(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】繊維用加工薬剤
(51)【国際特許分類】
D06M 15/507 20060101AFI20220826BHJP
D06M 15/53 20060101ALI20220826BHJP
D06M 13/256 20060101ALI20220826BHJP
C09K 3/16 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
D06M15/507
D06M15/53
D06M13/256
C09K3/16 102K
C09K3/16 102E
C09K3/16 102L
(21)【出願番号】P 2018546360
(86)(22)【出願日】2017-10-17
(86)【国際出願番号】 JP2017037562
(87)【国際公開番号】W WO2018074477
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】P 2016207306
(32)【優先日】2016-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390029458
【氏名又は名称】ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100129137
【氏名又は名称】中山 ゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】白髭 義之
(72)【発明者】
【氏名】辻 和秀
(72)【発明者】
【氏名】杉森 斉司
(72)【発明者】
【氏名】作江 富夫
(72)【発明者】
【氏名】松葉 寛之
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-507699(JP,A)
【文献】特開昭62-289674(JP,A)
【文献】特公昭53-046960(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00-64/42
D06M 13/00-15/715
C08J 3/03
C08K 5/42
C08L 67/02
C08L 101/02
C09K 3/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(C)を含み、
下記成分(A)は、少なくとも下記(i)~(iii)の単量体を重合して得られる共重合体であり、
下記成分(C)は、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、スチレン化フェノールのアルキレンオキシド付加物、β-ナフトールのアルキレンオキシド付加物、およびベンジルエーテルのアルキレンオキシド付加物からなる群から選択される1種類または2種類以上であることを特徴とする繊維用加工薬剤。
(A)分岐型ポリエステル樹脂
(B)水
(C)芳香環を有する非イオン界面活性剤
(i)二価の芳香族カルボン酸およびその誘導体の少なくとも一方
(ii)ジオール
(iii)水酸基を3個以上有するポリオール
【請求項2】
前記単量体(i)において、前記二価の芳香族カルボン酸が、テレフタル酸およびイソフタル酸の少なくとも一方である請求項1記載の繊維用加工薬剤。
【請求項3】
前記単量体(ii)において、前記ジオールが、エチレングリコールおよびポリエチレングリコールの少なくとも一方である請求項1または2記載の繊維用加工薬剤。
【請求項4】
さらに、芳香族スルホン酸塩を含む請求項1から3のいずれか一項に記載の繊維用加工薬剤。
【請求項5】
前記芳香族スルホン酸塩の質量が、前記成分(C)の質量に対し50質量%以上、かつ200質量%以下である、請求項4に記載の繊維用加工薬剤。
【請求項6】
さらに、カチオン界面活性剤を含む請求項1から5のいずれか一項に記載の繊維用加工薬剤。
【請求項7】
前記成分(A)分岐型ポリエステル樹脂において、
前記単量体(i)の使用量が、共重合成分全体の5質量%以上、かつ50質量%以下であり、
前記単量体(ii)の使用量が、共重合成分全体の50質量%以上、かつ94質量%以下であり、
前記単量体(iii)の使用量が、共重合成分全体の0.05質量%以上、かつ1質量%以下である
請求項1から6のいずれか一項に記載の繊維用加工薬剤。
【請求項8】
前記水(成分(B))の含有率が、前記水(成分(B))以外の全成分の質量に対し、200質量%以上、かつ2500質量%以下である請求項1から7のいずれか一項に記載の繊維用加工薬剤。
【請求項9】
前記成分(C)の含有率が、前記水(成分(B))以外の全成分の質量に対し、15質量%以上、かつ80質量%以下である請求項1から8のいずれか一項に記載の繊維用加工薬剤。
【請求項10】
前記成分(C)の含有率が、前記分岐型ポリエステル樹脂(成分(A))の質量に対し、30~300質量%である請求項1から9のいずれか一項に記載の繊維用加工薬剤。
【請求項11】
前記芳香族スルホン酸塩の質量が、前記水(成分(B))以外の全成分の質量に対し、10質量%以上、かつ50質量%以下である請求項4
または5に記載の繊維用加工薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維用加工薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維用加工薬剤は、例えば、繊維に種々の機能を付与させる目的で用いられる。
【0003】
繊維用加工薬剤としては、例えば、ポリエステル系の樹脂を用いた耐久帯電防止剤がある(特許文献1)。また、例えば、直鎖状のポリエステル樹脂、溶剤および非イオン活性剤を含む繊維用加工薬剤もある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公昭38-11298号公報
【文献】特公昭44-3967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
繊維用加工薬剤においては、洗濯後も繊維に付与された機能を維持できる、洗濯耐久性が重要である。
【0006】
しかしながら、繊維用加工薬剤の洗濯耐久性を高めようとすると、水への分散性が低下し、繊維を加工できる液を得ることが困難である。一方、繊維用加工薬剤の水への分散性を高めようとすると、洗濯耐久性が低下する。このように、繊維用加工薬剤における洗濯耐久性と、水への分散性との両立は困難である。
【0007】
そこで、本発明は、洗濯耐久性と、水への分散性との両立が可能な繊維用加工薬剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の繊維用加工薬剤は、下記成分(A)~(C)を含み、
下記成分(A)は、少なくとも下記(i)~(iii)の単量体を重合して得られる共重合体であることを特徴とする。
(A)分岐型ポリエステル樹脂
(B)水
(C)芳香環を有する非イオン界面活性剤
(i)二価の芳香族カルボン酸およびその誘導体の少なくとも一方
(ii)ジオール
(iii)水酸基を3個以上有するポリオール
【発明の効果】
【0009】
本発明の繊維用加工薬剤によれば、洗濯耐久性と、水への分散性との両立が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について、例をあげてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0011】
本発明の繊維用加工薬剤の前記単量体(i)において、前記二価の芳香族カルボン酸は、例えば、テレフタル酸およびイソフタル酸の少なくとも一方であってもよい。
【0012】
本発明の繊維用加工薬剤の前記単量体(ii)において、前記ジオールは、例えば、エチレングリコールおよびポリエチレングリコールの少なくとも一方であってもよい。
【0013】
本発明の繊維用加工薬剤は、例えば、さらに、芳香族スルホン酸塩を含んでいてもよい。
【0014】
本発明の繊維用加工薬剤は、例えば、繊維用耐久帯電防止剤であってもよい。
【0015】
[1.繊維用加工薬剤]
本発明の繊維用加工薬剤は、前述のとおり、下記成分(A)~(C)を含み、
下記成分(A)は、少なくとも下記(i)~(iii)の単量体を重合して得られる共重合体であることを特徴とする。
(A)分岐型ポリエステル樹脂
(B)水
(C)芳香環を有する非イオン界面活性剤
(i)二価の芳香族カルボン酸およびその誘導体の少なくとも一方
(ii)ジオール
(iii)水酸基を3個以上有するポリオール
【0016】
本発明者は、二価の芳香族カルボン酸およびその誘導体の少なくとも一方と、ジオールとに、水酸基を3個以上有するポリオールを共重合(共縮合)させ、分岐型ポリエステル樹脂とすることにより、高い洗濯耐久性が得られることを見出した。さらに、前記分岐型ポリエステル樹脂は、分散剤として芳香環を有する非イオン界面活性剤を用いると、水への分散性が良好であることを見出した。このようにして、本発明者は、洗濯耐久性と、水への分散性との両立が可能である本発明の繊維用加工薬剤に到達した。
【0017】
(1)成分(A):分岐型ポリエステル樹脂
本発明の繊維用加工薬剤において、前記分岐型ポリエステル樹脂(成分(A))は、前述のとおり、少なくとも下記(i)~(iii)の単量体を重合して得られる共重合体である。
【0018】
前記単量体(i)において、二価の芳香族カルボン酸(芳香族ジカルボン酸)としては、特に限定されないが、例えば、炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸があげられる。二価の芳香族カルボン酸の具体例としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等があげられる。また、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、例えば、芳香族ジカルボン酸の無水物、低級アルコールエステル、酸ハロゲン化物等をあげることができる。前記低級アルコールエステルとしては、例えば、低級アルキルアルコールのエステルがあげられ、より具体的には、例えば、炭素数1~3の直鎖または分岐アルキルアルコールのエステルがあげられる。芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルとしては、例えば、モノメチルエステル、ジメチルエステル、モノエチルエステル、ジエチルエステル等があげられ、より具体的には、例えば、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル等があげられる。芳香族ジカルボン酸の酸ハロゲン化物としては、例えば、モノクロライド、ジクロライド、モノブロマイド、ジブロマイド等があげられる。前記芳香族ジカルボン酸およびその誘導体の中でも、洗濯耐久性の点から、芳香族ジカルボン酸およびそのメチルエステルが好ましく、炭素数8~12の芳香族ジカルボン酸およびそのメチルエステルがより好ましい。具体例としては、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸、イソフタル酸ジメチル、フタル酸、フタル酸ジメチルがあげられる。また、本発明では、二価の芳香族カルボン酸およびその誘導体は、1種類のみ用いても複数種類併用してもよい。
【0019】
前記単量体(ii)において、前記ジオールとしては、例えば、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、芳香族ジオール、およびこれらのアルキレンオキシド付加物等があげられる。また、本発明において、前記単量体(ii)の前記ジオールは、分子中に水酸基を2つ有する化合物であればよく、前記水酸基は、アルコール性水酸基でもフェノール性水酸基でもよい。前記脂肪族ジオールとしては、例えば、直鎖状または分岐状のアルキレン基から誘導されるアルキレンジオールおよびポリアルキレンジオールがあげられる。前記脂肪族ジオールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー等があげられる。前記ポリアルキレングリコール(例えばポリエチレングリコール)の分子量は、特に限定されないが、例えば300以上、600以上、または1000以上であってもよく、例えば10,000以下、8000以下、または6000以下であってもよい。前記脂環族ジオールとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等があげられる。前記芳香族ジオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ハイドロキノン等があげられる。これらのジオールのうち、水との親和性、繊維用加工薬剤の経時的安定性の観点から、ポリエチレングリコールなどのオキシエチレン基を有するジオールが好ましい。また、前記ジオールは、1種類のみ用いても複数種類併用してもよい。
【0020】
前記単量体(iii)において、水酸基を3個以上有するポリオールは、例えば、トリオールでも、テトラオールでも、水酸基を5個以上有するポリオールでもよい。前記水酸基を3個以上有するポリオールは、例えば、脂肪族ポリオール、脂環族ポリオール、芳香族ポリオール、およびこれらのアルキレンオキシド付加物等があげられる。また、前記水酸基を3個以上有するポリオールにおいて、前記水酸基は、アルコール性水酸基でもフェノール性水酸基でもよい。前記トリオールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびこれらのアルキレンオキシド付加物等があげられる。前記テトラオールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、およびこれらのアルキレンオキシド付加物等があげられる。前記水酸基を5個以上有するポリオールとしては、例えば、ソルビトール、およびこれらのアルキレンオキシド付加物等があげられる。また、前記水酸基を3個以上有するポリオールは、1種類のみ用いても複数種類併用してもよい。
【0021】
また、前記分岐型ポリエステル樹脂(成分(A))は、共重合成分として、前記単量体(i)~(iii)以外の任意成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記任意成分としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族ジカルボン酸またはその低級アルキルエステル(マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸等の直鎖状ジカルボン酸またはそのメチルエステル、メチルマロン酸、メチルコハク酸、メチルグルタル酸等の側鎖を有するジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等)等があげられる。
【0022】
また、本発明の繊維用加工薬剤中において、前記分岐型ポリエステル樹脂(成分(A))の含有率は特に限定されないが、例えば、前記水(成分(B))以外の全成分の質量に対し、10質量%以上、20質量%以上、または30質量%以上であってもよく、70質量%以下、60質量%以下、または50質量%以下であってもよい。分散物の安定性という観点からは、前記分岐型ポリエステル樹脂(成分(A))の含有率が多すぎないことが好ましい。耐久帯電防止性能という観点からは、前記分岐型ポリエステル樹脂(成分(A))の含有率が少なすぎないことが好ましい。
【0023】
また、前記分岐型ポリエステル樹脂(成分(A))の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば、8000以上、10000以上、15000以上、または20000以上であることが好ましく、50000以下、40000以下、35000以下、または30000以下であることが好ましい。
【0024】
(2)分岐型ポリエステル樹脂(成分(A))の製造方法
前記分岐型ポリエステル樹脂(成分(A))の製造方法は特に限定されないが、例えば、前記単量体(i)~(iii)を共重合させて製造することができる。また、前述のとおり、前記単量体(i)~(iii)以外の任意成分を共重合させてもよいし、させなくてもよい。前記単量体(i)の使用量は、特に限定されないが、例えば、共重合成分全体の5質量%以上、10質量%以上、または12質量%以上であることが好ましく、50質量%以下、30質量%以下、または20質量%以下であることが好ましい。前記単量体(ii)の使用量も、特に限定されないが、例えば、共重合成分全体の50質量%以上、60質量%以上、または70質量%以上であることが好ましく、94質量%以下、90質量%以下、または86質量%以下であることが好ましい。前記単量体(iii)の使用量も、特に限定されないが、例えば、共重合成分全体の0.05質量%以上、0.1質量%以上、または0.12質量%以上であることが好ましく、1質量%以下、0.5質量%以下、または0.3質量%以下であることが好ましい。前記任意成分は、使用してもしなくてもよいが、使用する場合は、例えば、共重合成分全体の0.1質量%以上、または1質量%以上であってもよく、10質量%以下、または3質量%以下であってもよい。
【0025】
共重合方法も特に限定されないが、例えば、公知の方法またはそれに準じてもよい。具体的には、例えば、単量体(i)とジオール(例えばエチレングリコール)とを適当な触媒の存在下でエステル化反応またはエステル交換反応させた後、単量体(ii)および(iii)を添加して減圧下で重縮合反応を行う方法があげられる。前記単量体(i)とジオールとのエステル化反応またはエステル交換反応において、例えば、前記ジオールは、溶媒を兼ねていてもよい。前記ジオールの使用量も特に限定されないが、例えば、前記単量体(i)の80質量%以上、100質量%以上、または120質量%以上であることが好ましく、300質量%以下、250質量%以下、または200質量%以下であることが好ましい。前記触媒も、特に限定されないが、例えば、酸化亜鉛、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、三酸化アンチモン等があげられる。前記エステル化反応またはエステル交換反応の反応時間も特に限定されないが、例えば、0.3時間以上、0.5時間以上、または0.7時間以上であることが好ましく、3時間以下、2時間以下、または1.5時間以下であることが好ましい。反応温度も特に限定されないが、例えば、140℃以上、160℃以上、または170℃以上であることが好ましく、220℃以下、200℃以下、または190℃以下であることが好ましい。また、前記減圧下での重縮合反応において、反応時間は特に限定されないが、例えば、1時間以上、1.5時間以上、または2時間以上であることが好ましく、8時間以下、5時間以下、または4時間以下であることが好ましい。反応温度も特に限定されないが、例えば、200℃以上、または220℃以上であることが好ましく、280℃以下、または260℃以下であることが好ましい。なお、この製造方法において、前記単量体(i)は、例えば、芳香族ジカルボン酸のエステルでもよく、前記単量体(ii)は、例えば、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコールでもよい。また、共重合して製造した分岐型ポリエステル樹脂(成分(A))にポリカルボン酸を混合してもよい。前記ポリカルボン酸としては、例えば、ジカルボン酸があげられる。ジカルボン酸を含むことで、例えば、帯電防止性能が向上するという効果が得られる。前記ジカルボン酸は、特に限定されないが、例えば、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、アジピン酸、サリチル酸等があげられる。前記ポリカルボン酸としては、例えば、他にもカルボキシ基を3個以上含む化合物としてエチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム等があげられる。なお、前記ポリカルボン酸を分岐型ポリエステル樹脂(成分(A))に混合した場合、前記ポリカルボン酸の質量は、本発明の繊維用加工薬剤中における前記分岐型ポリエステル樹脂(成分(A))の含有率に含めるものとする。
【0026】
(3)成分(B):水
前記水(成分(B))は、特に限定されず、例えば、水道水、蒸留水、イオン交換水等であってもよい。コストの観点からは、水道水等が好ましい。
【0027】
また、本発明の繊維用加工薬剤中において、前記水(成分(B))の含有率は特に限定されないが、例えば、前記水(成分(B))以外の全成分の質量に対し、200質量%以上、400質量%以上、または1000質量%以上であってもよく、2500質量%以下、2000質量%以下、または1700質量%以下であってもよい。耐久帯電防止性能という観点からは、前記水(成分(B))の含有率が多すぎないことが好ましい。分散物の安定性という観点からは、前記水(成分(B))の含有率が少なすぎないことが好ましい。
【0028】
(4)成分(C):芳香環を有する非イオン界面活性剤
前記芳香環を有する非イオン界面活性剤(成分(C))は、特に限定されないが、例えば、芳香族化合物のアルキレンオキシド付加物、があげられる。より具体的には、例えば、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、スチレン化フェノールのアルキレンオキシド付加物、β-ナフトールのアルキレンオキシド付加物、ベンジルエーテルのアルキレンオキシド付加物等があげられる。前記アルキレンオキシドとしては、例えば、EO(エチレンオキシド)があげられる。また、前記スチレン化フェノールとしては、例えば、トリスチレン化フェノールがあげられる。また、前記成分(C)は、1種類のみ用いても複数種類併用してもよい。
【0029】
また、本発明の繊維用加工薬剤中において、前記芳香環を有する非イオン界面活性剤(成分(C))の含有率は特に限定されないが、例えば、前記水(成分(B))以外の全成分の質量に対し、15質量%以上、20質量%以上、または25質量%以上であってもよく、80質量%以下、70質量%以下、または60質量%以下であってもよい。また、前記芳香環を有する非イオン界面活性剤(成分(C))の含有率は、例えば、前記分岐型ポリエステル樹脂(成分(A))の質量に対し、例えば、30~300質量%、50~200質量%、または70~150質量%であってもよい。耐久帯電防止性能という観点からは、前記成分(C)の含有率が多すぎないことが好ましい。水への分散性という観点からは、前記成分(C)の含有率が少なすぎないことが好ましい。
【0030】
(5)任意成分
本発明の繊維用加工薬剤は、前記成分(A)~(C)以外の任意成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記任意成分としては、例えば、芳香族スルホン酸塩等があげられる。芳香族スルホン酸塩を含むことで、例えば、繊維加工直後(洗濯をしない状態)における帯電防止性能が向上するという効果が得られる。前記芳香族スルホン酸塩は、特に限定されないが、例えば、パラトルエンスルホン酸、メタキシレンスルホン酸、クメンスルホン酸等のスルホン酸の塩があげられる。前記芳香族スルホン酸塩は、例えば、任意の金属の塩でもよく、例えば、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)、等の塩でもよい。前記芳香族スルホン酸塩は、帯電防止性能の観点から、ナトリウム塩が特に好ましく、例えば、パラトルエンスルホン酸ナトリウム、メタキシレンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸ナトリウム等があげられる。その他の前記任意成分としては、例えばカチオン界面活性剤があげられる。カチオン界面活性剤を含むことは、水への分散性という観点で好ましい。前記カチオン活性剤は、特に限定されないが、例えば、モノアルキルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等があげられる。前記第四級アンモニウム塩は、塩化ジヤシアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジ硬化牛脂アルキルジメチルアンモニウムが特に好ましい。
【0031】
また、本発明の繊維用加工薬剤中において、前記任意成分の含有率は特に限定されない。例えば、前記芳香族スルホン酸塩を加える場合は、前記芳香族スルホン酸塩の質量が、例えば、前記水(成分(B))以外の全成分の質量に対し、10質量%以上、15質量%以上、または20質量%以上であってもよく、50質量%以下、45質量%以下、または40質量%以下であってもよい。前記芳香族スルホン酸塩の質量は、前記水(成分(B))も含んだ本発明の繊維用加工薬剤の全質量に対し、例えば、0.1~10質量%、1~5質量%、または1.5~4.5質量%であってもよい。分散物の安定性という観点からは、前記芳香族スルホン酸塩の含有率が多すぎないことが好ましい。また、前記繊維加工直後(洗濯をしない状態)における帯電防止性能の向上という観点からは、前記芳香族スルホン酸塩の含有率が少なすぎないことが好ましい。
【0032】
また、前記芳香族スルホン酸塩の質量が、例えば、前記芳香環を有する非イオン界面活性剤(成分(C))の質量に対し、50質量%以上、60質量%以上、または70質量%以上であってもよく、200質量%以下、160質量%以下、または140質量%以下であってもよい。分散物の安定性という観点からは、前記芳香族スルホン酸塩の含有率が多すぎないことが好ましい。また、前記繊維加工直後(洗濯をしない状態)における帯電防止性能の向上という観点からは、前記芳香族スルホン酸塩の含有率が少なすぎないことが好ましい。
【0033】
[2.繊維用加工薬剤の製造方法]
本発明の繊維用加工薬剤の製造方法は、特に限定されないが、例えば、全成分を混合し、前記水(成分(B))以外の全成分を、前記水(成分(B))中に分散させればよい。具体的には、例えば、以下のようにして行うことができる。
【0034】
まず、前記分岐型ポリエステル樹脂(成分(A))と、前記芳香環を有する非イオン界面活性剤(成分(C))とを、加熱しながら混合し、溶解させる。加熱温度は特に限定されないが、例えば、80℃以上、または100℃以上であってもよく、180℃以下、または160℃以下であってもよい。加熱時間も特に限定されないが、例えば、10分以上、または20分以上であってもよく、2時間以下、または1.5時間以下であってもよい。
【0035】
一方、前記水(成分(B))を加熱して温水を調整する。前記温水の温度は特に限定されないが、例えば、40℃以上、または80℃以上であってもよく、100℃以下、または95℃以下であってもよい。そして、前記分岐型ポリエステル樹脂(成分(A))と、前記芳香環を有する非イオン界面活性剤(成分(C))との溶解物を、前記温水中に添加し、必要に応じて攪拌等を行って分散させる。このとき、必要に応じ、前記任意成分(例えば芳香族スルホン酸塩等)を加えてもよい。このようにして得られた水分散物を、そのまま放冷等して室温まで冷却し、本発明の繊維用加工薬剤を製造することができる。
【0036】
[3.繊維用加工薬剤の使用方法]
本発明の繊維用加工薬剤の使用方法は、特に限定されないが、例えば、繊維製品を、本発明の繊維用加工薬剤またはその水希釈液に浸漬させ、その後乾燥させてもよい。また、前記繊維製品は、浸漬後、乾燥させる前に、必要に応じて絞ってもよいし、浸漬中に加温してもよい。このようにして前記繊維製品を加工することで、前記繊維製品に適宜、機能(例えば帯電防止性能)を付与することができる。前記繊維製品は、特に限定されないが、例えば、布、衣服、カーペット、不織布等があげられる。前記繊維の種類も特に限定されないが、天然繊維でも人工繊維でもよく、例えば、ポリエステル繊維、ポリエステル繊維と他の繊維との混紡品等があげられる。本発明の繊維用加工薬剤は、前述のとおり、そのまま用いてもよいが、水希釈液として用いてもよい。水希釈液とする場合、本発明の繊維用加工薬剤の質量は、前記水希釈液に対し、例えば、1質量%以上、2質量%以上、または3質量%以上であってもよく、20質量%以下、15質量%以下、または10質量%以下であってもよい。
【0037】
本発明の繊維用加工薬剤の用途は、特に限定されないが、例えば、繊維用耐久帯電防止剤、吸水剤等に用いることができる。
【実施例】
【0038】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0039】
[合成例1~5]
以下のようにして、ポリエステル樹脂を合成(製造)した。なお、下記合成例2、3、4および5のポリエステル樹脂は、前記単量体(i)~(iii)を共重合させた分岐型ポリエステル樹脂であり、本発明の繊維用加工薬剤の成分(A)に該当する。一方、下記合成例1は、水酸基を3個以上有するポリオール(単量体(iii))を共重合させていない直鎖状ポリエステル樹脂である。
【0040】
(合成例1)
テレフタル酸ジメチル60g、エチレングリコール90g、および触媒として酢酸亜鉛を0.3g反応容器に入れ、180℃で1時間エステル交換反応を行った。なお、その際、140℃付近にて、エステル交換反応により生成したメタノールが留出した。前記エステル交換反応後、前記反応容器に、さらにポリエチレングリコール(Mw3,000)240g、および酸化防止剤としてアデカスタブAO-330(株式会社ADEKAの商品名)を2.7g加え、再度180℃まで昇温した後に減圧を行った。そして、引き続き昇温および減圧を行い、240~250℃において10torr(約1.3×103Pa)以下で縮合反応を3時間行うことにより、目的とするポリエステル樹脂を得た。なお、このポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、25000であった。
【0041】
(合成例2)
ポリエチレングリコール(Mw3,000)240gに代えて、ポリエチレングリコール(Mw3,000)238.4g、およびペンタエリスリトール0.6gを用いたこと以外は、合成例1と同様の操作を行い、目的とする分岐型ポリエステル樹脂を得た。なお、このポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、25000であった。
【0042】
(合成例3)
ポリエチレングリコール(Mw3,000)240gに代えて、ポリエチレングリコール(Mw3,000)238.7g、およびグリセリン0.3gを用いたこと以外は、合成例1と同様の操作を行い、目的とする分岐型ポリエステル樹脂を得た。なお、このポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、25000であった。
【0043】
(合成例4)
テレフタル酸ジメチル60gに代えて、テレフタル酸ジメチル50g、イソフタル酸ジメチル10gを用いたこと以外は、合成例2と同様の操作を行い、目的とする分岐型ポリエステル樹脂を得た。なお、このポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、25000であった。
【0044】
(合成例5)
合成例2と同様な操作を行い、反応後に酒石酸を0.6g混合し、目的とする分岐型ポリエステル樹脂を得た。なお、このポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、25000であった。
【0045】
[実施例および比較例]
以下のようにして、実施例1~6および比較例1~3の繊維用加工薬剤を製造した。
【0046】
(実施例1)
合成例2で得られたポリエステル樹脂(成分(A))3gと、ビスフェノールAのEO(エチレンオキサイド)10モル付加物(成分(C))3gとを100~120℃で混合し、溶解させた。その溶解物を、90℃の温水(成分(B))94gに添加した後、徐々に室温まで冷却することで、ポリエステル樹脂の水分散物(繊維用加工薬剤)を得た。
【0047】
(実施例2)
前記温水中に、さらにメタキシレンスルホン酸Na(芳香族スルホン酸塩)を3g添加したこと以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂の水分散物(繊維用加工薬剤)を得た。
【0048】
(実施例3)
成分(C)として、ビスフェノールAのEO10モル付加物に代えてトリスチレン化フェノールのEO16モル付加物を用いたこと以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂の水分散物(繊維用加工薬剤)を得た。
【0049】
(実施例4)
成分(A)として、合成例3で得られたポリエステル樹脂を用いたこと以外は実施例2と同様にしてポリエステル樹脂の水分散物(繊維用加工薬剤)を得た。
【0050】
(実施例5)
成分(A)として、合成例4で得られたポリエステル樹脂を用いたこと以外は実施例2と同様にしてポリエステル樹脂の水分散物(繊維用加工薬剤)を得た。
【0051】
(実施例6)
成分(A)として、合成例5で得られたポリエステル樹脂を用いたことと、メタキシレンスルホン酸Na(芳香族スルホン酸塩)に代えてジ長鎖アルキル(炭素数12~18)ジメチルアンモニウムクロライド0.5gを用いたこと以外は実施例2と同様にしてポリエステル樹脂の水分散物(繊維用加工薬剤)を得た。
【0052】
(比較例1)
合成例2で得られたポリエステル樹脂に代えて合成例1で得られたポリエステル樹脂を3g用いたこと以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂の水分散物(繊維用加工薬剤)を得た。
【0053】
(比較例2)
ビスフェノールAのEO10モル付加物(成分(C))を加えなかったこと以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂の水分散物(繊維用加工薬剤)を得た。
【0054】
(比較例3)
ビスフェノールAのEO10モル付加物(成分(C))に代えてラウリルアルコールEOの10モル付加物を3g用いたこと以外は実施例1と同様にしてポリエステル樹脂の水分散物(繊維用加工薬剤)を得た。
【0055】
[性能評価]
実施例1~6および比較例1~3の繊維用加工薬剤の性能を、以下の方法で評価(試験)した。
【0056】
〔水への分散性〕
実施例1~6および比較例1~3の繊維用加工薬剤をそれぞれ水で20倍(質量比)に希釈して得られる水分散液(5質量%水分散液)を、80メッシュのろ布でろ過し、残渣の有無に基づいて、目視で分散性を評価した。評価基準は、下記のとおり、○、△または×で評価した。
○;残渣なし △;残渣少 ×;残渣多
【0057】
〔繊維の加工方法〕
試料(繊維製品)として、ポリエステルダブルピケの布を用いた。その布を、実施例1~6および比較例1~3の繊維用加工薬剤をそれぞれ水で20倍(質量比)に希釈して得られる水分散液(5質量%水分散液)に浸漬した。その後、前記布を、マングルを用いて絞り率70%で絞り、さらに、テンターを用いて130℃で2分間乾燥させた。以上のとおりにして、前記布(繊維製品)を、前記繊維用加工薬剤により加工した。
【0058】
〔洗濯試験〕
実施例1~6および比較例1~3のそれぞれの繊維用加工薬剤で加工した前記布(繊維製品)に対し、JIS L 0217 103 法に基づき、下記の洗濯機および洗剤を用いて洗濯試験を行った。
洗濯機:全自動式洗濯機
洗剤 :無りんトップ(ライオン株式会社の商品名)
【0059】
〔帯電防止性能〕
実施例1~6および比較例1~3のそれぞれの繊維用加工薬剤で加工した前記布(繊維製品)の洗濯前(洗濯なし)および洗濯5回後において、それぞれ、JIS L 1094 帯電性試験方法に準拠し、摩擦帯電圧測定法および半減期測定法で帯電防止性能を測定した。
【0060】
以上のようにして評価した実施例1~6および比較例1~3のそれぞれの繊維用加工薬剤の性能を、それぞれの繊維用加工薬剤の組成とともに、下記表1に示す。
【0061】
【0062】
表1に示すとおり、実施例1~6の繊維用加工薬剤は、いずれも、水への分散性が良好であった。そして、実施例1~6の繊維用加工薬剤によれば、前記布(繊維製品)を加工した結果、帯電防止性能が付与されていた。さらに、実施例1~6の繊維用加工薬剤で加工した布は、洗濯5回後にも帯電防止性能が失われていなかった。すなわち、実施例1~6の繊維用加工薬剤は、洗濯耐久性にも優れる耐久帯電防止剤として機能することが確認された。
【0063】
一方、比較例1~3の繊維用加工薬剤は、いずれも、水への分散性が良くなかった。具体的には、合成例1の直鎖状ポリエステル樹脂を用いた比較例1では、ビスフェノールAのEO10モル付加物(芳香環を有する非イオン界面活性剤、成分(C))を用いても、水への分散性が良くなかった。一方、比較例2および3は、合成例2の分岐型ポリエステル樹脂を用いたが、非イオン界面活性剤を加えなかった(比較例2)、または、ビスフェノールAのEO10モル付加物に代えてラウリルアルコールのEO10モル付加物(芳香環を有しない非イオン界面活性剤)を用いた(比較例3)結果、水への分散性が良くなかった。このため、比較例1~3は、いずれも、前記布に繊維用加工薬剤が付着せず、帯電防止性能および洗濯耐久性は評価不可能であった。なお、比較例2または3において、合成例2の分岐型ポリエステル樹脂を合成例3の分岐型ポリエステル樹脂に変更しても同様の結果であった。