(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】立坑工事用の作業床
(51)【国際特許分類】
E21D 5/12 20060101AFI20220826BHJP
E02D 29/12 20060101ALI20220826BHJP
【FI】
E21D5/12
E02D29/12 B
(21)【出願番号】P 2019164075
(22)【出願日】2019-09-10
【審査請求日】2022-02-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕介
(72)【発明者】
【氏名】南 和伸
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3107458(JP,U)
【文献】特開2009-127190(JP,A)
【文献】特開2000-192499(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0126396(KR,A)
【文献】特開2002-266358(JP,A)
【文献】特開2005-146570(JP,A)
【文献】特開平11-093194(JP,A)
【文献】実開昭59-073163(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第107724435(CN,A)
【文献】実開平03-079392(JP,U)
【文献】中国実用新案第208918534(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 5/12
E02D 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立坑に収容可能なステージと、
前記ステージに設けられた平面視で矩形形状の開口部と、
前記開口部の一方の対向する辺縁に沿って立設された側面視で略逆V字形状の一組の側板と、
前記開口部の他方の対向する辺縁を軸に回転自在に設置された一組の蓋板と、を具備し、
前記蓋板は前記開口部の閉塞時に前記側板の辺縁を覆うように構成され
、前記ステージの下方で行われる発破による風圧や飛び石によって開かないように該蓋材同士がロック部材によってロックされたことを特徴とする立坑工事用の作業床。
【請求項2】
立坑に収容可能なステージと、
前記ステージに設けられた平面視で矩形形状の開口部と、
前記開口部の一方の対向する辺縁に沿って立設された側面視で略逆V字形状の一組の側板と、
前記開口部の他方の対向する辺縁を軸に回転自在に設置された一組の蓋板と、を具備し、
前記蓋板は前記開口部の閉塞時に前記側板の辺縁を覆うように構成され
、
前記蓋板に一端が固定されたワイヤをさらに具備し、
前記ワイヤの張力によって前記開口部の開口された状態が保たれ、
前記ワイヤは前記ステージから前記張力の反力を確保されることを特徴とする立坑工事用の作業床。
【請求項3】
前記開口部の開口された状態では、前記蓋板は前記ステージに立設されたストッパにさらに支持されたことを特徴とする請求項2に記載の立坑工事用の作業床。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に構築される立坑工事用に、立坑内部に設置する作業床に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に構築される立坑は、シールドトンネル工事におけるシールド機の発進・到達基地や放射性廃棄物の中間貯蔵、橋梁の基礎等、多目的に利用されている。この立坑の構築工事では、立坑内部の掘削や発破、側壁や底版の構築といった作業を伴うため、地上から作業中の深度まで立坑内を自在に昇降できる作業床が必要となる。
一般に、立坑の構築においては、作業床の盛り替えが、地盤の掘削に追従して行われる。地盤の掘削が発破を伴う場合、この作業床は発破作業時の飛散防止機能をさらに有する。作業床の盛り替え方法は、地上に設置されているクレーン等の揚重設備を用いて作業床を吊り降ろし、作業床上での作業中は立坑壁面に設置した支保工等に係止する方法が従来から適用されている。
【0003】
特許文献1には、立坑の内壁と内接するか又は若干の間隙をもって開閉自在の機材搬入出用扉と作業者入出用扉とを設け、管材や機械を懸吊して昇降させるための機材搬入出窓口と作業者が昇降するための昇降口が形成された立坑工事用作業床及びその取付装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の立坑工事用作業床及びその取付装置によれば、開口部周囲に墜落防止柵を特段設ける必要がなく、作業者や歩行者の墜落や物体の落下を有効に防止することができるが、頻繁に行われる開閉自在の機材搬入用扉の開閉作業に時間を要する課題や開口状態で開口から飛来落下する等の課題を解消するものではない。
本発明は、前記の問題点を解決することを目的とするものであり、簡易な構成で、機材搬入用扉の開閉時間を短縮し、かつ墜落防止措置を同時に達成できる立坑工事用の作業床を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明の立坑工事用の作業床は、立坑に収容可能なステージと、 前記ステージに設けられた平面視で矩形形状の開口部と、前記開口部の一方の対向する辺縁に沿って立設された側面視で略逆V字形状の一組の側板と、前記開口部の他方の対向する辺縁を軸に回転自在に設置された一組の蓋板と、を具備し、前記蓋板は前記開口部の閉塞時に前記側板の辺縁を覆うように構成され、前記ステージの下方で行われる発破による風圧や飛び石によって開かないように該蓋材同士がロック部材によってロックされたことを特徴としている。
さらに、本発明の立坑工事用の作業床は、立坑に収容可能なステージと、前記ステージに設けられた平面視で矩形形状の開口部と、前記開口部の一方の対向する辺縁に沿って立設された側面視で略逆V字形状の一組の側板と、前記開口部の他方の対向する辺縁を軸に回転自在に設置された一組の蓋板と、を具備し、前記蓋板は前記開口部の閉塞時に前記側板の辺縁を覆うように構成され、前記蓋板に一端が固定されたワイヤをさらに具備し、前記ワイヤの張力によって前記開口部の開口された状態が保たれ、前記ワイヤは前記ステージから前記張力の反力を確保されることを特徴としている。
また、前記蓋板は前記ステージに立設されたストッパにさらに支持されていても良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明の立坑工事用の作業床によれば、簡易な構成で、機材搬入用扉の開閉時間を短縮し、かつ墜落防止措置を同時に達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の立坑工事用の作業床の平面図である。
【
図2】本発明の立坑工事用の作業床の断面図であり(
図1のA-A矢視)、(a)は開口部の開口時、(b)は開口部の閉塞時をそれぞれ示す。
【
図3】本発明の立坑工事用の作業床の断面図であり(
図1のB-B矢視)、(a)は開口部の開口時、(b)は開口部の閉塞時をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の立坑工事用の作業床の平面図であり、後述する開口部の閉塞状態を示す。また
図2は、
図1のA-A矢視である本発明の立坑工事用の作業床の断面図であり、(a)は開口部の開口時、(b)は開口部の閉塞時をそれぞれ示す。さらに
図3は、
図1のB-B矢視である本発明の立坑工事用の作業床の断面図であり、(a)は開口部の開口時、(b)は開口部の閉塞時をそれぞれ示す。
【0010】
図1に示す通り、本発明の立坑工事用の作業床1は、地中内を掘削及び構築して形成した円形の立坑Sに収容可能な形状寸法に加工されたステージ2と、ステージ2に設けられた平面視で矩形形状の開口部Oと、開口部Oの一方の辺縁に沿って立設された側面視で略逆V字形状の一組の側板3,3と、開口部Oの他方の対向する辺縁を軸に回転自在に設置された一組の蓋板5,5とを具備し、蓋板5,5は開口部Oの閉塞時に側板3,3の辺縁を覆うように構成されている。
【0011】
図2,3に示す通り、ステージ2は複数のH形鋼等の型鋼からなる梁材と、縞鋼板等の鋼板からなる床面材との組み合わせ、ボルトや溶接等による接合方法を用いて一体として形成されている。ステージ2は、構築後の立坑Sの内周面や、該内周面に敷設された種々の仮設材に干渉しない形状、寸法に加工されている。ステージ2の中央付近には、平面視矩形形状の開口部Oが形成され、作業床1下方で行われる立坑Sの掘削や構築作業に伴う残土の搬出、コンクリートの供給、仮設資機材の投入・搬出、発破作業時の重機の退避のための搬出、再搬入等、想定される全ての作業を考慮して形状、寸法が決定されている。なお、作業床1を境界面とする立坑Sの上方と下方での作業を同時期に行う場合、開口部Oからの飛来落下に対する下方作業者への安全確保や、下方での発破作業時における爆風による砂礫等の飛来に対する事故防止の観点から、開口部Oは後述する側板3,3及び蓋板5,5によって、閉塞することが可能な構造となっている。
【0012】
図1,3に示す通り、側板3は開口部Oの一方の対向する辺縁に沿って立設された側面視で略逆V字形状の板材であり、複数の型鋼と鋼板を組み合わせて形成されている。側板3の開口とは背面側には支持材4,4,4の一方が固設され、その他方はステージ2に固設されている。支持材4は、H型鋼からなる斜材である。
【0013】
図1~3に示す通り、蓋板5は開口部Oの他方の対向する辺縁を軸に回転自在に設置された板材であり、側板3と同様に、複数の型鋼と鋼板を組み合わせて形成されている。蓋板5の回転は、蓋板5の辺縁とステージ2に跨るように複数の蝶番6,6,6・・・に連結されることで実現している。蓋板5の形状、寸法は、開口部Oの閉塞状態で、側板3の辺縁を覆い、かつ蓋板5,5の突き合った辺縁間の隙間が生じないように決められている。
図2(b)や
図3(b)に示す通り、開口部Oの閉塞状態では、作業床1下方で行われる発破による爆風による風圧等によって容易に開かないように、ロック部材51,51によって錠止め可能になっている。
また、ワイヤ7は、蓋板5の開口とは背面側にその一端を回転自在に固定され、他端は、ステージ2上に立設されたストッパ8に設けた滑車81に係回させた上で、ステージ2上に固設したウインチ9に捲装されている。ウインチ9の送り出し、巻き取りによって、蓋板5の開閉が行われる。
開口部Oの開口された状態では、蓋板5の重心が開口部O側に働くようにストッパ8から支持されている。これにより、ワイヤ7には常に張力が働き、人力による作業を不要とし、ウインチ9の制御によってのみ蓋板5の開閉が実現できる。
【0014】
以上より、本発明の立坑工事用の作業床によれば、簡易な構成で、機材搬入用扉の開閉時間を短縮し、かつ墜落防止措置を同時に達成することが可能となる。
【0015】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記の実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0016】
S 立坑
O 開口部
1 作業床
2 ステージ
3 側板
4 支持材
5 蓋板
51 ロック部材
6 蝶番
7 ワイヤ
8 ストッパ
81 滑車
9 ウインチ