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特許7129970シート状製品と、セキュリティタグを認証する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】シート状製品と、セキュリティタグを認証する方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/16 20060101AFI20220826BHJP
【FI】
G06K19/16
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019513904
(86)(22)【出願日】2017-09-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 EP2017072827
(87)【国際公開番号】W WO2018046746
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2019-06-25
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-02
(31)【優先権主張番号】16188357.4
(32)【優先日】2016-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514323095
【氏名又は名称】アウテンティック フィジョン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】AUTHENTIC VISION GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイス、 トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ベルグミューラー、 トーマス
【合議体】
【審判長】篠原 功一
【審判官】新田 亮
【審判官】須田 勝巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-345319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/00, G06K 7/14, G06K 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状製品(1)であって、
視角とともに変化する光学的特性を有する少なくともつのセキュリティフィーチャ(2)と、
少なくともつのマーカ(3)と、を有し、
前記シート状製品(1)の前記セキュリティフィーチャ(2)の位置が、前記シート状製品(1)の前記マーカ(3)の位置に対して、予め決められている、シート状製品(1)において、
前記シート状製品は2つ以上の異なるマーカ(3)を有し、
各マーカは、機械的に読み出し可能な符号を有し、
前記シート状製品は少なくとも2つの異なる前記セキュリティフィーチャを有し、各前記セキュリティフィーチャは少なくとも1つの光学可変デバイス(4,5)を有し、前記シート状製品内の前記光学可変デバイスの光学的特性は一定でないことを特徴とする、シート状製品(1)。
【請求項2】
各マーカ(3)は、前記シート状製品(1)上の位置に一意的に帰属可能であることを特徴とする、請求項1に記載のシート状製品(1)。
【請求項3】
各マーカは、一意的に識別可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載のシート状製品(1)。
【請求項4】
各マーカ(3)は、符号化された識別子を有し、前記符号化された識別子の符号化は、エラーの検出またはエラーの訂正のための情報を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のシート状製品(1)。
【請求項5】
前記マーカは、前記マーカに対する位置によって識別される少なくとも1つの隣接するセキュリティフィーチャの光学的特性の符号化を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のシート状製品(1)。
【請求項6】
記セキュリティフィーチャ(2)は、前記マーカ(3)と重なるか、または前記マーカ(3)の一部であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載のシート状製品(1)。
【請求項7】
記セキュリティフィーチャ(2)は、並べて配置された2つ以上の光学可変デバイス(4、5)を有し、前記2つ以上の光学可変デバイス(4、5)は互いに異なる光学的特性を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のシート状製品(1)。
【請求項8】
シート状製品(1)は、シートまたはフィルム、特にホログラフィックシートまたはホログラフィックフィルムであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載のシート状製品(1)。
【請求項9】
タイル状に配置された請求項1からのいずれか1項に記載の2つ以上のシート状製品(1)を有する媒体(10)。
【請求項10】
請求項1からのいずれか1項に記載のシート状製品(1)または媒体(10)の部分(6)内に含まれている、部分的または完全なセキュリティフィーチャ(8)の光学的特性を判定する方法であって、
前記部分(6)は、少なくとも1つのマーカ(7)と、部分的または完全なセキュリティフィーチャ(8)の少なくとも一部とを有し、
前記方法は、
前記少なくとも1つのマーカ(7)の位置に対する、前記部分(6)内に含まれている前記部分的または完全なセキュリティフィーチャ(8)の位置を判定することと、
判定された相対位置を用いて、前記シート状製品(1)の前記セキュリティフィーチャ(2)の位置および光学的特性を格納したマップから、前記部分的または完全なセキュリティフィーチャ(8)の前記光学的特性を読み出すことと、を含む方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのマーカ(7)を識別することと、
前記少なくとも1つのマーカ(7)の識別情報と、識別されたマーカに対する前記部分的または完全なセキュリティフィーチャ(8)の前記位置とに基づいて、前記マップから、前記部分的または完全なセキュリティフィーチャ(8)の前記光学的特性を読み出すこととを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記部分(6)の参照マークの位置を特定することと、
前記参照マークの判定された位置を、前記マーカ(7)の判定された位置とともに用いて、前記部分(6)内に含まれている部分的または完全なセキュリティフィーチャ(8)の光学的特性を読み出すことと、を特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記部分(6)の境界(9)が前記参照マークとして用いられることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1からのいずれか1項に記載のシート状製品(1)または媒体(10)の部分(6)を有するセキュリティタグを認証する方法であって、
請求項10から13のいずれか1項に記載の前記部分(6)内に含まれている部分的または完全なセキュリティフィーチャ(8)の光学的特性を判定することと、
少なくとも1つの画像センサを使用して、前記部分(6)内に含まれている前記部分的または完全なセキュリティフィーチャ(8)の光学的特性を判定することと、
判定された前記光学的特性同士を比較することと、
比較された前記光学的特性同士が一致する場合に前記セキュリティタグの真正さを確認することと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品または製品パッケージに配置されたときにその製品またはパッケージを光学的に認証する手段を構成するセキュリティタグを作製するための原材料として用いられるシート状製品に関する。
【0002】
詳細には、本発明は、シート状製品であって、視角とともに変化する光学的特性を有する少なくとも1つのセキュリティフィーチャと、少なくとも1つのマーカと、を有し、各マーカは、シート状製品上の位置に一意的に帰属可能であり、シート状製品の少なくとも1つのセキュリティフィーチャの位置が、シート状製品の少なくとも1つのマーカの位置に対して、予め決められている、シート状製品に関する。そのようなセキュリティタグは、一般に、偽造品を検出可能にすることによって製品の偽造に対処するために使用される。さらに、本発明は、そのようなシート状製品の部分(section)内に含まれている、部分的または完全な安全機能部(セキュリティフィーチャ)の光学的特性を判定するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
国際公開WO2015/079014A1号には、セキュリティタグを作製するシステムが記載されている。基本的に、このようなセキュリティタグは、原材料から複数のパッチを切り取り、基材と対象物自体との少なくとも一方にこれらのパッチをランダムに散乱させることによって作製される。供給される原材料には製造公差が存在し、したがって、切り取りと散乱との少なくとも一方によって、切り取られたパッチの真にランダムな(確率的な)形状および分布が得られる。これらのランダム性は、対象物または製品用の明確なマーキングとして用いることができる。国際公開WO2013/188897A1号に記載されている方法では、これらの特性を利用し、ランダムなフィーチャを対象物の識別子とともにデータベースまたは対象物自体に(暗号化された署名を付けて)保存する。これら2つは、後で、識別子とランダムなフィーチャとを有するこのような対象物のマーキングを、カメラを有するプログラム可能なデバイスを用いて視覚的に認証するために用いることができる。しかし、この種のマーキングは比較的高価であり、各マーキングを登録するために、デジタル署名を作成するかまたはデータベースを初期化することによる追加の作業が必要になる。
【0004】
したがって、国際公開WO2016/034555A1号は、最初に認証を試みる際に妥当性チェックを行うことによって、そのようなランダムなセキュリティフィーチャを登録するシステムを提案している。妥当性チェックに合格すると、ランダムなフィーチャが記録され、データベースに登録される。これによって、製造業者が各マーキングを登録することが不要になるが、その代わりに、最初に認証を試みる際のセキュリティが低下する。この方法の1つの欠点は、認証を試みる際の各フィーチャの記録が不正確になる場合があることである。そのような不正確なフィーチャが登録されると、後の認証の試みが妨げられることがあり、この不正確なフィーチャがそのまま記録されることはなく、したがって認証に失敗する。
【0005】
米国特許第6135355号は、キャッシュカードの偽造を妨げる方法およびシステムを開示している。この方法およびシステムでは、カードに対して距離を置いて配置された2つのマーク、すなわち、参照マークと発行マークとを設ける。これらのマークの前述した距離とその他の特性(たとえばマークの形状)は、暗号化され、カードの磁気ストライプに保存される。これらのマークの距離、形状、および位置はカードごとに異なる。参照マークは、ホログラム、バーコード画像、グラフィック画像、または基準穴であってもよい。
【0006】
ヨーロッパ特許出願第2937818号は、一実施形態では、QRコードとホログラム部とを有する2次元マーカを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、公知の方法の欠点のいくつかを解消して、セキュリティタグに使用することができ、かつ自動的または半自動的な視覚認証方式に使用するのに適したシート状製品の複数の小さい部分を使用可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明は、冒頭に定義したシート状製品であって、シート状製品は2つ以上のマーカを有し、各マーカは、機械的に読み出し可能な符号と、人間が読み取り可能な符号と、識別子とからなるグループから選択された少なくとも1つの要素を有し、各マーカは、一意的に識別可能である、シート状製品を提供する。特に、シート状製品上の少なくとも1つのセキュリティフィーチャの位置と、シート状製品上の少なくとも1つのマーカの位置は、どちらも、シート状製品に対して予め決められていてもよい。ここで「予め決められる」とは、(相対)位置が生産工程の必然的な結果であるか、または、生産工程の後であってシート状製品が使用される前に(たとえばシート状製品から各部分を切り取ることによって)記録(決定)され保存されるので、(相対)位置は固定され、シート状製品の製造業者に既知であることを意味する。1つまたは複数のセキュリティフィーチャは、概して、視覚的に検出可能な任意の目立つセキュリティフィーチャであってよい。1つまたは複数のセキュリティフィーチャは、視角に応じて異なる光学的特性を有する、光学的に検出可能な3次元構造または材料を有していてもよい。1つまたは複数のセキュリティフィーチャは、プログラム可能なデバイスによって検証することができる特徴的な材料-フィーチャを有していてもよい。1つまたは複数のセキュリティフィーチャおよび1つまたは複数のマーカの相対位置または位置が予め決められていることは、これらの位置が、シート状製品の各コピーまたは実例において同じであることを意味する。たとえば、これらの位置は、1つまたは複数のシート状製品の製造の条件次第である。セキュリティタグに使用することができるシート状製品の複数の小さい部分を使用可能にするために、シート状製品は、2つ以上のマーカを有し、各マーカは一意的に識別可能である。各マーカは、カメラを有するプログラム可能なデバイスによって識別子に変換することができ、各識別子は、シート状製品において一意的であることが好ましい。少なくとも1つのマーカは、機械的に読み出し可能な符号と、人間が読み取り可能な符号と、識別子とのうちの少なくとも1つを有する。たとえば、各マーカは、クイックレスポンスコードまたはデータマトリックスコードなどの2次元バーコードを有してもよい。そのような符号は、機械で認識するために最適にされ、したがって、視覚的認識方式に使用するのに特に適している。人間が読み取り可能な符号は、たとえばSMS応答または電話サービスを介して半自動的な認証に使用することができ、ユーザは、人間が読み取り可能な符号を有する要求を送信し、1つまたは複数の関連するセキュリティフィーチャの光学的特性を含む応答を受信する。符号または識別子を有するマーカは、シート状製品上のマーカの位置とは無関係に、すなわち、マーカの内容のみに基づいて識別することができる。本発明の好ましい実施形態では、2つ以上のマーカの各々が、独自の識別子を有する、機械で読み出し可能な符号を有する。
【0009】
さらに、前述した目的は、先に定義したシート状製品または後で定義する媒体の部分(たとえば切り取られた部分)内に含まれている、部分的または完全なセキュリティフィーチャの光学的特性を判定する方法であって、その部分は、少なくとも1つのマーカと、セキュリティフィーチャの少なくとも一部とを有し、この方法は、少なくとも1つのマーカの位置に対する、当該部分内に含まれている部分的または完全なセキュリティフィーチャの位置を判定することと、判定された相対位置を用いて、シート状製品のセキュリティフィーチャの位置および光学的特性を格納したマップから、部分的または完全なセキュリティフィーチャの光学的特性を読み出すことと、を含む方法によって実現される。少なくとも1つのマーカの位置に対する、部分的または完全なセキュリティフィーチャの位置を判定することは、当該部分にセキュリティフィーチャおよびマーカのいずれかが含まれているかどうかを調べることと、セキュリティフィーチャおよびマーカの各々の位置を特定して1つまたは複数の相対位置を求めることと、を含む。マップは、マーカの位置に対するセキュリティフィーチャの位置を格納していてもよく、あるいは、マップは、共通の原点に対するセキュリティフィーチャおよびマーカの位置を格納し、それによって相対位置を求めることを可能にしていてもよい。
【0010】
本発明は、前述した各発明の複合的な使用または共通的な使用を改良する。本発明は、このシート状製品の形をした適切な原材料を提供することによって、作製時に利用可能な1つまたは複数のセキュリティフィーチャの特性に関する情報が、(たとえば登録と検証の少なくとも一方のために)それらの特性にアクセスするために用いられることがあるという認識に基づく。その情報にアクセスするために、その情報がセキュリティフィーチャにリンクされることがある。そのリンクは、ランダム化工程(たとえば原材料から各部分を切り取ること)に耐えなければならない。また、リンクは安全でなければならず、すなわち、偽造するのが容易ではなく、さもなければリンクに基づく検証の妥当性が損なわれる。本発明は、シート状製品における少なくとも1つのマーカの使用を提案する。このマーカと、セキュリティフィーチャに対するマーカの位置とは、前述したリンクとして用いることができ、すなわち、1つまたは複数のセキュリティフィーチャの特性に関する既に利用可能な情報にアクセスするために用いることができる。したがって、シート状製品のマーカの数、サイズ、および分布は、ランダム化工程に耐えるようにすることができ、すなわち、あらゆる部分が少なくとも1つのマーカを含むようにすることができる。マーカは、視覚的に検出可能でなければならず、それによって、カメラを有するプログラム可能なデバイスによってマーカを認識することができる。明確なリンクを設けるために、マーカは、シート状製品の位置に一意的に帰属可能であるべきである。この情報を用い、かつシート状製品の1つまたは複数のセキュリティフィーチャの位置が、1つまたは複数のマーカの位置に対して予め決められていると仮定することによって、マーカと同じ部分のセキュリティフィーチャが、その相対位置を介してマーカにリンクされる。
【0011】
これに応じて、少なくとも1つのマーカの位置(すなわち、マーカが帰属する位置)を判定するための本発明の方法は、少なくとも1つのマーカを識別することと、少なくとも1つのマーカの識別情報と、識別されたマーカに対する部分的または完全なセキュリティフィーチャの位置とに基づいて、マップから、部分的または完全なセキュリティフィーチャの光学的特性を読み出すことと、を含む。このようにして、シート状製品の2つ以上のマーカの曖昧さを解消することができる。
【0012】
有利には、各マーカは、符号化された識別子を有し、符号化された識別子の符号化は、エラーの検出またはエラーの訂正のための情報を含む。したがって、マーカが読み出されるときに、マーカの内容と識別情報の少なくとも一方を信頼性高く判定するために、エラーの訂正またはエラーの検出の方法が適用されてもよい。
【0013】
それに代えて、またはそれに追加して、マーカは、マーカに対する位置によって識別される少なくとも1つの隣接するセキュリティフィーチャの光学的特性の符号化を含んでいてもよい。それによって、マーカは、隣接する部分的または完全なセキュリティフィーチャの光学的特性を直接格納してもよい。この実施形態では、前述したように本発明の方法において用いることができ、セキュリティフィーチャの位置(この場合は相対位置)および光学的特性を格納するマップは、シート状製品自体の中に直接埋め込まれる。したがって、得られるセキュリティタグを認証する方法は、分散的に行うことができ、すなわち、中央に格納されたマップに(たとえば利用可能なインターネット接続を介して)アクセスすることができる状況に限定されない。
【0014】
少なくとも1つのセキュリティフィーチャは、少なくとも1つのマーカと重なるか、または少なくとも1つのマーカの一部であると、特に有効であることが判っている。この場合、マーカとセキュリティフィーチャは、シート状製品の表面上の重なり合う領域内に位置することができる。これによって、シート状製品をランダムに切り取る際に、マーカとセキュリティフィーチャのいずれも含まない部分(そのような部分は本発明の恩恵を受けることができない)が生じる可能性が低くなる。そのような重なり合いの一例では、マーカ内の各黒点がセキュリティフィーチャを含んでいる。この場合、セキュリティフィーチャはマーカの読み出しにはほとんど干渉しない。
【0015】
異なる種類のセキュリティフィーチャが、本発明の利点の恩恵を受けることができる。好ましくは、少なくとも1つのセキュリティフィーチャは、光学可変デバイス(略語は「OVD」である)を有する。OVDは基本的に、様々な視角から見たときに、動きまたは色の変化などの様々な光学的効果を示す玉虫色の画像である。
【0016】
好ましい実施形態では、少なくとも1つのセキュリティフィーチャは、並べて配置された2つ以上の光学可変デバイスを有し、2つ以上の光学可変デバイスは互いに異なる光学的特性(たとえば異なる回折開始角)を有する。OVD同士を並べて、または互いに隣接させて配置することは、少なくともOVD同士の間の境界において視角が同じになるという利点がある。したがって、セキュリティフィーチャが存在することは、カメラを有するプログラム可能なデバイスを用いて、2つのOVDを確実に異なるように見えるようにすることによって、容易に認識し検証することができる。
【0017】
従って、シート状製品は、シートまたはフィルムであってよい。この場合、シート状製品は、保管、輸送、および切断を含む加工を容易に行うことができる。特に、シート状製品は、標準的な印刷手段、たとえば、低温または高温の箔押し、重ね刷り、または熱転写によって加工することができるホログラフィックシートまたはホログラフィックフィルムであってもよい。
【0018】
さらに、本発明は、タイル状に配置された、先に定義された2つ以上のシート状製品を有する媒体(たとえば基板)も想定している。このようにして、より多くのシート状製品を効率的に設けることができる。各マーカは、1つのシート状製品内、すなわち、媒体を構成する配列の1つのタイルまたは1つの範囲内では1つであるが、周期的に繰り返し位置する。マーカを読み出す際の曖昧さを解消するために、境界条件(すなわちタイルの縁部)が考慮され確認されてもよい。
【0019】
本発明の方法の好ましい変形例では、部分の参照マークの位置を特定することと、参照マークの判定された位置を、マーカの判定された位置とともに用いて、当該部分内に含まれている部分的または完全なセキュリティフィーチャの光学的特性を読み出すことと、を想定している。それにより、マーカの情報は、存在するセキュリティフィーチャに関する情報にアクセスするために、参照マークの情報とマーカおよび参照マークの相対的な配置とによって補完される。
【0020】
具体的には、部分(またはパッチ)の境界が参照マークとして用いられる。マーカの位置に関する知識とともに、シート状製品の当該部分の境界または縁部によって、前記境界内にどのセキュリティフィーチャが予期されるかを判定することができる。したがって、正しくない光学的特性を有するセキュリティフィーチャに加えて、セキュリティフィーチャの欠落も、確実に識別することができる。
【0021】
好ましい実施形態では、少なくとも1つのマーカと参照マークとの間のずれは、製造公差を含み、したがって、ランダムなセキュリティフィーチャとして用いることができる。ランダムなセキュリティフィーチャは、シート状製品から作製されるセキュリティタグの認証フィーチャとして用いることができる。
【0022】
最後に、本発明は、先に定義されたシート状製品または媒体の部分を有するセキュリティタグを認証する(すなわちセキュリティタグの認証情報を検証する)方法としての用途に関する。この方法は、前述した方法の各ステップに従って、前記部分内に含まれている部分的または完全なセキュリティフィーチャの光学的特性を判定することと、少なくとも1つの画像センサを使用して、前記部分内に含まれている部分的または完全なセキュリティフィーチャの光学的特性を判定することと、判定された光学的特性同士を比較することと、比較された光学的特性同士が一致する場合にセキュリティタグの真正さを確認することと、を含む。この方法によれば、シート状製品から得られる各部分は、実際に存在するセキュリティ/材料フィーチャが、シート状製品の作製による所定の情報に対応することを検証することによって確認し認証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係るシート状製品の一面の概略図である。
図2図1のシート状製品から切り出した部分を詳細に示す図である。
図3】複数の図1のシート状製品のタイル状の構造を有する媒体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照しながら、特に好ましい実施形態によって、本発明についてさらに説明する。ただし、本発明がこれらの実施形態に制限されることはない。各図面は本発明を詳しく示している。
【0025】
図1は、原材料、たとえば、シート、フィルム、もしくは箔を形成するか、またはそれらの一部であるシート状製品1を示している。シート状製品1は、視角に応じて変化する光学的特性を有する28個の安全機能部(セキュリティフィーチャ)2を有している。シート状製品1は、28個のマーカ3も有している。この例では、セキュリティフィーチャ2とマーカとは、交互に碁盤の目のように配置されている。しかし、様々な実施形態では、セキュリティフィーチャ2は、マーカ3と重なっていてもよく、マーカ3の一部であってもよい。
【0026】
各マーカ3は、一意的に識別可能であり、シート状製品1上の位置に一意的に帰属させることができる。各マーカ3は、カメラを有するプログラム可能なデバイス(たとえばスマートフォンまたはタブレット)によって読取り可能でなければならない。この例におけるマーカ3は、符号化された識別子を有する2次元符号である。もちろん、一般的な1Dバーコードまたは2Dバーコード、すなわちデータマトリックスと同様の任意の符号をマーカ3に用いることができる。符号化された各識別子は、シート状製品1全体にわたって、すなわち、各マーカ3について一意的である。符号化された識別子の符号化は、エラーの検出またはエラーの訂正のための情報、たとえば、エラー訂正符号(ECC)、たとえばリードソロモンを用いる符号化方式を用いるための情報を含む。そのような符号を使用することは、ロバストな/信頼性の高い復号の助けになり、さらに、マーカ3が復号されると、確実に正しい内容を有する。したがって、マーカ3が復号されると、復号によって得られる識別子が正しい、すなわち、その識別子が、シート状製品1を作製または設計する際に符号化された識別子に等しい確率は100%に近い。
【0027】
各セキュリティフィーチャ2は、互いに隣接して(たとえば並んで)配置された2つ以上の光学可変デバイス4、5を有している。2つ以上の光学可変デバイス(OVD)4、5は、互いに異なる光学的特性を有することができ、または同じ主要な光学的特性を共有するがそれぞれに異なる回折開始角を有し、したがって、どの視角からも異なるように見えるようにすることができ、このことは図1ではそれぞれ異なる陰影で示されている。図1は、2つの異なるOVDを有するセキュリティフィーチャの一例を示している。説明を簡単にするために、以下に、前述したように構成され2つのOVDを有するセキュリティフィーチャを参照する例を用いる。すべての例は、自明のことながら、複数のOVDを有するセキュリティフィーチャに拡張することができる。プログラム可能なデバイスのカメラによって評価する場合、セキュリティフィーチャ2内の左側のOVD5と右側のOVD4を別々に見て、その外観の違いを調べることができる。OVDが異なっていないか、または予期せぬ挙動を示す場合、検証は失敗し、したがって、誰かがセキュリティタグをいたずらしようとしたと結論付けることができ、たとえば、妥当性のチェックが不合格になり、登録が中断される。光学可変デバイスを設ける場合、シート状製品1はホログラフィックシートまたはホログラフィックフィルムであってもよい。シート状製品1上のセキュリティフィーチャ2の位置は、シート状製品1上のマーカ3の位置に対して予め決められる。
【0028】
さらに、制御された環境では、左側のOVD5と右側のOVD4の玉虫色効果を、OVDの特性および光学的特性を判定するために用いられることが好ましい。各OVDをそれぞれに異なる特性に帰属させることができるので、互いに異なる種類のセキュリティフィーチャ同士を区別することができ、たとえば、セキュリティフィーチャ2内の左側のOVD5と右側のOVD4の互いに異なる開始角の組合せを区別することができる。
【0029】
シート状製品1は、セキュリティ要素を作製するための原材料または各製品をマーキングし認証するためのタグとして構成される。そのような認証は、コピーするのが比較的困難なセキュリティフィーチャの存在および特性の検証に依拠することができる。したがって、シート状製品1の好ましい使用法は、シート状製品1から複数の部分6を切り取り、得られた部分6を製品のマーキングのためのセキュリティ要素において使用することである。そのような使用法の利点は、図2に示されているシート状製品1の部分6内に含まれている部分的または完全なセキュリティフィーチャの光学的特性を判定する方法において明らかになる。この方法は、光学センサを有するプログラム可能なデバイス、たとえばスマートフォンまたは専用スキャナによって実施できることが好ましい。
【0030】
部分6は、少なくとも1つの完全なマーカ7と、複数のセキュリティフィーチャ8の一部とを有している。この方法を実施する際に、まず部分6内に含まれている部分的または完全なセキュリティフィーチャ8のうちの1つの位置がマーカ7の位置に対して判定される。次いで、判定された相対位置を用いて、部分的または完全なセキュリティフィーチャ8の光学的特性が、シート状製品1のすべてのセキュリティフィーチャ2の位置および光学的特性を格納したマップ(図示せず)から読み出される。詳細には、マーカ7がまず識別され、マーカ7の識別情報と、識別されたマーカ7に対する部分的または完全なセキュリティフィーチャ8の位置とに基づいて、部分的または完全なセキュリティフィーチャ8の光学的特性がマップから読み出される。さらに、部分6の参照マーク、たとえば、部分6の境界9の位置がまず判定され、参照マークの判定された位置を、セキュリティフィーチャ8の判定された相対位置およびマーカ7の識別情報とともに用いて、部分的または完全なセキュリティフィーチャの光学的特性をマップから読み出す。
【0031】
上記の方法の好ましい用途は、シート状製品1の部分6を有するセキュリティタグの認証である。この認証は、プログラム可能なデバイスで実施することができる追加のステップを含む。一方では、部分6内に含まれている部分的または完全なセキュリティフィーチャ8の光学的特性は、前述したように、すなわち、光学的特性の予備知識にアクセスすることによって判定される。他方では、前記部分6内に含まれている部分的または完全なセキュリティフィーチャ8の光学的特性は、少なくとも1つの画像センサを用いて、すなわち、基本的に測定を実行することによって判定される。次いで、判定された光学的特性が比較され、比較された光学的特性が一致する場合には、セキュリティタグの認証情報が確認される。
【0032】
製品の識別子(たとえば通し番号)とランダムな部分6などのランダムなセキュリティフィーチャを有するセキュリティタグとの関連性を登録する場合、まずセキュリティフィーチャまたはその光学的特性を検出する必要がある。そのようなフィーチャの検出は、国際公開WO2013/188897A1号に、より詳細に記載されている。登録手順は国際公開WO2016/034555A1号に、より詳細に記載されている。光学回折デバイス、ホログラフィックフォイル、またはその他のOVDを備えているようなセキュリティフィーチャの検出は、誤検出および不正確さが生じやすいことが公知である。したがって、セキュリティフィーチャの誤った検出値は、その真の値から著しく異なることがある。したがって、そのような誤検出されたセキュリティフィーチャを登録すると、後で認証が試みられる際に誤った決定が導かれることがある。
【0033】
本発明では、シート状製品1から切り取られた部分6の画像がキャプチャされ、この画像は少なくとも1つのマーカ7と1つのセキュリティフィーチャ8とを含み、セキュリティフィーチャ8は、セキュリティ材料に関する一般的な特性と、視角とともに変化する、得られる光学的特性とを有する。マーカ7を検出し、100%に近い確実性で、識別子をマーカ7から正しく読み出すことができる。カメラを有するプログラム可能なデバイスは、参照マークに対する部分6内のマーカ7の位置X’、Y’も検出するように構成することができ、参照マークは、部分6の境界9、部分6の中心点、または同様の特性であってもよいが、必ずしもそうである必要はない。
【0034】
シート状製品1を有する原材料を作製する製造業者は当然のことながら、シート状製品1の構造および特性に関する網羅的な知識を有し、すなわち、すべてのマーカ3と、それらの絶対位置x、yと、すべてのセキュリティフィーチャ2の特徴的な材料特徴および光学的特性とを知っている。あるいは、製造業者は、確率的な工程を伴う無作為な箔の作製を行い、作製後に、カメラを使用して、作製されたセキュリティフィーチャなどのマーカ位置および光学的特性を引き出す(したがって網羅的な知識を構築する)。このことは、原材料の様々な例をランダムに生成するという利点を有する。部分6のマーカ7から復号された識別子を、部分6内のマーカの相対位置X’、Y’およびマーカ7の既知の絶対位置x、yとともに用いて、部分6の正確なスタンピング位置xp、ypを判定することができる。
【0035】
部分6のスタンピングまたは切取りの位置xp、ypと寸法とを知ることによって、マップに格納することができるシート状製品1に関する網羅的な知識を用いて、部分6内に含まれているセキュリティフィーチャの光学的特性を調べることができる。次いで、これらの光学的特性は、国際公開WO2016/034555A1号に開示されたような登録および記載の手順における改善された(したがってより安全な)妥当性チェックに用いることができ、すなわち、(部分6を有する)セキュリティタグとともに製品に適用される独自の製品の識別子(例えば通し番号)に関連付けて、セキュリティタグの光学的特性を登録する場合に用いることができる。
【0036】
製造公差に依って、または(原材料をカッタに供給することなどのような)意図的に導入される確率的な工程によって、部分6の切取り位置xp、ypはランダムになることが好ましい。したがって、切取り位置は、国際公開WO2013/188897A1号において紹介されたような製品のマーキングに基づく認証システムにおける追加的なランダムなフィーチャとして用いることができる。さらに、セキュリティフィーチャ2の光学的特性に関する情報を用いて、部分6が実際に真正の原材料から得られたものであり、すなわち、真正のシート状製品1を有することを確認できる。
【0037】
図3は、本発明に係る媒体10を示しており、この場合、複数のシート状製品3がタイル状に配置され、それによって、媒体10は、前述したようにセキュリティタグを作製するための原材料として用いることができる。
図1
図2
図3