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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】電磁ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 17/04 20060101AFI20220826BHJP
【FI】
F04B17/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018181513
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020051330
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000241267
【氏名又は名称】豊興工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 宣尚
(72)【発明者】
【氏名】下田 敏裕
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-157027(JP,A)
【文献】特開平10-175532(JP,A)
【文献】特開平11-117858(JP,A)
【文献】特開2012-202340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 17/00-19/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンロッドを往復作動して流体を吸入吐出する電磁ポンプにおいて、ポンプ部を取付部へ着脱自在に固定し、ポンプ部は、収容孔を有するヨークと、略円筒形状の固定鉄心と、通電により固定鉄心に吸引される可動鉄心と、可動鉄心と一体的に作動するピストンロッドと、ピストンロッドを摺動する貫通孔を貫通形成してピストンロッドを軸支する軸受部材とを有し、ヨークは固定鉄心と軸方向に離間して対向配置し、可動鉄心を固定鉄心に吸引する磁気回路を形成し、可動鉄心はヨークの収容孔に摺動自在に収容し、軸受部材は固定鉄心へ着脱自在に固定し、ピストンロッドを異なる径のピストンロッドと交換可能に設けると共に、軸受部材を交換するピストンロッドの径に対応した貫通孔を有する軸受部材と交換可能に設けたことを特徴とする電磁ポンプ。
【請求項2】
前記ポンプ部は、前記可動鉄心と前記軸受部材の間に、前記可動鉄心を前記固定鉄心への吸引方向と対向する方向へ付勢するばね部材を配置することを特徴とする請求項1に記載の電磁ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンロッドを往復作動して流体を吸入吐出する電磁ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電磁ポンプは、一部が固定鉄心(固定コア)となるポンプハウジングに貫通孔を形成し、この貫通孔へピストンロッド(ピストン)を摺動自在に挿通し、ピストンロッド(ピストン)を軸支している。ポンプハウジングは、貫通孔にポンプ室(加圧室)を連設している。そして、ピストンロッド(ピストン)の一端部がポンプ室(加圧室)に出没することで、流体を吸入吐出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-70239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、かかる従来の電磁ポンプでは、電磁ポンプの吐出量を変更したい場合には、ピストンロッド(ピストン)を異なる径のピストンロッド(ピストン)に交換する必要がある。ところが、ピストンロッド(ピストン)を軸支する貫通孔がポンプハウジングに形成されているため、交換するピストンロッド(ピストン)の異なる径に対応する貫通孔を形成したポンプハウジングを格別に用意しなければならず、ポンプハウジングは大型で多数の部品も備えて取り換えが難しく、容易に吐出量を変更できないという問題点があった。
【0005】
本発明の課題は、吐出量を容易に変更し得る電磁ポンプを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成すべく、本発明は次の手段をとった。即ち、
ピストンロッドを往復作動して流体を吸入吐出する電磁ポンプにおいて、ポンプ部を取付部へ着脱自在に固定し、ポンプ部は、収容孔を有するヨークと、略円筒形状の固定鉄心と、通電により固定鉄心に吸引される可動鉄心と、可動鉄心と一体的に作動するピストンロッドと、ピストンロッドを摺動する貫通孔を貫通形成してピストンロッドを軸支する軸受部材とを有し、ヨークは固定鉄心と軸方向に離間して対向配置し、可動鉄心を固定鉄心に吸引する磁気回路を形成し、可動鉄心はヨークの収容孔に摺動自在に収容し、軸受部材は固定鉄心へ着脱自在に固定し、ピストンロッドを異なる径のピストンロッドと交換可能に設けると共に、軸受部材を交換するピストンロッドの径に対応した貫通孔を有する軸受部材と交換可能に設けた
【0007】
この場合、前記ポンプ部は、前記可動鉄心と前記軸受部材の間に、前記可動鉄心を前記固定鉄心への吸引方向と対向する方向へ付勢するばね部材を配置してもよい。
【発明の効果】
【0008】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明は、ポンプ部を取付部へ着脱自在に固定し、ポンプ部は、収容孔を有するヨークと、略円筒形状の固定鉄心と、通電により固定鉄心に吸引される可動鉄心と、可動鉄心と一体的に作動するピストンロッドと、ピストンロッドを摺動する貫通孔を貫通形成してピストンロッドを軸支する軸受部材とを有し、ヨークは固定鉄心と軸方向に離間して対向配置し、可動鉄心を固定鉄心に吸引する磁気回路を形成し、可動鉄心はヨークの収容孔に摺動自在に収容し、軸受部材は固定鉄心へ着脱自在に固定し、ピストンロッドを異なる径のピストンロッドと交換可能に設けると共に、軸受部材を交換するピストンロッドの径に対応した貫通孔を有する軸受部材と交換可能に設けた。このため、ポンプ部を取付部から取り外し、軸受部材を固定鉄心から取外して、ピストンロッドを異なる径のピストンロッドに交換する。そして、交換するピストンロッドの径に対応した貫通孔を有する軸受部材を固定鉄心に固定することで、吐出量を変更することができるから、軸受部材は取付部より小型で取り扱い易く、他の部品を変更する必要がなく、吐出量を容易に変更することができる。また、軸受部材を取り外して、ヨークと固定鉄心の内部に配置されたピストンロッド以外の部品も交換することができるため、保守を容易に行うことができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、ポンプ部は、可動鉄心と軸受部材の間に、可動鉄心を固定鉄心への吸引方向と対向する方向へ付勢するばね部材を配置した。このため、ポンプ室に配置したばね部材の伸縮によって、ポンプ室に気泡が生じて吐出量が低減する恐れのある従来の電磁ポンプに比し、ポンプ室内にばね部材の伸縮による気泡が発生しないから、吐出性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態を示した電磁ポンプの概略斜視図である。
図2図1に示した電磁ポンプの縦断面図である。
図3図2の線A-Aに沿った断面図である。
図4】他の実施形態を示した電磁ポンプの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
図1および図2において、1は電磁ポンプ装置で、流体を吸入して吐出する低圧大流量の電磁ポンプ2Aと高圧小流量の電磁ポンプ2Bを略直方体の取付部3上に載置して構成している。両電磁ポンプ2A、2Bは、略円柱形状のポンプ部4A、4Bを取付部3にそれぞれ螺合して着脱自在に固定すると共に、コイル部5A、5Bをポンプ部4A、4Bに外嵌し、それぞれ一個のボルト部材6A、6Bで取付部3に固定している。
【0012】
まず、低圧大流量の電磁ポンプ2Aのコイル部5Aと高圧小流量の電磁ポンプ2Bのコイル部5Bの構成について詳細に説明する。
コイル部5Aとコイル部5Bは同一構成である。7A、7Bは、コイル8A、8Bを巻回する略円筒形状のボビンで、樹脂材から形成し、軸方向中心に挿通孔9A、9Bを貫通形成している。10A、10Bは、略円筒形状のカバー部材で、樹脂材から形成し、ボビン7A、7Bに外嵌している。
【0013】
11A、11Bは、磁性材からなる第1コ字状部材で、ボビン7A、7Bの軸方向下端側に配置している。第1コ字状部材11A、11Bは、略長方形状の板の短辺の両側端を垂直上方向に屈曲形成し、平面部の両端に側板部を有した略コ字形状である。第1コ字状部材11A、11Bの平面部の中心には、ボビン7A、7Bの挿通孔9A、9Bと略同径の貫通孔12A、12Bを貫通形成している。
【0014】
13A、13Bは、磁性材からなる第2コ字状部材で、ボビン7A、7Bの軸方向上方端側に配置している。第2コ字状部材13A、13Bは、第1コ字状部材11A、11Bと同一形状で、略長方形状の板の短辺の両側端を垂直下方向に屈曲形成し、平面部の両端に側板部を有した略コ字形状である。第2コ字状部材13A、13Bの平面部の中心には、ボビン7A、7Bの挿通孔9A、9Bと略同径の貫通孔14A、14Bを貫通形成している。
【0015】
第1コ字状部材11A、11Bと第2コ字状部材13A、13Bは、互いの平面部を対向して配置し、第1コ字状部材11A、11Bの2つの側板部の間に第2コ字状部材13A、13Bの2つの側板部をそれぞれ配置している。このとき、第1コ字状部材11A、11Bの平面部と第2コ字状部材13A、13Bの2つの側板部とを接合すると共に、第2コ字状部材13A、13Bの平面部と第1コ字状部材11A、11Bの2つの側板部を接合している。両コ字状部材11A、11B、13A、13Bの貫通孔12A、12B、14A、14Bとボビン7A、7Bの挿通孔9A、9Bは同一軸心上に配置されている。
【0016】
次に、低圧大流量の電磁ポンプ2Aのポンプ部4Aと高圧小流量の電磁ポンプ2Aのポンプ部4Bの構成について詳細に説明する。
ポンプ部4Aとポンプ部4Bとは、後述する第1ピストンロッド15Aと第2ピストンロッド15B、第1軸受部材16Aと第2軸受部材16B、第1可動鉄心19Aと第2可動鉄心19Aがそれぞれ異なり、その他は同一構成である。
【0017】
17A、17Bは、略円柱形状のヨークで、軸心に収容孔としての異径孔18A、18Bを貫通形成している。異径孔18A、18Bは、軸方向へ小径部、中径部、大径部を連設し、小径部は一側面に開口すると共に、大径部は他側面に開口している。
【0018】
第1可動鉄心19Aは、略円筒形状で、ヨーク17Aの異径孔18Aの大径部に軸方向へ摺動自在に嵌挿している。また、第1可動鉄心19Aは、第1小径孔20Aと第1大径孔21Aを軸方向へ連設している。第1可動鉄心19Aの第1小径孔20Aは一側面に開口すると共に、第1可動鉄心19Aの第1大径孔21Aは他側面に開口している。第2可動鉄心19Bは、略円筒形状で、ヨーク17Bの異径孔18Bの大径部に軸方向へ摺動自在に嵌挿している。また、第2可動鉄心19Bは、第1可動鉄心19Aの第1小径孔20Aより小径の第2小径孔20Bと、第1可動鉄心19Aの第1大径孔21Aと略同径の第2大径孔21Aを軸方向へ連設している。第2可動鉄心19Bの第1小径孔20Bは一側面に開口すると共に、第2可動鉄心19Bの第2大径孔21Bは他側面に開口している。
【0019】
第1ピストンロッド15Aは、低圧大流量の電磁ポンプ2Aのポンプ部5Aに備え、一端を第1可動鉄心19Aの第1小径孔20Aに圧入固定し、第1可動鉄心19Aと一体的に軸方向へ摺動する。第2ピストンロッド15Bは、高圧小流量の電磁ポンプ2Bのポンプ部5Bに備え、第1ピストンロッド15Aより小径で、一端を第2可動鉄心19Bの第2小径孔20Bに圧入固定し、第2可動鉄心19Bと一体的に軸方向へ摺動する。
【0020】
22A、22Bは、略円筒形状の固定鉄心で、各可動鉄心19A、19Bを軸方向下方へ吸引し、軸心に貫通孔23A、23Bを貫通形成している。固定鉄心22A、22Bは、ヨーク17A、17Bと軸方向に離間して対向配置し、軸方向の一端を取付部3に螺合して固定している。
【0021】
24A、24Bは、非磁性材からなる略円筒形状の連結部材で、一端側にヨーク17A、17Bを圧入固定すると共に、他端側に固定鉄心22A、22Bを圧入固定して、ヨーク17A、17Bと固定鉄心22A、22Bとを連結している。
【0022】
第1軸受部材16Aは、低圧大流量の電磁ポンプ2Aのポンプ部4Aに備え、略円柱形状に形成し、第1可動鉄心19Aと対向して配置している。また、第1軸受部材16Aは、固定鉄心22Aの貫通孔23Aへ軸方向の一端側から挿通し、固定鉄心22Aに螺合して着脱自在に固定すると共に、取付部3の上面3Aに窪み形成した収容孔25Aに収容している。さらにまた、第1軸受部材16Aは、第1ピストンロッド15Aを摺動する第1貫通孔26Aを軸心に貫通形成し、第1ピストンロッド15Aを軸支している。
【0023】
第2軸受部材16Bは、高圧小流量の電磁ポンプ2Bのポンプ部4Bに備え、略円柱形状に形成し、第2可動鉄心19Bと対向して配置している。また、第2軸受部材16Bは、固定鉄心22Bの貫通孔23Bへ軸方向の一端側から挿通し、固定鉄心22Bに螺合して着脱自在に固定すると共に、取付部3の上面3Aに窪み形成した収容孔25Bに収容している。さらにまた、第2軸受部材16Bは、第1軸受部材16Aの第1貫通孔26Aより小径で、第2ピストンロッド15Bを摺動する第2貫通孔26Bを軸心に貫通形成し、第2ピストンロッド15Bを軸支している。
【0024】
各軸受部材16A、16Bは、軸方向上方の一端面に凸部27A、27Bを突出形成すると共に、ポンプ部4A、4B内部のドレンを外部へ排出する連通孔28A、28Bを各貫通孔25A、25Bの径方向外方へ、複数形成している。また、各軸受部材16A、16Bは、連通孔28A、28Bを接続する環状溝29A、29Bを各軸受部材16A、16Bの軸方向下方の他端面に窪み形成している。各軸受部材16A、16Bの凸部27A、27Bは、外周面を先端面に向けて漸次縮径するテーパー状に形成している。31A、31B、32A、32Bは、各軸受部材16A、16Bの他端面に配置したOリングで、環状溝29A、29Bの径方向内方と外方にそれぞれ配置し、各軸受部材16A、16Bの他端面と取付部3との間を密封している。
【0025】
33A、33Bは、各軸受部材16A、16Bに外嵌したOリングで、各軸受部材16A、16Bと固定鉄心22A、22Bとの間を密封している。そして、各可動鉄心19A、19Bを固定鉄心22A、22Bに吸引する磁気回路を、第1コ字状部材11A、11B、第2コ字状部材13A、13B、固定鉄心22A、22B、各可動鉄心19A、19Bおよびヨーク17A、17Bで形成している。
【0026】
34A、34Bは、ヨーク17A、17Bの異径孔18A、18Bの中径部に収容した補助ばね部材で、ヨーク17A、17Bの異径孔18A、18Bの中径部に収容したばね受け部材35A、35Bと可動鉄心19A、19Bの一端面との間に介装し、各可動鉄心19A、19Bを軸方向下方に付勢する。36A、36Bは、補助ばね部材34A、34Bのばね力を調整自在にする調整ねじで、ヨーク17A、17Bの異径孔18A、18Bの小径部に螺合して先端をばね受け部材35A、35Bに当接し、外部からの回動操作により軸方向へ進退自在にして補助ばね部材34A、34Bのばね力を調整自在にする。37A、37Bは、調整ねじ36A、36Bのロックナットである。
【0027】
38A、38Bは、各可動鉄心19A、19Bの各大径孔21A、21Bに収容したばね部材で、各可動鉄心19A、19Bの各小径孔20A、20Bと各大径孔21A、21Bとの連接段部と、各軸受部材16A、16Bの一端面との間に介装し、各可動鉄心19A、19Bを固定鉄心22A、22Bへの吸引方向と対向する方向である軸方向上方に付勢する。そして、各可動鉄心19A、19Bは、補助ばね部材34A、34Bの弾性力とばね部材38A、38Bの弾性力とが対向作用し、補助ばね部材34A、34Bとばね部材38A、38Bの弾性力の平衡位置で停止する。
【0028】
次に、取付部3の構成について詳細に説明する。
39Aは、第1ピストンロッド15Aの軸方向下方に区画形成した第1ポンプ室で、取付部3の収容孔25Aに連設している。39Bは、第2ピストンロッド15Bの軸方向下方に区画形成した第2ポンプ室で、取付部3の収容孔25Bに連設している。
【0029】
図3において、40Aは、図示しない低圧側から第1ポンプ室39Aに流体を吸入する第1吸入流路で、取付部3の第1側面3Cに開口し、図3上下方向に穿設している。40Bは、図示しない低圧側から第2ポンプ室39Bに流体を吸入する第2吸入流路で、取付部3の第1側面3Cに開口し、図3上下方向に穿設している。
【0030】
41Aは、第1吸入チェック弁42Aを収容する第1収装孔で、一端を第1吸入流路40Aに接続し、他端を取付部3の第1側面3Cと対向する第2側面3Dに開口している。第1収装孔41Aは、第1ポンプ室39Aの図3右方向に配置すると共に、内周面に第1ポンプ室39Aを略直交して接続している。41Bは、第2吸入チェック弁42Bを収容する第2収装孔で、一端を第2吸入流路40Bに接続し、他端を取付部3の第2側面3Dに開口している。第2収装孔41Bは、第2ポンプ室39Bの図3左方向に配置すると共に、内周面に第2ポンプ室39Bを略直交して接続している。
【0031】
各吸入チェック弁42A、42Bは、吸入弁体43A、43B、吸入栓部材44A、44B、吸入ばね部材45A、45B、吸入弁座46A、46Bから構成し、吸入弁体43A、43Bを吸入ばね部材45A、45Bの弾性力で付勢して吸入弁座46A、46Bに着座している。
【0032】
吸入弁体43A、43Bは、一端に凸部47A、47Bを形成した略キノコ形状で、各吸入流路40A、40Bと各ポンプ室39A、39Bを接続する各収装孔41A、41Bの吸入接続部48A、48Bに配置している。
【0033】
吸入栓部材44A、44Bは、吸入弁体43A、43Bと対向する一端面に吸入弁体43A、43Bの凸部47A、47Bを摺動する凹部49A、49Bを窪み形成すると共に、凹部49A、49B内部の流体を各収装孔41A、41Bへ排出する2個の連通孔50A、50B、51A、51Bを径方向にそれぞれ貫通形成している。また、吸入栓部材44A、44Bは、各収装孔41A、41Bに挿通した状態で、各収装孔41A、41Bとの間を密封し、固定部材52A、52Bを各収装孔41A、41Bに螺合して吸入栓部材44A、44Bを固定している。
【0034】
吸入ばね部材45A、45Bは、吸入弁体43A、43Bと吸入栓部材44A、44Bとの間に介装している。吸入弁座46A、46Bは、吸入接続部48A、48Bの各吸入流路40A、40Bとの接続箇所の開口端に形成している。
【0035】
各吸入チェック弁42A、42Bは、吸入弁体43A、43Bが吸入弁座46A、46Bから離間して各吸入流路40A、40Bから各ポンプ室39A、39Bへの流体の流れを許容し、吸入弁体43A、43Bが吸入弁座46A、46Bに着座して各ポンプ室39A、39Bから各吸入流路49A、49Bへの流体の流れを阻止する。
【0036】
図2において、53Aは、第1吐出チェック弁54Aを収容する第3収装孔で、一端を第1ポンプ室39Aに接続し、他端を取付部3の下面3Eに開口している。53Bは、第2吐出チェック弁54Bを収容する第4収装孔で、一端を第2ポンプ室39Bに接続し、他端を取付部3の下面3Eに開口している。
【0037】
55は、各ポンプ室39A、39Bから図示しない負荷側に流体を吐出する吐出流路で、合流流路55Aと分岐流路55Bとで構成している。合流流路55Aは、図2左右方向に穿設し、一端を第3収装孔53Aの内周面に接続すると共に、他端を第4収装孔53Bの内周面に接続する。分岐流路55Bは、図2上下方向に穿設し、一端を合流流路55Aに略直交して接続すると共に、他端を取付部3の下面3Eに開口している。
【0038】
各吐出チェック弁54A、54Bは、吐出弁体56A、56B、吐出栓部材57A、57B、吐出ばね部材58A、58B、吐出弁座59A、59Bから構成し、吐出弁体56A、56Bを吐出ばね部材58A、58Bの弾性力で付勢して吐出弁座59A、59Bに着座している。
【0039】
吐出弁体56A、56Bは、一端に凸部60A、60Bを形成した略キノコ形状で、各ポンプ室39A、39Bと合流流路55Aとを接続する各収装孔53A、53Bの吐出接続部61A、61Bに配置している。
【0040】
吐出栓部材57A、57Bは、吐出弁体56A、56Bと対向する一端面に吐出弁体56A、56Bの凸部60A、60Bを摺動する凹部62A、62Bを窪み形成すると共に、凹部62A、62B内部の流体を各収装孔53A、53Bへ排出する2個の連通孔63A、63B、64A、64Bを径方向にそれぞれ貫通形成している。また、吸入栓部材57A、57Bは各収装孔53A、53Bに挿通した状態で、各収装孔53A、53Bとの間を密封し、取付部3の下面3Eに弾性材からなる蓋部材65を接合し、各収装孔53A、53Bに吐出栓部材57A、57Bを圧着固定している。
【0041】
吐出ばね部材58A、58Bは、吐出弁体56A、56Bと吐出栓部材57A、57Bとの間に介装している。吐出弁座59A、59Bは、吐出接続部61A、61Bの各ポンプ室39A、39Bとの接続箇所の開口端に形成している。
【0042】
各吐出チェック弁54A、54Bは、吐出弁体56A、56Bが吐出弁座59A、59Bから離間して各ポンプ室39A、39Bから合流流路55Aへの流体の流れを許容し、吐出弁体56A、56Bが吐出弁座59A、59Bに着座して合流流路55Aから各ポンプ室39A、39Bへの流体の流れを阻止する。
【0043】
66Aは、ポンプ部4A内部のドレンを外部に排出する第1連通孔で、第1ポンプ室39Aの図2左方向に配置し、図2上下方向に穿設している。第1連通孔66Aは、一端を第1軸受部材16Aの環状溝29Aに接続し、他端を取付部3の下面3Eに開口している。66Bは、ポンプ部4B内部のドレンを外部に排出する第2連通孔で、第2ポンプ室39Bの図2右方向に配置し、図2上下方向に穿設している。第1連通孔66Bは、一端を第1軸受部材16Bの環状溝29Bに接続し、他端を取付部3の下面3Eに開口している。
【0044】
67Aは、蓋部材65に貫通形成した第1貫通孔で、取付部3の連通孔66Aに接続している。そして、ポンプ部4A内部のドレンは、第1軸受部材16Aの連通孔28Aおよび環状溝29A、取付部3の第1連通孔66A、蓋部材65の第1貫通孔67Aを通って外部へと排出される。67Bは、蓋部材65に貫通形成した第2貫通孔で、取付部3の連通孔66Bに接続している。そして、第2ポンプ部4B内部のドレンは、第2軸受部材16Bの連通孔28Bおよび環状溝29B、取付部3の第2連通孔66B、蓋部材65の第2貫通孔67Bを通って外部へと排出される。67Cは、蓋部材65に貫通形成した第3貫通孔で、取付部3の分岐流路55Bに接続している。
【0045】
次に、かかる構成の作動を説明する。
図2および図3は、コイル8A、8Bの非通電状態を示し、可動鉄心19A、19Bは補助ばね部材34A、34Bとばね部材38A、38Bの弾性力の平衡位置で停止している。各吸入チェック弁42A、42Bおよび各吐出チェック弁54A、54Bは閉じている。
【0046】
この状態で、コイル8A、8Bへ通電すると、各可動鉄心19A、19Bはばね部材38A、38Bの弾性力に抗して軸方向下方へ移動して固定鉄心22A、22Bに吸引される。これにより、各ピストンロッド15A、15Bが各ポンプ室39A、39Bの流体を加圧し、各吐出チェック弁54A、54Bが開き、各ポンプ室39A、39Bから吐出流路55を介して流体を図示しない負荷側へ吐出する。このとき、各吸入チェック弁42A、42Bは、閉じ状態を維持している。
【0047】
この状態で、コイル8A、8Bを非通電にすると、各可動鉄心19A、19Bはばね部材38A、38Bの弾性力で軸方向上方へ復帰作動する。これにより、各ピストンロッド15A、15Bが上方へ摺動し、各ポンプ室39A、39Bは負圧になる。そして、各吸入チェック弁42A、42Bは開き、各吐出チェック弁54A、54Bは閉じて、図示しない低圧側から各吸入流路40A、40Bを介して流体を各ポンプ室39A、39Bに吸入する。そして、再びコイル8A、8Bを通電状態にし、各可動鉄心19A、19Bはばね部材38A、38Bの弾性力に抗して軸方向下方へ移動して固定鉄心22A、22Bに吸引され、以後同様に通電、非通電を高速で繰り返し、吸入吐出を繰り返す。
【0048】
負荷側が高圧になると低圧大流量の電磁ポンプ2Aの作動は停止し、高圧小流量の電磁ポンプ2Bのみが作動して、第2ポンプ室39Bから高圧小流量の流体を吐出流路55を介して負荷側へ吐出する。そして、負荷側が低圧になると、再び低圧大流量の電磁ポンプ2Aが作動し、各ポンプ室39A、39Bから吐出流路55を介して流体を負荷側へ吐出する。
【0049】
かかる作動において、ポンプ部4A、4Bを取付部3へ着脱自在に固定し、ポンプ部4A、4Bは、収容孔としての異径孔18A、18Bを有するヨーク17A、17Bと、略円筒形状の固定鉄心22A、22Bと、通電により固定鉄心22A、22Bに吸引される各可動鉄心19A、19Bと、各可動鉄心19A、19Bと一体的に作動する各ピストンロッド15A、15Bと、各ピストンロッド15A、15Bを摺動する各貫通孔25A、25Bを貫通形成して各ピストンロッド15A、15Bを軸支する各軸受部材16A、16Bとを有し、ヨーク17A、17Bは固定鉄心22A、22Bと軸方向に離間して対向配置し、各可動鉄心19A、19Bを固定鉄心22A、22Bに吸引する磁気回路を形成し、各可動鉄心19A、19Bはヨーク17A、17Bの異径孔18A、18Bに摺動自在に収容し、各軸受部材16A、16Bは固定鉄心22A、22Bへ着脱自在に固定した。このため、各ポンプ部4A、4Bを取付部3から取外し、各軸受部材16A、16Bを固定鉄心22A、22Bから取外して、各可動鉄心19A、19Bと一体形成された各ピストンロッド15A、15Bを、可動鉄心と一体形成された異なる径のピストンロッドに交換する。そして、交換するピストンロッドの径に対応した貫通孔を有する軸受部材を固定鉄心22A、22Bに固定することで、吐出量を変更することができるから、各軸受部材16A、16Bは取付部3より小型で取り扱い易く、他の部品を変更する必要がなく、吐出量を容易に変更することができる。また、各軸受部材16A、16Bを取り外して、ヨーク17A、17Bと固定鉄心22A、22Bの内部に配置されたばね部材38A、38B等の各ピストンロッド15A、15B以外の部品も交換することができるため、保守を容易に行うことができる。
【0050】
また、ポンプ部4A、4Bは、各可動鉄心19A、19Bと各軸受部材16A、16Bの間に、各可動鉄心19A、19Bを固定鉄心22A、22Bへの吸引方向と対向する方向へ付勢するばね部材38A、38Bを配置した。このため、ポンプ室に配置したばね部材の伸縮によって、ポンプ室に気泡が生じて吐出量が低減する恐れのある従来の電磁ポンプに比し、各ポンプ室39A、39B内にばね部材38A、38Bの伸縮による気泡が発生しないから、吐出性能を向上することができる。
【0051】
図4は本発明の他実施形態を示し、一実施形態と同一個所には同符号を付して説明を省略し、異なる個所についてのみ説明する。
低圧大流量の電磁ポンプ2Aと高圧小流量の電磁ポンプ2Bは、コイル部5A、5Bを一体形成したポンプ部4A、4Bを取付部3にそれぞれ螺合して着脱自在に固定している。
【0052】
68A、68Bは、略円柱形状のヨークで、軸心に収容孔としての有底の異径孔69A、69Bを形成している。異径孔69A、69Bは、軸方向へ小径部と大径部を連設している。ヨーク68A、68Bは、異径孔69A、69Bの径方向外方に環状孔70A、70Bを形成している。ヨーク68A、68Bの小径部には、補助ばね部材34A、34Bを収容し、大径部には、可動鉄心19A、19Bを軸方向へ摺動自在に嵌挿している。ヨーク68A、68Bは、軸方向一端側に開口部71A、71Bを有する。72A、72Bは、略円筒形状のコイル体で、コイル8A、8Bの周囲を樹脂材でモールドして形成し、ヨーク68A、68Bの環状孔70A、70Bに収容している。
【0053】
73A、73Bは、略円筒形状の固定鉄心で、各可動鉄心19A、19Bを軸方向下方へ吸引し、軸心に貫通孔74A、74Bを貫通形成すると共に、外周面に鍔部75A、75Bを突出形成している。固定鉄心73A、73Bは、固定鉄心73A、73Bの軸方向の一端とヨーク68A、68Bの異径孔69A、69Bの開口端を軸方向に離間して対向配置し、鍔部75A、75Bをヨーク68A、68Bの開口部71A、71Bにかしめにより連結している。そして、固定鉄心73A、73Bの他端を取付部3に螺合して着脱自在に固定している。各軸受部材16A、16Bは、固定鉄心73A、73Bの貫通孔74A、74Bへ軸方向の他端側から挿通し、固定鉄心73A、73Bに螺合して着脱自在に固定している。そして、各可動鉄心19A、19Bを固定鉄心73A、73Bに吸引する磁気回路を、固定鉄心73A、73B、可動鉄心19A、19Bおよびヨーク68A、68Bで形成している。
【0054】
作動は、一実施形態と略同様に、図4に示すコイル8A、8Bの非通電状態で、コイル8A、8Bへ通電すると、各ピストンロッド15A、15Bが下方へ摺動し各ポンプ室39A、39Bから吐出流路55を介して流体を図示しない負荷側へ吐出する。この状態で、コイル8A、8Bを非通電にすると、各ピストンロッド15A、15Bが上方へ摺動し、図示しない低圧側から各吸入流路40A、40Bを介して流体を各ポンプ室39A、39Bに吸入する。そして、再びコイル8A、8Bを通電状態にし、各ピストンロッド15A、15Bが軸方向下方へ移動して、以後同様に通電、非通電を高速で繰り返し、吸入吐出を繰り返す。負荷側が高圧になると低圧大流量の電磁ポンプ2Aの作動は停止し、高圧小流量の電磁ポンプ2Bのみが作動して、第2ポンプ室39Bから高圧小流量の流体を吐出流路55を介して負荷側へ吐出する。そして、負荷側が低圧になると、再び低圧大流量の電磁ポンプ2Aが作動し、各ポンプ室39A、39Bから吐出流路55を介して流体を負荷側へ吐出する。
【0055】
かかる作動において、一実施形態と略同様に、ポンプ部4A、4Bを取付部3から取外し、各軸受部材16A、16Bを固定鉄心73A、73Bから取り外して、各可動鉄心19A、19Bと一体形成された各ピストンロッド15A、15Bを、可動鉄心と一体形成された異なる径のピストンロッドに交換する。そして、交換するピストンロッドの径に対応した貫通孔を有する軸受部材を固定鉄心73A、73Bに固定することで、吐出量を変更することができるから、各軸受部材16A、16Bは取付部3より小型で取り扱い易く、他の部品を変更する必要がなく、吐出量を容易に変更することができる。また、各軸受部材16A、16Bを取り外して、ヨーク68A、68Bと固定鉄心73A、73Bの内部に配置されたばね部材38A、38B等の各ピストンロッド15A、15B以外の部品も交換することができるため、保守を容易に行うことができる。
【0056】
また、ポンプ室に配置したばね部材の伸縮によって、ポンプ室に気泡が生じて吐出量が低減する恐れのある従来の電磁ポンプに比し、各ポンプ室39A、39B内にばね部材38A、38Bの伸縮による気泡が発生しないから、吐出性能を向上することができる。
【0057】
なお、前述の各実施形態では、ばね部材38A、38Aを各可動鉄心19A、19Bと各軸受部材16A、16Bの間に配置したが、各ポンプ室39A、39Bの内部で、各ピストンロッド15A、15Bの他端と当接して配置してもよい。このとき、各ピストンロッド15A、15Bの一端は各可動鉄心19A、19Bに当接し、各可動鉄心19A、19Bと別体で形成してもよい。このため、各ピストンロッド15A、15Bを交換したい場合には、各可動鉄心19A、19Bを交換する必要はなく、交換する部品点数が減少するため、交換作業を容易にできる。また、各軸受部材16A、16Bは凸部27A、27Bを突出形成したが、凸部27A、27Bを設けなくてもよい。また、各コ字状部材11A、11B、13A、13Bの側板部およびヨーク68A、68Bの外周面に軸方向(図2上下方向および図4上下方向)へ延在するスリットを幅方向(図2奥行方向および図4奥行方向)に複数形成してもよい。この構成で、コイル8A、8Bを非通電にして各可動鉄心19A、19Bを復帰作動する際に、各コ字状部材11A、11B、13A、13Bの側板部およびヨーク68A、68Bの外周面に生じる渦電流を低減でき、可動鉄心19A、19Bの復帰作動の応答性を向上できる。ただし、他実施形態においては、コイル体72A、72Bの内周面と、ヨーク68A、68Bおよび固定鉄心73A、73Bとの間にOリング等を設けて、ポンプ部4A、4B内部のドレンがスリットから外部へ流出しないようにする。
【0058】
また、前述の一実施形態では、各コ字状部材11A、11B、13A、13Bは略長方形状の板の短辺の両側端を垂直方向に屈曲して形成したが、別体で形成した平面部および側板部を接合して形成してもよい。
【符号の説明】
【0059】
2A:低圧大流量の電磁ポンプ
2B:高圧小流量の電磁ポンプ
3:取付部
4A、4B:ポンプ部
15A:第1ピストンロッド
15B:第2ピストンロッド
16A:第1軸受部材
16B:第2軸受部材
17A、17B、68A、68B:ヨーク
18A、18B、69A、69B:異径孔(収容孔)
19A:第1可動鉄心
19B:第2可動鉄心
22A、22B、73A、73B:固定鉄心
26A:第1貫通孔
26B:第2貫通孔
38A、38B:ばね部材
図1
図2
図3
図4