(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】建設機械の制御システム、建設機械、及び建設機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
E02F 3/43 20060101AFI20220826BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
E02F3/43 C
E02F9/20 Q
(21)【出願番号】P 2018532960
(86)(22)【出願日】2017-08-01
(86)【国際出願番号】 JP2017027910
(87)【国際公開番号】W WO2018030220
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-02-26
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2016158832
(32)【優先日】2016-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹原 和生
(72)【発明者】
【氏名】市原 将志
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 吉朗
【合議体】
【審判長】住田 秀弘
【審判官】佐藤 美紗子
【審判官】有家 秀郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-74319(JP,A)
【文献】特開2003-119818(JP,A)
【文献】再公表特許第2015/186179(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F3/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームと、バケット軸及び前記バケット軸と直交するチルト軸のそれぞれを中心に前記アームに対して回転可能なバケットとを含む作業機を備える建設機械の制御システムであって、
掘削対象の目標形状を示す目標施工地形と前記バケットの特定部位とがチルト回転方向において平行となるように、前記チルト軸を中心とする前記バケットの前記特定部位の角度を示すチルト角度を決定する角度決定部と、
前記角度決定部で決定された前記チルト角度に基づいて、
前記建設機械の運転者による操作装置の操作よりも優先して前記チルト軸を中心に前記バケットを回転させるチルトシリンダを
介入制御する作業機制御部と、を備える
建設機械の制御システム。
【請求項2】
前記角度決定部は、前記目標施工地形と前記バケットの前記特定部位とが平行となるように、前記バケット軸を中心とする前記バケットの前記特定部位の角度を示すバケット角度を決定し、
前記作業機制御部は、前記角度決定部で決定された前記バケット角度に基づいて、前記バケット軸を中心に前記バケットを回転させるバケットシリンダを制御する、
請求項1に記載の建設機械の制御システム。
【請求項3】
前記特定部位は、前記バケットの幅方向に設定される複数の規定点によって特定される、
請求項1又は請求項2に記載の建設機械の制御システム。
【請求項4】
前記バケットは、刃先と、前記刃先と接続される平坦な床面とを含み、
前記特定部位は、前記刃先及び前記床面を含む、
請求項1又は請求項2に記載の建設機械の制御システム。
【請求項5】
前記特定部位は、前記バケットの刃先である、
請求項4に記載の建設機械の制御システム。
【請求項6】
前記作業機制御部は、前記アームが作動する状態で、前記バケットの前記特定部位と前記目標施工地形との平行が維持されるように、前記チルトシリンダ及び前記バケットシリンダの少なくとも一方を
介入制御する、
請求項2に記載の建設機械の制御システム。
【請求項7】
上部旋回体と、
前記上部旋回体を支持する下部走行体と、
前記アームと前記バケットとを含み、前記上部旋回体に支持される作業機と、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の建設機械の制御システムと、を備える
建設機械。
【請求項8】
アームと、バケット軸及び前記バケット軸と直交するチルト軸のそれぞれを中心に前記アームに対して回転可能なバケットとを含む作業機を備える建設機械の制御方法であって、
掘削対象の目標形状を示す目標施工地形と前記バケットの特定部位とがチルト回転方向において平行となるように、前記チルト軸を中心とする前記バケットの前記特定部位の角度を示すチルト角度を決定することと、
決定された前記チルト角度に基づいて、
前記建設機械の運転者による操作装置の操作よりも優先して前記チルト軸を中心に前記バケットを回転させるチルトシリンダを
介入制御することと、を含む
建設機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の制御システム、建設機械、及び建設機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているような、チルト式バケットを有する作業機を備える建設機械が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建設機械の制御に係る技術分野において、建設機械の運転者による操作装置の操作よりも優先して作業機を制御する技術が知られている。本明細書においては、建設機械の運転者による操作装置の操作よりも優先して作業機を制御することを、介入制御、と呼ぶこととする。
【0005】
介入制御においては、掘削対象の目標形状を示す目標施工地形に対して、作業機のうちブーム、アーム、及びバケットの少なくとも一つの位置又は姿勢が制御される。介入制御が実施されることにより、目標施工地形に則った施工が実施される。
【0006】
チルト式バケットを有する建設機械においては、既存の介入制御に加えてチルト式バケットに固有の制御を実施しなければ、建設機械の作業効率が低下する。
【0007】
本発明の態様は、チルト式バケットを有する作業機を備える建設機械において、作業効率の低下を抑制できる建設機械の制御システム、建設機械、及び建設機械の制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に従えば、アームと、バケット軸及び前記バケット軸と直交するチルト軸のそれぞれを中心に前記アームに対して回転可能なバケットとを含む作業機を備える建設機械の制御システムであって、掘削対象の目標形状を示す目標施工地形と前記バケットの特定部位とが平行となるように、前記チルト軸を中心とする前記バケットの前記特定部位の角度を示すチルト角度を決定する角度決定部と、前記角度決定部で決定された前記チルト角度に基づいて、前記チルト軸を中心に前記バケットを回転させるチルトシリンダを制御する作業機制御部と、を備える建設機械の制御システムが提供される。
【0009】
本発明の第2の態様に従えば、上部旋回体と、前記上部旋回体を支持する下部走行体と、前記アームと前記バケットとを含み、前記上部旋回体に支持される作業機と、第1の態様の建設機械の制御システムと、を備える建設機械が提供される。
【0010】
本発明の第3の態様に従えば、アームと、バケット軸及び前記バケット軸と直交するチルト軸のそれぞれを中心に前記アームに対して回転可能なバケットとを含む作業機を備える建設機械の制御方法であって、掘削対象の目標形状を示す目標施工地形と前記バケットの特定部位とが平行となるように、前記チルト軸を中心とする前記バケットの前記特定部位の角度を示すチルト角度を決定することと、前記角度決定部で決定された前記チルト角度に基づいて、前記チルト軸を中心に前記バケットを回転させるチルトシリンダを制御することと、を含む建設機械の制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の態様によれば、チルト式バケットを有する作業機を備える建設機械において、作業効率の低下を抑制できる建設機械の制御システム、建設機械、及び建設機械の制御方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る建設機械の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るバケットの一例を示す側断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るバケットの一例を示す正面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る油圧ショベルを模式的に示す側面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る油圧ショベルを模式的に示す背面図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る油圧ショベルを模式的に示す平面図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係るバケットを模式的に示す側面図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係るバケットを模式的に示す正面図である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係る油圧システムの一例を示す模式図である。
【
図10】
図10は、本実施形態に係る油圧システムの一例を示す模式図である。
【
図11】
図11は、本実施形態に係る制御システムの一例を示す機能ブロック図である。
【
図12】
図12は、本実施形態に係るバケットに設定される規定点の一例を模式的に示す図である。
【
図13】
図13は、本実施形態に係る目標施工データの一例を示す模式図である。
【
図14】
図14は、本実施形態に係る目標施工地形の一例を示す模式図である。
【
図15】
図15は、本実施形態に係るチルト動作平面の一例を示す模式図である。
【
図16】
図16は、本実施形態に係るチルト動作平面の一例を示す模式図である。
【
図17】
図17は、本実施形態に係るバケットの刃先と目標施工地形との関係を模式的に示す図である。
【
図18】
図18は、本実施形態に係るチルト回転についての介入制御を説明するための模式図である。
【
図19】
図19は、本実施形態に係る動作距離と目標速度との関係の一例を示す図である。
【
図20】
図20は、本実施形態に係るバケットのチルト角度の調整方法の一例を示すフローチャートである。
【
図21】
図21は、本実施形態に係るバケットのチルト角度の調整方法の一例を説明するための模式図である。
【
図22】
図22は、本実施形態に係る作業機の動作の一例を模式的に示す図である。
【
図23】
図23は、本実施形態に係る作業機の動作の一例を模式的に示す図である。
【
図24】
図24は、本実施形態に係るバケットのチルト角度の調整方法の一例を示すフローチャートである。
【
図25】
図25は、本実施形態に係るバケットのチルト角度の調整方法の一例を説明するための模式図である。
【
図26】
図26は、本実施形態に係るバケットのチルト角度の調整方法の一例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0014】
以下の説明においては、3次元のグローバル座標系(Xg,Yg,Zg)、及び3次元の車体座標系(Xm,Ym,Zm)を規定して、各部の位置関係について説明する。
【0015】
グローバル座標系とは、地球に固定された原点を基準とする座標系をいう。グローバル座標系は、GNSS(Global Navigation Satellite System)によって規定される座標系である。GNSSとは、全地球航法衛星システムをいう。全地球航法衛星システムの一例として、GPS(Global Positioning System)が挙げられる。GNSSは、複数の測位衛星を有する。GNSSは、緯度、経度、及び高度の座標データで規定される位置を検出する。
【0016】
グローバル座標系は、水平面内のXg軸と、水平面内においてXg軸と直交するYg軸と、Xg軸及びYg軸と直交するZg軸とによって規定される。Xg軸と平行な方向をXg軸方向とし、Yg軸と平行な方向をYg軸方向とし、Zg軸と平行な方向をZg軸方向とする。また、Xg軸を中心とする回転又は傾斜方向をθXg方向とし、Yg軸を中心とする回転又は傾斜方向をθYg方向とし、Zg軸を中心とする回転又は傾斜方向をθZg方向とする。Zg軸方向は鉛直方向である。
【0017】
車体座標系とは、建設機械に固定された原点を基準とする座標系をいう。
【0018】
車体座標系は、建設機械の車体に固定された原点を基準として一方向に延在するXm軸と、Xm軸と直交するYm軸と、Xm軸及びYm軸と直交するZm軸とによって規定される。Xm軸と平行な方向をXm軸方向とし、Ym軸と平行な方向をYm軸方向とし、Zm軸と平行な方向をZm軸方向とする。また、Xm軸を中心とする回転又は傾斜方向をθXm方向とし、Ym軸を中心とする回転又は傾斜方向をθYm方向とし、Zm軸を中心とする回転又は傾斜方向をθZm方向とする。Xm軸方向は建設機械の前後方向であり、Ym軸方向は建設機械の車幅方向であり、Zm軸方向は建設機械の上下方向である。
【0019】
第1実施形態.
[建設機械]
図1は、本実施形態に係る建設機械100の一例を示す斜視図である。本実施形態においては、建設機械100が油圧ショベルである例について説明する。以下の説明においては、建設機械100を適宜、油圧ショベル100、と称する。
【0020】
図1に示すように、油圧ショベル100は、油圧により作動する作業機1と、作業機1を支持する車体である上部旋回体2と、上部旋回体2を支持する走行装置である下部走行体3と、作業機1を操作するための操作装置30と、作業機1を制御する制御装置50とを備える。上部旋回体2は、下部走行体3に支持された状態で旋回軸RXを中心に旋回可能である。
【0021】
上部旋回体2は、オペレータが搭乗する運転室4と、エンジン及び油圧ポンプが収容される機械室5とを有する。運転室4は、オペレータが着座する運転席4Sを有する。機械室5は、運転室4の後方に配置される。
【0022】
下部走行体3は、一対の履帯3Cを有する。履帯3Cの回転により、油圧ショベル100が走行する。なお、下部走行体3がタイヤを有してもよい。
【0023】
作業機1は、上部旋回体2に支持される。作業機1は、ブームピンを介して上部旋回体2に連結されるブーム6と、アームピンを介してブーム6に連結されるアーム7と、バケットピン及びチルトピンを介してアーム7に連結されるバケット8とを有する。バケット8は、刃先9を有する。本実施形態において、バケット8の刃先9は、バケット8に設けられたストレート形状の刃の先端部である。なお、バケット8の刃先9は、バケット8に設けられた凸形状の刃の先端部でもよい。
【0024】
ブーム6は、回転軸であるブーム軸AX1を中心に上部旋回体2に対して回転可能である。アーム7は、回転軸であるアーム軸AX2を中心にブーム6に対して回転可能である。バケット8は、回転軸であるバケット軸AX3及びバケット軸AX3と直交する回転軸であるチルト軸AX4のそれぞれを中心にアーム7に対して回転可能である。回転軸AX1と回転軸AX2と回転軸AX3とは平行である。回転軸AX1,AX2,AX3と旋回軸RXと平行な軸とは直交する。回転軸AX1,AX2,AX3は、車体座標系のYm軸と平行である。旋回軸RXは、車体座標系のZm軸と平行である。回転軸AX1,AX2,AX3と平行な方向は、上部旋回体2の車幅方向を示す。旋回軸RXと平行な方向は、上部旋回体2の上下方向を示す。回転軸AX1,AX2,AX3及び旋回軸RXの両方と直交する方向は、上部旋回体2の前後方向を示す。運転席4Sに着座したオペレータを基準として作業機1が存在する方向が前方である。
【0025】
作業機1は、油圧シリンダ10が発生する動力により作動する。油圧シリンダ10は、ブーム6を作動させるブームシリンダ11と、アーム7を作動させるアームシリンダ12と、バケット8を作動させるバケットシリンダ13及びチルトシリンダ14とを含む。ブームシリンダ11は、ブーム軸AX1を中心にブーム6を回転させる動力を発生可能である。アームシリンダ12は、アーム軸AX2を中心にアーム7を回転させる動力を発生可能である。バケットシリンダ13は、バケット軸AX3を中心にバケット8を回転させる動力を発生可能である。チルトシリンダ14は、チルト軸AX4を中心にバケット8を回転させる動力を発生可能である。
【0026】
以下の説明においては、バケット軸AX3を中心とするバケット8の回転を適宜、バケット回転、と称し、チルト軸AX4を中心とするバケット8の回転を適宜、チルト回転、と称する。
【0027】
また、作業機1は、ブームシリンダ11の駆動量を示すブームストロークを検出するブームストロークセンサ16と、アームシリンダ12の駆動量を示すアームストロークを検出するアームストロークセンサ17と、バケットシリンダ13の駆動量を示すバケットストロークを検出するバケットストロークセンサ18と、チルトシリンダ14の駆動量を示すチルトストロークを検出するチルトストロークセンサ19とを有する。ブームストロークセンサ16は、ブームシリンダ11に配置される。アームストロークセンサ17は、アームシリンダ12に配置される。バケットストロークセンサ18は、バケットシリンダ13に配置される。チルトストロークセンサ19は、チルトシリンダ14に配置される。
【0028】
操作装置30は、運転室4に配置される。操作装置30は、油圧ショベル100のオペレータに操作される操作部材を含む。オペレータは、操作装置30を操作して、作業機1を作動させる。本実施形態において、操作装置30は、右作業機操作レバー30Rと、左作業機操作レバー30Lと、チルト操作レバー30Tと、操作ペダル30Fとを含む。
【0029】
中立位置にある右作業機操作レバー30Rが前方に操作されると、ブーム6が下げ動作し、後方に操作されると、ブーム6が上げ動作する。中立位置にある右作業機操作レバー30Rが右方に操作されると、バケット8がダンプし、左方に操作されると、バケット8が掘削する。
【0030】
中立位置にある左作業機操作レバー30Lが前方に操作されると、アーム7がダンプし、後方に操作されると、アーム7が掘削する。中立位置にある左作業機操作レバー30Lが右方に操作されると、上部旋回体2が右旋回し、左方に操作されると、上部旋回体2が左旋回する。
【0031】
なお、右作業機操作レバー30R及び左作業機操作レバー30Lの操作方向と、作業機1の動作方向及び上部旋回体2の旋回方向との関係は、上述の関係でなくてもよい。
【0032】
制御装置50は、コンピュータシステムを含む。制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサと、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含む記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。
【0033】
[バケット]
次に、本実施形態に係るバケット8について説明する。
図2は、本実施形態に係るバケット8の一例を示す側断面図である。
図3は、本実施形態に係るバケット8の一例を示す正面図である。本実施形態において、バケット8は、チルト式バケットである。
【0034】
図2及び
図3に示すように、作業機1は、バケット軸AX3及びバケット軸AX3と直交するチルト軸AX4のそれぞれを中心にアーム7に対して回転可能なバケット8を有する。バケット8は、バケットピン8Bを介してアーム7に回転可能に連結される。また、バケット8は、チルトピン8Tを介してアーム7に回転可能に支持される。
【0035】
バケット8は、接続部材90を介して、アーム7の先端部に接続される。バケットピン8Bは、アーム7と接続部材90とを連結する。チルトピン8Tは、接続部材90とバケット8とを連結する。バケット8は、接続部材90を介して、アーム7に回転可能に接続される。
【0036】
バケット8は、底板81と、背板82と、上板83と、側板84と、側板85とを含む。バケット8の開口部86は、底板81と上板83と側板84と側板85とによって規定される。刃先9は、底板81に設けられる。底板81は、刃先9と接続される平坦な床面89を有する。床面89は、底板81の底面である。床面89は、実質的に平面である。
【0037】
バケット8は、上板83の上部に設けられたブラケット87を有する。ブラケット87は、上板83の前後位置に設置される。ブラケット87は、接続部材90及びチルトピン8Tと連結される。
【0038】
接続部材90は、プレート部材91と、プレート部材91の上面に設けられたブラケット92と、プレート部材91の下面に設けられたブラケット93とを有する。ブラケット92は、アーム7及び第2リンクピン95Pと連結される。ブラケット93はブラケット87の上部に設置され、チルトピン8T及びブラケット87と連結される。
【0039】
バケットピン8Bは、接続部材90のブラケット92とアーム7の先端部とを連結する。チルトピン8Tは、接続部材90のブラケット93とバケット8のブラケット87とを連結する。接続部材90及びバケット8は、アーム7に対してバケット軸AX3を中心に回転可能である。バケット8は、接続部材90に対してチルト軸AX4を中心に回転可能である。
【0040】
作業機1は、第1リンクピン94Pを介してアーム7に回転可能に接続される第1リンク部材94と、第2リンクピン95Pを介してブラケット92に回転可能に接続される第2リンク部材95とを有する。第1リンク部材94の基端部が第1リンクピン94Pを介してアーム7に接続される。第2リンク部材95の基端部が第2リンクピン95Pを介してブラケット92に接続される。第1リンク部材94の先端部と第2リンク部材95の先端部とが、バケットシリンダトップピン96を介して連結される。
【0041】
バケットシリンダ13の先端部は、バケットシリンダトップピン96を介して、第1リンク部材94の先端部及び第2リンク部材95の先端部と回転可能に接続される。バケットシリンダ13が伸縮するように作動すると、接続部材90はバケット8と一緒にバケット軸AX3を中心に回転する。
【0042】
チルトシリンダ14は、接続部材90に設けられたブラケット97及びバケット8に設けられたブラケット88のそれぞれに接続される。チルトシリンダ14のロッドがピンを介してブラケット97に接続される。チルトシリンダ14の本体部がピンを介してブラケット88に接続される。チルトシリンダ14が伸縮するように作動すると、バケット8はチルト軸AX4を中心に回転する。なお、本実施形態に係るチルトシリンダ14の接続構造は一例でありこれに限定されない。
【0043】
このように、バケット8は、バケットシリンダ13の作動により、バケット軸AX3を中心に回転する。バケット8は、チルトシリンダ14の作動により、チルト軸AX4を中心に回転する。バケット8がバケット軸AX3を中心に回転すると、チルトピン8Tはバケット8と一緒に回転する。
【0044】
[検出システム]
次に、本実施形態に係る油圧ショベル100の検出システム400について説明する。
図4は、本実施形態に係る油圧ショベル100を模式的に示す側面図である。
図5は、本実施形態に係る油圧ショベル100を模式的に示す背面図である。
図6は、本実施形態に係る油圧ショベル100を模式的に示す平面図である。
図7は、本実施形態に係るバケット8を模式的に示す側面図である。
図8は、本実施形態に係るバケット8を模式的に示す正面図である。
【0045】
図4、
図5、及び
図6に示すように、検出システム400は、上部旋回体2の位置を算出する位置演算装置20と、作業機1の角度を算出する作業機角度演算装置24とを有する。
【0046】
位置演算装置20は、上部旋回体2の位置を検出する車体位置演算器21と、上部旋回体2の姿勢を検出する姿勢演算器22と、上部旋回体2の方位を検出する方位演算器23とを含む。
【0047】
車体位置演算器21は、GPS受信機を含む。車体位置演算器21は、上部旋回体2に設けられる。車体位置演算器21は、グローバル座標系で規定される上部旋回体2の絶対位置Pgを検出する。上部旋回体2の絶対位置Pgは、Xg軸方向の座標データ、Yg軸方向の座標データ、及びZg軸方向の座標データを含む。
【0048】
上部旋回体2に複数のGPSアンテナ21Aが設けられる。GPSアンテナ21Aは、GPS衛星から電波を受信して、受信した電波に基づいて生成した信号を車体位置演算器21に出力する。車体位置演算器21は、GPSアンテナ21Aから供給された信号に基づいて、グローバル座標系で規定されるGPSアンテナ21Aが設置されている位置Prを検出する。車体位置演算器21は、GPSアンテナ21Aが設置されている位置Prに基づいて、上部旋回体2の絶対位置Pgを検出する。
【0049】
GPSアンテナ21Aは、車幅方向に2つ設けられる。車体位置演算器21は、一方のGPSアンテナ21Aが設置されている位置Pra及び他方のGPSアンテナ21Aが設置されている位置Prbのそれぞれを検出する。車体位置演算器21Aは、位置Pra及び位置Prbの少なくとも一方に基づいて演算処理を実施して、上部旋回体2の絶対位置Pgを算出する。本実施形態において、上部旋回体2の絶対位置Pgは、位置Praである。なお、上部旋回体2の絶対位置Pgは、位置Prbでもよいし、位置Praと位置Prbとの間の位置でもよい。
【0050】
姿勢演算器22は、慣性計測装置(Inertial Measurement Unit:IMU)を含む。姿勢演算器22は、上部旋回体2に設けられる。姿勢演算器22は、グローバル座標系で規定される水平面(XgYg平面)に対する上部旋回体2の傾斜角度を算出する。水平面に対する上部旋回体2の傾斜角度は、車幅方向における上部旋回体2の傾斜角度を示すロール角度θ1と、前後方向における上部旋回体2の傾斜角度を示すピッチ角度θ2とを含む。
【0051】
方位演算器23は、一方のGPSアンテナ21Aが設置されている位置Praと他方のGPSアンテナ21Aが設置されている位置Prbとに基づいて、グローバル座標系で規定される基準方位に対する上部旋回体2の方位を算出する。基準方位は、例えば北である。方位演算器23は、位置Praと位置Prbとに基づいて演算処理を実施して、基準方位に対する上部旋回体2の方位を算出する。方位演算器23は、位置Praと位置Prbとを結ぶ直線を算出し、算出した直線と基準方位とがなす角度に基づいて、基準方位に対する上部旋回体2の方位を算出する。基準方位に対する上部旋回体2の方位は、基準方位と上部旋回体2の方位とがなす角度を示すヨー角度θ3を含む。
【0052】
図4、
図7、及び
図8に示すように、作業機角度演算装置24は、ブームストロークセンサ16で検出されたブームストロークに基づいて、車体座標系のZm軸に対するブーム6の傾斜角度を示すブーム角度αを算出する。作業機角度演算装置24は、アームストロークセンサ17で検出されたアームストロークに基づいて、ブーム6に対するアーム7の傾斜角度を示すアーム角度βを算出する。作業機角度演算装置24は、バケットストロークセンサ18で検出されたバケットストロークに基づいて、アーム7に対するバケット8の刃先9の傾斜角度を示すバケット角度γを算出する。作業機角度演算装置24は、チルトストロークセンサ19で検出されたチルトストロークに基づいて、車体座標系のXmYm平面に対するバケット8の傾斜角度を示すチルト角度δを算出する。作業機角度演算装置24は、ブームストロークセンサ16で検出されたブームストローク、アームストロークセンサ17で検出されたアームストローク、及びバケットストロークセンサ18で検出されたチルトストロークに基づいて、車体座標系のXmYm平面に対するチルト軸AX4の傾斜角度を示すチルト軸角度εを算出する。
【0053】
なお、ブーム角度α、アーム角度β、バケット角度γ、チルト角度δ、及びチルト軸角度εは、ストロークセンサを用いずに、例えば、作業機10に設けられた角度センサにより検出されてもよい。また、ステレオカメラ又はレーザスキャナで作業機10の角度が光学的に検出され、その検出結果を使って、ブーム角度α、アーム角度β、バケット角度γ、チルト角度δ、及びチルト軸角度εが算出されてもよい。
【0054】
[油圧システム]
次に、本実施形態に係る油圧ショベル100の油圧システム300の一例について説明する。
図9及び
図10は、本実施形態に係る油圧システム300の一例を示す模式図である。ブームシリンダ11、アームシリンダ12、バケットシリンダ13、及びチルトシリンダ14を含む油圧シリンダ10は、油圧システム300により駆動する。油圧システム300は、油圧シリンダ10に作動油を供給して、油圧シリンダ10を駆動する。油圧システム300は、流量制御弁25を有する。流量制御弁25は、油圧シリンダ10に対する作動油の供給量及び作動油が流れる方向を制御する。油圧シリンダ10は、キャップ側油室10A及びロッド側油室10Bを有する。キャップ側油室10Aは、シリンダヘッドカバーとピストンとの間の空間である。ロッド側油室10Bは、ピストンロッドが配置される空間である。油路35Aを介してキャップ側油室10Aに作動油が供給されることにより、油圧シリンダ10が伸びる。油路35Bを介してロッド側油室10Bに作動油が供給されることにより、油圧シリンダ10が縮む。
【0055】
図9は、アームシリンダ12を作動する油圧システム300の一例を示す模式図である。油圧システム300は、作動油を供給する可変容量型のメイン油圧ポンプ31と、パイロット油を供給するパイロット圧ポンプ32と、パイロット油が流れる油路33A,33Bと、油路33A,33Bに配置された圧力センサ34A,34Bと、流量制御弁25に作用するパイロット圧を調整する制御弁37A,37Bと、流量制御弁25に対するパイロット圧を調整する右作業機操作レバー30R及び左作業機操作レバー30Lを含む操作装置30と、制御装置50とを備える。操作装置30の右作業機操作レバー30R及び左作業機操作レバー30Lは、パイロット油圧方式の操作装置である。
【0056】
メイン油圧ポンプ31から供給された作動油は、流量制御弁25を介して、アームシリンダ12に供給される。流量制御弁25は、ロッド状のスプールを軸方向に移動して作動油が流れる方向を切り替えるスライドスプール方式の流量制御弁である。スプールが軸方向に移動することにより、アームシリンダ12のキャップ側油室10Aに対する作動油の供給と、ロッド側油室10Bに対する作動油の供給とが切り替わる。また、スプールが軸方向に移動することにより、アームシリンダ12に対する単位時間当たりの作動油の供給量が調整される。アームシリンダ12に対する作動油の供給量が調整されることにより、シリンダ速度が調整される。
【0057】
流量制御弁25は、操作装置30によって操作される。パイロット圧ポンプ32から送出されたパイロット油が操作装置30に供給される。なお、メイン油圧ポンプ31から送出され、減圧弁によって減圧されたパイロット油が操作装置30に供給されてもよい。操作装置30は、パイロット圧調整弁を含む。操作装置30の操作量に基づいて制御弁37A,37Bが作動され、流量制御弁25のスプールに作用するパイロット圧が調整される。パイロット圧によって、流量制御弁25が駆動される。操作装置30によりパイロット圧が調整されることによって、軸方向におけるスプールの移動量、移動速度、及び移動方向が調整される。
【0058】
流量制御弁25は、第1受圧室及び第2受圧室を有する。左作業機操作レバー30Lが中立位置より一方側に傾動するように操作され、油路33Aのパイロット圧によってスプールが移動すると、メイン油圧ポンプ31からの作動油が第1受圧室に供給され、油路35Aを介してキャップ側油室10Aに作動油が供給される。左作業機操作レバー30Lが中立位置より他方側に傾動するように操作され、油路33Bのパイロット圧によってスプールが移動すると、メイン油圧ポンプ31からの作動油が第2受圧室に供給され、油路35Bを介してロッド側油室10Bに作動油が供給される。
【0059】
圧力センサ34Aは、油路33Aのパイロット圧を検出する。圧力センサ34Bは、油路33Bのパイロット圧を検出する。圧力センサ33A,33Bの検出信号は、制御装置50に出力される。介入制御を実施するとき、制御装置50は、制御弁37A,37Bに制御信号を出力して、パイロット圧を調整する。
【0060】
ブームシリンダ11及びバケットシリンダ13を作動する油圧システム300は、アームシリンダ12を作動する油圧システム300と同様の構成である。ブームシリンダ11及びバケットシリンダ13を作動する油圧システム300についての詳細な説明は省略する。なお、ブーム6について介入制御を実施するために、ブームシリンダ11に接続される油路33Aに、ブーム6の上げ動作に介入する介入用制御弁が接続されてもよい。
【0061】
なお、操作装置30の右作業機操作レバー30R及び左作業機操作レバー30Lは、パイロット油圧方式でなくてもよい。右作業機操作レバー30R及び左作業機操作レバー30Lは、右作業機操作レバー30R及び左作業機操作レバー30Lの操作量(傾動角)に基づいて電気信号を制御装置50に出力して、制御装置50の制御信号に基づいて流量制御弁25を直接的に制御する電子レバー方式でもよい。
【0062】
図10は、チルトシリンダ14を作動する油圧システム300の一例を模式的に示す図である。油圧システム300は、チルトシリンダ14に対する作動油の供給量を調整する流量制御弁25と、流量制御弁25に作用するパイロット圧を調整する制御弁37A,37Bと、パイロット圧ポンプ32と操作ペダル30Fとの間に配置される制御弁39と、操作装置30のチルト操作レバー30T及び操作ペダル30Fと、制御装置50とを備える。本実施形態において、操作装置30の操作ペダル30Fは、パイロット油圧方式の操作装置である。操作装置30のチルト操作レバー30Tは、電子レバー方式の操作装置である。チルト操作レバー30Tは、右作業機操作レバー30R及び左作業機操作レバー30Lに設けられた操作ボタンを含む。
【0063】
操作装置30の操作ペダル30Fは、パイロット圧ポンプ32に接続される。また、操作ペダル30Fは、制御弁37Aから送出されるパイロット油が流れる油路38Aにシャトル弁36Aを介して接続される。また、操作ペダル30Fは、制御弁37Bから送出されるパイロット油が流れる油路38Bにシャトル弁36Bを介して接続される。操作ペダル30Fが操作されることにより、操作ペダル30Fとシャトル弁36Aとの間の油路33Aの圧力、及び操作ペダル30Fとシャトル弁36Bとの間の油路33Bの圧力が調整される。
【0064】
チルト操作レバー30Tが操作されることにより、チルト操作レバー30Tの操作により生成された操作信号が制御装置50に出力される。制御装置50は、チルト操作レバー30Tから出力された操作信号に基づいて制御信号を生成し、制御弁37A,37Bを制御する。制御弁37A,37Bは、電磁比例制御弁である。制御弁37Aは、制御信号に基づいて、油路38Aを開閉する。制御弁37Bは、制御信号に基づいて、油路38Bを開閉する。
【0065】
バケット8のチルト回転について介入制御を実施しないとき、操作装置30の操作量に基づいて、パイロット圧が調整される。バケット8のチルト回転について介入制御を実施するとき、制御装置50は、制御弁37A,37Bに制御信号を出力して、パイロット圧を調整する。
【0066】
[制御システム]
次に、本実施形態に係る油圧ショベル100の制御システム200について説明する。
図11は、本実施形態に係る制御システム200の一例を示す機能ブロック図である。
【0067】
図11に示すように、制御システム200は、作業機1を制御する制御装置50と、位置演算装置20と、作業機角度演算装置24と、制御弁37(37A,37B)と、目標施工データ生成装置70とを備える。
【0068】
位置演算装置20は、車体位置演算器21と、姿勢演算器22と、方位演算器23とを有する。位置演算装置20は、上部旋回体2の絶対位置Pg、ロール角度θ1及びピッチ角度θ2を含む上部旋回体2の姿勢、及びヨー角度θ3を含む上部旋回体2の方位を検出する。
【0069】
作業機角度演算装置24は、ブーム角度α、アーム角度β、バケット角度γ、チルト角度δ、及びチルト軸角度εを含む作業機1の角度を検出する。
【0070】
制御弁37(37A,37B)は、チルトシリンダ14に対する作動油の供給量を調整する。制御弁37は、制御装置50からの制御信号に基づいて作動する。
【0071】
目標施工データ生成装置70は、コンピュータシステムを含む。目標施工データ生成装置70は、施工エリアの目標形状である目標地形を示す目標施工データを生成する。目標施工データは、作業機1による施工後に得られる3次元の目標形状を示す。
【0072】
目標施工データ生成装置70は、油圧ショベル100の遠隔地に設けられる。目標施工データ生成装置70は、例えば施工管理会社の設備に設置される。なお、目標施工データ生成装置70は、油圧ショベル100の製造会社又はレンタル会社に保有されてもよい。目標施工データ生成装置70と制御装置50とは無線通信可能である。目標施工データ生成装置70で生成された目標施工データは、無線で制御装置50に送信される。
【0073】
なお、目標施工データ生成装置70と制御装置50とが有線で接続され、目標施工データ生成装置70から制御装置50に目標施工データが送信されてもよい。なお、目標施工データ生成装置70が目標施工データを記憶した記録媒体を含み、制御装置50が、記録媒体から目標施工データを読み込み可能な装置を有してもよい。
【0074】
なお、目標施工データ生成装置70は、油圧ショベル100に設けられてもよい。施工を管理する外部の管理装置から目標施工データが有線又は無線で油圧ショベル100の目標施工データ生成装置70に供給され、目標施工データ生成装置70が供給された目標施工データを記憶してもよい。
【0075】
制御装置50は、車体位置データ取得部51と、作業機角度データ取得部52と、規定点位置データ算出部53と、目標施工地形生成部54と、チルトデータ算出部55と、チルト目標地形算出部56と、角度決定部57と、作業機制御部58と、目標速度決定部59と、記憶部60と、入出力部61とを有する。
【0076】
車体位置データ取得部51、作業機角度データ取得部52、規定点位置データ算出部53、目標施工地形生成部54、チルトデータ算出部55、チルト目標地形算出部56、角度決定部57、作業機制御部58、及び目標速度決定部59のそれぞれの機能は、制御装置50のプロセッサによって発揮される。記憶部60の機能は、制御装置50の記憶装置によって果たされる。入出力部61の機能は、制御装置50の入出力インターフェース装置によって果たされる。入出力部61は、位置演算装置20、作業機角度演算装置24、制御弁37、及び目標施工データ生成装置70と接続され、車体位置データ取得部51、作業機角度データ取得部52、規定点位置データ算出部53、目標施工地形生成部54、チルトデータ算出部55、チルト目標地形算出部56、角度決定部57、作業機制御部58、目標速度決定部59、及び記憶部60との間でデータ通信する。
【0077】
記憶部60は、作業機データを含む油圧ショベル100の諸元データを記憶する。
【0078】
車体位置データ取得部51は、位置演算装置20から入出力部61を介して車体位置データを取得する。車体位置データは、グローバル座標系で規定される上部旋回体2の絶対位置Pg、ロール角度θ1及びピッチ角度θ2を含む上部旋回体2の姿勢、及びヨー角度θ3を含む上部旋回体2の方位を含む。
【0079】
作業機角度データ取得部52は、作業機角度演算装置24から入出力部61を介して作業機角度データを取得する。作業機角度データは、ブーム角度α、アーム角度β、バケット角度γ、チルト角度δ、及びチルト軸角度εを含む作業機1の角度を検出する。
【0080】
規定点位置データ算出部53は、車体位置データ取得部51で取得された車体位置データと、作業機角度データ取得部52で取得された作業機角度データと、記憶部60に記憶されている作業機データとに基づいて、バケット8に設定される規定点RPの位置データを算出する。
【0081】
図4及び
図7に示すように、作業機データは、ブーム長さL1、アーム長さL2、バケット長さL3、チルト長さL4、及びバケット幅L5を含む。ブーム長さL1は、ブーム軸AX1とアーム軸AX2との距離である。アーム長さL2は、アーム軸AX2とバケット軸AX3との距離である。バケット長さL3は、バケット軸AX3とバケット8の刃先9との距離である。チルト長さL4は、バケット軸AX3とチルト軸AX4との距離である。バケット幅L5は、側板84と側板85との距離である。
【0082】
図12は、本実施形態に係るバケット8に設定される規定点RPの一例を模式的に示す図である。
図12に示すように、バケット8には、チルトバケット制御に使用される規定点RPが複数設定される。規定点RPは、バケット8の刃先9及び床面89を含むバケット8の外面に設定される。規定点RPは、刃先9においてバケット幅方向に複数設定される。また、規定点RPは、床面89を含むバケット8の外面において複数設定される。
【0083】
また、作業機データは、バケット8の形状及び寸法を示すバケット外形データを含む。バケット外形データは、バケット幅L5を示すバケット8の幅データを含む。また、バケット外形データは、バケット8の外面の輪郭データを含むバケット8の外面データを含む。また、バケット外形データは、バケット8の刃先9を基準としたバケット8の複数の規定点RPの座標データを含む。
【0084】
規定点位置データ算出部53は、規定点RPの位置データを算出する。規定点位置データ算出部53は、車体座標系における上部旋回体2の基準位置P0に対する複数の規定点RPそれぞれの相対位置を算出する。また、規定点位置データ算出部53は、グローバル座標系における複数の規定点RPそれぞれの絶対位置を算出する。
【0085】
規定点位置データ算出部53は、ブーム長さL1、アーム長さL2、バケット長さL3、チルト長さL4、及びバケット外形データを含む作業機データと、ブーム角度α、アーム角度β、バケット角度γ、チルト角度δ、及びチルト軸角度εを含む作業機角度データに基づいて、車体座標系における上部旋回体2の基準位置P0に対するバケット8の複数の規定点RPそれぞれの相対位置を算出することができる。
図4に示すように、上部旋回体2の基準位置P0は、上部旋回体2の旋回軸RXに設定される。なお、上部旋回体2の基準位置P0は、ブーム軸AX1に設定されてもよい。
【0086】
また、規定点位置データ算出部53は、位置演算装置20で検出された上部旋回体2の絶対位置Pgと、上部旋回体2の基準位置P0とバケット8との相対位置とに基づいて、グローバル座標系におけるバケット8の絶対位置Paを算出可能である。絶対位置Pgと基準位置P0との相対位置は、油圧ショベル100の諸元データから導出される既知データである。規定点位置データ算出部53は、上部旋回体2の絶対位置Pgを含む車体位置データと、上部旋回体2の基準位置P0とバケット8との相対位置と、作業機データと、作業機角度データとに基づいて、グローバル座標系におけるバケット8の複数の規定点RPそれぞれの絶対位置を算出することができる。
【0087】
目標施工地形生成部54は、目標施工データ生成装置70から供給され記憶部60に記憶された目標施工データに基づいて、掘削対象の目標形状を示す目標施工地形CSを生成する。目標施工データ生成装置70は、目標施工データとして、3次元目標地形データを目標施工地形生成部54に供給してもよいし、目標形状の一部を示す複数のラインデータ又は複数のポイントデータを目標施工地形生成部54に供給してもよい。本実施形態においては、目標施工データ生成装置70は、目標施工データとして、目標形状の一部を示すラインデータを目標施工地形生成部54に供給することとする。
【0088】
図13は、本実施形態に係る目標施工データCDの一例を示す模式図である。
図13に示すように、目標施工データCDは、施工エリアの目標地形を示す。目標地形は、三角形ポリゴンによってそれぞれ表現される複数の目標施工地形CSを含む。複数の目標施工地形CSのそれぞれは、作業機1による掘削対象の目標形状を示す。目標施工データCDにおいて、目標施工地形CSのうちバケット8との垂直距離が最も近い点APが規定される。また、目標施工データCDにおいて、点AP及びバケット8を通りバケット軸AX3と直交する作業機動作平面WPが規定される。作業機動作平面WPは、ブームシリンダ11、アームシリンダ12、及びバケットシリンダ13の少なくとも一つの作動によりバケット8の刃先9が移動する動作平面であり、XZ平面と平行である。規定点位置データ算出部53は、目標施工地形CS及びバケット8の外形データに基づいて、目標施工地形CSの点APに対して垂直距離が最も近くに規定される規定点RPの位置データを算出する。規定点RPを求めるとき、少なくともバケット8の幅に関係するデータが使用されればよい。また、規定点RPはオペレータより指定されてもよい。
【0089】
目標施工地形生成部54は、作業機動作平面WPと目標施工地形CSとの交線であるラインLXを取得する。また、目標施工地形生成部54は、点APを通り目標施工地形CSにおいてラインLXと直交するラインLYを取得する。ラインLYは、横動作平面VPと目標施工地形CSとの交線を示す。横動作平面VPとは、作業機動作平面WPと直交し、点APを通過する平面である。
【0090】
図14は、本実施形態に係る目標施工地形CSの一例を示す模式図である。目標施工地形生成部54は、ラインLX及びラインLYを取得して、ラインLX及びラインLYに基づいて、掘削対象の目標形状を示す目標施工地形CSを生成する。目標施工地形CSをバケット8で掘削する場合、制御装置50は、バケット8を通る作業機動作平面WPと目標施工地形CSとの交線であるラインLXに沿ってバケット8を移動させる。
【0091】
チルトデータ算出部55は、チルトデータとして、バケット8の規定点RPを通りチルト軸AX4と直交するチルト動作平面TPを算出する。
【0092】
図15及び
図16は、本実施形態に係るチルト動作平面TPの一例を示す模式図である。
図15は、チルト軸AX4が目標施工地形CSと平行であるときのチルト動作平面TPを示す。
図16は、チルト軸AX4が目標施工地形CSと非平行であるときのチルト動作平面TPを示す。
【0093】
図15及び
図16に示すように、チルト動作平面TPとは、バケット8に規定されている複数の規定点RPから選択された規定点RPrを通りチルト軸AX4と直交する動作平面をいう。規定点RPrとして、複数の規定点RPのうち、目標施工地形CSとの距離が最も近い規定点RPが選択される。
【0094】
図15及び
図16は、一例として、刃先9に設定された規定点RPrを通るチルト動作平面TPを示す。チルト動作平面TPは、チルトシリンダ14の作動によりバケット8の規定点RPr(刃先9)が移動する動作平面である。ブームシリンダ11、アームシリンダ12、及びバケットシリンダ13の少なくとも一つが作動し、チルト軸AX4の向きを示すチルト軸角度εが変化すると、チルト動作平面TPの傾きも変化する。
【0095】
上述のように、作業機角度演算装置24は、XY平面に対するチルト軸AX4の傾斜角度を示すチルト軸角度εを算出可能である。チルト軸角度εは、作業機角度データ取得部52に取得される。また、規定点RPrの位置データは、規定点位置データ算出部53によって算出される。チルトデータ算出部55は、作業機角度データ取得部52で取得されたチルト軸AX4のチルト軸角度εと、規定点位置データ算出部53によって算出された規定点RPrの位置とに基づいて、チルト動作平面TPを算出することができる。
【0096】
チルト目標地形算出部56は、複数の規定点RPから選択された規定点RPrの位置データと目標施工地形CSとチルトデータとに基づいて、目標施工地形CSにおいてバケット8の側方方向に延在するチルト目標地形STを算出する。チルト目標地形算出部56は、目標施工地形CSとチルト動作平面TPとの交差部により規定されるチルト目標地形STを算出する。
図15及び
図16に示すように、チルト目標地形STは、目標施工地形CSとチルト動作平面TPとの交線によって表される。チルト軸AX4の向きであるチルト軸角度εが変化すると、チルト目標地形STの位置が変化する。
【0097】
角度決定部57は、目標施工地形CSとバケット8の特定部位とが平行となるように、チルト軸AX4を中心とするバケット8の特定部位の角度を示すチルト角度δを決定する。本実施形態において、バケット8の特定部位は、バケット8の刃先9である。
【0098】
図17は、本実施形態に係るバケット8の刃先9と目標施工地形CSとの関係を模式的に示す図である。
図17(A)は、バケット8を-Xm側から見た図である。
図17(B)は、バケット8を+Ym側から見た図である。
図17に示すように、角度決定部57は、目標施工地形CSとバケット8の刃先9とが平行となるように、チルト軸AX4を中心とするバケット8の刃先9の角度を示すチルト角度δrを決定する。すなわち、角度決定部57は、バケット8の刃先9を目標施工地形CSと平行にするための、チルト回転方向におけるバケット8の刃先9のチルト回転角度δrを決定する。
【0099】
本実施形態においては、角度決定部57は、チルト目標地形STとバケット8の刃先9とが平行となるように、バケット8の刃先のチルト角度δrを決定する。
【0100】
作業機制御部58は、油圧シリンダ10を制御するための制御信号を出力する。作業機制御部58は、角度決定部57で決定されたチルト角度δrに基づいて、目標施工地形CSとバケット8の刃先9とが平行となるように、チルトシリンダ14を制御する。
【0101】
また、作業機制御部58は、バケット8の規定点RPrとチルト目標地形STとの距離を示す動作距離Daに基づいて、バケット8が目標施工地形CSを超えないように、チルト軸AX4を中心とするバケット8のチルト回転を停止させる。すなわち、作業機制御部58は、チルト回転するバケット8がチルト目標地形STを超えないように、チルト目標地形STでバケット8を停止させる。
【0102】
図15に示すように、チルト軸AX4が目標施工地形CSと平行であるとき、チルト目標地形STとラインLYとはほぼ一致する。したがって、チルト目標地形STを基準としたチルト回転についての介入制御とラインLYを基準としたチルト回転についての介入制御とは、実質的に同一である。
【0103】
作業機制御部58は、バケット8に設定された複数の規定点RPのうち動作距離Daが最も短い規定点RPrに基づいて、チルト回転についての介入制御を実施する。すなわち、作業機制御部58は、バケット8に設定された複数の規定点RPのうちチルト目標地形STに最も近い規定点RPrがチルト目標地形STを超えないように、チルト目標地形STに最も近い規定点RPrとチルト目標地形STとの動作距離Daに基づいて、チルト回転についての介入制御を実施する。
【0104】
目標速度決定部59は、動作距離Daに基づいて、バケット8のチルト回転速度についての目標速度Uを決定する。目標速度決定部59は、動作距離Daが閾値であるライン距離H以下のときに、チルト回転速度を制限する。
【0105】
図18は、本実施形態に係るチルト回転についての介入制御を説明するための模式図である。
図18に示すように、目標施工地形CSが規定されるとともに、速度制限介入ラインILが規定される。速度制限介入ラインILは、チルト軸AX4と平行であり、チルト目標地形STからライン距離Hだけ離れた位置に規定される。ライン距離Hは、オペレータの操作感が損なわれないように設定されることが望ましい。作業機制御部58は、チルト回転するバケット8の少なくとも一部が速度制限介入ラインILを超え、動作距離Daがライン距離H以下になったとき、バケット8のチルト回転速度を制限する。目標速度決定部59は、速度制限介入ラインILを超えたバケット8のチルト回転速度についての目標速度Uを決定する。
図18に示す例では、バケット8の一部が速度制限介入ラインILを超え、動作距離Daがライン距離Hよりも小さいため、チルト回転速度が制限される。
【0106】
目標速度決定部59は、チルト動作平面TPと平行な方向における規定点RPrとチルト目標地形STとの動作距離Daを取得する。また、目標速度決定部59は、動作距離Daに応じた目標速度Uを取得する。作業機制御部58は、動作距離Daがライン距離H以下であると判定された場合、チルト回転速度を制限する。
【0107】
図19は、本実施形態に係る動作距離Daと目標速度Uとの関係の一例を示す図である。
図19は、バケット8のチルト回転を動作距離Daに基づいて停止させるための動作距離Daと目標速度Uとの関係の一例を示す。
図19に示すように、目標速度Uは、動作距離Daに応じて画一的に決められている速度である。目標速度Uは、動作距離Daがライン距離Hよりも大きいときには設定されず、動作距離Daがライン距離H以下のときに設定される。動作距離Daが小さくなるほど、目標速度Uは小さくなり、動作距離Daが零になると、目標速度Uも零になる。なお、
図19では、目標施工地形CSに近付く方向を負の方向として表している。
【0108】
目標速度決定部59は、操作装置30のチルト操作レバー30Tの操作量に基づいて、規定点RPが目標施工地形CS(チルト目標地形ST)に向かって移動するときの移動速度Vrを算出する。移動速度Vrは、チルト動作平面TPと平行な面内における規定点RPrの移動速度である。移動速度Vrは、複数の規定点RPのそれぞれについて算出される。
【0109】
本実施形態においては、チルト操作レバー30Tが操作された場合、チルト操作レバー30Tから出力された電流値に基づいて、移動速度Vrが算出される。チルト操作レバー30Tが操作されると、チルト操作レバー30Tの操作量に応じた電流がチルト操作レバー30Tから出力される。記憶部60には、チルト操作レバー30Tの操作量に応じたチルトシリンダ14のシリンダ速度を記憶することができる。なお、シリンダ速度は、シリンダストロークセンサの検出から求められてもよい。チルトシリンダ14のシリンダ速度が算出された後、目標速度決定部59は、ヤコビアン行列式を使って、チルトシリンダ14のシリンダ速度をバケット8の複数の規定点RPそれぞれの移動速度Vrに変換する。
【0110】
作業機制御部58は、動作距離Daがライン距離H以下であると判定された場合、目標施工地形CSに対する規定点RPrの移動速度Vrを目標速度Uに制限する速度制限を実施する。作業機制御部58は、バケット8の規定点RPrの移動速度Vrを抑えるために、制御弁37に制御信号を出力する。作業機制御部58は、バケット8の規定点RPrの移動速度Vrが動作距離Daに応じた目標速度Uになるように、制御弁37に制御信号を出力する。これにより、チルト回転するバケット8の規定点RPrの移動速度RPは、規定点RPrが目標施工地形CS(チルト目標地形ST)に近付くほど遅くなり、規定点RPr(刃先9)が目標施工地形CDに到達したときに零になる。
【0111】
[角度調整方法]
次に、本実施形態に係るバケット8のチルト角度δの調整方法について説明する。
図20は、本実施形態に係るバケット8のチルト角度δの調整方法の一例を示すフローチャートである。
図21は、本実施形態に係るバケット8のチルト角度δの調整方法の一例を説明するための模式図である。
【0112】
規定点位置データ算出部53は、刃先9に規定されている規定点RPaの位置データ及び規定点RPbの位置データを算出する(ステップSA10)。
【0113】
図21に示すように、規定点RPa及び規定点RPbは、刃先9におけるバケット8の幅方向両側の規定点である。規定点位置データ算出部53は、車体座標系における規定点RPaの位置データ及び規定点RPbの位置データを算出する。
【0114】
また、規定点位置データ算出部53は、規定点RPaの位置データ及び規定点RPbの位置データに基づいて、規定点RPaと規定点RPbとを結ぶ方向ベクトルVec_abを算出する。方向ベクトルVec_abは、以下の(1)式で規定される。
【0115】
【0116】
目標施工地形生成部54は、目標施工地形CSの法線ベクトルNdを算出する(ステップSA20)。
【0117】
角度決定部57は、チルト動作平面TPと目標施工地形CSとの交線ベクトルSTrを算出する(ステップSA30)。
【0118】
角度決定部57は、バケット8の刃先9と目標施工地形CSとを平行にするためのバケット8の刃先9のチルト角度δrを算出する(ステップSA40)。
【0119】
本実施形態において、角度決定部57は、以下の(2)式を演算処理して、チルト角度δrを算出する。
【0120】
【0121】
作業機制御部58は、角度決定部57で決定されたチルト角度δrに基づいて、目標施工地形CSとバケット8の刃先9とが平行となるように、チルトシリンダ14を制御する(ステップSA50)。
【0122】
[効果]
以上説明したように、本実施形態によれば、チルト式バケットにおいて、目標施工地形CSに対するバケット8の刃先9の相対角度に基づいて、目標施工地形CSとバケット8の刃先9とが平行となるように、角度決定部57においてチルト軸AX4を中心とするバケット8の刃先9のチルト角度δrが決定される。作業機制御部58は、角度決定部57で決定されたチルト角度δrに基づいて、チルト軸AX4を中心にバケット8を回転させるチルトシリンダ14を制御する。これにより、チルト回転方向においてバケット8の刃先9と目標施工地形CSとを平行にすることができる。したがって、施工時における油圧ショベル1の運転者の操作の負担が軽減されるとともに、運転者の習熟度に依存しない高品質な施工結果が得られる。
【0123】
第2実施形態.
第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0124】
図22及び
図23は、本実施形態に係る作業機1の動作の一例を模式的に示す図である。
図22及び
図23は、チルト式のバケット8を有する作業機1を用いて傾斜した目標施工地形CSに基づいて施工が実施される例を示す。
【0125】
図22に示すように、バケット8の刃先9と目標施工地形CSとを平行にして刃先9と目標施工地形CSとを一致させた状態で、アーム7を移動しながら施工を実施したい場合がある。また、
図23に示すように、バケット8の床面89と目標施工地形CSとを平行にして床面89と目標施工地形CSとを一致させた状態で、アーム7を移動しながら施工を実施したい場合がある。
【0126】
本実施形態においては、アーム7が作動する状態で、バケット8の刃先9及び床面89の少なくとも一方と目標施工地形CSとの平行が維持されるように、作業機制御部58が、チルトシリンダ14及びバケットシリンダ13の少なくとも一方を制御する例について説明する。
【0127】
図24は、本実施形態に係るバケット8の角度の調整方法の一例を示すフローチャートである。
図25及び
図26は、本実施形態に係るバケット8の角度の調整方法の一例を説明するための模式図である。
図25は、バケット8の刃先9と目標施工地形CSとを平行にするときのバケット8の角度の調整方法の一例を模式的に示す。
図26は、バケット8の床面89と目標施工地形CSとを平行にするときのバケット8の角度の調整方法の一例を模式的に示す。
【0128】
以下の説明では、バケット8の刃先9及び床面89を総称して適宜、バケット8の特定部位、と称する。
【0129】
規定点位置データ算出部53は、刃先9に規定されている規定点RPaの位置データ及び規定点RPbの位置データと、床面89に規定されている規定点RPcの位置データとを算出する(ステップSB10)。
【0130】
図25に示すように、規定点RPa及び規定点RPbは、刃先9におけるバケット8の幅方向両側の規定点である。規定点位置データ算出部53は、車体座標系における規定点RPaの位置データ及び規定点RPbの位置データを算出する。
【0131】
図26に示すように、規定点RPcは、平坦な床面89の一部の規定点である。バケット8の幅方向において、規定点RPaの座標と規定点RPcの座標とは等しい。本実施形態において、規定点RPaは、底板81の一端部に規定され、規定点RPcは、底板81の他端部に規定される。
【0132】
また、規定点位置データ算出部53は、規定点RPaの位置データ及び規定点RPbの位置データに基づいて、規定点RPaと規定点RPbとを結ぶ方向ベクトルVec_abを算出する。
【0133】
また、規定点位置データ算出部53は、規定点RPaの位置データ及び規定点RPcの位置データに基づいて、規定点RPaと規定点RPcとを結ぶ方向ベクトルVec_acを算出する。
【0134】
また、規定点位置データ算出部53は、チルト軸AX4の法線ベクトルVec_tiltを算出する。
【0135】
角度決定部57は、目標施工地形CSと平行にするバケット8の特定部位の目標法線ベクトルNrefを算出する(ステップSB20)。
【0136】
例えば、目標施工地形CSとバケット8の刃先9とを平行にする場合、
図25に示すように、角度決定部57は、バケット8の刃先9の方向ベクトルVec_abと直交するバケット8の刃先9の目標法線ベクトルNrefを算出する。バケット8の刃先9の目標法線ベクトルNrefは、チルト動作平面TPにおいて、バケット8の刃先9の方向ベクトルVec_abと直交するように規定される。バケット8の刃先9の目標法線ベクトルNrefは、チルト軸AX4の法線ベクトルVec_tiltとも直交する。
【0137】
また、目標施工地形CSとバケット8の床面89とを平行にする場合、
図26に示すように、角度決定部57は、バケット8の床面89の方向ベクトルVec_acと直交するバケット8の床面89の目標法線ベクトルNrefを算出する。床面89は実質的に平面である。したがって、バケット8の床面89の目標法線ベクトルNrefは一義的に定まる。
【0138】
方向ベクトルVec_abは、上述の(1)式で規定される。方向ベクトルVec_acは、以下の(3)式で規定される。
【0139】
【0140】
バケット8の刃先9の目標法線ベクトルNrefは、以下の(4)式で規定される。
【数4】
【0141】
バケット8の床面89の目標法線ベクトルNrefは、以下の(5)式で規定される。
【数5】
【0142】
目標施工地形生成部54は、目標施工地形CSの法線ベクトルNdを算出する(ステップSB30)。
【0143】
角度検出部57は、評価関数Qを算出する(ステップSB40)。
【0144】
評価関数Qは、目標法線ベクトルNrefと法線ベクトルNdとの平行誤差を示す評価関数Q1と、刃先9と目標施工地形CSとの距離Daを示す評価関数Q2との和である。すなわち、以下の(6)式、(7)式、及び(8)式が成立する。
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
(6)式において、目標法線ベクトルNrefと法線ベクトルNdとが平行となる条件は、互いに内積が1になることである。すなわち、以下の(9)式が成立することである。
【0149】
【0150】
なお、(8)式において、バケット8を目標施工地形CSに接触させる必要が無い場合には、Q=Q1でよい。
【0151】
角度検出部57は、(8)の評価関数Qが最小になるように、所定の数値演算法により演算処理を実施する。演算処理には、例えばニュートン法、パウエル法、及びシンプレックス法などが利用可能である。
【0152】
角度検出部57は、評価関数Qが最小になったか否かを判定する(ステップSB50)。すなわち、角度検出部57は、所定の数値演算法により演算処理を実施して、評価関数が実質的に零になったか否かを判定する。
【0153】
ステップSB50において、評価関数Qが最小である判定された場合(ステップSB50:Yes)、角度検出部57は、バケット8の特定部位と目標施工地形CSとを平行にするためのバケット8の特定部位のチルト角度δr及びバケット角度γrを算出する(ステップSB60)。すなわち、角度検出部57は、評価関数Qを最小にするチルト角度δr及びバケット角度γrを決定する。
【0154】
チルト角度δrは、目標施工地形CSとバケット8の特定部位とを平行にするための、チルト軸AX4を中心とするバケット8の特定部位の角度を示す。バケット角度γrは、バケット軸AX3を中心とするバケット8の特定部位の角度を示す。
【0155】
作業機制御部58は、角度決定部57で決定されたチルト角度δr及びバケット角度γrに基づいて、目標施工地形CSとバケット8の特定部位とが平行となるように、チルトシリンダ14及びバケットシリンダ13を制御する(ステップSB70)。
【0156】
ステップSB50において、評価関数Qが最小でないと判定された場合(ステップSB50:No)、角度検出部57は、チルト角度δr又はバケット角度γrを更新し(ステップSB80)、ステップSB40の処理に戻る。
【0157】
その他の実施形態.
なお、上述の実施形態において、評価関数Qについて、評価関数Q1及び評価関数Q2に重み付けしてもよい。
【0158】
なお、上述の実施形態においては、建設機械100が油圧ショベルであることとした。上述の実施形態で説明した構成要素は、油圧ショベルとは別の、作業機を有する建設機械に適用可能である。
【0159】
なお、上述の実施形態において、上部旋回体2は、油圧により旋回してもよいし、電動アクチュエータが発生する動力により旋回してもよい。また、作業機1は、油圧シリンダ10ではなく、電動アクチュエータが発生する動力により作動してもよい。
【符号の説明】
【0160】
1 作業機、2 上部旋回体、3 下部走行体、3C 履帯、4 運転室、5 機械室、6 ブーム、7 アーム、8 バケット、8B バケットピン、8T チルトピン、9 刃先、10 油圧シリンダ、10A キャップ側油室、10B ロッド側油室、11 ブームシリンダ、12 アームシリンダ、13 バケットシリンダ、14 チルトシリンダ、16 ブームストロークセンサ、17 アームストロークセンサ、18 バケットストロークセンサ、19 チルトストロークセンサ、20 位置演算装置、21 車体位置演算器、22 姿勢演算器、23 方位演算器、24 作業機角度演算装置、25 流量制御弁、30 操作装置、30F 操作ペダル、30L 左作業機操作レバー、30R 右作業機操作レバー、30T チルト操作レバー、31 メイン油圧ポンプ、32 パイロット圧ポンプ、33A,33B 油路、34A,34B 圧力センサ、35A,35B 油路、36A,36B シャトル弁、37A,37B 制御弁、38A,38B 油路、50 制御装置、51 車体位置データ取得部、52 作業機角度データ取得部、53 規定点位置データ算出部、54 目標施工地形生成部、55 チルトデータ算出部、56 チルト目標地形算出部、57 角度決定部、58 作業機制御部、59 目標速度決定部、60 記憶部、61 入出力部、70 目標施工データ生成装置、81 底板、82 背板、83 上板、84 側板、85 側板、86 開口部、87 ブラケット、88 ブラケット、89 床面、90 接続部材、91 プレート部材、92 ブラケット、93 ブラケット、94 第1リンク部材、94P 第1リンクピン、95 第2リンク部材、95P 第2リンクピン、96 バケットシリンダトップピン、97 ブラケット、100 油圧ショベル(建設機械)、200 制御システム、300 油圧システム、400 検出システム、AP 点、AX1 ブーム軸、AX2 アーム軸、AX3 バケット軸、AX4 チルト軸、CD 目標施工データ、CS 目標施工地形、Da 動作距離、L1 ブーム長さ、L2 アーム長さ、L3 バケット長さ、L4 チルト長さ、L5 バケット幅、LX ライン、LY ライン、RP 規定点、RX 旋回軸、ST チルト目標地形、TP チルト動作平面、α ブーム角度、β アーム角度、γ バケット角度、δ チルト角度、ε チルト軸角度、θ1 ロール角度、θ2 ピッチ角度、θ3 ヨー角度。