(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】金属水素化物による水素コンプレッサ
(51)【国際特許分類】
F17C 11/00 20060101AFI20220826BHJP
【FI】
F17C11/00 C
(21)【出願番号】P 2019515574
(86)(22)【出願日】2017-09-19
(86)【国際出願番号】 FR2017052502
(87)【国際公開番号】W WO2018055277
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-09-14
(32)【優先日】2016-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アルバン・シェーズ
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/114229(WO,A1)
【文献】特開2014-080329(JP,A)
【文献】特開2002-364943(JP,A)
【文献】特表2013-505405(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0303175(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0363346(US,A1)
【文献】特表2011-508855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属水素化物水素コンプレッサ(10)であって:
-第1の内部表面(21)によって区切られた、内部容積を含む、圧力チャンバ(20)と、
-厚さEを有するケーシング(70)であって、ケーシング(70)が、第1の内部表面(21)に対向する第1の外部表面(71)を含み、ケーシング(70)が、第1の熱伝導率を有する絶縁材料を含む、ケーシング(70)と、
-その上に課せられる温度に従って水素を貯蔵又は放出するのに適した貯蔵材料を含み、且つ、第1の熱伝導率より大きい第2の熱伝導率を有する、水素貯蔵要素(50)と、
第1の内部表面(21)と第1の外部表面(71)との間の水素の循環を可能にする配置(72)と、を含
み、
圧力チャンバ(20)と水素貯蔵要素(50)との間にケーシング(70)が配置される、金属水素化物水素コンプレッサ。
【請求項2】
金属水素化物水素コンプレッサ(10)であって:
-第1の内部表面(21)によって区切られた、内部容積を含む、圧力チャンバ(20)と、
-厚さEを有するケーシング(70)であって、ケーシング(70)が、第1の内部表面(21)に対向する第1の外部表面(71)を含み、ケーシング(70)が、第1の熱伝導率を有する絶縁材料を含む、ケーシング(70)と、
-その上に課せられる温度に従って水素を貯蔵又は放出するのに適した貯蔵材料を含み、且つ、第1の熱伝導率より大きい第2の熱伝導率を有する、水素貯蔵要素(50)と、
を含み、
ケーシング(70)が、ケーシング(70)の厚さEを通る水素の経路(74)を提供するのに適した手段を含み、
圧力チャンバ(20)と水素貯蔵要素(50)との間にケーシング(70)が配置される、金属水素化物水素コンプレッサ。
【請求項3】
配置(72)が、第1の内部表面(21)と第1の外部表面(71)との間に配された環状空間(72.1)、及び/又は、第1の内部表面(21)及び第1の外部表面(71)の内の少なくとも1つの上に形成されたチャネル(72.2)を含む、請求項
1に記載のコンプレッサ。
【請求項4】
ケーシング(70)が、前記ケーシング(70)の厚さEを通る水素の経路を可能にする開放気孔率を含む、請求項
2に記載のコンプレッサ。
【請求項5】
ケーシング(70)が、前記ケーシング(70)の厚さEを通る水素の経路を可能にする少なくとも1つの穿孔(74.1)を含み、有利には、ケーシング(70)はまた、ケーシング(70)に貯蔵要素(50)を閉じ込めるために少なくとも1つの穿孔(74.1)と協働するフィルタを含む、請求項
2又は
4に記載のコンプレッサ。
【請求項6】
ケーシング(70)の厚さEが、1mmと20mmとの間である、請求項1から
5の何れか一項に記載のコンプレッサ。
【請求項7】
ケーシング(70)が、PTFE、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレン、PEEK及びポリプロピレンから選択される材料の内の少なくとも1つを含む、請求項1から
6の何れか一項に記載のコンプレッサ。
【請求項8】
水素コンプレッサ(10)が、貯蔵要素(50)と直接的に熱の交換を提供することが可能な熱交換手段(60)をさらに含み、有利には、熱交換手段(60)が、それを通って熱伝導流体が進むチューブを含む、請求項1から
7の何れか一項に記載のコンプレッサ。
【請求項9】
熱交換手段(60)が、第3の熱伝導率を有する材料から作製された第2の外部表面(60a)を含み、前記熱交換手段(60)が、第1の開口部(26)を通る圧力チャンバ(20)を通り抜け、コンプレッサ(10)が、環状形状セクション(23a)を含む接続手段(23)をさらに含み、前記環状形状セクション(23a)が、熱交換手段(60)と圧力チャンバ(20)との間の密封された接続を提供し、熱交換手段(60)と圧力チャンバ(20)との間の任意の接触を防止し、接続手段(23)が、圧力チャンバ(20)から熱交換手段(60)を熱的に絶縁するために第3の熱伝導率の10分の1より低い第4の熱伝導率を有する材料を含む、請求項
8に記載のコンプレッサ。
【請求項10】
圧力チャンバ(20)が、そこで第1の開口部(26)が形成される第1の端部(26a)を含む、長手方向軸(X)に沿って伸びる円筒状バレルを含み、環状形状接続手段(23)が、第1の内部表面(21)で形成される停止部に対する支台であり、停止部は有利には、第1の内部表面(21)で形成される肩部を含む、請求項
9に記載のコンプレッサ。
【請求項11】
接続手段(23)が、締め付け手段(24)によって停止部に対して保持され、有利には、締め付け手段(24)が、それを通って熱交換手段(60)が通る経路を含むプラグ(24)を含む、請求項
10に記載のコンプレッサ。
【請求項12】
減摩ワッシャ(25)が、締め付け手段(24)と接続手段(23)との間に置かれる、請求項
11に記載のコンプレッサ。
【請求項13】
接続手段(23)はまた、圧力チャンバ(20)と熱交換手段(60)との間に密封された接続を提供する第1の密封部(28a)が設けられる、請求項
10から
12の何れか一項に記載のコンプレッサ。
【請求項14】
熱交換手段(60)はまた、第2の開口部(27)を通る圧力チャンバ(20)を通り抜け、第2の密封部(28b)が、第2の開口部(27)で熱交換手段(60)と圧力チャンバ(20)との間に密封を提供する、請求項
10から
13の何れか一項に記載のコンプレッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素コンプレッサ、より具体的には、高圧、例えば100barより上の圧力で水素を送達するのに適した金属水素化物水素コンプレッサに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来技術から知られ且つ本出願の終わりで引用される文献[1]において説明される金属水素化物水素コンプレッサ1を示す。
【0003】
このコンプレッサ1は:
-内部表面を含む圧力チャンバ2と、
-水素供給3と、
-水素排出4と、
-その上に課せられる温度に従って水素を貯蔵又は放出するのに適した水素貯蔵要素5であって、貯蔵要素5が貯蔵材料を含む、水素貯蔵要素5と、
-熱交換手段6と、を含む。
【0004】
このようなコンプレッサ1は、可動部の動きを含む機械的システムに頼ることなくガス状水素の圧縮を可能にする。
【0005】
より具体的には、金属水素コンプレッサの動作原理は、その上で冷却及び加熱の熱サイクルが課せられる貯蔵材料による水素の可逆的吸収に基づく。
【0006】
貯蔵材料は一般的に金属種を含む。
【0007】
貯蔵材料によって熱を交換することが意図された熱交換手段6は一般的に、それを通って熱伝導流体が進む金属チューブを含む。
【0008】
金属水素化物水素コンプレッサ1は、低圧水素源9によって、供給バルブ7が設けられた供給パイプを介して、供給され得る。
【0009】
水素コンプレッサ1はまた、容器10へ、移送バルブ8が設けられた移送パイプを介して、接続され得る。
【0010】
例として、
図2a-2dは、金属水素化物水素コンプレッサ1の、4つのステップにおける、動作原理を示す。
【0011】
第1のステップの間(
図2a)、貯蔵要素5を含む圧力チャンバは、供給バルブ7を開くことによって低圧水素源(例えば0.02barと270barとの間の圧力)と連絡して置かれる。この同じステップの間、貯蔵要素5は、-100℃と50℃との間であり得る温度へ熱交換手段6によって冷却される。そのため、それが冷却されるので、貯蔵要素5は、水素を吸収する。
【0012】
第2のステップ(
図2b)は、供給バルブ7を閉じることによる水素源からの圧力チャンバの隔離によって始まる。
【0013】
貯蔵要素5はその後、30℃と240℃との間の温度へ加熱される。結果は、第1のステップの間に貯蔵要素5によって貯蔵された水素の脱着、それゆえ、圧力チャンバにおける水素圧力の増加である。貯蔵チャンバ5上に課せられる温度が高い程、圧力のこの増加は大きくなる。
【0014】
これはなぜなら、水素圧力が指数関数的温度則に従って変化するからである。したがって、第2のステップの終わりでの圧力チャンバにおける水素圧力は、3barと4350barとの間であり得る。
【0015】
移送バルブ8はその後、貯蔵要素5上に加熱を課しながら、容器10へ高い圧力下で水素を移送するために第3のステップ(
図2c)の開始で開かれる。
【0016】
圧力チャンバが空になるとすぐに、移送バルブ8は第4のステップ(
図2d)の開始で閉じられ、貯蔵要素5は再び冷却される。
【0017】
そのため、圧力下で水素容器10、特にサービスステーションにおいて水素を販売することを対象とした水素容器10、又は、水素を輸送することを対象とした水素容器10、を満たすことが可能である。
【0018】
しかしながら、我々はこの装置が十分でないことに気づいた。
【0019】
これはなぜなら、従来技術から知られる金属水素化物水素コンプレッサ1の熱効率が最適でないからである。
【0020】
より具体的には、熱交換手段6によって供給される熱の量のいくらかは、圧力チャンバを加熱するためにも用いられるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
そして、本発明の1つの目的は、従来技術から知られる金属水素化物水素コンプレッサよりも優れた効率を有する金属水素化物水素コンプレッサを提案することである。
【0022】
本発明の他の1つの目的はまた、高い水素圧力、例えば100barより上の圧力を達成することを可能にさせる金属水素化物水素コンプレッサを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の目的は、
-第1の内部表面によって区切られた、内部容積を含む、圧力チャンバと、
-厚さEを有するケーシングであって、ケーシングが、第1の内部表面に対向する第1の外部表面を含み、ケーシングが、第1の熱伝導率を有する絶縁材料を含む、ケーシングと、
-ケーシングに含まれ、その上に課せられる温度に従って水素を貯蔵又は放出するのに適した貯蔵材料を含み、且つ、第1の熱伝導率より大きい第2の熱伝導率を有する、水素貯蔵要素と、を含む金属水素化物水素コンプレッサよって、少なくとも部分的に、達成される。
【0024】
ケーシングは、貯蔵要素から圧力チャンバを熱的に絶縁するので、これらの2つの要素間の熱交換を制限することを可能にさせる。
【0025】
したがって、圧力チャンバによる熱の散逸に起因した損失を制限しながら、100barより上の圧力で水素を圧縮することが可能である。
【0026】
一実施形態によると、水素コンプレッサが、第1の内部表面と第1の外部表面との間の水素の循環を可能にする配置を含む。
【0027】
一実施形態によると、配置が、第1の内部表面と第1の外部表面との間に配された環状空間、及び/又は、第1の内部表面及び第1の外部表面の内の少なくとも1つの上に形成されたチャネルを含む。
【0028】
一実施形態によると、ケーシングが、ケーシングの厚さEを通る水素の経路を提供するのに適した手段をさらに含む。
【0029】
一実施形態によると、ケーシングが、前記ケーシングの厚さEを通る水素の経路を可能にする開放気孔率を含む。
【0030】
一実施形態によると、ケーシングが、前記ケーシングの厚さEを通る水素の経路を可能にする少なくとも1つの穿孔を含み、有利には、ケーシングはまた、ケーシングに貯蔵要素を閉じ込めるために少なくとも1つの穿孔と協働するフィルタを含む。
【0031】
一実施形態によると、ケーシングの厚さEが、1mmと20mmとの間である。
【0032】
一実施形態によると、ケーシングが、PTFE、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン及びPEEKから選択される材料の内の少なくとも1つを含む。
【0033】
一実施形態によると、第1の熱伝導率が0.3W/m/K未満である。
【0034】
一実施形態によると、水素コンプレッサが、貯蔵要素と直接的に熱の交換を提供することが可能な熱交換手段をさらに含み、有利には、熱交換手段が、それを通って熱伝導流体が進むチューブを含む。
【0035】
一実施形態によると、熱交換手段が、第3の熱伝導率を有する材料から作製された第2の外部表面を含み、前記熱交換手段が、第1の開口部を通る圧力チャンバを通り抜け、コンプレッサが、環状形状セクションを含む接続手段をさらに含み、前記環状形状セクションが、熱交換手段と圧力チャンバとの間の密封された接続を提供し、熱交換手段と圧力チャンバとの間の任意の接触を防止し、接続手段が、圧力チャンバから熱交換手段を熱的に絶縁するために第3の熱伝導率の10分の1より低い第4の熱伝導率を有する材料を含む。
【0036】
一実施形態によると、圧力チャンバが、そこで第1の開口部が形成される第1の端部を含む、長手方向軸に沿って伸びる円筒状バレルを含み、環状形状接続手段が、第1の内部表面で形成される停止部に対する支台であり、停止部は有利には、第1の内部表面で形成される肩部を含む。
【0037】
一実施形態によると、接続手段が、締め付け手段によって停止部に対して保持され、有利には、締め付け手段が、それを通って熱交換手段が通る経路を含むプラグを含む。
【0038】
一実施形態によると、減摩ワッシャが、締め付け手段と接続手段との間に置かれる。
【0039】
一実施形態によると、接続手段が、エラストマー、セラミック、ステンレス鋼又はニッケル合金から選択される少なくとも1つの材料を含む。
【0040】
一実施形態によると、接続手段はまた、圧力チャンバと熱交換手段との間に、密封された接続を提供する第1の密封部が設けられる。
【0041】
一実施形態によると、熱交換手段はまた、第2の開口部を通る圧力チャンバを通り抜け、第2の密封部が、第2の開口部で熱交換手段と圧力チャンバとの間に密封を提供する。
【0042】
他の特徴及び優位点は、添付の図面を参照して非限定的な例として与えられる、本発明による金属水素化物水素コンプレッサの実施形態の以下の記載から現れるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】従来技術から知られる金属水素化物コンプレッサの概略図である。
【
図2a】金属水素化物コンプレッサの4つの動作ステップの概略図である。
【
図2b】金属水素化物コンプレッサの4つの動作ステップの概略図である。
【
図2c】金属水素化物コンプレッサの4つの動作ステップの概略図である。
【
図2d】金属水素化物コンプレッサの4つの動作ステップの概略図である。
【
図3a】本発明の一実施形態による金属水素化物水素コンプレッサの長手方向軸Xを含む断面における、並びに、第1の端部及び第2の端部でのそれぞれの概略図である。
【
図3b】本発明の一実施形態による金属水素化物水素コンプレッサの長手方向軸Xを含む断面における、並びに、第1の端部及び第2の端部でのそれぞれの概略図である。
【
図4a】本発明の一実施形態によると、長手方向軸Xに沿って伸びる水素コンプレッサの断面を示し、より具体的には、
図4aは、第1の内部表面と第1の外部表面との間に配された環状空間の概略図である。
【
図4b】本発明の一実施形態によると、長手方向軸Xに沿って伸びる水素コンプレッサの断面を示し、より具体的には、
図4bは、第1の外部表面の上に形成されたチャネルの概略図である。
【
図5】本発明の一実施形態による接続手段の断面における図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に詳細に説明される本発明は、本発明によるコンプレッサの有効性を改善するために、貯蔵要素と熱交換手段とが圧力チャンバから熱的に絶縁され得る金属水素化物水素コンプレッサを用いる。
【0045】
図3a及び3bでは、本発明による金属水素化物水素コンプレッサ10の例の実施形態が見られ得る。
【0046】
本発明による水素コンプレッサ10は、第1の内部表面21によって区切られた内部容積を含む圧力チャンバ20を含む。
【0047】
圧力チャンバ20は、高い圧力、より具体的には100barより上の圧力に耐えるのに適したコンテナを意味するように意図される。
【0048】
圧力チャンバ20は、その上に課せられる圧力に耐えるための十分な機械的強度をその上に与える厚さを有する(圧力チャンバの厚さはその壁の厚さを意味する)。
【0049】
一般的な知識を有する当業者は、任意の問題なしで、求められる用途に最も適した圧力チャンバの厚さを決定し得る。例として、圧力チャンバ20は、円筒状形状を有し得、且つ、その内部半径の10分の1と2倍との間の厚さを有する。内部半径は、圧力チャンバ20を形成する2つの円筒状表面の最も小さい半径を意味する。
【0050】
圧力チャンバ20は、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケル基合金、又は、チタン、アルミニウム若しくは銅に基づいた合金から選択される材料の内の少なくとも1つを含み得る。
【0051】
金属水素化物水素コンプレッサ10は、低圧水素源によって、供給パイプ11を介して、供給され得る。
【0052】
水素コンプレッサ10はまた、容器(例えば貯蔵容器)へ、移送パイプ12を介して、接続され得る。
【0053】
図3bに示されるように、供給パイプ11及び移送パイプ12は、1つ又は同じパイプである。
【0054】
水素コンプレッサ10はまた、厚さEを有するケーシング70を含む。ケーシング70は、第1の内部表面21に対向する第1の外部表面71を含む。ケーシング70は、第1の熱伝導率を有する絶縁材料を含む。
【0055】
例えば、ケーシング70は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン又はPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)から選択される材料の内の少なくとも1つを含み得る。
【0056】
第1の熱伝導率は、0.3W/m/K未満であり得る。
【0057】
水素コンプレッサはまた、ケーシング70に含まれる、水素貯蔵要素50を含む。そのため、ケーシング70は、貯蔵要素50と圧力チャンバ20との間の任意の接触を防止する。
【0058】
貯蔵要素50は、その上に課せされる温度に従って水素を貯蔵又は開放するのに適した貯蔵材料を含む。例えば、貯蔵材料は、それが冷却されるときに水素を吸収し得、それが加熱されるときに上記水素を脱着し得る。
【0059】
例えば、貯蔵材料は、タイプAB、AB2、AB5若しくはBCCの合金、例えばFeTi,TiMn2,LaNi5若しくはTiVCr、又は、コンプレッサの動作条件へ貯蔵材料の熱力学的特性を調節するために他の元素の置換若しくは添加を有する合金のこれらのタイプの組み合わせ:から選択された材料の内の少なくとも1つを含み得る。
【0060】
貯蔵材料は、圧縮された又は焼結された、粉末形態であり得る。
【0061】
有利には、貯蔵材料は、断熱材の機能をケーシング70上に与える、第1の熱伝導率よりも大きい第2の熱伝導率を有する。
【0062】
水素コンプレッサ10が、第1の内部表面21と第1の外部表面71との間の水素の循環を可能にする配置72を含み得る。例えば、配置72は、第1の内部表面21と第1の外部表面71との間に配された環状空間72.1を含み得る。代替的又は補完的な方法では、配置は、第1の内部表面21及び第1の外部表面71の内の少なくとも1つの上に形成されたチャネル72.1を含み得る。
【0063】
例として、
図4a及び4bは、長手方向軸Xに沿って伸びる水素コンプレッサ10の断面を示す。断面は、長手方向軸Xに対して垂直な平面における断面を意味する。より具体的には、
図4aは、第1の内部表面21と第1の外部表面71との間に配された環状空間72.1の概略図であり、一方で
図4bは、第1の外部表面71の上に形成されたチャネル72.2の概略図である(チャネル72.2が第1の内部表面21の上に形成される場合は示されない)。
【0064】
環状空間72.1は、貯蔵要素50によって占められる円筒状体積の半径の10%未満の厚さを有し得る。
【0065】
ケーシング70はまた、ケーシング70の厚さEを通る水素経路74を提供するのに適した手段を含み得る。
【0066】
水素経路74を提供するのに適した手段の第1の特定の実施形態によると、ケーシング70は、上記ケーシング70の厚さEを通る水素の経路を可能にする開放気孔率を含み得る(閉鎖気孔率とは対照的に、開放気孔率はケーシング70において閉鎖した空洞が無いことを意味する)。ケーシング70の開放気孔率はまた、後者が粉末形態であるときに貯蔵材料を閉じ込めることを可能にさせるフィルタの役割を果たし得る。
【0067】
開放気孔率は、焼結材料、又は、発泡体の形態におけるものによって得られ得る。ケーシング70を形成する材料を成形するための技術は、当業者に知られており、そのため、本発明では詳細に説明しない。
【0068】
水素経路74を提供するのに適した手段の第2の特定の実施形態によると、ケーシング70は、上記ケーシング70の厚さEを通る水素の経路を可能にする少なくとも1つの穿孔74.1を含み得る。
【0069】
穿孔74.1は有利には、水素の経路を可能にする、しかし後者が粉末形態であるときには貯蔵材料を閉じ込める、フィルタが設けられ得る。
【0070】
水素経路74を提供することが可能な手段の第1及び第2の特定の実施形態は、互いに独立して考えられ得る又は組み合わせで取られ得ることに留意されたい。
【0071】
有利には、本出願人は、1mmと20mmとの間にあるケーシング70の厚さEが、圧力チャンバ20と貯蔵要素50との間の適切な断熱を提供し得ることに言及する。
【0072】
水素コンプレッサ10は、貯蔵要素50と直接的に熱の交換を提供することが可能な熱交換手段60をさらに含み得る。
【0073】
貯蔵要素50に熱の直接的な交換を提供することは、上記貯蔵要素50と接触した熱交換手段60を、有利には、熱交換手段60が貯蔵要素50の容積に少なくとも部分的に含まれることを意味する。
【0074】
有利には、熱交換手段60は、それを通って、水、場合によっては圧力下で、又はグリコール酸水、又は油等の熱伝導流体が進むチューブ60を含み得る。
【0075】
それを通って熱伝導流体が進むチューブ60は、水素と化学的に不活性な機械的に強い材料を含み得、例えばチューブ60は、ステンレス鋼、ベリリウム銅合金、真鍮、ニッケル合金又は炭素鋼から選択された材料の内の少なくとも1つを含み得る。
【0076】
熱交換手段60は、第3の熱伝導率を有する材料から作製された第2の外部表面60aを含む。
【0077】
第3の熱伝導率は、例えば、10W/m/Kより大きいことがある。
【0078】
チューブ60はまた、貯蔵要素50との熱交換表面積を増加し、また、上記貯蔵要素50における温度の、より良い均一性を可能にするのに適したフィンを含み得る。有利には、フィンは、チューブに対して半径方向に伸びる。
【0079】
熱交換手段60は、第1の開口部26を通る圧力チャンバ20を通り抜ける。接続手段23は、熱交換手段60と圧力チャンバ20との間に密封された接続を提供する。より具体的には、熱交換手段60は、熱交換手段60と圧力チャンバ20との間に置かれた環状形状23aを有するセクション(2mmと100mmとの間の内部半径、及び6mmと110mmとの間の外部半径)を含む(
図5)。接続手段23は、圧力チャンバ20から熱交換手段60を熱的に絶縁するために第3の熱伝導率の10分の1未満の第4の熱伝導率を有する材料を含む。
【0080】
接続手段23はまた、第1の密封部28a、例えばトーリック形状を有し且つエラストマーから作製される第1の密封部28a、が設けられ得る。
【0081】
接続手段23は、ポリマー、セラミック、鋼、ステンレス鋼及びニッケル合金から選択される材料の内の少なくとも1つを含み得る。
【0082】
本発明の特定の実施形態によると、圧力チャンバは、長手方向軸Xに沿って伸びる円筒状バレルを含み得る。
【0083】
バレルは、そこで第1の開口部26が形成される第1の端部26aを含む。バレルはまた、長手方向軸Xに沿って第1の端部26aに対向する第2の端部27aを含む。
【0084】
バレルの厚さは、その内部半径の10分の1と2倍との間であり得る。
【0085】
接続手段23の環状形状セクション23aは、第1の内部表面21で形成される停止部22に対する支台である。
【0086】
例えば、停止部22は、第1の内部表面21の上の肩部によって形成される。
【0087】
接続手段23が、締め付け手段24によって停止部22に対して保持され、有利には、締め付け手段60が、それを通って熱交換手段26が通る経路を含むプラグ24を含む。
【0088】
プラグ24は、第1の内部表面21へねじ止めされ得る。後者は、停止部22に対する接続手段23の機械的固定を提供する。さらに、プラグ24は、圧力チャンバ20における加圧水素によって課せされる圧力に耐えるように設計される。
【0089】
水素コンプレッサ10はまた、プラグ24と接続手段23との間に置かれた、減摩ワッシャ25(ワッシャは環状形状要素を意味する)を含み得る。より具体的には、減摩ワッシャ25は、プラグ24から接続手段23を熱的に絶縁するのに適している。減摩ワッシャ25は、例えば、ポリマー材料を含み得る。
【0090】
接続手段23はまた、圧力チャンバ20に装入されるときにチューブ60の強化を防止するように意図されるガイド手段23bを含み得る。ガイド手段23bは、環状形状セクション23aに接続された端部23c及び自由端部23dを含む円筒であり得る。有利には、円筒の形態におけるガイド手段23bは、チューブ60の半径に等しい内部半径R23eを有する第1の円筒状セクション23eと、チューブ60の半径より大きい内部半径R23fを有する、環状形状セクション23aと接触した第2の円筒状セクション23fとを有する。そのため、ガイド手段23bは、第1の円筒状セクション23eでのみチューブ60と接触している。有利には、第2の円筒状セクション23fは、チューブ60の半径に少なくとも等しい長さE23fにわたって伸びる。第1の円筒状セクション23eは、0.1mmと11mmとの間の長さE23eにわたって伸び得る。
【0091】
有利には、熱交換手段60はまた、密封されたやり方で第2の開口部27で圧力チャンバ20を通り抜け得る。一以上の第2の密封部23bは、圧力チャンバ20と熱交換手段60との間に置かれ得る。
【0092】
第2の開口部27は、第2の端部27aからとして形成される穿孔に対応し得る。上記穿孔は、第1の円筒状表面27b及び第2の円筒状表面27cを並列に含み得る。第1の円筒状表面27bは、熱交換手段60の第2の外部表面60aのセクションに面し、長さE27bにわたって第2の端部から、長手方向軸Xに沿って伸びる。第1の円筒状表面27bの直径は、第2の内部表面60aと第1の円筒状表面27bとの間で接触が存在しないように、熱交換手段60の直径よりも大きい(そのため例えば0.1mmと10mmとの間の厚さを有する空気の円筒状層が観測され得る)。
【0093】
第2の円筒状表面27cは、長手方向軸Xの方向において長さE27cにわたって第2の外部表面60aと接触している。第2の密封部28bは、第2の外部表面60aと第2の円筒状表面との間に置かれ得る。
【0094】
参照文献
[1]国際公開第2012/114229号