層52は、造形物50の造形時において、必要に応じて形成され、造形の完了後に除去される。また、本例において、ヘッド部12は、複数のインクジェットヘッド、紫外線発生部、及び平坦化ローラを有する。ヘッド部12の具体的な構成については、後に更に詳しく説明をする。
【0029】
造形台14は、造形中の造形物50を支持する台状部材であり、ヘッド部12におけるインクジェットヘッドと対向する位置に配設され、造形中の造形物50を上面に載置する。また、本例において、造形台14は、少なくとも上面が積層方向(図中のZ方向)へ移動可能な構成を有しており、走査駆動部16に駆動されることにより、造形物50の造形の進行に合わせて、少なくとも上面を移動させる。この場合、積層方向とは、例えば、積層造形法において造形の材料が積層される方向のことである。また、より具体的に、本例において、積層方向は、造形装置10において予め設定される主走査方向(図中のY方向)及び副走査方向(図中のX方向)と直交する方向である。
【0030】
走査駆動部16は、造形中の造形物50に対して相対的に移動する走査動作をヘッド部12に行わせる駆動部である。この場合、造形中の造形物50に対して相対的に移動するとは、例えば、造形台14に対して相対的に移動することである。また、ヘッド部12に走査動作を行わせるとは、例えば、ヘッド部12が有するインクジェットヘッドに走査動作を行わせることである。また、本例において、走査駆動部16は、主走査動作(Y走査)、副走査動作(X走査)、及び積層方向走査(Z走査)をヘッド部12に行わせる。
【0031】
主走査動作とは、例えば、造形中の造形物50に対して相対的に主走査方向へ移動しつつインクを吐出する動作のことである。本例において、走査駆動部16は、主走査方向における造形台14の位置を固定して、ヘッド部12の側を移動させることにより、ヘッド部12に主走査動作を行わせる。また、走査駆動部16は、例えば、主走査方向におけるヘッド部12の位置を固定して、例えば造形台14を移動させることにより、造形物50の側を移動させてもよい。
【0032】
副走査動作とは、例えば、主走査方向と直交する副走査方向へ造形中の造形物50に対して相対的に移動する動作のことである。また、より具体的に、副走査動作は、例えば、予め設定された送り量だけ副走査方向へ造形台14に対して相対的に移動する動作である。本例において、走査駆動部16は、主走査動作の合間に、副走査方向におけるヘッド部12の位置を固定して、造形台14を移動させることにより、ヘッド部12に副走査動作を行わせる。また、走査駆動部16は、副走査方向における造形台14の位置を固定して、ヘッド部12を移動させることにより、ヘッド部12に副走査動作を行わせてもよい。
【0033】
積層方向走査とは、例えば、造形中の造形物50に対して相対的に積層方向へヘッド部12を移動させる動作のことである。また、走査駆動部16は、造形の動作の進行に合わせてヘッド部12に積層方向走査を行わせることにより、積層方向において、造形中の造形物50に対するインクジェットヘッドの相対位置を調整する。また、より具体的に、本例の積層方向走査において、走査駆動部16は、積層方向におけるヘッド部12の位置を固定して、造形台14を移動させる。走査駆動部16は、積層方向における造形台14の位置を固定して、ヘッド部12を移動させてもよい。
【0034】
光源駆動部18は、ヘッド部12における紫外線発生部に紫外線を発生させる駆動部である。光源駆動部18の動作については、後に更に詳しく説明をする。制御部20は、例えば造形装置10のCPUであり、造形装置10の各部を制御することにより、造形装置10における造形の動作を制御する。より具体的に、制御部20は、例えば造形すべき造形物50の形状情報や、カラー情報等に基づき、造形装置10の各部を制御する。
【0035】
本例によれば、例えば、ヘッド部12に主走査動作及び副走査動作を行わせることにより、造形物50を構成するそれぞれの層を紫外線硬化型インクで適切に形成することができる。また、積層方向走査を適宜行うことにより、複数の層を適切に積層することができる。また、これにより、例えば、積層造形法で造形物50を適切に造形することができる。
【0036】
続いて、ヘッド部12の具体的な構成について、説明をする。本例において、ヘッド部12は、複数のインクジェットヘッド、複数の紫外線発生部104、及び平坦化ローラ106を有する。また、複数のインクジェットヘッドとして、
図1(b)に示すように、インクジェットヘッド102s、インクジェットヘッド102w、インクジェットヘッド102y、インクジェットヘッド102m、インクジェットヘッド102c、インクジェットヘッド102k、及びインクジェットヘッド102t(以下、インクジェットヘッド102s~tという)を有する。これらの複数のインクジェットヘッドは、吐出ヘッドの一例であり、副走査方向における位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設される。また、それぞれのインクジェットヘッドは、造形台14と対向する面に、所定のノズル列方向へ複数のノズルが並ぶノズル列を有する。また、本例において、ノズル列方向は、副走査方向と平行な方向である。この場合、ノズル列を構成する複数のノズルについて、例えば、副走査方向における位置が互いに異なるように並んでいると考えることができる。
【0037】
また、これらのインクジェットヘッドのうち、インクジェットヘッド102sは、サポート層52の材料を吐出するインクジェットヘッドである。サポート層52の材料としては、例えば、サポート層用の公知の材料を好適に用いることができる。インクジェットヘッド102wは、白色(W色)のインクを吐出するインクジェットヘッドである。この場合、白色のインクは、例えば造形物50において光を反射する性質の領域(光反射領域)を形成する場合に用いられる。
【0038】
インクジェットヘッド102y、インクジェットヘッド102m、インクジェットヘッド102c、インクジェットヘッド102kは、着色された造形物50の造形時に用いられる着色用のインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド102yは、イエロー色(Y色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド102mは、マゼンタ色(M色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド102cは、シアン色(C色)のインクを吐出する。インクジェットヘッド102kは、ブラック色(K色)のインクを吐出する。また、この場合、YMCKの各色は、減法混色法によるフルカラー表現に用いるプロセスカラーの一例である。また、インクジェットヘッド102tは、クリアインクを吐出するインクジェットヘッドである。クリアインクとは、例えば、無色の透明色(T)であるクリア色のインクのことである。
【0039】
以上のような各色のインクを用いることにより、例えば、着色された造形物を適切に造形することができる。また、着色された造形物を造形する場合、より具体的には、例えば、外部から色彩を視認できる部分に着色領域を形成し、その内側に光反射領域を形成することが考えられる。この場合、着色領域については、例えば、YMCKの各色のインクとクリアインクとを用いて形成する。また、光反射領域については、例えば、白色のインクを用いて形成する。また、光反射領域よりも内側の領域(内部領域)については、サポート層52の材料以外のいずれかのインクを用いて形成することが考えられる。また、ヘッド部12の構成の変形例において、ヘッド部12は、上記以外の色用のインクジェットヘッドを更に有してもよい。また、使用量が多いインクについて、複数のインクジェットヘッドを有してもよい。この場合、例えば、サポート層52の材料用のインクジェットヘッド102sを複数(例えば2個)にすること等が考えられる。
【0040】
複数の紫外線発生部104は、紫外線硬化型インクを硬化させる紫外線を発生する光源部(ランプ部)である。また、本例において、複数の紫外線発生部104のそれぞれは、間にインクジェットヘッドs~tを挟むように、ヘッド部12における主走査方向の一端側及び他端側のそれぞれに配設される。また、本例のヘッド部12において、複数の紫外線発生部104は、例えば図示を省略したキャリッジに保持されることで、インクジェットヘッド102s~tに対する相対位置が固定された状態で配設される。そして、この場合、主走査動作時において、複数の紫外線発生部104は、インクジェットヘッド102s~tと共に主走査方向へ移動しつつ、紫外線を照射する。また、これにより、例えば、造形中の造形物50における被造形面に着弾したインクに対し、主走査動作時の移動方向においてインクジェットヘッド102s~tよりも後方側になる紫外線発生部104により、紫外線を照射する。このように構成すれば、例えば、各回の主走査動作時において、インクを硬化させる紫外線を適切に照射することができる。また、本例において、それぞれの紫外線発生部104は、紫外線を発生するLED素子であるUVLED素子を複数有する。そのため、本例の紫外線発生部104については、例えば、UVLEDランプ等と考えることもできる。また、紫外線発生部104の具体的な構成については、後に更に詳しく説明をする。
【0041】
平坦化ローラ106は、造形物50の造形中に形成されるインクの層を平坦化するための平坦化手段である。平坦化ローラ106は、例えば主走査動作時において、インクの層の表面と接触して、硬化前のインクの一部を除去することにより、インクの層を平坦化する。以上のような構成のヘッド部12を用いることにより、造形物50を構成するインクの層を適切に形成できる。また、複数のインクの層を重ねて形成することにより、造形物50を適切に造形できる。
【0042】
続いて、紫外線発生部104の具体的な構成について、更に詳しく説明をする。
図2は、紫外線発生部104の具体的な構成の一例を示す。
図2(a)は、紫外線発生部104の詳細な構成の一例を示す斜視図である。
【0043】
本例において、紫外線発生部104は、LEDアレイ202及びミラー204を有する。LEDアレイ202は、紫外線発生部104において紫外線を発生する部分であり、アレイ状に並ぶ複数のUVLED素子により構成される。LEDアレイ202における複数のUVLED素子の配置については、後に更に詳しく説明をする。ミラー204は、紫外線を反射する光反射部であり、図中に示すようにLEDアレイ202の周囲を囲むことにより、LEDアレイ202が発生する紫外線を反射する。このように構成すれば、例えば、LEDアレイ202の正面以外へ向かう紫外線を適切に遮断し、紫外線発生部104の指向性を適切に高めることができる。
【0044】
また、本例の紫外線発生部104において、設計上のランプギャップは、20mmである。この場合、ランプギャップとは、例えば、紫外線を発生する光源と、紫外線の照射対象(ワーク)との間の距離のことである。また、ランプギャップについては、例えば、造形物50における被造形面と紫外線発生部104におけるLEDアレイ202との間の積層方向における距離等と考えることもできる。この場合、被造形面とLEDアレイ202との間の積層方向における距離とは、例えば、LEDアレイ202を構成するUVLED素子における発光領域の表面と、被造形面との間の積層方向における距離のことである。また、ランプギャップについては、20mm以外の距離にしてもよい。この場合、ランプギャップについて、例えば10~30mmにすることが好ましい。ランプギャップは、より好ましくは、15~25mm程度である。
【0045】
続いて、LEDアレイ202における複数のUVLED素子の配置について、更に詳しく説明をする。
図2(b)は、LEDアレイ202における複数のUVLED素子の配置の一例を示す図であり、LEDアレイ202の構成の一例をインクジェットヘッド102と共に示す。この場合、図中に示すインクジェットヘッド102は、ヘッド部12におけるインクジェットヘッド102s~t(
図1参照)のいずれかに対応するインクジェットヘッドである。また、
図2(b)においては、図示の便宜上、副走査方向におけるインクジェットヘッド102とLEDアレイ202との位置関係を主に示す目的で、インクジェットヘッド102及びLEDアレイ202を示している。そのため、インクジェットヘッド102及びLEDアレイ202の主走査方向における位置については、必ずしも実際の位置を反映していない。
【0046】
上記においても説明をしたように、本例において、インクジェットヘッド102は、副走査方向へ複数のノズルが並ぶノズル列302を有する。また、図示した構成において、インクジェットヘッド102は、主走査方向へ並ぶ複数のノズル列302を有する。複数のノズル列302は、同じノズル長(ノズル列長)Lnを有する列であり、副走査方向における所定の範囲にノズルが並ぶように、主走査方向における位置をずらした位置に形成されている。また、ノズル長Lnについては、例えば、副走査方向におけるノズル列の長さや、ノズル列の範囲の幅等と考えることもできる。
【0047】
また、上記においても説明をしたように、LEDアレイ202は、アレイ状に並ぶ複数のUVLED素子402により構成される。この場合、UVLED素子402とは、例えば、紫外線を発生する半導体素子のことである。また、UVLED素子402は、例えばアレイ状に並ぶように実装されることで、LEDアレイ202を構成する。また、LEDアレイ202において、それぞれのUVLED素子402は、個別にパッケージングされていてもよい。また、より具体的に、本例において、LEDアレイ202を構成する複数のUVLED素子402は、副走査方向と平行な列方向、及び主走査方向と並行な行方向へ、アレイ状に並ぶ。また、LEDアレイ202において、複数のUVLED素子402は、LEDアレイ202による紫外線の発光範囲が副走査方向においてノズル列302の範囲と重なるように配設されることで、LEDアレイ202において紫外線を発光する範囲の副走査方向における長さである発光長(露光長)Laがインクジェットヘッド102のノズル長Lnと同等になるように構成されている。
【0048】
また、このような構成については、例えば、副走査方向において、紫外線発生部104による紫外線の発光範囲をノズル列の範囲と実質的に同じにする構成等と考えることもできる。この場合、副走査方向において発光範囲がノズル列の範囲と実質的に同じとは、例えば、LEDアレイ202において複数のUVLED素子402が並べられている範囲がノズル列の範囲と実質的に同じになっていることである。また、この場合、副走査方向における範囲が実質に同じであるとは、例えば図中に示すように、複数のUVLED素子402が並べられている範囲の副走査方向における端の位置と、ノズル列302の端の位置とのずれ量が、1個のUVLED素子402の幅分未満になっていることである。そのため、発光長Laがノズル長Lnと同等であるとは、必ずしも発光長Laがノズル長Lnと等しい場合に限らず、図中に示すように、1個のUVLED素子402の幅分未満の距離だけ発光長Laがノズル長Lnよりも大きい場合も含む。また、この場合、ノズル長Lnの範囲と発光長Laの範囲との端部でのずれ量(片方の端でのずれ量)については、1個のUVLED素子402の幅の半分未満であることが好ましい。また、ノズル長Lnについては、例えば50~60mm程度にすることが考えられる。また、発光長Laについては、例えばノズル長Lnよりも大きく、かつ、55~65mm程度にすることが考えられる。また、LEDアレイ202の発光範囲の主走査方向における幅Waについては、例えば30~40mm程度にすることが考えられる。
【0049】
また、インクジェットヘッド102におけるノズル列302の一端側のノズルの副走査方向における位置を一端側ノズル位置とし、ノズル列302の他端側のノズルの副走査方向における位置を他端側ノズル位置とし、LEDアレイ202における複数のUVLED素子402のうち、副走査方向における一方の側の最も端にあるUVLED素子を一方側LEDとし、副走査方向における他方の側の最も端にあるUVLED素子を他方側LEDとした場合、LEDアレイ202における複数のUVLED素子402の配置については、例えば、一端側ノズル位置が一方側LEDのいずれかの部分の副走査方向における位置と同じ位置になり、他端側ノズル位置が他方側LEDのいずれかの部分の副走査方向における位置と同じ位置になると考えることができる。この場合、一方側LEDや他方側LEDのようなUVLED素子402のいずれかの部分とは、例えば、UVLED素子402の発光領域のいずれかの部分のことである。また、この場合、LEDアレイ202における複数のUVLED素子402とは、LEDアレイ202における全てのUVLED素子402のことである。また、全てのUVLED素子402とは、例えば、インクを硬化させるための紫外線を実質的に照射する全てのUVLED素子402のことである。
【0050】
また、この場合、一方側LED及び他方側LEDの発光中心の副走査方向における位置について、ノズル列の範囲に合わせるように設定することが考えられる。より具体的に、この場合、例えば、一方側LEDの発光中心の副走査方向における位置を一端側ノズル位置に合わせ、他方側LEDの発光中心の副走査方向における位置を他端側ノズル位置に合わせることが考えられる。このように構成すれば、例えば、ノズル長Lnに合わせた位置に複数のUVLED素子402を適切に配設できる。
【0051】
また、一方側LED及び他方側LEDの発光中心の位置については、必ずしも厳密にノズル列の範囲に合わせるのではなく、位置のずれ量が予め設定された許容範囲内に収まるように設定してもよい。また、UVLED素子402は、通常、発光中心からのみではなく、発光中心の周囲を含む発光領域から紫外線を発生する。そのため、一方側LED又は他方側LEDの発光中心の位置がノズル列の範囲の端の位置(一端側ノズル位置又は他端端側ノズル位置)からずれる場合、発光中心がノズル列の範囲の中に入るように位置をずらすことが好ましい。また、このような構成については、例えば、発光長Laがノズル長Lnよりも大きく、かつ、発光の中心の副走査方向における位置が副走査方向におけるノズル列の範囲の外になるUVLED素子402が存在しない構成等と考えることもできる。
【0052】
また、上記においても説明をしたように、本例のLEDアレイ202において、複数のUVLED素子402は、副走査方向と平行な列方向、及び主走査方向と並行な行方向へ、アレイ状に並んでいる。また、この場合、図中に線で区切って示すように、LEDアレイ202を構成する複数のUVLED素子402について、複数の行404に分けて考えることができる。この場合、行404とは、列方向における位置を揃えて行方向へ並ぶ複数のUVLED素子402のことである。また、行404については、例えば、行方向へ並ぶ複数のUVLED素子402のブロック等と考えることもできる。また、後に更に詳しく説明をするように、本例において、光源駆動部18(
図1参照)は、行404を単位にして、それぞれのUVLED素子402の照度を制御する。そのため、行404については、例えば、紫外線の照度の制御単位等と考えることもできる。また、より具体的に、図中に示す構成の場合、それぞれの行404は、8個のUVLED素子402により構成されている。また、LEDアレイ202は、列方向へ並ぶ13個の行404により構成されている。
【0053】
続いて、LEDアレイ202におけるそれぞれのUVLED素子402を駆動する光源駆動部18の動作について、更に詳しく説明をする。
図3は、紫外線発生部104により照射される紫外線の照度分布について説明をする図である。この場合、紫外線発生部104により照射される紫外線の照度分布とは、
図2を用いて説明をした構成のLEDアレイ202を有する紫外線発生部104により被照射位置に照射される紫外線の照度の分布のことである。また、被照射位置に照射される紫外線の照度とは、例えば、設定されたランプギャップを空けて紫外線発生部104と対向する位置にある平面の各位置(副走査方向における各位置)に照射される紫外線の照度のことである。
【0054】
また、図中において、右側のグラフは、図中にローギャップ、ハイギャップ、及び提案手法として示す3種類の条件で行った実験により得られた紫外線の照度分布の測定結果である。また、
図3においては、グラフにおける副走査方向の各位置をLEDアレイ202における各位置と対応付けるために、グラフの左側にLEDアレイ202を図示している。また、この実験で用いたLEDアレイ202において、発光長Laは、57.5mmである。また、発光範囲の主走査方向における幅Waは、35mmである。また、このLEDアレイ202は、ノズル長Lnが57.5mm程度の場合に用いるLEDアレイ202の一例である。
【0055】
また、上記の3種類の条件のうち、ローギャップの条件は、ランプギャップを小さくした条件である。ハイギャップの条件は、ランプギャップをある程度以上に大きくした条件である。また、提案手法の条件とは、後に更に詳しく説明をする本例の方法によりUVLED素子402における各UVLED素子402を駆動する場合の例である。また、より具体的に、図示した場合において、ローギャップの条件では、ランプギャップを10mm以下に設定した。また、ハイギャップの条件では、ランプギャップを20mm程度に設定した。また、ローギャップ及びハイギャップの条件では、LEDアレイ202における全てのUVLED素子402について、供給する電流(1個のUVLED素子402あたりの電流)を等しく設定することで、各UVLED素子402の照度を同一にした。
【0056】
ローギャップの条件の場合のように、ランプギャップが小さい場合、それぞれのUVLED素子402による点光源としての影響が強くなり、均一な照度分布を得ることが難しくなる。また、その結果、図中に示すように、副走査方向における位置によって照度が変化することになる。また、この場合、このような条件でインクを硬化させると、インクの硬化の仕方が位置によって異なることで、色ムラ等が発生するおそれがある。
【0057】
一方、ハイギャップの場合のように、ランプギャップが大きい場合、符号Aを付して破線で囲んだ部分のような、副走査方向における紫外線発生部104の端(LEDアレイ202の端)に対応する部分において、照度の低下が大きくなることが考えられる。そして、この場合、各回の主走査動作で形成される領域の境界付近(例えば、パス間の境界付近)において硬化ムラ等が発生して、バンディングの影響が大きくなるおそれがある。この場合、バンディングとは、例えば、パス間の境界部分が目立つ現象のことである。
【0058】
これに対し、提案手法の条件では、ランプギャップを20mmに設定した上で、副走査方向におけるLEDアレイ202の両端での照度がより大きくなるように、複数のUVLED素子402を駆動する。この場合、LEDアレイ202の両端での照度をより大きくするとは、例えば、LEDアレイ202の全体により得られる照度分布での上記のような照度の低下を抑えるように、LEDアレイ202の両端での照度を大きくすることである。このように構成すれば、例えば、紫外線発生部104の端の照度の低下を適切に抑えることができる。また、これにより、例えば造形装置10における造形時において、紫外線硬化型液体を均一かつ適切に硬化させることができる。
【0059】
続いて、本例において光源駆動部18により行うUVLED素子402の駆動の仕方について、更に詳しく説明をする。
図4は、複数のUVLED素子402の駆動の仕方について更に詳しく説明をする図である。
図4(a)は、上記において説明をした提案手法の条件でLEDアレイ202における複数のUVLED素子402を駆動する方法の一例を示す。
【0060】
上記においても説明をしたように、本例においては、副走査方向におけるLEDアレイ202の両端での紫外線の照度がより大きくなるように、複数のUVLED素子402を駆動する。この場合、紫外線の照度とは、例えば、1回の主走査動作を行う間の平均の照度である。また、より具体的に、この場合、LEDアレイ202の端(副走査方向における端)に位置するUVLED素子402の照度を意図して他より高い照度にして発光させることで、副走査方向におけるLEDアレイ202の端部(両端)での紫外線の照度を中央部よりも大きくする。この場合、副走査方向における端部での紫外線の照度とは、例えば、端部に配設されたUVLED素子402により照射される紫外線の照度のことである。また、中央部での照度とは、例えば、中央部に配設されたUVLED素子402により照射される紫外線の照度のことである。また、端部のUVLED素子402や中央部のUVLED素子402のような、複数のUVLED素子402のうちの一部の照度とは、例えば、その一部と対向する位置にその一部のUVLED素子402により照射される紫外線の照度のことである。また、その一部と対向する位置に照射される紫外線とは、例えば、予め設定されたランプギャップ分だけ離れた位置に平面を置いた場合に、その平面においてその一部と対向する部分に照射される紫外線の照度のことである。
【0061】
また、このような制御については、例えば、副走査方向における端部に配設されたUVLED素子402の照度が副走査方向における中央部に配設されたUVLED素子402の照度よりも大きくなるように、それぞれのUVLED素子402の照度を制御すること等と考えることもできる。この場合、UVLED素子402の照度とは、例えば、そのUVLED素子402と対向する位置に照射される紫外線の照度のことである。また、UVLED素子402と対向する位置に照射される紫外線とは、例えば、予め設定されたランプギャップ分だけ離れた位置に平面を置いた場合に、その平面においてそのUVLED素子402と対向する部分にそのUVLED素子402により照射される紫外線の照度のことである。
【0062】
また、この場合、それぞれのUVLED素子402の照度は、それぞれのUVLED素子402へ供給する電流に比例すると考えられる。そのため、UVLED素子402の照度を大きくすることについては、例えば、UVLED素子402へ供給する電流を大きくすること等と考えることもできる。また、それぞれのUVLED素子402の照度については、例えばそれぞれのUVLED素子402へ光源駆動部18により供給する電流を変化させることで、調整することができる。また、それぞれのUVLED素子402へ供給する電流については、例えばPWM(Pulse Width Modulation)制御等の公知の方法で制御することができる。この場合、例えば、PWM制御におけるパルス幅を大きくすることで、電流を増加させることができる。また、この場合において、必ずしも1個単位でUVLED素子402の照度を制御するのではなく、複数のUVLED素子402をまとめた単位毎(ブロック毎)にUVLED素子の照度を制御してもよい。
【0063】
また、この点に関し、上記においても説明をしたように、本例において、光源駆動部18は、複数のUVLED素子402が並ぶ行404を単位にして、それぞれのUVLED素子402の照度を制御する。行404を単位にしてUVLED素子402の照度を制御するとは、例えば、一つの行404に含まれる複数のUVLED素子402へ供給する電流の合計を制御することである。また、この場合、同じ行404に含まれる複数のUVLED素子402のそれぞれに対して供給する電流を同じに設定することが好ましい。また、この場合、光源駆動部18により、例えば、列方向における端の行404に含まれるUVLED素子402の照度が、列方向における中央部の行404に含まれるUVLED素子402の照度よりも大きくなるように、複数のUVLED素子402を駆動すること等が考えられる。
【0064】
また、より具体的に、本例においては、制御単位のブロックとなる13個の行404のうち、図中に符号B1を付して示す範囲にある行404、及び符号B2を付して示す範囲にある行404を、端の行404として扱う。また、符号Cを付して示す範囲にある行404を、中央部の行404として扱う。この場合、符号B1及びB2を付して示す範囲の行404については、LEDアレイ202の端に位置する所定の数の行404のブロック等と考えることができる。また、符号Cを付して示す範囲にある行404については、端以外の他の部分の行404のブロック等と考えることができる。また、この場合、符号Cを付して示す範囲の全ての行404ではなく、この範囲において列方向に中央付近にある一部の行404のみを中央部の行404と考えてもよい。また、更に具体的に、図示した場合において、符号B1を付して示す範囲にある行404は、1個である。符号B2を付して示す範囲にある行404は、1個である。また、符号Cを付して示す範囲にある行404は、11個である。そして、この場合、LEDアレイ202における両端のそれぞれにある一つの行404に含まれるUVLED素子402の照度を、その他のUVLED素子402よりも大きくすると考えることができる。
【0065】
また、
図3に結果を示した場合の提案手法では、両端の行404に含まれるUVLED素子402の照度がその他のUVLED素子402の照度の1.66倍になるように、複数のUVLED素子402を駆動している。また、造形装置10(
図1参照)での造形時にも、光源駆動部18により、同様に照度の制御を行うことが好ましい。また、端部と中央部との照度の比率については、1.66倍以外であってもよい。この場合、光源駆動部18により、例えば、副走査方向における端部での紫外線の照度が中央部での照度の1.5~2倍になるように、LEDアレイ202における複数のUVLED素子402を駆動することが好ましい。このように構成すれば、例えば、上記において説明をした端の照度の低下を適切に抑えることができる。また、副走査方向における端部での紫外線の照度については、中央部での照度の1.6~1.8倍程度にすることがより好ましい。また、副走査方向における端部での紫外線の照度について、中央部での照度に対してどの程度大きくするかについては、造形装置10の具体的な構成等に応じて、適宜調整することが好ましい。この場合、例えばランプギャップ等のランプ設計、造形装置10において求められる造形の精度、造形装置10において造形する造形物の使用用途等を考慮して調整を行うことが好ましい。
【0066】
本例によれば、行404単位での照度の制御を行うことにより、例えば、紫外線発生部の各位置の照度を適切に調整することができる。また、これにより、例えば、LEDアレイ202の発光範囲に対し、副走査方向における端部での紫外線の照度が中央部での照度よりも大きくなるように、複数のUVLED素子402を適切に駆動することができる。また、このような照度の制御を行うことにより、例えば、紫外線発生部104の端において生じる照度の低下(ランプ光源端の照度低下)を回避して、インクジェットヘッドのノズル列が存在する副走査方向における範囲に対し、均一かつ適切に紫外線を照射することができる。
【0067】
ここで、インクジェットヘッドのノズル列が存在する範囲に対して均一に紫外線を照射することを考えた場合、ノズル列よりも発光範囲が十分に広くなるように複数のUVLED素子402を並べればよいようにも思われる。このように構成すれば、例えば、紫外線発生部104の端において照度の低下が発生する範囲をノズル列の範囲よりも外側にすることで、ノズル列の範囲に対し、均一に紫外線を照射することが可能になる。しかし、この場合、ノズル列の範囲の外側に照射される紫外線の量が多くなることで、様々な問題が生じるおそれがある。より具体的に、この場合、例えば、ノズル列の中央部のノズルから吐出されたインクと、端のノズルから吐出されたインクとの間で、照射される紫外線の積算光量の差が大きくなり、硬化後の状態に差が出るおそれもある。また、その結果、例えば、造形装置10において造形される造形物の品質に影響が生じるおそれがある。より具体的に、この場合、例えば、紫外線の照射量が多い部分のインクが過硬化の状態等になり、他の部分と硬化の状態に差が生じることで、インクの層に意図しない応力等が発生すること等が考えられる。また、造形物を造形する場合、複数のインクの層を重ねて形成することで、各層に生じる影響が重畳して、造形物の全体に対して生じる影響がより多くなること等も考えられる。
【0068】
また、造形装置10で造形を行う場合、造形の進行に伴い、造形台14(
図1参照)とヘッド部12(
図1参照)との距離が大きくなることが考えられる。そして、この場合、ノズル列よりも広い範囲に紫外線を照射すると、意図しない方向へ反射する紫外線(迷光)が多くなること等も考えられる。また、この場合、反射した紫外線がノズル列に到達することで、ノズル付近でインクが硬化して、吐出不良の原因になること等も考えられる。また、紫外線の発光範囲を広くする場合、使用するUVLED素子402の個数が多くなることで、コストの増大や装置の大型化等の問題が生じることも考えられる。
【0069】
これに対し、本例においては、上記のように、紫外線の発光範囲を必要以上に広げることなく、ノズル列の範囲へ均一な紫外線を照射することができる。そのため、本例によれば、例えば、紫外線硬化型インクを硬化させるための構成として複数のUVLED素子402を有する紫外線発生部104を用いる場合において、より適切な方法で紫外線を発生することができる。また、これにより、例えば、例えば、高品質な造形物をより適切に造形することができる。
【0070】
また、上記のように、本例においては、副走査方向の両端のそれぞれにおける一つの行404を端の行404として扱い、端の行404に含まれるUVLED素子402の照度を大きくしている。しかし、両端のそれぞれにおいて端の行404として扱う行404の数は、一つの限らず、二つ以上であってもよい。また、
図4(a)に示したLEDアレイ202の構成については、例えば、UVLED素子402の密度が均一になっている構成等と考えることができる。そして、この場合、上記においても説明をしたように、それぞれのUVLED素子402へ供給する電流を調整することで、紫外線発生部104の各部の照度を調整することになる。しかし、紫外線発生部104におけるLEDアレイ202の変形例においては、例えばUVLED素子402の密度を位置によって異ならせることで、副走査方向における位置によって照度を変化させてもよい。
【0071】
図4(b)は、LEDアレイ202の構成の変形例を示す図であり、UVLED素子402の密度を位置によって異ならせる場合のLEDアレイ202の構成の例を示す。本変形例のLEDアレイ202においては、複数のUVLED素子402について、副走査方向における端部でのLED密度が中央部での密度よりも大きくなるように配設する。この場合、LED密度とは、副走査方向における単位長さあたりのUVLED素子402の数のことである。
【0072】
また、より具体的に、本変形例においては、副走査方向における端にある行404に含まれるUVLED素子402の数を、中央部の行404に含まれるUVLED素子402の数よりも多くしている。この場合、副走査方向における端にある行404とは、図中に符号B1を付して示す範囲にある行404、及び符号B2を付して示す範囲にある行404である。また、中央部の行404とは、符号Cを付して示す範囲にある行404のことである。本変形例において、両端のそれぞれにおいて端の行404として扱う行404の数は、図中に示すように、二つである。また、本変形例においては、それぞれのUVLED素子402へ供給する電流については、素子毎に異ならせるのではなく、予め設定された一定の電流に設定する。また、これにより、全ての行404における全てのUVLED素子402に対して、同じ大きさの電流を供給する。このように構成した場合、LEDアレイ202の各位置の照度は、各位置にある行404に含まれるUVLED素子402の数に応じて変化することになる。そのため、本変形例においても、紫外線発生部104の各位置の照度を適切に調整することができる。
【0073】
また、LEDアレイ202の構成の更なる変形例においては、上記以外の方法で照度の調整を行ってもよい。例えば、LED密度の変え方について、一つの行404に含まれるUVLED素子402の数を変化させるのではなく、副走査方向における行404の間隔(LEDアレイ202での列方向におけるUVLED素子402の間隔)を変化させること等も考えられる。また、例えば
図4(a)に示す構成のLEDアレイ202を用いる場合において、一部のUVLED素子402として他のUVLED素子402と照射特性の異なるUVLED素子を用いること等も考えられる。この場合、照射特性が異なるとは、例えば、同じ電流が供給された場合の照度が異なることである。また、この場合、副走査方向における端にある行404(符号B1、B2を付した範囲の行404)に含まれるUVLED素子402として、中央部の行404(符号Cを付した範囲の行404)とは照射特性が異なるUVLED素子402を用いること等が考えられる。このように構成した場合も、紫外線発生部104の各位置の照度を適切に調整することができる。
【0074】
また、LEDアレイ202の全体により得られる照度分布については、例えばレンズ(光学レンズ)等の光学部品を用いて調整をすること等も考えられる。この場合も、LEDアレイ202の発光範囲において、副走査方向における端部での紫外線の照度が中央部での照度よりも大きくなるように調整を行うことで、紫外線発生部104の各位置の照度を適切に調整することができる。また、この場合も、副走査方向へ複数のUVLED素子402を並べた構成と組み合わせて光学部品を用いることで、紫外線発生部104の過度の大型化やコストの上昇を適切に抑えることができる。また、この場合、例えば上記において提案手法として示した紫外線の照度分布と同等(同様)の特性の照度分布がレンズ等による調整のみにより得られるのであれば、個別のUVLED素子402や行404単位での照度の調整等は行わずに、複数のUVLED素子402を駆動してもよい。
【0075】
続いて、本例において行う造形の動作について、更に詳しく説明をする。上記においても説明をしたように、本例において、造形装置10(
図1参照)は、積層造形法により立体的な造形物を造形する。そして、この場合、造形物を構成するそれぞれのインクの層については、例えば、同じ位置に対して複数回の主走査動作を行うマルチパス方式で形成することが考えられる。
【0076】
図5は、インクの層の形成時に行うマルチパル方式の動作について説明をする図であり、マルチパス方式でのパス数を4にした場合(4パスの動作の場合)について、各回の主走査動作時の副走査方向におけるインクジェットヘッド102の位置の一例を示す。
図5(a)は、マルチパス方式の動作の一例を示す。
【0077】
造形物の造形時において、マルチパス方式でインクの層を形成する場合、一つのインクの層を形成する動作として、例えば、インクジェットプリンタで画像の印刷を行う場合のマルチパス方式の動作と同一又は同様の動作を行うことが考えられる。より具体的に、この場合、例えば、1回の副走査動作での送り量について、ノズル長Lnをパス数4で除した距離Ln/4に設定して、各回の主走査動作の合間に副走査動作を行う。このように構成した場合、図中に示すように、主走査動作を行う毎に一定の送り量での副走査動作を行い、かつ、パス数分の副走査動作での合計の送り量がノズル長Lnと等しくなるように、主走査動作及び副走査動作を行うことになる。このように構成すれば、例えば、マルチパス方式でのインクの層の形成を適切に行うことができる。
【0078】
また、造形物の造形時には、上記と異なる小ピッチ方式でのマルチパス方式の動作を行うことも考えられる。
図5(b)は、小ピッチ方式でのマルチパス方式の動作の一例を示す。小ピッチ方式での動作とは、例えば、副走査動作での送り量を小さく設定した状態で、間に副走査動作を挟んでパス数分の主走査動作を行い、パス数分の主走査動作を行う毎に、より大きな送り量での副走査動作を行う動作のことである。この場合、図中に示すように、パス数分の主走査動作(1パス目~4パス目)を行う合間に行う副走査動作(小ピッチの副走査動作)では、
図5(a)を用いて説明をした場合の送り量であるLn/4よりも小さな送り量で、副走査動作を行う。また、パス数分の最後の主走査動作(4パス目)を行った後に行う副走査動作(大ピッチの副走査動作)では、Ln/4よりも大きな送り量での副走査動作を行う。また、これにより、パス数分の副走査動作での合計の送り量については、
図5(a)を用いて説明をした場合と同様に、ノズル長Lnと等しくなるように設定する。このように構成した場合も、例えば、マルチパス方式でのインクの層の形成を適切に行うことができる。
【0079】
ここで、小ピッチパス方式のマルチパス方式でインクの層を形成する場合、造形物の形状が所定の条件を満たしていれば、より効率的に造形を行うことができる。しかし、この場合、副走査方向における位置をあまり変化させずに複数回の主走査動作を行うため、例えば紫外線発生部104(
図1参照)の端の付近への紫外線の照射の仕方の影響が生じやすいとも考えられる。また、より具体的に、例えば副走査方向においてノズル列の範囲と全く重ならない位置にまでUVLED素子を設ける場合のように、紫外線発生部104による紫外線の発光範囲がノズル長Lnに合わせられてない場合や、紫外線発生部104の端に対応する部分において照度の低下が生じている場合、副走査方向におけるインクジェットヘッド102の位置をほぼ同じにして複数回の主走査動作を行うことで、これらの影響が重畳して、より大きな問題が発生しやすくなると考えられる。これに対し、上記において説明をした提案手法を用いた場合、ノズル列に対応する範囲へ均一な紫外線を照射することが可能になるため、小ピッチ方式の動作を行う場合にも、このような問題の発生を適切に防ぐことができる。
【0080】
また、小ピッチ方式に関し、より具体的に、パス数分の主走査動作の合間に行う小ピッチの副走査動作では、送り量(小ピッチの送り量)について、例えば、ノズル列におけるノズルの間隔(ノズルピッチ)に依存する方法で決めることが考えられる。そして、この場合、小ピッチの送り量について、ノズルピッチの20倍以下等にすることが考えられる。また、小ピッチの送り量については、例えば、ノズル列におけるノズルの間隔(ノズルピッチ)の整数倍にすることが考えられる。この場合、小ピッチの送り量について、ノズルピッチ分(ノズルピッチの1倍)以上にすることが考えられる。また、より具体的に、小ピッチの送り量については、例えばノズルピッチの1~20倍程度、好ましくはノズルピッチの1~5倍程度にすることが考えられる。また、小ピッチの送り量については、例えば、ノズルピッチ未満の距離にすること等も考えられる。また、小ピッチの送り量については、例えば、ノズルピッチの10倍以下(例えば、0.25~10倍程度)にすることが好ましいと考えることもできる。また、小ピッチの送り量については、ノズル長Lnと比べて十分に小さくすることが好ましい。そのため、小ピッチの送り量については、例えば、ノズル長Lnの1/30以下程度にすることが考えられる。また、小ピッチの送り量は、ノズル長Lnの1/50以下程度であってもよい。また、小ピッチの送り量については、例えば、ノズル長Lnをパス数で除した距離よりも小さな距離等と考えることもできる。また、小ピッチの送り量での副走査動作は、必ずしもパス数分の主走査動作の全ての合間に行うのではなく、一部の合間のみに行うことも考えられる。そのため、小ピッチ方式での動作については、例えば、一つの層を形成する間に行う複数の主走査動作のうち、少なくとも一部の回の主走査動作の合間に行う副走査動作において、上記のような小ピッチに送り量を設定する動作等と考えることもできる。また、大ピッチの送り量については、例えば、ノズル長Lnに合わせた距離にすることが考えられる。この場合、ノズル長Lnに合わせた距離とは、例えば、パス数分の主走査動作の合間に行う小ピッチの副走査動作での送り量の合計と合わせることでノズル長Lnに等しくなる距離のことである。
【0081】
続いて、上記において説明をした構成に関する補足説明等を行う。また、以下においては、説明の便宜上、上記において説明をした各構成をまとめて、本例という。上記においても説明をしたように、本例においては、紫外線発生部104におけるLEDアレイ202(
図2参照)の発光長Laがインクジェットヘッド102(
図1参照)のノズル長Lnと同等になるように構成される。この点に関し、インクジェットヘッド102及び紫外線発生部104を有するヘッド部12(
図1参照)において、インクジェットヘッド102及び紫外線発生部104の配置については、上記において説明をした具体的な構成に限らず、様々な変形を行うことも可能である。そして、この場合、全てのインクジェットヘッド102の副走査方向における位置を揃えて配設するのではなく、一部のインクジェットヘッド102について、他のインクジェットヘッド102と副走査方向における位置が重ならないように配設すること等も考えられる。そして、この場合、副走査方向における位置が揃っている複数のインクジェットヘッド102の集合をインクジェットヘッド102の列と考えると、列毎に紫外線発生部104を配設することが好ましい。また、この場合、一つの列に含まれるインクジェットヘッド102におけるノズル列と、その列に対応する紫外線発生部104との間で、副走査方向においてノズル列の範囲に発光範囲Laを合わせればよい。
【0082】
また、紫外線発生部104による紫外線の発光範囲については、例えば、造形装置10の動作時に紫外線硬化型インクが吐出される対象物である造形物上での発光範囲等と考えることができる。また、この場合、造形装置10の動作時には、造形物において紫外線発生部104による紫外線の発光範囲に対応する被照射範囲に、紫外線が照射されることになる。そして、実用上、この被照射範囲の副走査方向における幅は、紫外線発生部104による紫外線の発光範囲の副走査方向における幅と、実質的に同じになると考えることもできる。そのため、紫外線発生部104における複数のUVLED素子については、例えば、この被照射範囲が副走査方向においてノズル列の範囲と重なるように配設されていると考えることもできる。また、この場合、光源駆動部18の動作については、例えば、ノズル列の範囲と重なる被照射範囲に照射される紫外線の光量を均一化するために、上記のように複数のUVLED素子を駆動していると考えることができる。
【0083】
また、上記においても説明をしたように、本例の造形装置10は、液体吐出装置の一例である。そして、液体吐出装置の例としては、造形装置10に限らず、その他の構成を考えることもできる。また、より具体的に、液体吐出装置の他の例としては、例えば、インクジェットプリンタ等を考えることもできる。この場合、インクジェットプリンタは、例えば、上記において説明をした構成と同様に、インクジェットヘッド及び紫外線発生部を有するヘッド部を備え、インクジェットヘッドから紫外線硬化型インクを吐出することで、2次元の画像を印刷する。また、この場合、インクジェットプリンタにおける印刷対象のメディアについて、紫外線硬化型インクが吐出される対象物と考えることができる。また、この場合も、紫外線発生部とインクジェットヘッドとは、副走査方向における位置を揃えて並ぶ。また、発光長Laがインクジェットヘッドのノズル長Lnと同等になるように構成されているLEDアレイを有する紫外線発生部を用いる。また、紫外線発生部により照射する紫外線について、副走査方向における端部での紫外線の照度が中央部での照度よりも大きくなるように設定する。このように構成した場合も、必要な領域に対し、均一な紫外線をより適切に照射することができる。また、これにより、例えば、複数のUVLED素子を有する紫外線発生部を用いる場合において、より適切な方法で紫外線を発生することができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、例えば液体吐出装置に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0085】
10・・・造形装置、12・・・ヘッド部、14・・・造形台、16・・・走査駆動部、18・・・光源駆動部、20・・・制御部、50・・・造形物、52・・・サポート層、102・・・インクジェットヘッド、104・・・紫外線発生部、106・・・平坦化ローラ、202・・・LEDアレイ、204・・・ミラー、302・・・ノズル列、402・・・UVLED素子、404・・・行