(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】ハイブリッド自動車及びそのための暖房制御方法
(51)【国際特許分類】
B60W 20/12 20160101AFI20220826BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20220826BHJP
B60W 10/30 20060101ALI20220826BHJP
B60W 20/16 20160101ALI20220826BHJP
F01N 5/02 20060101ALI20220826BHJP
G01C 21/26 20060101ALN20220826BHJP
【FI】
B60W20/12 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/30 900
B60W20/16
F01N5/02 G
F01N5/02 K
G01C21/26 A
(21)【出願番号】P 2018148867
(22)【出願日】2018-08-07
【審査請求日】2021-03-10
(31)【優先権主張番号】10-2017-0147212
(32)【優先日】2017-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【氏名又は名称】柳本 陽征
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジェ、ムン
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-083958(JP,A)
【文献】特開2009-298278(JP,A)
【文献】特開2011-183858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 20/12
B60W 10/06
B60W 10/30
B60W 20/16
F01N 5/02
G01C 21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド自動車の暖房制御方法であって、
走行経路上に排気ガス排出に係わる特定地域が存在する場合、前記特定地域に進入するときに到達しなければならない目標冷却水温を決定する段階;
前記目標冷却水温に到達するための冷却水昇温区間距離を決定する段階;
前記決定された冷却水昇温区間距離を用いて昇温制御開始時点を決定する段階;及び
前記昇温制御開始時点から前記特定地域に進入するまでエンジンを起動する段階を含む、ハイブリッド自動車の暖房制御方法。
【請求項2】
前記目標冷却水温を決定する段階は、
エンジンの稼働時の基準冷却水温に、前記特定地域を通過するうちにエンジンを稼働しないときに暖房によって低下する冷却水温を合算する段階を含む、請求項1に記載のハイブリッド自動車の暖房制御方法。
【請求項3】
前記目標冷却水温を決定する段階は、
時間当たり冷却水温低下率を決定する段階;
前記特定地域の予想走行時間を決定する段階;及び
前記時間当たり冷却水温低下率及び前記予想走行時間を用いて前記低下する冷却水温を決定する段階をさらに含む、請求項2に記載のハイブリッド自動車の暖房制御方法。
【請求項4】
前記時間当たり冷却水温低下率は、外気温、暖房設定温度及び室内温度の少なくとも一つを用いて決定し、
前記予想走行時間は、前記特定地域の長さ、制限車速、交通量及び信号情報の少なくとも一つを用いて決定する、請求項3に記載のハイブリッド自動車の暖房制御方法。
【請求項5】
前記冷却水昇温区間距離を決定する段階は、
昇温温度、前記特定地域の平均車速及び単位温度当たり昇温時間を用いて決定する、請求項1に記載のハイブリッド自動車の暖房制御方法。
【請求項6】
前記昇温温度は前記目標冷却水温と現在冷却水温の差分に対応する、請求項5に記載のハイブリッド自動車の暖房制御方法。
【請求項7】
前記昇温制御開始時点を決定する段階は、
前記特定地域までの残存距離が前記冷却水昇温区間距離以下となる時点を基準に前記昇温制御開始時点を決定する段階を含む、請求項1に記載のハイブリッド自動車の暖房制御方法。
【請求項8】
前記特定地域に進入すれば、EV(Electric Vehicle)モードに転換する段階をさらに含む、請求項1に記載のハイブリッド自動車の暖房制御方法。
【請求項9】
前記特定地域は、
前記排気ガス排出低減を強制又は勧奨する地域を含む、請求項1に記載のハイブリッド自動車の暖房制御方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のハイブリッド自動車の暖房制御方法を実行するためのプログラムが記録されたコンピュータ可読の記録媒体。
【請求項11】
ハイブリッド自動車であって、
走行経路上に排気ガス排出に係わる少なくとも一つの特定地域が存在する場合、前記少なくとも一つの特定地域を含む前記走行経路についての情報を獲得する第1制御器;及び
少なくとも前記第1制御器から伝達された前記情報を用いて、前記特定地域に進入するときに到達しなければならない目標冷却水温及び前記目標冷却水温に到達するための冷却水昇温区間距離を決定し、前記冷却水昇温区間距離に基づいて昇温制御開始時点を決定すれば、前記昇温制御開始時点から前記特定地域に進入するまでエンジンを起動するように制御する第2制御器を含む、ハイブリッド自動車。
【請求項12】
前記第2制御器は、
エンジンの稼働時の基準冷却水温に、前記特定地域を通過するうちにエンジンが稼働しないときに暖房によって低下する冷却水温を合算して前記目標冷却水温を決定する、請求項11に記載のハイブリッド自動車。
【請求項13】
前記第2制御器は、
時間当たり冷却水温低下率及び前記特定地域の予想走行時間を用いて前記低下する冷却水温を決定する、請求項12に記載のハイブリッド自動車。
【請求項14】
前記時間当たり冷却水温低下率は、外気温、暖房設定温度及び室内温度の少なくとも一つを用いて決定し、
前記予想走行時間は、前記特定地域の長さ、制限車速、交通量及び信号情報の少なくとも一つを用いて決定する、請求項13に記載のハイブリッド自動車。
【請求項15】
前記第2制御器は、
昇温温度、前記特定地域の平均車速及び単位温度当たり昇温時間を用いて前記冷却水昇温区間距離を決定する、請求項11に記載のハイブリッド自動車。
【請求項16】
前記昇温温度は前記目標冷却水温と現在冷却水温の差分に対応する、請求項15に記載のハイブリッド自動車。
【請求項17】
前記第2制御器は、
前記特定地域までの残存距離が前記冷却水昇温区間距離以下となる時点を基準に前記昇温制御開始時点を決定する、請求項11に記載のハイブリッド自動車。
【請求項18】
前記第2制御器は、
前記特定地域に進入すれば、EV(Electric Vehicle)モードに転換するように制御する、請求項11に記載のハイブリッド自動車。
【請求項19】
前記特定地域は、
前記排気ガス排出低減を強制又は勧奨する地域を含む、請求項11に記載のハイブリッド自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド自動車及びそのための暖房制御方法に関するもので、より詳しくは目的地までの経路情報を用いて特定地域の通過時にエンジンの起動なしに暖房を行うことができるハイブリッド自動車及びその暖房制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)とは一般的に二つの動力源を一緒に使用する車を言い、二つの動力源は主にエンジンと電気モーターである。このようなハイブリッド自動車は、内燃機関のみを備えた車両に比べ、燃費及び動力性能に優れるだけでなく排気ガスの低減にも有利なので、最近に多く開発されている。
【0003】
このようなハイブリッド自動車はどの伝動機構(Power Train)を駆動するかによって二つの走行モードで動作することができる。その一つは電気モーターのみで走行する電気車(EV)モードであり、他の一つは電気モーターとエンジンを一緒に駆動して動力を得るハイブリッド自動車(HEV)モードである。ハイブリッド自動車は走行中の条件によって両モードの間で転換する。
【0004】
近年、快適な環境に対する要求と規制が高くなるにつれて、法規、環境、安全、歩行者密度などの理由で排出ガスの低減を要求する地域が明示的/暗示的に設定されている趨勢である。このような地域で車両を運行するためには、エンジンの稼働を伴わないEVモード走行が好ましいと言える。
【0005】
ところが、このようなエンジンの稼働が不都合な環境では車両の室内暖房が問題となる。すなわち、ハイブリッド自動車で室内暖房が必要な場合、一般的にエンジンの冷却水温を用いるが、エンジンの冷却水温を用いるためには、エンジンがある程度駆動しなければならない。したがって、エンジンの稼働が不都合な環境ではエンジンの冷却水温を用いにくくなる。もちろん、電子式ヒーター(例えば、PTCヒーター)を用いる方法もあるが、このようなヒーターを用いれば、バッテリーの電力が大きく消耗される。よって、エンジンの稼働が不都合な環境でEVモード走行と電子式ヒーター稼働が同時に行われるならばもっと大きなバッテリー電力の消耗を引き起こすことになる。よって、EVモード走行の距離は急激に短くなり、エンジンの稼働が不都合な環境を外れる前にまたエンジンを稼働させなければならない状況が発生する問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はより効率的に暖房制御を行う方法及びそれを行うハイブリッド車両を提供することを目的とする。
【0007】
特に、本発明は環境に優しい車両の運行において、特定地域でエンジンの稼働を最小化しながらも効率的に暖房を行うことができる方法及びそれを行う車両を提供することを他の目的とする。
【0008】
本発明で達成しようとする技術的課題は以上で言及した技術的課題に制限されず、言及しなかった他の技術的課題は下記の記載から本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に明らかに理解可能であろう。
【課題を解決するため手段】
【0009】
前記のような技術的課題を解決するために、本発明の一実施例によるハイブリッド自動車の暖房制御方法は、走行経路上に排気ガス排出に係わる特定地域が存在する場合、前記特定地域に進入するときに到達しなければならない目標冷却水温を決定する段階;前記目標冷却水温に到達するための冷却水昇温区間距離を決定する段階;前記決定された冷却水昇温区間距離を用いて昇温制御開始時点を決定する段階;及び前記昇温制御開始時点から前記特定地域に進入するまでエンジンを起動する段階を含むことができる。
【0010】
また、本発明の一実施例によるハイブリッド自動車は、走行経路上に排気ガス排出に係わる少なくとも一つの特定地域が存在する場合、前記少なくとも一つの特定地域を含む前記走行経路についての情報を獲得する第1制御器;及び少なくとも前記第1制御器から伝達された前記情報を用いて、前記特定地域に進入するときに到達しなければならない目標冷却水温及び前記目標冷却水温に到達するための冷却水昇温区間距離を決定し、前記冷却水昇温区間距離に基づいて昇温制御開始時点を決定すれば、前記昇温制御開始時点から前記特定地域に進入するまでエンジンを起動するように制御する第2制御器を含むことができる。
【発明の効果】
【0011】
前記のように構成される本発明の少なくとも一実施例に係わるハイブリッド自動車はより効率的に暖房制御を行うことができる。
【0012】
特に、運行経路に特定地域が含まれた場合、特定地域への進入前に前もって特定地域での暖房に必要な冷却水温が確保されるので、エンジンの起動なしにも暖房問題を解消することができる。
【0013】
本発明で得られる効果は以上で言及した効果に制限されず、言及しなかった他の効果は下記の記載から本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に明らかに理解可能であろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例が適用可能な特定地域の概念を説明するための図である。
【
図2】本発明の実施例が適用可能なハイブリッド自動車の伝動機構構造の一例を示す図である。
【
図3】本発明の実施例が適用可能なハイブリッド自動車の制御系統の一例を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施例によるエンジンの起動要請のための制御ロジック構造の一例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施例による冷却水温上昇制御時点を決定する方法をそれぞれ説明するための図である。
【
図6】本発明の一実施例による暖房制御過程の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、添付図面に基づき、本発明の実施例について、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳細に説明する。しかし、本発明はいろいろの相異なる形態に具現されることができ、ここで説明する実施例に限定されない。そして、図面で、本発明を明確に説明するために、説明に関係ない部分は省略し、明細書全般にわたって類似の部分に対しては類似の図面符号を付けた。
【0016】
明細書全般にわたり、ある部分が他の構成要素を“含む”というとき、これは、特に反対する記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。また、明細書全般にわたって同じ参照番号で指示した部分は同じ構成要素を意味する。
【0017】
本発明の実施例による暖房制御方法を説明するに先立ち、
図1に基づいてエンジンの稼働を抑制しなければならない地域の概念を説明する。
【0018】
図1は本発明の実施例が適用可能な特定地域の概念を説明するための図である。
【0019】
図1を参照すると、本発明の実施例では、出発地10と目的地20の間に排気ガス低減又は排出禁止を要求する特定地域30が存在する場合を仮定する。このような特定地域30は前もって設定されている地域であってもよく、現在/最近の状況によって可変的に設定される地域であってもよい。ここで、前もって設定される地域は、法規又は政府の政策などによって設定された地域(例えば、ロンドン又はソウルなどの排出ガス管理地域)であってもよく、地域特性によって排出ガスの低減が必要な地域(例えば、子供保護区域、室内駐車場、住居地域など)などがこれに相当することができる。また、可変的に設定される地域とは、テレマティックスなどの無線情報を介して現在の設定可否を確認することができる地域、車両に備えられた画像(Vision)情報獲得装置(ADASシステムなど)によって判断された歩行者密集地域、室内環境、認識された標識板指示地域などがこれに相当することができる。具体的に、大気環境情報の参照によって特定地域の大気状況が悪くなった場合、スマートフォンの位置情報を活用したビッグデータに基づいて歩行者が密集した地域と判断された場合、テレマティックスサービスなどによって収集された車両平均速度及び通行量に基づいて排出ガスが多量発生すると推定される場合などに該当地域が特定地域30に設定されることができる。
【0020】
特定地域30は任意の行政区域単位で設定されることもでき、境界点となる複数の座標を連結する区域に設定されることもでき、特定施設自体/一部又は特定施設/座標から一定半径内の区域に設定されることもできる。
【0021】
もちろん、上述した特定地域の設定例は例示的なもので、本発明の実施例はこのような特定地域の設定基準、設定範囲、設定期間などによって限定されない。また、特定地域30は出発地10と目的地20の間に位置するものを想定するが、必ずしも目的地20がAVN(Audio/Video/Navigation)システムのナビゲーション機能上で明示的に使用者によって設定されることを要求するものではない。例えば、目的地20は運転者の運行パターン又は前もって設定された運行条件(時間、地域など)によって車両で任意に設定したものであってもよい。ただ、このような特定地域30の経路内の存在有無及び規模はモード分配のために少なくとも該当地域に進入する前に車両で獲得されることが好ましい。
【0022】
以下の記載では、便宜上排気ガス低減/排出禁止を要求する特定地域を“グリーンゾーン(Green Zone)”と言う。
【0023】
次に、
図2に基づいて本発明の実施例が適用可能なハイブリッド自動車構造を説明する。
【0024】
図2は本発明の実施例が適用可能なハイブリッド自動車の伝動機構構造の一例を示す。
【0025】
図2を参照すると、内燃機関エンジン(ICE)110と変速機150の間に電気モーター(又は駆動用モーター)140とエンジンクラッチ(EC:EngineClutch)130を装着した並列型(Parallel Type)ハイブリッドシステムを採用したハイブリッド自動車の伝動機構が図示されている。
【0026】
このような車両では、一般的に、始動後に運転者がアクセルペダルを踏む場合、エンジンクラッチ130がオープンした状態で先にバッテリーの電力を用いてモーター140が駆動され、モーターの動力が変速機150及び最終駆動装置(FD:FinalDrive)160を介して伝達されることによって車輪が動くことなる(すなわち、EVモード)。車両が徐々に加速しながら段々大きな駆動力が必要になれば、補助モーター(又は、始動発電モーター)120が動作してエンジン110を駆動することができる。
【0027】
これにより、エンジン110とモーター140の回転速度が同一になって初めてエンジンクラッチ130が噛み合ってエンジン110とモーター140が一緒に、あるいはエンジン110が車両を駆動することになる(すなわち、EVモードからHEVモードに遷移)。車両が減速するなど、既設定のエンジンオフ条件が満たされれば、エンジンクラッチ130がオープンしてエンジン110は止まる(すなわち、HEVモードからEVモードに遷移)。また、ハイブリッド車両では、制動時にホイールの駆動力を電気エネルギーに変換してバッテリーを充電することができ、これを制動エネルギー回生又は回生制動と言う。
【0028】
始動発電モーター120は、エンジンの始動時にはスタートモーターの役割をし、始動後又は始動オフ時のエンジンの回転エネルギー回収時には発電機の役割をするから“ハイブリッドスタートジェネレーター(HSG:Hybrid Start Generator)”ということがあり、場合によって“補助モーター”と言うこともある。
【0029】
上述した伝動機構が適用される車両において制御器間の相互関係が
図3に図示されている。
【0030】
図3は本発明の実施例が適用可能なハイブリッド自動車の制御系統の一例を示すブロック図である。
【0031】
図3を参照すると、本発明の実施例が適用可能なハイブリッド自動車において、内燃機関110はエンジン制御器210が制御し、始動発電モーター120及び電気モーター140はモーター制御器(MCU:Motor Control Unit)220がそのトルクを制御し、エンジンクラッチ130はクラッチ制御器230がそれぞれ制御することができる。ここで、エンジン制御器210はエンジン制御システム(EMS:Engine Management System)とも言う。また、変速機150は変速機制御器250が制御する。場合によって、始動発電モーター120の制御器と電気モーター140のそれぞれのための制御器を別に備えることもできる。
【0032】
それぞれの制御器は、その上位制御器として、モード転換過程の全般を制御するハイブリッド制御器(HCU:Hybrid Controller Unit)240と連結され、ハイブリッド制御器240の制御によって走行モードの変更、ギア変速時のエンジンクラッチ制御に必要な情報、及び/又はエンジン停止制御に必要な情報をハイブリッド制御器240に提供するとか制御信号による動作を行うことができる。
【0033】
より具体的に、ハイブリッド制御器240は車両の運行状態によってモード転換可否を決定する。一例として、ハイブリッド制御器は、エンジンクラッチ130の解除(Open)時点を判断し、解除時に油圧(湿式エンジンクラッチの場合)制御又はトルク容量制御(乾式エンジンクラッチの場合)を行う。また、ハイブリッド制御器240は、エンジンクラッチの状態(Lock-up、Slip、Openなど)を判断し、エンジン110の燃料噴射中断時点を制御することができる。また、ハイブリッド制御器は、エンジン停止制御のために、始動発電モーター120のトルクを制御するためのトルク指令をモーター制御器220に伝達してエンジン回転エネルギー回収を制御することができる。また、ハイブリッド制御器240は、後述する本発明の実施例による適応型モード転換制御時にモード転換条件の判断及び転換のための下位制御器の制御が可能である。
【0034】
もちろん、上述した制御器間の連結関係及び各制御器の機能/区分は例示的なもので、その名称にも制限されないことは当業者に自明である。例えば、ハイブリッド制御器240はそれを除いた他の制御器のいずれか一つにおいて該当機能が取り替えられて提供されるように具現することもでき、他の制御器の二つ以上において該当機能が分散されて提供されることもできる。また、
図2及び
図3ではTMED((Transmission Mounted Electric Drive)方式の並列型ハイブリッド車両を基準に説明したが、これは例示的なもので、本発明の実施例はハイブリッド車両の形式に限定されない。すなわち、本発明の実施例は、エンジンの稼働によって発生する熱を活用して暖房を行う限り、どの方式のハイブリッド車両にも適用可能である。
【0035】
以下では、上述した車両構造に基づき、本発明の一実施例によるより効率的な暖房制御方法を説明する。
【0036】
本発明の一実施例では、走行経路情報を用いて、経路上にグリーンゾーンが存在する場合、グリーンゾーン内でエンジンの稼働なしに暖房を行うために、グリーンゾーンに進入する前に前もってグリーンゾーン区間での暖房に必要な熱を確保しておくことを提案する。
【0037】
このために、本実施例の一態様によると、目標暖房性能を先に決定し、目標暖房性能に基づいて冷却水温上昇制御(すなわち、昇温制御開始)時点を決定することができる。ここで、目標暖房性能はグリーンゾーン区間で暖房に必要な総エネルギーを意味し、グリーンゾーンへの進入直前に到達しなければならない目標冷却水温と表現することもある。また、冷却水温上昇制御時点は、現在グリーンゾーンへの進入まで残った距離が目標冷却水温に到達するのに必要な走行距離(以下、便宜上“冷却水昇温区間距離”と言う)に相応する時点を意味する。
【0038】
また、本実施例の一態様によると、走行経路情報はナビゲーション情報であってもよい。ここで、ナビゲーション情報はグリーンゾーン有無、道路の種類、傾斜度、平均車速、停滞度(実時間交通情報)の少なくとも一つを含むことができ、一般的にナビゲーションシステム、すなわちAVN(Audio/Video/Navigation)システムによって獲得することができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、ナビゲーション情報はテレマティックスモデムを介してテレマティックスセンターから獲得するとか、無線通信モジュールを介したデータセンター/サーバー/クラウド接続によって獲得することもでき、車速情報などは車両内の多様なセンサーを介して獲得することもできる。
【0039】
以下、
図4及び
図5に基づいて目標暖房性能の決定と昇温制御時点を決定する形態を具体的に説明する。
【0040】
図4は本発明の一実施例によるエンジンの起動要請のための制御ロジック構造の一例を、
図5は本発明の一実施例による冷却水温上昇制御時点を決定する方法をそれぞれ説明するための図である。
【0041】
図4を参照すると、本実施例による制御ロジック400は、目標暖房性能決定部410と冷却水温上昇制御時点決定部420を含むことができる。
【0042】
まず、目標暖房性能決定部410は、グリーンゾーン区間についての情報、エンジンの稼働時(on)の基準冷却水温及び時間当たり冷却水温低下率の少なくとも一つの情報を用いて目標冷却水温を決定することができる。ここで、グリーンゾーン区間についての情報は、グリーンゾーン区間の長さ、制限車速、交通量、信号情報の少なくとも一つを含むことができ、これらはナビゲーション情報から獲得することができる。また、エンジンの稼働時の基準冷却水温は暖房性能のために維持しなければならない最小冷却水温を意味し、この値は既設定の値であってもよく、季節又は外気温によって可変的であってもよい。また、時間当たり冷却水温低下率はエンジンオフ時の冷却水温が時間によって下がる程度を示し、外気温を主要因子として、暖房設定状態(例えば、設定温度及び室内温度)などを考慮して決定することができる。一例として、外気温が低くて暖房目標温度と室内温度の差が大きいほど冷却水温は早く下り、反対の場合、冷却水温は徐々に下がることになる。
【0043】
上述した情報に基づいて目標冷却水温を決定する具体的な方法は次のようである。
【0044】
目標冷却水温(T_Target)は、時間当たり冷却水温低下率(△T)、グリーンゾーン走行時間(t)及びエンジンOn基準冷却水温(T_On)から下記の式1によって決定される。
【0045】
【0046】
すなわち、目標冷却水温はエンジンon基準冷却水温にグリーンゾーン区間の間にエンジンの稼働なしに暖房によって損失される水温を加えた値となる。T_Onが前もって決定された場合、結局、目標冷却水温は実質的に時間当たり冷却水温低下率(△T)とグリーンゾーン走行時間(t)によって決定される。冷却低下率は上述したようであり、グリーンゾーン走行時間はグリーンゾーンの長さと走行車速によって決定することができる。ここで、グリーンゾーンの長さはグリーンゾーンの設定状態に従属する値であり、走行車速はグリーンゾーン内の制限車速を基準に交通量、信号情報などによって決定することができる。
【0047】
目標暖房性能決定部410で上述したように決定された目標冷却水温は冷却水温上昇制御時点決定部420に伝達される。冷却水温上昇制御時点決定部420は、昇温制御時点を決定するにあたり、グリーンゾーンへの進入前に目標冷却水温を確保するとともに不必要なエンジンの起動を防止しなければならない。よって、冷却水温を目標冷却水温まで到達させるのに必要な距離である冷却水昇温区間距離を正確に推正する必要がある。
【0048】
冷却水昇温区間距離は下記の式2のように求めることができる。
【0049】
【0050】
式2によれば、冷却水昇温区間距離(D_Up)は、昇温温度(T_Up=目標冷却水温-現在冷却水温)、グリーンゾーンまでの平均車速(V_Mean)及び単位昇温温度当たり必要時間(K)の積で表現することができる。
【0051】
したがって、昇温温度が高ければ長い冷却水昇温区間距離が必要であり、低ければ短い冷却水昇温区間距離が必要である。また、グリーンゾーンまでの平均車速(V_Mean)はグリーンゾーンまで制限車速を基準に交通量、信号情報などを考慮して決定することができる。また、単位昇温温度当たり必要時間(K)は昇温制御のためのエンジンの稼働時の単位時間当たり冷却水温上昇率の逆数で、基本的にエンジンと冷却系統の特性によって決定することができ、これには外気温が影響を与える因子として考慮することができる。
【0052】
このように冷却水昇温区間距離が決定されれば、冷却水温上昇制御時点決定部420は、不必要なエンジンの起動を防止するために 、
図5に示したように、グリーンゾーンへの進入まで残った距離が冷却水昇温区間距離と同一であるとかそれより小さくなる時点に昇温制御を始めるように決定することができる。
【0053】
本実施例の一態様によると、制御ロジック400の具現において、目標暖房性能決定部410と冷却水温上昇制御時点決定部420は互いに同一の制御器で具現することもでき、互いに異なる制御器で具現することもできる。一例として、目標暖房性能決定部410と冷却水温上昇制御時点決定部420の機能はハイブリッド制御器で行うように具現することができる。このような場合、ハイブリッド制御器は、グリーンゾーン区間情報はAVNシステムから獲得し、エンジンon基準冷却水温はエンジン制御器から獲得するとか内部メモリに前もって保存しておくことができる。また、外気温情報は外気温センサーから獲得することができ、暖房設定は空調制御器(FATCなど)から獲得することができる。また、現在冷却水温情報はエンジン制御器から獲得することができ、エンジンの起動要請はエンジン制御器に指令を伝達する方式で行うことができる。本実施例の他の態様によると、前述した制御ロジックの機能はエンジン制御器が行うこともでき、このロジックの実行のために別に制御器を備えることができるのは言うまでもない。
【0054】
今まで説明した本実施例による制御ロジックをフローチャートで再び整理すれば
図6のようである。
【0055】
図6は本発明の一実施例によるハイブリッド車両の暖房制御過程の一例を示すフローチャートである。
【0056】
図6を参照すると、まず走行経路上のグリーンゾーンを把握することができる(S610)。ここで、把握するとは、経路上に少なくとも一つのグリーンゾーンが存在するかを把握することを言い、存在する場合は各グリーンゾーンについての区間情報を獲得することを意味する。
【0057】
走行経路上のグリーンゾーンが把握されれば、目標冷却水温を決定することができる(S620)。目標冷却水温を求める方法は
図4を参照して数学式1で記述したようであるので、明細書の簡潔性のために重複記載は省略する。
【0058】
目標冷却水温が決定されれば、現在冷却水温との比較を行うことができる(S630)。比較結果、現在冷却水温が目標冷却水温より低い場合(すなわち、冷却水の昇温が必要な場合)冷却水昇温区間距離を決定することができる(S640)。冷却水昇温区間距離を決定する方法も
図4を参照して数学式2で記述したようであるので、重複記載を省略する。
【0059】
冷却水昇温区間距離が決定されれば、これをグリーンゾーンまでの残存距離と比較し(S650)、グリーンゾーンまでの残存距離が冷却水昇温区間距離以下となれば、昇温制御(すなわち、エンジンの稼働)を始めることができる(S660)。
【0060】
その後、グリーンゾーンへの進入時まで昇温制御を行い、グリーンゾーンに進入したことが判断されれば(S670)、エンジンをオフさせ、EVモード走行を行うことができる(S680)。
【0061】
仮に、経路上に複数のグリーンゾーンが存在する場合、上述した制御過程は一つのグリーンゾーン単位で繰り返し実行することができるのは言うまでもない。
【0062】
前述した本発明は、プログラムが記録された媒体にコンピュータ可読のコードで具現することが可能である。コンピュータ可読の媒体は、コンピュータシステムによって読められるデータが記憶される全ての種類の記録装置を含む。コンピュータ可読の媒体の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Disk)、SDD(Silicon Disk Drive)、ROM、RAM、CD-ROM、磁気テープ、フロッピーディスク、光データ記憶装置などがある。
【0063】
前記詳細な説明は全ての面で制限的に解釈されてはいけなく、例示的なものと見なされなければならない。本発明の範囲は添付の請求範囲の合理的解釈によって決定されなければならなく、本発明の等価的範囲内での全ての変更は本発明の範疇内に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
110 内燃機関エンジン
120 補助モーター
130 エンジンクラッチ
140 電気モーター
150 変速機
160 最終駆動装置
210 エンジン制御器
220 モーター制御器
230 クラッチ制御器
240 ハイブリッド制御器
250 変速機制御器