(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】グリル
(51)【国際特許分類】
F24C 3/12 20060101AFI20220826BHJP
F24C 3/02 20060101ALI20220826BHJP
A47J 37/06 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
F24C3/12 A
F24C3/02 Q
A47J37/06 366
(21)【出願番号】P 2018204531
(22)【出願日】2018-10-30
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】301071893
【氏名又は名称】株式会社ハーマン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】伊東 敬彦
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-215606(JP,A)
【文献】特開2017-153524(JP,A)
【文献】特開2016-052389(JP,A)
【文献】特開2017-086412(JP,A)
【文献】特開2012-045063(JP,A)
【文献】特開2014-076401(JP,A)
【文献】特開2018-064882(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0345767(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/12
F24C 3/02
A47J 37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリル庫の底部に設置されて前記グリル庫内に収納された調理容器を下方から加熱する下バーナと、
前記グリル庫の天井部に設置されて前記調理容器を上方から加熱する上バーナと、
前記調理容器の温度を検出する温度検出センサと、
前記温度検出センサの検出温度を設定目標温度に維持すべく、前記下バーナ及び前記上バーナの燃焼作動を制御する温調式加熱処理を実行する運転制御部と、が設けられ、
前記運転制御部が、前記温調式加熱処理を開始するための燃焼開始指令が指令されたときに、前記温度検出センサの検出温度が前記設定目標温度よりも低い開始許容温度以下のときには、前記下バーナ及び前記上バーナの燃焼を開始し、かつ、当該燃焼を開始してからの前記検出温度の上昇状態に基づいて前記温調式加熱処理を行う加熱調理時間を求めるように構成されているグリルであって、
前記運転制御部が、前記温調式加熱処理を開始するための前記燃焼開始指令が指令されたときに、前記検出温度が前記設定目標温度よりも高い場合には、前記下バーナを燃焼停止状態に維持した状態で前記上バーナの燃焼を開始し、かつ、当該燃焼を開始してからの前記検出温度の下降状態に基づいて前記温調式加熱処理を行う前記加熱調理時間を求めるように構成されているグリル。
【請求項2】
前記運転制御部が、前記下バーナの燃焼停止状態で前記上バーナの燃焼を開始した後において、前記検出温度が前記設定目標温度よりも低い点火設定温度以下になった場合には、前記下バーナを燃焼させるように構成されている請求項1に記載のグリル。
【請求項3】
前記運転制御部が、前記下バーナの燃焼停止状態で前記上バーナの燃焼を開始した後において、前記検出温度が前記点火設定温度以下になることなく前記設定目標温度に上昇した場合には、前記検出温度を前記設定目標温度に維持すべく、前記下バーナの燃焼停止状態で前記上バーナの燃焼を制御するように構成されている請求項2に記載のグリル。
【請求項4】
前記運転制御部が、前記下バーナを燃焼させた後において、前記検出温度が前記設定目標温度に上昇した場合には、前記検出温度を前記設定目標温度に維持すべく、前記上バーナの燃焼状態で前記下バーナの燃焼を制御するように構成されている請求項2又は3に記載のグリル。
【請求項5】
複数の調理メニューのうちから実行する調理メニューを指令する調理メニュー指令部が設けられ、
前記運転制御部が、前記調理メニュー指令部にて指令された前記調理メニューに基づいて、前記下バーナ及び前記上バーナの燃焼作動を制御するように構成され、
前記設定目標温度及び前記点火設定温度が、複数種の前記調理メニューごとに設定されている請求項2~4のいずれか1項に記載のグリル。
【請求項6】
前記調理メニュー指令部にて指令された前記調理メニューを実行する際の前記設定目標温度及び前記点火設定温度を変更調整する温度調整設定部が設けられている請求項5に記載のグリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリル庫の底部に設置されて前記グリル庫内に収納された調理容器を下方から加熱する下バーナと、
前記グリル庫の天井部に設置されて前記調理容器を上方から加熱する上バーナと、
前記調理容器の温度を検出する温度検出センサと、
前記温度検出センサの検出温度を設定目標温度に維持すべく、前記下バーナ及び前記上バーナの燃焼作動を制御する温調式加熱処理を実行する運転制御部と、が設けられ、
前記運転制御部が、前記温調式加熱処理を開始するための燃焼開始指令が指令されたときに、前記温度検出センサの検出温度が前記設定目標温度よりも低い開始許容温度以下のときには、前記下バーナ及び前記上バーナの燃焼を開始し、かつ、当該燃焼を開始してからの前記検出温度の上昇状態に基づいて前記温調式加熱処理を行う加熱調理時間を求めるように構成されているグリルに関する。
【背景技術】
【0002】
かかるグリルは、下バーナと上バーナとを備えさせることにより、調理容器に収納した被調理物を良好に加熱調理できるようにしたものである。
そして、運転制御部が、調理容器の温度を検出する温度検出センサの検出温度を設定目標温度に維持すべく、下バーナ及び上バーナの燃焼作動を制御する温調式加熱処理を実行することにより、調理容器を設定目標温度に加熱する状態を維持して、調理容器に収納した被調理物を適切に加熱調理できることになる。
【0003】
また、かかるグリルにおいては、運転制御部が、温調式加熱処理を開始するための燃焼開始指令が指令されたときに、温度検出センサの検出温度が設定目標温度(例えば、170℃)よりも低い開始許容温度(例えば、100℃)以下のときには、下バーナ及び上バーナの燃焼を開始し、かつ、当該燃焼を開始してからの検出温度の上昇状態に基づいて温調式加熱処理を行う加熱調理時間を求めるものであるから、つまり、被調理物の加熱負荷に応じて加熱調理時間が自動的に求められるものであるから、加熱調理時間を別途設定する手間を省略して使い勝手の向上を図れるものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ちなみに、特許文献1においては、上述の設定目標温度が、「魚:姿焼き」、「グリルチキン」等の調理メニューの種類に応じて変更設定されることになり、また、同じ種類の調理メニューにおいても、被調理物の加熱負荷の大きさ等の状況に応じて変更設定されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
グリルの使用形態として、1つの加熱調理が終了した後において、同じ調理容器を用いて、引き続き加熱調理を行う、いわゆる連続調理を行う場合がある。
このような連続調理を行う際には、調理容器の温度は高温状態にあり、温度検出センサの検出温度が、続いて行う加熱調理の設定目標温度よりも高くなっている場合がある。
【0007】
このように、温度検出センサの検出温度が、続いて行う加熱調理の設定目標温度よりも高くなっている場合においては、被調理物の加熱負荷が小さいとき等においては、調理容器が保有している熱量を利用しながら、上バーナのみの加熱により、被調理物を加熱調理できるものである。
【0008】
しかしながら、従来のグリルでは、温調式加熱処理を開始するための燃焼開始指令が指令されたときに、温度検出センサの検出温度が設定目標温度よりも高いということは、当該検出温度が開始許容温度よりも高くなるため、温調式加熱処理を開始できない不都合があった。
【0009】
つまり、従来のグリルでは、温調式加熱処理を開始するための燃焼開始指令が指令されたときに、温度検出センサの検出温度が開始許容温度よりも高い場合には、温調式加熱処理を開始するできないものであるから、調理容器の温度が開始許容温度以下に低下するまで待ち、その後、温調式加熱処理を開始するための燃焼開始指令を指令する必要がある。
このため、従来のグリルでは、使用上の不便があり、しかも、調理容器が保有している熱量が無駄になるものであり、改善が望まれるものであった。
【0010】
本発明は、上記実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、使用上の利便性を向上し、しかも、調理容器が保有している熱量を有効利用して加熱調理できるグリルを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のグリルは、グリル庫の底部に設置されて前記グリル庫内に収納された調理容器を下方から加熱する下バーナと、
前記グリル庫の天井部に設置されて前記調理容器を上方から加熱する上バーナと、
前記調理容器の温度を検出する温度検出センサと、
前記温度検出センサの検出温度を設定目標温度に維持すべく、前記下バーナ及び前記上バーナの燃焼作動を制御する温調式加熱処理を実行する運転制御部と、が設けられ、
前記運転制御部が、前記温調式加熱処理を開始するための燃焼開始指令が指令されたときに、前記温度検出センサの検出温度が前記設定目標温度よりも低い開始許容温度以下のときには、前記下バーナ及び前記上バーナの燃焼を開始し、かつ、当該燃焼を開始してからの前記検出温度の上昇状態に基づいて前記温調式加熱処理を行う加熱調理時間を求めるように構成されているものであって、その特徴構成は、
前記運転制御部が、前記温調式加熱処理を開始するための前記燃焼開始指令が指令されたときに、前記検出温度が前記設定目標温度よりも高い場合には、前記下バーナを燃焼停止状態に維持した状態で前記上バーナの燃焼を開始し、かつ、当該燃焼を開始してからの前記検出温度の下降状態に基づいて前記温調式加熱処理を行う前記加熱調理時間を求めるように構成されている点にある。
【0012】
上記記載中における「設定目標温度」は、調理メニューの種類に応じて変更設定されることになり、また、同じ種類の調理メニューにおいても、被調理物の加熱負荷の大きさ等の状況に応じて変更設定されることになる。
【0013】
すなわち、運転制御部が、温調式加熱処理を開始するための燃焼開始指令が指令されたときに、温度検出センサの検出温度が前記設定目標温度よりも高い場合には、下バーナを燃焼停止状態に維持した状態で上バーナの燃焼を開始し、かつ、当該燃焼を開始してからの温度検出センサの検出温度の下降状態に基づいて温調式加熱処理を行う加熱調理時間を求めることになる。
【0014】
したがって、温調式加熱処理を開始するための燃焼開始指令が指令されたときに、温度検出センサの検出温度が設定目標温度よりも高い場合には、下バーナを燃焼停止状態に維持した状態で上バーナの燃焼を開始しながら、温調式加熱処理を実行するものであるから、温度検出センサの検出温度が設定目標温度よりも高い場合においても、温調式加熱処理を開始することができ、かつ、調理容器が保有している熱量を利用しながら、上バーナのみの加熱により、被調理物を加熱調理できる。
【0015】
つまり、1つの加熱調理が終了した後に、同じ調理容器を用いて、引き続き加熱調理を行う、いわゆる連続調理を行う場合等において、温調式加熱処理を開始するための燃焼開始指令が指令されたときに、温度検出センサの検出温度が設定目標温度よりも高い場合には、下バーナを燃焼停止状態に維持した状態で上バーナの燃焼させる形態で温調式加熱処理が開始されて、調理容器が保有している熱量を利用しながら、上バーナのみの加熱により、被調理物を加熱調理できる。
【0016】
しかも、下バーナを燃焼停止状態に維持した状態で上バーナの燃焼を開始すると、温度検出センサの検出温度が設定目標温度よりも低くなる程度にまで下降することになり、その下降状態は、被調理物の大きさ等による加熱負荷に応じて変化するものであるから、その下降状態に基づいて温調式加熱処理を行う加熱調理時間を求めることになる。
【0017】
つまり、本発明の発明者の鋭意研究によって、温度検出センサの検出温度が設定目標温度よりも高い場合には、下バーナを燃焼停止状態に維持した状態で上バーナの燃焼を開始する形態で温調式加熱処理を開始でき、しかも、下バーナを燃焼停止状態に維持した状態で上バーナの燃焼を開始した後において、温度検出センサの検出温度の下降状態に基づいて、温調式加熱処理を行う加熱調理時間を求めることができる点を見出すに至ったのである。
【0018】
要するに、本発明のグリルの特徴構成によれば、使用上の利便性を向上し、しかも、調理容器が保有している熱量を有効利用して加熱調理できるグリルを提供できる。
【0019】
本発明のグリルの更なる特徴構成は、前記運転制御部が、前記下バーナの燃焼停止状態で前記上バーナの燃焼を開始した後において、前記検出温度が前記設定目標温度よりも低い点火設定温度以下になった場合には、前記下バーナを燃焼させるように構成されている点にある。
【0020】
すなわち、燃焼開始指令が指令されたときに、温度検出センサの検出温度が設定目標温度よりも高いことにより、下バーナを燃焼停止状態に維持した状態で上バーナの燃焼を開始した後において、温度検出センサの検出温度が設定目標温度よりも低い点火設定温度以下になった場合には、運転制御部が、上バーナに加えて、下バーナを燃焼させることになる。
【0021】
つまり、下バーナを燃焼停止状態に維持した状態で上バーナの燃焼を開始した後において、被調理物の加熱負荷が大きいときにおいては、温度検出センサの検出温度が設定目標温度よりも低い点火設定温度以下になることがあるが、そのような場合には、上バーナに加えて下バーナを燃焼させるものであるから、加熱負荷が大きな被調理物を上バーナと下バーナとで加熱しながら良好に加熱調理できる。
【0022】
要するに、本発明のグリルの更なる特徴構成によれば、加熱負荷が大きな被調理物を上バーナと下バーナとで加熱しながら良好に加熱調理できる。
【0023】
本発明のグリルの更なる特徴構成は、前記運転制御部が、前記下バーナの燃焼停止状態で前記上バーナの燃焼を開始した後において、前記検出温度が前記点火設定温度以下になることなく前記設定目標温度になった場合には、前記検出温度を前記設定目標温度に維持すべく、前記下バーナの燃焼停止状態で前記上バーナの燃焼を制御するように構成されている点にある。
【0024】
すなわち、燃焼開始指令が指令されたときに、温度検出センサの検出温度が設定目標温度よりも高いことにより、下バーナを燃焼停止状態に維持した状態で上バーナの燃焼を開始した後においては、被調理物の加熱負荷により、温度検出センサの検出温度が一旦は設定目標温度よりも下降することになるが、その後、被調理物の加熱負荷が特に大きくない場合等においては、上バーナの加熱により、温度検出センサの検出温度が点火設定温度以下になることなく設定目標温度に上昇することになる。
【0025】
そして、このように、温度検出センサの検出温度が点火設定温度以下になることなく設定目標温度になった場合には、運転制御部が、温度検出センサの検出温度を設定目標温度に維持すべく、下バーナの燃焼停止状態で上バーナの燃焼を制御することになる。
ちなみに、上バーナの燃焼制御としては、例えば、温度検出センサの検出温度が設定目標温度になると、上バーナの火力を小火力に調節し、温度検出センサの検出温度が設定目標温度から設定値低い下限温度になると、上バーナの火力を大火力に調節することを、繰り返す制御であり、このような燃焼制御により、温度検出センサの検出温度が設定目標温度に維持されることになる。
【0026】
要するに、本発明のグリルの更なる特徴構成によれば、上バーナの燃焼制御により、温度検出センサの検出温度を設定目標温度に維持できる。
【0027】
本発明のグリルの更なる特徴構成は、前記運転制御部が、前記下バーナを燃焼させた後において、前記検出温度が前記設定目標温度に上昇した場合には、前記検出温度を前記設定目標温度に維持すべく、前記上バーナの燃焼状態で前記下バーナの燃焼を制御するように構成されている点にある。
【0028】
すなわち、下バーナを燃焼停止状態に維持した状態で上バーナの燃焼を開始した後において、温度検出センサの検出温度が設定目標温度よりも低い点火設定温度以下になることにより、上バーナに加えて下バーナを燃焼させた場合において、温度検出センサの検出温度が設定目標温度に上昇したときには、運転制御部が、温度検出センサの検出温度を設定目標温度に維持すべく、上バーナの燃焼状態で下バーナの燃焼を制御することになる。
【0029】
つまり、温度検出センサの検出温度が設定目標温度よりも低い点火設定温度以下になることにより、上バーナに加えて下バーナを燃焼させることにより、加熱負荷が大きな被調理物を上バーナと下バーナとで加熱した結果、温度検出センサの検出温度が設定目標温度に上昇した場合には、温度検出センサの検出温度を設定目標温度に維持すべく、上バーナの燃焼状態で下バーナの燃焼を制御することになる。
ちなみに、下バーナの燃焼制御としては、例えば、温度検出センサの検出温度が設定目標温度になると、下バーナの火力を小火力に調節し、温度検出センサの検出温度が設定目標温度から設定値低い下限温度になると、下バーナの火力を大火力に調節することを、繰り返す制御であり、このような燃焼制御により、温度検出センサの検出温度が設定目標温度に維持されることになる。
【0030】
要するに、本発明のグリルの更なる特徴構成によれば、下バーナの燃焼制御により、温度検出センサの検出温度を設定目標温度に維持できる。
【0031】
本発明のグリルの更なる特徴構成は、複数の調理メニューのうちから実行する調理メニューを指令する調理メニュー指令部が設けられ、
前記運転制御部が、前記調理メニュー指令部にて指令された前記調理メニューに基づいて、前記下バーナ及び前記上バーナの燃焼作動を制御するように構成され、
前記設定目標温度及び前記点火設定温度が、複数種の前記調理メニューごとに設定されている点にある。
【0032】
すなわち、調理メニューとしては、「魚:姿焼」「魚:切り身」等の複数種があり、運転制御部が、調理メニュー指令部にて指令された調理メニューに基づいて、下バーナ及び上バーナの燃焼作動を制御することになる。
【0033】
そして、設定目標温度及び点火設定温度が、複数種の前記調理メニューごとに設定されているから、各種の調理メニューに応じた良好な状態で、被調理物を加熱調理することができる。
【0034】
要するに本発明のグリルの更なる特徴構成によれば、調理メニューに応じた良好な状態で被調理物を加熱調理することができる。
【0035】
本発明のグリルの更なる特徴構成は、前記調理メニュー指令部にて指令された前記調理メニューを実行する際の前記設定目標温度及び前記点火設定温度を変更調整する温度調整設定部が設けられている点にある。
【0036】
すなわち、同じ調理メニューを行うにしても、被調理物の大きさ等により、被調理物の加熱負荷が異なることになる。
そして、設定目標温度及び点火設定温度を、被調理物の加熱負荷が大きいときには加熱負荷が小さいときよりも高温側に調整することにより、加熱負荷が異なる被調理物を適切に加熱調理できることになる。
【0037】
したがって、被調理物の大きさ等を鑑みながら、温度調整設定部にて、調理メニュー指令部にて指令された調理メニューを実行する際の設定目標温度及び点火設定温度を変更調整することにより、加熱負荷が異なる被調理物を適切に加熱調理できる。
【0038】
要するに、本発明のグリルの更なる特徴構成によれば、加熱負荷が異なる被調理物を適切に加熱調理できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図3】容器支持部をグリル庫から引き出した状態の斜視図
【
図7】オートメニューの制御作動を示すフローチャート
【
図9】第2加熱処理を実行する高温用加熱処理の制御作動を示す図
【
図10】第1加熱処理を実行する高温用加熱処理の制御作動を示す図
【
図11】上昇式判別処理の上昇測定時間と仮加熱調理時間との関係を示す図
【
図12】下降式判別処理の温度差と仮加熱調理時間との関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0040】
〔実施形態〕
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(ガスコンロの全体構成)
図1に示すように、コンロ本体Hの上面部に、左右一対のコンロバーナ1を備え、コンロ本体Hの内部にグリルG(
図2参照)を備えるガスコンロが構成されている。
このガスコンロは、キッチンカウンタに形成したコンロ装着口に上方から挿入して組付ける、いわゆるビルトインタイプとして構成されるものであって、コンロ本体Hの上部の周縁部には、キッチンカウンタに載置する鍔部が形成されている。
【0041】
コンロ本体Hの上部には、ガラス製の天板2が装備され、そして、天板2の後部側箇所には、グリルGの調理排気を排出するためのグリル排気口3が形成されている。
また、天板2の上部には、コンロバーナ1にて加熱される鍋等の被加熱物を載置するための五徳4が、左右のコンロバーナ1の夫々に対応して設けられている。
尚、コンロバーナ1の中央部には、
図1に示すように、鍋等の被加熱物の存在及び被加熱物の底壁温度を検出するコンロバーナセンサ1Aが設けられている。
【0042】
コンロ本体Hの上部に装備した天板2の手前側箇所には、左右のコンロバーナ1の夫々に対する左右一対のコンロ用操作具5が、上方に離脱自在に設けられ、コンロ本体Hの前面部の右側箇所には、グリルGに対するグリル用設定操作部ASが、下方側を支点にした前後揺動により開閉自在に設けられている。尚、
図1は、グリル用設定操作部ASの開き状態を例示する。
【0043】
ちなみに、一対のコンロ用操作具5の夫々は、前後や左右のスライド操作及び左右の回転操作により、点火及び消火の指令、目標火力の指令、目標温度に維持する自動温度調理の指令等、各種の指令情報を指令するように構成されている。
グリル用設定操作部ASは、複数の指令スイッチを備えて、それらの複数の指令スイッチの操作により、後述するグリルバーナ7に対する点火指令(燃焼開始指令)及び消火の指令、目標火力の指令、調理モードの指令等、各種の指令情報を指令するように構成されており、その詳細は後述する。
【0044】
(グリルの詳細)
図2に示すように、グリルGには、前部及び後部が開口する筒状に形成されたグリル庫6が設けられ、グリル庫6の後方側には、グリルバーナ7の燃焼排ガスや被加熱物からでる水蒸気等の調理排気を排気する排気路Eを形成する排気筒6Aが上方側に延びる状態で連設され、その排気路Eにて調理排気を上述のグリル排気口3に導くように構成されている。
【0045】
図2及び
図3に示すように、被加熱物としての調理容器Kを支持する調理容器支持部Lが、グリル庫6に対して出退自在に設けられている。
本実施形態においては、調理容器Kとして、被調理物の載置面が平坦状に形成されたプレートパン9A(
図2及び
図3参照)、被調理物の載置面が波型に形成された波型プレートパン(図示せず)、及び、被調理物を収納する蓋付きの調理容器である調理鍋(キャセロール容器など)(図示せず)の3種類が存在するものとする。
【0046】
図3に示すように、調理容器支持部Lは、グリル庫6の内部に設けた固定レールに対して出退自在に案内される左右の可動レールLaと、調理容器Kの前縁部及び後縁部を載置支持する形態に棒状部材を曲げ加工して形成される支持枠Lbとを備える形態に構成されている。
そして、プレートパン9A、波型プレートパン、及び、調理鍋が、調理容器支持部Lにおける支持枠Lbに対して、付け替え自在に装着されるように構成されている。
【0047】
図3に示すように、左右の可動レールLaの先端部に、グリル庫6の前部に形成された前開口部6fを開閉するグリル扉8(
図1参照)を取付ける扉支持体8Aが設けられ、支持枠Lbの先端部が扉支持体8Aに係止連結されている。
尚、図示は省略するが、支持枠Lbの後端部が、グリル庫6の内部に設けた載置案内体にて、摺動自在に載置支持されている。
【0048】
図2に示すように、グリルバーナ7が、グリル庫6の天井部に設けられた上バーナ7Uと、グリル庫6の底部に設けられた下バーナ7Sとを備えている。
そして、下バーナ7Sが、グリル庫6内に収納された調理容器Kを下方から加熱し、上バーナ7Uが、グリル庫6内に収納された調理容器Kを上方から加熱するように構成されている。
【0049】
下バーナ7Sは、円筒状のバーナ本体部10Aと、そのバーナ本体部10Aに接続されるバーナ混合管部10Bとを備え、バーナ本体部10Aには、周方向に沿って炎孔Fが形成されている。つまり、下バーナ7Sは、炎孔Fを環状に備える形態に構成されている。
上バーナ7Uは、下向きの平板状の火炎を形成する輻射式バーナであり、詳細な説明は省略するが、平板状の上バーナ本体部やその上バーナ本体部に接続される上バーナ混合管部を備え、上バーナ本体部の下面部に燃焼炎形成部が形成されている。
【0050】
図5に示すように、下バーナ7S及び上バーナ7Uの夫々に対して、点火装置としての点火プラグP、及び、着火状態検出装置としての着火センサRが装備されている。
また、コンロバーナ1についても、同様に、点火プラグP及び着火センサRが装備されている。
【0051】
図2に示すように、下バーナ7Sの内部には、調理容器Kの温度を検出する温度検出センサとして、調理容器Kの底壁部に接触して底壁部の温度を検出する容器温度検出センサ11Aが装備され、当該容器温度検出センサ11Aの検出温度としての容器温度Tsが、後述する運転制御部Wに入力されている(
図6参照)。
また、排気筒6Aには、グリル庫6の内部と連通する排気路Eの内部温度をグリル庫6の庫内温度Tnとして検出する庫内温度検出部として、庫内温度検出センサ11Bが設けられ、当該庫内温度検出センサ11Bにて検出される庫内温度Tnが、後述する運転制御部Wに入力されている。
【0052】
(ガス燃料の供給構成)
図5に示すように、都市ガス供給管等のガス供給源に接続される元ガス供給路12に、電磁操作式の元ガス弁13が設けられ、元ガス供給路12からは、一対のコンロバーナ用分岐路14及びグリルバーナ用分岐路15の3系統のガス流路が分岐されている。
【0053】
グリルバーナ用分岐路15に、下バーナ7S及び上バーナ7Uに対するガス燃料の供給圧力を設定圧に調整するガバナ16が設けられ、ガバナ16にて設定圧に調整されたガス燃料を下バーナ7Sに導く下バーナ用供給路17S、及び、ガバナ16にて設定圧に調整されたガス燃料を上バーナ7Uに導く上バーナ用供給路17Uが、グリルバーナ用分岐路15から分岐されている。
【0054】
一対のコンロバーナ用分岐路14の夫々には、ステッピングモータの駆動によって燃料ガスの流量を調整して加熱量(火力)を調整するためのコンロ用ガス量調整弁18が備えられている。
また、下バーナ用供給路17Sには、ステッピングモータの駆動によって燃料ガスの流量を調整して加熱量(火力)を調整するための下バーナ用ガス量調整弁19が備えられ、上バーナ用供給路17Uには、ステッピングモータの駆動によって燃料ガスの流量を調整して加熱量(火力)を調整するための上バーナ用ガス量調整弁20が備えられている。
【0055】
グリルバーナ7における下バーナ7S及び上バーナ7Uの火力は、下バーナ用ガス量調整弁19及び上バーナ用ガス量調整弁20にて無段階に変更されることになるが、本実施形態においては、下バーナ7S及び上バーナ7Uの夫々の火力が、「強」「中」「弱」の3段階に変更されるものとする。
ちなみに、
図6に示すように、グリル用設定操作部ASの指令情報が運転制御部Wに入力されて、運転制御部Wが、グリル用設定操作部ASの指令情報に基づいて、上バーナ7U及び下バーナ7Sの燃焼を制御するように構成されており、その詳細は後述する。
【0056】
(グリル用設定操作部の詳細)
図4に示すように、グリル用設定操作部ASには、オートメニューを選択するオートメニュー選択スイッチ25、調理モードを選択する調理モード選択スイッチ26、火加減等を設定する火力調節スイッチ27、グリルバーナ7に対する点火及び消火を指令する点消火スイッチ28、タイマー調理等を設定する時間設定スイッチ29、時間設定スイッチ29にて設定された時間等を表示する時間表示部29A、入力された情報の取り消しを指令する取消スイッチ30、及び、チャイルドロックスイッチ31が備えられている。
【0057】
点消火スイッチ28は、押し操作されるごとに、点火指令と消火指令とを交互に指令するものであり、グリルバーナ7を点火させるときや消火するときに押し操作されることになる。
つまり、点消火スイッチ28は、「オートメニュー」及び「調理モード」が備える複数の調理メニューを実行する際や、「タイマー調理」を実行する際において、加熱調理を開始するために、グリルバーナ7を点火させるときに操作され、さらには、「オートメニュー」、「調理モード」及び「タイマー調理」を用いずに、手動操作による加熱調理(以下、「手動調理」と呼称)を行うときにも、グリルバーナ7を点火させるときや消火するときに押し操作されることになる。
【0058】
時間設定スイッチ29は、加熱調理時間を設定するものであって、その設定された加熱調理時間が時間表示部29Aに表示されることになる。
運転制御部Wは、時間設定スイッチ29にて加熱調理時間が設定された後に、点消火スイッチ28にてグリルバーナ7が点火された場合や、点消火スイッチ28にてグリルバーナ7が点火された直後に、時間設定スイッチ29にて加熱調理時間が設定された場合において、加熱調理時間が経過すると、グリルバーナ7を自動的に消火する「タイマー調理」を実行するように構成されている。
【0059】
オートメニュー選択スイッチ25は、押し操作により、「オートメニュー」を指令するものであり、そして、押し操作されるごとに、「オートメニュー」の調理メニューとして、「魚:姿焼き」、「魚:切り身」、「鶏もも焼き」、「ホイル焼き」、「トースト」、及び、「ごはん」の調理メニューに順次切換えるように構成されている。尚、「ごはん」とは、炊飯を意味するものである。
【0060】
ちなみに、「オートメニュー」を実行する際には、オートメニュー選択スイッチ25を操作して調理メニューを選択した後に、点消火スイッチ28を操作する、あるいは、点消火スイッチ28を操作した直後に、オートメニュー選択スイッチ25を操作して調理メニューを選択することになる。
【0061】
そして、運転制御部Wが、オートメニュー選択スイッチ25にて選択された複数の調理メニューの夫々について、予め設定されている加熱調理用情報に基づいて、上バーナ7U及び下バーナ7Sの火力を自動的に調節しながら、自動的に加熱調理を行い、且つ、加熱調理を実行しながら求めた加熱調理時間が終了すると、上バーナ7U及び下バーナ7Sを自動的に消火する全自動加熱調理を実行するように構成されている。
【0062】
調理モード選択スイッチ26は、押し操作により、「調理モード」を指令するものであり、そして、押し操作されるごとに、「調理モード」の調理メニューとして、「焼く」、「あたためる」、「ノンフライ」、「煮る」、「蒸す」、及び、「パン」の調理メニューに順次切換えるように構成されている。
【0063】
ちなみに、「調理モード」を実行する際には、調理モード選択スイッチ26を操作して調理メニューを選択した後に、点消火スイッチ28を操作する、あるいは、点消火スイッチ28を操作した直後に、調理モード選択スイッチ26を操作して調理メニューを選択することになる。
そして、運転制御部Wが、調理モード選択スイッチ26にて選択された複数の調理メニューの夫々について、予め設定されている加熱調理用情報に基づいて、上バーナ7U及び下バーナ7Sの火力を自動的に調節しながら、自動的に加熱調理を行うように構成されている。
【0064】
「調理モード」において、加熱調理を停止する際には、使用者が点消火スイッチ28を操作して、上バーナ7U及び下バーナ7Sを消火させるか、あるいは、時間設定スイッチ29にて加熱調理時間を予め設定して、設定された加熱調理時間が経過すると、上バーナ7U及び下バーナ7Sを消火させることになる。
【0065】
オートメニューの「ごはん」や、調理モードの「煮る」、「蒸す」、「パン」の調理メニューは、調理鍋を用いて行う調理メニューであり、オートメニューや調理モードにおけるその他の調理メニューは、プレートパン9Aを用いて行う調理メニューである。
そして、「オートメニュー」の「魚:姿焼き」、「魚:切り身」、及び、調理モードにおける「焼く」、「あたためる」、「ノンフライ」は、容器温度検出センサ11Aにて検出される容器温度Tsを設定目標温度Tmに維持すべく、グリルバーナ7(上バーナ7U、下バーナ7S)の燃焼を制御する調理メニューである。
【0066】
本実施形態においては、オートメニューにおける「魚:姿焼き」、「魚:切り身」の調理メニューにおける加熱調理を後述し、その他の調理メニューの説明を省略する。
したがって、本実施形態においては、オートメニュー選択スイッチ25は、「オートメニュー」が備える複数の調理メニューのうちから実行する調理メニューを指令する調理メニュー指令部として機能することになる。
【0067】
火力調節スイッチ27は、「手動調理」や「タイマー調理」を行う際に、グリルバーナ7の火力(火加減)を、「強」(高)、「中」(中)、「弱」(低)の3段階に切換えるものである。具体的には、グリルバーナ7の燃焼状態において、火力調節スイッチ27を押し操作するごとに、グリルバーナ7の火力を、「強」(高)、「中」(中)、「弱」(低)の順に切換えるように構成されている。
【0068】
ちなみに、本実施形態において、グリルバーナ7の火力が「強」の状態とは、上バーナ7U及び下バーナ7Sの火力が「強」の状態であり、グリルバーナ7の火力が「中」の状態とは、上バーナ7Uの火力が「弱」で且つ下バーナ7Sの火力が「強」の状態であり、グリルバーナ7の火力が「弱」の状態とは、上バーナ7Uの火力が「強」で且つ下バーナ7Sの火力が「弱」の状態である。
【0069】
また、火力調節スイッチ27は、「オートメニュー」の「魚:姿焼き」、「魚:切り身」、及び、「調理モード」の「焼く」、「あたためる」、「ノンフライ」が選択された際には、上述した設定目標温度Tm、及び、後述する点火設定温度Tkを変更調整する温度調整設定部Sとして機能するように構成されている。
尚、点火設定温度Tkは、設定目標温度Tmよりも設定値(例えば、20℃)だけ低い温度に設定される。
【0070】
取消スイッチ30は、オートメニュー選択スイッチ25に指令された情報、調理モード選択スイッチ26にて指令された情報、及び、時間設定スイッチ29にて指令された情報を取り消す際に、押し操作されることになる。
また、チャイルドロックスイッチ31は、3秒に亘って押し操作することにより、グリル用設定操作部ASによる操作を無効にする「チャイルドロック状態」に設定することができる。
【0071】
(ガスコンロの制御構成)
運転制御部Wは、マイクロコンピュータを備えて、グリルGを備えたガスコンロの全体に対する運転を制御するものであるが、以下の説明においては、グリルGに備えた下バーナ7S及び上バーナ7Uに対する燃焼制御を説明して、コンロバーナ1に対する燃焼制御は省略する。
【0072】
運転制御部Wは、
図6に示すように、上述したグリル用設定操作部ASからの指令情報に基づいて、下バーナ7S及び上バーナ7Uに対する燃焼を制御する。
例えば、点消火スイッチ28の操作により点火指令が指令されると、元ガス弁13、下バーナ用ガス量調整弁19、及び、上バーナ用ガス量調整弁20を操作して、下バーナ7S及び上バーナ7Uに燃料ガスを供給する状態とし、加えて、下バーナ7S及び上バーナ7Uに対する点火プラグPを作動させかつ着火センサRにて着火を検出する点火処理を実行することになる。
【0073】
また、点消火スイッチ28の操作により消火指令が指令されると、元ガス弁13、下バーナ用ガス量調整弁19、及び、上バーナ用ガス量調整弁20を閉状態に操作して、下バーナ7S及び上バーナ7Uを消火する消火処理を実行することになる。
【0074】
また、「手動調理」及び「タイマー調理」の実行中において、火力調節スイッチ27の操作により火力の変更が指令されると、下バーナ用ガス量調節弁19及び上バーナ用ガス量調節弁20を操作して、下バーナ7S及び上バーナ7Uの火力を「強」、「中」、「弱」に変更調節する火力調節処理を実行することになる。
【0075】
また、自動調理制御として、「オートメニュー」の調理メニューや、「調理モード」の調理メニューが指令された場合には、予め設定された加熱調理用情報に基づいて、上バーナ7U及び下バーナ7Sの火力を自動的に調節しながら、自動的に加熱調理を行うことになる。
そして、「オートメニュー」の調理メニューが指令された場合や、「調理モード」において加熱調理時間が設定された場合には、定められた加熱調理時間が終了すると、下バーナ7S及び上バーナ7Uを自動的に消火することになる。
同様に、「タイマー調理」が指令された場合には、加熱調理時間が経過すると、下バーナ7S及び上バーナ7Uを自動的に消火することになる。
【0076】
また、運転制御部Wは、グリル庫6の内部に調理容器が収納されているか否かを検出する容器存否検出センサN(
図2参照)の検出情報に基づいて、下バーナ7S及び上バーナ7Uの燃焼を制御するように構成されている。
すなわち、運転制御部Wは、例えば、グリル用設定操作部ASから点火指令が指令されたときに、容器存否検出センサNの検出情報に基づいて、調理容器Kの存在が検出されない非存在状態であると判定したときには、非存在状態に対応する非存在用処理を実行するように構成されている。
【0077】
具体的には、点火処理を実行せずに、警報ブザー等の警報装置35を作動させる警報処理を実行するように構成されている。
つまり、調理容器Kを支持枠Lbに載置せずに、調理容器支持部Lをグリル庫6の設定収納位置に収納した状態や、調理容器Kを支持枠Lbに載置した調理容器支持部Lをグリル庫6の適正な設定収納位置に収納しない状態のときには、容器存否検出センサNの検出情報に基づいて、調理容器Kの存在が検出されない状態であることが判定されて、点火処理の実行が牽制されることになる。
【0078】
また、運転制御部Wは、下バーナ7S及び上バーナ7Uの燃焼中において、容器温度検出センサ11Aにて検出される容器温度Tsが設定火力減少温度(例えば、220℃)を超えると、上バーナ7Uを弱火に切替え、且つ、設定消火温度(例えば、230℃)を超えると、上バーナ7Uの燃焼を停止させる消火処理を実行し、加えて、警報ブザー等の警報装置35を作動させる警報処理を実行するように構成されている。
【0079】
同様に、運転制御部Wは、下バーナ7S及び上バーナ7Uの燃焼中において、庫内温度検出センサ11Bにて検出される庫内温度Tnが設定火力減少温度(例えば、210℃)を超えると、上バーナ7Uを弱火に切替え、且つ、設定消火温度(例えば、220℃)を超えると、上バーナ7Uの燃焼を停止させる消火処理を実行し、加えて、警報ブザー等の警報装置35を作動させる警報処理を実行するように構成されている。
【0080】
(オートメニューの詳細)
上述の如く、オートメニューにおける「魚:姿焼き」、「魚:切り身」は、運転制御部Wが、容器温度検出センサ11Aにて検出される容器温度Tsを設定目標温度Tmに維持すべく、グリルバーナ7(上バーナ7U、下バーナ7S)の燃焼を制御する温調式加熱処理を実行する調理メニューである。
そして、オートメニューにおける「魚:姿焼き」、「魚:切り身」は、設定目標温度Tm及び点火設定温度Tkが異なるものの、グリルバーナ7(上バーナ7U、下バーナ7S)の燃焼制御形態は同様であるので、以下、「オートメニュー」の制御内容として、「魚:姿焼き」の制御内容を代表として記載する。
【0081】
「魚:姿焼き」の設定目標温度Tm及び点火設定温度Tkは、火力調節スイッチ27にて変更が指令されない場合には、火力調節スイッチ27の「中」に対応する温度が設定され、火力調節スイッチ27にて変更が指令された場合には、「強」(高)、「中」(中)、「弱」(低)に対応する温度が設定される。
ちなみに、設定目標温度Tmの「強」、「中」、「弱」の夫々に対応する温度は、例えば、170℃、160℃、150℃であり、点火設定温度Tkの「強」、「中」、「弱」の夫々に対応する温度は、150℃、140℃、130℃である。
【0082】
「魚:姿焼き」のオートメニューは、加熱調理を開始すべく点火指令(燃焼開始指令)が指令されたときに、容器温度検出センサ11Aにて検出される容器温度Tsが設定目標温度Tmよりも低い開始許容温度(例えば、100℃)以下の状態(以下、低温開始状態と記載)のときには、運転制御部Wが温調式加熱処理として基準加熱処理を実行し、かつ、当該容器温度Tsが設定目標温度Tmよりも高い状態(以下、高温開始状態)のときには、運転制御部Wが温調式加熱処理として高温用加熱処理を実行する。
【0083】
基準加熱処理を説明すると、
図8に示すように、運転制御部Wが、低温開始状態であるため、上バーナ7U及び下バーナ7Sの燃焼を開始することになる。つまり、上バーナ7U及び下バーナ7Sを強火力にて点火することになる。
次に、加熱調理時間を求める上昇式判別処理を実行し、その後、容器温度Tsが設定目標温度Tmになると、容器温度Tsが設定目標温度Tmになるごとに、下バーナ7Sの火力を弱火力に調節し、かつ、容器温度Tsが設定目標温度Tmよりも設定温度(例えば、2℃)低い下限温度Tpになるごとに、下バーナ7Sの火力を強火力に調節することを繰り返す第1加熱処理を実行する。尚、当該第1加熱処理においては、上バーナ7Uは強火力にて燃焼させる状態が維持される。
そして、設定された加熱調理時間が経過すると、上バーナ7U及び下バーナ7Sを消火することになる。
【0084】
高温用加熱処理を説明すると、
図9及び
図10に示すように、運転制御部Wが、高温開始状態であるため、下バーナ7Sを燃焼停止状態に維持した状態で上バーナ7Uの燃焼を開始することになる。つまり、下バーナ7Sを点火させずに、上バーナ7Uを強火力にて点火することになる。
次に、加熱調理時間を求める下降式判別処理を実行することになる。
【0085】
その後、
図9に示すように、下バーナ7Sの燃焼停止状態で上バーナ7Uの燃焼を開始した後において、容器温度Tsが設定目標温度Tm以下に下降してから点火設定温度Tk以下になることなく設定目標温度Tmに上昇した場合には、運転制御部Wが、容器温度Tsを設定目標温度に維持すべく、下バーナ7Sの燃焼停止状態で上バーナ7Uの燃焼を制御するように構成されている。
【0086】
つまり、容器温度Tsが点火設定温度Tk以下に低下することなく設定目標温度Tmになった場合には、容器温度Tsが設定目標温度Tmになるごとに、上バーナ7Uの火力を弱火力に調節し、かつ、容器温度Tsが設定目標温度Tmよりも設定温度(例えば、2℃)低い下限温度Tpになるごとに、上バーナ7Uの火力を強火力に調節することを繰り返す第2加熱処理を実行する。尚、当該第2加熱処理においては、下バーナ7Sは燃焼停止状態に維持される。
【0087】
また、下バーナ7Sを点火させずに、上バーナ7Uを強火力にて点火した後において、
図10に示すように、容器温度Tsが設定目標温度Tmよりも低い点火設定温度Tk以下になった場合には、運転制御部Wが、下バーナ7Sを燃焼させるように構成されている。つまり、容器温度Tsが点火設定温度Tk以下まで低下すると、下バーナ7Sを強火力にて点火するように構成されている。
【0088】
その後、下バーナ7Sを燃焼させた後において、容器温度Tsが設定目標温度Tmに上昇した場合には、運転制御部Wが、容器温度Tsを設定目標温度Tmに維持すべく、上バーナ7Uの燃焼状態で下バーナ7Sの燃焼を制御するように構成されている。
つまり、容器温度Tsが設定目標温度Tmになると、容器温度Tsが設定目標温度Tmになるごとに、下バーナ7Sの火力を弱火力に調節し、かつ、容器温度Tsが設定目標温度Tmよりも設定温度(例えば、2℃)低い下限温度Tpになるごとに、下バーナ7Sの火力を強火力に調節することを繰り返す第1加熱処理を実行する。
【0089】
すなわち、高温用加熱処理は、下バーナ7Sを点火させずに、上バーナ7Uを強火力にて点火し、その後、容器温度Tsが点火設定温度Tk以下に低下することなく設定目標温度Tmに上昇した場合には、第2加熱処理を実行し、且つ、容器温度Tsが点火設定温度Tk以下まで低下した場合には、下バーナ7Sを強火力にて点火し、かつ、第1加熱処理を実行するように構成されている。
【0090】
(上昇式判別処理の詳細)
上昇式判別処理は、
図8に示すように、上バーナ7U及び下バーナ7Sを点火してから点火確認時間Taが経過すると、その時点の容器温度Tsを開始温度Tbとして記憶し、その後、容器温度Tsが設定計測温度Tc(例えば、130℃)に達すると、上バーナ7U及び下バーナ7Sを点火してからの経過時間を上昇測定時間γとして記憶する。
【0091】
そして、下記式(
図11参照)により、上昇測定時間γに基づいて仮加熱調理時間Hγを求める。
Hγ=(γ-α)・[(Hβ-Hα)/(β-α)]+Hα--------式1
上記式中にα、β、Hβ、Hαは実験により求めた値である。
【0092】
つまり、小さな重量の魚を丸ごと調理容器Kに収納し、強火力の上バーナ7U及び下バーナ7Sにて加熱した状態で、容器温度Tsが設定計測温度Tcになるまでの時間αは、例えば、140秒であった。
そして、この小さな重量の魚が良好に焼きあがる調理の完了までに加熱を要する焼き時間Hαは、例えば、920秒であった。
【0093】
また、大きな重量の魚を丸ごと調理容器Kに収納し、強火力の上バーナ7U及び下バーナ7Sにて加熱した状態で、容器温度Tsが設定計測温度Tcになるまでの時間βは、例えば、160秒であった。
そして、この大きな重量の魚が良好に焼きあがる調理の完了までに加熱を要する焼き時間Hβは、例えば、1120秒であった。
【0094】
したがって、(Hγ-Hα)/(γ-α)と(Hβ-Hα)/(β-α)とが等しい関係にあり、その結果、上記式1にて、上昇測定時間γに応じた仮加熱調理時間Hγを求めることができ、求めた仮加熱調理時間Hγを開始温度Tbにて補正を行うことにより、上昇測定時間γである被調理物の加熱調理時間を求めることができる。
【0095】
(下降式判別処理の詳細)
下降式判別処理は、
図9及び
図10に示すように、上バーナ7Uを点火してから点火確認時間Taが経過すると、その時点の容器温度Tsを初期温度Tuとして記憶し、その後、設定計測時間Ht(例えば、30秒)が経過した時点の容器温度Tsを終期温度Twとして記憶する。
また、上バーナ7Uを点火させたときの容器温度Tsを、点火時温度Tjとして記憶する。
【0096】
そして、初期温度Tuと終期温度Twとの温度差Cを求め、下記式(
図12参照)により、温度差Cに基づいて仮加熱調理時間Ctを求める。
Ct=(C-A)・[(Bt-At)/(B-A)]+At--------式2
上記式中にA、B、At、Btは実験により求めた値である。
【0097】
つまり、小さな重量の魚を丸ごと調理容器Kに収納し、強火力の上バーナ7Uにて加熱した状態においては、初期温度Tuと終期温度Twとの温度差Aは、例えば、7℃であった。
そして、この小さな重量の魚が良好に焼きあがる調理の完了までに加熱を要する焼き時間Atは、例えば、800秒であった。
【0098】
また、大きな重量の魚を丸ごと調理容器Kに収納し、強火力の上バーナ7Uにて加熱した状態においては、初期温度Tuと終期温度Twとの温度差Bは、例えば、20℃であった。
そして、この大きな重量の魚が良好に焼きあがる調理の完了までに加熱を要する焼き時間Btは、例えば、1000秒であった。
【0099】
したがって、(Ct-At)/(C-A)と(Bt-At)/(B-A)とが等しい関係にあり、その結果、上記式2にて、温度差Cに応じた仮加熱調理時間Ctを求めることができる。そして、求めた仮加熱調理時間Ctを、点火時温度Tjが高いほど短くする等、点火時温度Tjにて補正を行うことにより、温度差Cである被調理物の加熱調理時間を求めることができる。
尚、高温用加熱処理が第2加熱処理を行うか、あるいは、第1加熱処理を行うかによって、加熱調理時間をさらに補正してもよい。
【0100】
(制御作動の詳細)
次に、運転制御部Wがオートメニューの「魚:姿焼き」や「魚:切り身」を実行する際の制御作動を、
図7のフローチャートに基づいて説明する。
先ず、点火指令が指令されると(#1)、容器温度Tsが開始許容温度Ty以下であるか否かを判定する(#2)。
【0101】
#2の処理にて、容器温度Tsが開始許容温度Ty以下であると判定した場合には、上バーナ7U及び下バーナ7Sを点火させる点火処理を実行する(#3)。
【0102】
その後、上昇式判別処理を実行し(#4)、続いて、容器温度Tsが設定目標温度Tm以上であるか否かを判定し(#5)、容器温度Tsが設定目標温度Tm以上になると、上述した第1加熱処理を実行する(#6)。
第1加熱処理を開始した後は、加熱調理時間が経過して加熱調理終了であるか否かを判定し(#7)、加熱調理終了でない場合には、第1加熱処理を繰り返し実行し、加熱調理終了である場合には、グリルバーナ7を消火する消火処理を実行する(#19)。
【0103】
#2の処理にて、容器温度Tsが開始許容温度Ty以下でない、つまり、容器温度Tsが開始許容温度Tyよりも高いと判別した場合には、続いて、容器温度Tsが設定目標温度Tmよりも高いか否かを判定する(#8)。
容器温度Tsが設定目標温度Tm以下であると判定した場合には、#1の処理に戻ることになる。
【0104】
#8の処理にて、容器温度Tsが設定目標温度Tmよりも高いと判定した場合には、下バーナ7Sを点火せずに、上バーナ7Uのみ点火させる点火処理を実行し(#9)、続いて、下降式判別処理を実行する(#10)。
その後、容器温度Tsが点火設定温度Tk以下であるか否かを判定し(#11)、容器温度Tsが点火設定温度Tk以下でない場合には、続いて、容器温度Tsが設定目標温度Tm以上であるか否かを判定し(#12)、容器温度Tsが設定目標温度Tm以上になると、上述した第2加熱処理を実行する(#13)。
【0105】
第2加熱処理を開始した後は、加熱調理時間が経過して加熱調理終了であるか否かを判定し(#14)、加熱調理終了でない場合には、第2加熱処理を繰り返し実行し、加熱調理終了である場合には、グリルバーナ7を消火する消火処理を実行する(#19)。
【0106】
#11の処理にて、容器温度Tsが点火設定温度Tk以下であると判定した場合には、下バーナ7Sを点火する点火処理を実行し(#15)、続いて、容器温度Tsが設定目標温度Tm以上であるか否かを判定し(#16)、容器温度Tsが設定目標温度Tm以上になると、上述した第1加熱処理を実行する(#17)。
【0107】
第1加熱処理を開始した後は、加熱調理時間が経過して加熱調理終了であるか否かを判定し(#18)、加熱調理終了でない場合には、第1加熱処理を繰り返し実行し、加熱調理終了である場合には、グリルバーナ7を消火する消火処理を実行する(#19)。
【0108】
〔別実施形態〕
次に、その他の別実施形態を列記する。
(1)上記実施形態では、本発明が適用される調理メニューとして、オートメニューにおける「魚:姿焼き」、「魚:切り身」を例示したが、本発明は、グリルバーナ7の燃焼制御により、容器温度Tsを設定目標温度Tmに維持する種々の調理メニューに適用できるものである。
【0109】
(2)上記実施形態では、調理容器Kとしてのプレートパン9Aを使用する形態において本発明を適用する場合を説明したが、本発明は、波型プレートパンや調理鍋等、種々の形態の調理容器Kを用いる調理メニューにも適用できる。
【0110】
(3)上記実施形態では、下バーナ7Sとして、調理容器Kの下側の中央部に配置される環状のバーナを例示したが、下バーナ7Sとしては、調理容器Kの下側の左右両側部に配置される一対の棒状のバーナを適用できる。
【0111】
(4)上記実施形態では、上昇式判別処理において、容器温度Tsが設定計測温度Tcに到達するまでの上昇測定時間γを測定する場合を例示したが、下降式判別処理と同様に、設定計測時間Htが経過するまでの温度差を求めるようにする等、容器温度Tsの上昇状態(上昇具合)を求める形態は種々変更できる。
【0112】
(5)上記実施形態では、下降式判別処理において、設定計測時間Htが経過するまでの温度差を求めるようにする場合を例示したが、例えば、初期温度Tuから設定温度低下するまでの時間を求めるようにする等、容器温度Tsの下降状態(下降具合)を求める形態は種々変更できる。
【0113】
(6)上記実施形態では、容器温度Tsを設定目標温度Tmに維持させるにあたり、上バーナ7Uや下バーナ7Sの火力を強弱させる場合を例示したが、例えば、上バーナ7Uや下バーナ7Sを燃焼状態と燃焼停止状態とに切換える形態を採用してもよい。
【0114】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0115】
6 グリル庫
7S 下バーナ
7U 上バーナ
11A 温度検出センサ
25 調理メニュー指令部
27 温度調整設定部
W 運転制御部