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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】内壁清掃装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 1/04 20060101AFI20220826BHJP
   B08B 1/02 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
B08B1/04
B08B1/02
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018155385
(22)【出願日】2018-08-22
(65)【公開番号】P2020028849
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】北村 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】矢部 憲正
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 敏治
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-067479(JP,A)
【文献】国際公開第2015/132816(WO,A1)
【文献】特開平06-135082(JP,A)
【文献】特開2005-334836(JP,A)
【文献】特開2012-029975(JP,A)
【文献】特開2016-140938(JP,A)
【文献】特開昭59-177015(JP,A)
【文献】特開平07-194505(JP,A)
【文献】登録実用新案第3197467(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 1/00-15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁に沿って配置されたピンチェーンに装着されて、前記ピンチェーンとともに第一方向に移動しながら前記内壁を清掃する内壁清掃装置であって、
前記ピンチェーンのうち、前記第一方向に延びるローラーチェーンから、前記第一方向と交差して前記内壁に向かう第二方向に突出する延長ピンに取り付けられる本体部と、
前記本体部に搭載される駆動部と、
前記駆動部に駆動され、前記内壁に付着した付着物を取り除く清掃部と、を備える、内壁清掃装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内壁清掃装置であって、
前記本体部は、前記ピンチェーンが有する複数の前記延長ピンのうち、互いに前記第一方向に離れて配置される第一延長ピンおよび第二延長ピンに取り付けられる、内壁清掃装置。
【請求項3】
請求項2に記載の内壁清掃装置であって、
前記本体部は、前記第一方向において、前記第一延長ピンに固定され、前記第二延長ピンに対して移動可能である、内壁清掃装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の内壁清掃装置であって、
前記本体部は、前記延長ピンに対して着脱可能に取り付けられる、内壁清掃装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の内壁清掃装置であって、
前記駆動部は、前記清掃部を前記第二方向に沿う軸回りに回転させるモーターを有する、内壁清掃装置。
【請求項6】
請求項に記載の内壁清掃装置であって、
前記駆動部は、前記モーターに電力を供給するバッテリーを有する、内壁清掃装置。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の内壁清掃装置であって、
前記本体部は、前記延長ピンに対して前記第二方向に移動可能に取り付けられ、
前記本体部を前記第二方向の内壁側に付勢する第一付勢部を備える、内壁清掃装置。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の内壁清掃装置であって、
前記清掃部は、表面に砥粒が分散された研磨部材を有する、内壁清掃装置。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の内壁清掃装置であって、
前記本体部に支持されて、前記清掃部を覆う清掃カバー部を備える、内壁清掃装置。
【請求項10】
請求項に記載の内壁清掃装置であって、
前記清掃カバー部は、前記内壁上を転がる複数の車輪を有する、内壁清掃装置。
【請求項11】
請求項10に記載の内壁清掃装置であって、
前記第二方向から見て、複数の前記車輪は、前記清掃部を中心にして、前記第一方向の両側、および、前記第一方向と直交する第三方向の両側にそれぞれ配置される、内壁清掃装置。
【請求項12】
請求項11に記載の内壁清掃装置であって、
前記第一方向に互いに離れて配置される複数の前記車輪同士の距離は、前記第三方向に互いに離れて配置される複数の前記車輪同士の距離よりも大きい、内壁清掃装置。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか一項に記載の内壁清掃装置であって、
前記清掃カバー部は、前記本体部に対して前記第二方向に移動可能に支持され、
前記本体部は、前記清掃カバー部を前記第二方向の内壁側に付勢する第二付勢部を有する、内壁清掃装置。
【請求項14】
請求項13に記載の内壁清掃装置であって、
前記清掃カバー部は、前記本体部に対して揺動可能に支持される、内壁清掃装置。
【請求項15】
請求項9~14のいずれか一項に記載の内壁清掃装置であって、
前記清掃カバー部は、前記内壁と隙間をあけて対向する磁石部を有する、内壁清掃装置。
【請求項16】
請求項15に記載の内壁清掃装置であって、
前記清掃カバー部は、前記内壁上を転がる複数の車輪を有し、
前記第二方向から見て、前記磁石部は、前記清掃部と前記車輪との間に配置される、内壁清掃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内壁清掃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1の筒状体の乾燥装置が知られる。筒状体は、外面塗装が施された2ピース缶用の缶胴である。乾燥装置は、有底円筒状の缶胴をピンチェーンによって搬送しつつ、熱風を装置本体の内部に導入し、缶胴に塗布された塗料を乾燥させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-159939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乾燥装置の内壁には、ヒューム(付着物)が付着し堆積する。ヒュームとは、缶胴の塗料から揮発した合成樹脂等が固形化したものである。缶胴はピンチェーンに搬送されて内壁の近くを通るため、ヒュームが缶胴に付着するおそれがある。このため、作業者が、定期的に手作業により内壁のヒュームを拭き取って清掃しているが、作業負荷が大きく、効率が悪い。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、内壁に付着した付着物を効率よく簡単に清掃できる内壁清掃装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様は、内壁に沿って配置されたピンチェーンに装着されて、前記ピンチェーンとともに第一方向に移動しながら前記内壁を清掃する内壁清掃装置であって、前記ピンチェーンのうち、前記第一方向に延びるローラーチェーンから、前記第一方向と交差して前記内壁に向かう第二方向に突出する延長ピンに取り付けられる本体部と、前記本体部に搭載される駆動部と、前記駆動部に駆動され、前記内壁に付着した付着物を取り除く清掃部と、を備える。
【0007】
本発明の一つの態様では、内壁清掃装置がピンチェーンに取り付けられて、ピンチェーンの移動にともなって内壁に沿って移動する。このとき、清掃部が内壁に接触して内壁の付着物を清掃することができる。このため、従来のように、作業者が手作業により内壁の清掃を行う必要はなく、効率よく簡単に内壁の清掃が行える。
また、例えば、単純に清掃部を内壁と接触させる構成に比べて、駆動部に駆動される清掃部を内壁と接触させるため、内壁の清掃効率がより高められる。
【0008】
上記内壁清掃装置において、前記本体部は、前記ピンチェーンが有する複数の前記延長ピンのうち、互いに前記第一方向に離れて配置される第一延長ピンおよび第二延長ピンに取り付けられることが好ましい。
【0009】
この場合、本体部が、第一方向に離れて配置される第一延長ピンと第二延長ピンに取り付けられるので、内壁清掃装置が延長ピンを中心に回転することが抑えられる。このため、清掃効率が安定して高められる。
【0010】
上記内壁清掃装置において、前記本体部は、前記第一方向において、前記第一延長ピンに固定され、前記第二延長ピンに対して移動可能であることが好ましい。
【0011】
ピンチェーンは、乾燥装置の内部でスプロケットに架け渡されて、曲がりながら移動するときがある。すなわち、ピンチェーンのうち、直線状に延びる部分と、曲線状に延びる部分とでは、第一延長ピンと第二延長ピンとの間の距離(最短距離)が変化する。そこで、上記構成を採用することにより、第一延長ピンと第二延長ピンとの間の距離が変化した場合でも、内壁清掃装置が、ピンチェーンの移動に円滑に追従できる。
【0012】
上記内壁清掃装置において、前記本体部は、前記延長ピンに対して着脱可能に取り付けられることが好ましい。
【0013】
この場合、内壁の清掃が必要なときにのみ、内壁清掃装置をピンチェーンに取り付けることができる。
【0016】
上記内壁清掃装置において、前記駆動部は、前記清掃部を前記第二方向に沿う軸回りに回転させるモーターを有することが好ましい。
【0017】
この場合、清掃部が第二方向に沿う軸回りに回転しながら内壁に接触するので、清掃部と内壁との接触面積を広く確保できる。したがって、清掃効率が向上する。
【0018】
上記内壁清掃装置において、前記駆動部は、前記モーターに電力を供給するバッテリーを有することが好ましい。
【0019】
この場合、モーターを駆動するために、装置の外部から電力を供給する必要がない。このため、内壁清掃装置が取り扱いやすくなり、清掃作業をより容易化できる。
【0020】
上記内壁清掃装置において、前記本体部は、前記延長ピンに対して前記第二方向に移動可能に取り付けられ、前記本体部を前記第二方向の内壁側に付勢する第一付勢部を備えることが好ましい。
【0021】
この場合、第一付勢部は、本体部とともに清掃部を内壁に向けて付勢する。例えばピンチェーンの移動中に、内壁と延長ピンの距離が変動したとしても、本体部と清掃部が内壁に向けて付勢されるので、清掃部が内壁に押し付けられて接触し続ける。このため、内壁の清掃作業が安定する。
【0022】
上記内壁清掃装置において、前記清掃部は、表面に砥粒が分散された研磨部材を有することが好ましい。
【0023】
この場合、研磨部材として、例えば表面に紙やすり部を有する回転研磨ブラシ等を使用することにより、効率よく簡単に内壁の清掃が行える。
【0024】
上記内壁清掃装置において、前記本体部に支持されて、前記清掃部を覆う清掃カバー部を備えることが好ましい。
【0025】
この場合、清掃カバー部により、清掃部が内壁から取り除いた付着物がピンチェーンに付着することを抑制できる。
【0026】
上記内壁清掃装置において、前記清掃カバー部は、前記内壁上を転がる複数の車輪を有することが好ましい。
【0027】
この場合、清掃カバー部が内壁に沿って円滑に移動する。つまり、車輪が内壁上を転がることにより、内壁清掃装置が内壁上をスムーズに移動できる。これにより、内壁清掃装置がピンチェーンの移動に安定して追従しやすくなる。
【0028】
上記内壁清掃装置において、前記第二方向から見て、複数の前記車輪は、前記清掃部を中心にして、前記第一方向の両側、および、前記第一方向と直交する第三方向の両側にそれぞれ配置されることが好ましい。
【0029】
この場合、車輪が内壁上を安定して走行するので、内壁清掃装置の姿勢がより崩れにくくなり、ピンチェーンに追従する内壁清掃装置の移動が安定する。
【0030】
上記内壁清掃装置において、前記第一方向に互いに離れて配置される複数の前記車輪同士の距離は、前記第三方向に互いに離れて配置される複数の前記車輪同士の距離よりも大きいことが好ましい。
【0031】
この場合、内壁上を転がる車輪の走行安定性が増し、清掃部による内壁の清掃がスムーズに安定して行える。
【0032】
上記内壁清掃装置において、前記清掃カバー部は、前記本体部に対して前記第二方向に移動可能に支持され、前記本体部は、前記清掃カバー部を前記第二方向の内壁側に付勢する第二付勢部を有することが好ましい。
【0033】
この場合、第二付勢部は、車輪のサスペンションとしての機能を有する。第二付勢部により、清掃カバー部を介して車輪が内壁に押し当てられ、車輪が内壁上を安定して転がる。また、本体部と清掃カバー部とが、第二方向に相対移動可能であるので、清掃部が摩耗したときの摩耗量に応じて、清掃部が例えば上述の第一付勢部によって内壁に押し付けられた際には、本体部と清掃カバー部とが第二方向に接近移動させられることにより、車輪を内壁に安定して接触させつつ、清掃部を内壁に密着させることができる。
【0034】
上記内壁清掃装置において、前記清掃カバー部は、前記本体部に対して揺動可能に支持されることが好ましい。
【0035】
この場合、車輪が内壁の起伏や突起などを乗り越えるときに、清掃カバー部が本体部に対して揺動して、清掃カバー部が内壁に沿って円滑に移動できる。これにより、内壁清掃装置の清掃時の姿勢が安定して、内壁を効率よく清掃できる。
【0036】
上記内壁清掃装置において、前記清掃カバー部は、前記内壁と隙間をあけて対向する磁石部を有することが好ましい。
【0037】
この場合、磁石部の吸引力(磁力)により清掃カバー部を内壁に安定して押し付けることができる。また、磁石部が内壁に接触しないので、内壁清掃装置の移動が安定する。
【0038】
上記内壁清掃装置において、前記清掃カバー部は、前記内壁上を転がる複数の車輪を有し、前記第二方向から見て、前記磁石部は、前記清掃部と前記車輪との間に配置されることが好ましい。
【0039】
この場合、磁石部が車輪よりも外側に出っ張ることが抑えられる。このため、磁石部が内壁の突起などに衝突することが抑制されて、内壁清掃装置の移動が安定する。
【発明の効果】
【0040】
本発明の一つの態様の内壁清掃装置によれば、内壁に付着した付着物を効率よく簡単に清掃できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本実施形態の内壁清掃装置を示す側面図である。
図2】本実施形態の内壁清掃装置の部分を示す上面図である。
図3】本実施形態の内壁清掃装置を示す正面図である。
図4】本実施形態の内壁清掃装置を示す背面図である。
図5】清掃カバー部の支持カバーを示す(a)上面図、(b)正面図、(c)側面図である。
図6】付勢部のスプリングホルダーを示す(a)平面図、(b)側面図である。
図7】付勢部のスプリングストッパーを示す(a)側面図、(b)平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の一実施形態の内壁清掃装置10について、図面を参照して説明する。
本実施形態の内壁清掃装置10は、図示しない乾燥装置の内壁Wを清掃する装置である。乾燥装置は、例えば2ピース缶用の缶胴に塗装された塗料を乾燥させるオーブンである。この乾燥装置は、ピンオーブンと呼ばれる。
乾燥装置は、乾燥装置の内壁Wに沿って移動するピンチェーン100を有する。つまりピンチェーン100は、内壁Wに沿って配置される。
【0043】
図1に示すように、ピンチェーン100は、ローラーチェーン101と、ローラーチェーン101の側面から突出する複数の延長ピン102と、を有する。
ローラーチェーン101は、乾燥装置の内壁Wに対してほぼ平行に延びる。ローラーチェーン101は、乾燥装置の内部において、複数のスプロケットの間に架け渡される。ローラーチェーン101は、乾燥装置の内部において、直線状に延びる部分と、曲線状に延びる部分と、を有する。
【0044】
延長ピン102は、ローラーチェーン101の側面プレート101sから突出して、内壁Wに向かって直線状に延びる。延長ピン102は、ローラーチェーン101が延びる方向に互いに間隔をあけて、ローラーチェーン101に複数設けられる。複数の延長ピン102は、ローラーチェーン101に一定間隔に配置される。延長ピン102の先端には、円錐形状のキャップ103が取り付けられる。
延長ピン102に対して、有底筒状の缶胴が引っ掛けられて保持される。そして、ローラーチェーン101の移動にともなって、缶胴が乾燥装置の内部を搬送される。
【0045】
本実施形態において、ローラーチェーン101が延びる方向を上下方向(第一方向、X方向)と呼ぶ。ローラーチェーン101は、スプロケットが回転駆動すると、図1において上側に向けて移動する。つまり、本実施形態において、上側(+X)はローラーチェーン101の移動方向であり、下側(-X)はローラーチェーン101の移動方向とは反対方向である。
【0046】
延長ピン102は、ローラーチェーン101から、上下方向と交差して内壁Wに向かう方向に突出する。つまり延長ピン102は、上下方向に交差する方向に延びる。本実施形態では、延長ピン102が延びる方向が、ローラーチェーン101が延びる方向と直交する。延長ピン102が延びる方向を前後方向(第二方向、Y方向)と呼ぶ。前後方向のうち、延長ピン102の先端側を前側(+Y)、延長ピン102の根元側を後側(-Y)と呼ぶ。つまり、前側は、ローラーチェーン101から乾燥装置の内壁Wへ向かう方向であり、後側は、内壁Wからローラーチェーン101へ向かう方向である。
【0047】
上下方向と前後方向に直交する方向を、幅方向(第三方向、Z方向)と呼ぶ。幅方向のうち、ローラーチェーン101に近づく方向を幅方向の内側と呼び、ローラーチェーン101から離れる方向を幅方向の外側と呼ぶ。
【0048】
上述した上下方向(上側、下側)、前後方向(前側、後側)および幅方向(内側、外側)は、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等に限定されない。
【0049】
乾燥装置の内壁Wの清掃は、定期的に、例えば月または年に数回程度の頻度で行われる。内壁清掃装置10は、ピンチェーン100の延長ピン102に装着されて、ピンチェーン100とともに上下方向に移動しながら、乾燥装置の内壁Wを清掃する。
【0050】
内壁清掃装置10は、ローラーチェーン101が延びる方向に隣り合って配置された2つの延長ピン102(延長ピン102A、延長ピン102B)に対して着脱可能に取り付けられる。内壁清掃装置10は、ローラーチェーン101の移動にともなって乾燥装置の内部を搬送される。そして、内壁清掃装置10は、乾燥装置の内部を搬送されながら、乾燥装置の内壁Wを清掃する。
【0051】
図1図4に示すように、内壁清掃装置10は、本体部12と、駆動部13と、清掃部14と、清掃カバー部15と、付勢部16と、を備える。
本体部12は、駆動部13を搭載し、清掃部14を支持する。駆動部13は、清掃部14を駆動する。清掃部14は、内壁Wに付着したヒューム等の付着物を取り除く。清掃部14は、本体部12に支持された清掃カバー部15に覆われる。付勢部16は、本体部12を前後方向の内壁W側(つまり前側)に向けて付勢する。
説明の都合上、駆動部13と清掃部14を先に説明する。
【0052】
駆動部13は、清掃部14を回転駆動する。駆動部13は、モーター31と、バッテリー32と、電源スイッチ33と、を有する。
モーター31は、清掃部14を回転させる駆動源である。モーター31には、例えば永久磁石直流モーター等が用いられる。モーター31の出力軸の中心軸を、図中に符号Lとして示す。モーター31の出力軸は、前後方向に沿って延びる。モーター31は、清掃部14を、モーター31の出力軸の軸回りに回転させる。つまり駆動部13は、清掃部14を、前後方向に沿う軸回りに回転させる。
【0053】
バッテリー32は、モーター31に電力(直流電流)を供給する蓄電池である。バッテリー32には、例えばリチウムイオン二次電池等が用いられる。
電源スイッチ33は、モーター31とバッテリー32に電気的に接続される。電源スイッチ33は、使用者に操作されることにより、バッテリー32からモーター31への電力供給のONとOFFとを切り替える。
【0054】
清掃部14は、内壁Wを清掃する研磨ブラシ41を有し、本体部12の前側に配置される。
研磨ブラシ(研磨部材)41は、円盤形状の部材であり、表面に砥粒が分散された紙やすり部を有する。研磨ブラシ41は、ブラシ取り付け冶具43を介してモーター31の出力軸に連結される。つまり、研磨ブラシ41の回転軸は、モーター31の出力軸と同軸に配置される。研磨ブラシ41の回転軸の中心軸を、図中に符号Nとして示す。これにより、研磨ブラシ41は、モーター31に回転駆動される。
本実施形態においては、前後方向から見て、モーター31の出力軸の中心軸Lおよび研磨ブラシ41の回転軸の中心軸Nが、ローラーチェーン101と重なる位置に配置される。
【0055】
本体部12は、ピンチェーン100のうち、延長ピン102に取り付けられる。本体部12は、ピンチェーン100が有する複数の延長ピン102のうち、互いに上下方向に離れて配置される延長ピン(第一延長ピン)102Aおよび延長ピン(第二延長ピン)102Bに取り付けられる。本実施形態の例では、本体部12が、延長ピン102に対して、着脱可能に取り付けられる。
【0056】
本体部12は、駆動部13を保持する。本体部12は、駆動部13のモーター31およびバッテリー32を本体部12の内部に収容する。
本体部12は、プレート21A,21Bと、ベースブロック24と、モーター収容部25と、プランジャーホルダー26と、スペーサー27と、プランジャー28と、を有する。
【0057】
プレート21A,21Bは、延長ピン102Aと延長ピン102Bとの間に架け渡される一対の板状部材である。プレート21A,21Bは、前後方向に垂直な方向に広がる平板形状である。プレート21A,21Bは、互いにほぼ同一形状である。本実施形態の例では、プレート21A,21Bが、長方形板状である。プレート21A,21Bは、上下方向の長さが幅方向の長さよりも大きい。
一対のプレート21A,21Bのうち、一方のプレート21Aが前側に配置され、他方のプレート21Bが後側に配置される。すなわち、一対のプレート21A,21Bは、前後方向に互いに離れて配置される。プレート21Aとプレート21Bとは、前後方向に対向し、かつ互いに平行に配置される。
【0058】
図4に示すように、前後方向から見て、プレート21A,21Bの上面には、それぞれ、半円弧形状の溝21cが設けられる。溝21cは、前後方向に沿って延びる。溝21cには、延長ピン102Aが差し込まれる。溝21cの半径は、延長ピン102Aの半径よりも僅かに大きい。
【0059】
プレート21A,21Bの上面には、開閉レバー22がそれぞれ配置される。開閉レバー22は、プレート21A,21Bに対して、ヒンジ部29を中心に回動可能に連結される。
図4に示すように、前後方向から見て、開閉レバー22の下面には、半円弧形状の溝22cが設けられる。溝22cは、前後方向に沿って延びる。溝22cには、延長ピン102Aが差し込まれる。溝22cの半径は、延長ピン102Aの半径よりも僅かに大きい。
【0060】
溝21cと溝22cとの間に延長ピン102Aを通し、開閉レバー22を閉じることにより、プレート21A,21Bは、延長ピン102Aに対して取り付けられる。
開閉レバー22は、つまみネジ23を用いてプレート21A,21Bに固定される。また、つまみネジ23を外して開閉レバー22を開くことにより、プレート21A,21Bを延長ピン102Aから取り外すことができる。
【0061】
延長ピン102Aに装着されたプレート21A,21Bは、上下方向および幅方向において、延長ピン102Aに固定される。つまり本体部12は、上下方向および幅方向において、延長ピン102Aに固定される。また、延長ピン102Aに装着されたプレート21A,21Bは、延長ピン102Aに対して、前後方向に移動可能である。
【0062】
図4に示すように、プレート21A,21Bの下面には、それぞれ、下面から上側に延びるスリット形状の溝21dが設けられる。溝21dは、前後方向に沿って延びる。溝21dには、延長ピン102Bが差し込まれる。溝21dの幅は、延長ピン102Aの直径よりも僅かに大きい。
【0063】
プレート21A,21Bは、延長ピン102Bに対して、上下方向に移動可能に取り付けられる。つまり本体部12は、上下方向において、延長ピン102Bに対して移動可能である。また、プレート21A,21Bは、延長ピン102Bに対して、前後方向に移動可能である。つまり本体部12は、延長ピン102(102A、102B)に対して、前後方向に移動可能に取り付けられる。
【0064】
プレート21A,21Bのうち、上下方向の両端部同士の間に位置する中間部分には、プレート21A,21Bを前後方向に貫通する貫通孔等が設けられる。プレート21Aの貫通孔には、モーター収容部25が挿通される。プレート21Bの貫通孔には、電源スイッチ33が外部に露出するように配置される。
【0065】
図1に示すように、ベースブロック24は、モーター31およびバッテリー32を収容する直方体形状の部材である。ベースブロック24は、プレート21A,21Bの間に配置されて、プレート21A,21Bと固定される。
ベースブロック24には、モーター31とバッテリー32を収容する、2つの貫通孔が設けられる。ベースブロック24の2つの貫通孔は、前後方向に沿って延びる。
【0066】
モーター収容部25は、モーター31を収容する円筒形状の部材である。モーター収容部25は、モーター31を収容した状態で、ベースブロック24の貫通孔に挿通されて、ベースブロック24に固定される。これにより、モーター31は、モーター31の出力軸を前側に向けて延ばした姿勢で、ベースブロック24に対して固定される。
【0067】
プランジャーホルダー26は、円筒形状の部材であり、プレート21Aの前側に配置される。プランジャーホルダー26は、モーター31の出力軸を軸回りに囲うように配置される。プランジャーホルダー26は、プランジャーホルダー26の前端部に複数のプランジャー28を保持する。
【0068】
スペーサー27は、プレート21Aとプランジャーホルダー26との間に配置される円筒形状の部材である。スペーサー27は、例えば、プレート21Aとプランジャーホルダー26との間の前後方向の距離を調整する目的で設けられる。
【0069】
プランジャー(第二付勢部)28は、清掃カバー部15を前後方向の内壁W側(つまり前側)に付勢する。本実施形態の例では、プランジャー28が、プランジャーホルダー26の前端部に、モーター31の出力軸の軸回りに互いに間隔をあけて4つ設けられる。図3に示すように、4つのプランジャー28は、プランジャーホルダー26の前端面において、モーター31の出力軸を中心とする同一円周上に均等配置(90°間隔)される。
図2に示すように、プランジャー28は、円柱形状のロッド28aと、ロッド28aの外周に配置されたコイルスプリング28bと、を有する。
【0070】
ロッド28aは、後端部がプランジャーホルダー26に保持されて、前側に向けて延びる。ロッド28aは、プランジャーホルダー26に対して前後方向に移動可能に保持される。ロッド28aの前端部は、清掃カバー部15に固定される。
コイルスプリング28bは、後端部がプランジャーホルダー26に支持されて、ロッド28aの外周に配置される。コイルスプリング28bの前端部は、清掃カバー部15に対して、後側から接触する。コイルスプリング28bは、ロッド28aに沿って伸縮可能である。コイルスプリング28bは、その付勢力(弾性力)を前後方向に向けて作用させる。
【0071】
プランジャーホルダー26に対して清掃カバー部15が後側に移動すると、プランジャーホルダー26に対してロッド28aが後側へ移動して、コイルスプリング28bは前後方向に縮む。プランジャーホルダー26に対して清掃カバー部15が前側に移動すると、プランジャーホルダー26に対してロッド28aが前側に移動して、コイルスプリング28bは前後方向に伸びる。
【0072】
図2に示すように、清掃カバー部15は、支持カバー51と、車輪52と、磁石部53と、を有する。清掃カバー部15は、車輪52を複数有する。清掃カバー部15は、磁石部53を複数有する。
【0073】
本実施形態の例では、支持カバー51が、例えば板金製である。支持カバー51は、上下方向に垂直な断面がコ字状の板状部材である。図5(a)~(c)に示すように、支持カバー51の幅方向の両端部は、支持カバー51の幅方向の両端部間に位置する中間部分に対して、前側に突出する。支持カバー51は、折曲部51bと、平板部51aと、を有する。折曲部51bは、支持カバー51の幅方向の両端部に配置されて、幅方向に垂直な方向に広がる。折曲部51bは、支持カバー51に一対設けられる。平板部51aは、支持カバー51の幅方向の両端部間に位置する中間部分に配置されて、前後方向に垂直な方向に広がる。平板部51aの上端部には、平板部51aを前後方向に貫通して平板部51aの上端面から下側に窪む凹部51cが設けられる。凹部51c内には、延長ピン102Aの前端部(キャップ103)が挿通可能である。
【0074】
支持カバー51は、本体部12と研磨ブラシ41との間に配置される。支持カバー51は、研磨ブラシ41を後側および幅方向の外側から覆う。また、支持カバー51は、複数の車輪52および複数の磁石部53を支持する。
【0075】
支持カバー51は、プランジャーホルダー26の前側に配置されて、4つのプランジャー28に連結される。具体的には、ロッド28aの前端部が、支持カバー51に固定される。
4つのプランジャー28が個別に伸縮することにより、支持カバー51は、プランジャーホルダー26に対して前後方向に移動したり、揺動したりすることができる。つまり、清掃カバー部15は、本体部12に対して前後方向に移動可能に支持される。また、清掃カバー部15は、本体部12に対して揺動可能に支持される。
プランジャー28のコイルスプリング28bの付勢力(弾性力)は、プランジャーホルダー26から支持カバー51に向けて作用する。これにより、支持カバー51は、前側に向けて押される。
【0076】
車輪52は、内壁W上を転がる。車輪52は、内壁W上を上下方向に転動自在である。車輪52は、例えばシリコーンゴム製のローラー等である。車輪52は、支持カバー51の折曲部51bの幅方向の内側に回転可能に配置される。車輪52の車軸は、幅方向に延びる。車輪52は、折曲部51bに回転自在に支持される。車輪52のうち車軸よりも前側に位置する部分は、折曲部51bよりも前側に突出する。本実施形態の例では、車輪52が、一対の折曲部51bにそれぞれ2つ(つまり計4つ)設けられる。折曲部51bにおいて2つの車輪52同士は、互いに上下方向に離れて配置される。車輪52は、折曲部51bの上下方向の両端部に一対配置される。
【0077】
図3に示すように、前後方向から見て、複数の車輪52は、清掃部14を中心にして、上下方向の両側、および、幅方向の両側にそれぞれ配置される。本実施形態の例では、4つの車輪52が、モーター31の出力軸を中心にして、上下方向と幅方向において対称位置に配置される。つまり、4つの車輪52は、モーター31の出力軸を中心にして同一半径の周上に配置される。上下方向に互いに離れて配置される複数の車輪52同士の距離は、幅方向に互いに離れて配置される複数の車輪52同士の距離よりも大きい。
4つの車輪52は、ピンチェーン100とともに内壁清掃装置10が乾燥装置の内部を搬送されるときに、乾燥装置の内壁Wに触れて回転する。
【0078】
磁石部53は、支持カバー51の平板部51aに固定される。磁石部53は、平板部51aから前側に向けて延びる。磁石部53は、内壁Wと隙間をあけて対向する。磁石部53は、少なくとも前端部に永久磁石を有する。磁石部53のうち前端部以外の部位は、永久磁石でなくてもよい。本実施形態の例では、支持カバー51に4つの磁石部53が設けられる。4つの磁石部53は、4つの車輪52の幅方向の内側にそれぞれ配置される。車輪52は、磁石部53に対して前側に突出する部分を有する。図3に示すように、前後方向から見て、磁石部53は、清掃部14と車輪52との間に配置される。
【0079】
磁石部53は、内壁清掃装置10が乾燥装置の内部を搬送されるときに、乾燥装置の内壁Wに接近して配置される。そして、磁石部53は、内壁Wとの間に吸引力を発生させることにより、支持カバー51を内壁Wに向けて押圧する。これにより、4つの車輪52を内壁Wに密着させることができる。
【0080】
図1に示すように、付勢部(第一付勢部)16は、延長ピン102Aおよび延長ピン102Bにそれぞれ取り付けられ、延長ピン102A,102Bに対して、本体部12を前側に向けて付勢する。
付勢部16は、コイルスプリング61と、スプリングホルダー62と、スプリングストッパー63と、を有する。
【0081】
コイルスプリング61は、延長ピン102Aと延長ピン102Bの外周にそれぞれ配置される。また、コイルスプリング61は、プレート21A,21Bの間に配置される。コイルスプリング61が前後方向に最も縮まされたときの、本体部12のプレート21Bの前後方向の位置を、図1に破線として示す。図1に示すように、本実施形態の例では、プレート21Bが、スプリングストッパー63とローラーチェーン101との間の前後方向のほぼ全域にわたって、ストローク可能である。
【0082】
スプリングホルダー62は、プレート21A,21Bの間に配置されて、プレート21Aに接触する。スプリングホルダー62は、延長ピン102Aと延長ピン102Bにそれぞれ取り付けられる。図6(a)および(b)に示すように、スプリングホルダー62は、円板状である。スプリングホルダー62は、大径部と、小径部と、を有する。大径部は、プレート21Aに対して後側から接触する。小径部は、大径部よりも小径であり、大径部の後側に位置する。小径部には、コイルスプリング61の前端部が嵌合する。コイルスプリング61の前端は、大径部に対して後側から接触する。
【0083】
スプリングホルダー62には、外周面から中心に向かう長孔形状の溝62aが設けられる。この溝62aには、延長ピン102Aや延長ピン102Bが差し込まれる。スプリングホルダー62は、溝62aに延長ピン102Aまたは延長ピン102Bを差し込んだ状態で、延長ピン102A,102Bに対して前後方向に移動可能である。
【0084】
スプリングストッパー63は、プレート21A,21Bの間に配置されて、延長ピン102A,102Bに固定される。スプリングストッパー63は、延長ピン102Aと延長ピン102Bにそれぞれ取り付けられる。図7(a)および(b)に示すように、スプリングストッパー63は、全体としてほぼ円板状である。スプリングストッパー63は、大径部と、小径部と、を有する。小径部は、大径部よりも小径であり、大径部の前側に位置する。小径部には、コイルスプリング61の後端部が嵌合する。コイルスプリング61の後端は、大径部に対して前側から接触する。
【0085】
具体的に、スプリングストッパー63は、円板を半円形に二分割した一対の部材63A,63Bを有する。スプリングストッパー63は、一対の部材63A,63Bの間に位置して前後方向に延びる貫通孔63cを有する。スプリングストッパー63は、この貫通孔63cに延長ピン102Aや延長ピン102Bを挿通して、一対の部材63A,63Bで延長ピン102Aまたは延長ピン102Bを挟持する。これにより、スプリングストッパー63は、延長ピン102Aと延長ピン102Bにそれぞれ固定される。
スプリングストッパー63の前後方向の取り付け位置は、図示しないねじ部材のねじを緩めたり締めたりすることにより、任意に調整できる。
【0086】
図1に示すように、スプリングホルダー62とスプリングストッパー63は、コイルスプリング61の両端をそれぞれ支持する。スプリングホルダー62がコイルスプリング61の前側、スプリングストッパー63がコイルスプリング61の後側に配置される。
スプリングストッパー63が延長ピン102Aと延長ピン102Bに固定されるので、コイルスプリング61の付勢力(弾性力)は、スプリングホルダー62を介して前側に作用する。これにより、付勢部16は、本体部12と清掃部14を前側に向けて付勢する。
【0087】
次に、内壁清掃装置10を用いて乾燥装置の内壁Wを清掃する手順について説明する。
内壁Wの清掃に先だって、ピンチェーン100の駆動を止めた状態で、延長ピン102A,102Bに内壁清掃装置10を装着する。
【0088】
まず、延長ピン102A,102Bに付勢部16を取り付ける。延長ピン102A,102Bにコイルスプリング61を挿入する。延長ピン102A,102Bにスプリングホルダー62とスプリングストッパー63を仮止めする。
【0089】
次に、ピンチェーン100に本体部12を近づけて、プレート21A,21Bの溝21dに延長ピン102Bを差し込む。このとき、プレート21A,21Bの間に付勢部16を配置する。
本体部12の開閉レバー22を開いて、プレート21A,21Bの溝21cに延長ピン102Aを差し込む。そして、開閉レバー22を閉じて、つまみネジ23で固定する。
【0090】
次に、スプリングストッパー63を延長ピン102A,102Bに固定する。具体的には、スプリングストッパー63の一対の部材63A,63B同士をねじ部材で締結して、延長ピン102A,102Bを挟持する。
この際、スプリングストッパー63の固定位置を調整して、付勢部16の付勢力により研磨ブラシ41を内壁Wに密着させる。
【0091】
次に、駆動部13の電源スイッチ33を切り替えて、モーター31を回転させる。つまり、電源スイッチ33をONにして、研磨ブラシ41を回転駆動する。そして、ピンチェーン100を内壁Wに沿って移動させる。
これにより、内壁清掃装置10は、ピンチェーン100の移動に追従して、乾燥装置の内壁Wを清掃しながら移動する。
【0092】
内壁清掃装置10がピンチェーン100の移動に追従するとき、研磨ブラシ41が内壁Wに付着したヒューム等の付着物を除去する。このとき、内壁Wから除去された付着物は、支持カバー51よりも後側や幅方向の外側に飛び散ることが抑えられて、下側に落ちる。
このように、内壁清掃装置10は、ピンチェーン100の移動に追従しつつ、乾燥装置の内壁Wに付着したヒューム等の付着物を取り除いて、内壁Wを円滑に清掃する。
【0093】
内壁Wの清掃が終了したら、ピンチェーン100を止めて、ピンチェーン100から内壁清掃装置10を取り外す。内壁清掃装置10を取り外すときは、上述した装着の手順とは逆の手順で行う。
このようにして、内壁清掃装置10は、ピンチェーン100に対して着脱される。
【0094】
以上説明した本実施形態の内壁清掃装置10によれば、内壁Wに付着した付着物を効率よく簡単に清掃できる。すなわち、作業者が手作業により内壁Wの清掃を行う必要はなく、効率よく簡単に内壁Wの清掃が行える。
【0095】
本実施形態では、本体部12が、上下方向に離れて配置される延長ピン102Aと延長ピン102Bに取り付けられるので、内壁清掃装置10が延長ピン102を中心に回転することが抑えられる。このため、清掃効率が安定して高められる。
【0096】
本実施形態では、本体部12が、上下方向において、延長ピン102Aに固定され、延長ピン102Bに対して移動可能であるので、下記の作用効果が得られる。
ピンチェーン100は、乾燥装置の内部でスプロケットに架け渡されて、曲がりながら移動するときがある。すなわち、ピンチェーン100のうち、直線状に延びる部分と、曲線状に延びる部分とでは、延長ピン102Aと延長ピン102Bとの間の距離(最短距離)が変化する。そこで、本実施形態の上記構成を採用することにより、延長ピン102Aと延長ピン102Bとの間の距離が変化した場合でも、内壁清掃装置10が、ピンチェーン100の移動に円滑に追従できる。
【0097】
本実施形態では、本体部12が、延長ピン102に対して着脱可能に取り付けられる。このため、内壁Wの清掃が必要なときにのみ、内壁清掃装置10をピンチェーン100に取り付けることができる。
【0098】
本実施形態では、本体部12が、清掃部14を駆動する駆動部13を搭載する。
この場合、例えば、単純に清掃部14を内壁Wと接触させる構成に比べて、駆動部13に駆動される清掃部14を内壁Wと接触させるため、内壁Wの清掃効率がより高められる。具体的には、駆動部13が、研磨ブラシ41を回転駆動するので、ピンチェーン100の所定の移動量あたりの、研磨ブラシ41と内壁Wとの接触量を増大させることができ、清掃効率が高まる。研磨ブラシ41は、表面に紙やすり部を有するので、効率よく簡単に内壁Wの清掃が行える。
【0099】
本実施形態では、駆動部13がモーター31により、清掃部14の研磨ブラシ41を前後方向に沿う軸回りに回転させる。例えば本実施形態と異なり、研磨ブラシ41が上下方向に沿う軸回りや幅方向に沿う軸回りに回転させられる場合と比べて、本実施形態によれば、研磨ブラシ41と内壁Wとの接触面積を広く確保できる。したがって、清掃効率が向上する。
【0100】
本実施形態では、駆動部13が、モーター31に電力を供給するバッテリー32を有するので、モーター31を駆動するにあたり、装置の外部から電力を供給する必要がない。このため、内壁清掃装置10が取り扱いやすくなり、清掃作業をより容易化できる。
【0101】
本実施形態では、例えばピンチェーン100の移動中に、内壁Wと延長ピン102との距離が変動したとしても、付勢部16が本体部12を介して、清掃部14の研磨ブラシ41を内壁Wに向けて前側に付勢する。このため、清掃部14が内壁Wに押し付けられて接触し続ける。
また、付勢部16は、研磨ブラシ41が摩耗したときに、研磨ブラシ41の摩耗量に応じて本体部12を内壁Wに向けて移動させるので、研磨ブラシ41が摩耗した場合でも、研磨ブラシ41は内壁Wに押し付けられて接触し続ける。
このため、内壁Wの清掃作業が安定する。
【0102】
本実施形態では、清掃部14が、表面に砥粒が分散された研磨部材を有し、具体的にはこの研磨部材として、表面に紙やすり部を有する研磨ブラシ41を用いた。したがって、効率よく簡単に内壁Wの清掃が行える。
【0103】
本実施形態では、清掃カバー部15が清掃部14を覆う。このため、清掃カバー部15により、清掃部14が内壁Wから取り除いた付着物がピンチェーン100に付着することを抑制できる。具体的には、支持カバー51が、少なくとも後側から研磨ブラシ41を覆うので、研磨ブラシ41が内壁Wから取り除いた付着物がピンチェーン100に付着することを抑制できる。
【0104】
本実施形態では、清掃カバー部15が、内壁W上を転がる複数の車輪52を有するので、清掃カバー部15が内壁Wに沿って円滑に移動する。つまり、車輪52が内壁W上を転がることにより、内壁清掃装置10が内壁W上をスムーズに移動できる。これにより、内壁清掃装置10がピンチェーン100の移動に安定して追従しやすくなる。
具体的に、ピンチェーン100は、剛性が低く撓みやすい。このため、研磨ブラシ41が内壁Wの突起などを乗り越えるときには、内壁清掃装置10の姿勢が崩れやすくなり、内壁清掃装置10の移動が不安定になるおそれがある。そこで本実施形態のように、清掃カバー部15に車輪52を設けることにより、研磨ブラシ41が突起などを乗り越えても内壁清掃装置10の姿勢が崩れにくくなり、内壁清掃装置10の移動が安定する。したがって、内壁Wの清掃を円滑に行える。
【0105】
本実施形態では、前後方向から見て、複数の車輪52が、研磨ブラシ41の回転軸を中心にして、上下方向の両側、および、幅方向の両側にそれぞれ配置される。これにより、車輪52が内壁W上を安定して走行するので、内壁清掃装置10の姿勢がより崩れにくくなり、ピンチェーン100に追従する内壁清掃装置10の移動が安定する。
【0106】
本実施形態では、上下方向に互いに離れて配置される複数の車輪52同士の距離が、幅方向に互いに離れて配置される複数の車輪52同士の距離よりも大きい。このため、内壁W上を転がる車輪52の走行安定性が増し、清掃部14による内壁Wの清掃がスムーズに安定して行える。
【0107】
本実施形態では、本体部12に対して清掃カバー部15が前後方向に移動可能であり、プランジャー28が、清掃カバー部15を前後方向の内壁W側に付勢する。
この場合、プランジャー28は、車輪52のサスペンションとしての機能を有する。プランジャー28により、清掃カバー部15を介して車輪52が内壁Wに押し当てられ、車輪52が内壁W上を安定して転がる。また、本体部12と清掃カバー部15とが、前後方向に相対移動可能であるので、清掃部14の研磨ブラシ41が摩耗したときの摩耗量に応じて、清掃部14が上述のように付勢部16によって内壁Wに押し付けられた際には、本体部12と清掃カバー部15とが前後方向に接近移動させられることにより、車輪52を内壁Wに安定して接触させつつ、清掃部14を内壁Wに密着させることができる。
【0108】
本実施形態では、清掃カバー部15が、本体部12に対して揺動可能に支持されるので、車輪52が内壁Wの起伏や突起などを乗り越えるときに、清掃カバー部15が本体部12に対して揺動して、清掃カバー部15が内壁Wに沿って円滑に移動できる。これにより、内壁清掃装置10の清掃時の姿勢が安定して、内壁Wを効率よく清掃できる。
【0109】
本実施形態では、清掃カバー部15が、内壁Wと隙間をあけて対向する磁石部53を有するので、磁石部53の吸引力(磁力)により清掃カバー部15を内壁Wに安定して押し付けることができる。また、磁石部53が内壁Wに接触しないので、内壁清掃装置10の移動が安定する。
【0110】
本実施形態では、前後方向から見て、磁石部53が、清掃部14と車輪52との間に配置されるので、磁石部53が車輪52よりも幅方向の外側に出っ張ることが抑えられる。このため、磁石部53が内壁Wの突起などに衝突することが抑制されて、内壁清掃装置10の移動が安定する。
【0111】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0112】
前述の実施形態では、清掃部14が研磨ブラシ41を有する例を挙げて説明したが、これに限らない。清掃部14は、内壁Wに付着した付着物を除去可能な構成を有していればよく、例えば、内壁Wに粉末ドライアイスを噴射する構成や、内壁Wをブラスト処理する構成を有していてもよい。
【0113】
前述の実施形態では、支持カバー51が、清掃部14を後側および幅方向の外側から覆う例を挙げたが、これに限らない。例えば、支持カバー51は、清掃部14の外周全体を覆ってもよい。
【0114】
前述の実施形態では、清掃カバー部15が、4つの車輪52を有する例を挙げたが、これに限らない。例えば、清掃カバー部15が、幅方向に延びる2つの回転ローラーを有し、2つの回転ローラーが、清掃部14の上側と下側に、上下方向に互いに離れて配置されてもよい。
【0115】
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例およびなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の内壁清掃装置によれば、内壁に付着した付着物を効率よく簡単に清掃できる。したがって、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0117】
10…内壁清掃装置、12…本体部、13…駆動部、14…清掃部、15…清掃カバー部、16…付勢部(第一付勢部)、28…プランジャー(第二付勢部)、31…モーター、32…バッテリー、41…研磨ブラシ(研磨部材)、52…車輪、53…磁石部、100…ピンチェーン、101…ローラーチェーン、102…延長ピン、102A…延長ピン(第一延長ピン)、102B…延長ピン(第二延長ピン)、W…内壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7