IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特許7129998リチウムイオン電池用コアシェル複合粒子
<>
  • 特許-リチウムイオン電池用コアシェル複合粒子 図1
  • 特許-リチウムイオン電池用コアシェル複合粒子 図2
  • 特許-リチウムイオン電池用コアシェル複合粒子 図3
  • 特許-リチウムイオン電池用コアシェル複合粒子 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-25
(45)【発行日】2022-09-02
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用コアシェル複合粒子
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20220826BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220826BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220826BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M10/052
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019560459
(86)(22)【出願日】2017-02-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2017052656
(87)【国際公開番号】W WO2018145732
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2019-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】ペーター、ギグラー
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ、ベルンハルト
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-303588(JP,A)
【文献】特開2012-124118(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014211012(DE,A1)
【文献】特開2009-266795(JP,A)
【文献】特開2007-294196(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0099187(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M 10/00-10/0587
H01G 13/00-13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードがコアシェル複合粒子を含有するアノード材料をベースとするリチウムイオン電池であって、
前記コアシェル複合粒子のコアが、シリコン粒子を含有し、かつ500nm~22μm(決定方法:走査型電子顕微鏡)の平均径を有する細孔を含む多孔性炭素ベースマトリックスであり、
前記コア中の追加の活物質の含有率が、前記コアシェル複合粒子の総重量に対して、≦1重量%であり、
前記コア中の導電性添加剤の含有率が、前記コアシェル複合粒子の総重量に対して、≦1重量%であり、
前記コアシェル複合粒子のシェルは、非多孔性であり、かつ炭素をベースとするものであり、
前記コアシェル複合粒子のコアのシリコン粒子は凝集しておらず、≧50nmの直径パーセンタイル値d50を有する体積基準粒度分布を有し、かつ前記多孔性炭素ベースマトリックスの細孔内に存在し、
前記コアシェル複合粒子のコアの前記マトリックスの個々の細孔は独立しており、かつ溝により互いに連結しておらず、および
フル充電されたリチウムイオン電池の前記アノード材料が部分的にのみリチウム化されていることを特徴とする、リチウムイオン電池。
【請求項2】
前記コアシェル複合粒子の前記マトリックスが、500nm~19μm(決定方法:走査型電子顕微鏡)の平均径を有する細孔を含むことを特徴とする、請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項3】
前記コアシェル複合粒子の全細孔容積が、前記コアシェル複合粒子中に存在するシリコン粒子の体積の0.3倍~2.4倍に相当することを特徴とする、請求項1または2に記載のリチウムイオン電池。
【請求項4】
前記コアシェル複合粒子の前記マトリックスの1つ以上の細孔がシリコン粒子を含み、シリコン粒子を含む前記マトリックスの細孔の径と前記シリコン粒子の径との比が1.1~3(決定方法:走査型電子顕微鏡(SEM))であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項5】
ソードのリチウム容量に対する前記アノードのリチウム容量の比が≧1.15であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項6】
前記フル充電されたリチウムイオン電池における前記アノードが、前記アノードの質量に対して800~1500mAh/gで充電されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項7】
前記リチウムイオン電池の前記フル充電状態において前記アノード材料中のシリコン原子に対するリチウム原子の比が、≦4.0であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
【請求項8】
前記リチウムイオン電池の前記アノード材料中のシリコン容量が、シリコンのグラム当たりの最大容量4200mAhに対して、≦80%の程度まで利用されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アノード材料がコアシェル複合粒子を含有するリチウムイオン電池に関する。コアシェル複合粒子のコアは、シリコン粒子を含有し、シェルは炭素をベースとする。
【背景技術】
【0002】
電力の蓄電媒体として、リチウムイオン電池は、現時点で、最も高エネルギー密度を有する最も実質的に有用な電気化学エネルギー貯蔵物である。リチウムイオン電池は、携帯用電子機器の分野において、道具用および輸送の電動手段、例えば、自転車または自動車用に何よりも先ず使用されている。現在、グラファイト状炭素は、このような電池の負電極(「アノード」)用材料として最も受け入れられている。しかしながら、短所は、理論的に、リチウム金属を用いて理論的に得られる電気化学容量の約10分の1にしか相当しないグラファイトのグラム当たり最大372mAhの比較的低い電気化学容量である。代替のアノード材料の開発は、シリコンの使用につながった。シリコンは、リチウムとの二元電気化学的活性合金を形成し、この合金は、高リチウム含有率、Li4.4Siの例では、シリコンのグラム当たり4200mAhの領域の理論的比容量を達成することができる。
【0003】
短所は、シリコンへのリチウムの組込みおよびシリコンからリチウムの放出が、約300%に達し得る非常に大きな体積変化を伴うことである。このような体積変化は、微結晶に大きな機械的応力を受けさせ、したがって、微結晶は最終的に粉々になり得る。電気化学的製粉とも呼ばれるこの方法は、活物質および電極構造物中の電気接点損失、したがって、容量損失した電極の破壊をもたらす。
【0004】
さらに、シリコンアノード材料表面は、不動態化保護層(固体電解質界面;SEI)を絶えず形成する電極の成分と反応する。生成された成分は、もはや電気化学的に活性でない。その中に結合されたリチウムは、もはやシステムで利用できず、電池容量の明白な継続的低下をもたらす。電池の充放電過程中のシリコンにより経験される極度の体積変化のせいで、SEIは一定の間隔で破裂し、シリコンアノード材料の更なる表面をさらした後、さらにSEI形成する。有用な容量に相当するフルセルにおける移動可能なリチウム量はカソード材料により限定的なので、このリチウムは直ぐに消費され、電池容量はほんの数サイクル後の使用で容認できない程度まで減少する。
【0005】
充放電サイクル数にわたる容量の減少は、容量の劣化または連続的損失とも言い、概して不可逆である。
【0006】
炭素マトリックス中にシリコン粒子を埋め込む一連のシリコン-炭素複合粒子は、リチウムイオン電池用アノード活物質として記載されている。この場合、小さな粒度、例えば、約200nmの平均粒度d50を有するシリコン粒子が、通常、使用されてきた。この理由は、より小さなシリコン粒子はより低いシリコン取込み容量を有し、このため、より大きなシリコン粒子より、リチウムの組込み時により低体積膨張し、結果として、シリコンに関連する上記問題がほんのより小さな程度にしか起こり得ないことである。例えば、独国特許出願公開第102016202459号は、50~800nmの範囲の平均粒度d50を有するSi粒子を含んでなる複合粒子を記載している。詳細には、180nmおよび200nmの平均粒度を有するSi粒子がこの目的のために記載されている。独国特許出願公開第102016202459号は、多孔質シリコン-炭素複合体の総括的概要も示している。全てのこれらのアプローチでは、リチウムに対するシリコンの容量は、フル充電されたリチウムイオン電池において完全に使い切っており、この状態では電池のシリコンは完全にリチウム化されていた。
【0007】
比較的大きなSi粒子を有するシリコン-炭素複合粒子は、製粉処理によりより低い費用で利用しやすく小さなナノサイズのシリコン粒子より容易に取り扱うことができるので、特に経済的に興味深い。しかしながら、電気化学的製粉、SEIまたは劣化などの上記問題は、比較的大きなシリコン粒子に関する格別の課題である。単純な炭素被膜を有するμmサイズのシリコン粒子は、例えば、欧州特許出願公開第1024544号に記載されている。炭素被膜は、その弾性特性が理由で電気化学的製粉およびSEI形成を防止することを目的とする。欧州特許出願公開第1054462号は、リチウムイオン電池用アノードを構成するための様々なアプローチを教示している。1つの実施形態では、μmサイズのシリコン粒子に非多孔質電解液不浸透性炭素層を提供し、その後、アノード被膜に導入された。欧州特許出願公開第1054462号の更なる実施形態では、μmサイズのシリコン粒子は、電極被覆処理において炭素被膜中に埋め込まれ、同時にアノードの集電体と結合された。場合によっては、電池の電解液の電極への浸透を補助し、したがって、電極の内部抵抗を低下させる目的で多孔性を被膜に導入した。多孔質シリコン含有コアおよび非多孔質シェルを有するコアシェル複合粒子は、この参考文献に開示されていない。
【0008】
米国特許出願公開第2009/0208844号は、その膨張黒鉛が、例えば、埋め込まれた炭素被膜中のμmサイズの炭素被覆Si粒子を記載している。炭素被膜は、その弾性特性が理由で電気化学的製粉およびSEI形成を防止することを目的とする。多孔質複合粒子はこの中に記載されていない。米国特許第8,394,532号のμmサイズのシリコン粒子の炭素被膜は、黒鉛などの炭素粒子または炭素繊維を含む。米国特許出願公開第2008/0166474号のμmサイズのシリコン粒子に繊維および金属を含む多孔質炭素被膜を提供されている。さらに、シリコン粒子は、電池の充電中、完全にリチウム化されていた。
【0009】
米国特許出願公開第2016/0172665号は、1つ以上の同じメソポーラス炭素シェルで被覆されたシリコン粒子をベースとするリチウムイオン電池用活物質を記載している。シリコン粒子の性質に関して、米国特許出願公開第2016/0172665号は、明細書全般に明確化されていないが、図5Aおよび5Bから分かるように、100nmの領域の一次粒径を有する凝集したシリコン粒子のみ明確に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような背景に照らして、高サイクル安定性を有するリチウムイオン電池を提供することは目的であり続けていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、アノードがコアシェル複合粒子を含有するアノード材料をベースとするリチウムイオン電池であって、
コアシェル複合粒子のコアがシリコン粒子含有多孔性炭素ベースマトリックスであり、コアシェル複合粒子のシェルが非多孔性であり、かつ1つ以上の炭素前駆体の炭化により得ることができ、および
フル充電されたリチウムイオン電池のアノード材料は部分的にのみリチウム化されていることを特徴とする、リチウムイオン電池を提供する。
【0012】
本発明は、アノードがコアシェル複合粒子を含有するアノード材料をベースとするリチウムイオン電池であって、
コアシェル複合粒子のコアがシリコン粒子含有多孔性炭素ベースマトリックスであり、および
コアシェル複合粒子のシェルが非多孔性であり、かつ1つ以上の炭素前駆体の炭化により得ることができ、および
リチウムイオン電池がフル充電される場合、アノード材料は部分的にのみリチウム化されていることを特徴とする、リチウムイオン電池の充電方法をさらに提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
シリコン粒子は、概して、ナノサイズ、サブミクロサイズまたはミクロサイズである。好ましいシリコン粒子は、好ましくは≧50nm、より好ましくは≧100nm、さらにより好ましくは≧500nm、特に好ましくは≧800nm、非常に特に好ましくは≧1μmの直径パーセンタイル値d50を有する体積基準粒度分布を有する。言及された直径パーセンタイル値d50は、好ましくは≦15μm、より好ましくは≦10μm、特に好ましくは≦8μm、最も好ましくは≦7μmである。
【0014】
体積基準粒度分布を、Mieモデルおよびシリコン粒子用分散媒体としてエタノールを使用した測定装置堀場製作所製LA950を用いて静的レーザー光散乱法によってISO13320に従って本発明により決定することができる。
【0015】
シリコン粒子は、複合粒子中、単独または集塊した形態で、好ましくは凝集した形態でなく存在することができる。シリコン粒子は、好ましくは凝集しておらず、好ましくは集塊しておらずおよび/または好ましくはナノ構造を有しない。
【0016】
凝集したとは、例えば、シリコン粒子製造における気相方法で先ず生成されたとき、球状またはほとんど球状の一次粒子が、気相方法における反応の更なる過程の間に成長し、このようにして凝集体を生成することを意味する。これらの凝集体は、反応の更なる過程において集塊物を生成し得る。集塊物は、凝集体の緩い集合体である。集塊物は、通常使用される混練法および分散法によって容易に凝集体に分解し得る。これらの方法によって、凝集体は一次粒子に分解することができず、または部分的にしか一次粒子に分解することができない。凝集体または集塊物の形態でのシリコン粒子の存在は、例えば、従来の走査型電子顕微鏡(SEM)によって可視化することができる。一方、シリコン粒子の粒度分布または粒径を決定するための静的光散乱法は、凝集体か集塊物かを識別することができない。
【0017】
概して、シリコン粒子は、特徴的BET表面積を有する。シリコン粒子のBET表面積は、好ましくは0.01~150.0m/g、より好ましくは0.1~100.0m/g、特に好ましくは0.2~80.0m/g、最も好ましくは0.2~18.0m/gである。BET表面積を、DIN66131(窒素を使用)に従って決定する。
【0018】
シリコン粒子は、例えば、結晶形態またはアモルファス形態で存在することができ、好ましくは多孔性でない。シリコン粒子は、好ましくは球状または多片状の粒子である。別の方法として、余り好ましくないが、シリコン粒子は繊維構造を有するかまたはシリコン含有薄膜もしくは被膜の形態で存在することもできる。
【0019】
シリコン粒子は、例えば、元素状シリコン、酸化ケイ素またはシリコン-金属合金をベースとすることができる。リチウムイオンに対する最良の貯蔵容量を有するので元素状シリコンが好ましい。
【0020】
シリコン粒子は、好ましくは、高純度ポリシリコンからなり得るが、意図的にドーピングされたシリコンまたは元素汚染を有し得る金属シリコンからなることもできる。さらに、シリコン粒子は、他の金属およびケイ化物の形態の元素、例えば、文献から公知の金属、Li、Sn、Ca、Co、Ni、Cu、Cr、Ti、Al、Fe、その他との合金で存在することができる。これらの合金は、二元、三元または多元であり得る。電気化学的貯蔵容量を増大するため、特に低含有率の異元素が好ましい。
【0021】
コアシェル複合粒子の炭素ベースマトリックスは多孔性であり、したがって細孔を含む。マトリックスは、細孔のためのフレーム構造であると見なすことができる。個々の細孔は好ましくは独立している。細孔は、好ましくは、溝により互いに連結していない。細孔の形状は、例えば、楕円形、細長い、角状、多片状または好ましくは球状であることができる。
【0022】
細孔壁は、好ましくは、4~1000nm、特に好ましくは、24~900nm、最も好ましくは、50~800nm(決定方法:走査型電子顕微鏡(SEM))の厚さを有する。細孔壁の厚さは、概して、2つの細孔間の最短距離であると解釈される。
【0023】
コアシェル複合粒子の全細孔容積は、好ましくは、その中に存在するシリコン粒子の体積の0.3倍~2.4倍、特に好ましくは0.6倍~2.1倍、最も好ましくは0.9倍~1.8倍に相当する。複合粒子のグラム当たりの全細孔容積は、かさ密度(DIN51901に準じた方法でヘプタン比重瓶法によって決定)および骨格密度(DIN66137-2に従ってHe比重瓶法によって決定)の逆数の差と定義される。
【0024】
マトリックスは、好ましくは≧50nm、より好ましくは≧65nm、特に好ましくは≧70nm、最も好ましくは≧100nmの平均径を有する細孔を含む。マトリックスは、好ましくは≦22μm、より好ましくは≦19μm、特に好ましくは≦15μm、最も好ましくは≦12μmの平均径を有する細孔を含む。
【0025】
シリコン粒子は、マトリックス中、細孔内(局所的細孔)および/または細孔の外側(包括的細孔(global pores))に存在することができる。Si粒子は、好ましくは、細孔内に存在する。
【0026】
マトリックスの包括的細孔は、好ましくは≧50nm、より好ましくは≧65nm、特に好ましくは≧70nm、最も好ましくは≧100nmの平均径を有する。マトリックスの包括的細孔は、好ましくは≦6μm、より好ましくは≦5μm、特に好ましくは≦4μm、最も好ましくは≦3μmの平均径を有する。
【0027】
マトリックスの局所的細孔は、好ましくは≧50nm、より好ましくは≧100nm、特に好ましくは≧500nm、最も好ましくは≧800nmの平均径を有する。マトリックスの局所的細孔は、好ましくは≦22μm、より好ましくは≦19μm、特に好ましくは≦15μm、最も好ましくは≦12μmの平均径を有する。
【0028】
マトリックスの細孔径の決定は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって行う。細孔径に関する測定は、好ましくは、2つ、特に好ましくは3つの相互直交の径の最大径により履行する。このとき、細孔の平均径は、好ましくはメジアンである。細孔内に存在するシリコン粒子の体積を、細孔径の決定の際に細孔容積に加える。
【0029】
細孔は、1つ以上のシリコン粒子を含むことができる。シリコン粒子が存在するマトリックスの細孔は、好ましくは、≦30個、特に好ましくは≦20個、さらにより好ましくは≦10個のシリコン粒子、特に上記平均粒度d50を有するシリコン粒子を含む。
【0030】
シリコン粒子が存在するマトリックスの細孔径とシリコン粒子の径との比は、好ましくは≧1.1、特に好ましくは≧1.6、最も好ましくは≧1.8である。径の上記比は、好ましくは≦3、特に好ましくは≦2.5、最も好ましくは≦2である(決定方法:走査型電子顕微鏡(SEM))。
【0031】
マトリックスの細孔内に存在するシリコン粒子の比率は、コアシェル複合粒子中のシリコン粒子の総数に対して、好ましくは≧5%、より好ましくは≧20%、さらにより好ましくは≧50%、特に好ましくは≧80%、最も好ましくは≧90%である(決定方法:走査型電子顕微鏡(SEM))。
【0032】
コアシェル複合粒子のコア、またはマトリックスは、好ましくは≧2μm、特に好ましくは≧3μm、最も好ましくは≧5μmの直径パーセンタイル値d50を有する体積基準粒度分布を有する。d50は、好ましくは≦90μm、より好ましくは≦50μm、特に好ましくは≦30μm、最も好ましくは≦20μmである。体積基準粒度分布を、Mieモデルおよびコア粒子用分散媒体としてエタノールを使用した測定装置堀場製作所製LA950を用いて静的レーザー光散乱法によってISO13320に従って本発明の目的のために決定することができる。
【0033】
マトリックスは、概して、炭素、特に結晶性炭素またはアモルファス炭素をベースとする。結晶性炭素およびアモルファス炭素の混合物または結晶性およびアモルファスサブ領域を有する炭素も可能である。マトリックスは、概して、球状、例えば、ボール様の形状を有する。
【0034】
マトリックスは、好ましくは、20重量%~80重量%、特に好ましくは25重量%~70重量%、最も好ましくは30重量%~60重量%の程度まで炭素をベースとする。マトリックスは、好ましくは、20重量%~80重量%、特に好ましくは30重量%~75重量%、最も好ましくは40重量%~70重量%のシリコン粒子を含む。重量%の数字は、いずれの場合にも、コアシェル複合粒子のコアの総重量に対するものである。
【0035】
コアの比率は、コアシェル複合粒子の総重量に対して、好ましくは80重量%~95重量%、特に好ましくは85重量%~93重量%である。
【0036】
マトリックスの炭素は、例えば、1つ以上の炭素前駆体の炭化により得ることができる。
【0037】
炭素前駆体は、概して、高炭素含有率を有し、熱転換時炭素中に導電性構造を生じる。炭素前駆体の炭化における炭素収率は、炭素前駆体の総重量に対して、好ましくは≧15%、特に好ましくは≧20%、最も好ましくは≧25%である。
【0038】
マトリックス用炭素前駆体は、例えば、レゾルシノール・ホルムアルデヒド樹脂、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、リグニンまたはポリアクリロニトリルである。
【0039】
炭素前駆体から生成された炭素は、薄層の形態で細孔を覆うかまたは細孔空隙周囲にマトリックスを形成し得る。
【0040】
さらに、コアシェル複合粒子のコアは、元素Li、Fe、Al、Cu、Ca、K、Na、S、Cl、Zr、Ti、Pt、Ni、Cr、Sn、Mg、Ag、Co、Zn、B、P、Sb、Pb、Ge、Bi、希土類またはこれらの組合せをベースとした追加の活物質を含むことができる。好ましい追加の活物質は、LiおよびSnをベースとする。追加の活物質の含有率は、コアシェル複合粒子の総重量に対して、好ましくは≦1重量%、特に好ましくは≦100ppmである。
【0041】
コアシェル複合粒子のコアは、必要に応じて、1つ以上の導電性添加剤、例えば、黒鉛、(導電性)カーボンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレンまたはグラフェンを含むことができる。好ましい導電性添加剤は、導電性カーボンブラックおよびカーボンナノチューブである。導電性添加剤の含有率は、コアシェル複合粒子の総重量に対して、好ましくは≦1重量%、特に好ましくは≦100ppmである。導電性添加剤が存在しないのが最も好ましい。
【0042】
多孔性マトリックスの細孔は、例えば、マトリックス製造用の1つ以上の犠牲材料の使用により得ることができる。
【0043】
例えば、1つ以上の犠牲材料、1つ以上の炭素前駆体およびシリコン粒子を混合し、その後、炭素前駆体は少なくとも部分的に炭素に転換され、犠牲材料は炭化前、炭化中または炭化後に少なくとも部分的に細孔に転換される炭化段階によって、多孔性マトリックスを製造することができる。
【0044】
好ましい実施形態では、1つ以上の炭素前駆体で被覆された1つ以上の犠牲材料を使用して、犠牲材料を時間的に後の時点で再度除去し、炭素前駆体ベースの被膜を犠牲材料の除去前、除去中または除去後に炭素ベースのマトリックスに転換することにより、細孔を得ることができる。この方法でも、多孔性炭素マトリックスを得ることができる。
【0045】
シリコン粒子を含有する細孔は、例えば、シリコン粒子を最初に1つ以上の犠牲材料で被覆し、得られた製品を上記炭素前駆体の1つ以上で被覆して、その後、該犠牲材料ベースの被膜を再び取り除き、該炭素前駆体ベースの被膜を犠牲材料の除去前または除去中に炭素ベースのマトリックスに転換することにより得ることができる。この方法では、細孔をシリコン粒子の周囲に形成する。所望の孔径を有するコアシェル複合粒子が得られるように、それ自体公知の従来方法において、実質的にいずれもの層厚さで、犠牲材料を塗布することができる。
【0046】
犠牲材料ベースのコーティングは、好ましくは5~300nm、特に好ましくは20~300nm、最も好ましくは50~100nm(決定方法:走査型電子顕微鏡(SEM))の範囲の平均層厚さを有する。犠牲材料ベースのコーティングは、少なくとも1つの位置において、好ましくは1~300nm、特に好ましくは20~200nm、最も好ましくは50~100nm(決定方法:走査型電子顕微鏡(SEM))の層厚さを有する。
【0047】
犠牲材料は無機であってよく、好ましくは、事実上、有機であってよい。
【0048】
無機犠牲材料の例としては、元素、シリコン、マグネシウム、カルシウム、スズ、亜鉛、チタン、ニッケルの酸化物、カーボネート、ケイ化物、炭化物、塩化物、窒化物または硫化物である。無機犠牲材料の特定の例は、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、塩化ナトリウム、炭酸マグネシウムおよび硫化ニッケルである。酸化亜鉛または硫化ニッケルを、例えば、炭素熱還元によって揮発性化合物に転換し遊離することができ、炭酸マグネシウムを熱分解により遊離することができる。二酸化ケイ素、酸化マグネシウムを、酸処理による従来方法で浸出することができる。
【0049】
典型的有機犠牲材料は、25℃~1000℃の範囲から選択される温度において、≧50重量%、好ましくは≧80重量%、特に好ましくは≧90重量%の質量損失を有する。
【0050】
有機犠牲材料の例は、エチレン性不飽和モノマーのホモ重合体または共重合体、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリ-tert-ブトキシスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリレート、ポリビニルステアレート、ポリビニルラウレートまたはその共重合体;ポリビニルアルコール;エチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのアルキレングリコール;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなどのポリアルキレンオキシドまたはその共重合体;γ-ブチロラクトン;炭酸プロピレン;多糖類;メラミン樹脂類またはポリウレタン類である。
【0051】
好ましい犠牲材料は、エチレン性不飽和モノマーの重合体、メラミン樹脂類、ポリアルキレンオキシドおよびアルキレングリコールである。特に好ましい犠牲材料は、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、アルキレングリコールならびにポリアルキレンオキシド、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよびポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル-エチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル-エチレン-アクリレート三元共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体ならびにメラミン樹脂類からなる群から選択される。
【0052】
コアシェル複合粒子のシェルは、概して、炭素、特にアモルファス炭素をベースとする。
【0053】
シェルは、概して、非多孔性である。炭素前駆体の炭化は、必然的に非多孔性シェルをもたらす。
【0054】
シェルの細孔は、好ましくは<10nm、特に好ましくは≦5nm、最も好ましくは≦2nm(決定方法:DIN66134に従ってBJH法(ガス吸着)による細孔径分布)である。
【0055】
シェルは、好ましくは、≦2%、特に好ましくは≦1%の多孔度(全孔隙率の決定方法:1-[かさ密度(DIN51901に従ってキシレン比重瓶法によって決定)および骨格密度(DIN66137-2に従ってHe比重瓶法によって決定)の比])を有する。
【0056】
シェルは、コアシェル複合粒子のコアを少なくとも部分的に、特に好ましくは完全に囲う。別の方法として、シェルは、コア表面に近い細孔入口のみに充填または密封または浸透することもできる。
【0057】
シェルは、概して、液体媒体、特に、水性または有機の溶媒または溶液に不浸透性である。シェルは、特に好ましくは、水性電解液または有機電解液に不浸透性である。
【0058】
コアシェル複合粒子の液体不浸透性は、好ましくは≧95%、特に好ましくは≧96%、最も好ましくは≧97%である。液体不浸透性を、例えば、実施例のために下記に示した関連する決定方法に対応するように決定することができる。
【0059】
さらに、かさ密度(DIN51901に準じた方法でヘプタン比重瓶法によって決定)および純密度(DIN66137-2に従ってHe比重瓶法によって決定)の逆数の差は、溶媒に接近することができないコアシェル複合粒子グラム当たりの細孔容積を示す。
【0060】
シェルの比率は、コアシェル複合粒子の総重量に対して、好ましくは1重量%~25重量%、特に好ましくは5重量%~20重量%、最も好ましくは7重量%~15重量%である。
【0061】
コアシェル複合粒子のシェルを、シェル用の1つ以上の炭素前駆体の炭化により得ることができる。
【0062】
シェル用の炭素前駆体の例は、硬質炭素(2500℃~3000℃の温度において難黒鉛化性)または軟質炭素(2500℃~3000℃の温度において易黒鉛化性)、例えば、タールまたはピッチ、特に高融点ピッチ、ポリアクリロニトリルまたは1~20個の炭素原子を有する炭化水素をもたらす前駆体である。メソゲンピッチ(mesogenic pitch)、メソフェーズピッチ、石油ピッチ、および硬質コールタールピッチが特に好ましい。
【0063】
炭化水素の例は、1~10個の炭素原子、特に1~6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素、好ましくは、メタン、エタン、プロパン、プロピレン、ブタン、ブテン、ペンタン、イソブタン、ヘキサン;1~4個の炭素原子を有する不飽和炭化水素、例えば、エチレン、アセチレンまたはプロピレン;ベンゼン、トルエン、スチレン、エチルベンゼン、ジフェニルメタンまたはナフタレンなどの芳香族炭化水素;フェノール、クレゾール、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、ピリジン、アントラセン、フェナントレンなどの更なる芳香族炭化水素である。
【0064】
シェル用の好ましい炭素前駆体は、メソゲンピッチ、メソフェーズピッチ、石油ピッチ、硬質コールタールピッチ、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、ベンゼン、トルエンである。アセチレン、トルエン、特にエチレン、ベンゼンおよび石油ピッチまたは硬質コールタールピッチ由来の軟質炭素が特に好ましい。
【0065】
シェル用の炭素前駆体を、例えば、コア、またはマトリックスに塗布して、その後、炭化することができる。1~20個の炭素原子を有する炭化水素を、好ましくは、CVD法により炭化することができ、シェル用の他の炭素前駆体を、好ましくは、熱的に炭化する。
【0066】
コアシェル複合粒子は、例えば、分離した粒子または緩い集塊物として存在することができる。コアシェル複合粒子は、多片状もしくはフレーク状の形態または好ましくは球状で存在することができる。
【0067】
コアシェル複合粒子の直径パーセンタイル値d50を有する体積基準粒度分布は、好ましくは≦1mm、特に好ましくは≦50μm、最も好ましくは≦20μmであるが、好ましくは≧1.5μm、特に好ましくは≧3μm、最も好ましくは≧5μmである。
【0068】
コアシェル複合粒子の粒度分布は、好ましくは単峰性であるが、二峰性であってもよく、多峰性であってもよく、好ましくは狭い。コアシェル複合粒子の体積基準粒度分布は、好ましくは≦2.5、特に好ましくは≦2である(d90-d10)/d50の値を特徴とする。
【0069】
シェルまたはコアシェル複合粒子は、好ましくは≦50m/g、特に好ましくは≦25m/g、最も好ましくは≦10m/g(DIN66131(窒素を使用)に従って決定)のBET表面積を特徴とする。
【0070】
コアシェル複合粒子のかさ密度は、好ましくは≧0.8g/cm、特に好ましくは≧0.9g/cm、最も好ましくは≧1.0g/cm(DIN51901に準じた方法でヘプタン比重瓶法によって決定)である。
【0071】
コアシェル複合粒子に存在する炭素は、全く炭化により得られた炭素のみであり得る。別の方法として、更なる成分を炭素源として、例えば、黒鉛、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)、または他の炭素修飾物を使用することもできる。コアシェル複合粒子の炭素の高比率を、該コアシェル複合粒子の炭素の総質量に対して、好ましくは≧40重量%、特に好ましくは≧70重量%、最も好ましくは≧90重量%、炭化により得ることが好ましい。
【0072】
コアシェル複合粒子は、好ましくは、20~90重量%、特に好ましくは25~85重量%、最も好ましくは30~80重量%のシリコン粒子を含有する。炭素は、コアシェル複合粒子中、好ましくは20~80重量%、特に好ましくは25~75重量%、最も好ましくは20~70重量%の量で存在する。酸素および好ましくは窒素が、必要に応じて、コアシェル複合粒子中に存在してもよく;これらは、好ましくは、複素環の形態で、例えば、ピリジンおよびピロール単位(N)、フラン(O)またはオキサゾール(N、O)として化学結合して存在する。コアシェル複合粒子の酸素含有率は、好ましくは≦20重量%、特に好ましくは≦10重量%、最も好ましくは≦8重量%である。コアシェル複合粒子の窒素含有率は、≦10重量%の範囲、特に好ましくは0.2~5重量%である。重量%の数字は、いずれの場合にも、コアシェル複合粒子の総重量に対するものであり、合計すると総計で100重量%となる。
【0073】
コアシェル複合粒子は、必要に応じて、追加の成分、例えば、金属(例えば、銅)、酸化物、炭化物、または窒化物などの不活物質をベースとする成分を含有することができる。それにより、電気化学的安定性に良い影響を及ぼす。不活物質の比率は、コアシェル複合粒子の総重量に対して、好ましくは≦10重量%、より好ましくは≦5重量%、特に好ましくは≦1重量%である。このような不活物質は存在しないことが最も好ましい。
【0074】
コアシェル複合粒子は、概して、圧縮応力および/またはせん断応力下、驚くほど高安定性を有する。コアシェル複合粒子の圧縮安定性およびせん断安定性は、例えば、コアシェル複合粒子が、圧縮応力(例えば、電極圧縮中)またはせん断応力(例えば、電極製造時)後、走査型電子顕微鏡におけるその多孔性構造変化を示さないか、または僅かな変化しか示さない形で現れる。
【0075】
コアシェル複合粒子は、例えば、以下により得ることができる:
1) a)シリコン粒子を、1つ以上の犠牲材料で被覆すること、および/または
b)シリコン粒子を、1つ以上の犠牲材料と混合すること、
2)段階1)から得られた製品を、1つ以上の炭素前駆体で被覆すること、
3)この炭化段階において該犠牲材料を分解または更なる段階4)で、段階2)から得られた製品を炭化して多孔質複合材料を生成すること、
5)このように得られた多孔質複合材料を、シェル用の1つ以上の炭素前駆体で被覆すること、
6)段階5)から得られた製品を炭化すること、その後、
7)必要に応じて、例えば、篩分け(sieving)または篩分け(sifting)などの通常の分級技術によって小さ過ぎるサイズまたは大き過ぎるサイズのものを除去すること。
【0076】
段階1a)における被覆を、例えば、シリコン粒子および犠牲材料を含有する分散液から犠牲材料を沈殿することにより行うことができる。このとき、犠牲材料は、シリコン粒子上に成膜する。このように被覆されたシリコン粒子を、その後のろ過、遠心分離および/または乾燥により単離することができる。別の方法として、シリコン粒子を、従来方法で犠牲材料中に重合することもできる。
【0077】
段階1b)用の犠牲材料は、好ましくは、粒子の形態で存在する。犠牲材料粒子を、結晶化または重合による従来方法で得ることができる。段階1b)用の犠牲材料粒子は、概して、シリコンを含有しない。段階1b)から得られた製品は、概して、犠牲材料粒子およびシリコン粒子の混合物である。シリコン粒子は、概して、犠牲材料粒子の被膜を有しない。
【0078】
炭素前駆体を用いた段階2)における被覆を、段階1a)について記載されているものと同様な方法により行いことができる。
【0079】
段階3)における炭化を、例えば、熱的に、好ましくは400℃~1400℃、特に好ましくは500℃~1100℃、最も好ましくは700℃~1000℃の温度で行うことができる。このとき、従来の反応器および他の通例の反応条件を使用することができる。
【0080】
有機犠牲材料または無機犠牲材料、例えば、カーボネート、酸化物または硫化物を、段階3)または更なる熱処理4)において分解することができる。別の方法として、犠牲材料、特に、SiOまたはMgOなどの無機犠牲材料を、段階4)において、例えば、塩酸、酢酸またはフッ化水素酸による浸出により遊離することができる。
【0081】
炭素前駆体として1~20個の炭素原子を有する炭化水素の場合、段階5)における被覆を、従来のCVD法により行うことができる。シェル用に本発明により使用される他の炭素前駆体の場合、多孔質複合材料を、段階1a)について記載されているように被覆することができる。
【0082】
段階6)における炭化を、段階3)について記載されたものと同様な方法、好ましくは熱処理により行うことができる。
【0083】
その他の点では、個々の被覆もしくは炭化工程または段階4)を、当業者によく知られているように、従来の装置において、それ自体公知の方法で行うことができる。
【0084】
アノード材料は、好ましくは、コアシェル複合粒子、1つ以上のバインダー、必要に応じて黒鉛、必要に応じて1つ以上の更なる導電性成分および必要に応じて1つ以上の添加剤を含んでなる混合物をベースとする。
【0085】
好ましいバインダーは、ポリアクリル酸またはそのアルカリ金属塩、特にリチウム塩またはナトリウム塩、ポリビニルアルコール、セルロースまたはセルロース誘導体、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン、ポリアミド、特にポリアミドイミドまたは熱可塑性エラストマー、特にスチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリレート三元共重合体およびエチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体である。スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-ブタジエン-アクリレート三元共重合体およびセルロース誘導体、特にカルボキシメチルセルロース、ならびにこれらのアルカリ金属塩、特にリチウム塩またはナトリウム塩が特に好ましい。2つ以上のバインダーの混合物を使用することも可能である。
【0086】
黒鉛として、概して、天然または合成黒鉛を使用することが可能である。黒鉛粒子は、好ましくは、直径パーセンタイル値d10>0.2μmかつd90<200μmの体積基準粒度分布を有する。
【0087】
好ましい更なる導電性成分は、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブまたは金属粒子、例えば、銅である。
【0088】
更なる添加剤の例は、細孔形成剤、分散剤、レベリング剤またはドーパント、例えば、元素リチウムである。
【0089】
リチウムイオン電池のアノード材料用の好ましい配合は、好ましくは、50~99重量%、特に80~98重量%のコアシェル複合粒子;0~10重量%、特に0~5重量%の更なる導電性成分;0~50重量%、特に0~30重量%の黒鉛、特に0~25重量%、特に1~15重量%のバインダー;および必要に応じて0~80重量%、特に0~5重量%の添加剤を含有し;重量パーセントの数字はアノード材料の総重量に対するものであり、アノード材料の全成分の比率は合計すると100重量%となる。
【0090】
アノードインクまたはペーストを得るためのアノード材料成分の処理を、例えば、好ましくはローターステータ機、高エネルギー製粉機、遊星形ミキサー、混練機、攪拌ボールミル、振動台または超音波機器を用いて、水、ヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、アセトン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドもしくはエタノールなどの溶媒、または溶媒混合物中で行うことができる。
【0091】
アノードインクまたはペーストを、例えば、ドクターブレードによって、銅箔または別の集電体に塗布することができる。他の被覆方法、例えば、スピンコーティング、ロールコーティング、浸漬もしくはスリットノズルコーティング、塗装または噴霧を同様に使用することができる。
【0092】
アノード被膜の層厚さ、すなわち、乾燥層厚さは、好ましくは2μm~500μm、特に好ましくは10μm~300μmである。
【0093】
銅箔を本発明のアノード材料で被覆する前に、銅箔を、市販プライマー、例えば、ポリマー樹脂またはシラン類ベースのプライマーで処理することができる。プライマーは、銅に対する接着性を改質することができるが、概して、それ自体は実質的に電気化学的活性を有しない。
【0094】
アノード材料は、概して、一定重量まで乾燥する。乾燥温度は、使用される成分および使用される溶媒に依存する。好ましくは20℃~300℃の範囲、特に好ましくは50℃~200℃の範囲である。
【0095】
最終的に、電極被膜を、規定の電極多孔度に設定するためにカレンダー仕上げすることができる。
【0096】
リチウムイオン電池は、概して、カソードとして第一電極、アノードとして第二電極、該2つの電極間に配置されるセパレーターとしての膜、電極上の2つの接続点、上記部品を収容するハウジングおよび2つの電極が含浸されるリチウムイオン含有電解液からなる。
【0097】
好ましいカソード材料として、酸化リチウムコバルト、酸化リチウムニッケル、酸化リチウムニッケルコバルト(ドープまたは非ドープ)、酸化リチウムマンガン(スピネル)、酸化リチウムニッケルコバルトマンガン、酸化リチウムニッケルマンガン、リン酸リチウム鉄、リン酸リチウムコバルト、リン酸リチウムマンガン、リン酸リチウムバナジウムまたは酸化リチウムバナジウムを使用することが可能である。
【0098】
セパレーターは、概して、電池製造において通例であるように、鉄に浸透性である電気絶縁膜である。周知のように、セパレーターは、第一電極を第二電極から分離し、したがって、電極間の導電接続(短絡)を防止する。
【0099】
電解液は、通常、非プロトン性溶媒中の1つ以上のリチウム塩(=電解質塩)の溶液である。使用することができる電解質塩は、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、六フッ化ヒ酸リチウム、過塩素酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、LiCFSO、LiN(CFSO)、ホウ酸リチウムまたは硝酸リチウムである。溶媒に対する電解質塩の濃度は、好ましくは0.5モル/l(モル/リットル)からそれぞれの塩の溶解限度までの範囲である。0.8モル/l~1.2モル/lが特に好ましい。
【0100】
溶媒として、環式カーボネート類、炭酸プロピレン、炭酸エチレン(EC)、炭酸フルオロエチレン(FEC)、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル(EMC)、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン、ジオキソラン、アセトニトリル、有機カルボン酸エステル類またはニトリル類、いずれか個別にまたはその混合物として使用することが可能である。
【0101】
電解液は、好ましくは、塗膜形成剤、例えば、ビニレンカーボネート(VC)またはフルオロエチレンカルボネートなどの添加剤を含有する。シリコン粒子を含有するアノードのサイクル安定性の著しい改善はこれにより達成することができる。これは、主に、活性粒子表面上の固体電解質中間相の形成によるものである。電解液中の塗膜形成剤の比率は、好ましくは0.1重量%~20.0重量%、特に好ましくは0.2重量%~15.0重量%、最も好ましくは0.5重量%~10重量%の範囲である。
【0102】
リチウムイオン電池を、全ての通例に形状、例えば、巻いた、折り畳んだまたは積み重ねた形態で製造することができる。
【0103】
上記の本発明によるリチウムイオン電池の製造用に利用される全物質および材料は公知である。本発明の電池の部品の製造およびこれらを組立てて本発明の電池を得ることは、電池製造分野において公知の方法により実行することができる。
【0104】
リチウムイオン電池は、概して、アノードの材料(アノード材料)、特にコアシェル複合粒子がフル充電された電池において部分的にしかリチウム化されていないように作成または構成および/または概して動作する。フル充電されたという表現は、特定のコアシェル複合粒子において電池のアノード材料が可能な最大限までリチウム化される電池の状態を表す。アノード材料の部分的リチウム化は、アノード材料中の活物質粒子、特にコアシェル複合粒子の最大リチウム取込み容量を使い尽くしていないことを意味する。
【0105】
リチウムイオン電池のアノード中のシリコン原子に対するリチウム原子の比(Li/Si比)を、例えば、電荷束により設定することができる。アノード材料またはアノード材料中に存在するシリコン粒子のリチウム化度は、中を流れた電荷に比例する。この変化形では、リチウム用のアノード材料の容量を、リチウムイオン電池の充電中に完全に使い尽くさない。これは、アノードにおいて部分的リチウム化をもたらす。
【0106】
代替の好ましい変化形では、リチウムイオン電池のLi/Si比を、カソードに対するアノード比(セルバランス)によって設定する。この場合、アノードのリチウム取込み容量が好ましくはカソードのリチウム放出能力より大きくなるようにリチウムイオン電池を設計する。これは、完全に使い尽くされないアノードのリチウム取込み容量、すなわち、フル充電電池において部分的にしかリチウム化されないアノード材料をもたらす。
【0107】
リチウムイオン電池では、カソードのリチウム容量に対するアノードのリチウム容量の比(カソードに対するアノード比)は、好ましくは≧1.15、特に好ましくは≧1.2、最も好ましくは≧1.3である。本明細書では、リチウム容量という表現は、好ましくは、利用可能なリチウム容量を表す。利用可能なリチウム容量は、可逆的にリチウムを貯蔵する電極の能力の尺度である。利用可能なリチウム容量の決定を、例えば、リチウムに関して電極に対する半電池測定によって行うことができる。利用可能なリチウム容量を、mAhの単位で決定する。利用可能なリチウム容量は、概して、0.8V~5mVの電位窓でのC/2の充放電速度における測定脱リチウム化容量に対応する。本明細書では、C/2のCは、電極被膜の理論的比容量を表す。カソードに対するアノード比の決定のための実験手順に関する詳細は、副表題「b)カソードに対するアノード比(A/K)を調整するための容量決定」の例6に関する下記に見ることができる。
【0108】
アノードは、好ましくは、アノードの質量に対して、≦1500mAh/g、特に好ましくは≦1400mAh/g、最も好ましくは≦1300mAh/gまで充電される。アノードは、好ましくは、アノードの質量に対して、少なくとも600mAh/g、特に好ましくは≧700mAh/g、最も好ましくは≧800mAh/gまで充電される。これらの数字は、好ましくは、フル充電されたリチウムイオン電池に関する。
【0109】
シリコンのリチウム化度またはリチウムに対するシリコンの容量の利用(Si容量利用α)を、例えば、独国特許出願公開第102015215415.7号、11頁4行目~12頁25行目に記載されているように、特にSi容量利用αならびに表題「Determination of the delithiation capacity β」および「Determination of the Si proportion by weight ωSi」(「参照により組み入れられる」)の追加情報に関してそこに示された式によって決定することができる。
【0110】
本発明による部分的リチウム化の場合、リチウムイオン電池のフル充電状態におけるアノード材料中のLi/Si比は、好ましくは≦3.5、特に好ましくは≦3.1、最も好ましくは≦2.6である。リチウムイオン電池のフル充電状態におけるアノード材料中のLi/Si比は、好ましくは≧0.22、特に好ましくは≧0.44、最も好ましくは≧0.66である。
【0111】
リチウムイオン電池のアノード材料中のシリコン容量は、シリコンのグラム当たりの容量4200mAhに対して、好ましくは、≦80%、特に好ましくは≦70%、最も好ましくは≦60%の程度まで利用される。
【0112】
本発明のリチウムイオン電池は、著しく改良された電気化学的挙動を示し、高い体積容量(volumetric capacities)および優れた使用特性を有する。本発明による電池の動作では、容量の持続的損失は驚くほど小さく、電池のサイクル安定性は驚くほど高い。シェルまたはコアシェル複合粒子は、リチウムイオンおよび電子に対して透過性であり、したがって、電荷輸送を可能とする。コアシェル複合粒子の本発明による構成および電池動作中のシリコン粒子の本発明による部分的リチウム化により、有利な効果がもたらされる。これらの特徴は相乗的に作用する。
【0113】
以下の実施例は本発明を例証するのに役立つ。
【0114】
以下の分析方法および装置を特性決定のために使用した。
【0115】
走査型電子顕微鏡(SEM/EDX):
Zeiss Ultra 55走査型電子顕微鏡およびINCA x-sightエネルギー分散型X線分析装置を用いて、顕微鏡試験を行った。帯電現象を防止するために検査前にBaltec SCD500スパッタ/炭素コーティングを用いて蒸着によりサンプルを炭素で被覆した。図に示されたコアシェル複合粒子の断面は、6kVでLeica TIC 3Xイオンカッターを用いて作成した。
【0116】
無機分析/元素分析:
実施例中報告されたC含有率を、Leco CS230分析計を用いて決定し、Leco TCH-600分析計を使用してOならびに該当する場合NおよびH含有率を決定した。得られたコアシェル複合粒子において示された他の元素の定性的および定量的測定は、ICP(誘導結合プラズマ)発光分光法(Perkin Elmer社のOptima 7300 DV)によって行った。この目的のため、マイクロ波(Anton Paar社のMicrowave3000)中、酸(HF/HNO)でサンプルを消化した。ICP-OESによる決定は、ISO11885「水質-誘導結合プラズマ-光学発光による選択元素の決定(ICP-OES)(ISO 11885:2007);EN ISO 11885:2009のドイツ版」に基づき、これは、酸性水溶液(例えば、酸性化水道水、廃水、および他の水サンプル、土壌および沈降物の王水抽出物)の検査に使用される。
【0117】
粒度決定:
本発明の目的のため、粒度分布の決定を、ISO 13320に従って、堀場製作所製LA950を用いて静的レーザー散乱によって行った。サンプルの調製では、個々の粒子の代わりに集塊物の大きさを測定しないように、測定溶液中の粒子の分散を確実にするように特に注意を払わなければならない。このとき、検査されたコアシェル複合粒子の場合、粒子をエタノール中に分散した。この目的のため、測定前に4分間超音波プローブLS24d5を用いてHielscher社実験用超音波装置モデルUIS250v中250Wの超音波で分散液を必要に応じて処理した。
【0118】
BET法による表面測定:
材料の比表面積を、BET法により、Sorptomatic199090装置(Porotec社)またはSA-9603MP装置(堀場製作所)で、窒素を用いてガス吸着により測定した。
【0119】
液体媒体のSi接近容易性(液体不浸透性):
液体媒体に対するコアシェル複合粒子中のシリコンの接近容易性の決定を、既知のシリコン含有率(元素分析から)を有する材料に対して次の試験方法により行った:
最初に、コアシェル複合粒子0.5~0.6gをNaOH(4M;HO)およびエタノールの混合物(1:1 体積基準)20ml中に超音波によって分散し、その後、40℃で120分間撹拌した。複合粒子を200nmナイロン膜によりろ過し、pHが中和になるまで水で洗浄した後、乾燥器内において100℃/50~80ミリバール(mbar)で乾燥した。NaOH処理後のシリコン含有率を決定し、試験前のSi含有率と比較した。Si含有率相対変化≦5%において、複合体構造は不浸透性であると見なす(≧95%の不浸透性に相当)。
【0120】
純密度:
純密度(=骨格密度、すなわち、孔隙を除く体積に基づく多孔質固体の密度)を、DIN66137-2に従ってHe比重瓶法によって決定した。
【0121】
かさ密度:
かさ密度(=孔隙を含む体積に基づく多孔質固体の密度)を、規格DIN51901「Testing of carbonaceous materials - Determination of density by the xylene method - Solid materials」に基づく方法により、少なくとも2回の測定の平均として、ヘプタン中の複合体粉末の分散液に対して比重瓶法によって決定した。
【0122】
理論的比容量:
実施例で報告されているように、得られたコアシェル複合粒子の理論的比容量を実験的に決定しなかったが、代わりに材料の元素組成から算出した。このとき、純成分の次の容量を算出の基本として使用した:Si 4200mAh/g;(アモルファス)炭素 200mAh/g;N(アモルファスCマトリックスの部分として) 200mAh/g。さらに、複合体のO含有物はSiOの形態で存在し、したがってSiO含有物により活性シリコンの寄与は減少することが計算において推定された。
【実施例
【0123】
次の材料を、商業的供給源から製造または社内製造および更なる精製なしで使用した:
シリコン粉末A(多片様、凝集していないSi粒子、d50=800nm、撹拌ボールミルにおいてエタノール(固形含有率20重量%)中湿式製粉により製造後乾燥);
シリコン粉末B(多片様、凝集していないSi粒子、d50=4.5μm、流動床ジェットミルにおいて環式製粉により製造);
ピッチ(高融点;軟化点235℃)。
【0124】
実施例1:
コアシェル複合粒子(非多孔質シェル、全体的多孔性を有するコア、d50=800nmを有するSi粒子):
【0125】
a)犠牲材料粒子の製造
メラミン(Sigma-Aldrich #M2659)5.2gおよびホルムアルデヒド7.4g(Sigma-Aldrich、252549;37%濃度水溶液(strength solution in water)20g)を、50℃で1時間撹拌した。それから、希硝酸(pH3.5)300mlを添加し、混合物を100℃で50分間撹拌した。
【0126】
b)シリコンおよび例1aから得られた製品を、炭素前駆体で被覆
シリコン粉末A(d50=800nm)4.23gおよび例1aから得られた製品を超音波(Hielscher UIS250V;振幅80%、サイクル0.75;時間:30分)によって分散し、レゾルシノール(Sigma-Aldrich、W358908)12.0gおよびホルムアルデヒド9.8g(37%濃度水溶液26.5g)を撹拌しながら添加した。その後、pHをアンモニア(32%)6mlの添加によりpH7まで調整し、混合物を90℃で4時間加熱した。冷却後、懸濁液を丸形フィルター(粒子保持20μm)によりろ過し、固形物をイソプロパノールで洗浄し、100℃(80ミリバール)で15時間乾燥した。褐色固形物30.4gを得た。
【0127】
c)炭素前駆体の炭化
例1bで得られた製品30.0gを、石英ガラス製ボート(QCS GmbH)内に入れ、不活性ガスとしてN/H下、タイプNのサンプルエレメントを含むカスケード制御を使用して、三ゾーン管状炉(TFZ 12/65/550/E301;Carbolite GmbH)内で炭化した:加熱速度10℃/分、温度1000℃、保持時間180分、N/H流速360ml/分。冷却後、黒色粉末16.7gを得た。
【0128】
d)例1cから得られた製品をシェル用の炭素前駆体で被覆
超音波(Hielscher UIS250V;振幅80%、サイクル:0.75;時間:30分)によって、例1cで得られた製品16.0gを、p-キシレン350ml中、ピッチ(高融点;軟化点235℃)3.2gと一緒に分散した。懸濁液を、90分間還流下撹拌した。冷却後、ロータリーエバポレーターで減圧下、溶媒を除去した。
【0129】
e)シェル用の炭素前駆体の炭化
例1dで得られた製品17.7gを、石英ガラス製ボート(QCS GmbH)内に入れ、不活性ガスとしてN/H下、タイプNのサンプルエレメントを含むカスケード制御を使用して、三ゾーン管状炉(TFZ 12/65/550/E301;Carbolite GmbH)内で炭化した:第一加熱速度10℃/分、温度300℃、その後直ぐさらに加熱速度5℃/分、温度550℃;その後直ぐさらに加熱速度10℃/分、1000℃、保持時間3時間、N/H流速360ml/分。冷却後、黒色粉末15.7gを得て、これを湿式篩分けによって大き過ぎるサイズのものを取り除いた。不浸透性外側C被膜およびd99<20μmの粒度を有する多孔質コアシェル複合粒子14.6gを得た。
【0130】
元素組成:Si 27.9重量%;C 63.4重量%;O 7.89重量%;N 0.97重量%。
粒度分布:単峰性;d10:5.3μm、d50:8.2μm、d90:12.4μm;(d90-d10)/d50=0.9;
比表面積(BET):4.5m/g;
Si不浸透性:100%(液密);
かさ密度:1.67g/cm
純密度:2.33g/cm
隔絶細孔容積:0.17cm/g;
理論的比容量:1010mAh/g。
【0131】
図1は、例1eから得られたコアシェル複合粒子のSEM断面画像(拡大7500倍)を示す。シリコン粒子およびマクロポア孔隙を炭素マトリックス中に埋め込む。後者は、対応するリチウムイオン電池のリチウム化時にシリコンの体積膨張を緩衝することができる。
【0132】
実施例2:
コアシェル複合粒子(非多孔質シェル、局所的多孔性を有するコア、d50=800nmを有するSi粒子):
【0133】
a)Siを犠牲材料で被覆
シリコン粉末A(d50=800nm)9.4gを、エタノール数滴を添加した水90ml中に入れ、超音波(Hielscher UIS250V;振幅80%、サイクル:0.75;時間:45分)によって分散した。その後、得られた懸濁液を、同様に50℃であり、メラミン5.2gおよびホルムアルデヒド7.4g(37%濃度水溶液20.0g)からなる溶液に50℃で添加し、50℃で1時間撹拌した。その後、希硝酸(pH3.5)300mlを添加し、混合物を90℃で50分間撹拌した。冷却後、懸濁液を丸形フィルター(粒子保持20μm)によりろ過し、固形物をエタノールで洗浄し、100℃(80ミリバール)で15時間乾燥した。褐色固形物16.5gを得た。
【0134】
b)例2aから得られた製品を炭素前駆体で被覆
例2aから得られた製品15.0gを、超音波(Hielscher UIS250V;振幅80%、サイクル0.75;時間:30分)によって、イソプロパノール350ml中に分散し、レゾルシノール16.1gおよびホルムアルデヒド13.2g(37%濃度水溶液35.6g)を撹拌しながら添加した。その後、pHをアンモニア(32%)5mlの添加によりpH7まで調整し、混合物を90℃で4時間加熱した。冷却後、懸濁液を丸形フィルター(粒子保持20μm)によりろ過し、固形物をイソプロパノールで洗浄し、100℃(80ミリバール)で15時間乾燥した。褐色固形物33.4gを得た。
【0135】
c)炭素前駆体の炭化
例2bで得られた製品33.6gを、石英ガラス製ボート(QCS GmbH)内に入れ、不活性ガスとしてN/H下、タイプNのサンプルエレメントを含むカスケード制御を使用して、三ゾーン管状炉(TFZ 12/65/550/E301;Carbolite GmbH)内で炭化した:加熱速度10℃/分、温度1000℃、保持時間180分、N/H流速200ml/分。冷却後、黒色粉末18.9gを得た。
【0136】
d)例2cから得られた製品をシェル用の炭素前駆体で被覆
超音波(Hielscher UIS250V;振幅80%、サイクル:0.75;時間:30分)によって、例2cで得られた製品18.7gを、p-キシレン350ml中、ピッチ(高融点;軟化点235℃)3.7gと一緒に分散した。懸濁液を、90分間還流下撹拌した。冷却後、ロータリーエバポレーターで減圧下、溶媒を除去した。
【0137】
e)シェル用の炭素前駆体の炭化
例2dで得られた製品18.7gを、石英ガラス製ボート(QCS GmbH)内に入れ、不活性ガスとしてN/H下、タイプNのサンプルエレメントを含むカスケード制御を使用して、三ゾーン管状炉(TFZ 12/65/550/E301;Carbolite GmbH)内で炭化した:第一加熱速度10℃/分、温度300℃、その後直ぐさらに加熱速度5℃/分、温度550℃;その後直ぐさらに加熱速度10℃/分、1000℃、保持時間3時間、N/H流速200ml/分。冷却後、黒色粉末20.0gを得て、これを湿式篩分けによって大き過ぎるサイズのものを取り除いた。不浸透性外側C被膜およびd99<20μmの粒度を有する多孔質コアシェル複合粒子15.4gを得た。
【0138】
元素組成:Si 33.7重量%;C 58.9重量%;O 4.86重量%;N 1.18重量%;
粒度分布:単峰性;d10:11.0μm、d50:16.6μm、d90:23.8μm;(d90-d10)/d50=0.8;
比表面積(BET):5.8m/g;
Si不浸透性:98%(液密);
かさ密度:1.83g/cm
純密度:2.12g/cm
隔絶細孔容積:0.08cm/g;
理論的比容量:1356mAh/g。
【0139】
図2は、例2eから得られたコアシェル複合粒子のSEM断面画像(拡大7500倍)を示す。シリコン粒子を、対応するリチウムイオン電池のリチウム化時にシリコンの体積膨張を緩衝することができる局所的マクロポア孔隙中に埋め込む。
【0140】
実施例3:
コアシェル複合粒子(非多孔質シェル、局所的多孔性を有するコア、d50=4.5μmを有するSi粒子):
【0141】
a)Siを犠牲材料で被覆
シリコン粉末B(d50=4.5μm)15.0gを、水90ml中に入れ、超音波(Hielscher UIS250V;振幅80%、サイクル:0.75;時間:45分)によって分散した。その後、得られた懸濁液を、同様に50℃であり、メラミン5.2gおよびホルムアルデヒド7.4g(37%濃度水溶液20.0g)からなる溶液に50℃で添加し、55℃で1時間撹拌した。それから、希硝酸(pH3.5)300mlを添加し、混合物を100℃で60分間撹拌した。
【0142】
b)例3aから得られた製品を炭素前駆体で被覆
レゾルシノール8.2gおよびホルムアルデヒド6.7g(37%濃度水溶液18.1g)を、例3aから得られた製品に撹拌しながら添加した。その後、pHをアンモニア(32%)2mlの添加によりpH7まで調整し、混合物を70℃で4時間加熱した。冷却後、懸濁液を丸形フィルター(粒子保持20μm)によりろ過し、固形物をイソプロパノールで洗浄し、100℃(80ミリバール)で15時間乾燥した。褐色固形物32.8gを得た。
【0143】
c)炭素前駆体の炭化
例3bで得られた製品32.5gを、石英ガラス製ボート(QCS GmbH)内に入れ、不活性ガスとしてN/H下、タイプNのサンプルエレメントを含むカスケード制御を使用して、三ゾーン管状炉(TFZ 12/65/550/E301;Carbolite GmbH)内で炭化した:加熱速度10℃/分、温度1000℃、保持時間180分、N/H流速360ml/分。冷却後、黒色粉末21gを得た。
【0144】
d)例3cから得られた製品をシェル用の炭素前駆体で被覆
超音波(Hielscher UIS250V;振幅80%、サイクル:0.75;時間:30分)によって、例3cで得られた製品20.2gを、p-キシレン350ml中、ピッチ(高融点;軟化点235℃)4.4gと一緒に分散した。懸濁液を、90分間還流下撹拌した。冷却後、ロータリーエバポレーターで減圧下、溶媒を除去した。
【0145】
e)シェル用の炭素前駆体の炭化
例3dで得られた製品21.2gを、石英ガラス製ボート(QCS GmbH)内に入れ、不活性ガスとしてN/H下、タイプNのサンプルエレメントを含むカスケード制御を使用して、三ゾーン管状炉(TFZ 12/65/550/E301;Carbolite GmbH)内で炭化した:第一加熱速度10℃/分、温度300℃、その後直ぐさらに加熱速度5℃/分、温度550℃;その後直ぐさらに加熱速度10℃/分、1000℃、保持時間3時間、N/H流速360ml/分。冷却後、黒色粉末19.2gを得て、これを湿式篩分けによって大き過ぎるサイズのものを取り除いた。不浸透性外側C被膜およびd99<20μmの粒度を有する多孔質コアシェル複合粒子16.6gを得た。
【0146】
元素組成:Si 52重量%;C 43.2重量%;O 0.78重量%;N 2.89重量%;
粒度分布:単峰性;d10:5.4μm、d50:8.4μm、d90:13.0μm;(d90-d10)/d50=0.9;
比表面積(BET):2.7m/g;
かさ密度:1.99g/cm
純密度:2.29g/cm
隔絶細孔容積:0.07cm/g;
理論的比容量:2247mAh/g。
【0147】
図3は、例3eから得られたコアシェル複合粒子のSEM断面画像(拡大7500倍)を示す。シリコン粒子を、対応するリチウムイオン電池のリチウム化時にシリコンの体積膨張を緩衝することができる局所的マクロポア孔隙中に埋め込む。
【0148】
比較例4:
複合粒子(シェルのない局所的多孔性を有する複合体、d50=800nmを有するSi粒子):
【0149】
a)Siを犠牲材料で被覆
シリコン粉末A(d50=800nm)9.4gを、エタノール数滴を添加した水90ml中に入れ、超音波(Hielscher UIS250V;振幅80%、サイクル:0.75;時間:45分)によって分散した。その後、得られた懸濁液を、同様に50℃であり、メラミン5.2gおよびホルムアルデヒド7.4g(37%濃度水溶液20.0g)からなる溶液に50℃で添加し、混合物を50℃で1時間撹拌した。その後、希硝酸(pH3.5)300mlを添加し、混合物を90℃で50分間撹拌した。冷却後、懸濁液を丸形フィルター(粒子保持20μm)によりろ過し、固形物をエタノールで洗浄し、100℃(80ミリバール)で15時間乾燥した。褐色固形物16.5gを得た。
【0150】
b)例4aから得られた製品を炭素前駆体で被覆
例4aから得られた製品15.0gを、超音波(Hielscher UIS250V;振幅80%、サイクル0.75;時間:30分)によって、イソプロパノール350ml中に分散し、レゾルシノール16.1gおよびホルムアルデヒド13.2g(37%濃度水溶液35.6g)を撹拌しながら添加した。その後、pHをアンモニア(32%)6mlの添加によりpH7まで調整し、混合物を90℃で4時間加熱した。冷却後、懸濁液を丸形フィルター(粒子保持20μm)によりろ過し、固形物をイソプロパノールで洗浄し、100℃(80ミリバール)で15時間乾燥した。褐色固形物39.1gを得た。
【0151】
c)炭素前駆体の炭化
例4bで得られた製品38.5gを、石英ガラス製ボート(QCS GmbH)内に入れ、不活性ガスとしてN/H下、タイプNのサンプルエレメントを含むカスケード制御を使用して、三ゾーン管状炉(TFZ 12/65/550/E301;Carbolite GmbH)内で炭化した:加熱速度10℃/分、温度1000℃、保持時間180分、N/H流速200ml/分。冷却後、黒色粉末20.1gを得て、これを湿式篩分けによって大き過ぎるサイズのものを取り除いた。d99<20μmの粒度を有する多孔質コアシェル複合粒子16.5gを得た。
【0152】
元素組成:Si 37.9重量%;C 55.2重量%;O 5.26重量%;N 1.03重量%;
粒度分布:単峰性;d10:10.5μm、d50:15.8μm、d90:22.5μm;(d90-d10)/d50=0.8;
比表面積(BET):3.2m/g;
Si不浸透性:33%(液密);
かさ密度:1.86g/cm
純密度:2.19g/cm
隔絶細孔容積:0.11cm/g;
理論的容量:1510mAh/g。
【0153】
比較例5:
コアシェル複合粒子(非多孔質シェル、多孔性でないコア、d50=800nmを有するSi粒子):
【0154】
a)シリコンを炭素前駆体で被覆
シリコン粉末A(d50=800nm)11.1gを、超音波(Hielscher UIS250V;振幅80%、サイクル0.75;時間:30分)によって、イソプロパノール300ml中に分散し、レゾルシノール15.1gおよびホルムアルデヒド12.3g(37%濃度水溶液33.4g)を撹拌しながら添加した。その後、pHをアンモニア(32%)6mlの添加によりpH7まで調整し、混合物を90℃で4時間加熱した。冷却後、懸濁液を丸形フィルター(粒子保持20μm)によりろ過し、固形物をイソプロパノールで洗浄し、100℃(80ミリバール)で15時間乾燥した。褐色固形物31.1gを得た。
【0155】
b)炭素前駆体の炭化
例5aで得られた製品30.9gを、石英ガラス製ボート(QCS GmbH)内に入れ、不活性ガスとしてN/H下、タイプNのサンプルエレメントを含むカスケード制御を使用して、三ゾーン管状炉(TFZ 12/65/550/E301;Carbolite GmbH)内で炭化した:加熱速度10℃/分、温度1000℃、保持時間180分、N/H流速360ml/分。冷却後、黒色粉末20.8gを得た。
【0156】
c)例5bから得られた製品をシェル用の炭素前駆体で被覆
超音波(Hielscher UIS250V;振幅80%、サイクル:0.75;時間:30分)によって、例5bで得られた製品19.0gを、p-キシレン350ml中、ピッチ(高融点;軟化点235℃)3.8gと一緒に分散した。懸濁液を、90分間還流下撹拌した。冷却後、ロータリーエバポレーターで減圧下、溶媒を除去した。
【0157】
d)シェル用の炭素前駆体の炭化
例5cで得られた製品20.9gを、石英ガラス製ボート(QCS GmbH)内に入れ、不活性ガスとしてN/H下、タイプNのサンプルエレメントを含むカスケード制御を使用して、三ゾーン管状炉(TFZ 12/65/550/E301;Carbolite GmbH)内で炭化した:第一加熱速度10℃/分、温度300℃、その後直ぐさらに加熱速度5℃/分、温度550℃;その後直ぐさらに加熱速度10℃/分、1000℃、保持時間3時間、N/H流速360ml/分。冷却後、黒色粉末18.5gを得て、これを湿式篩分けによって大き過ぎるサイズのものを取り除いた。不浸透性外側C被膜およびd99<20μmの粒度を有する多孔質コアシェル複合粒子15.4gを得た。
【0158】
元素組成:Si 45重量%;C 49.1重量%;O 3.32重量%;N 0.58重量%;
粒度分布:単峰性;d10:8.2μm、d50:13.1μm、d90:19.5μm;(d90-d10)/d50=0.9;
比表面積(BET):3.1m/g;
Si不浸透性:98%(液密);
理論的容量:1867mAh/g。
【0159】
図4は、例5eから得られたコアシェル複合粒子のSEM断面画像(拡大7500倍)を示す。シリコン粒子を、多孔性でないCマトリックス中に埋め込む。
【0160】
実施例6:
【0161】
リチウムイオン電池の電気化学的特性:
a)例(比較例)1~5から得られたコアシェル複合粒子を含有するアノードの製造:
導電性カーボンブラック(Imerys社、Super C65)0.17g、水3.0gおよびカルボキシメチルセルロース(ダイセル社グレード1380)の1.4重量%濃度の水溶液6.05gを、4.5m/s(メートル/秒)の周速で5分間および17m/sの周速で30分間高速度ミキサーによって、冷却しながら20℃において分散した。その後、SBRバインダー(スチレン-ブタジエン共重合体、HO中40%)0.21gを添加すると直ぐに、混合物を、17m/sの周速で30分間再び分散した。その後、それぞれの例(比較例)のコアシェル複合粒子3.0gを添加し、4.5m/sの周速で5分間撹拌し、それから、12m/sの周速でさらに30分間分散した。脱気後、規定のギャップ高さを有するフィルム延伸枠(Erichsen社、モデル360)によって0.030mmの厚さを有する銅箔(Schlenk Metallfolien社、SE-Cu58)に塗布した。その後、このように製造された電極被膜を80℃、1バール(bar)の気圧下60分間乾燥した。
得られた電極の理論的電極比容量は、電極中のそれらの重量比率により重み付けられた、一緒に転化された電極成分の理論的比容量により得られる。この場合、コアシェル複合粒子のみが、電極比容量に寄与する。導電性カーボンブラック、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびバインダーは、比容量を有しない。様々な電極の理論的比容量を、表1に載せている。
【0162】
【表1】
【0163】
b)カソードに対するアノード比(A/K)を調整するための容量決定:
フルセル配置における所望のカソードに対するアノード比を調整するため、それぞれの電極被膜を、先ず、対極としての金属リチウム(Dm=12mm;Albemarle社;厚さ500μm;電池グレード)の反対側に作用電極(Dm=12mm)としてTセル(Swagelok社 316Lステンレス鋼を取り付けたTネジ)に導入した(半電池)。
120μlの電解液を含浸したガラス繊維ろ紙(Whatman社、GDタイプD)はセパレーター(Dm=13mm)としての機能を果たした。使用された電解液は、2重量%のビニレンカーボネート(VC)と混合した炭酸エチレン(EC)および炭酸ジエチル(DEC)の3:7(v/v)混合物中の1.0モル濃度の六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)からなった。
電池の組立てをグローブボックス(<1ppm HO、O;MBraun社)内で行った;使用された全構成要素の乾燥物質における含水率は20ppm未満であった。
【0164】
容量測定を、20℃においてBaSyTec CTS試験スタンドで行った。
第一サイクルにおいてC/25およびその後の2サイクルにおいてC/2のレートで定電流を使用してcc/cv(定電流/定電圧)法により、アノードのリチウム化を行った。リチウム化/脱リチウム化のための電位窓を、C/25またはC/2に対してリチウム基準5mVおよび1.5Vまたは0.8V間で設定した。リチウム基準5mVの下限電圧に達した後、電流がC/100未満になるまで定電圧において充電を続けた。それぞれの上限電圧に達するまで、第一サイクルにおいてC/25およびその後の2サイクルにおいてC/2の定電流を使用してcc(定電流)法により、電池の放電を行った。
第二放電サイクルにおける脱リチウム化容量を、電極の利用可能なリチウム容量として使用する。
アノード被膜の所望の容量を、様々な被膜重量によって調整し、カソード被膜との組合せで、所望のカソードに対するアノード比をこの方法で得た。
【0165】
c)Liイオン電池の組立ておよび電気化学的特性:
ボタン電池(タイプCR2032、宝泉株式会社)内の2電極配置においてフルセルで電気化学的試験を行った。記載されている電極被膜を対極または負電極(Dm=15mm)として打ち抜き;94.0重量%の含有率および14.82mg/cmの単位面積当たりの平均重量を有する酸化リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト6:2:2を作用電極または正電極(Dm=15mm)として使用した。120μlの電解液を含浸したガラス繊維ろ紙(Whatman社、GDタイプD)はセパレーター(Dm=16mm)としての機能を果たした。使用された電解液は、2重量%のビニレンカーボネート(VC)と混合した炭酸エチレン(EC)および炭酸ジエチル(DEC)の3:7(v/v)混合物中の1.0モル濃度の六フッ化リン酸リチウム(LiPF)からなった。電池の組立てをグローブボックス(<1ppm HO、O;MBraun社)内で行った;使用された全構成要素の乾燥物質における含水率は20ppm未満であった。
【0166】
電気化学試験を20℃で行った。第一サイクルにおいて5mA/g(C/25に相当)およびその後のサイクルにおいて60mA/g(C/2に相当)の定電流で、定電圧において4.2Vの電圧限界に達した後電流が1.2mA/g(C/100に相当)または15mA/g(C/8に相当)未満になるまで、BaSyTec CTS試験スタンドを用いてcc/cv(定電流/定電圧)法により、電池の充電を行った。3.0Vの電圧限界に達するまで、第一サイクルにおいて5mA/g(C/25に相当)およびその後のサイクルにおいて60mA/g(C/2に相当)の定電流でcc(定電流)法により、電池の放電を行った。選択された比電流は、正電極の被膜重量に対するものである。
【0167】
処方に依存して、リチウムイオン電池のカソードに対するアノード比(セルバランス)は、アノードの完全または部分的リチウム化に対応する。試験結果を表2および3に纏めている。
【0168】
【表2】
【0169】
上に述べたように例2から得られた本発明のコアシェル複合粒子を含む電池は、例4から得られたコアシェル複合粒子を含む電池より、安定なサイクル挙動を有する。
【0170】
2つの本発明の例2(Si粒子のd50=800nm)および3(Si粒子のd50=4.5μm)を、様々なA/K比の関数として比較のために検査した。
【0171】
【表3】
【0172】
電池のサイクル安定性はA/K比の増加と共に増大し、したがって、コアシェル複合粒子のリチウム化度はより低くなる。さらに、比較的大きなSi粒子をベースとしたコアシェル複合粒子(例3)は、より小さなSi粒子をベースとしたコアシェル複合粒子(例2)より、さらにより安定なサイクル挙動を示す。
【図面の簡単な説明】
【0173】
図1
図2
図3
図4
図1
図2
図3
図4