(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】洗浄装置
(51)【国際特許分類】
B60S 1/62 20060101AFI20220826BHJP
H04N 5/225 20060101ALN20220826BHJP
【FI】
B60S1/62 120A
B60S1/62 110A
H04N5/225 430
(21)【出願番号】P 2019507402
(86)(22)【出願日】2018-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2018002768
(87)【国際公開番号】W WO2018173486
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】P 2017059502
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000148689
【氏名又は名称】株式会社村上開明堂
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英法
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 太
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-081097(JP,A)
【文献】特開平09-175339(JP,A)
【文献】特開2014-125104(JP,A)
【文献】実開昭57-174260(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/60
B60S 1/60
B60R 1/00
G03B 15/00
H04N 5/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラに設けられた光透過部材を洗浄する洗浄装置であって、
前記光透過部材に接触する糸状部材と、
前記糸状部材が前記光透過部材に接触した状態において、前記糸状部材が前記光透過部材の表面に沿って移動するように前記糸状部材を回転する回転部材と、
を備え、
前記回転部材は、リング状とされており、
前記回転部材の内側に前記光透過部材が配置されると共に、前記回転部材の周上の2カ所に張られた前記糸状部材の両端部が、前記光透過部材の凸面の頂部よりも下に位置しており、
前記糸状部材は、前記回転部材が回転することによって回転し、
前記糸状部材は、前記回転部材の中心を中心として回転する、
洗浄装置。
【請求項2】
前記糸状部材は、前記回転部材に保持されており、
前記回転部材を回転する駆動手段を備える、
請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記回転部材は、水流を受けることによって前記糸状部材を回転する、
請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記糸状部材の太さは、0.01mm以上且つ0.10mm以下である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記糸状部材と前記回転部材との間に介在する弾性部を備える、
請求項1~4のいずれか一項に記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記糸状部材及び前記回転部材は、前記光透過部材に対して着脱可能とされている、
請求項1~5のいずれか一項に記載の洗浄装置。
【請求項7】
前記糸状部材は、黒色とされている、
請求項1~6のいずれか一項に記載の洗浄装置。
【請求項8】
前記糸状部材は、引っ張られた状態で前記光透過部材に接触し、
前記糸状部材の引張荷重は0.2N以上且つ1.5N以下である、
請求項1~7のいずれか一項に記載の洗浄装置。
【請求項9】
前記糸状部材は、前記光透過部材の焦点からずれた位置に設けられる、
請求項1~8のいずれか一項に記載の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カメラに設けられる洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラのレンズ等の光透過部材を洗浄する洗浄装置は従来から知られている。特開2014-125104号公報には、屋外環境で走行する車両に取り付けられたカメラ装置を洗浄する付着物払拭装置が記載されている。この付着物払拭装置は、カメラ装置の筐体に揺動可能に取り付けられたワイパアームを備える。ワイパアームは、アーム本体と、アーム本体に取り付けられたワイパブレードとを有する。
【0003】
ワイパブレードは、カメラ装置のレンズの上方に配置されており、レンズの表面に沿うように円弧状に形成されている。ワイパブレードは、ワイパアームが揺動するときにレンズの表面に一定の押圧力で押し付けられる。ワイパブレードは、弾性を有するゴム、又はシリコン樹脂によって構成されている。上記のようにワイパブレードがレンズの表面に押し付けられた状態でワイパアームが揺動することにより、レンズに付着した付着物を払拭する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した付着物払拭装置において、ワイパブレードは板状とされており、このワイパブレードがレンズ上を往復することによって付着物が払拭される。この付着物払拭装置では、付着物を払拭してレンズを洗浄しているときに、ワイパブレードがカメラ装置の撮影画像に映り込む。従って、レンズの洗浄中に撮影画像が見えなくなるという問題が発生しうる。よって、前述した付着物払拭装置は、例えば車両の走行中には使用できない。すなわち、この付着物払拭装置は、使用できるタイミングが限られているので、使用性の点で改善の余地がある。
【0006】
また、前述の付着物払拭装置は、ワイパアームの揺動によってレンズを洗浄している。このようにワイパアームを揺動させて洗浄を行う場合、ワイパアームの揺動の速度を高速にできないことにより、洗浄を効率よく行うことができないという現状がある。
【0007】
本開示は、洗浄中に撮影画像が見えなくなる問題を回避して使用性を高めることができると共に、洗浄を効率よく行うことができる洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る洗浄装置は、カメラに設けられた光透過部材を洗浄する洗浄装置であって、光透過部材に接触する糸状部材と、糸状部材が光透過部材に接触した状態において、糸状部材が光透過部材の表面に沿って移動するように糸状部材を回転する回転部材と、を備え、回転部材は、リング状とされており、回転部材の内側に光透過部材が配置されると共に、回転部材の周上の2カ所に張られた糸状部材の両端部が、光透過部材の凸面の頂部よりも下に位置しており、糸状部材は、回転部材が回転することによって回転し、糸状部材は、回転部材の中心を中心として回転する。
【0009】
この洗浄装置では、カメラの光透過部材に接触する糸状部材を備えており、糸状部材が光透過部材に接触した状態で回転することによって光透過部材を洗浄する。よって、糸状部材が付着物の掻き落とし等を行って洗浄を行うことにより、細い糸状部材で洗浄を行うことができる。従って、カメラの撮影画像に糸状部材が映り込むことを抑制することができるので、カメラの使用中であっても洗浄を行うことができる。よって、洗浄装置を使用するタイミングが限られないので使用性を高めることができる。また、この洗浄装置では、回転部材が糸状部材を回転することによって光透過部材の洗浄を行う。従って、ワイパブレード等を揺動させる場合と比較して、糸状部材を容易に高速回転させることができる。このため、糸状部材の高速回転によって光透過部材の付着物を効率よく掻き落とすことができる。よって、光透過部材の洗浄を効率よく行うことができる。
【0010】
また、糸状部材は、回転部材に保持されており、回転部材を回転する駆動手段を備えてもよい。この場合、駆動手段によって回転部材を回転させることにより、回転部材に保持された糸状部材を光透過部材上で回転させることができる。従って、駆動手段の駆動力で糸状部材を回転させることにより光透過部材の表面を洗浄することができる。
【0011】
また、回転部材は、水流を受けることによって糸状部材を回転してもよい。このように水流で糸状部材を回転する場合、糸状部材を回転させるモータ等の駆動手段を不要とすることができる。従って、洗浄装置を軽量化させることができると共に、洗浄装置の構成を簡素化することができる。
【0012】
また、糸状部材の太さは、0.01mm以上且つ0.10mm以下であってもよい。糸状部材の太さが0.10mm以下であることにより、糸状部材を細くすることができるので、カメラの撮影画像に糸状部材を一層映りにくくすることができる。また、糸状部材の太さが0.01mm以上であることによって糸状部材を切れにくくすることができ、糸状部材の強度を確実に確保することができる。
【0013】
また、前述の洗浄装置は、糸状部材と回転部材との間に介在する弾性部を備えてもよい。この場合、糸状部材は、弾性部を介して回転部材に接続される。よって、光透過部材が凸状に湾曲している場合、弾性部を変形させて糸状部材を光透過部材に接触させることができる。このように光透過部材への配置のときに、弾性部を変形させることができるので、糸状部材にかかる力を抑えて糸状部材が切れるのを抑制することができる。従って、様々な形状の光透過部材に糸状部材を配置しても糸状部材が切れないようにすることができるため、洗浄装置の汎用性を高めることができる。
【0014】
また、糸状部材及び回転部材は、光透過部材に対して着脱可能とされていてもよい。この場合、光透過部材に対する糸状部材及び回転部材の交換を行うことができる。従って、洗浄装置のメンテナンス性を高めることができる。
【0015】
また、糸状部材は、黒色とされていてもよい。この場合、糸状部材からの光の反射を抑えることができる。従って、糸状部材からの反射光によってカメラの撮影画像が鮮明でなくなる問題を抑制することができる。
【0016】
また、糸状部材は、引っ張られた状態で光透過部材に接触し、糸状部材の引張荷重は0.2N以上且つ1.5N以下であってもよい。糸状部材の引張荷重が0.2N以上であることにより、光透過部材に対する糸状部材の押し付け力を高めて光透過部材における付着物の掻き取りを一層効率よく行うことができる。また、糸状部材の引張荷重が1.5N以下であることにより、糸状部材の摩耗を抑えることができる。
【0017】
また、糸状部材は、光透過部材の焦点からずれた位置に設けられてもよい。この場合、糸状部材が光透過部材の焦点からずれた位置に配置されることにより、カメラの撮影画像への糸状部材の映り込みを一層確実に回避することができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、洗浄中に撮影画像が見えなくなる問題を回避して使用性を高めることができると共に、洗浄を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係る洗浄装置を示す斜視図である。
【
図2】
図1の洗浄装置及びカメラを示す断面図である。
【
図3】
図1の洗浄装置のモータ及びギヤを示す断面図である。
【
図5】
図1の洗浄装置の糸状部材及び回転部材を示す平面図である。
【
図6】第2実施形態に係る洗浄装置を示す平面図である。
【
図7】
図6の洗浄装置の水供給部を示す概念図である。
【
図8】
図6の洗浄装置の回転部材及び糸状部材を示す平面図である。
【
図9】
図8の回転部材及び糸状部材を拡大させた平面図である。
【
図10】変形例に係る洗浄装置の弾性部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示に係る洗浄装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。本明細書において、「光透過部材」とは、光を透過させる部品を示しており、典型的にはレンズ又はフィルタが挙げられる。「糸状部材」は、一方向に直線状に伸びる部材を示しており、典型的には、糸、又はワイヤが挙げられる。「弾性部」は、高い弾性を備え且つ変形可能な部分又は部材を示しており、ゴム、又はバネが挙げられる。「黒色」は、黒だけでなく、黒に近い配色が施された紺色、紫色、茶色、灰色及び濃い緑色を含む。また、「水流」は、純水、及び、水が含まれた洗浄液等、水を含む液体の流れを示している。
【0021】
(第1実施形態)
図1、
図2及び
図3に示されるように、本実施形態に係る洗浄装置1は、カメラCの光透過部材であるレンズC1を物理的に洗浄する洗浄装置である。洗浄装置1は、レンズC1の表面に当接する糸状部材2と、糸状部材2の両端で糸状部材2を弾性的に保持する弾性部7が設けられた回転部材3と、回転部材3を回転自在となるように保持する筐体4とを外観構成として具備する。また、洗浄装置1は、筐体4の内部に、回転部材3を回転駆動させるモータ5と、モータ5の駆動力を回転部材3に伝達するギヤ群6とを備える。
【0022】
筐体4は、全体的に矩形状を成している。筐体4は、糸状部材2及び回転部材3を露出させる開口4aを有する。開口4aは、例えば、糸状部材2及び回転部材3の内周部分を少なくとも露出させる円形状とされている。筐体4は、円形状とされた開口4aの中心4bが、レンズC1の中心C2と一致するように、カメラCに着脱可能に取り付けられる。これにより、糸状部材2及び回転部材3は、レンズC1に対して着脱可能とされている。
【0023】
カメラCは、例えば、車両に設けられたカメラであり、カメラCのレンズC1は車両の斜め後方に向けられている。なお、レンズC1の向きは、車両の斜め後方に限定されず適宜変更可能である。カメラCは、一例として、バックミラーに代えて設けられた車両のカメラモニタシステムを構成している。このカメラモニタシステムは、カメラCと、車両の内部においてカメラCの撮影画像を表示するモニタとを備える。
【0024】
このようにカメラCは、車両に設けられるものである。よって、車両の走行に伴って泥が跳ねたり、雨又は雪が降ったりしたときに、レンズC1に泥等の付着物が付着することが想定される。洗浄装置1は、このレンズC1の表面に付着した付着物を掻き落として洗浄を行う。洗浄装置1は、例えば、車両の運転者の操作を受けて洗浄を行う。しかしながら、洗浄装置1は、付着物によってカメラCの撮影画像の鮮明度が低下したときに自動的に洗浄を行ってもよい。
【0025】
筐体4は、開口4aを有する矩形板状とされた回転部材保持部4cと、回転部材保持部4cの面外方向から筐体4を見たときに回転部材保持部4cの一の隅部で矩形状に突出する駆動機構収容部4dと、を備える。回転部材保持部4cは、その面外方向から見たときに正方形状を成している。回転部材保持部4cの四隅のそれぞれには、ネジNを挿通させる貫通孔が形成されている。
【0026】
各貫通孔にネジNが挿通されて筐体4のカメラC側でネジNがねじ込まれることにより、洗浄装置1がカメラCに対して固定される。駆動機構収容部4dは、回転部材保持部4cの一の隅部から直方体状に突出している。
図3及び
図4に示されるように、駆動機構収容部4dの内部にはモータ5及びギヤ群6が収容されている。
【0027】
ギヤ群6は、モータ5の駆動軸と共に回転する第1ギヤ6aと、第1ギヤ6aに噛合して回転部材3と共に回転する環状の第2ギヤ6bと、第2ギヤ6bに噛合すると共に筐体4に回転自在とされた軸受6cと、を含む。軸受6cは、第2ギヤ6bから見て第1ギヤ6aの反対側に設けられる。モータ5の駆動力は、第1ギヤ6a及び第2ギヤ6bを介して回転部材3に伝達する。この回転部材3への駆動力の伝達により、これにより回転部材3が回転する。このように、モータ5は、回転部材3を回転する駆動手段に相当する。
【0028】
回転部材3は、糸状部材2を保持すると共に、糸状部材2がレンズC1の表面に沿って移動するように糸状部材2を回転する。回転部材3は、例えば、PP(ポリプロピレン)又はABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンの共重合合成樹脂)等の樹脂材料によって構成されている。回転部材3の回転数は、例えば、120rpm以上且つ250rpm以下であるが、適宜変更可能である。また、レンズC1の1回の洗浄における回転部材3の回転時間は、例えば、3秒以上且つ5秒以下である。
【0029】
回転部材3は、例えば、第2ギヤ6bから見てレンズC1の反対側(表側)に設けられる。
図1及び
図5に示されるように、回転部材3は、リング状とされている。例えば、回転部材3は、レンズC1を露出させる開口3bを有しており、この開口3bは円形状とされている。前述したように、回転部材3は、糸状部材2を保持する弾性部7を備える。弾性部7は、開口3bを形成する回転部材3の内周面3dから開口3bの内側に突出している。弾性部7は、例えば、回転部材3と一体にされた樹脂製のバネ部材である。
【0030】
例えば、2つの弾性部7が、開口3bの中心3cに対して互いに対称となる位置に配置されている。各弾性部7は、内周面3dから内周面3dに沿うように内周面3dから突出している。弾性部7は、その先端部7aに向かうに従って徐々に先細りしている。弾性部7は、糸状部材2と回転部材3との間に介在する。弾性部7の先端部7aには、糸状部材2の端部を固定する固定部7bが設けられる。糸状部材2の両端部のそれぞれは、例えば、先端部7aを貫通しており先端部7aの径方向外側で固定部7bに固定されている。
【0031】
弾性部7は、カメラCに洗浄装置1が取り付けられるときに、凸状とされたレンズC1の形状に応じて変形自在とされている。よって、糸状部材2に凸状のレンズC1が当接しても糸状部材2にかかる応力は緩和される。また、糸状部材2は、弾性部7の固定部7bに引っ張られた状態でレンズC1に接触する。糸状部材2には、例えば、0.2N以上且つ1.5N以下の引張荷重が付与されている。
【0032】
糸状部材2は、前述した2つの弾性部7のうち、一方の弾性部7から他方の弾性部7に向かって直線状に伸びている。例えば、2つの弾性部7が中心3cに対して互いに対称に配置されていることにより、糸状部材2は中心3cを通るように配置される。糸状部材2は、例えば、フロロカーボンを含むカーボン繊維によって構成された糸である。しかしながら、糸状部材2は、ステンレスによって構成されたワイヤであってもよい。このように、糸状部材2の材料は適宜変更可能である。
【0033】
糸状部材2の太さは、例えば、0.01mm以上且つ0.10mm以下であり、好ましくは0.03mm以上且つ0.10mm以下であり、より好ましくは0.03mm以上且つ0.06mm以下である。糸状部材2の色彩は、例えば黒である。しかしながら、糸状部材2の色彩は、紺色、紫色、茶色、灰色又は濃い緑色等、光を反射しにくい黒以外の色彩であってもよく適宜変更可能である。また、糸状部材2は、つや消し加工が施されていてもよい。
【0034】
次に、洗浄装置1を用いてカメラCのレンズC1を洗浄する洗浄方法の一例について説明する。まず、車両の運転者は、車両の内部に配置されたモニタを見てカメラCの撮影画像が鮮明でないと判断したときに洗浄装置1を稼動させるスイッチを操作する。運転者がスイッチを操作すると、モータ5が駆動力を発生し、モータ5の駆動力はギヤ群6を介して回転部材3に伝達する。
【0035】
モータ5の駆動力が回転部材3に伝達すると、回転部材3と共に糸状部材2が中心3cを中心として例えば3秒以上且つ5秒以下回転する。この回転により、糸状部材2がレンズC1の付着物を掻き落とし、レンズC1の洗浄が完了する。なお、洗浄装置1によるレンズC1の洗浄方法は、自動的に行う方法であってもよい。この場合、カメラCの撮影画像が鮮明でなくなったことを自動検知し、この自動検知に伴ってモータ5が駆動力を発生して上記同様の洗浄を行う。
【0036】
次に、本実施形態に係る洗浄装置1の作用効果について詳細に説明する。
【0037】
洗浄装置1では、カメラCのレンズC1に接触する糸状部材2を備えており、糸状部材2がレンズC1に接触した状態で回転することによってレンズC1を洗浄する。よって、糸状部材2が付着物の掻き落とし等を行って洗浄を行うことにより、細い糸状部材2で洗浄を行うことができる。従って、カメラCの撮影画像に糸状部材2が映り込むことを抑制することができる。糸状部材2は、レンズC1の焦点からずれた位置に設けられるので、カメラCの撮影画像に映らないようにすることができる。
【0038】
従って、カメラCの使用中、及び車両の運転中であっても洗浄を行うことができる。よって、洗浄装置1を使用するタイミングが限られないので使用性を高めることができる。また、洗浄装置1では、回転部材3が糸状部材2を回転することによってレンズC1の洗浄を行う。従って、ワイパブレード等を揺動させる場合と比較して、糸状部材2を容易に高速回転させることができる。このため、糸状部材2の高速回転によってレンズC1の付着物を効率よく掻き落とすことができる。よって、レンズC1の洗浄を効率よく行うことができる。
【0039】
また、回転部材3は、リング状とされており、糸状部材2は、回転部材3に保持されている。洗浄装置1は、回転部材3を回転するモータ5を備える。従って、モータ5によって回転部材3を回転させることにより、回転部材3に保持された糸状部材2をレンズR1上で回転させることができる。よって、モータ5の駆動力で糸状部材2を回転させることによりレンズC1の表面を洗浄することができる。
【0040】
また、糸状部材2の太さは、0.01mm以上且つ0.10mm以下である。糸状部材2の太さが0.10mm以下であることにより、糸状部材2を細くすることができるので、カメラCの撮影画像に糸状部材2を一層映りにくくすることができる。また、糸状部材2の太さが0.01mm以上であることによって糸状部材2を切れにくくすることができ、糸状部材2の強度を確実に確保することができる。
【0041】
また、洗浄装置1は、糸状部材2と回転部材3との間に介在する弾性部7を備える。糸状部材2は、弾性部7を介して回転部材3に接続される。よって、レンズC1が凸状に湾曲している場合、弾性部7を変形させて糸状部材2をレンズC1に接触させることができる。
【0042】
このようにレンズC1に糸状部材2を接触させるときに、弾性部7を変形させることができるので、糸状部材2にかかる力を抑えて糸状部材2が切れるのを抑制することができる。従って、様々な形状のレンズC1に糸状部材2を配置しても糸状部材2が切れないようにすることができるため、洗浄装置1の汎用性を高めることができる。更に、本実施形態では、弾性部7が回転部材3と一体になっているので、部品点数の増加を抑えることができる。
【0043】
また、糸状部材2及び回転部材3は、レンズC1に対して着脱可能とされている。よって、レンズC1に対する糸状部材2及び回転部材3の交換を行うことができる。従って、洗浄装置1のメンテナンス性を高めることができる。
【0044】
また、糸状部材2は、黒色とされている。よって、糸状部材2からの光の反射を抑えることができる。従って、糸状部材2からの反射光によってカメラCの撮影画像が鮮明でなくなる問題を抑制することができる。
【0045】
また、糸状部材2は、カーボン繊維によって構成されている。従って、糸状部材2を丈夫にすることができると共に軽量とすることができる。また、カーボン繊維は、伸縮性及びしなやかさを有するため、洗浄に伴う糸状部材2の摩耗を抑制することができる。
【0046】
また、回転部材3の回転数は、120rpm以上である。よって、レンズC1に付着した水等の付着物を回転の遠心力によって確実に除去することができる。従って、糸状部材2によるレンズC1の洗浄性を一層高めることができる。
【0047】
また、糸状部材2は、引っ張られた状態でレンズC1に接触し、糸状部材2の引張荷重は0.2N以上且つ1.5N以下である。糸状部材2の引張荷重が0.2N以上であることにより、レンズC1に対する糸状部材2の押し付け力を高めてレンズC1における付着物の掻き取りを一層効率よく行うことができる。また、糸状部材2の引張荷重が1.5N以下であることにより、糸状部材2の摩耗を抑えることができる。
【0048】
また、糸状部材2は、レンズC1の焦点からずれた位置に設けられる。従って、糸状部材2がレンズC1の焦点からずれた位置に配置されることにより、カメラCの撮影画像への糸状部材2の映り込みを一層確実に回避することができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、
図6~
図9を参照しながら第2実施形態に係る洗浄装置11について説明する。洗浄装置11は、モータ5及びギヤ群6に代えて水流Wを回転駆動手段として用いる点、並びに、回転部材3及び筐体4のそれぞれとは形状が異なる回転部材13及び筐体14を備える点が第1実施形態と異なっている。以下では、第1実施形態と重複する説明を適宜省略する。
【0050】
図6及び
図7に示されるように、洗浄装置11は、筐体14の内部に水を供給する水供給部15を備える。水供給部15は、例えば、ウォッシャータンク16、ウォッシャーポンプ17、管路18、及び水導入部19を備える。ウォッシャータンク16には水(ウォッシャー液を含む水)が貯留されている。
【0051】
ウォッシャーポンプ17はウォッシャータンク16の出口側に設けられる。ウォッシャータンク16と筐体14とは、ウォッシャーポンプ17、管路18及び水導入部19を介して互いに接続されている。また、ウォッシャーポンプ17は、車両の運転者の操作によって作動する。すなわち、ウォッシャーポンプ17は、運転者によって操作されると、ウォッシャータンク16の水を、管路18及び水導入部19を介して筐体14の内部に供給する。なお、ウォッシャーポンプ17は、カメラCの撮影画像が鮮明でなくなったときに自動的に作動してもよい。
【0052】
図6及び
図8に示されるように、筐体14は、角部が丸められた矩形状を成している。筐体14は、回転部材13が載せられる本体部14a、及び本体部14aに載せられた回転部材13の一部を覆う蓋部14bを有する。本体部14a及び蓋部14bは、共に矩形状を成しており、互いに重ね合されて接合される。蓋部14bは、糸状部材2及び回転部材13を露出させる開口4aを有する。
【0053】
本体部14aは、その四隅のそれぞれにネジNを挿通する貫通孔14cを備える。蓋部14bにもネジNを挿通する貫通孔が形成されており、ネジNは、蓋部14bの貫通孔、及び貫通孔14cに通されてカメラC側にねじ込まれる。これにより、本体部14a及び蓋部14bが互いに接合された状態で洗浄装置11がカメラCに対して固定される。また、ネジNを外すことにより、筐体14を分解すると共に、糸状部材2及び回転部材13をカメラCから外すことが可能である。
【0054】
図8及び
図9に示されるように、前述した水導入部19は、筐体14の内部において回転部材13に接続する。回転部材13は、水導入部19からの水流Wを受けて回転する環状の回転部13eと、回転部13eの内側に位置すると共に弾性部7が設けられる内周部13fとを備える。
【0055】
回転部13eは、水導入部19からの水流Wを受ける凸状の壁部13gを備える。回転部材13の面外方向から見て、壁部13gは、回転部13eの外縁から水導入部19の水流Wに沿って延びると共に径方向内側に徐々に湾曲する曲線状を成している。このように、壁部13gは、水流Wを回転部材13の径方向内側に受け流す形状とされている。
【0056】
回転部材13は、複数の壁部13gを備える。例えば、複数の壁部13gは、回転部材13の周方向に沿って互いに等間隔に配置される。壁部13gの数は、例えば、24個である。すなわち、一例として、各壁部13gは、15°の位相角をもって配置されている。
【0057】
次に、洗浄装置11を用いてレンズC1を洗浄する洗浄方法について説明する。例えば、前述と同様、車両の運転者が洗浄装置11を稼動するスイッチを操作すると、ウォッシャーポンプ17によってウォッシャータンク16から筐体14の内部に水が供給される。
【0058】
筐体14の内部に水が供給されると、この水が回転部材13の壁部13gに当接する。壁部13gに当接した水によって回転部材13が回転する。そして、水は、壁部13gから回転部材13の内側に入り込み、レンズC1に到達する。この水は、回転部材13を回転させる回転駆動力を与えると共に、レンズC1の洗浄液として用いられる。
【0059】
また、水によって回転部材13が回転すると、回転部材13と共に糸状部材2が回転する。これにより、洗浄液が供給されたレンズC1上で糸状部材2がレンズC1の付着物を掻き落とすことによって、乾燥してこびり付いた付着物であっても一層確実に除去される。
【0060】
水によって回転部材13が回転して一定時間が経過した後、回転部材13への水の供給を停止する。水の供給を停止した後には、更に惰性によって回転部材13は3秒~5秒程度回転する。このように、水の供給停止後に回転部材13が更に回転することにより、残留する水をレンズC1から除去することが可能となる。
【0061】
以上、第2実施形態に係る洗浄装置11では、回転部材13は、水流Wを受けることによって糸状部材2を回転する。このように水流Wで糸状部材2を回転するため、糸状部材2を回転させるモータ及びギヤ群等の駆動機構を不要とすることができると共に、モータ及びギヤ群の防水手段も不要となる。従って、洗浄装置11を軽量化させることができると共に、洗浄装置11の構成を簡素化することができる。具体的には、モータ及びギヤ群等の駆動機構を収容する駆動機構収容部が不要である。その結果、例えば矩形状のように、簡易な形状の筐体14とすることができる。
【0062】
以上、各実施形態について説明したが、本開示は、前述の各実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、本開示は、各請求項の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。
【0063】
例えば、前述の実施形態では回転部材3と一体になっている弾性部7について説明した。この弾性部7の形状、大きさ、材料、数及び配置態様は適宜変更可能である。更に、場合によっては弾性部7を省略することも可能である。また、回転部材3とは別体の弾性部を備えていてもよい。例えば、
図10に示されるように、回転部材3の周方向に延びるスプリング21を弾性部として備えていてもよい。
【0064】
この場合、糸状部材2の一端2xが回転部材3に固定されると共に、糸状部材2の他端2yはスプリング21に連結されている。糸状部材2の他端2y側は、回転部材3で保持部材22によって保持されつつ回転部材3の周方向に方向転換されている。この方向転換された先にある他端2yがスプリング21を介して回転部材3に固定されている。これにより、レンズC1に糸状部材2が接触するときにスプリング21が伸長するので、糸状部材2に付与される力を緩和することができる。従って、糸状部材2が切れる事態を回避することができる。
【0065】
また、前述の実施形態では、黒色であって且つカーボン繊維によって構成された糸状部材2、及び、樹脂製の回転部材3について説明した。しかしながら、糸状部材の材料、数、色彩及び大きさは適宜変更可能である。また、回転部材の材料、形状及び大きさは適宜変更可能である。更に、第2実施形態の回転部材13における壁部13gの数、形状、大きさ及び配置態様についても適宜変更可能である。
【0066】
また、洗浄装置の筐体についても、前述した筐体4,14の形状に限定されず適宜変更可能である。更に、前述の実施形態では、ネジNで筐体4を固定させることによって洗浄装置1をカメラCに対して固定させた。しかしながら、洗浄装置の固定手段は、嵌合構造等、ネジNを用いない手段であってもよい。
【0067】
また、前述の第2実施形態では、洗浄装置11が水供給部15を備えており、水流Wによって糸状部材2を回転する例について説明したが、第1実施形態の洗浄装置1が水供給部15を備えていてもよい。また、ウォッシャータンク16、ウォッシャーポンプ17、管路18及び水導入部19を備えた水供給部15に限られず、ウォッシャータンク16以外の箇所から水を供給する水供給部を備えていてもよい。このように、水供給部の構成、形状、数及び配置態様は適宜変更可能である。
【0068】
また、前述の実施形態では、車両に設けられたカメラCのレンズC1を洗浄する洗浄装置1について説明した。しかしながら、本開示に係る洗浄装置は、例えば、カメラのフィルタ等、他の光透過部材を洗浄するものであってもよい。また、本開示に係る洗浄装置は、例えば防犯カメラのレンズを洗浄する洗浄装置であってもよく、カメラの構成、用途及び態様は特に限定されず、種々のカメラに適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本開示によれば、洗浄中に撮影画像が見えなくなる問題を回避して使用性を高めることができると共に、洗浄を効率よく行うことができる。
【符号の説明】
【0070】
1,11…洗浄装置、2…糸状部材、3,13…回転部材、7…弾性部、21…スプリング(弾性部)、C…カメラ、C1…レンズ(光透過部材)、W…水流。